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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.1 【 直美と恭子 】

なろう挿絵-黒百合


いつもの教室の、よくあるお昼休みの光景。
屈託のない笑顔で、猫っ毛ショートカットの女の子が、対面の黒髪ロングの女の子と食事をしていた。

今年で高校一年生になったばかりの二人は、所謂親友の仲だった。



声をかけられた黒髪ロングの女の子、
少々幸が薄そうな雰囲気をしているが、
ひと目で美人と評される彼女の名は甘髪恭子(あまがみきょうこ)という。


恭子は美術部所属で、
人物画を描いたり服飾デザインを考えたりするのが得意な子であった。

その美貌と御淑やかな身の振るまいから、
とりわけ異性にモテており、校外でも噂になるほどだ。

しかし、幼い頃からチヤホヤされて育ったせいか、
異性にあまり興味がなく、告白をされても無下に断ってしまうため、
女子と一部の男子から反感を買っていた。

本人は至って悪気はないのだが、見た目の上品な様とは裏腹に、
オブラートに包まず端的に物を言う性格であったため、誤解を受けやすいタイプであった。



もう一方の少し落ち着きのない猫っ毛ショートカットの女の子、
明るくクリクリっとした目が特徴的で、
どちらかというと可愛いに分類される彼女の名は藤崎直美(ふじさきなおみ)という。


直美はテニス部所属で、スポーツ万能、明るく楽天的な性格で、
いつも笑顔で愛くるしい様は、周りにいる人たちを元気にさせる力があった。

だが、あまり物事をよく考えず、大胆すぎるその様は、少々女性らしさに欠け、
同年代の女子からも、もっと女らしくしなさいと冗談交じりにたしなめられるほどであった。



※※※



こんな二人の仲が始まったのは、今から1年前の夏。
恭子に振られた男子が、腹いせに恭子を襲おうとしたことがきっかけである。

その日、直美は副部長になったばかりのテニス部からの帰りで、
なんとなく普段は行かない男子更衣室の前を通って帰ろうとしていた。


(帰りにスーパーに寄ってアイスでも買って帰ろうかなあ)


平和なことを考えながら男子更衣室のある通路へ曲がると、
モゴモゴと押し殺された小さな女性の声が聞こえてきた。

不審に思って更衣室に近づき耳をそばだててみると、小さくだが確かに何かに抵抗する声だとわかる。

考える間も無く体が動いていた。
更衣室の鍵は古く、外れかけていたのが幸いして、簡単に壊すことができた。


「……! なにやってんのよ!」


中には目を丸くした男子が一人と、
こちらは名前を知っている、同学年の美人で有名な“甘髪恭子”だ。

恭子は男子に押さえつけられており、
誰が見ても今から襲われるという状態だった。

状況を理解した直美は、護身術として習っていた合気道をこれでもかと披露し、
か弱そうな恭子だけ押さえつければいいと甘くみていた男子は、去り際に舌打ちをして逃げていった。

直美は息を整えながら、泣きそうな恭子に振り向き


「自分には必要ないと思ってたけど、こんなとこで役に立つとはね、合気道」


と笑ってつぶやいた。
恭子はそこでホッとしたのか、一気に泣き出してしまった。


「……ありがとう……」


これは恭子にしかわからないことだが、
辛い時に誰かに助けてもらえたのは、恭子の人生においてこれが初めての出来事だった。



※※※



恭子は幼い頃から男子にモテてはいたが、
その見た目から、他の女子の虐めや嫉妬の対象となり易く、
また不器用な性格でもあったため、自ら男子に助けを求めようとはしなかった。


他の女子に嫌がらせをされていても周りは見て見ぬふり、
たまに男子で恭子の味方をしてくれるものもいたが、ほとんどは下心があり、
恭子がそれを頑なに拒否すると、途端に態度を翻すような輩ばかりであった。


真に恭子のことを案じ身を挺して助けてくれる者など、誰一人としていなかったのだ。



上品で物静かな恭子、活発で楽天的な直美、
そんな正反対な二人が仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。



※※※



「直美…あなたほんとファッションセンスないわよね」


ある昼休みのこと、恭子が直美に対して冗談交じりに言った。


「えーひどい!」


先日買った、微妙な丈の靴下を恭子に嬉々として披露したところ、
思わぬ返り討ちにあいショックを受ける直美。


「だって、その柄はないでしょ…えっと、うさぎ?」

「くまだよ!」


直美の靴下には妙に耳の長いくまの絵柄がワンポイントとして刺繍されている。


「……明日、桐越君とのデートに着ていく服は決まったの?」

「うーんそれが、なかなか決まらないんだよね」



※※※



直美には桐越誠(きりごえまこと)という恋人がいた。
彼はいわゆる中性的なイケメンタイプで、成績も優秀、困っている人を放っておけない優しい性格で女子からの評判もよかった。

父を幼い頃に亡くし、母子家庭で育った誠は、
母親思いで、よく家事を手伝っていたため料理や掃除も得意で、
少しだらしない直美とは対照的であった。

二人の出会いは、直美の弟がデパートで迷子になった際に、
誠が泣きじゃくる弟を、迷子センターまで連れてきてくれたことがきっかけだった。

その後、二人はすぐに意気投合し、
中学二年に上がる頃にはどちらからともなく付き合い始めていた。

あまりにも仲睦まじい二人の様子は、
周りからはオシドリ夫婦と揶揄されるほどであった。


そういう時、誠は照れたり恥ずかしがったりするのだが、
直美はからかわれていることにも気付かず、


「聞いた!? オシドリ夫婦だって! 
高校卒業したら結婚しようねっ! マ・コ・ト♡」


などと皆の前で言うもので、誠はあまりの恥ずかしさに卒倒しかけてしまった。


そんな二人であったが、デートは毎週欠かさずしており、
いつも手をつなぎ、お似合いのカップルであった。



※※※



直美はそんな誠のためにも女性らしくありたいと、
いつも恭子を見本にしてコーディネートを真似していたのだが、
これまでうまくいった試しはなかった。


「そうだキョウちゃん、明日キョウちゃん家、行ってもいい?」


直美の突然の誘いに思わずドキッとした恭子は、動揺を隠しながら頷いた。


「やった、これでキョウちゃんの服を貸してもらえる♪」

「ちょっと直美、勝手に決めないでよ」


恭子は口ではきつく言いながら、
昨日の夜、部屋を綺麗に掃除しておいたことに安堵していた。

直美に汚い部屋は見せたくない。


その気持ちがどこからくるものなのかは、まだ恭子にはわからなかった。
[ 2017/08/16 15:55 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.2 【 初めての催眠 】


次の日、
恭子と直美は同じ神妙な面持ちをして恭子の家のパソコン画面を注視していた。

きっかけは、直美が見た昨日のテレビ番組の話題だった。


「それでね、本当にその人、虫を食べちゃったの!」


直美は興奮気味に番組の内容を話していた。
その番組は、大の虫嫌いな女性タレントが海外に行き、
「虫がおいしそうに見えてくる」という旨の催眠術をかけられたのち、
本当に虫をおいしそうに食べてしまうという内容だった。

直美の興奮が恭子にも伝わったのか、
二人は早々に午後のデートで着ていく服のコーディネートを済ませ、話題を催眠術に変えていた。

好奇心旺盛な年頃の二人にとって、催眠術はとても興味を惹かれるものだったのだ。

恭子がどこからかノートパソコンを取り出して、
インターネットで催眠術について検索し、今に至る。


「ねぇこれ……」

「うん」

「やってみる?」

「……やろっか!」


二人は完全に催眠術の不思議さにハマっていった。
まさか、これがきっかけで何かが変わるなど、どちらも予想もせずに……


「最初はグー! じゃんけんぽい!」


なぜかハイテンションな直美につられ、
恭子も腕を大きく動かしてじゃんけんをする。


「え〜! あたしがかけられる方なのー?」


負けた直美が恭子に催眠術をかけられることになった。恭子は内心ワクワクしながら、催眠術のページをスクロールしている。


「ねえーかけるならはやくかけてよー」


焦れた直美が恭子を、駄々をこねる子供のように急かす。


「もー、ちょっとくらい待ってよ、今探してるから……あ、あった」


恭子が催眠術のセリフを見つけると、
とたんに直美は餌を見せられた子犬のように目を輝かせ、
恭子の前に正座して行儀よく座った。

恭子もその前にパソコンを持って向き直ると、
おもむろに初めての催眠術をかけ始めた。


「えーっと、まず、横になってください」

「えっ横になるの?」


直美はいきなり予想していなかったことを言われ戸惑いを隠せなかったが、
キョロキョロと辺りを見回すと


「うーん、ベッド、かりるね」


と言って、恭子がいつも使っているベッドに横になった。
恭子はうなずくと、次の指示をした。


「じゃあ、目を閉じて、全身の力を抜いてください」


直美は少しニヤニヤとしながらふぅーっと息を吐き、
ベッドの上で少しだけ体勢を整え力を抜いた。


「そう、そのままリラックスして、ゆっくり、ゆっくり呼吸してください」


恭子の読み方がうまかったのか、それとも直美の素直な性格が効いたのか、
直美はだんだんと表情からも力を抜いていく。


「あなたは今、心地よい場所にいて、階段を降りています」


恭子はいつかテレビで見た催眠術師の声音を思い出しながら、
ゆっくりとそれらしく喋ってみた。


「一段…二段…だんだんあなたは心の中に降りていきます」


直美のゆっくりとした呼吸が変わらないのを見た恭子は、催眠術を続ける。


「ではゆっくりと体を起こしてみてください」


恭子がそう言うと、直美は目を閉じたままゆっくり上半身を起こした。

あまりにも言葉の通りに動く直美がおかしくて、
ふざけて催眠術にかかった振りをしてるんだなと考えた恭子は、
ニヤニヤとしながら立ち上がり、冷蔵庫から冷えたトマトジュースを持ってきた。

何を隠そう、直美はトマトが苦手なのだ。
それを知っていた恭子は、直美がいつまで催眠術にかかったふりをするかな、
とトマトジュースをベッドでぼーっと座っている直美の口元に持って行った。


「これはとってもおいしいトマトジュースです。あなたはトマトが大好きで、
このジュースもおいしくて最後まで飲んでしまいます」


恭子が笑いをこらえながら言い終えると、
直美は手をゆっくり動かして缶を握り飲み始めた。

恭子は直美がギブアップ宣言をするのを今か今かと待っていたが、
なかなか缶から口を離さない。

それどころか、
直美はごくごくと喉を鳴らしながらトマトジュースを半分ほど飲んでしまった。

直美が苦手なトマトジュースを嫌がりもせずに飲んだことに驚いた恭子は、
慌ててパソコンの画面を見た。
催眠術のやり方は「体を起こさせてから暗示をかける」という記述で終わっている。


「もしかして…直美、本当にかかったの?」


直美は返事をせず、缶を握ったままだ。


(す、すごい、これ、本当にかかっちゃったんだ)


恭子は現実に起こっていることに驚き、そしてハッと思い出す。

…催眠の解き方を知らない。

今の今まで遊び半分で絶対に成功しないと思いながらやっていたので、
解き方を調べておかなかったのだ。

焦った恭子は急いでパソコンに向き直り、「催眠術 解き方」で検索をかけた。
五分以上パソコンをいじった末にわかったことは、
催眠術をかけるときに用いた方法を、逆の順序で行うというものだった。

急いでベッドの近くまで行くと、


「ゆっくりと、横になってください」と
焦りからか少し震えた声で直美に指示をする。

「あなたは今、心の中にいますね?」


友達が目の前で異常な状態になっている。
恭子は不安を必死に隠しながら暗示を続けた。


「では目の前の階段を上って外の世界に帰りましょう。一段、二段…」


恭子が十段まで数え終わると、直美がゆっくりと目を開けた。
それを見た恭子は大きく安堵のため息をついた。


「まさか…こんなにかかりやすいとは」

「へ? え?」


直美は状況がわからないのか、
体を勢い良く起こすと恭子とパソコンと交互に見て目をパチパチさせている。


「え? 覚えてないの?」


恭子も状況が理解できず、直美を見て疑問を口にした。


「え? あたし、なんかしたの? どうなった?」

「本当に? その缶見てみなよ」

「え? 缶?」


恭子が直美の手元を指差し、つられて直美が自分の手元を見る。


「トマトジュース…?」

「それ、自分で飲んだんだよ」


直美は一瞬よくわからないといった表情を見せてから、一気に目をまるくした。


「え? ……えええ!?」


直美は一拍遅れて状況を理解したのか、ベッドの上で大げさに反応した。


「だってトマト大っ嫌いなんだよ!?」


直美は恭子が最初からわかりきっている事実を口にすると、
顔の高さまで缶を持ち上げた。


「あれ…? いい匂いする…」

「え?」

「もしかしたら、飲めるかも、これ」


そう言うと直美は目をぎゅっと瞑って一気に缶の残りを飲み干してしまった。


「…飲めた」


二人とも訳が分からずにしばらく頭の上で、
はてなマークを飛ばしていたが、恭子が思いついたように口を開いた。


「もしかして…トマトがおいしいって暗示かけたまま解いちゃったから?」


二人は驚いて顔を見合わせた後、直美がいきなりベッドで飛び跳ね始めた。


「え!? 催眠術すごくない? トマト克服しちゃったよ!」

「ちょっ埃が立つからやめてよ」


恭子は口では直美を叱りながらも、催眠術の凄さに驚きを隠せなかった。
二人が催眠術の虜になるのは当然のことだった。


「ねえ、またやろうよこれ!」

「そうね、やろうか」


そう話すと時計を見た直美は急いで恭子に選んでもらった服に着替え始めた。
お昼から誠とデートなのだ。
今日は恭子に教えてもらったパンケーキ屋さんに誠を連れていく予定だった。

目の前で着替え始める直美を、
恭子はなぜか少し気になってちらちらと視線を向けてしまう。

それに気づいた直美は


「もーキョウちゃんのエッチ!」


と笑うと大げさに胸の辺りを手で隠した。

恭子はそんな直美がおかしくて、笑いながらパソコンをスリープモードにした。
直美が帰ったら、また調べてみよう。恭子は軽い気持ちでパソコンを閉じた。


「じゃ、行くかな! 服ありがとうね、汚さないように気をつける!」

「電車で足開いて座っちゃダメだからね。直美はいつもショーパンなんだから」


少し短めの恭子のスカートを借りた直美は、軽く頷いて玄関を出た。


「じゃ、行ってきます!」


直美のスカートがふわふわと風に揺られるのを見て、
恭子は気持ちが揺れるのを感じたが、
その気持ちが直美に向けられた特別な思いだということには、
まだ気づいていなかった。
[ 2017/08/16 18:10 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.3 【 恭子の決意 】


時刻は午後二時、
日は高く昇り、恭子の部屋の窓からもさんさんと光が入っていた。

そんな健全な天気の中、
恭子はパソコンでインターネットを開き、熱心に何かを調べていた。


この日、恭子は直美の服をコーディネートしてデートに送り出してから、
今までずっとパソコンに向かっていた。

何時間も画面ばかりを見ていたからか、
さすがに目の奥がじんじんとしてきたので、
ぐーっと腕を上げ背伸びをすると一気に息を吐き全身の力を抜いた。


「はぁー、つかれた」


床に引いてあるパステルピンクの絨毯に座ったままベッドに寄りかかった恭子は、ぼんやりと今日あったことを考えていた。


(催眠術、すごかったなあ……)


午前中にデートに出かけてしまった直美は、
どうやら何も覚えていないようだったが、
恭子の頭には催眠にかかった直美の姿がしっかりと残っていた。

それに加えて恭子の中には、なにか大変なことをしてしまったような気持ちと、面白いことを成し遂げたような手応えがあった。
催眠の効果に驚き、喜びを表したのは直美の方だったが、
一方で、恭子の方も驚きを隠せずにいた。

そして、もっと催眠術について知りたいと強く思ったのだった。


(でも調べても曖昧なことしか載ってないんだよなあ……)


恭子は静かにため息をつく。
三時間ほどインターネットで催眠術について調べ、
得た情報は大きくまとめると一つだけだった。

催眠術は、相手を何でも自分の思い通りにできるわけではないということ。

しかし、ある程度の年月をかければ、
本人の元の性格・性質に影響を与える事ができるというものだった。

直美は大嫌いと言っていたが、トマトジュースをすべて飲み干せたのも、
直美がトマトを「少しだけ苦手」だったかららしい。

これがトマトを「本当に嫌い」だったなら、
それを変えるのには何年もかかっただろう。


(これはこの催眠術がどれほどのものか試してみる必要があるわね)


そう考えると恭子はパソコンの電源を落とし、時計を見た。午後三時。

直美はちゃんとパンケーキ屋さんまでいけたかしら。
あそこはバターの追加ができること、言っておけばよかったかな。

パンケーキと並ぶほど、
今の恭子にとって催眠術は軽い遊び程度のものでしかなかった。



※※※



次の日、恭子が学校に着いて教室へ向かい階段を上っていると、後ろからとん、と押され振り返った。


「キョウちゃん、おはよ!」


後ろから声をかけてきた直美は今日も元気そうで、なにやらニコニコしている。


「月曜の朝だっていうのに元気ねー。なに、パンケーキがそんなにおいしかった?」

「そうなのー! バターまで追加できて、すっごい親切な店員さんだった!」


恭子は適当に言った冗談が当たったので、平和だなあと感じていると、直美は急になにか企んでいるような顔つきになり小声で恭子に言った。


「ねえ、昨日あたしが帰った後、催眠術について調べたでしょ」


恭子は内心ぎくりとなったが、別に隠すことでもないだろうと思い直し、


「調べたけど、どうしたの?」


と聞くと、直美はそんな恭子の様子に気づくこともなく続けた。


「あたしかけられるの気に入っちゃったからさ、
また今日もキョウちゃん家でやろうよ!」

「えーまたー?」


催眠術を早く試したい恭子にとっては願っても無い誘いだったが、
それを悟られないため冗談っぽく言った。


「いいじゃんいいじゃん! 決まりね、帰り一緒に帰ろ」


直美は半ば強引に言うと、恭子を追い越して先に教室へ行ってしまった。



※※※



それから何度か二人は催眠術で遊び、直美は催眠術にかかる時の不思議な感じに、恭子は純粋に催眠術の面白さにはまっていった。
たびたび失敗を繰り返したが、恭子はその度にこの催眠術について熟知していった。

その中でわかったことが二つある。

一つ目は無理な暗示をすると脳が覚醒し、催眠状態が解けてしまうということ。
これは恭子が直美に


「あなたは私に…キスをしたくなりまーす!」


とふざけた口調で言ったとき、
直美が少し考え込んだ後、目を覚ましてしまったことでわかった。

目を覚ました直美は笑いを堪えられず、「なにそれー」と言った。

実はそれは恭子にとってあまり冗談ではなかったため、
保険をかけたふざけた口調に、直美が笑ってくれたことに心から安堵していた。

もしそれが冗談として捉えられなかったら…
恭子は自分が安堵している理由がわからなかったが、
とりあえずその場をしのげたことにホッと息をついた。

ここでわかった通り、
二つ目は催眠途中で目が覚めると、前後の記憶が少し残るということだった。



※※※



ある日、いつものように催眠術で遊んでいると、恭子はあることに気がついた。
それは、自分の心の変化だった。

恭子はこれまでずっと、孤独で寂しさを抱えていた。
恭子の家庭はとても裕福だったが、
両親はいつも出張などで家を空けることが多かった。

その上、恭子は小さい頃から色々と習い事をしてきたが、
両親は恭子をあまり褒めたことがなかった。

上手くできれば、出来て当たり前、
上手くできなければ、なぜ出来ないのかと厳しく叱られ、
時に感情をぶつける事もあったが、
両親共に基本、自分のことにしか興味のない性格で、
恭子と一度でもまともに向き合おうとはしてこなかった。

どちらも、娘をステータスの一部にしか考えていなかったのだ。

そのような育てられ方をされた恭子は、他者への承認欲求が高くなり、
同時に他人に対して厳しく接するようになり、
結果として孤独を感じることが多くなっていった。


それがどうしたんだろう。


恭子はいつものようにベッドに横になり自分に身を任せている直美を見て考えた。
ここにいる直美は私を信用して、目を閉じている。


私を認め、受け入れてくれている。
そう考えると、長年の寂しさが嘘のように和らいでいくのを感じた。

友達として大好きな直美、自分を信用してくれている直美、
その直美を催眠によって自由に変えられるのなら、
それは、世界で一人だけ、絶対に自分を裏切らない、
最高のパートナーを得ることになるのでは?

恭子は確かに美人だが、
美人すぎるゆえにいつも女子の間では悪い噂が立ち、友達は少ない。

反対に恭子のことを気になっている男子は何人もいるが、
恭子の男子への人当たりの悪さから、気に入らないと思っている男子も少なくない。

過去に襲われかけた経験から、
恭子のガードは堅く、男子への警戒が強いことで有名だった。

両親も不仲で恭子のことを気にかける様子もなく、親戚ともあまり仲はよくない。

恭子のまわりにいる人の中でただ一人、心を許せる人は直美だけ。
その直美もいずれは恋人と結婚して、恭子から離れていってしまうだろう。


(いつかはひとりぼっちになる)


恭子はいつもそう考えていた。

自分が今しようとしていることが間違っているのはわかっている。

でも親友として大好きな直美と、いつまでも一緒にいられたら?


(やろう)


恭子はそう心に決めた。
[ 2017/08/16 19:21 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.4 【 直美の変化 】


それから恭子は、直美が家に来るたびに催眠遊戯に誘うようになった。


「一段…二段…あなたは心の中に降りていきます」


慣れた口調で直美に催眠をかけていく。
直美を自分のものにしたいと心に決めてから、恭子はすぐにある催眠をかけた。


「あなたはだんだん、催眠をかけられることが楽しくなってきます」


罪悪感は、もう捨てた。恭子はこう続けた。


「桐越くんより、私と一緒に催眠術で遊ぶ方が楽しくなってきます」


直美は昨日も誠と学校帰りにデートをしていた。
良くなっていくばかりの二人の仲を見ながら、恭子はいつも寂しさを感じていた。
行ってほしくない。私以外の人と、笑っていてほしくない。

誠といる時間が減れば、自然と自分といる時間が増えるだろう。
直美を自分のものにするには、まずは誠と直美の距離を離さなければならない。


「あなたは明日から桐越くんに嫌悪感を持つようになります」


直美の眉が一瞬、ぴくっと動いた。
恭子はどきっとして直美の表情を見たが、それ以上は動かない。


(かかった…?)


眠っているかのような直美のおでこを、前髪の上からふわっと撫でた。
染めてないのに少し明るい猫っ毛の髪。テニスの練習で焼けたのだろう。

どきどきする恭子の胸。この気持ちはなんだろう、どうしたんだろう。
直美を独占したい。私だけのものにしたい。
恭子はしばらくの間、直美の前髪を撫でていた。



※※※



「キョウちゃんおはよう!」


毎日乗る電車が一本違うのか、いつも直美は恭子の後ろから声をかけてくる。


「お、おはよう」


いきなり声をかけられたことと、
昨日のこともあり、恭子は一瞬ひるんでから挨拶を返した。
そんなことには気づかずに、直美はいつものとおり話題を振ってくる。


「あのさ、昨日のテレビがさー」


恭子はどこか上の空で相槌だけを繰り返した。


「あ、誠だ!」


びくっと反応する恭子。
誠〜と声をかけながら直美は誠に駆け寄っていった。
少し遠くから挨拶と、また昨日のテレビの話が聞こえてくる。


(あれ…?)


恭子は困惑を隠せずに二人を遠目で見る。


(催眠が、効いてない?)


昨日は確かに、直美に誠への嫌悪感を持たせるよう催眠をかけたはずだった。
しかし今の直美はいつもと変わらぬ表情で誠に接している。
いつもと変わらぬ、愛する人を見つめる眼で……


(ああ、直美は誠が「本当に好き」なんだ……)


このやり方では、強い気持ちを自由に変えることはできない。
恭子は少し考え、方法を変えることにした。



直美に不自然に思われないように、
あれから三日を空けて、恭子は直美を家に誘った。

恭子の暗示により、
以前よりも催眠術への依存度が高まっている直美は喜んでその誘いに乗ってきた。

今の直美には、誠と接するのと同じくらい、催眠術で遊ぶのが楽しいと感じられていた。





「今日はどんな催眠?」


直美はわくわくとした表情で恭子に尋ねる。


「こないだトマトジュースは克服したから、こんどはトマト丸かじりいっちゃう?」


恭子は直美にかけもしない催眠のことを笑顔で話した。
そのとき恭子の良心はチクリと痛んだが、すぐに理性がかき消した。


(これは、直美と一緒に居られるためのおまじないみたいなものよ。悪いことじゃないわ)


直美は自分からいつものようにベッドに上がった。
枕の方に頭を向けて横になると、ニヤニヤしながら目を瞑る。
恭子はいつものように直美に階段を下りる様子をイメージさせ、催眠をかけ始めた。



※※※



それから数ヶ月経ったある日、
直美は朝、いつものように一人で電車に乗っていた。

混んでいる反対車線とは対照的に、こちらの電車はいつも空いている。
直美はドアの近くの席に座る。優先席の反対側、一番端のお気に入りの席だ。
直美の家から学校までは一本で行けた。都会に近いここの三駅は十分もかからない。

いつものように深く席に座りぼーっとしていると、
少し腹にぜい肉のついた四十代のスーツ姿の男性が乗ってきた。
直美は特に気にもせず前を見てぼーっとしていたが、
男が直美の隣に座った時、少しだけ気温が上がったような気がした。

しばらくは前を向いていた直美だが、
なんだか隣の男が不潔に見えて不快になってきた。

男はいたって普通のサラリーマンに見えたが、直美にはなぜか隣から感じる微かな体温が、どうしようもなく不快に感じられたのだった。

直美は今まで気にしていなかった男性への不快感を特に気に留めず、自然な感じを装って席を立った。
幸い、電車は直美の学校の最寄駅に着いたところだった。



※※※



直美が学校につくと、ちょうど恭子が靴箱にローファーをしまうところだった。
恭子の靴箱は腰よりも低い位置にあり、
恭子はローファーを片手で持つと少しだけ上半身を傾けた。

直美は声をかけようとしたが、恭子のスカートが少し持ち上がり、いつもは見えない太ももの裏が見えたことがなぜか気になり、声をかけられないでいた。
ローファーをしまった恭子は、上履きに履き替えたと同時に直美に気づく。


「あ、おはよう。…どうしたの?」


恭子を見て立ち止まっている直美が不思議に見えたのだろう、恭子は直美に問いかけた。


「あ、ううん、なんでもない、おはよ」


直美は直美で、動揺している自分が不思議でたまらなかったのだが、
それを恭子に言う必要性も感じず、何事もないかのように振る舞った。


(どうしたんだろう、あたし)


直美は自分の変化を少し疑問に思ったが、恭子がすぐに先に行ってしまったので、後を追いかけて早足になるうちに疑問はどこかへ消えてしまっていた。



※※※



教室に入り、自分の席に着いた恭子は心の中で喜んでいた。
直美の変化は計画通り、少しずつだが恭子の思った通りになっているようだった。

恭子があの日からかけ始めた催眠は二つあった。


一つは、直美が男性に対して嫌悪感を抱くようになるという暗示。


誠一人に対しての嫌悪感が持てないなら、
男性という性別に嫌悪感を持つようになればいい。


もう一つは、女性に対して好意的な感情を持つようになるという暗示だった。


それが恭子に対してではなく、女性全般に対してとしたのは、
あくまでも男性への嫌悪感を相対的に上げるためであり、
女性への感情との差をつけることが目的だった。

それに、すでに恭子と遊ぶことを楽しいと感じるようにも暗示をかけているため、二重にかける必要はないのだ。

直美本人はまだ気づいていないが、
周りの女友達の中には以前の直美より打ち解けやすくなったと感じる者もいた。


しかし肝心の誠は幸運なことに、
中性的な顔立ちをしていたためなかなか効果が出なかった。

直美は周りの男子に対して少しずつ距離を置くようになったが、周りも誠に気を使って避けているのだろうと感じる程度で、さほど気にする者はいなかった。

恭子の狙いはじわじわと直美を変えていくことだった。
恭子は少しずつ手応えを感じていた。



※※※



今朝も直美はいつもと同じ電車に乗っていた。
最近は男性に、隣の席に座られないようにドアの近くに立つことが多くなった。

ふと隣に貼ってある広告を見る。
いつだったか、催眠術で虫を食べさせられていた女性タレントが薄着をしてポーズをとっている広告で、エステか何かの宣伝だとわかる。


(キレイな肌…やわらかそうだな)


最初はぼーっと広告を眺めていた直美だったが、
だんだんと自分がその女性タレントだけを見ていることに気がつき、
なんとなく恥ずかしくなって下に目を逸らした。

するとそこには髪の長い女性が座っていて、
十一月にも関わらずぴちっとしたショートパンツを履いていた。
直美はやはり気恥ずかしくなって、ドアにもたれ、視線を逸らした。

直美は自分の変化に戸惑ってはいたものの、この時はまだあまり深刻には考えていなかった。
[ 2017/08/16 19:46 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.5 【 恋慕 】


高校一年の二学期が終わり、無事年が明けた。
あれから半年、恭子の催眠の効果は直美の心をじわじわと変えていった。

しかし、直美の誠に対する思いは強く、依然として仲良く付き合っていた。


(なかなか難しいわね…)


恭子はいつものようにベッドに寄りかかりながら考えていた。
この半年間、肝心の誠に対する嫌悪感を抱かせることはできずに、直美は周りの男子や男性にだけ嫌悪感を抱くようになっていた。
これでは直美が誠を一途に思っているだけで、逆効果である。


(はあ…なにかいい方法はないかしら)


恭子は目を瞑って考えた。
自分が男性に嫌悪感を抱くようになったのはいつからだっただろうか。
浮かんだのは、中学生の時、男子に襲われかけたあの光景だった。

発情した猿のような目つき、荒い息、
そして、制服の上からでもわかるくらいにいきり立った性器。

あの日、抵抗する恭子を無視し、
恭子を襲った男子は性器を入れる寸前で直美に止められたのだった。

最初、腕を掴まれ机に押し倒されると、脚の間に体を捻じ込まれ閉じられなくさせられた。

そしてセーラー服を下着ごとまくし上げられ胸を舐められた。
あの時の汚いよだれの臭い、熱い息と汗からくる湿気、
恭子の唇を食べるかのような勢いでキスをしてくる、不潔な口。

思い出すだけで吐き気がしてくる。思い出したくないのに蘇ってくる。
そして最後に思い浮かんだのが、赤黒くグロテスクにそそり立った性器だった。


(あの時、もし直美が来てくれなかったら…….
だめだ、思い出すと泣きそうになる

同じ女性なのにあの時の直美は、今まで見てきたどの男性よりも、
強く、逞しく、そして美しく見えた。

思えば、あの時からだったのかもしれない。私が直美に魅かれたのは….

悲観的で警戒心が強くて不器用で、
我ながらすごく付き合いづらい性格をしていると思う。

そんな私を全く嫌がる素振りも見せずに、本気で笑って付き合ってくれる。

今まで一度だって直美は私に否定的な見方で接してきたことはなかった。
いつも私を受け入れてくれて、どんなに小さなことでも褒めてくれて、そして傍にいてくれる….

そんな最高の友達を催眠術で好きにしようなんて、本当に最低だと思う。

でも私にとって直美は、例えどんなに泥を被ったって失いたくない存在。
気づいたら、私の中でそこまで大きな存在になっていた。

この計画は絶対に成功させなければならない。

直美のいない人生なんて、もうないのも同じだから……)



※※※



そうだ。
直美に、男性の裸を見せてみてはどうか。
自分が男性に抱く嫌悪感を、直美にも抱かせることができたなら…

そう思い立った恭子はパソコンを開き、画像検索をかける。
表示されたのは、様々な場所、角度から撮った全裸の男性の写真だった。
恭子はトラウマを刺激され少し気持ち悪くなりながらも、直美と一緒にいるため、と自分を奮い立たせて画像を保存していく。


反対に女性の裸の画像も探した。

男性より圧倒的に多い。それほど性的に魅力があるのだろう。
女性の裸体を見ていると、安心感を覚える。そして、少しドキドキとしてくる。

なぜだろう? 同じ女性なのに…
これがもし、直美だったら。そんな風に思ってしまう。
直美のすべてを手に入れたい。
それができるのは、催眠術だけだ。

準備は整った。あとは新しい催眠の内容を考えるだけ。
恭子はネット上で得られる、あらゆる催眠の口上を集め、
自分なりにアレンジして直美にかける催眠時の台詞を作っていった。



空が明るさを失い、静寂が辺りを包む頃

恭子はパソコンを閉じてベッドに上がった。
いつも直美が横になって催眠をかけられる場所。

恭子はうつ伏せになり、枕に顔を埋めてみた。
自分の使っているシャンプーの他に、違う匂いが少しだけ感じられる。

直美の匂い。

不思議と落ち着く気持ちと、どきどきと高鳴る胸の鼓動に、恭子はもう気付いていた。


「すう…はあ…」


ゆっくりと深呼吸をしてみる。
いつの間にか恭子は眠りについていた。



※※※



それから数日後、
いつものように直美に催眠の導入をした恭子は、考えていた暗示をかけた。


「最近あなたは男性が傍に来ると、不快な気持ちになりますね?」


こくり、と直美が横になったまま小さく頷く。
これが半年以上、催眠術をかけ続けてきた成果である。

電車の中で席が空いているにも関わらず、ドアの近くに立ったり、
以前よりも男子に挨拶をする回数が減ったり、
最近の直美の生活を見てても、直美が男性に対し不快感を得ているのは明らかだった。

恭子は暗示の言葉を続ける。


「あなたは男性と体の関係になることをとても恐れています。なぜなら男性とのセックスはとても痛くて怖いものだからです」


直美は横になったまま、恭子のしゃべる言葉を聞き入っている。

直美はまだ誠とキスをする程度の関係だった。

誠が奥手なのか、直美が奥手なのか、原因がどちらにあるのかはわからない。
でも高校生にもなれば、いつそれ以上の関係になってもおかしくはない。

現に同じクラスの女子でも、初体験を済ませた者は何人もいる。
二人が心だけでなく、身体でも結ばれるようになれば、催眠術で直美と誠の距離を開かせるなんて、もうできなくなるかもしれない。


(それだけじゃない….直美が、男の身体を受け入れてしまうなんて絶対許せない….)


恭子は震える心を落ち着かせながら暗示をかけ続けた。


催眠をかけられている途中の記憶は失敗しない限り覚えていないので、ある程度なら恭子の思惑通りに暗示をかけることができる。
しかし一度の効果は薄く、何度も同じ催眠を繰り返し、徐々に深化させていかなければならなかった。


「それでは体をゆっくり起こし、目を開けてください」


恭子がそう言うと、直美は指示通りにゆっくり体を起こし目を開け、どこか虚ろな表情で恭子のことを見た。

恭子は用意していたノートパソコンを開き、
保存していた全裸の男性の写真を開く。
それをベッドの上で上半身を起こした直美に見せた。


「見て、これが男の人の身体。男の人は怖いわよね?」


恭子の問いかけにあまり同意していないのか、直美はぼーっとした表情で画面を見るだけだった。

今までの暗示の効果で、不快な感情は抱いているのだろうが、
男性を「怖い」と認識する暗示はかけてこなかったので、この反応は当然と言える。


恭子は部分部分を指差して言う。


「これは男の人の腕。女性よりもずっと太くて、力が強い。押さえつけられたら最後、絶対に敵わないわ」


恭子は自分の襲われかけた体験をもとに、直美に強い恐怖心を与えようとした。


「直美、聞いて。私はあの日、この腕に押さえつけられて服を脱がされたの。
いくら抵抗したってビクともしない。もしこの腕で殴られたりでもしたら、大抵の女の子は痛くて気絶してしまうわ」


恭子は次々と男性の体を指しては直美に恐怖心を植え付けるように暗示を入れていく。

女性が男性に集団で強姦されている画像を見せては、
筋肉質で太い脚は女性を蹴り飛ばして動けなくさせるもの、
厚い胸板は抱きしめられると息ができなくて苦しいもの、
白く光る歯は汚くて臭いよだれまみれ、
醜悪な眼は常に女を犯すことを考えている……


新しい暗示をかけるごとに、直美の表情は青白く硬くなっていった。


そして最後に大きくそそり立つ男性器の写真を出してこう言った。


「これは男性の性器。本物はもっとグロテスクで大きくて、すごく臭くて気持ち悪い、何か別な生き物のような形をしているわ。見ているだけで吐きそう」


直美は見慣れぬ男性の性器を見て、あまりにインパクトが大きかったのか、
食い入る様に見つめ、恭子から与えられる第一印象を自分の中に浸透させていった。

恭子は続ける。


「私を襲おうとしたやつはもっと反り返った性器をしてて、あんなものを入れられたら、お腹が裂けてしまうかもしれない」


恭子は自分のお腹を押さえ、悲痛な表情で直美に訴えた。


「無理やり触らされたけれど、生暖かくて気持ち悪い、あんなものが男性にはみんなに付いているのよ」


直美の表情がはっきりとわかるように歪む。
直美の中で、男性器への印象が徐々に変わってきているようだった。


「臭いも蒸れて饐えた臭いがして吐き気が止まらなかったわ…」


だんだん過去のトラウマを思い出して、怒りと吐き気で興奮した恭子は、
いつの間にかベッドのシーツをきつく握りしめていた。
そうでもしなければ耐えられないくらい、恭子にとっては最悪の記憶だったのだ。

恭子は、自分が抱く男性への恐怖心と嫌悪感が直美にも出るように暗示をかけた。
恭子からの暗示があまりに感情が籠っていたため、
直美は画面を見つめているものの、身体は震え、すぐにでも顔を背けたい様子だ。




恭子は一度深く息をつき、自分の気持ちを落ち着かせると、
次は反対に女性の全裸の写真を画面に表示させた。


「直美、次はこれを見て。これはとても綺麗なものなの。
あなたは女性の裸を見ると、すごく見とれてしまう」


落ち着きを取り戻した恭子の声音は、
まるで女性の肌のように柔らかいものへと変わっていた。


「女の人は好きよね?」


直美は少しだけ顎を動かし、こくりと頷く。
今までの暗示の効果があるためか、動きは滑らかだ。


「そう、女性の体は清潔で良い匂い、そしてとっても気持ちがいいものなのよ」


男性の時と同じように、部分部分を指差しながら暗示を入れていく。


「まず女性の頬。触ってみて」


恭子は直美の手を取り、自分の頬へと持っていく。


「ね、すべすべしてるでしょ?
女性の頬は何も生えていなくて清潔だけれど、
男性にはみんなヒゲが生えていてチクチクするの。
すべすべした頬の方が、触った時に気持ちいいわよね」


先程、男性の裸の画像を見ていた時とは打って変わって、
直美の顔の筋肉は弛緩し、表情も穏やかだ。
直美の手を元の位置に戻し、画像を指して続ける。


「女性の手、女性の脚…どこを触っても肌は柔らかく、白くてふわふわしてるわ。細いから繊細で、色っぽさもあるのよ。太ももの内側なんて特に柔らかいわ。
枕にして寝ちゃいたいくらいの安心感があるの」


直美は全身の力を抜き、恭子の絹のような声音に身を任せている。
そして恭子は直美に近づくとこう言った。


「わかる? いい匂いするでしょ? これが女性の匂い。
ベビーパウダーみたいで落ち着くでしょ?」


直美はすんと鼻を動かすと、
肺にまで恭子の匂いを行き渡らせるかのように、ゆっくりと深呼吸をした。

最後に恭子はパソコンを閉じると、直美に質問する。


「男の人は、好き?」


直美は先ほどの恭子のリアルな話を思い出したかのように、顔をわかりやすく歪めた。


「女の人は、好き?」


直美はゆっくりと、それでいてしっかりと首を縦に振った。

そんな直美を見ていると、
恭子は直美への独占欲、支配欲が満たされるような気がしていた。
目の前には大好きな直美が私の思い通りになる状態でそこにいる。

安心してこちらに身を預けている。

恭子はぞくぞくとした小さな震えを感じた。


いつしか直美を見つめる恭子の目は、大好きな親友を見つめる目ではなく、
性的な対象を見つめる目へと変わっていた。
[ 2017/08/18 20:01 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.6 【 拒絶 】


恭子が直美にかける催眠の内容を変えてから約二ヶ月経った頃、
直美は悩んでいた。

放課後、いつものようにテニス部に通い、練習をしていたときのことだった。


「危ない! 直美!」


ドン、という音がして右肩に鈍い痛みを感じた。
相手が打った硬式のボールが直美の右肩に当たったのだ。


「大丈夫?」


心配そうな顔をした友人たちが直美にかけよってくる。


「あはは、ごめん大丈夫、ぼーっとしてた」


直美は笑って、集まってしまった友人たちに心配ないというところを見せる。


「もー最近直美いつもそうだよ、どうしたの?」


観察力の鋭い一人の友人が、直美に笑いながら聞いてくる。
顔は笑顔でも、心配していることはひしひしと伝わってきた。


「ごめんごめん、なんでもないの」


直美はそう言い、飛んで行ったボールを拾いに行く。


(おかしいな…)


直美は最近、部活に集中できないでいた。
原因は友人たちのスコートだった。

強い風が吹き、近くにいた友人のミニのスコートが翻った。
直美は無意識にそちらに視線を向けてしまう。

よく焼けた肌、健康的に張りのある太もも。
それがスコートからこれ見よがしに伸びている。
瞬間、直美は首をぶんぶんと振って邪念を振り払った。


(何考えてんの、あたし! )


最近の直美は部活中も友人たちの脚が目に映るたび、集中をかき乱されていた。
これまでこんなことはなかったのに。しかも、女の子に対して。

日は落ち、暗くなった頃、部活帰りの直美は歩きながら一人で悶々としていた。


(なんでこんなに女の人に目がいっちゃうんだろう、今までこんなんじゃなかったのに)

(この前も、キョウちゃんの太ももに目がいってしょうがなかった)

(露出の高い服を着てる人とか見ると、恥ずかしくなっちゃうし)

(このままエスカレートしたら、
いつかあたしは女の人に対してエッチな気分になっちゃうんじゃ…?)


ふと、頭に女性同士がキスをしている姿が思い浮かび、直美は慌ててその想像をかき消した。


(女同士なんて気持ち悪い、変態みたい)


様々な嫌な考えが頭の中をぐるぐるとまわる。

元々、性的にノーマルな趣向を持つ直美が、恭子の催眠によって女性に興味を持つように暗示をかけられていたとしても限度があった。

いくら男性に対して嫌悪感を抱くようになろうとも、
基本、恋愛やセックスは男女で行うものだという認識が直美にはあり、
長年の生活で培ってきた経験が、深層心理で女性同士の恋愛への拒否反応を示したのだ。

ましてや直美には誠という最愛の恋人がいる。
その誠を差し置いて女性同士の触れ合いをイメージするなど、直美の一途な性格が許さなかったのだ。

家に着いたとき、直美はついに独りごとを言った。


「あたしが好きなのは、誠なのに…」


誠への愛の深さと、恭子からの催眠の影響で、直美は自己嫌悪に陥り始めていた。



※※※



そのころ、家族も直美の変化を感じつつあった。


「直美、どうしてお父さんの下着と自分の下着を別々の籠に入れてるの?
洗濯機二度回さなきゃいけないでしょ」

「やだ、お父さんの下着と一緒に洗わないでよ。臭いが移っちゃうでしょ!」

「何、その言い方、お父さんに失礼でしょ!」

「まぁまぁ、母さん。直美もそういう年頃になったんだよ。
母さんも昔はそういう時期があっただろう?」

「う~ん、そう言われてみれば、そういう時期もあったかもしれないわね」

「大学生にでもなれば自然と直るものだし、あまりきつく言わなくても良いんじゃないかな?」

「もーう、お父さんは直美に甘過ぎるのよ」

「ははは、愛する娘だからな。でも直美、お父さんは寂しいぞ~」


直美の父親に対する反応を、
ただの反抗期としか思わない両親は、特に気に留めていなかった。


「おねえちゃーん! マルオカートで遊ぼうよ!」

「おっ! いいね~。ユウくんは前よりもマルカ上手くなったかな?」

「うん、いっぱい練習したからね! 今度は負けないよっ!」


直美には弟もいたが、そもそも弟のことは男性としてみていなかったので、嫌悪感を持つことはなかった。
そのため、変化を感じつつも直美のことを異常だと感じる者はいなかった。



※※※



朝が来て、学校に着いた時も直美の憂鬱は晴れなかった。


「はぁ…」


直美は大きくため息をつくと、腕で枕を作り机の上に突っ伏した。
横を見ると、またクラスメイトの短いスカートが目に入る。


「直美、どうしたの?」


ハッとして起き上がると、そこにいたのは恭子だった。


「キョウちゃん…」


恭子は見るからに心配そうな顔でこちらを見ていた。
実際のところ心配しているのではなく、
ただ様子を見に来ただけなのだが、直美にそれがわかるはずもない。


「ううん、なんでもない、最近ちょっと調子悪くてさ、それだけだよ」

「本当?」


恭子は表情から直美の状態を読み取っていた。


「だったら、また催眠で解決してみない?」


恭子の意外な提案に驚く直美。


「催眠…?」

「そう、好き嫌いをなくせたように、調子もよくできるかも」

「ほんとかなー」


直美は少し笑顔を見せた。

自分の変化の原因が催眠にあると気づいていない直美は、
恭子の提案を受け入れ、放課後恭子の家に行くことにした。



※※※



二人で歩く帰り道、恭子は考えていた。もちろんこれからかける催眠についてだ。

階段を登っていくとだんだんと、直美との距離が離れていくことに気づく。
直美が、ゆっくりと登っているのだ。
恭子は何も言わずに登り切ると、いきなり振り返った。

ハッとして直美はすぐに目を逸らしたが、
直美のいる位置から恭子の下着が見えることは、言わなくてもわかっていた。


(効いてるわね)


恭子は内心微笑んで、傍目には何事もなかったかのように振る舞った。


「どうしたの、先行っちゃうよ?」

「あ、うん、ちょっと待って」


直美は慌てて階段を駆け上がる。
二人は並んで家に向かった。



※※※



「最近あなたは女性のことで悩んでいますね?」


恭子はいつものように直美を催眠状態にさせ、ベッドの横から問いかける。
こくり、と直美は頷く。


「女性の肌ばかり見てしまうとか?」


恭子は直美にかけた催眠をもとに予想をして、直美の心理状態を当てていく。
その問いかけにも頷く直美。


「同じ女性なのに、女の人の身体に興味を持つのはおかしなことだと思っている?」


催眠状態にありながらも、自分の心を見透かされ、驚いた表情を見せる直美。


「ましてや、女同士のキスなんて論外、イチャイチャ抱き合うのは男女ですることで、女同士でするのは間違っていると思っているでしょう?」


全てを当てられて、気まずそうな雰囲気の直美。
ゆっくりと恭子の問いかけに頷く。



予想通りの答えだ。

恭子は直美に対して、女同士に興味を持つように暗示をかけてはいたが、
女同士への抵抗感を薄める暗示はかけてはこなかった。

自分は直美に助けられた時から、同性の直美に魅かれる感情を持っていたので、
そこまで抵抗感はなかったのだが、元よりその気のない直美は、
ずっと抵抗感を持ち続けていたのではないだろうか? 

恭子はそう考えていた。

以前に比べて元気のない直美、原因がそうであるならば、解決方法はある。

恭子はいつものように、絹のように柔らかい声音で直美に語りかけた。


「直美みたいな年頃の女の子が同性に惹かれるのはよくあること。
女子校の生徒だって女の子同士でイチャイチャしてるでしょ?
あなたが嫌悪感を抱く必要はないの」


恭子は横になった直美に優しく語りかける。
直美は聞き入る様に恭子の言葉に耳を傾けている。


「女性の体に興味があるのも普通のこと、
女の人の肌って綺麗で良い匂いがして柔らかそうでしょ?
他のみんなも言わないだけで、心の中で同じことを思っているのよ?」


直美から、先程の気まずそうな雰囲気が消えている。
今までおかしいと思っていたことを、普通のことと諭され安心してきているようだ。


「本当はみんな、女の子にエッチな感情を抱いている。
みんな恥ずかしいから表に出さないだけなの。
女の子同士で恋愛やエッチをしている人達は正直者。
直美だって、女の子にエッチな感情を抱いて良いのよ?」


直美は恭子の声を聞き、恥ずかしそうにモジモジしている。
エッチという言葉に反応してしまったようだ。


「見て、直美」


恭子は寝ている直美の枕の横に座り、スカートを腰の高さまで上げた。
恭子の下着がスカートの生地の下からはっきりと見える。
直美は顔を赤くしつつも恭子の肌と下着をじっと見ていた。


「どう? ドキドキするでしょ? でもそれは全然変なことじゃないのよ?
むしろ普通のこと。今のエッチな気持ちを受け入れて、直美」


直美は恭子の下着を見ながら徐々に呼吸を荒くしていく。


(そろそろ最後の仕上げね)


恭子はベッドから立ち上がり、直美をベッドの上に座らせると、
あらかじめ用意していた、水を張ったボウルとティッシュ、ライターを取り出してこう続けた。


「このティッシュ、これがあなたの感じている女性同士への抵抗感。
もうこんなに薄くてひらひらよ?」


恭子は一枚のティッシュを直美の目の前でひらひらと揺らめかせた。

そしてライターで火をつけると、
ボウルの上に持ってきたティッシュに火をかざす。

ティッシュはボッという音とともに、一瞬で燃え、まるで消えたように見えた。
細かな燃えかすだけがボウルの中に落ちる。


「はい、これで今までの嫌な気持ちはすべて消えました。
これであなたはすごく楽になったはずよ」


直美の表情が一瞬ほっとしたように見えた。

とりあえず、これで自分の変化を受け入れられるだろう。
恭子はいつもの方法で直美の催眠を解き、ゆっくりと起き上がった直美に問いかけた。


「どう? すっきりした?」


直美は自分の顎に手を当て、
少し考えるような仕草をした後、パァっと表情を明るくさせた。


「本当だ…すっきりしてる! ありがとうキョウちゃん」

「どういたしまして。親友だもん、当たり前でしょ」


そう言って微笑んだ恭子を、直美は尊敬と感謝の眼差しで見ていた。
なんて頼れる、優しい人なんだろう。

恭子はまた、自分の思い通りに事が運んだことを内心で喜んだ。
直美は今後、今まで以上に私を頼ってくるだろう。

恭子の計画は順調だった。



※※※



次の日の朝、恭子が学校の最寄駅から出ると、また後ろからとん、と押された。


「お、は、よ!」

「ちょっと直美、危ないじゃない」


恭子は笑いながら直美の頭をつついた。


「えへへー」


直美は昨日とは打って変わり、憑き物が落ちたかのように明るくなっていた。
その証拠に、直美はいつもより一本早い電車に乗って来たらしい。


「ねえ、昨日のテレビがさー」

「またテレビの話ー?」


二人が話していると前から来た自転車が二人の間をゆっくりと通って行った。


「なにあれ、端寄ってくれたっていいのにね」


恭子がそう言うと、直美は「う、うん…」と曖昧な返事をした。
直美は後ろを振り返っていた。

ペダルを漕ぐ、女性の長く伸びた脚。
直美はハッとして目線を戻すと、また歩き出した。


(さっきの女の人、すごく綺麗な脚だった….顔も童顔で可愛かったな)


ここのところ、綺麗な女性や可愛い女性を見ると、ドキドキとする。


(あの人いつもここ通ってるのかな?また会えるといいな♪)


直美は自然とそう考え、学校に着く頃にはもう忘れていた。



※※※



ある日、同じように恭子と直美の二人で学校に着くと、誠が前を歩いていた。


「誠、おはよっ」

「あ、おはよう直美、甘髮さん」

「おはよう桐越くん」


三人は挨拶を交わすと、並んで教室に向かう階段を上った。


「ねえ直美、明後日の土曜日さ、
おいしいプリン屋さんがあるって聞いたんだけど、どうかな」


誠が直美をデートに誘った。


「あ、ごめん、その日はキョウちゃんと遊ぶんだ。ねー」


直美は恭子に同意を求めた。


「ああ、そうなのよ、ごめんね桐越くん」


恭子は直美が誠より自分を優先したことに少しだけ驚き、誠に謝った。

誠は「そっか…しょうがないね」というと「じゃ」と自分の教室に向かって行った。

恭子は内心とても喜んでいた。


少しずつではあるが、直美と誠を離れさせる催眠も効いてきている。
正直、恭子の計画の中で誠は邪魔だった。
誠がいるから、直美が手に入らないのだ。嫉妬すらしていた。

直美を邪魔な誠のものではなく、自分のものにできる。

直美は無意識だが、
少しずつ誠より自分と遊ぶことの方が楽しくなってきているようだった。
前回の催眠から、直美は以前より恭子によく相談をするようにもなった。

恭子は直美を徐々に手に入れつつあった。



※※※



「あーお腹すいた! キョウちゃん、中庭で食べよー」


直美は恭子を昼食に誘った。


「ごめん先行っててー」


まだ四限目の片付けをしていた恭子は直美を先に中庭に向かわせた。


「わかった」


先に中庭に着いた直美は、
ベンチに落ちている花びらをはらい、弁当をそこに置いた。
長かった冬も終わり、あたりは暖かさを増してとても気持ちのいい陽気だった。
ぐーっとその場で背伸びをしていると、少し遅れて恭子が駆け寄ってきた。


(あ…綺麗…)


直美は木漏れ日の中、
こちらへ駆け寄ってくる恭子を見て、なんとなくそんなことを思っていた。


「綺麗……」

「へっ?」

「……あ、ごめんなんでもない!」


直美はつい考えていたことを口に出してしまい、赤くなる。
幸い恭子は聞き取れていなかったらしく、ベンチに座り昼食を広げている。

いつも直美は母の手作り弁当、
恭子は購買で適当に買ったパンや弁当を食べていた。
二人でベンチに座り、心地いい気温の中昼食を食べる。

恭子はフライドポテトを何本か食べると、
油と塩のついてしまった親指と人差し指を軽く舐めた。


(あ……)


恭子の薄い唇から覗く赤い舌、それが恭子の細く綺麗な指先を舐めている。
直美は胸がドキドキするのを感じ、目を伏せた。


「どうしたの?」

「あ…ううん、なんでもない」


恭子は不思議そうな顔をしたが、またポテトを食べ始めた。
[ 2017/08/20 00:25 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.7 【 誠 】


三人は高校二年に上がり、夏が来た。


恭子の催眠は依然として続き、直美の性嗜好もじわじわと変わっていった。
特に恭子の催眠による直美の男嫌いは顕著になっていた。

直美は電車で隣に男性が座るなんてもってのほか、クラスの男子のことも極力避けるようにしていた。

男性は臭くて汚くて気持ちの悪い生き物だという恭子の催眠が心の奥深くに根付いているのだろう。

恭子は、段々と自分の思い通りに変わっていく直美のことを毎日観察し、より好きになっていった。

しかしまだひとつだけ、恭子の思い通りにいかないことがあった。


「直美、帰る準備できた?」


帰りのホームルームが終わると、しばらくして誠が直美を教室まで迎えに来た。


「あ、うん、ちょっと待って」


直美は急いで教科書をリュックに入れる。
恭子はそんな二人を冷めた目で見ていた。

そう、二人の絆は恭子が予想していたよりも強く、未だに二人の関係を壊せずにいたのだ。


(なにか他の手を考えなきゃ…)


「あ、キョウちゃんも一緒に帰る?」


直美は恭子の方へ振り返り言った。


「あ、うん、じゃあそうしようかな」


なにか二人の仲を崩せる良いきっかけがあるかもしれない。
恭子がそんなことを考えているとは想像もつかない直美は、喜んで誠に報告しに行った。



※※※



「ごめんね、なんか邪魔しちゃって」


恭子は誠に謝った。


「いいよいいよ、人が多い方が楽しいし」


三人で歩く帰り道、話は自然と催眠術の話題へと変わっていった。


「それでね、恭子がわたしのトマト嫌いを治してくれたの!」

「へえ、それはすごいな、甘髪さん、催眠術なんてできるの?」

「ええ、まあ……ちょっとだけね」


そこで恭子はあることを思いついた。
直美だけに催眠をかけてもこれ以上の効果は期待できない。
なら、誠にもかけてみるのはどうだろうか?


「ねえ直美」

「ん?」


恭子は隣を歩く直美の耳元に口を近づけて小さな声である提案をした。


「…おもしろいかも!」


その提案に乗った直美は誠に言う。


「ねえ、今度キョウちゃん家で三人でお茶しない?」



※※※



「おじゃましまーす…」


誠は直美以外の女子の部屋に入るのは初めてなのか、
緊張した様子で恭子の部屋に入ってきた。

この日は休日、
直美と誠は、恭子の家でお茶をした後、正午からデートに出かける予定だった。


「もー緊張しないでいいよ、あたしの部屋みたいなもんだし?」

「なによそれー」


恭子が直美に提案したのは、誠にも催眠術をかけてみないかということだった。
誠のことが好きな直美は三人で遊べることを喜んで了承し、今に至る。


「じゃあまず直美に催眠術をかけてみるね」

「えっ? あたしにかけるの!?」

「最初は桐越くんに興味持ってもらわなきゃ。お手本よ」

「ぶー……わかった」


直美は人前で催眠状態を見せるのが恥ずかしいのか、
少し渋りながらも恭子の言うとおりにする。
いそいそとベッドに上がり薄いタオルケットの上に横になる直美。


「変な顔してたらすぐ起こしてよ?」

「はいはい」


恭子はそう言うといつものように催眠をかけ始めた。


「では目を閉じて、リラックスしてください」


目を閉じる直美をベッドの横に座った誠が見守る。


「あなたは今とっても心地の良い場所にいて、階段を降りています」


直美は何度も聞いた、恭子は何度も言ったセリフを、はじめて誠の前で披露する。


「一段…二段…だんだんあなたは心の中に降りていきます」


誠はときおり恭子の顔を見ては、直美に視線を戻す動作を繰り返していた。


「はい、今直美は催眠状態になりました。そこで桐越くん」

「え、僕?」


直美の安心しきった顔を興味深く見ていた誠は、
突然恭子に話を振られ、驚いて恭子を見た。


「そう。なにか最近直美のことで悩んでることはない?」

「悩み?」


誠は腕を組んで考える仕草をした。


「直美との仲はうまくいっているし……
しかも最近はなんだか一途に思ってくれているみたいで嬉しいくらい……あ」

「なにかあった?」


誠はなにか思い出したように腕組みをやめて恭子に向き直った。


「恥ずかしい話なんだけど……もう僕ら付き合って結構経つんだけど、
最初の頃より好きって言ってくれなくなったかも」


誠は少し顔を赤らめながら言うと、頭をポリ、とかいた。
恭子は男子高校生からそんな女子のような悩みが出てくるとは思わなかったので、少し拍子抜けしながらも、顔には出さずにこう言った。


「わかりました。
じゃあ本当は直美が桐越くんのことをどう思っているか、催眠で聞いてみるわね」


恭子は再び直美の方を向くと、催眠を続けた。


「ゆっくり体を起こして、目を開けてください」


直美は言われた通りにゆっくり体を起こすと目を開けた。


「あなたは桐越くんのこと、どう思っていますか?」


恭子が尋ねると、少しの間、誠を見て


「愛し…ています」

と言った。


それを聞いた誠は途端に顔を真っ赤にして、


「…ありがとう、直美」

と言った。


恭子は胸がちくりと痛んだが表情を変えずに誠に向き直った。


「どう?」


誠はハッと我に帰ると、そこに恭子がいたことを今思い出したかのように言った。


「あ、甘髪さん、すごいね、催眠って」


恭子はそれを聞くと直美の方を向いて、いつもの通り催眠を解いた。


「おはよう、直美」


誠はまだ催眠が解けたばかりでぼんやりとしている直美の手を取って言った。


「…へ? あ、そっかあたし催眠を……」


直美はそこまで言ってから恭子に向かって言う。


「あ! どうだった? どんな催眠かけたの!?」

「…ふふ、秘密」

「え〜!!」


そんなやりとりを見て笑う誠に、恭子はさも今思いついたかのように提案した。


「どう、桐越くんも催眠かかってみない?」

「そうだよ! やろうよ!」


普段の催眠の内容を知らない直美は、誠に催眠を勧める。
恭子は少し考えてこう言った。


「そうね……桐越くんは心と体が安らぐような催眠をかけましょうか。
直美も見てるから、変な催眠はかけられないしね」


恭子は冗談らしくそう言うと誠の様子を伺った。


「うーん…じゃあ、お願いしようかな」

「じゃあ、そのままベッドに寄っかかってくれる?」


恭子は、誠のことを男として見ていたのでベッドの上には上がらせなかった。

恭子の一番の目的は、誠の催眠耐性を探ることだった。

もし直美と違って催眠にかかりにくい体質だった場合、
この計画は練り直さなければならない。

だがそれは恭子の杞憂にすぎなかった。
直美ほどではないが、誠も催眠にかかりやすい体質だったからだ。


「目が覚めた?」


恭子の宣言通り心と体が休まる催眠をかけられた誠は、ゆっくりと目を開けた。


「どう?」


直美は心配そうに誠の顔を覗き込む。


「ああ…なんかすっきりしたよ。体が軽い、リラックスできたみたい」


誠は片手で自分の肩を持って腕を回す。
恭子の計画通り、誠は催眠に対して好印象を持ったようだった。


「あ、もう十一時だ、そろそろ行かなきゃ」


直美は時計を見て思い出したように言った。
玄関に出て恭子は二人を見送る。


「また二人で遊びにおいでよ」

「うん! またくるね」


直美はそう言うと、誠と手をつないでデートに行ってしまった。

それを見た恭子は笑って振り終えた手を下ろし、きつく握りしめる。

(本来そこにいるべきは私なのに。愛していますって?)

(…落ち着いて、焦ったらだめよ。まずは桐越くんを、催眠で変える)

恭子は新しい計画を立てていた。



※※※



それから何回か、恭子は二人に催眠をかける機会を得た。

睡眠時によく眠れるようになる催眠、
スポーツで自分の力を最大限に発揮できる催眠など、
恭子は生活の手助けとなるような催眠を二人にかけた。

すぐにでも計画を行動に移したい恭子だったが、
自分の嫉妬心や焦りを落ち着かせ、二人を完全に信用させることに努めた。



そしてある日、恭子は行動に出た。


「ねえ、今度は二人一緒に催眠をかけてみない?」


場所はいつもの恭子の部屋、三人で集まった時のことだった。


「二人一緒?」

「そう、別々にやっていると時間がかかるのよ。今日は学校帰りでしょ、お夕飯もつくらなきゃいけないし…」


直美はいつも恭子に催眠をかけてもらっているので、特に考えもせずに頷いた。


「桐越くんは?」

「ああ、大丈夫だよ」


普通なら警戒するところだが、恭子が直美の親友であること、
直美が普段から催眠を受けているが、何も悪い影響がないこともあり、
疑う心配はないと誠は判断した。

ふたりの了承を得た恭子は、
直美をベッドに寝かせ、誠をそのベッドに寄りかからせる。


「では始めますので、二人とも目を閉じてください」


二人は指示通りに目を閉じた。


「ゆっくりと呼吸をして、リラックスしてください」


誠が息を吸い、直美が体勢を調節する。


「今日は二人でとても心地のいい場所に来ています。そこに下へ降りる階段がありますね」


恭子は二人の顔、表情を見ながら続けていく。


「では降りていきましょう。一段…二段…そこはあなたたちの心の中です」


恭子はまず、直美に向かい暗示をかけた。


「直美、あなたは今とても心が安らかです。
まるで草原の中で寝転がっている感じ。
空は晴れていて暖かく、とてもリラックスしています」


堅く目を閉じていた直美の表情から、力が抜けたように見えた。

次に恭子は誠の横に来ると、今日の目的であるいくつかの暗示をかけ始めた。


「私は恭子、わかるわね?」


少し声色を変えて、艶っぽく喋りかける恭子に、誠がこくりと頷く。


桐越 誠、直美の恋人…


(この男さえいなければ、今頃直美は私のものになっていたかもしれない。
催眠が終わった後、いつも私は誠とのデートに嬉しそうに出かける直美の背中を見送っていた。

最初は仕方ないと思っていた。
私と直美は女同士、直美はノーマルで普通に男子が好きな女の子。

直美を見送る時にいつも感じていた寂しさ、
それは私が小さな頃からずっと持っていた感情。

本当はずっと気付いていた。寂しいって
付け入る隙はないと思っていた。催眠術を知るまでは……

私はここで運命を変えてみせる)


恭子は誠に向き合うと、ゆっくりとした口調で話し始めた。


「あなたは私の顔、小ぶりな胸、制服から伸びる脚、
私の全てが気になって気になって仕方なくなります」


男の本能を刺激した催眠だからかかりやすいのか、
誠の顔が少し上気したように見えた。

今までの経験で、
本当に好きな人を嫌いにさせる催眠は効果がないとわかっている。
誠に直美のことを嫌いにさせる催眠をしたところで全く意味はないだろう。

だとしたら、逆に恭子のことを好きにさせれば良い。

好きにさせれば、誠に催眠をかける機会も増えるはず、
一度の催眠の効果は薄いけど、何度も繰り返しかけることにより心の奥底へ深化していくのだから…


「私にもっともっと催眠をかけてほしくなります」


まずは誠の催眠の機会を増やすこと。
元々、恭子と催眠に好意的な誠にとって、これは受け入れやすい暗示だろう。


「直美以外に好きな女の子はいる?」


恭子は誠に問いかけた。考える間もなく、誠は首を横に振った。
予想をするまでもない答え、直美同様、誠も直美に対して一途な思いを持っているのだ。


「直美はとっても魅力的な女性よね。
明るくて、優しくて、可愛くて、まさに理想の女の子。
でも直美の周りにも魅力的な女性がいるわよね?

特にあなたが今気になっている目の前にいる私…直美ほどではないけど、
綺麗でスタイルが良くて、見ているだけで心が安らいでくるでしょ?」


まるで誠に自分のことをアピールしているみたいで、嫌な気持ちだった。


恭子はそれから、今後の催眠をかける上で重要なことを尋ねた。


「あなたは直美とキス以上のことをしたことはある?」


内心ドキドキしながら、恭子は誠に問いかけた。
誠は少し困ったような顔をして頷かなかった。


(よかった……直美はまだ何もしてないんだ……)


心から安堵する恭子。続けて誠に問いかける。


「直美とキス以上のことをしたいと思いますか?」


誠は少し間を置いて、頷いた。


(やっぱりそうだ。
このままじゃ直美が汚されてしまう….このまま置いておくのは危険だわ)


恭子は差し迫ったような表情で暗示をかけた。


「あなたの貞操観念はとても堅いです。
直美はとても大事な恋人、直美のことを大切に思うなら、結婚まで純潔は守るものよね?」


誠が、付き合っている直美と事に及んだらすべての計画が台無しだ。


「直美とは健全な関係です。
身体が目的で付き合っているわけではないですよね?
本当に好きならキスも結婚まで取っておきましょうね?」


誠はゆっくりと頷いた。
[ 2017/08/22 18:07 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.8 【 スキンシップ 】

季節は秋になっていた。

直美はその日、久しぶりに一人で恭子の家に遊びに来ていた。


「最近どうー? 調子は」


恭子は何気ない会話で直美の様子を伺う。


「うーん最近なんか眠くて……寝不足かなあ」

「ストレス? なんかあったの?」

「いや、うちってさ、庭が広いじゃない。夜になるとね、うるさいんだよねー」

「なにが?」

「なにがって…スズムシよ」



恭子は直美がなにか真剣に悩んでるのかと思って聞いていたので、プッと吹き出してしまった。

「あーなるほどね、スズムシかーあはは」

「なんで笑うのよ〜」

「じゃあさ、それも催眠で解決しちゃう?」

「え、それは助かる!」


そんな流れでいつものように恭子は直美に催眠をかけることになった。



「ゆっくりと体を起こして、目を開けてください」

催眠にかかった状態の直美に、恭子は言った。
今日はいつもと違い、恭子もベッドの上に乗っていた。
二人は向き合う形で座り、恭子はおもむろに直美の手を取り、握った。


「あったかい?」


直美は頷く。
恭子はその手をゆっくり自分の頬にあてがう。


「女の子はどこを触ってもマシュマロみたいなのよ」


その手をすすっと下ろしていき、部屋着に着替えた腕を触らせる。


「ほら、二の腕なんてとっても柔らかくて気持ちいいでしょ?」


恭子は直美に半袖から覗く自分の二の腕をつかませながら言う。

また手を滑らせて、ショートパンツから見える恭子自身の太ももを撫でさせた。


「どう? つるつるしてるでしょ? ムダ毛も生えないし、日にも焼けない、白くてハリのある太ももよ」


直美はされるがままになりながらも、自分の手のひらの感触を確かめているようだった。
そのまま手を上に持っていき、今度はお腹を触らせる。


「私はあんまり肉はついてないけど…こんなところもふわふわなのよ」


直美は無意識なのか、自分から手を動かし恭子のお腹を撫でていた。
恭子はその感触にドキドキしながら、直美の手首を掴み、今度は自分の胸の上に持ってきた。
部屋着の上からでもわかる、直美の手のひらの感触。


「どう? …やわらかい?」


恭子は心臓の音が直美にも伝わるんじゃないかとドキドキしていたが、それ以上に、直美が自分を触ってくれていることの方が嬉しかった。

直美は恭子の問いかけに頷くと、そっと恭子の胸を撫でた。
直美はいつの間にか顔が上気しており、恭子の胸を触りながら熱い吐息を吐いていた。


(直美、興奮してるんだ…)


恭子はそんな直美を見て、鼓動の高鳴りを抑えられなかった。
恭子は直美の手首から手を離すと、直美をふわっと抱きしめた。


「…あったかい?」


直美はこくりと頷く。


「いい匂いでしょ?」


直美はまた頷く。
こうすると、直美の心臓の音が聞こえてくる。直美も、恭子と同じようにドキドキとしていた。


「女の子同士で抱きしめ合うとね、とっても気持ちがいいの。ほら、直美も」


そう言うと恭子は直美の腕を取り、自分のことも抱きしめさせた。
恭子は今にもはち切れそうな自分の鼓動を感じながら、直美の唇を見た。
ピンクで小さくて、程よく潤っていて。
このまま押し倒してしまいたい。ベッドに二人で倒れて、唇を重ねたい。


……だめだ。ここで覚醒させてしまったら、今までの計画が台無しだ。


直美は私を嫌悪し、避けるようになるかもしれない。

(落ち着いて、ここは我慢するのよ)

恭子は一度深呼吸をして自分の心を鎮めると、ゆっくりと直美から離れた。
その時、直美は一瞬寂しそうな顔をしていように見えた。
直美の心の変化が表情に現れたのだろうか?
それとも単に恭子の願望が見せた幻か、どちらかはわからない。


「直美、あなたは今夜から、寝るときのスズムシの音が気にならなくなります」


恭子はベッドから降りると、名残惜しい気持ちで直美のおでこを撫でながら言った。
そして、いつものように直美の催眠を解いた。



※※※



恭子は直美と誠の二人に催眠術を繰り返し行った。
二人とも催眠にかけてもらいたくなるように暗示を受けているので、恭子は比較的楽に作業を行えた。
直美に催眠をかけているうちに、何回もキスをしたい衝動に駆られたが、その都度恭子は必死に耐えていた。
季節は十二月。格段に冷え込む朝、学校に着いた恭子はマフラーを取りながら廊下を歩いていた。


「キョーウちゃんっ!」

「わあ!」


後ろから駆け寄ってきた直美に背中から抱きしめられ、恭子は驚いて大声を出してしまった。


「もーびっくりするじゃない」

「えへへー」


直美はいたずらっ子のように笑う。そんな直美の笑顔も愛おしいと思ってしまうんだから、しょうがない。


「おはよう、甘髪さん」


後ろから誠が声をかける。二人で登校してきたらしい。


「あ、おはよう桐越くん」


恭子は嫉妬の気持ちを押し殺し、何事もないように誠に挨拶をした。


「ねーねー昨日誠と一緒に帰ったんだけどさあ」


直美がそう言いながら恭子の指に自分の指を絡ませてきた。所謂恋人つなぎというやつだ。
恭子は内心ドキドキしながらも直美の話に相槌を打つ。
最近直美は恭子へのスキンシップが多くなった。

ふと後ろを見ると、誠が複雑そうな顔をしている。
催眠をかけてから三人はよく集まって話をするようになった。帰りも三人で帰ることがほとんどだ。
誠は恭子のことが気になるのか、前よりも多く話しかけてくるようになった。
催眠は、確実に効いている。


「年明けたらさ、三人で初詣行こうよ! いいよね、誠」


直美が誠を振り向いて聞いた。


「あ、うん、甘髪さんがよかったらだけど」


恭子の方を見ていた誠が、慌てて答える。


「もちろん、いいわよ」


笑って答える恭子。三人で行動したほうが、何かと都合がいい。
恭子の催眠は、年が明けてからも続いた。
[ 2017/08/24 00:10 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.9 【 浮気心 】

学校が終わり家に着くと、
恭子はいつものように自分の部屋のベッドに寄りかかって座っていた。

今日も三人で下校した。側から見れば、仲良し三人組、といったところか。



ふと、教室での情景を思い出す。
直美は休み時間にいつもスマホをいじっていた。

おそらく誠と連絡を取っていたのだろう。
二人の距離を離すことがこれほど難しいとは思ってもみなかった。

誠はもちろん直美のことを愛しているが、
先日の催眠で確認した通り、直美も誠のことを愛しているのだ。

直美が誠のことを一途に思っている限り、
たとえ催眠術であろうとも二人を引き離すことはできないだろう。


(じゃあ…桐越くんはどうかしら)


恭子は別の視点から考えてみることにした。
幸運なことに自分は女で、世間では美人で通っている。

この容姿を使って、誠を攻略する方が手っ取り早いのでは?

直美への気持ちが強い分、
落とすのは難しいだろうが、恭子には催眠術がある。

催眠によって自分への興味を強く持たせれば、いつかはどこかで隙が生じるはず。


“誠だけを家に呼ぶことはできないだろうか?”


直美と誠が恭子の家に訪れる頻度は以前より増えていたが、
その状態で出来ることは、
お互いに刺激を与えないように催眠をかけるのがやっとだった。

あまり強い催眠をかけると、本人が目を覚まさなくても、
もう一方が目を覚ましてしまう危険がある。

一人なら誤魔化すこともできるが、
見ていない隙に覚醒されたら、対処できる自信がない。


おそらく、そこで二人との関係は終わってしまうだろう……


だが、直美と誠を別々に家に呼ぶことができれば、
もっと安全に、強力な暗示をかけることができる。

恭子は、頭の中で新たな計画を練ろうとしていた。



※※※



ある日の昼休み、恭子はいつも通り直美と昼食を取っていた。


「あーおいしかった! うちのお母さん、卵焼きだけはプロなんだよね〜」

「ふふ、なにそれ」


直美は弁当箱を閉めると、膝に置いたまま背伸びをした。
恭子はそんな直美を見て、猫を連想する。
あぁ…なんてかわいい猫なんだろう。すぐにでも自分のものにしたい。


「ねえ、ちょっと聞いてる?」


直美は焦れたように恭子に問う。


「え? あぁごめん、なに?」

「もーーー。ちょっとさ、図書室行かない? 暖房あたりに行こうよ」

「あ~ごめんね。今からちょっと用事あるんだ」

「そうなの? わかった、ひとりでいこっかなあ」


恭子は直美の誘いを断ると、
パンの袋とジュースのパックを持って、一人で校舎に入っていった。


「桐越くん、いる?」


恭子は普段は行かない教室に着くと、
ドア付近でストーブに当たる男子に声をかけた。

男子は美人で有名な恭子を見て、
少し戸惑ったが、すぐに誠を呼びに行ってくれた。


「甘髪さん、どうしたの?」


呼ばれてすぐに誠が顔を出す。
容姿端麗な二人が向かい合って話をしている。
クラスにいた生徒たちは、興味を隠そうともせず、二人を見ていた。


「直美のことでちょっと相談があるんだけど……
ここじゃ話せそうにないから、今日うちに来てくれない?」


恭子が一人で誠に会いに来たのはこれが初めてだった。
誠は少し動揺したが、困っている人を放っておけない性分だ。すぐに了承した。



※※※



時刻は午後五時。そろそろ来る頃だ。
ピンポーン、と恭子の家のチャイムが鳴った。


「はーい」


恭子は二階から返事をすると、階段を降りて玄関のドアを開けた。
そこには制服姿の誠が立っている。一度直美と帰宅後、引き返してきたのだろう。
恭子は誠を部屋まで案内した。


「ちょっと待ってて、お茶持ってくるから」


恭子は誠を部屋で一人にさせる。

計画通りだ。
だが、気は抜けない。

誠は、初めて一人で彼女以外の部屋に来たことに罪悪感を感じているのか、
それとも気になる女子に誘われて嬉しいのか、複雑な顔をして恭子を待っていた。


「ごめんね、紅茶しかなかったけど良かったらどうぞ」


恭子は穏やかな笑顔で紅茶を差し出した。
女性に耐性のない男子だったら、一瞬で恋に落ちてしまうような笑顔だ。

誠も少し心が揺らいだが、直美という恋人がおり、
なおかつ元々女性にはモテていたので、そこまでの影響はなかった。


「あ、ありがとう」


誠は紅茶を一口飲んでから、恭子に聞いた。


「それで、直美のことで相談って、何かあったの?」

「そう、そのことなんだけど……最近直美がなんだか前と違うのよね。
そわそわしてるっていうか、集中できてないっていうか。
桐越くん、何か知らない?」


恭子はいかにも親友らしく、最近の直美について尋ねた。

誠は最近の直美の様子について思い浮かべた。

誠と一緒にいる時の直美は、以前と変わらず、終始笑顔で楽しそうにしていた。

敢えて以前との違いを上げるとすれば、
綺麗な女性を目で追うことが多くなったことだろうか?

しかし、それについては、
同じ女性として、服装や化粧について参考にしているものだと思っていたし、
実際、以前の直美と比べると、服のセンスはずっと上がっていた。

顔つきだって、以前より大人っぽいと感じることが多くなっていた。


「う~ん、特にこれと言って変ったと思うようなことはないけど、
敢えて言うなら、女の人を目で追うことが多くなったような気がする。
でも僕に対しては変わらず接してくれるよ。直美も特に何も言わないし」

「そう…ほら、私と直美って親友じゃない? 放っておけなくて」

「そうだよね、じゃあ何かあったら言うよ」

「ありがとう、気づいたことだけでもいいから教えてね」

「うん、わかった」


誠は本当に恭子が悩んでいるのだと思い、心配そうな表情で相談に乗った。


「そうだ、時間もあることだし、催眠術ですっきりしていかない?」


恭子は誠に催眠術を勧めた。
誠はチラりと時計を確認した。
夕飯の手伝いの時間を気にしているのだろう。


「いいね。まだ時間あるし…じゃあお願いしようかな」


誠は何も疑いもせずに誘いに乗った。



※※※



ようやく機会を得る事ができた。
ここに直美はいない。いるのは恭子と誠だけだ……


(これで直美がいたら、
かけることができないような催眠術も、かけることができるわ…)


恭子は、先程紅茶を差し出した時とはうってかわって、
獲物を狙うような冷徹な眼をしていた。


(焦ったらダメ……
まずはこの関係に慣れさせて、何度でもここに来るように仕向けなきゃ…)

なろう挿絵-黒百合

恭子は、ベッドに寄りかかり目を閉じている誠に語りかける。


「あなたは、今後一人でも恭子の家に遊びに行きたくなります」


恭子は、直美がいた時に使えなかった“一人で”という言葉を口にした。

親友が自分を除け者にして、自分の彼氏と二人で会おうとしていたら、
直美はどう思うだろうか?

当然、大きなショックを受けるだろう……
覚醒してしまうのは火を見るより明らかだった。


それに恭子自身、直美の前でそういった台詞を吐くのが嫌だったのもある。
恭子が愛しているのは直美だけなのだから……


恭子は続ける。


「なぜなら、あなたは恭子のことが気になるから」


恭子は元々その美貌と女性らしさから、
ほとんどの男性から魅力的に思われていた。

だが、念には念を入れて、
直美一筋の誠には、恭子の魅力を最大限に感じられるようにした。


「あなたは恭子のことを魅力的に感じている。
今日、恭子が一人で教室に来た時だって、内心すごく嬉しかったでしょ?」


誠は困ったような顔をしている。
直美に対して後ろめたい気持ちが出てきたのだろう。


「良いのよ、もっと素直になって? 
あなたと恭子が仲良くなることを、直美はきっと喜んでくれるわ。

だってあの子にとってあなたは恋人で、恭子は親友。
3人仲良くできた方が良いに決まってる。

疾しい関係でもないし、もっと堂々としてて良いと思うの……
あなたもそう思うでしょ?」


恭子は誠への暗示を続ける。


「むしろ、直美のためを思うなら、もっと恭子と仲良くすべきよ。

男性のあなたが気付けないようなことでも、
女性の恭子だったら気付くってこともあり得るでしょ?」


“直美のため”

その言葉に共感を得たのか、誠はすんなりと顔を縦に振った。


「これは全部直美のため、ついでに大好きな恭子と一緒にいられて嬉しい。
恭子の存在はあなたに安心感を与えます。
自分では気付いてあげられない直美の悩みも、
同じ女性の恭子なら気付いてくれる。
恭子と一緒ならなんでも解決できる。あなたはそう感じるようになります」


直美のためを思う気持ちと、恭子に魅力を感じる気持ち、
その両方を織り交ぜながら、恭子は誠への催眠深化を行った。

いつしか誠は、恭子の問いかけになんでも頷くようになっていった。

恭子は最後に肝心の質問をした。


「どう?これからも一人で私に会いに来たくなったでしょ?」


誠は恭子の目を見て、しっかりと頷いた。


「それでは、あなたは日頃の疲れも取れ、
すっきりとした気持ちで目を覚まします」


恭子は、誠に気持ちをリフレッシュさせる催眠を忘れずにかけ、催眠を解いた。


「どう、気分は?」

「ああ…やっぱりすっきりしたよ」


誠はいつものように腕を回してから答えた。


「そっか、よかった。また直美について定期的に知らせに来てほしいな。
……もちろん、直美には内緒で」


『直美には内緒』
そう言われ誠は一瞬戸惑ったが……


(これは、直美のためだ)


少しの後ろめたさを言い訳で消し、頷いた。
[ 2017/08/27 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.10 【 コンプレックス 】


その後、誠は度々一人で恭子の家に来ては、
直美の様子を報告して催眠をかけてもらい、帰って行った。

催眠の内容は、表向きはストレスの軽減がほとんどだったが、
実際には、恭子の計画が着々と進められていた。



まず恭子は、自分の前で誠を裸にさせることに取り組んだ。

今までは直美に裸体の男性の画像や射精映像を見せてきたが、目の前で誠本人がそのようなあられもない姿になり、それを見せつけながら悪い暗示をかければ、二人の距離を開かせることができるのではないか、と考えたのだ。

恭子は誠に催眠をかけては服を一枚脱がさせる、ということを数度にわたって繰り返した。

催眠は学校帰りに行われていたため、
誠はいつも制服姿で恭子の家を訪れていた。
家に入った時点でブレザーは脱ぐものなので、始めはワイシャツからになる。


「あなたは今旅行に来ています。そうね…季節は夏。夏の沖縄よ。周りはみんな半袖。長袖のワイシャツは暑いわね?」

誠が頷きながらネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを上から外していった。


「そうね、そのままシャツ姿になっちゃいましょう」

恭子は男性が服を脱ぐということに嫌悪感を持ち、目を逸らしながら言った。
誠はするりとワイシャツを脱ぐと、軽く畳んで床に置いた。
恭子は誠の半袖姿を見ると、少し首を傾げた。
普段なら感じるはずの嫌な感情を、あまり感じなかったからだ。



(あれ、こんなに白かったっけ?)

誠の腕は夏に見たときよりも日に焼けておらず、男性らしくない細さをしていた。



※※※



次の日にはさらにズボンまで脱がせた。
恭子は、襲われかけたあの日に見た制服の下だけを下ろした男子の姿が重なり、なかなか目を向けられなかったが、ちらりと見てみて、驚いた。

誠の脚は腕と同様に白く、しかもムダ毛が極端に薄かったのだ。
太ももの男性らしい筋肉のつき方はあったものの、細い足首などは女性のそれとほとんど同じだった。



次の週も同様に誠はシャツと下着姿になっていた。

恭子はその時点で震えるほどに嫌悪を感じていたが、同時に他の問題にも気付き始めていた。
誠の体が、思っていたほど男性的ではなかったからだ。

でもまだだ。その下着の中には、グロテスクな性器が隠れているに違いない。
恭子は、あの日見た、いきり立った性器を想像してしまい、目の前でシャツを脱いでいる誠から顔を逸らした。


(やっぱりダメ……でも、直美を手に入れるためよ)


恭子は下着姿の誠を見て、動揺した。
シャツの下には、シミひとつない白い肌が広がっていた。乳首すらも色素が薄く、まるで飾りのように付いていた。


(まさか)


恭子の中で、複雑な思いが大きくなっていく。

「あなたは今脱衣所にいて、これから銭湯に入ろうとしています。下着のままでは入れませんね?…脱いでしまいましょうか」


恭子はトラウマの恐怖から、顔を背けていた。
誠が下着をゆっくり脱ぎ、足元に置いた音が聞こえた。
そろり、と誠の方に向き直る。



なろう挿絵-黒百合



唖然とした。

誠の男性器は、肌同様に白く、親指ほどの小ささで、
いつも直美に見せているような逞しい男性の性器とは、まるで正反対だった。

中学校から今に至るまで、直美とキス以上の関係を持たなかったのは、もしかすると催眠の効果だけではなく、その小さな性器をコンプレックスに感じていて、直美に見せることができなかったからではないか?


恭子は誠の体を見て、少なからずショックを受けていた。
これでは、今までの催眠は逆効果ではないか。

おそらく直美は誠の体を見たら、ネット上の男たちとは違って、嫌悪感を抱かないだろう。
むしろ、嫌悪感を抱かない唯一の男性として誠こそが自分が望んだ相手だと思う可能性すらある。



(どこまで手強いのかしら…桐越 誠)



恭子はショックを受けたが、すぐに考え直した。


(大丈夫、問題ないわ。時間はかかるかもしれないけど、また一から催眠をかけ直せば良いだけ。
いくら小さくて男性器っぽくない形をしていたとしても、精子を出すのは一緒よ。
直美には精子を通して誠に嫌悪感を抱いてもらうことにするわ)


恭子は誠に直美の前で射精をさせ、直美に嫌悪感を持たせるという計画を続けることにした。

これ以降恭子は、直美に男性の全裸画像を見せる際は、中性的で比較的性器の小さい人を選んで暗示をかけるようになった。
[ 2017/08/31 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.11 【 クラス替えの危機 】


寒さは次第に緩和し始め、春の気配が訪れていた。
二時限目、恭子達のクラスでは英語の授業が行われていた。
ネイティブな女教師が生徒の机の周りを歩きながら、教科書を読んでいる時のことだった。

今日の授業内容は予習してあるので、突然当てられても対応できる。
恭子は教科書を眺めながら、これから誠と直美にかける催眠術について考えていた。
前の方の席では直美が教科書も見ずにぼーっと前の席の女子のことを見ている。


「…ミスナオミ! 集中しなさい」


女教師がそんな直美の姿に気づいたのか、いきなり直美の机をトン、と指で叩いて注意をした。


「す、すみません」


直美はいきなりのことに驚いたのか、ビクッとしてから頭を少し下げた。
最近の直美は勉強に集中できていないようだった。

原因はただひとつ、恭子の催眠の効果にあった。
恭子の催眠は徐々に効果を増し、直美は女性をより性的な目でみるようになっていた。

おそらく今日も、前の席のポニーテール女子のうなじを見ていたんだろうと想像がつく。
直美の成績は、目に見えて下がっていた。


(このままいったら、大変ね……)


恭子は少なからず責任を感じていた。
直美のことは大好きだ。大好きだからこそ、直美の将来に迷惑はかけたくなかった。
自分の欲求のためだけに直美の進路を変えさせるのは良くない。
恭子はふと思いついた。


(催眠…勉強にも使えないかしら?)


急激に頭がよくなる魔法のようなものはかけられないが、直美が勉強に集中できるようにして、その間私が教えたらどうだろう。
そこまで考えたところで、チャイムが鳴った。
恭子は教科書とノートを机の中にしまうと、新しく数学の教科書を出した。



※※※



一日の最後の授業が終わり、恭子と直美は帰り支度をしていた。


「直美、もうすぐ期末テストだけど、勉強の方大丈夫なの?」

「それがさー、すごくやばいかも? 最近全然集中できないんだよね。
もし次、赤点とったら、来期は一般クラスに落とされちゃうかも…」


恭子たちの学校は、特進・一般・体育推薦クラスに分かれており、1年に一度クラス替えがある学校だった。
一般と特進のクラス替えは、主に特進クラスの成績下位の者と、一般クラスの成績上位者の入れ替えとなる。
恭子も直美も、特進クラスに位置しており、同じ大学を目指していた。


(もし直美が一般クラスに落とされたら、来期は同じ教室で過ごせなくなる。
それだけじゃない、大学だって違うところに通うことになるかもしれない…)


「直美、私に良い考えがあるの。今日これからうちに来て一緒に勉強してみない?」

「えっ良い考え?行くいく! キョウちゃんオリジナルの勉強法でも教えてくれるの?」


親友の恭子の誘いは直美にとって願ってもないものだったらしく、直美は喜んで誘いを受けた。
帰り際に、誠が直美を迎えに来ていた。
二人はドアの付近で少し喋ると、直美だけ恭子の元に戻ってきた。


「どうしたの?」

「いや、誠が勉強教えてくれるって言ってくれたんだけどね、先約がいるからって断ってきちゃった」


恭子はなるほど、と考えた。



※※※



「やっぱりわかんないよ〜」


恭子の部屋で勉強を初めて十五分、早くも直美が根を上げた。


「そういえば、さっき言っていた良い考えって何なの?」

「うん、それはね」


恭子は英語の授業中に思いついたことを提案する。


「催眠状態で勉強してみない? もっとスルって頭に入るかもよ?」

「催眠? おおっ! なるほど! ……それいいかも!」


直美はベッドに横になった。
そしていつもように恭子が暗示をかけ催眠状態にした。

問題集とノートを広げ、直美がわからないところは恭子が教える。
いたって普通の勉強法だが、ひとつだけ違うことがあった。

直美が絨毯に座りテーブルに向かうと、恭子はその後ろから座り、右手で直美の手ごとシャーペンを一緒に握った。
問題集のページをめくるときは、後ろから恭子が左手でめくる。

二人は体を密着させながら勉強をしていた。体に触れられることに慣れさせるためだ。
恭子は時折直美の体を触った。

直美は制服のまま恭子の家に来ていたため、恭子は短いスカートから覗く太ももをそっと撫でた。

最初は何の反応もなかった直美だが、恭子の左手が太ももの内側を撫でると、熱い吐息を吐いた。
恭子はつつつ、と指で直美の脚のラインをなぞってみた。


「…ん…」


直美は少しだけ身をよじる。
恭子は左手を太ももから離し、直美の左胸を触った。
ドキ、ドキ、と服の上からでも鼓動が速くなっていることがわかる。
恭子はこのまま服の下に手を入れたい衝動に駆られたが、ゆっくりと胸を撫でるだけにとどめた。

勉強は一日五ページと決めてできるだけ毎日繰り返した。
催眠も繰り返しかけることで効果が出てくる。

そして勉強の後は、決まってやることがあった。


「だいぶ勉強したね。気晴らしに動画でも見よっか?」


恭子はそう言うと自分のスマホを操作し、ある動画を再生した。
そこにはいやらしい音を立てながら、女性同士がキスをする映像が流れていた。

直接的な動画を見るのは二人とも初めてだったので、スマホから流れてくる音声や映像に、恭子と直美は釘付けになった。


「んぅ…はぁん…っ」


片方の女性がもうひとりに胸を揉まれて、気持ちよさそうにしている。
恭子は直美の顔を見た。
直美はスマホをじっと見ながら、少し顔を赤くしている。
勉強の時と同じように恭子は直美の後ろから手を回してスマホを見ている。

恭子は直美の胸をちら、と見た。首元の空いた隙間から直美の胸の膨らみが見える。
恭子は自分の体が火照っていることを感じていた。同時に下着も少し濡れていた。
直美の方も、濡れた下着が居心地悪いのだろう、何度か体勢を整えていた。

動画も終わり、恭子は催眠を解いてから直美を家に帰らせた。
恭子には一つ気がかりなことがあった。


(直美の下着…きっと濡れてたわよね)


友達の家で勉強をしていただけのはずが、
下着が濡れていたら不審に思われないだろうか?


恭子は少し考え、二回目からは新たな催眠をかけた。


「前動画を観たとき、下着が濡れて嫌だったわよね?今回からはナプキンをつけてから観ようか」


恭子は動画を観る前に直美にナプキンをつけさせることを徹底した。
そして鑑賞後は、それを恭子の家で外させてから催眠を解くことを忘れなかった。



※※※



「キョウちゃんありがとう! 期末テスト、すごい成績上がったよ!」


恭子の催眠は、直美の成績に大きな変化をもたらした。
誠や恭子の成績にはまだまだ届かないが、一般クラスに落とされる心配はもうないだろう。



それから一カ月後、クラス分けが実地され、二人は高校3年に進級した。
担任の先生にも進級のことでだいぶ心配されていた直美だったが、一般クラスへの降格はなく、
無事恭子と同じ特進クラスに残ることができた。

単純に直美とまた1年同じ教室で過ごせることになったのも嬉しかったが、直美が以前より自分を頼ってきてくれることが、恭子はなによりも嬉しかった。
直美の方も楽に勉強ができるので、催眠術を勉強に取り入れるやり方に満足していた。



※※※



その日の夜、恭子は何も知らないかのようにラインを送った。

「最近、あんまり桐越くんといるとこ見ないけど、うまくいってるの?」


進級してからというもの、直美は以前よりも誠とデートに行く回数が減っていた。
元々は一般クラスに落とされないように、誠とのデートを自粛して、
恭子との勉強を優先していたのだが、進級してからもその生活はあまり変わらなかった。


「ん、やっぱり受験中は、誠とデートするのは、ほどほどにした方がいいと思うんだよね。今回の件でだいぶ懲りたしさ。でもキョウちゃんとの勉強はこれからも続けるよ! 成績も上がるしキョウちゃんとも遊べるし、まさに一石二鳥って感じ♪」


直美はそうラインを返したが、実際は恭子から受ける催眠が心地良いというのも理由の一つであった。



※※※



それから数ヶ月、恭子の計画は順調に進んでいた。
それは直美に対してもそうだったが、同時に誠に対しても催眠計画を進めていた。

「女性の裸は好きよね?」


ゆっくりと頷く誠。
誠は今日も一人で恭子の家を訪れ、催眠をかけられていた。
あれから恭子は、誠に直美や恭子以外の女性のことも魅力的と思えるように催眠深化を進めていた。

直美に見せたように女性の裸の写真を見せ興奮するように暗示をかけ、
催眠中に興奮することに慣れさせたのだ。


「さあ、目を開けて」


恭子はゆっくりと目を開ける誠の前にノートパソコンを置く。
その画面には、女性同士がキスをする画像が表示されていた。


「どう?『興奮』するわよね?」


最初はぼんやりと画像を眺めていた誠だったが、だんだんと顔が赤くなっていくのがわかる。
恭子は画面を変えて、今度は女性同士が喘ぎながら性器を擦り付けている動画を流した。


『ぁあんっ気持ちいい…っ』


パソコンからは女性の官能的な声が流れてくる。
恭子は誠のズボンの一部が盛り上がっていることを確認してから言った。


「どう? 興奮してきたでしょ、だんだん、股間のそれ、いじりたくなってきたわよね…?」


恭子は誠の右手を取り、誠自身の性器へと誘導する。
誠は荒い息を吐きながら、自分の性器を撫で始めた。


「直に触ってもいいのよ? ここでは誰にも見られないわ。オナニーしたいでしょ?」

なろう挿絵-黒百合


誠は我慢できないのか、興奮で震える手でチャックを下ろすと、硬くなった性器を取り出して、扱き始めた。

恭子は、誠の性器が小さいため最初はそれを眺めることができたが、しばらくするとトラウマから嫌悪を感じ、目を逸らした。

誠の手の動きは次第に速くなり、「うっ」と声を漏らすと同時に射精した。

さいわい誠は自分の左手を使い精子を受け止めたため、恭子の部屋が汚れることはなかったが、その匂いに吐き気を催した恭子は急いで窓を開けた。

誠は催眠中に自慰をしても覚醒することはなかった。

これは恭子の計画にとって、大きな一歩だった。
そして恭子はこれからの計画のため、誠の家での行動にも催眠をかけることにした。


「あなたはこれから、毎日家に帰る度に自慰がしたくなります。それも、女の子同士がエッチしている姿を想像してね。男の子なら、普通のことよね?」


誠は目を閉じながら頷いていた。

それ以降、恭子は誠に自慰をさせる時はコンドームを使わせるようにした。
出した精子が辺りに散らばるのを恐れたのと、誠の手に付着した精子の匂いを消臭するのに困ったからだ。

また、自宅できちんと自慰をしているか確認も怠らなかった。
誠はいつの間にか恭子のことを「恭子さん」と名前で呼ぶようになり、二人の距離は徐々に近づいていった。
[ 2017/09/01 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.12 【 決壊 】


「あ〜やっとテスト終わった! キョウちゃん、ドーナツ食べに行こ!」


「そうね、そうしようか」


チャイムも鳴り、ガヤガヤとする教室の中、直美は恭子に駆け寄って行った。
低迷していた直美の成績もどうにか持ち直し、一学期の中間テストが終わった。
恭子は直美を無事にクラス替えの危機から救った後も、定期的に恭子の家で勉強会を開いていた。

もちろん催眠を使った勉強だ。


以前同様、恭子は毎回の勉強終わりに二人で女性同士の動画を見ることを欠かさなかった。

直美の反応は様々だった。

顔を赤くすることもあれば、呼吸が荒くなることもあり、
最近では顔もすっかり上気して、まるで片方の女優に自分を投影しているかのように見えた。
動画が始まる前に恭子は直美にナプキンを付けさせるようにしているのだが、
催眠を解く際に外させるナプキンの濡れ具合は、初めの頃に比べて激しさを増していた。

初めは、少し染みが出来る程度だったのが、
徐々に大きな染みを作る様になり、ナプキンの面積を半分埋めるほど濡れるようになってしまった。

普段は表には出さないが、心の奥底では女性同士の身体の関係を受け入れ始めているのだろう。


恭子は思った。

これからもじっくりと直美の心に女同士の良さを染み込ませていこう……
直美が自らそれを求めるようになるまで何度でも何度でも……



※※※



「ん〜ドーナツ最高!」

「もー直美、口にドーナツについてるよ」

「え、どこどこ?」


ここ、と恭子が自分の口を指差して示すと直美は舌で唇を舐めた。
赤い舌がちら、と光って見える。
恭子は一瞬ドキッとしたが、すぐに目線の先をドーナツに変えた。
勉強中の直美の姿が頭に思い浮かぶのか、恭子も直美のちょっとした動作に反応するようになっていた。


(あの柔らかそうな唇と思いっきりキスをして、舌同士を絡ませ合いたい・・)


催眠中、いつも恭子が望んでいることだった。


(でも、もしキスをして覚醒させてしまったら・・)


その不安が恭子に、最後の一歩を思いとどまらせていた。



※※※



それから数日後、中間テストの採点が終わり用紙が返却された。

直美のテストの結果はまずまずといったところだった。
決して成績が良いわけではないが、
この調子で恭子に教えて貰えば受験は大丈夫だろう。
直美の成績が安定したところで、恭子の計画は次の段階に移っていた。


「直美、昨日美味しいケーキ買ったんだけどさ、久しぶりに桐越くんと二人でうちに来ない?」

「ええ! いいの? 行く行く!」


恭子と直美はいつもの通り二人で昼ごはんを食べながら話していた。


「ねえ何ケーキ?」

「それは秘密」

「え〜!」

「うちに来てのお楽しみね」


直美の頭の中はケーキでいっぱいのようだった。
もちろん恭子の目的はケーキを二人に振舞うことではない。
口実なんてなんでもいいのだが、甘いものに目がない直美にはこれが一番の口実だった。



※※※



「ん〜おいしい!」


直美は恭子の部屋でくつろぎながらチーズケーキを頬張った。


「ほんとにいいの?僕までもらっちゃって…」

「いいのよ、人数が多い方がおいしいでしょ?」


恭子は誠の方にもチーズケーキを差し出した。


「じゃあ、いただきます」


誠は遠慮がちにそう言うと、一口だけケーキを頬張り、目を丸くした。


「おいしいね、これ!」

「でしょ?これ結構有名なところのやつなのよね」


恭子は誠に微笑むと、自分もケーキに手をつける。
今日は早帰りの日だったが、
三人が食べ終わる頃には時刻は十六時をまわっていた。
恭子は今日の本題をさりげなく問いかけた。


「二人とも最近どう? なにかまた催眠で解決したいこととかある?」

「う〜ん、僕はやっぱり、頭をすっきりさせたいかな」

「あたしは…最近朝起きるのがつらいから、目覚めをよくする催眠とかできたりする?」

「わかった、全然オッケーよ」


恭子は二人をいつもの定位置に移動させ、目を閉じさせた。



※※※



「それでは二人とも、ゆっくり目を開けてください」

直美と誠を催眠状態にさせた恭子は、二人に最初の指示を出した。

「それじゃあ直美は、起き上がってベッドに座りましょうか」

直美がゆっくりと起き上がり、ベッドの上で膝を立てて座った。
恭子は誠の耳の傍まで口を近づけると、静かな声で暗示をかけ始めた。


「桐越くん。ここはあなたの夢の中の世界。
あなたは今、恭子の部屋で寛いでいます」


誠は全身の力を抜いて、リラックスし始めた。


「部屋の中には直美と恭子もいますが、二人とも裸で衣類を身に付けていません。でも慌てる事はありません。
ここはあなたの夢の中。それはあなたの願望が見せている幻に過ぎません」


声をかけられた誠が、振り返って恭子と直美を見た。
もちろん二人とも服を着ているが、誠の目には全裸の直美と恭子の姿が映っていた。


「あなたは私たちの裸から目がそらせなくなります」


恭子は誠に催眠をかけ続ける。
誠の顔は徐々に上気していき、そのうち口で荒い呼吸をし始めた。
初めて見る自分の彼女の裸と、気になっている女性の裸が目の前にあるのだ。
誠の股間は徐々に盛り上がり、すぐに興奮が見て取れる状態になった。

恭子は直美の背後に回ると、両腕を前に回し太ももを触った。
左手で太ももをさすりながら右手の指先で太ももの内側をなぞった。


「ん…」


直美の艶っぽい声が静かな部屋に響く。

直美と恭子からしてみればいつもの勉強時の光景だが、
誠から見ると裸の女性同士の愛撫のようにも見て取れる。
恭子は右手をそのままに、左手を直美の胸の上に置き、そっと撫でた。


「っはぁ…」


直美の呼吸も荒くなっていく。
誠は食い入るように二人のことを交互に見ては、胸や股間の辺りに目線を動かしている。
女性同士のセックスに興奮する暗示をかけられている誠にとって、
直美と恭子の裸の触れ合いはあまりにも刺激の強い光景であった。


「どう?興奮するわよね?」


誠は食い気味に頷くと、自分の右手を股間の上に持っていき、さすり始めた。


「いつもそんな風に服を着たまましているの?…違うわよね?」


恭子は嫌悪感を隠しながら、
いつも通り誠に服を脱いでオナニーをするように指示をした。

誠はそれを聞いて立ち上がると、
制服のズボンと下着を一気に引き下ろし、硬くなった性器を露わにさせた。


「オナニーする時はいつもこれを使っているのよね?
用意してあるから付けてした方がいいわ」


恭子はそう言うと、小袋を布団の下から取り出し、誠に渡した。コンドームだ。
普段の恭子の催眠によって慣れているのか、
誠はそれを受け取ると、小袋を開け、コンドームを自分の性器に装着した。
誠は興奮した様子で二人を見ながら自分の性器を扱きだした。


(やった、上手くいった! 誠が直美の前で自慰行為を始めたわ)


精子の匂いと、男性器への嫌悪感を我慢しながら、催眠中の誠へ行った自慰調教が功を成した瞬間だった。


(あとは直美に、この姿を見せつけて・・・)


はあはあと荒い呼吸をしながら自分の性器を扱く誠を尻目に、
恭子は直美の方に向き直り語りかけた。


「どう? あれがあなたの彼氏の本当の姿よ。
あんなに呼吸を荒くしてこっちを見ながらオナニーしてる…気持ち悪いわよね?」


直美は誠から目が離せないのか、誠の激しく動く右手を見ながら少しだけ頷いた。


「誠も気持ち悪い男たちと一緒。
あのグロテスクな色と形をしたものを直美の中に挿れたがってるわ。
以前話したことを思い出して、直美。

あれを無理やり突っ込まれたらどうなるの?
すごく不快で苦しくて失神するほど痛い思いをすることになるのよね?」


直美は以前、恭子の催眠によって植え付けられたトラウマを思い出した。
直美の顔色は途端に青白くなり、身体が震えだした。


なろう挿絵-黒百合


普段の生活では表に出る事はないが、恭子の度重なる催眠の効果によって、
直美は男性とのセックスをイメージする際に、
暴力で女性が抑えつけられ無理やり犯される姿を思い浮かべるようになっていたのだ。

誠はまばたきも忘れたかのように、
じっとこちらを見ながら性器を激しく扱いている。
そのうち呼吸が犬のように短く途切れるようになったかと思うと「うぅっ」と呻いて射精した。

その様子を見て、思わず直美は恭子にしがみついた。

誠の行動は、催眠時の不快な行動に当てはまり、
直美を覚醒させてしまいそうなものであったが、
直美の不快感は恭子から長い年月をかけて与えられた不快感であっため、
覚醒の原因とはならなかった。

恭子は直美の背中をさすり、ヨシヨシと落ち着かせると、
あらかじめ布団の下に用意しておいたピンセットを持って誠の元へ近寄った。

そして、なるべく顔を近づけないようにしながら、
誠の性器の上のゴムの部分を掴み、コンドームを外した。


「見て、直美。これは本当に臭くて、汚いものよ。
気持ち悪い男性の体からでてきた排泄物だからね。
男の人はこんなに汚らわしいものを女の人の口に突っ込んで飲ませようとしてくるのよ? ほら」


恭子は直美の鼻先に精子の溜まったコンドームを持っていくと、直美にそれを嗅がせた。
直美は顔を歪めながら一度だけ精子の匂いを嗅ぐと「うっ」と呻き自分の口元を押さえた。

もともと男性に嫌悪感と恐怖心を抱くように暗示をかけられた直美とって、
それは耐え切れないほどの気持ち悪さだったのだろう。
恭子は急いでピンセットとコンドームをごみ箱に捨てると、
直美をトイレまで連れて行った。

直美は何度か呻いたが、
胃液を出すほどには至らず、吐き気を必死に堪えているようだった。

恭子は直美の背中をさすりながら優しく声をかけ、


「大丈夫?気持ち悪かったよね。もう大丈夫だからね?」


優しく、それでいてしっかりと嫌悪感を直美に植え付けた。


「男は気持ち悪い。そんな男がするオナニーなんて耐えられないよね。
性器をあんなに硬くして、自分で扱くなんて最悪よ。
でも、もう大丈夫、私がいるからね?」

恭子はそう言いながら、
直美の口をハンカチで拭い、しばらく背中をさすっていた。

そして直美が落ち着いた様子を見せると、リビングに連れて行った。



※※※



リビングのソファーに直美を座らせて、優しい声色で語りかける。


「大丈夫、ここにもうあの男はいないから。
ほら、おいで。女の子同士で抱き合うと安心するでしょ?」


恭子がそう言うと、直美はすぐに抱きついてきた。
まだ先程の体験が収まらないのか微かに震えている。


「まだ怖いの?
………そうだ! 直美、私のこと、見ててね」


恭子はそう言うとブラウスに手をかけた。

いつもは知らない人の裸の画像で男女を比較していたが、
見知った人間の裸で直に比較したほうが、直美に強い印象を与えることができるだろう。
そう思い、恭子は直美の前で裸になることを決めた。

ブラウスのボタンを上から一つずつ外していく。

直美はそれをじっと見て顔を赤くさせ始めた。

開いたボタンが胸のあたりまで来たところで、
恭子は一度直美の方を見やり、微笑んだ。

そのまま全てのボタンを外し、
スカートのホックも外して立ち上がると、すとん、とスカートが落ちた。

直美の視線は恭子の全身に向けられている。


「…外してみる?」


恭子は直美にそう言うと、
直美の手を取り自分のブラジャーのホックの所へ誘導させる。
直美は少し目線を揺らして戸惑ったが、
すぐに意を決したように恭子のブラジャーのホックを片手で外した。

すっと音を立てて恭子のブラジャーがたわむ。

恭子は腕を前に寄せるとブラジャーをソファーの上に落とした。

直美の視線が恭子の胸に注がれる。

恭子は自分が少し興奮していることに気付きながらも、直美に微笑みかける。

直美は顔を赤くし、口から熱いため息を洩らした。

恭子はそれを聞くと、自分のショーツをゆっくりと下ろした。

少し糸が引いてしまったが、
気にせず、直美の前に膝を曲げて座り、長い髪を後ろへ流した。


「ふふ、興奮する?」


あまりに直美が自分の体を食い入るように見ているので、少し照れながらも訪ねた。

直美はこくり、としっかり頷いた。

そして恭子の方へゆっくりと手を伸ばしてきた。

恭子はその手を握ると、改めて暗示をかけた。


「いい? 女性の体は、見ても分かる通り白くて綺麗で、
いい匂いがするものなの。触ったらきっと安心感に包まれて、気持ちいいわよ」


そう言うと、恭子は掴んでいた直美の腕を自分の背中に回らせ、ゆっくりと抱き寄せた。

一瞬直美は驚きからか体を硬くしたが、
恭子が背中を撫でると徐々に力を抜いていった。


「体を私に預けてみて」


直美の体重がゆっくりと恭子にかかる。

恭子は腕の中の直美の頭を愛おしそうに撫でて言った。


「どう? 心地いいわよね?
さっきまでの恐怖が嘘のようにすうっと引いていくわ。
すっかり落ち着いて、私に頭を撫でられて心地いいわよね?」


恭子は直美の匂いにドキドキとしていた。

こんなに愛しい直美が、今自分に体を預けて心地良さそうにしている。
私の腕の中にいる。心臓の音が伝わってくる。

恭子が直美の髪の毛をくしゃっと揉むと、直美は顔を上げ恭子の目を見た。

恭子はハッとした。

なんて目をしてるんだろう。

頬は上気して薄いピンク色に染まり、子犬のような目は潤んでこちらを見ている。

口は何か物欲しそうに少し開いて、
そこから濡れた赤い舌がちらちらと見え隠れしていた。



(……!! )



恭子は、いつも以上に可憐な直美の姿に我慢できず、
まるで引き寄せられるかのように自分の唇を直美のそれと合わせた。

直美との初めてのキス

柔らかくて、いい匂いがする。
恭子は目を閉じて、直美の唇の感触を楽しんだ。
全身が幸せに包まれる。


(私、直美とキスしてる……
あぁ……すごい幸せ……この瞬間がいつまでもいつまでも続けばいいのに……)

(……)

(……え?直美とキス?)


ハッと恭子は我に帰る。
慌てて唇を離し、直美から顔を背けた。


(まずい……)


恭子は以前、催眠術を使って直美にキスさせようとし、
覚醒させてしまったことを思い出した。

その時は軽い冗談としてなんとか取り繕うことができたのだが、

今回は、キスをして、おまけに自分は衣類を何一つ身につけていない……
どう説明しても言い逃れはできない状況だった。

恭子の全身から冷や汗がにじみ出し始める。


(どうしよう……!?
直美が……直美が目を覚ましてしまう……
直美に嫌われしまう……
直美が離れて行ってしまう……
何もかも終わってしまう……
あぁ、私はどうしてこんなことを……)


恭子の心を絶望感が包む、涙が頬を伝っていくのが分かる。
誠の自慰行為を成功させ、直美に嫌悪感を抱かせる試みは成功した。

そこで気が緩んでしまったのだろうか?

恭子は普段は決してしないような失敗を犯してしまった。

今までずっと我慢してきた直美とのキス。
それがたった一度で終わってしまうなんて。

恭子は自分がしてしまったことを心から後悔した。
直美は今、どんな表情をして自分のことを見つめているのだろう……?


驚き?

軽蔑?

怒り?

またはその全てかもしれない……



※※※



恭子は置いてあった服に手をかけると、恐る恐る直美の表情を確認した。


「……」


恭子の意に反して、
直美の目は先ほど以上にとろんとして、こちらを見つめていた。
まるで今まで待ち望んでいたことをしてもらえたかのように、目をキラキラさせている。


(……えっ?)


恭子はしばらくの間、直美を見つめたまま呆然としていた。
今の状況を上手く飲み込めなかったからだ。


(直美が覚醒していない……どうして?)


催眠術は、無理な暗示をかけたり、
不快な行動をすると脳が覚醒し、催眠状態が解けてしまう性質がある。

以前は直美が同性の恭子とキスをすることなど、とても考えられない行為であった。


(そのはずなのに、直美は目を覚ましていない……)


しばらく考えた後、恭子はある事実に気付いた。
そして直美のことを抱きしめると、感情を抑えきれずに涙声で言った。


「うぅ……ぐすっ……
な、直美………やっと……やっと……私のことを受け入れてくれたんだね…」

「長かった……すごく……長かったよ……
わ、私……あなたに受け入れてもらいたくて……
ずっと……ずっと頑張ってきたんだよ?」

「すごく苦しくて切なくて……遠くからあなたを見てるしかなかった……
でも、やっと受け入れてもらえた。嬉しいよ……直美……」


恭子は目をグシャグシャにしつつも、直美を見つめた。
泣いている恭子を心配しているかのような表情、そこに先程のキスに嫌悪感を抱いている様子は微塵も感じられない。


(いけない……泣いている場合じゃないわ……
直美、今からあなたをこっちの世界へ招待してあげる。
もう帰りたくないって思えるくらい素敵な体験をさせてあげるわ)


涙を抜き、気を取り直すと、恭子は再び直美への暗示を再開する。


「直美……女の子同士のキス……気持ちよかったでしょ?」


直美はとろんとした目のままこくりと頷く。

あと一押しだ……
恭子は今日で決定的な結果を得るために、直美に後戻りできなくなるような経験をさせることにした。


「直美も分かる通り、女の子の唇は、こんなに柔らかくて、
唇同士触れ合ってると体が溶けちゃうみたいに気持ちが良いの……」


そこまで言うと、恭子は直美に再びキスをした。

体が溶けるように気持ちが良いと暗示をかけられ、直美はしなだれかかるかのように恭子に体重を預けた。
恭子は直美をしっかり支え、ゆっくり、でもしっかりと唇を唇に押し当てた。

そして唇を離すとさらに直美に語りかけた。


「直美、私はあなたのことが大好き。
好きな人とキスができて、今すごく幸せ……
直美も好きな人とキスをすると、全身が幸せでいっぱいになれるわ」


そう言うと恭子は直美とのキスを再開した。



※※※



しばらくの間、二人の唇の間からはキスのリップ音が鳴り続けた。
まるで恋人同士のように、二人は見つめ合い、お互いの唇の感触を味わい続けた。

直美と恭子がキスを開始してどれだけの時が流れただろうか?
いつしか直美の恭子を見る眼差しは、いつも誠を見つめる時と同じように、
愛する人を見つめる眼差しへと変わっていった。


(素敵……直美が私のことをこんな目で見つめてくれるなんて……
いつか催眠をかけなくても、今のように見つめてくれるようになるのかしら…)


そう思いながら恭子は唇を離し、時計を見た。

あまりに催眠の時間が長いと二人に不審に思われてしまう……

恭子は直美の頭を一度撫でると体を離し、
ソファーの上に置いてある自分の服を手早く身につけ、
服に乱れがないかリビングの鏡掛けでチェックして、直美に向き合った。

直美は先程のキスが忘れられないのか、
恭子のことを物欲しそうな目で見つめていた。

恭子は再び直美を抱きしめると、しっかりと直美の目を見据え暗示をかけた。


「あなたはもう女の子同士のキスの気持ちよさを忘れることができません。
男の人とのキスなんて気持ち悪くて想像することすら無理。
キスをするなら女の子同士よね?」


直美がコクリと頷くのを確認した恭子は、
軽く直美にキスをして、自分の部屋に連れて帰った。

そしてぐったりとベッドに背を預けている誠に自慰の後片付けをさせ、直美をベッドに寝かせた。

次に誠には頭がすっきりとなる催眠を、直美には朝の目覚めが良くなる暗示をかけ、催眠を解いた。


「ごめんね、なかなか直美が朝起きたくないって駄々こねて、時間かかっちゃった」


恭子は目を覚ました二人に言う。時刻は十八時を回っていた。


「え〜うそ! そんなことしないよ〜!」


直美は笑いながら否定する。
誰から見ても、いつもと変わりない平和な日常の情景であった。



※※※



直美と誠は恭子にお礼を言うと、いつものように二人並んで帰って行った。

二人の後ろ姿を見送る恭子、
しかし誠に対する嫉妬心は、もう浮かんではこなかった。
なぜなら、いつも当たり前のようにつながれている二人の手は、



『まるでその関係に終わりを告げるかように、つながれていなかったから』だ。
[ 2017/09/05 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.13 【 剥き出しの心 】


次の週も同じように二人に催眠をかけた。


恭子は前回同様、催眠状態の直美にキスをした。

初めは覚醒を心配した恭子だったが、
前回のキスが余程良かったのか、直美は嫌がる素振りすら見せなかった。

それを見せつけられた誠は興奮して自らの一物を摩り始めた。
恭子はその様子を静かに見守り、誠の性器が勃起しきったのを確認すると、
耳元に口を添えて、静かな声で追加の暗示をかけた。


「夢の中なのにそんなに離れた所でしてて良いの?
夢なんだからもっと大胆になって良いのよ?
どうせだったら、二人のすぐ傍で立ちながら自慰してみない?」


恭子自身、目の前で誠の自慰を見せつけられるのは、すごく嫌なことであったが、
直美とキスが出来るようになってからというもの、
一刻も早く誠と直美の距離を広げ、自分と直美の距離を縮めたいと思っていた。
そのためだったら、どんなことでも我慢するつもりでいたのだ。


誠は立ちあがると下半身丸出しのまま二人に近付き、
一物が顔に触れるか触れないかのギリギリのところで自慰を始めた。

直美の顔が引きつる様子が確認できる。
恭子は誠の男性器の臭いとわずかな気温の高なりを我慢しながら、直美に話し始めた。


「直美、これがあなたの彼氏の本性よ。
私たち二人を犯そうとしている。すごく怖くて臭くて気持ち悪いでしょ?」


直美は今にも泣きそうな顔で恭子にしがみついている。
もう頷く余裕すらなさそうだ。
直美の背中を優しく摩る恭子。


「大丈夫。落ち着いて、私がついてるから……少し離れましょ」


恭子は直美を支えながら立ちあがると、部屋の壁際へと移動した。
そして誠の姿が視界に入らないよう、自らの身体で囲い込むようにして座らせる。


「すごく気持ち悪いもの見ちゃったわね。
直美はあんなのとキスするより、私とキスしたほうがずっと良いわよね?」


直美はガタガタ震えて顔を引きつらせていたが、
すぐに恭子に向き直り、しっかりと頷いた。


「女の子同士、キスすると心が落ち着いて安心してくるよね。
キスして、直美。するとさっきの恐怖が和らいでいくわよ」


それを聞くやいなや、
直美は恭子の背中に手を回し、自らの唇を恭子のそれに重ね合わせた。


(あぁ……直美の方から、キスしてくれた……
直美が私のことを求めてくれている……)


初めての直美の方からのキス、恭子は感動して思わず身震いした。
恭子も直美のキスに応じるように、頬に手を添えキスを返す。
直美は目を閉じて、一生懸命恭子にキスをしている。


「ちゅ……ちゅぷ……ちゅ……ちゅぷ……」


触れるたびに、薄ピンク色の唇がプルンと跳ねる。
直美からのキスは何分も続いた。

以前、部活の帰り道、女同士のキスを思い浮かべ、慌ててその想像を振り払おうとしていた頃の直美はそこにはいなかった。

そこにはすっかり女同士のキスを受け入れ、
自らの秘所を熱くさせるようになってしまった直美がいた。

そうこうしているうちに、直美の身体の震えは収まり、
目付きも最初の時同様、恭子を恋人として見つめるものへと変わっていた。



※※※



しかし、ここで恭子にとって予想外の出来事が起きる。

なんと自慰をしていた誠がこちらに振り返り、ぶらぶらと迫ってきたのだ。
恭子と直美が移動したことに気づき、自らの判断でやってきたのだろう。

まさか催眠中に動き出すとは思っていなかった恭子は、
下半身丸出しのまま迫ってくる誠に恐怖を覚えた。
恭子ですらその反応だったのだから、
落ち着き始めたばかりの直美にとってはたまったものではない。

恭子の身体を強く抱きしめ、誠の男性器に対して恐怖の視線を送る直美。
恭子は誠を制止しようと思うのだが、
直美に本気で抱きしめられていて身動きができない。

誠は先程と同じように二人の目の前で自慰するつもりで近づいて来たのだが、
床に置いてある直美の鞄に足を引っ掛けバランスを崩してしまい、
そのまま直美の顔へと男性器を押しつけてしまった。


ぐにゅ……


自らの股間に感じる直美の肌の感触。
最愛の人に男性器を押しつけたことに興奮してしまった誠は、
直美の顔に一物を擦りつけたまま射精した。


「うっ……!!」


腰を振りドクドクと根元から精液を送りだし、下半身を痙攣させる誠。
コンドームをしていることもあり、外部にそれが漏れることはなかったのだが、
直美にはあまりにも衝撃が大きく、
誠が顔に精子を撒き散らしたと錯覚してしまい、ショックで気絶してしまった。

恭子はあまりにも急な出来事で、呆気にとられて声を出すこともできなかった。
すぐに気を取り直すと、誠に後始末して床で横になり眠るよう暗示をかけ、
直美をリビングで介抱することにした。


(まさか、こんなことになるなんて……
催眠中に気絶したら一体どうなるのかしら……?)


催眠時に直美が気絶したのは初めてのことで、恭子は明らかに動揺していた。
ネットでも、催眠時の気絶については何も書かれておらず、
恭子はひとまず直美の様子を伺いながら考える事にした。



※※※



さっきの出来事、
直美にとっては、覚醒の条件を十分満たしているものであったはずだ。

なぜ、直美は覚醒しなかったのだろうか?
今まで男性への嫌悪感を与えるために、
色んな画像や動画を見せて慣れさせてきたからだろうか?

誠が覚醒しないのは十分理解できた。
なぜなら誠は自ら望んだことをしているだけなのだから。

直美も、女同士のキスを望んで行っているので、覚醒の条件を外れている。

だが、男性器を顔に押し付けられるなど、
直美にとってはこの上ないほど最低な行為であり、覚醒は当然と言えるものだった。


(もしかしてあまりにも突然の出来事で、
覚醒する間もなく気絶してしまったってことかしら?)


いくら考えても明確な答えは見つからず、
きりがないと思い始めた恭子は、ふと時計を見た。


(いけない! もうこんな時間…… 
このまま直美を気絶したままにしておけないし……
早く二人を戻さないと怪しまれてしまう……)


恭子は、できるかどうか不安だったが、
気絶したままの直美に催眠をかけることを決めた。



※※※



「今あなたは深い深い心の底にいます」


そう言うと、直美の瞼がぴくっと動いた。


(反応があった・・・まだ催眠は効いているってこと?
もしかしてだけど、今なら普通に催眠をかけるよりも強い効果があるかもしれない)


気絶という特殊な状況下で、どうなるかわからなかったが、
恭子はなるべくポジティブに考え、ここぞとばかりに重い暗示をかけることにした。


「あなたの目の前には、彼氏である桐越誠がいます」


直美の反応はまだない。本当に誠のことを思い浮かべているのだろうか?


「あなたの彼氏は下半身を丸出しにしています。
股間にはあなたの大嫌いな男性器。
汚らわしくてひどい臭い、彼はそれをあなたの顔に押し付けようとしています」


直美の身体が小刻みに震え始めた。暗示は効いているようだ。


「だんだん目の前に迫ってくる。あなたはそれが怖くて仕方がありません」

「………いっ……いや……いやあぁぁ!」


初めて直美が催眠中に声を出した。


(ここまではっきりと声を出しているのに覚醒しないとは……)


恭子は、今なら例え直美が覚醒したとしても誤魔化せる自信があった。
自分は服を着ていて、誠はベッドの横でいつもと同じように寝ている。
リビングにいるものの、この程度のことならいくらでも誤魔化しは効く。

恭子は直美の反応を注視しながら暗示を続けた。


「彼があなたを犯そうと近づいてきます。急いで逃げてください」


愛する人の突然の変貌にショックを受けているのだろうか?
直美の目からは涙が溢れ始めた。


(直美が泣いてる……)


直美の涙を見て、思わず恭子の胸が痛んだ。
自分でかけた催眠にも関わらず、
恭子は今の直美の様子を見て、ひどく心を打たれていた。

恭子は直美の笑顔が大好きだった。

直美の笑い声も、ちょっとした仕草も

恭子は心の底から直美を愛していた。

だからこそ、直美の涙を見てショックを受けたのだ。


(……ごめんね、直美。泣かせちゃって……)


恭子は、急いで暗示をかけた。


「あなたが逃げる先に一人の女性がいます。あなたの親友の甘髪恭子です」


そういうと恭子は、寝ている直美を抱き寄せ、優しく語りかけた。


「目を開けて、もう大丈夫よ、直美。
あの男はもういないわ。ここにいるのはあなたと私だけ」


直美は目を開き恭子の姿を確認すると、
一気に安心した表情になり、腕を恭子の背中に回し抱きしめた。


「怖かったわよね?」


直美は涙目でコクリコクリと頷いた。

恭子は直美の目を見つめながら、唇に軽くキスをした。


「よく聞いて、直美。あなたはもう女の子しか好きになれなくなっちゃったの。
男の人はもうこりごりよね? あんなに怖い思いをしたのだから……
あなたは女の人がだーいすき、優しくて柔らかくて良い匂いがして、包まれると安心して気持ちよくなってきちゃう」


直美は恭子の暗示によって、
頭の中を女の子のイメージでいっぱいにして、うっとりしていた。

そんな直美を見て、微笑むと恭子は言った。


「あなたはもう男の人はいっさい相手にしない。
女の子しか相手にできないレズビアンになってしまったのよ」


直美は一切の迷いもなく、すんなりと頷いた。


「それじゃあ女の子同士、キスを楽しみましょうね……」



※※※



続く恭子と直美のキス


今までと違う点を挙げるとすれば、
唇を合わせたままではなく、何度もついばむようにキスをしている点だ。

直美の目は回数を重ねるごとに潤んでいき、頰は真っ赤に染まっていた。


(なんてかわいいんだろう)


恭子は抑えきれない気持ちを唇に込めてキスをしていた。
何度もキスをしているうちに二人の息は荒くなっていった。


「ちゅ……んっ……はぁ……気持ち良いでしょ?
でもまだよ……まだ女の子同士のキスには続きがあるの……舌を出してみて……」


直美の唇から赤い舌が顔を出す。
恭子はそれに自分の舌を絡めるようにキスを始めた。


「んんっ……んんんっっ!」


直美は驚き、思わず呻き声をあげたが、続けるうちにとろんとした目つきに変り、恭子の動きを受け入れていった。


「ちゅぷ……ちゅぷ……ぢゅっ……んはぁ……ちゅぷ…じゅっ……んっ……れろっ……」


先程よりも激しいリップ音が二人の唇から鳴り始めた。
恭子は自分の膣口から愛液が溢れ出るのを感じていた。
ショーツから溢れた愛液が足を伝って靴下を濡らし始めていた。


(あぁ……気持ち良い……キスだけでこんなに気持ちいいなんて……)


直美もきっとショーツを濡らしているに違いない。
恭子は直美の背中に回す手を、おもむろに直美の下半身に移動させた。

直美のシルクのような肌触りを感じながらショーツを確認すると、
膣口から溢れ出る液を吸収しきれないのか、
そこは水で濡らして絞っていないタオルのように湿り気を帯びていた。


(直美……こんなに感じてくれていたんだ……)


恭子は直美の目を見つめると、
直美も同じように愛する人を見つめる眼差しを恭子に向けていた。


「大好き……直美……愛してる」


直美は声には出さなかったが、目は同じ思いを恭子に告げているように見えた。
二人は溢れ出る液を気にもせずに舌を絡め合わせキスを続けた。



※※※



再度続く二人の口づけ

目を閉じれば唇の感触や体温を感じ、目を開ければ最愛の人の姿を愉しむ。

息も荒々に、相手を求めることに夢中になった。

膣口は閉じる事を止め、思い思いに欲を外に放出する。

まるで下の唇同士もキスを求めあっているかのようにピクピクと震えていた。

そして二人の興奮が最高潮に達した時………



「んっ! ………んんっ!! あああぁぁ!!」



二人はほぼ同時に身を震わせた。

それを世間一般的な絶頂と言えるものなのかどうかはわからない。

だが二人が本来なら越えるはずのない境界を越えて、
足のつま先から頭の天辺まで、
幸せいっぱいの痺れで満たされたのはたしかだった。
[ 2017/09/07 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.14 【 完璧主義の女 】


次の日の朝、直美はいつもの通りを一人で登校していた。

ふと、後ろから駆け寄ってくる気配に気づく。
後ろを振り掛けると、誠がスピードを落として直美の肩をたたく寸前だった。

直美は驚いて誠の手を避けた。


「?おはよう、直美」

「…おはよう」


誠は避けられたことを少し疑問に感じたが、そのまま声をかけた。
直美は誠の顔を見ると、目を逸らした。


「…どうしたの、なんかあった?」


そんな直美の様子が気になったのか、誠が直美に尋ねる。


「ううん、なんでもない…あたし急いでるから今日は先に行くね」


そう言うと直美は駆け出して行ってしまった。

一人残された誠は首を傾げていた。直美の様子がいつもと違う。
後を追おうかと思ったが、気分が悪そうだったので一人にした方がいいか。
そう考えると、誠は学校に向かって歩き出した。



※※※



(どうしたんだろう、あたし)


直美は走りながら考えていた。
誠を見るとなんだか胸がムカムカして、気持ち悪くなる。
誠のことを考えただけで、今も少し気分が悪いのだ。

…おかしいな。お昼になったらキョウちゃんに相談してみようか。
直美は校舎に入ると、早足で教室に向かった。


「あ、直美、おはよう」


先に教室に着いて朝の準備をしていた恭子と目が合う。
その瞬間、直美の心がキュンっと反応した。


(あれ……? 今の何……?)


そう感じたものの、直美は体の調子が悪いものだと思い、特に気にしなかった。


「おはようキョウちゃん…」

「どうしたの? 顔、青いよ」


恭子は直美に駆け寄った。
恭子には大体の事情が読めていたが、何も知らないふりをして直美に尋ねた。


恭子が直美の背中を撫でる。

触られた瞬間、直美の背中にピリピリっとした甘い痺れが流れた。


「んっ……、あ、ゴホン。いや、ちょっと…お昼に話すね」


思わず出てしまった声を、咳をして誤魔化す直美。


直美は少し困惑していた。
今度は恭子を目の前にして、今までの気持ち悪さがすうっと消えていったからだ。

しかも背中を触れられているという事実に、少しドキドキしている自分もいた。
直美は恭子に礼を言って自分の席に着くと、大きくため息を吐いた。


(本当に変だ、どうしたんだろあたし…)


直美は困惑しながら、リュックを机の傍にかけた。



※※※



(うまくいってるみたいね)


恭子は思い出していた。

直美が昼休みに相談してきたのは、誠を見ると気分が悪くなるというものだった。

相談している最中の直美の表情は、明らかにいつもと違っていた。
まるで片思いをしている女の子のように、上目遣いでいじらしいのだ。

直美も自分がいつもと少し違うと感じているのか、
恭子に誤解されないように何度も目を閉じたり
顔の向きを変えて、調子を戻そうとしている様子だった。



『……気絶中の催眠の効果だろう。』



あの時、恭子は直美の心の深い部分と直接触れ合っていたのだ。

普通の催眠では決して引き出されない剥き出しの心。

気絶によって、表に晒されたその部分と、
恭子はキスをし、求め合い、生まれて初めてのオーガズムを共に経験した。



※※※



それ以後、誠と直美が二人でいるところを見かけなくなった。

今日も直美は学校が終わると同時に、恭子に二人で帰ろうと声をかけていた。
恭子がこれからのことを考えながら帰りの支度をしていると、
同じクラスの男子に呼び止められた。


「甘髪さん、桐越が呼んでるけど」

「ああ、ありがとう」

「……誠がキョウちゃんに何の用があるの?」


直美は少し不機嫌そうな顔で言った。


「ごめんね、直美。
誠くんと○○大学の入学試験のことで先生に呼び出されてて、
今日一緒に帰れないのよ」


○○大学は、誠の目指している大学で、
日本全国でも一流に位置する難関大学である。

今の直美の成績では手も足も出ないほど難しい、雲の上のような存在であった。


「えー! キョウちゃん○×大学に一緒に行くんじゃなかったの?」

「もちろん直美と一緒に○×大学に行くつもりだけど、
親が必ず入れって言ってて……
入学試験までの間、入るふりだけでもしなきゃダメなのよ。ごめんね」


直美は恭子の家庭の事情はわかっていた。
中学からの付き合いだが、
恭子の家に行っても、一度も恭子の両親を見たことはなく、
そのことについて恭子から相談されたこともあり、辛い思いをしていることはよく知っていた。


「そうか、なら仕方ないね。また明日ね」


直美はとても寂しそうな顔をして帰って行った。


(直美・・・・・嘘ついてごめんね)


恭子は今後、誠と二人きりで会うのに同じ嘘をつき続けるつもりでいた。
二人の距離を離れさせることに成功はしたが、まだ二人は付き合っているのだ。

いつ何時、関係が元に戻ってしまうかわからない。
恭子は本気だった。自分の不安要素になるものは一切残さない。

決して油断をしない、過剰なまでの完璧主義、

心が落ち込んでいる時、
物事が上手くいかない時、それは心を蝕む存在となり恭子を苦しめたが、
物事が上手くいきそうな時、その考え方は何よりも強い恭子の味方になった。

恭子は直美の姿が見えなくなるのを確認すると廊下で待つ誠のところへ行った。


「恭子さん…」

「あら、どうしたの、そんな顔して」

「いや、今日も直美、先帰っちゃったんだね」

「え? ああ、そうみたいね」


恭子は何も知らないふりをしながら誠に尋ねる。


「なにかあったの?」

「いや…相談があるんだけど、今日も恭子さん家、行っていいかな」


恭子は微笑みたくなるのを我慢して頷いた。



※※※



誠の相談は、恭子の予想通りの内容だった。

『最近直美に避けられているが、なぜ嫌われているのかわからない』

誠が状況を理解できないのは当然のことだった。
事実を知っているのは、恭子だけだったからだ。

恭子は優しく相談に乗り、気を楽にするという名目で催眠をかけた。

実際は直美に嫌われていることをあまり気にならなくなるよう暗示をかけた。
目を覚ました誠は、少し気が楽になったことを喜び、礼を言って帰っていった。




恭子が直美に催眠をかけ始めて約2年

様々な失敗もあったが、恭子はついに直美と誠の仲を壊すことに成功した。
[ 2017/09/09 18:43 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.15 【 会話の始まり 】


季節は夏。


来る夏休みを期待してか、直美はうきうきとしながら恭子の家に向かっていた。
その姿はまるで恋人とのデートに出かけるかのように軽やかだ。


あれからというもの、誠とのデートの約束は一度も交わされず、
直美は登校時には誠になるべく出くわさないよう、時間をずらすようになっていた。

また自然と誠の話をすることも少なくなり、
本人もなるべく考えないようにしているようであった。

恭子は、気絶時の催眠が思った以上の成果を上げたことに満足していた。



しかしまだ、課題は残っていた。誠以外の男子生徒のことだ。

……ある教室での出来事である。



※※※



「ちょっと椅子を借りただろ。わざわざ除菌スプレー使うなんて気分悪いぜ」


昼休み、直美が恭子と外でお弁当を食べて教室に戻ると、男子生徒が直美の机の周りで談笑していた。

もちろん男子に悪気はないのだが、
自分の机が男子に使われていることに我慢ならなかった直美は、
購買部で除菌スプレーを買ってきて、自分の椅子と机に噴きかけたのだ。


「どこ触ったかわからない手で人の机をあちこち触られたら、こっちだけ気分悪いわよ!」

「なんだと! 人を雑菌みたいに扱いやがって!」


以前の直美だったら、
男子に机を使われたことなど、気にも留めなかっただろう。

だが、催眠によって男性に強い嫌悪感を与えられている今の直美にとって、それは耐え難いことだった。

直美は男性への嫌悪感を態度や表情に出すことが多くなり、
初めは大目に見ていた男子達も、度重なる直美の態度に業を煮やし、
表だって直美のことを悪く言う者も出てきたのだ。

そのことについて、恭子はとても気にしていた。


(私の催眠術のせいだわ……このままじゃ直美が孤立してしまう……)



※※※



恭子はいつものようにベッドに寄りかかり、直美を待ちながら考えていた。


直美を男嫌いにさせたのは間違いではないが、それでも限度というものがあった。
直美はこれから大学に進学し、就職し、自分の力で生活していかなければならない。

今のまま男性に対する感情を変えなければ、
きっとどこかでトラブルを起こすことになるだろう。

それは直美にとって不幸な結果をもたらすことになってしまう。
本人にとって、生き辛い世の中になってしまうのは明白だった。



誠に嫌悪感を抱かせることにはもう成功した。

男性全体に嫌悪感を持つように催眠をかけたのも、元々は誠を嫌いにさせることができなかったからだ。
もうこれ以上、男性に嫌悪感を抱かせなくても、意識させなくするだけで十分なのではないか?

恭子はそこまで考えると、これから来る直美のために紅茶を入れに行った。



※※※



「あなたはこれまでと違って、男性を見ても平気な状態になります」


恭子は直美の額を撫でながら言った。
撫でられながらも直美はどこか訝しげな表情をしている。

それもそのはず。
恭子の言っていることは、今までと全く反対のことであり、
男性に嫌悪感を植え付けられている直美とっては、素直に受け取りにくい暗示だったのだ。


「よく聞いて、直美。
嫌悪感を持つってことは、相手のことを意識しているってことなの。

本当にどうでも良い存在なんてなんとも思わないでしょ?
男の人のことなんて一切意識したらダメ。
あなたは女の人のことだけ意識したらいいの」


それを聞いて直美は、だいぶ納得したようだった。


「これからは男性に対して何も感じなくなる、つまり一切興味がなくなるわ。
わざと触ってきたり、言い寄ってきたりしたら態度に表しても良いけど、
そういったこと以外では、無難に接してあげましょうね」


恭子はそう暗示をかけると直美の体を起こさせ、恒例となっている勉強を始めた。



※※※



○×大学の過去の問題集を、恭子はなるべく分かり易く要点をまとめて解説した。
それはまるで塾の講師が生徒に教えるかのように本格的だった。

実際、恭子は既に○×大学に合格できるほどの学力を持ち合わせていた。
頑張れば、誠と同じ○○大学に通うことだってできるほどである。
それでも敢えてランクを下げたのは、良い大学に通うよりも、直美と同じ大学に通いたかったからだ。

それに元々ファッションデザイナーを目指している恭子にとって、大学などどこでも良かった。
美大に入ることが、恭子にとって最良の道ではあったのだが、
経歴や技術を上げる時間を作るよりも、直美と過ごせる時間を増やすことを優先したのだ。


恭子にとって、直美は何よりも大事だったのである。



※※※



勉強が終わると、恭子はパソコンを開き、ベッドの前にあるテーブルに置いた。
そこで流すのはもちろん、直美の催眠時にいつも見ている女同士のいやらしい動画だった。
画面の中では全裸の女性が抱き合い、キスをしている。

恭子はベッドに上がり、直美の隣に座ると直美の頭を優しく撫でた。
すでに動画に夢中になっていた直美は、頭を触られ少しビクッとなると恭子の方を振り返った。
恭子は直美の身体に腕を回し、軽く抱き寄せる。

直美の心臓はこれから起こることを期待してか、徐々に鼓動が速くなっていった。
恭子は直美の頭をもう一度撫でると、ゆっくりとキスをする。


最初はついばむようなキスにとどめていたが、
直美の力が抜けてくると、舌先で唇をノックしてみた。
何回かそうしながら厭らしく舌を動かしていると、直美は耐えきれなくなったのか、唇を少し開き熱いため息を吐いた。


恭子はその開いた唇に舌を差し込むと、直美の舌と絡ませる。
直美は続けるうちにとろんとした目になり恭子の動きを受け入れていった。


動画の方では、片方の女性がもう一方の女性の胸を音を立てて舐めている。
恭子が口を離すと、直美はどこか名残惜しそうな目で見つめていた。


「ほら、見て」


恭子が動画の方に顔を向け言うと、
直美もゆっくりとした動きでその目線を追った。


『あぁ…ふ、ぅん…っ』


動画では胸を舐められている女性が喘いでいた。


「ほら…とっても気持ち良さそう、あんなことしたら、どうなっちゃうだろうね?」


恭子はそう言うと、
服の上から直美の乳首のある辺りを指の腹で軽くさすった。


「ぁ……、はぁ……」


直美は動画の方を見ながら、恭子の指の動きを受け入れ熱い吐息をこぼした。


「してみたくなったでしょ? ねぇ、動画のマネ……してみない?」


動画の女性たちは、全裸で抱きしめ合い、お互いの身体を愛撫しキスをしていた。

直美は切なそうな表情を浮かべ恭子を見ると、
まるで望んでいることを言ってもらえたかのように、嬉しそうに頷いた。


「いきなり触ったら刺激が強いから、
最初は軽くね。おいで、直美。私に抱きついて」


恭子がそう言うと、
直美は両手を恭子の背中に回し、そのまま抱きつきキスをした。

恭子はしばらく直美に身を任せてみることにした。


直美は最初、ついばむような唇の動きを繰り返していたが、
我慢ができなくなったのか、自分から恭子の唇に割り舌を入れてきた。

そして動画の女性がするように、
恭子の背中・腰・お尻の辺りを優しく愛撫し始める。

恭子は直美の責めを受けて、徐々に下半身が熱くなるのを感じていた。

そしてその愛撫に応じるように、直美の頭と背中を優しく撫でていった。

動画では女同士が脚を絡ませ合い性器を擦り合わせている。
ピチャピチャという唇の音に加え、部屋には動画からの喘ぎ声が響く。


「んっ……ちゅっ……ほら直美、動画の女の子、あんなことをしてるよ?」


直美は横目で女同士の痴態をマジマジと見つめている。
今まで幾度となく女同士の動画を見てきていたが、
女同士の股間を擦りつけ合うシーンは、最後に絶頂で終わることが多く、
直美の頭に同じようなイメージを連想させていた。


「女の子同士、下のお口でキスしてるわよ……?
直美もしてみたくない……? 私とアソコ同士でキス……」


恭子がそう言うと、直美の目は潤み、より上気した目つきで恭子を見つめ始めた。
直美は股間が疼いてしまったのか、しきりに太もも同士を擦り合わせている。

微かだが、直美の股間からクチュっと滑り気のある音が聞こえる。
まるで直美のアソコが恭子のアソコにキスをしたくて、反応してしまっているかのようだ。


「ほら、直美……足を開いてみて……」

「……ぁ……はぁ……はぁ……」


直美は恭子にキスをしながら、ゆっくりと足を開き始める。
恭子と貝合わせすることを期待しているのか、興奮で身体が僅かに震えている。

恭子は直美の太ももの内側を、指先で優しくタッチをし、
直線的ではなく、小さな円を描くようにゆっくりと焦らしながら愛撫していった。


「んぅ……んん……ぁっ……はぁ……」


恭子から与えられる刺激で、キスが途絶えがちになる直美。
直美のショーツからは、
蜜壺から溢れ出た愛液が滴り、恭子の部屋の床を汚し始めていた。


「あらあらこんなに濡らしちゃって……そんなに私の指がいいの?
まだアソコでキスはできないけど、いつか一緒にしましょうね。
今日はこの指で我慢してね……」


そう言うと、直美の濡れているショーツに触れ、
ちょうどクリトリスがある辺りを、
指先でトントントンと一定のリズムで優しくタップし始めた。

恭子も直美と自分のを擦りつけたい気持ちはあったが、今の時点ではまだ早いという感覚があった。
強い刺激で覚醒させないよう、まずは女同士の肌の触れ合いに慣れさせ、
徐々にできることを増やしていくことにしたのだ。


「ふぁ……ぁん……ぁぁんっ……」

「ほら、私のが自分のに当たってると思って……」

「んっ……やぁんっ、あっ! はぁっ!」


それほど強い刺激ではないはずなのだが、
直前で貝合わせの動画を見せられた直美は、
擦り合う二人の女優を、自分と恭子に置き換えイメージしてしまい、刺激以上の快感を受けてしまっていた。


「気持ちいいね…?」


恭子が尋ねると、直美はとろけそうな表情をしながら小さな声で


「気持ち、いい…」


と返した。

恭子はそれを聞くと耐えきれなくなり、直美の唇を食べるようにキスをした。

そして指先のリズムを少しずつ早くしていき……


「んっ! んんっ、んんっ! んっ! んっんっ!」


恭子の指の動きに合わせて、直美の腰が動く。
その姿は、まるで恭子が直美という楽器を奏でているかのようだった。

優しく支え陰核をタップすると、
重ね合った唇の間から熱い吐息とぐぐもった声が漏れ出る。

その演奏はしばらく続き、そしてついに……


「んんんっ、んっっ、んんーーーっ、んぅんふぅううんっ!!!!」


直美は恭子の舌と指の刺激のみでイってしまった。



あまりの快感と幸福感により、直美は放心し、口からは涎が垂れ始めていた。

恭子はそれをペロリと舐め、
それ以上口から漏れないよう、直美の口の中の唾を軽く吸って飲み込むと、
「私の指でイってくれたんだね……嬉しい……大好きよ。直美」と言い、直美の目を見つめた。

「あたしも……キョウ……ちゃん……だい……すき……」


とても小さな声だったが、直美の口からそうはっきりと返事が聞こえた。


恭子はあまりに嬉しくて、直美を抱きしめるとキスを再開した……



※※※



以前、催眠中に気絶した直美が言葉を発してからというもの、
直美は、徐々に自分の意思で話すことができるようになってきていた。

言葉を発する条件はよくわからなかったが、
恭子は催眠中であっても、いつか直美と話ができるようになるような気がしていた。
[ 2017/09/13 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.16 【 新たな試み 】

誠は悩んでいた。

以前に比べ露骨に避けられることはなくなったものの、直美は声をかけても短い返事をしてどこかに行ってしまい、全く相手をしてくれなくなったのだ。


誠は避けられる理由をあれこれ考えていた。

一つ挙げるとすれば、
直美に何も伝えず恭子の家を訪問しているからだろうか?

もちろん恭子のことが気になるからではなく、
あくまで直美について相談しているからなのだが、どこかで直美にそのことが伝わり、誤解させてしまっているのかもしれない。


……でも、もし本当にそのことを気にしているのだとしたら、恭子のことも避けるはずだ。


最近の直美の様子を見る限りは、恭子とは仲良くしているように見える。
むしろ仲が良過ぎるくらいで、見る人が見れば、その関係性を怪しむくらいだ。


誠と恭子が会っていることについて、直美が知っている可能性は低いが、
直接、直美に話してみるのも一つの手だった。

しかし『直美に内緒で』と言われている以上、
恭子に許可を貰ってから行くべきだろう。

こんな状況下でも、誠が冷静でいられるのは恭子のおかげであったし、
誠に恭子を出し抜いて、直美に真相を話す理由など何もなかったからだ。


恭子は誠にとても協力的で、最近の直美の様子や心情について話してくれた。

恭子の話では、直美は特に誠のことを嫌っている訳ではなく、
受験のことを気にしていて、誠と遊びたくならないように”誠断ち”をしているとのことだった。


なんとも直美らしい理由だ。
直美からも勉強に集中したいと話を受けていたこともあり、最初はそれほど気にしていなかった。

だが、最近の直美の反応を見ると、それだけではないように思えてくる。

やはりもう一度、恭子に相談してみるべきだろう。


その日、誠は恭子にラインを送り、会う約束を取り付けた。



※※※



「いらっしゃい、誠くん。待ってたわよ」


私服に着替え、笑顔で出迎える恭子。

恭子の普段着は色の組み合わせや着こなし方など、所々からセンスの良さを感じさせる。
学校での大人しいイメージとは違い、私服姿の恭子は大人っぽい雰囲気を醸し出していた。


「私の部屋に上がってて、すぐ御菓子と紅茶持ってくるからね」

「気を使ってもらわなくても大丈夫だよ。いつも御馳走してもらってなんだか悪いし……」

「いいの、気にしないで。
私が出したくて出しているだけなんだから、それにもう二人分用意しちゃってたしね!」


恭子はそう言うと、いそいそと台所へと行ってしまった。


(恭子さんは本当に良い人だな……)


誠はそう心の中で思うと、そのまま恭子の部屋へと移動した。



※※※



「それで今日の相談って何かしら?」

「うん、それなんだけどね……」


誠は直美について考えていることを話した。

直美が自分と恭子との関係を疑っているのではないか、本当に受験のことで自分を避けているかなど、思い当たることは全て話した。


「なるほどね……直美が私たちが会っていることを知っていて、怒っているかもしれないってことね」


恭子は少し考えるような顔をしてから口を開いた。


「誠くんは私よりも直美との付き合いが長いからわかると思うんだけど、直美って結構単純な性格よ?

そんな単純な直美が何か抱えてて、
外から見てわからないことがあるとするならば、
それは直美自身もよくわかっていないことじゃないかしら?」

「というと……?」

「う~ん……例えば、宇宙人に攫われて、洗脳されちゃったとか?」


誠はガクっと倒れそうになった。

恭子は、フフフと笑みを浮かべる。


「まぁ、今のは冗談だけど、直美が私たちが二人で会っていることを知っていたとしても、そこまで疑わないと思うわ。

それに知られたところで、
私たちに疾しいことなんて何一つない訳だし、堂々と伝えることができるわよね」

「じゃあ正直に話しても良いかな?」

「タイミングの問題ね。
実際問題、まだ直美が何が原因で誠くんを避けているかわからない以上、こちらから接近するのは危険だと思うわ。
私なら毎日直美と接しているから、折を見て本当はどうなのか聞いてきてあげる」

「ありがとう! 恭子さん。そうしてもらえると助かるよ」

「任せて。
ところで……そろそろいつものしてみようか?」


話が一段落したところで、誠はいつものように催眠をかけてもらうことにした。



※※※



誠を催眠によって寝かせた恭子は、しばらく考え事をしていた。

さすがに最近の直美の変化は急過ぎるものがあった。誠が不審に思うのは当然である。

直美がなぜ誠を避けるのか、本当のことを知っているのは恭子だけなのだが、
実のところ、恭子には誠を安心させるためのそれらしい理由を考える必要などなく、
先程の約束も、直美になぜ誠を避けているのか普通に聞けば良いだけのことだった。

直美はおそらく、なぜかわからないけど気分が悪くなるから避けているとしか答えないだろう。
恭子は何一つ嘘を言うことなく、それをそのまま誠に伝え、あとは自分で考えさせれば良いだけなのだ。

誰も催眠術によって、直美が変化しているなどと思うはずがない。

誠にしたって、催眠術を単なるリラクゼーション効果のある精神治療程度にしか思っていない。
万が一疑ってきたとしても、そんな魔法みたいな効果があるわけないと突っぱねることは十分可能だ。

確証のない誠はそのまま引き下がるだろうし、
第一、恭子が直美を愛していることなど誰も知る由もなく、おかしな催眠術をかける動機付けすら満足にすることはできないだろう。

どう転んでも、恭子は直美の親友としてのポジションを維持しつつ、
直美への催眠を深化させていけば、目的を達成できるのだ。

恭子は自分の現状の立ち位置を確認すると、誠への催眠を開始した。



※※※



「あなたはすぐに以前のように直美と仲良くなれるわ。
ここ最近の直美は誠君を避けているけど、それは一時の気の迷いよ。
あんまりしつこくすると嫌われちゃうわよ? 追求するのはほどほどにしましょうね」


いつも通り、気を楽にする催眠をかける恭子。

誠にとっては何の解決にもならない催眠。
恭子にとっては、直美の催眠を深化させる時間を稼ぐために必要な催眠だった。

もう何もすることはないのだが、急に催眠の時間が短くなると不自然なので、
恭子はぼんやりと誠を眺めて過ごしていた。


(…………)


恭子は誠に対して以前ほど嫌悪感を持たなくなってきていた。

度重なる自慰調教によって、慣れてきていたのもあったが、
誠は一般的な男性と比べて中性的で、誰にでも優しくできる姿勢には尊敬の念を抱いていたほどだ。

恭子は内心、誠が自分の家に来ることを喜んでいた。

とても小さなことだが、普段誰もいないこの家で、
こうして他の誰かと食事ができるのは恭子にとってささやかな楽しみだった。

もちろん誠よりも直美と一緒にいた方がずっと楽しいのだが、
家族団欒を味わったことがない恭子にとって、それに似た雰囲気を自分の家で味わえるのはとても貴重なことだったのだ。

恭子が誠を笑顔で出迎えたのも、
御菓子や紅茶を用意したのも、恭子の素の感情が表に現れた形だった。

例え恋敵であろうとも、
恭子の家を訪れてくれるのは誠と直美の二人だけなのだから……



※※※



恭子は眠っている誠を見てふと思った。

もし直美との関係さえなかったら……
誠とはもっと親しい友人になれたのではないだろうか?

恭子にとって、こんなに優しくて、
一緒にいて落ち着ける人は直美以外では珍しく、
今まで出会ってきたどの男性とも違って、誠は裏表なく接してくれる信用のおける人物だった。

しかし、依然として直美との恋人関係は続いており、
今はたまたま距離を離すことに成功をしているが、いつまた元の関係に戻ってしまうかわからないと、恭子は心配していた。


(念のため、他の女性へ興味を持たせる催眠をかけてみようかしら? いや、それよりも……)



『男の人に興味を持たせる催眠をかけてみるのはどうかしら?』



誠に男性を好きにさせる。

その方が、他の女性を好きにさせるよりも、直美との距離は広がるはずだ。
そもそも好きになる性別が変わるのだから、女性である直美と付き合おうと思うはずがない。

中性的な顔立ちもしているし、女性としての自分に目覚めさせれば、
今よりも気兼ねなく、友達として誠と付き合っていけるかもしれない。

そこまで考えると、恭子は大きく深呼吸をした。
これから目の前にいる誠の心を変化させるのだ。

恭子はなんだかわくわくとしていた。



※※※



まずは手始めとして、恭子は誠に女性の服を着ることに慣れさせることにした。

突然、女物の服を着てくださいと頼まれても、大抵の男性は断るはずだ。

恭子は先に男女兼用のユニセックスなビジュアルの服を着せ、徐々に女性らしい服装に慣れさせていくことにした。

恭子は基本的に一人で、この一軒家に住んでいるものの、
社会的地位の高い両親から送られてくる仕送りの額は、高校生の恭子が持つには多すぎるほどで、
洋服ダンスにはデパートやショッピング街・通販などで購入した服が大量に保管してあった。

気になるのはサイズだが、男性の平均身長に比べて、誠の身長は若干低く、
また肩幅もすらっとして狭かったので、合うものが十分揃っていた。



※※※



初めは中性的な服を着る事にも、渋る表情をしていた誠だったが、

恭子が、「誠くんはいつも催眠かけてもらったり、相談に乗ってもらっているのに、私のお願いは聞いてくれないの? もちろん聞いてくれるわよね?」と言うと、困った顔をしながらもコクリと頷いた。

そして誠が言われた通り着替えると、
恭子は「キャー! すごいよく似合う! 誠くんカッコイイね!」と大袈裟に褒めちぎった。

誠は自分の服装に違和感があったが、美人の恭子にベタ褒めされて満更でもない様子だった。



※※※



次の日。
恭子は誠と約束した通り、直美に理由を尋ねそれをそのまま誠に話した。

誠は納得のいかない様子だったが、
恭子から「この問題はじっくり解決していきましょ」と促され、
引き続き恭子を相談役として、直美と仲直りする方法を模索していくことにした。



※※※



それからの数日間は、最初と同じように催眠をかけていった。

恭子は中性的な服を着せる合間にも、女物のアイテムを加えていった。

それに対し、誠が難色を示すと、

「男性モデルの中には女性用のアイテムをアクセントとして使う人もいるのよ?
センスの良い人だったら、みんなしていることだから別におかしなことじゃないの」と説得し、女物のアクセサリーを誠に身に付けさせていった。


実際、恭子は昔からファッション・アパレル業界への関心が高かった。

恭子自身の素質の現れでもあったのだが、母親がイタリアで自分のブランドを立ち上げ成功している人物であることも影響していた。

恭子は幼い頃、母親がスケッチブックに案をまとめている様子を間近で見ていた。
そのおかげか、恭子は服飾のデザインを考えるのが得意で、よく自前のノートに案を綴ったりしていた。

直美も誠も、恭子のプロ顔負けのデザインを見せてもらい驚嘆したことがあった。

そのような経験があったため、余計に恭子の暗示は効果があったのだ。

誠も、そんな恭子にベタ褒めされ、
ほぼ女物の服を着ているにも関わらず、気分を良くしていた。

おそらく催眠状態になくとも、
恭子に促されれば女性物のアイテムを身に着けていただろう。



※※※



そうした暗示を繰り返したある日、
ついに恭子は誠を完全に女装させることにした。

なるべくゆったりとしたサイズのAラインワンピースを引き出しから取り出し、誠に渡す。

それを受け取った誠はそれを床に置き、
おもむろに立ち上がって着ていた制服を脱ぎ始めた。

恭子は最近慣れてきたのか、誠の裸を見ても平気になってきていた。
もともと中性的な身体つきだ。
胸の小さな女性だと思えば嫌悪感も少ない。

誠は制服を脱ぎ終わると、
置いていたワンピースを手に取り背中のチャックを下ろして頭から被った。

袖を通すと恭子に背中を向けていたため、恭子はそのまま背中のチャックを上げてあげた。

誠が振り返ると、恭子は目を丸くした。


「なにこれ……誠くん……綺麗……」


恭子は思わず両手で口を覆い、声を出していた。
胸の膨らみこそないが、誠のワンピース姿は髪の短い女性そのものだった。

一般的な男性より狭い肩幅、開いた首元から見える白い鎖骨、ちょうど見え隠れする膝は綺麗で、そこから伸びる脚は健康的な女性のそれと変わらない形をしていた。

もともと筋肉のつき方が一般的な男性とは違うのだろう。
体から出る雰囲気と中性的な顔立ちも相まって、誠は一言で言うと「綺麗」そのものだった。

恭子は部屋の隅にあったスタンドミラーを持ってくると、誠の前に置いた。
誠も初めてみる自分の女装姿に驚いたのか、少し動揺しているようだった。


「どう? あなたってこんなに綺麗でかわいかったのよ。まるで本当の女の子みたい。そう思うでしょ?」


誠は恭子の言葉に、遠慮がちに頷いた。



※※※



恭子は感動していた。

胸はないものの、これだけ綺麗なら、女性モデルとしても十分やっていけるのではないだろうか?

身長も女性にしては高く、スタイルも良い、いつか自分がデザインした服のモデルになってもらおうかと本気で考えてしまうほどだった。

誠は鏡の中の自分を恥ずかしそうに、しかしじっくりと見ていた。やはり自分でも似合うことがわかるのだろう。
恭子は誠にひとしきり自分の女装姿を観察させると、スタンドミラーを片付け、誠を元の制服姿に着替えさせた。


「どう? 女の子の服を着た感想は?
すごく楽しくて気持ちよかったでしょ?
あなたはまた女の子の服を着てみたくなるわ。また綺麗な自分に戻りたくなる。そうするとすごく幸せな気持ちになれるわ」


最後にそう暗示をかけると、誠の催眠を解いて帰らせた。

恭子は誠が帰った後、一人考えていた。

正直なところ、ここまでうまくいくとは思っていなかった。
この感じなら、次の催眠もスムーズにできるだろう。


(それにしても…きれいだったなあ)


学年でもトップクラスに入るほどの美女が綺麗というのだから、誠は本当に素質があったのだ。

まだ化粧もしていないし、女装と言ってもワンピースを着ただけだったが、少なくとも男性には見えない誠の女装姿を思い出し、恭子は一人微笑んでいた。
[ 2017/09/15 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(2)

part.17 【 誤認催眠 】

【注意】今回 BL要素 があります。



その夜、誠は夢を見ていた。


恭子と直美が前を歩いている。
二人ともどこか都内を歩いていて、
心なしかいつもよりおしゃれをしているように見える。

二人を後ろから見ていると恭子が振り返って言った。


「マコトちゃん、早くおいでよ!」


マコトちゃんと呼ばれた誠は動揺した。
普段はそんな呼ばれ方はされたことがない。
ふと気になって自分の足元を見た。

そこには無駄毛の生えていない脚とレースの靴下に茶色いパンプスを履いた足があった。

驚いて横のビルに映った自分の姿を確認する。

白いふわふわとしたトップスに、焦げ茶色のタイトスカート、ビルの大きな窓に映った自分は完全に女性の格好をしていた。

化粧もしていないし、髪型もそのままな所が少し違和感はあるが、誠はなぜかその自分の姿に見入ってしまう。


(かわいい…)


誠はそう思った。
夢の中の自分を誠は否定しなかったのだ。


「何してるのマコトちゃん、もう行っちゃうよ?」


数歩前に立ち止まっている直美がしびれを切らしたように言う。


「ああ、ごめん、今行くよ」


誠はそう言うと軽く走って二人に追いつき、三人でまた歩き出した。


そこで誠は目を覚ました。
まだまどろみの中なのか、ふわふわとした頭で考える。


(どんな夢を見ていたっけ? 恭子さんと直美がいたような?)


誠は少し首を傾げたが、すぐにベッドから降りた。

誠が学校の準備を終える頃には、夢を見たことすら忘れていた。



※※※



次の週も誠は恭子の家を訪れていた。

恭子の家に来て、相談をする。
そして催眠でもやもやした気持ちを安定させてもらう。その流れが誠にとって当たり前となっていた。


今日も恭子は誠に催眠をかけ、服をすべて脱ぐように暗示をかけた。


「じゃあ、これを見て」


恭子はこの前と同じようにスタンドミラーを誠の前に置いた。
誠は自分の全裸姿を見ることになる。


「誠くんは、自分のおちんちんについて、どう思う?」


恭子が尋ねると、誠は鏡の中の自分の性器に目をやり、少し顔を歪めた。


「その様子だとあんまり良く思っていないようね。小さくて、男らしくなくて、恥かしい、そんなとこかしら?」


誠は自分のコンプレックスを突かれた気持ちになり、暗い顔をしつつもコクリと頷いた。


「それは間違い、そんなこと全然ないわ」


恭子は誠に向かって続けた。


「あなたのおちんちんは白くてとっても綺麗。
他の男の人と比べたら小さいかもしれないけど、そこが可愛いわ」


恭子にそう言われ、誠は戸惑った顔をしていた。


「今日からあなたは自分のおちんちんが嫌じゃなくなる。むしろ好きになるのよ」


恭子は誠の目を見て言う。
誠は自分の性器を眺め、何か考えているような表情をしていた。


「ほら、自分のおちんちんに触れてみて」


恭子は誠に自分の性器に触れるように指示を出した。さわさわと性器を触る誠。


「とてもスベスベするでしょ?
こんなに肌触りが良くてかわいいおちんちんを付けている人なんてなかなかいないわ。あなたしか持っていない貴重なものなんだから、もっと大事にしてね」


女性に見せたら馬鹿にされるとしか思っていなかった誠は、その肯定的な意見を素直に受け入れ静かに頷いた。

誠が自分の性器をじっと見ている間に、恭子はスマホで何かを探していた。
そしてしばらくタップとスクロールを繰り返した後、口を開いた。


「誠くん、これを見て」


恭子は自分のスマホを傾け、ある画像を見せた。
そこには女性にしか見えないニューハーフの全裸画像が映っていた。


「こんなに可愛い子にもおちんちんが付いてるんだよ。このおちんちんも誠くんのと同じように白くて可愛いわね。どう、興味が出てきたでしょ?」


誠は恭子の持つスマホを覗き込むと興味深そうに眺めた。
そして画面の中のニューハーフの性器と自分の性器を見比べコクリと頷いた。



※※※



次の週も誠は恭子に催眠をかけてもらっていた。

恭子はベッドに寄りかかり座る誠の前にパソコンを開いて置く。

そこには動画が流れていて、女同士が服を脱がせ合っているところだった。
以前から女同士のセックスに興奮するよう暗示をかけられていた誠は、動画に目を奪われ股間を硬くしていった。


「ほら、ここを見て」


恭子が指をさしたのは、一人の女性の股間部分だった。


「ほら、あそこにちんちんが付いていて、あんなに勃起してる…すごくエッチね?」


恭子が言い終わるのを待たないうちに、
動画の女性は完全に服を脱がされ、勃起した性器を露わにしていた。
体同様に白くて小さい性器だということがわかる。

初めにレズビアン動画だと思っていた誠は、戸惑っていた。

誠の股間も混乱して、萎えたら良いのか、勃ったら良いのか複雑な状態だ。

上半身を見ると、
女性同士がセックスをしているように見えるので勃ちかけるのだが、
画面の視点が股間に映ると、そこには自分と同じ白くて小さな男性器が勃起しているのだ。

ノーマルな男性だったら、それを見て勃起するはずがない。
気持ちを整えたのか、誠の勃ちかけていた性器も徐々に落ち着きを取り戻し、
元の柔らかい姿へと戻っていった。

恭子はそんな誠の様子を見て、すかさず暗示をかけた。


「まるで女の子におちんちんが生えたみたいね。
これはふたなり動画と言って、
女の子におちんちんが生えているように見せてるだけなの。
だからおちんちん大きくさせても大丈夫よ」


恭子は嘘をついた。
恭子の見せている動画はあくまでニューハーフ動画だった。

誠の男同士への抵抗感を予想していた恭子は、
あらかじめ誤魔化すセリフを考えていたのだ。


「こんなにかわいい子達が男の子なわけないでしょ?
ちょっと珍しい動画だけど、いつも通り安心して自慰しなさい」


恭子は笑顔でそう言うと、コンドームを誠に手渡した。

女同士の動画と言われ、
安心した誠はコンドームを付け、自らの性器を扱き始めた。



※※※



動画の中では先に勃起した方のニューハーフの性器が、もう一方の手によって扱かれていた。
ヌルヌルとしたローションを垂らされて、気持ちよさそうに喘いでいる。


「あんなに可愛いおちんちん、扱かれて気持ちよさそう……興奮するわね?」


恭子は誠に問いかけ、誠は動画を見ながら頷いた。

作り物とは言え、ちんちんが付いているのは正直微妙な気持ちであったが、
何度も恭子にちんちんに対して肯定的な暗示をかけられると、次第にそれも気にならなくなっていった。

相手の性器を扱いていたニューハーフは、もう一方を四つん這いにさせると、ローションをたっぷりつけた指でアナルをほぐし始めていた。

誠は初めてみたアナルセックスの準備に動揺したのか、画面から目を離せないでいた。


「これからあのおちんちんがお尻の穴に入れられちゃうんだよ」


恭子はこれから起こることを誠に説明する。
そして動画ではアナルをほぐし終えたニューハーフが自分の性器にローションを垂らし、相手のニューハーフに挿入しようとしていた。


『んぁぁぁあっ! 』


挿入された側が裏声で激しく喘ぐ。


「どう? お尻が、すごく気持ちよさそうね? 
動画の女の子、まるで誠くんみたい。
もし誠くんもお尻に入れられたら、どうなっちゃうのかな……?
気持ち良くて喘いじゃうかもね?」


誠は動画を見て、自分のお尻を意識したのか、もぞもぞと体勢を変えた。

恭子は誠にアナルを意識させる暗示をかけ続けた。


「いいのよ? そのままお尻を意識してね。
意識すればするほど気持ちよくなっていくわよ……」


誠の顔は赤く、口を開けて呼吸をしていることで、傍目にも興奮が見て取れる。
誠の性器は依然として勃起したままだ。

初めは戸惑いながらも自分の性器を扱いていた誠だったが、女性同士の行為と思い込んでいることもあり、徐々にニューハーフ同士のセックスに対し、股間を熱くさせていった。

恭子はそんな誠を見て少し微笑みながら言った。


「ねえ…あんなに気持ちよさそうなのに、
本当の女の子にはおちんちん、付いてないんだよ?
それって、とってもつまらないことじゃない…?」


誠は『本当の女の子』と言われ、
意味がわからない様子だったが、気にせず射精寸前の性器を扱き続けていた。


「ほら、あの子もうすぐイキそうよ。誠くんも一緒にイキましょうね?
一緒にイクとすごく気持ち良い……
お尻がキュっとしまって、今まで見たどのレズビアン動画の中でも、一番気持ち良くなれるわよ」


動画では性器をアナルに入れられた方のニューハーフが、四つん這いのままでイキかけていた。

一緒にイクと気持ち良いと暗示をかけられ、誠はイクタイミングを合わせようとしていた。


しばらくは動画のニューハーフの喘ぎ声と、誠の荒い息遣いが続いた。

その様子を恭子は小悪魔的な眼差しで見つめている。


(ふふふ……誠くん、気持ちよさそう。
いっぱいイって早く女の子に目覚めてね……)


誠の腰の動きが激しくなる。

前は挿れる側のニューハーフ、
後ろは挿れられる側のニューハーフになった気持ちで自慰をしているようだ。


『あぁっ、だめぇ、いくぅ……いくっいくぅぅぅぅぅぅ!! 』


そしてニューハーフが射精すると同時に……


「あぁっ!! はぁっ……! はぁっっ……! あぁぁぁぁぁっっ!!」


誠も自分の精をコンドームの中に放った。

射精した瞬間、誠は驚いていた。
作り物だと思っていた女性の男性器から本当に精が放たれたからだ。

それでも暗示をかけられている誠は、
射精した後もなお息を荒くし身体をビクビクさせていた。


「ごめんね。誠くん。この子達、本当は男の子なの。
でもすごく気持ちよかったでしょ?

誠くんは女の子同士のエッチよりも男の子同士のエッチを見た方が、何倍も気持ちよくなれちゃう男の子なのよ?

でもあんなに可愛くてエッチな子達のセックスを見たら、気持ちよくなるのも仕方ないわよね?

それに、おちんちんが付いてなきゃあんな風に気持ちよくなれない……
誠くんはおちんちんが付いてるから、あんな風に気持ち良くなれるのよ?」


ハァハァと荒い息を吐き、
快感で頭に軽い痺れを感じつつ、誠はしっかりと頷いた。
[ 2017/09/17 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.18 【 直美の勘 】


「ごめん、誠。あたし、二人の関係を見つめ直したいの……」



夏休みも終わりに差しかかる頃、
学校のすぐ近くの公園で、誠は直美から、別れ話を切り出されていた。

なんとなく予想はしていた。

二人の関係を元に戻そうと、今まで幾度となく直美と接しようとしてきた。
恭子にも協力してもらい、原因解明に努めていたが、結局この事態を避けることはできなかった。

誠は最初、背筋が凍る思いで直美の第一声を受け止めたが、
この雰囲気に呑まれてはならないと、懸命に心を落ち着かせ、直美の目を見据えながらゆっくりと口を開いた。


「最近一緒にいてくれなくなったから、何かあると思ってたよ。
せめて、理由だけでも教えて欲しい……
何が原因かわからなければ、こっちだって納得できないよ」


至極当然の言葉を、直美に投げかける。

普段は伝えられないことでも、
別れ話を切り出すほどの覚悟を持ってきているのであれば、理由を話すはずだ。

直美が理由を明かした後、もし可能であればこの場で問題を解決し、
難しいようであれば、一旦この場は保留にして、恭子に協力してもらい解決策を見つけることにしよう。

誠はそう考えながら、
俯き口を閉じてじっと地面を眺めている直美が口を開くのを待った。

公園の草むらでは、鈴虫が鳴いている。
鈴虫が鳴くのは、雄が雌へと求愛するためのものだ。

今の二人を包む雰囲気とは、なんとも真逆な音を鳴らしていた。

直美はしばらく何かを考えていたようだったが、意を決して話し始めた。


「ごめんね、誠。これだけは信じて……
あたしも、何が原因なのか全然わからないの……
このまま一緒にいたら、
どんどん誠のこと嫌いになっちゃいそうな気がして……
だから、これ以上嫌いになる前に、離れておこうと思ったの……」


誠にとっては、予想外の答えだった。
まさかこんな状況でも何も話してくれないなんて……
暗い気持ちが誠の心を包んだ。


「くっ……どうして………そんなんじゃわからないよ!」


直美は再び口を閉じてしまった。
しばらく二人の間には気まずい沈黙が続いた。


(……)


誠は気を取り直すと、再び直美を見つめ、静かに話し始めた。


「……直美……愛してる。

二人の未来を作りたい。
結婚して、子供を作って、家族団欒で楽しい家庭を作りたい。
おじいちゃんおばあちゃんになっても仲良しで、最後まで一緒に暮らしたい。

何が原因なのか二人で探していこうよ。
二人で力を合わせればきっと見つかるはず、もう一度二人で頑張っていこう」


誠らしい台詞だった。
直美のことは決して責めず、
あくまで前向きに、自分の気持ちを伝え、幸せな未来を思い描かせた。

誠の気持ちが直美に伝わったのか、
直美は顔を赤くし、目には涙を浮かべ始めていた。
震える嘆息を漏らし、必死で言葉を紡ぎながら直美は声を発した。


「うぅぅ……ひっく……ごめん……ごめんなさい……
でも…でもこれが……ぐすっ

二人にとって……これが一番良い結果につながるって……
あたしの中で何かが……強く告げているの……

信じてもらえないかもしれないけど……本当なの!」


直美はそういうと泣きだしてしまった。

誠は直美のそんな様子を見て、嘘をついていないと感じた。
長年一緒にいた仲だ。
直美の性格はよく知っていたし、
こういう時、決して口から出まかせを言うような女性ではない。

原因が何なのかはわからない。
以前恭子が、直美は宇宙人に攫われて洗脳されてしまったのではないかと、
冗談で言ったことがあったが、今はそれを信じてしまいそうになるくらいだ。

昔から直美の勘はよく当たっていた。
守護霊だとかのアニミズム的なものを、誠はあまり信じてはいなかったが、
直美はこういう時、何かに取り憑かれたかのように正しい道を選ぶのだ。



※※※



中学校の時、直美の弟のユウが迷子になった時だってそうだった。

誠は学校の帰り道、デパートの入口で泣いているユウを見かけて、
中の迷子センターまで連れて行ったのだが、
ユウはたまたまデパートの前にいただけで、実際は別のところから歩いてきていたのだ。

にも関わらず、直美は数ある建物の中から、そのデパートを選んで、
誠と一緒に待っているユウを見つけた。

あとから直美にどうしてあの場所がわかったのか聞いてみたのだが、


「よくわからないんだけど、
何かがあたしに『ここだよ! 』って教えてくれた感じだったかな?
たまにそういうことあるんだよねー!」と、あっけらかんと答えていた。


そういうことがあったのもあり、誠は直美の勘を信じていた。
理屈はわからなかったが、今はあまりその勘に逆らわない方が良い、と感じていた。


「わかった……直美。信じるよ……
でも最後に、もう一度だけ抱きしめさせて欲しい」


それを聞いて、直美は誠に抱きしめられるのをひどく嫌悪した。

本当に訳がわからなかった。
どうしてこんな場面でも嫌な気持ちが芽生えるのだろう?

直美は一度は拒否しようと思った。
しかし、これが最後かもしれないという思いが、直美の背中を後押しした。


「いいよ……誠……このまま抱きしめて……」


誠は直美を抱きしめた。
とても優しくゆっくりと……
鼻腔に直美の匂いが広がる。
直美と抱き合うのはとても久しぶりだった。
懐かしさと安心感が心を包む。

しかし同時に、これが最後だという思いが、誠の心をきつく締め上げた。
目頭が熱くなるのを感じ、誠はぐっと目を閉じた。

直美の方は誠に抱きしめられる不快感と、
決して離してはならない存在への言い知れぬ思いを感じていた。

こんなに悲しいのは、今でも誠のことを心のどこかで愛しているからなのだろう。

直美の頬を再び大粒の涙が伝う。
抗えない力に押されるかのように、この道を選んでしまった直美。
しかし、薄暗く沈んだ心に、なぜか微かな光が灯っているような気がしていた。


(ううん、これが最後なんかじゃない……
いつかきっと一緒になれる……そんな気がする)


やがて、二人は身を離し、お互いの幸せを願って別れた。



※※※



二人がいなくなった後、死角となった物陰に一人の女性の姿があった。
髪の長い黒髪の女性は、己のしてしまった罪の重さをひしひしと感じていた。
身体は微かに震え、顔を俯かせている。

しかし目は鋭く研ぎ澄まされ、決して後戻りのできない思いを胸に秘めていた。
しばらく女性はその場所に佇んだ後、静かにその場を立ち去った。



※※※



直美と誠が別れて数日後。


誠は以前と変わらず恭子の家を訪れていた。
直美と別れた誠のショックは大きく、思いの丈を恭子にぶつけていた。

以前と違い、恭子は誠に真面目に向き合っていた。
今まで直美一筋できた恭子としては大きな変化であった。
誠の悩みを聞きつつも、恭子は今までのことを思い返していた。

恭子は悪人としての自覚があった。

己のエゴのために二人の仲を引き裂き、心をズタズタにしてしまった。
決して許されることではない。
二人の本来の性質を歪め、自らの望むように操作した。
もしも贖罪を願うのなら、それこそ一生をかけて償わなければならないことだ。

直美も誠もどちらも優しすぎるくらいの善人だ。
人を信じ、困っている人がいたら助け合う。
だからこそ催眠術にかかりやすいのだろう。

こんな二人を騙し、好きなように操るなど悪魔の所業である。
2年前、初めて直美に催眠をかけた時に、恭子は覚悟していた。
もし成功すれば、こうなることも、
自分が今のような気持ちになることも全て予測していたのだ。


恭子の記憶はさらに遡る。


恭子は自分のことを大切にしてくれる人がいつか現れるなどとは考えなかった。
血のつながった実の両親にも大切にされてこなかったのだ。
周りに信じられる人もおらず、そのような希望は自らの心を傷つけるのみで、
むしろ邪魔なものでしかないと考えていた。
気持ちが常にモヤモヤとうごめき、視界もぼんやりと生きてきた。

そんな閉塞的な心の檻に突如現れた光、それが直美だった。

直美と一緒にいると心が落ち着いた。
視界もクリアーになり、生きているという実感が湧いた。
直美とキスをして、初めて心の底から幸せと思えた。

同時に手に入るはずのなかった光を手に入れ、
逆にそれを失う恐怖が恭子を包んでいた。
恭子にとって、直美を失うことは既に人生の死を意味していたのだ。

だからこそ、直美と誠の別れ話の現場にいても、
恭子は一度手に入れた光を決して離そうとは思わなかった。
罪は償おう、だがそれは今ではない。
確実にその光を手にしてから………


恭子はその日、相談にきた誠に、いつもと同じように催眠術をかけ家に帰した。



※※※



恭子が誠の心を女性化させる催眠を始めて数週間が経過していた。

誠は自身の変化を少なからず感じていた。
最近、制服姿の女子が可愛く思えてきたのだ。
一見すると年頃の男性には当たり前のことだが、誠の感情はそういったものではなかった。

学校で見る女子の「制服」が可愛く思えてきたのだ。

誠は学校から帰ると、制服のままベッドに上がり、スマホをいじる。
調べることはここ最近決まっていた。

『制服 女装』

検索窓にそう打ち込み、出てきた画像をなんとなくスクロールしていた。
セーラー服、ブレザー、そこにはいろいろな体格の男性が、
様々な制服を着て写っている画像が並んでいた。

中にはどこから見ても女性にしか見えない画像もあったが、
多くはすぐに男性とわかるような画像で、誠はそのままスクロールして綺麗な女装の画像を探していった。


(なにをやってるんだ、僕…)


ハッとした誠はそう思うと、スマホをテーブルに置いた。
シャワーでも浴びて、すっきりしよう。頭の中のもやもやも晴れるかもしれない。
誠は風呂場へ向かい、脱衣場で服を脱ぐ。

ふと、鏡に映った自分の姿が見えた。
毎日見てきたはずの全裸の自分。なんとなく、自分の性器に目をやる。

小さくて、白い。
感想はいつも感じるものと変わらなかったが、今日は少し違っていた。
なんだか、目が離せなくなる。

そのうちに誠はある変化に気づいた。
徐々に性器に血液が集まり始め、硬く勃起を始めたのだ。

誠は動揺していた。

どういうことだ。自分の性器を見て、今、自分は興奮している。
心臓の音が速くなる。誠はおもむろに性器に手を伸ばしてみた。
触れるか触れないかのところで、手を止める。


(…何を考えているんだ)


自分は今、確かに自慰をしようとしていた。
誠は考えていたことを振り払うように頭を振った。
誠はその状態のまま、シャワーを浴びた。
振り払おうとした考えは、頭の中をぐるぐる回っていた。
思えば画像検索した時から薄々気づいていた。

ありえない、男性器が気になるなんて。

誠は考えを打ち消すようにがしがしと頭を洗った。
[ 2017/09/21 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.19 【 誘い受け 】


高校三年の10月を迎えた。
長かった残暑も終わり、秋風が吹き始め過ごしやすい季節となった。



直美を誠と別れさせることに成功した恭子は、
この時期から催眠のかけ方を徐々に変えていくことにした。

二人がすぐに復縁することは考えられなかったが、直美と誠の絆はとても強く、
離れているように見えるが、どんな弾みで元に戻るかわからないと恭子は考えていた。


直美にはより女性を好きにさせ、誠には男性を好きにさせる。

そうすることが最も安全で平和的な解決策だ。

まずは直美の女性への欲求を上げるにはどうしたら良いか考えることにした。


(今まで、服を着たまま催眠をかけてきたけど、
そろそろ直美にも裸になってもらって、
女同士の生の触れ合いの気持ち良さを感じてもらうのはどうかしら?)


恭子はそう考えたが、それには危険が伴っていた。
服を着ている時と違って、覚醒時のフォローが効かないのだ。

これまで催眠中に、何度も直美を絶頂させてきたが、
いずれも服を着ている状態で行われていた。

服を着ていれば、覚醒しても言い逃れできるが、
初めてキスした時のように、どちらか一方が裸だと切り抜けることはできない。

ここまで来て失敗はしたくない。

慎重に慎重を重ね、あくまでも直美が自分から求めるように仕向けよう。

こちらから刺激を与えるのは危険だが、
直美が刺激を与える立場だったのなら、おそらく覚醒はしないだろう。


そう考え、恭子は新しい計画を実行に移すことにした。



※※※



金曜日の学校帰り、
二人はいつものように並んで歩き、恭子の家に向かっていた。


「直美数学の時間寝てたでしょ?」

「げぇっばれてた?」

「ばれるよ~いくらうちで勉強できるからって、授業はきちんと聞きなさい」

「ちぇっ、はーい」


直美は最近誠と別れたが、
そのことは少しずつ気にならないようになってきていた。

恭子が催眠によって、
誠と別れたことを気にならない暗示をかけているのもあったが、
男自体に興味がなくなっていることもあり、あまり悩むような問題にはならなかった。

最近の直美は、
クラスの男子を極端に避けるようなこともなく、問題なく日々を過ごしていた。

男性に嫌悪感を感じることもなくなったうえに、
心地のいい気温が作用したのだろう、授業中の居眠りもそのためのようだった。

恭子はバッグから家の鍵を取り出すとドアを開け、玄関に入った。


「じゃあ、お茶用意するから先部屋行ってて」

「はーい」


直美は先に階段を上って部屋へと入る。
恭子は手を洗って紅茶を入れると、後を追って二階へと上った。

そうして部屋に入ると、
直美はベッドに寄りかかって座り、目を閉じていた。

紅茶をテーブルに置き、直美の向かいに座る。


(まつげ長いなあ…)


催眠中に何度も見た表情だが、改めて見るとやはり愛しさを感じる。
恭子が何も言わず直美を眺めていると、しびれを切らしたのか、直美が目を開けて笑った。


「もー、寝ちゃったのかとかツッコんでよ!」

「ああ……そっか」

「そっかって、何よ~」


恭子はふと、顔をまじまじと眺めていたことを不審に思われていないか気になったが、直美は笑いながら教科書を取り出していた。
恭子もリュックから教科書類を取り出すと机に広げた。


「えっと、じゃあ始めよっか。わからないところとかある?」

「んー今日の数学でやったとことか?」

「やっぱりわかってなかったのね、もー教えるのも大変なんだからね?」


恭子は笑いながら直美を叱ったが、実際大変なことはひとつもなかった。
勉強中は直美と密着してスキンシップが取れる。

もちろん、そのことを直美が知ることはなかったが、直美の匂い、ぬくもりを感じながらの勉強は、恭子にとって幸せなひと時であった。

恭子は直美をいつものようにベッドに寝かせると催眠をかけ始めた。



※※※



勉強はいつものように進められた。

ただ一つ違ったのは勉強後のあの習慣だ。

恭子は教科書類をしまうと、
パソコンは開かず、直美と一緒にベッドに上がった。

次に自分の服を脱ぎ始めると、
脱いだものから順に畳んでベッドの端に置いた。

そして直美に向き合って座ると、初めての暗示をかける。


「じゃあ、次は直美の番よ。
私の裸を見てたら、なんだか自分も脱ぎたくなってきたでしょ?」


直美は恭子の胸のあたりに視線を置いていたが、
興奮した表情で恭子の顔を見るとこくりと頷いた。

直美はセーターを脱ぎ、
ベッドの上に置くとシャツのボタンに手をかけたところで下を向いた。


「どうしたの? 脱ぎたくないの?」


恭子が声をかけると、直美は小さい声で答える。


「…恥かしい…」


恭子は考えた。
催眠中でも自分で服を脱ぐのには抵抗があるのか。

たしかに誠に服を脱がせた時は、銭湯で服を脱ぐイメージをさせていた。

そういったイメージなしに、
急に脱いでと言われても、抵抗があるのは当たり前だった。

しかし敢えて恭子は、
イメージを持たせずに直美の服を脱がせることにした。


「じゃあ私が脱がせてあげる。
私に脱がされると、とてもドキドキするけど、恥ずかしくはないわ」


直美が頷いたのを確認すると、
恭子は直美のシャツのボタンを上から一つずつ外していった。

だんだんと直美のブラが見えてくる。

直美の胸はピンクのブラに包まれて、ひっそりとそこにあった。
恭子ほど大きくはないが、見た目からも柔らかさのわかる白い肌。

恭子は今すぐにでも直美を押し倒したかったが、気持ちをこらえ、シャツのボタンを最後まで外すと直美の肩にかかっていたシャツを後ろへと落とした。

ふっくらとした胸に、狭い肩幅。

誠の裸を中性的に感じていたが、
本物の女性の可愛らしさには到底及ばないことに気がついた。

恭子は直美をベッドの上に立たせると、
スカートのホックを外しジッパーを下ろした。

すとん、とスカートがベッドに落ちる。

直美は恭子の前で初めて下着姿になった。

上下とも薄いピンクの下着をつけた直美を見て、恭子は心臓が破裂しそうなほど興奮していた。

それと同じように、直美も顔を真っ赤にして興奮しているようだった。

直美をまた、ベッドに座らせる。
恭子は直美に近づくと、両手を直美の背中に回した。

一瞬抱きしめられるのを期待したのか、
直美はビクッと体を硬くしたが、違うとわかると体から力を抜いた。

恭子は直美のブラのホックを外した。
直美のブラが胸の前でたわむ。


「…いい?」


恭子は直美に了解を取った。直美は真っ赤な顔で頷く。
恭子は直美のブラをストンと前に落とした。

直美の胸が露わになる。
恭子の興奮はピークに達していた。

初めて見る直美の胸。

腕などとは違って日に焼けていない白い肌に、誰にも汚されていないようなピンク色の乳首が付いている。

恭子は自然と荒くなる呼吸を抑えながら、直美の顔を確認する。

直美の顔は耳まで赤く染まり、
口で呼吸をしながら顎を引き、恭子を上目遣いで見上げていた。

その目は興奮からか潤んでいて、恭子に助けを求めるような視線を送っていた。


「大丈夫、ドキドキは気持ちいいことよ」


恭子は直美の頭を撫でると、ショーツに手をかけた。
直美は恭子が脱がせやすいように腰を浮かす。

恭子が直美のショーツを下ろしていくと、
勉強時につけさせたナプキンと直美の性器の間から一本の糸が伸びた。


「濡れちゃったね?」


恭子は直美に微笑みかけると両足からショーツを引き抜いた。
直美は恥ずかしさから、先ほどよりも顔を紅くし俯き目を閉じていた。
ショーツをベッドに置くと、恭子は直美に向き合って座った。


「ほら、目を開けて、どう?
女の子同士で裸を見せ合うって、ドキドキして興奮して、気持ちいいでしょ?」


恭子は一つずつ確認するかのようにゆっくりと直美に語りかけた。
直美は黙って恭子を見ている。
否定をしない代わりに、とろんとした目が肯定の意を表していた。

直美の目は何かを期待するかのように恭子を見つめている。
恭子は何も言わず、両手を直美の方に差し出した。
直美が遠慮がちに体を恭子の方に傾ける。
恭子は直美の腕を掴み優しく引き寄せて抱きしめた。

直美の体は緊張からか硬くこわばっている。
しかし二人の心臓の音は今にも破裂しそうなほど響いていた。
恭子は直美の頭をそっと撫でた。そうしているうちに、徐々に直美の体から力が抜けていく。


「大丈夫、力を抜いて。とっても安心するわよ?」


直美が体重を恭子の方に預けた。
恭子はさらに直美が愛しくなり、直美の背中を優しくさすった。
直美の呼吸は荒いままだったが、だんだんと落ち着きを取り戻しているようだった。


「どう? どんな気持ち?」


恭子が直美に尋ねる。
直美は熱い吐息と共に小さな声で答えた。


「あったかくて…気持ちいい…」


恭子はそう言った直美の顔を見る。
直美も視線に気づいたのか、こちらを見上げた。
潤んだ目と光る唇。少し開いた口からは舌が覗いた。


「あったかくて、気持ちよくて、ドキドキするのに、とっても落ち着くわね」


恭子は直美の唇に一度だけキスをすると、念を押すように繰り返した。
直美は恭子の言葉にしっかりと頷く。
恭子は今すぐに直美を自分のものにしたかったが、気持ちを理性でこらえ、体を離した。
直美は少し寂しそうな表情で、体勢を元に戻す。


「…さあ、寒くなっちゃうから、もう着ましょうか」


恭子は空気を変えるように言った。
寂しげな直美の瞳につい釣られそうになるが、いきなり刺激の強いことをするにはリスクが高すぎる。
少しずつ、少しずつ慣らす必要があるのだ。


(焦ったらダメよ、恭子)


恭子は心の中の自分に語りかけた。
確実に直美を手に入れたいなら、もう少しの辛抱。

この日、恭子は直美に服を着させると、自分もさっと服を着て催眠を解き、何事もなかったように直美を玄関まで送った。



※※※



それから数日間は、同じ催眠をかけ続けた。
服の脱衣着衣を繰り返し、徐々に全裸になることに慣れさせていった。

勉強が終わると、いつも同じようにベッドに上がり裸になる。
直美は照れているようだったが、自分で下着を外した。
どちらからともなく手を伸ばし、体温を確かめ合う。


「あったかいわね?」

「…うん」

「ドキドキする?」

「ドキドキする…」


直美の心臓の音は恭子も容易に聞き取ることができた。
自分で確認をさせるのは、催眠の効果を深めるためだ。

裸になるのを今まで何度も繰り返してきたが、まだ完全には慣れていないのだろう。
直美の体からは、緊張と期待が見て取れた。
恭子はそんな直美に優しくキスをした。


「ん……」


直美の鼻から小さな息が漏れる。
恭子は何回かついばむようなキスを繰り返すと、直美の唇に舌を差し込んだ。
直美はそれに拙い動きで応じる。

直美のぎこちない舌の動きが、恭子は愛しくてたまらなかった。
唇を離すと、直美の濡れた唇との間に一本の糸が引いた。
直美は潤んだ目でこちらを見ている。

恭子は直美の手を取ると、自分の胸に当てさせた。
直美は一瞬戸惑いを見せたが、やはり興奮するのだろう、恭子の胸を優しく撫で始めた。

直美が、自分の胸を触って興奮している。
その事実だけで恭子は嬉しくてたまらなかったが、平静を装い、直美に暗示をかけた。


「ん…私の肌、どう思う?」


直美は一瞬考え答えた。


「白くて、綺麗…」

「そうでしょ? それに、とってもすべすべなのよ」

「うん…」


直美は恭子の暗示通りに、恭子の胸を触りながら、感触を確かめるように指を動かした。


「キスしてみたら、もっとさらさらなのがわかるわよ?」


恭子はそう言うと、直美の唇を自分の親指でなぞった。
直美はそれでたまらなくなったように、恭子の肌に唇を近づける。
恭子が首を上向きにそらすと少し浮き出た喉に、直美が遠慮がちにキスをする。


「…ん、もっといろんなところにしていいのよ…?」


恭子がそう言うと、直美は唇を喉元から鎖骨にかけて滑らせた。


「っあ…そう、そんな感じ…」


直美はまるで唇で恭子を味わっているようだった。
最初は遠慮がちだった直美も、恭子の声を聞いて興奮してきたのか、恭子の肌に音を立てながらキスを繰り返した。


「ちゅ……ちゅぷっ……ちゅっちゅっ……」

「あっ……はぁ……」


いつの間にか直美は恭子の胸を揉んでいた。
恭子は直美に胸を揉まれキスをされ、自分の性器がじわっと熱くなっていくのを感じていた。


「…ん、あ、そこ…」


直美の指が恭子の乳首をかすめると、恭子は耐え切れなくなって、直美の胸に手を伸ばしてしまった。


(……だめっ! )


だが、そこで思い止まる。

こちらから刺激を与えてはいけない。

何度か直美のことを絶頂させたことがあるが、
それは服を着ていたからできたことで、
今、刺激を与えて、目を覚まさせてしまったら誤魔化しきれない。

……直美の好きなようにさせるしかない。

恭子が湧き上がる欲情を抑えている間に、直美は自分から恭子の乳首を触り始めた。
恭子の首筋を舐めながら、指先で乳首を転がす。


「ふ、ぅん…な、直美?」


恭子は動揺しつつも、漏れる声を抑えきれずにいた。
直美がしていることはいわゆる愛撫に近かった。
恭子は薄れゆく理性の中で、いい機会だと捉えていた。

このまま、直美に私の体を覚えさせよう。


「直美、そこ、舐めてみたらどう…?」


恭子は直美をじわじわと誘導する。
直美は首筋を舐めていた舌を、下へと動かした。
つつつ、と舌の位置が下がるにつれ、恭子はぞくぞくとした感触を背中に感じていた。

直美の左手は恭子の右の乳首を指でつまんでこりこりと動かしたままだ。
直美の舌が乳首に近づくにつれ、恭子は声を抑えきれなくなった。


「ぁ…ん…は、ぁあっ!」


恭子は直美に乳首を舐められ、首を反らした。
直美はそのまま恭子の胸に吸い付き、舌で乳首を転がしてくる。
恭子は動揺し、喘ぎ声を我慢することができなかった。


「んんんんんっ! ああっ! ああっ! 
あっあっあんっ! んんっ、いぃっ……はぁはぁ……」


誠と別れたことで、直美の女性に対する気持ちのタガが外れてしまったのだろう。
恭子が勉強の後に繰り返し見せていた動画も直美に影響していた。

恭子はぼんやりと考えた。

直美が自ら恭子の身体を求め始めてきている。

これは恭子にとって好都合のほかならなかった。
恭子はぞくぞくとした感触に身を任せ、徐々に力を抜いていった。

そのまま直美が上になる形でベッドに倒れこむと、直美は胸への愛撫を激しくさせた。


「ぁあ…はぁんっ」


恭子は直美の頭を抱えて愛撫を受け入れていた。
そうして直美の心の赴くままに、恭子の身体を好きにさせ、
最後はベッドの上で抱き合ってゆっくりとキスをした。

しばらく抱き合って呼吸を整え、ふと時計を見ると二十時を回っている。
恭子は元の制服に着替えながら、遅くなってしまったことの言い訳を考えていた。



※※※



次の日の朝、二人は一緒に登校していた。


「も~キョウちゃん、勉強長くなるなら言ってよねー」

「ごめんごめん、なんか集中しちゃって」


集中しちゃってというのはあながち間違いではなかった。
時間を忘れて抱き合っていたので、時計を見ることすらしなかったのである。


「お夕飯の片付け全部あたしがやることになっちゃったんだから」


直美は恭子に文句を言っていたが、表情は大して怒っていないようだった。

親に連絡をしなかっただけで、
高校三年生の二十時は夕方みたいなものだったからだ。

その証拠に、直美は自分から恭子を誘った。


「ねえ、今日も勉強会やるでしょ? これから授業の予習もしちゃわない?」


催眠中のことを何も覚えていないのだろう、直美は成績が上がることを純粋に喜んでいた。

直美の成績はクラス平均より少し上になってきていた。
授業の復習が毎回完璧なのだから、当たり前のことだった。


「わかった、じゃあ今日も気合入れてやろっか?」

「わーい、またキョウちゃんと勉強できるー!」


直美の喜びに他意はなかったのだが、
恭子は自分の催眠が認められているようで嬉しかった。

もう少し、もう少ししたら直美を自分のものにできる。

恭子は前を飛び跳ねている直美を微笑んで見つめていた。
[ 2017/09/22 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.20 【 お泊まり会 】


恭子と直美が裸で触れ合うようになってから、数週間が経過していた。


以前と比べ、直美の恭子へ対する接し方は大きく変わり、

今までは手をつないだり、軽くタッチするくらいだったのが、
最近では、直美の方から抱きついてきたり、腕を組んできたりするようになっていたのだ。


「ちょっと、直美。少しくっつき過ぎよ……」

「え~、いいじゃん! 
女子校だと、このくらい当たり前だよ。
あたし達付き合ってますー! なんちゃって☆ミ」


周囲の人たちは好奇の目を向けてはいるものの、
直美の性格をよくわかっているのと、恭子が気まずそうな表情を見せているので、そこまで真剣に二人の関係を怪しむことはなかった。

いつもの直美のマイブームが変わったのだなくらいにしか思われていないようである。

それに付き合わされている恭子を、
お気の毒に…と,憐れむような目で見る者もいたとかいないとか。

しかし、この状態は恭子にとって好都合であった。

卒業まで後半年もない。

このまま二人の関係を周囲に悟られることなく卒業し、
大学合格後はルームシェアで二人で住む場所を見つけようと思っていた。

そこまでいけば、後は直美と恋人同士になれる。

大学に入ったら、
初めから周囲にはそういう関係だということで認知してもらうことにしよう。

恭子は直美との仲睦まじい生活に期待を寄せていた。


「ねぇ、直美」

「なぁに? ハニー?」

「ちょっと、何それ……」

「えへへ。ちょっとやり過ぎ?」

「もう、恥ずかしいからやめてよ」

「ごめんごめん。それで用件はなぁに?」

「もう入試も近いことだし、
一度私の家で泊まり込みでみっちり勉強してみない?」

「おおっ! それいいね! 
キョウちゃん家に泊まりに行くの初めて! ワクワク♪ ワクワク♪」


恭子はこれまで何度か直美を泊まりに誘おうと考えていた。

しかし誠との関係があったのと、
恭子自身が直美を自宅に泊めて理性を保てる自信がなかったため、
そういう話題は避けるようにしていた。

だが、ここまで直美の催眠深度が進んだのなら、もう我慢する必要はない。

一気に直美との関係を次の段階へと進めることにしよう。

直美は既に、恭子の唇や乳房の味を覚えてしまっているのだ。

残すところは一つだけ……

直美の無邪気な期待とは裏腹に、
恭子は直美との愛欲に乱れた夜に期待を寄せていた。



※※※



土曜日、直美は一度帰宅し、
お泊りセットを片手に恭子の家を訪れていた。

二人はいつものように世間話をし、
今まで勉強した箇所を復習した後、催眠術を開始した。

普段よりも過激なことをすると決めていた恭子は、
先に直美を裸にさせてから、勉強を始めることにした。

いつものように密着しながら勉強を進める二人。
直美の背中に、恭子の柔らかくたわわな胸の膨らみが直に押し付けられる。


「ぁ……はぁ……」


早くも直美が声を上げる。
衣類を間に挟むのとは違った感触に、二人の官能は刺激されていった。

しかし、そんなことに構わず恭子は勉強を進めていく。

多少効率が悪くなるのはわかっていたが、
今日は土曜日、それもまだ午後になったばかりだ。

時間はたっぷりある。
今のうちから直美の情欲を駆り立てていき、
より強い刺激を直美の方から求めるように仕向けていこうと、恭子は考えていた。

大体は直美の問題を解いている時間が多いので、教えることに支障はなかった。
恭子はこれから起こることに期待せずにはいられなかった。

恭子は密着している直美を後ろからぎゅっと軽く抱きしめ、肩に顔を置いた。
直美の身体からは陽だまりのようないい匂いがする。

それは洗濯物の匂いではなく、直美自身の身体の匂いだと最近知った。
恭子は直美が愛しくなり強く抱きしめた。



※※※



勉強も一通り終わり、恭子は直美をベッドへと誘導した。

布団を被って抱き合いキスをする。
直美は恭子の胸を揉みながら舌を絡ませた。

恭子が直美の背中をさする。
唇を離し、しばらく見つめ合う。先に口を開いたのは恭子だった。


「私、どんな匂いがする?」


直美はそう聞かれたので恭子の首元をすん、と嗅いだ。


「…ベビーパウダーみたいな匂いかな?」


直美は素直に言った。


「そう……ここはもっといい匂いがするわよ?」


そう言って恭子は自分のお腹を触った。
直美はそれにつられるように恭子のお腹に顔を押し当てる。


「ほんとだ……赤ちゃんみたいな匂い」


直美はそう言うと、恭子のお腹に顔を埋めた。
ふわふわした感触が気に入ったのだろう。
恭子の脇腹を優しく触りながら、お腹の匂いを嗅いでいた。


「良い匂い……」


直美は恭子に言われずとも、白く柔らかいその肌にキスを始めた。

ちゅ……ちゅ……

優しく丁寧に、とても大切なものを扱うようにキスをした。

そのまま徐々に上に向かってキスを続け、
既に興奮でピンと上向いている桜色の頂きに舌を伸ばし、美しくなめらかな肌の膨らみを指先でなぞる様に揉みしだいた。


「ぁぁ……すごい……直美……」


たまらず、直美の背中に腕を回す恭子。

その淫泉からは、既にとろとろと愛液が溢れ始め、恭子は直美の責めに乱れつつも、そのなだらかな丘陵を相手の肌に触れさせる様に腰をくねらせた。


「ねぇ……直美……
もっといやらしい部分にキスしてみたくならない?」


恭子は直美の頭をくしゃりと撫でながら言った。
直美は自分の身体に時折触れるその部分を意識していた。


「ここ、あなたが大好きな女の子の蕾、
もっといやらしくていい匂いがするのよ」


恭子は己の膨らんだ女の部分を直美の身体に当て、直美の手を掴むとそこへと導いた。


「はぁ……ぁっ……あなたがここまでしたのよ?
こんなにビショビショにさせて……どうなっているか自分で確かめてみて…」


直美は恭子への責めですっかり発情しながら、ゆっくり顔を下ろし、恭子の股間に顔を近づけた。

薄い陰毛に鼻を近づけると、一回だけ息を吸う。


「どう? これが女の子の香り。良い匂いでしょ?」


暗示が効いたのか、直美は本当に気に入ったようにもう一度深く息を吸うと、うっとりしながらこくりと頷いた。


「あなたは、この匂いが大好き。
女の子のいやらしい匂いを嗅いだだけでアソコから液がどんどん溢れてきちゃうエッチな女の子なの」


恭子の股間に鼻を埋め、すーはーすーはーと何度も呼吸を繰り返す直美。

元から濡れていたのだが、恭子の暗示で、膣口からより多くの愛液が流れ出すようになり、股間をビショビショにしてしまった。

太ももを擦り合わせ疼きに必死に耐えているようで、その周辺からは、粘り気のある水の音がくちゅくちゅと聞こえてきた。


「舐めてみたく…なったでしょ?」


恭子はゆっくりと直美に問いかける。

股間から顔を上げた直美は、
なんとも艶めかしい目つきで恭子を見つめ、「…うん」と静かに答えた。

先程の乳房への愛撫で、股間の疼きを我慢していた恭子にとって、直美の今の表情は耐えきれないものだった。


「いいよ……あなたの好きにして……」


最愛の人に最も大事な部分を捧げるため、
恭子は腰を浮かし、濡れそぼったその場所を直美の顔の前へと持って来た。

直美は何も言わず口を開けると、舌を出して陰毛の上から少し舐めてみた。
そして、指で少し陰毛をかき分けると、恭子の性器を直接舐め始めた。


「…んっ」


恭子は性器を舐められ、そのまま快感の渦に身を委ねたくなったが、平静を装い上半身を起こし直美に暗示をかけた。


「どう、すごくおいしくて、どんどん興奮してきちゃうでしょ?
あなたは女の子の蕾を舐めるのが大好きなの。
舐めているだけですごく気持ちいい……あなたの大事な部分も喜んでいるわ」


直美は恭子の股間から顔を離して頷くと、もう一度顔を埋めた。

そして今度は性器の陰毛の生えていない筋をなぞるように舐めあげた。
愛液で口が滑るのか、直美は顔を上げて恭子を見ながら自分の唇を舐めた。
その顔は発情しきっていて赤く、いやらしい表情が、恭子をまた興奮させた。


「女の子を気持ちよくさせると、すごく気持ちいいでしょ……
あなたは女の子が気持ち良くなっている姿を見るのが大好きなのよ」


恭子は座ったまま自分の性器に両手を持っていくと、指先で閉じた部分を開いて見せた。

直美はそんな恭子の姿に興奮したのか、また股間に顔を埋めた。
そして恭子が開いていた部分を押さえると、皮の被ったままの淫豆を下から舐め上げた。


「んう、はぁあっ」


恭子は我慢できずに声をあげてしまった。

直美は恭子の喘ぎ声を聞いて気を良くしたのか、
いやらしい笑みを浮かべながら、恭子の突起を舐め続けた。

あの直美が、自分のクリトリスを舐めている。
それだけで恭子は絶頂しそうになったが、我慢して直美に暗示をかけた。


「あ、ぁあ…直美、今ね、私すごく気持ちいいの」


直美は舐めながら耳を傾ける。


「あなたは女の子のイった姿を見たくてたまらない……
自分の力でイカせたら、すごく気持ち良くて、幸せな気持ちでいっぱいになるわ」


直美はそれを聞くと、
スイッチが入ったように恭子のクリトリスを強く舐めあげた。


「ぁぁあっ!」


恭子が感じた声を出すと、直美は嬉しそうに顔を見上げ、今度は右手でクリトリスの皮を下に引き下げ、直接舌を這わした。

恭子は耐え切れなくなり、口に手を当て必死に声をこらえ始めた。


「んっ……くぅっ! 
んっ! ぁっ……んっ! んっ! んんっ!」


直美は皮の剥けた突起に唇を当てると、優しく吸い上げた。
吸い上げながら、舌先でクリトリスを愛撫をする。


「ぁあ、ああ! それ、だめ、イっちゃう」


恭子は限界が近づいていることを宣言すると、シーツを掴んだ。


「あ、だ、ダメ、イく、イっちゃ、ぁあっ」


恭子は我慢ができず、直美の頭を掴んだ。
直美は突起に吸いつきながらも、恭子の両太ももを愛撫している。


「ぁあっイ、イく! ぁぁああっ!」


恭子は一段と大きな声を上げると、
体をびくびくと痙攣させ、目をぎゅっとつぶって絶頂した。

しばらく直美はゆっくりと恭子のクリトリスを舐めていたが、
恭子の上半身から力が抜けベッドに倒れると、その横に直美も倒れこんだ。

恭子ははぁはぁと荒い呼吸を整えていると、
直美も恭子を絶頂させたことで気持ちが良くなったのか、切なげな表情でこちらを見上げていた。


「ありがとう…気持ちよかった」


恭子が言うと、直美は小さく頷き、


「……あたしも」


と返した。二人は抱き合ってキスをした。



※※※



恭子は直美に絶頂させられたことにより、
だいぶ気を落ち着かせることができた。

しかし責める一方だった直美は、
恭子を絶頂させ、幸せな気持ちになってはいたものの、
自らの股間に籠る官能の炎を冷ますことができず、
依然として、恭子へ対する情欲を、その心の奥底に積み上げ続けていた。



時刻は午後5時、若干空の明るさに陰りを帯びてきてはいたが、
恭子と直美の一日はまだ始まったばかりだった。
[ 2017/09/25 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.21 【 入浴 】


「階段を徐々に登って行き、あなたはゆっくり目が覚めます……」


直美との情事を終えた恭子は、互いに衣類を身につけ、
布団のシーツとカバーを手早く取り替えると、直美の催眠を解いた。


「……あっ、おはよう~」

「おはよう、直美。気分はどうかしら?
さっそくだけどきちんと催眠が効いているかチェックするわね。
ほら、ここの問題。○○が××なのは何でしょう?」


恭子は直美が余計なことを考える前に、先程教えた英語の問題を指差した。


「ん~……△△?」

「……正解」

「やった~! バッチリだね! ありがと~キョウちゃん!」


直美は催眠により自身の学力が上がったことを喜んだが、
身体の調子がいつもと違うことに気が付いた。

恭子も直美のその反応を見逃さず、すかさず声をかける。


「どうしたの? 直美」

「ちょっと調子が変な感じがするかも?」

「そうね……今日の範囲は結構難しいところだったし、
少し詰め込み過ぎたのかもしれないわね」

「そっか~。それじゃあしょうがないね」

「もう夕方だし、そろそろご飯食べよっか?」

「賛成! 何食べよっか! ?」


話題が夕飯の話になると、直美はすぐに気分を切り替えた。


「ちょっと冷蔵庫見てくるわね。それから何作るか決めましょ?」


台所へ向い、冷蔵庫の中を確認する恭子だったが、
先程の直美との行為で体力を消耗していることに気づき、
テーブルの上に置いてあるチラシを数枚手に取り、部屋に戻ることにした。


(直美と一緒に御飯作るのも楽しみなんだけど、
この後のこともあるし、体力温存しておいた方が良さそうね)


部屋に入ると、
直美は身体の変化を戻そうとしているのか、猫のように背伸びをしていた。

気のせいか、先程に比べて少し顔が火照っているように見える。
恭子は直美の変化に気づかないふりをして、そのまま話しかけた。


「ちょっと疲れちゃったから、やっぱり出前取ることにしましょ?」

「うん、そうだね。キョウちゃんずっと勉強してたんだもんね。
あっ、そうだ。お金はあたしに払わせてよ?
いつもキョウちゃんに勉強教えてもらって、
どこかで返したいっていつも思ってるんだからね?」

「ふ~ん、そう。
まぁ直美が気をつかっちゃっても悪いし、払わせてあげようかしら?」

「ぷっ、何それ~。とにかく、いつもありがとうキョウちゃん。お疲れ様」


和気あいあいとメニューを決め、
出前をとった二人は、初めてのお泊まり会を楽しんだ。


(直美。そんなこと気にしなくても、
あなたが傍にいるだけで、私は十分過ぎるほどお返しを貰っているわ)



※※※



「直美~お風呂沸いたよ」


夕食を食べ終えた二人は、勉強を再開する前にお風呂に入ることにした。

入浴することによって、頭がのぼせたりしないか心配した直美だったが、
恭子が逆に頭がすっきりするから先に入ろうと提案したのだ。


「うん、ありがと~。どっちから先に入る?」

「う~ん、そうね。お風呂入る時間を短縮したいから一緒に入りましょ」

「えっ! ? 一緒に! ?」


恭子の更なる提案に驚く直美。


「ん? 女同士普通でしょ? 別に気にすることじゃないわ。
それに直美にとって私はハニーなんでしょ?」


最近の直美のマイブームに乗っかって、直美をお風呂に誘う恭子。

最初は驚いていた直美だったが、
年頃の女の子の触れ合いを当たり前と暗示を受けているのもあり素直に了承した。


「もうハニーったら、まぁそんなに一緒に入りたいなら、入って上げようかしら?」


先程の恭子の物マネをする直美。

恭子は、プッと息を吹きつつも、「はいはい、よろしくね。ダーリン」と言い、
バスタオルを取りに向かった。



※※※



直美は緊張していた。

誠と別れてからというもの、
実は恭子に対して少しムラムラするようになっていたのだ。

恭子のちょっとした仕草、
着ている服の隙間から見える肌など、以前よりも気になってしまっていた。

恭子と目を合わせているだけでもドキドキしてしまい、
ひどい時だとショーツを濡らしてしまうことさえもあった。

こんなこと誰にも言えない……

直美は今まで自分のことを性に関してノーマルな人間だと思っていた。

それが最近は全然男の人のことを良いと思えなくなってしまい、
綺麗な女の人やカワイイ女の子にばかり目がいき、
その考えに自信がなくなってしまっていた。

特に恭子に対しては、親友というよりも、
恋人という表現の方がしっくりくるような気分になってしまい、直美は悩んでいた。

恭子は普通に男の人が好きな女性だ。
そんな目で見ちゃいけないのは十分わかっている。

親友として自分のことを大切にしてくれて、いつも勉強を手伝ってくれる。

恭子のお得意の催眠では何度も助けてもらったし、
自分が今の特進クラスに留まっていられるのも恭子のおかげだった。

綺麗で、頭が良くて、センスも良ければ、優しくて頼りにもなる。

直美にとって恭子は憧れの女性だったのだ。

自分が恭子に対して、こんな気持ちになっているなんて悟られてはいけない。

しかし先程の催眠を受けてからというもの、
直美は恭子にいつも以上に発情してしまっており、
こんな状態で一緒にお風呂に入ってしまったら、どうなってしまうのだろうと心配していた。


(なんでこんな時に、いつものが来ちゃうの……)


お風呂にはもちろん二人とも裸で入ることになる。

恭子の裸を生で見てしまって、はたして正常な状態でいられるだろうか?
恭子におかしな目で見られないか不安だった。


(変に断るのも不自然だと思ったけど、もっと何か理由考えたら良かったな……)


部屋のドアを開け、バスタオルを持った恭子が現れる。


「バスタオル持って来たから、お風呂行こ。はい、これ直美の分ね」


直美はこれから起こることに不安を抱きつつも、
お風呂用お泊りセットを持ってお風呂へと向かった。



※※※



脱衣場で服を脱ぎ始める恭子。

目の前に直美がいるにも関わらず、淡々と衣類を脱いでは畳んでかごに重ねていく、親友に裸を見せることなどまるで気にしていない様子だ。


(あっ……本当に当たり前のことなんだな……)


直美は逆に妙に意識してしまう自分の方が、不自然なのではないかと思い始めていた。


「あれ?直美、どうしたの?脱がないの?」


ブラジャーとショーツだけになった恭子が直美に投げかける。

既に恭子の下着姿を見ただけでも直美は、熱くなった股間から愛液が流れ出るのを感じていた。


「ううん、今脱ぐよ。キョウちゃん肌綺麗だから、ちょっと自分の裸見せるの恥ずかしいなって思っちゃって」

「そんなことないわ。
直美だって綺麗な肌してるでしょ? ほら脱がせてあげるから、おいで」

「大丈夫、自分で脱げるから、キョウちゃんってエッチなんだから!」

「だって私は直美のハニーなんでしょ。
遠慮しないで、脱衣場で女同士脱がせ合いっこするなんて普通のことでしょ?」

(えっ? それも普通のことなんだっけ…? ここで拒んだら逆に不自然かな…)


直美には正常な女同士の付き合いがわからなくなりつつあった。
あまりにも恭子が当たり前という顔をしているので、
恭子を意識しつつある自分の考えに自信を失ってしまったのだ。


「う~ん、そうだね。じゃあ、お願いキョウちゃん!」


いつも通りの元気な返事を振る舞いながらも、内心はドキドキしていた。

恭子の手が直美のシャツのボタンに触れる。

初めてのことなのに、まるで何度も経験があるような錯覚に陥ってしまう。
徐々にボタンが外されていき、薄い水色のブラが姿を現した。
恭子はそのまま直美のシャツを丁寧に畳むと、籠の中に置いた。


(なんだろう……キョウちゃんに見られて恥ずかしいのにドキドキして、
なんだか……気持ち良い……)


直美は戸惑っていた。
いくら女同士といえども、裸を見せて気持ちいいと感じるものだろうか?

しかもなぜか、恭子に服を脱がされて幸せな気持ちになっている自分がいるのだ。
直美の戸惑いをよそに、恭子はそのまま直美のスカートのホックを外し、
ジッパーを下げていった。


「直美、ちょっと足あげてくれる?」

「あ、うん…」


直美が足を上げると、そのまま恭子はスカートを脱がせ、
シャツと同じように畳んでカゴの中に入れた。


(……まずいな……あたし濡れちゃってるかも……)


直美は自らのショーツの中を気にしていた。

このまま恭子にショーツを脱がされて、
もしその時ショーツに糸を引いてしまったら……

そうなったら、
恥ずかしすぎてまともに恭子の顔を見れなくなってしまうかもしれない。


「はい、じゃあ次は直美ね。私のブラとショーツ脱がしてくれる?」

「う、うん。いいよ」


直美に背中を向ける恭子。
ドキドキしながら、親友のブラのホックに手をかける。


(やばい……なんでこんなにドキドキするの…?相手がキョウちゃんだから?)


直美の膣口から新たな液が溢れ始める。

ホックを外し、軽くバンザイの姿勢をとっている恭子の腕からブラを抜き取る。
恭子が振り向くと、そこには控えめながらも綺麗な形をした乳房があった。


(……綺麗なおっぱい……乳首もあんなにピンク色でなんだかおいし……)


そこで直美は、急いでその考えを振り払った。


「……どうしたの?直美」


恭子が不思議そうな顔で直美を見つめている。
慌てて取り繕う。


「なんでもないよ! 
ただ、キョウちゃんすごい胸の形が良いものだから憧れちゃって」


半分ホントの半分嘘の返事をした。


「そう……直美も見た感じ、良い形してると思うけどね」

「そうかなぁ……あんまり自信ないんだけどねー」

「そんなことないわよ。私は好きよ。直美のおっぱい」


笑顔でそう伝える恭子には、なんら厭らしさは感じない。


「じゃあ、次はショーツね。直美、お願いね」


直美は姿勢を低くし、恭子のショーツに手をかけ、ゆっくりと降ろしていった。
恭子のそこが外気に触れ、ちょうどしゃがみこんだ直美の鼻腔に女の香りが広がった。


(ぁぁ……良い匂い……)


思わず深く息を吸い込んでしまう。
恭子の匂いを嗅いだことにより、
直美の女芯はすっかり喜びで反応してしまっていた。

それにより、薄い布に覆われた茂みは、
より湿り気を帯び、既に言い訳のできない状態になってしまっていた。


「ありがと、次は直美の番ね。ほら、背中を向けて」


恭子に言われた通り、背中を向ける。


(どうしよう……あたし、すごい濡れてる……
このままショーツを脱がされたら、絶対変に思われちゃうよ)


直美は緊張で身体を硬くしていた。
しかしどう言い訳をすれば、この場を切り抜けられるのか全く考え付かなかった。

恭子の手がブラのホックに触れ、そのまま外されていく。


「ほーら、やっぱり良い形してるじゃない。もっと自信を持って、直美」


天使のような顔で微笑む恭子。
その笑顔を見ていると、
本当に自分が天使に包まれているかのような安心を感じる。


「じゃあ、ショーツを脱がすわね」


天使のような笑顔から、悪魔のような言葉が飛び出た。


「あ……、ショーツは自分でするから良いよ…」


言い訳は何も思いつかなかったが、とりあえず自分ですると伝える直美。


「ダメよ。直美だって私のショーツ脱がせてくれたでしょ?
それとも何か理由でもあるの?」

「別にないけど……」

「じゃあ良いわよね?」

「……うん」


思わず承諾してしまった。

直美は恥ずかしさで胸が破裂しそうだった。
同時に恭子にどう思われるのか不安で不安で仕方がなかった。

この状況でもしショーツに糸を引いてしまったら、どう思われるだろう?

もしかしたら、
女性に性的興奮を覚えるレズビアンなのだと、誤解を受けてしまうかもしれない。

普段とっているスキンシップも冗談ではなく、
本気のものとして捉えられるかもしれず、直美は気が気でなかった。


(どうしよう、どうしよう……キョウちゃんに嫌われちゃう。そんなのいやっ! )


恭子は直美のショーツに指をかけると、そのまま下へと引き降ろした。


(……!!! )


予想していた以上に、
直美のショーツと股間の間には大きな糸が引かれてしまった。

それだけでない。

ショーツの内側は、
度重なる精神的刺激によりビショビショに濡れてしまっていたのだ。

誰から見ても、直美が発情して股間を濡らしてしまっているのは明らかだった。


(……見られた! )


…………


「……ほら、早く中に入ろう。直美」

(……えっ! ?)


恭子は直美のショーツに特に反応することなく浴室の中に入っていった。
洗濯カゴの中には濡れたまま折り畳まれた直美のショーツが置いてあった。


(気付かないはずはないのに、どうして反応しないの? キョウちゃん……)


恭子の反応を疑問に思いながらも、直美は恭子を追って浴室へと足を踏み入れた。



※※※



「あの……キョウちゃん……」

「ん?どうしたの? 直美」

「さっきのことなんだけど……」


気付いていながら何も思わないはずがない。

このまま気まずい雰囲気でいるのも良くないと思った直美は、恐る恐るショーツについて尋ねた。


「あぁ……濡れてたことね。ちょうど排卵日が近かったんでしょ?
人それぞれ個体差はあると思うけど、女の子なら普通にあることでしょ?
直美は他の人よりちょっと濡れやすいだけよ。気にすることじゃないわ」

(……えっ?そういうもの?あたしが無知なだけなのかな?)

「それでもどうしても直美が気になるっていうんなら、
ナプキンをつけておくのも一つの手よ。
生理中だけじゃなくて、濡れやすい女の子はみんなつけてるみたいだし」

「そ、そうだよねっ!! 今度からはつけてみようかな~」


慌てて恭子の話に乗っかる直美。
恭子のまるで気にしていない様子に安心しながら、直美は身体を洗い始めた。


(……ふふふ。かわいいわ……直美)


恭子が心の中で邪悪な笑みを浮かべていることなど、
今の直美には知る由もなかった。



※※※



「ちょっと待って、直美」


持って来たお泊りセットを使って身体を洗おうとする直美を、恭子は慌てて引きとめた。


「えっ?どうしたの?」

「ちょっとこれナイロン製のタオルじゃない。こんなの使っちゃダメよ」

「えぇっ! ? なんで? なんで?」

「たしかに使うとすっきりするかもしれないけど、
こんなに目が粗くて硬い素材のタオルを使ったら、皮膚を傷つけてしまうわ」

「へ~! そうなんだ。じゃあキョウちゃんはいつもどうしてるの?」

「私が使ってるのはこれよ」


恭子は浴室のタオル掛けに綺麗に掛けてあるタオルを取ると直美に見せた。


「直美のタオルに似てるけど、こっちはシルク製のタオルなの。
洗い心地はナイロン製に比べてふんわりしてて、
慣れてないと物足りない感じがするかもしれないけど、
これなら角質を傷つけることもなく綺麗に洗えるわ。
ほら、ここに座って、洗い方教えてあげるから」


そう言うと恭子は風呂イスを直美の前に置いて、座る様に促した。


「まず石鹸をタオルに包んで、じっくり泡を作ってね。
泡が足りないと皮膚に当てても上手く滑らないから、
石鹸をケチらないでしっかりと泡立ててから使うの」


恭子はそういうとタオルの上に石鹸を置き、
そのまま両端で包み込むとゴシゴシと泡を作り始めた。

みるみるうちに恭子の手の上に濃縮な泡が出来上がっていく。


「よく覚えててね。このくらい泡を作ったら、
タオルを皮膚に当てて、力を込めずに撫でるように洗うのよ」


直美の身体を十分に泡立てられたシルクのタオルが滑る様に移動していく。


(ぁっ……これ……気持ちいぃ……)


お昼に恭子の催眠のよって興奮状態にさせられた直美の身体は、
タオルの滑らかな生地の感触にも敏感に反応するようになってしまっていた。

直美の息が少しずつ荒くなっていく。
直美は顔を赤くしながらも発情する気持ちを必死に抑えているようだった。


「キョ……キョウちゃん。大丈夫。ここからは自分で洗うからタオル貸して……」

「ダメよ。まだ話は終わっていないわ」

「話……?」

「そう、今シルクのタオルを使っているけど、本当はもっと良い洗い方があるの」

「もっと良いのがあるんだ……どんなの?」

「ちょうど今洗っている最中だし、実践してみない?」

「うん…」


直美の返事を聞いてから、
恭子はシルクのタオルで改めて石鹸を包むと、泡をさらに作っていった。

そしてタオルを手で包むように持ち、タオルの下側の部分をもう一方の手で掴み、そのまま包んだ手を上に引き上げ泡だけを取り出した。

それを何度も繰り返すと、恭子の両手には濃縮な泡が大量に出来上がっていった。


「はい、準備できたわ、じゃあ洗い始めるわよ」


そういうと恭子はその泡をそのまま直美の身体に乗せ、自らの両手で直接洗い始めた。


「えっ! ? ちょっと、キョウちゃん?」


慌てて恭子に疑問を投げかける直美。


「シルクのタオルより良いのは、直接手で洗うことなの。
皮膚科の先生に聞いてみればもっと詳しくわかると思うけど、人間の手なら余計な摩擦も与えずに、角質へのダメージを最低限に抑えて洗うことができるわ」


そのまま直美の身体を自らの手で洗っていく。


(ぁん……これダメ……気持ち良すぎて……変になっちゃう)


恭子の泡を使った愛撫に、どんどん息を荒くしていく直美。


「でも例え手で洗うにしても、力を込めちゃダメよ。
あくまで優しく撫でるように洗うの」


恭子の手は、最初は直美の肩と背中、
次にお腹と洗い、そのまま直美の乳房に触れた。


「ふふ……ここも洗っちゃおうかしら。そりゃ~~~♪」


あくまで冗談っぽく言い、そのまま直美の乳房を撫で上げるように洗い始めた。


「ひゃっ……! ダメ……ぁん。もぉう……ちょっとっ! 
キョウちゃん……たらぁ……♡」


必死に抵抗する直美。

最後なぜか少し甘えるような声を出してしまったことを恥ずかしく思いながらも恭子の手を制止した。


「うふふ……冗談よ。いつも直美にみんなの前でイチャイチャされてるから意地悪したくなっちゃった」

「はぁっ……はぁ……
もう女の子の身体は敏感なんだから、こんなことしたらダメなのぉ!」

「そうね。でももう洗い方はわかったでしょ? 後は自分で洗ってね。
もっと洗って欲しいんだったら別に洗ってあげても良いけど?」

「自分で洗うから大丈夫。今日のキョウちゃん、エッチ過ぎるよ~」

「そうかもね。でも直美だってショーツあんなに濡らして、
お互い様でしょ。これで恥ずかしくないわね?」


そこで直美は気付いた。これは恭子なりの気遣いだったのだと。

先程のショーツのことで、
直美が気にしていると思い、恭子は同じ土台に立ってくれたのだ。


(そっか……キョウちゃん、だからこんなことしたんだね。
やっぱり優しいな……)


直美は恭子の気遣いに感謝するとともに、
いつも以上に恭子に魅かれている自分に気づいていた。

身体に付着した泡により見えなくなっていたが、先程の恭子の愛撫により、直美の膣口からはドクドクと愛液が流れ出し、両端の花弁はヒクヒクと揺れていた。

おまけに直接愛撫された乳首は、はっきりと分かる形で勃起している。
昼の恭子との交わりと度重なる性的刺激で、直美の身体は限界を迎えていた。


「洗い終わった?じゃあ、次は私の身体を洗ってもらえるかしら?」

「へ?」


恭子の突然のお願いに、思わず呆けた返事をしてしまう直美。


「いつも一人で洗ってるから、たまには誰かに洗ってもらうのも良いかなって、さっき直美のこと洗ってて思ったの。お願いできるかしら?」


直美の脳裏に、恭子がこの家で一人で過ごす様子が思い描かれた。
一人で過ごす恭子はとても寂しそうに映り、思わず助けてあげたくなった。


「いいよ、あたしも洗ってもらっちゃったしね」


恭子に教えてもらったように、今度は直美が泡を作っていく。
なかなか上手くできなかったが、
ようやくコツを掴んだ直美の両手にはたくさんの泡が乗っていた。

風呂イスに座る恭子の肌に触れる。


(ぁ……柔らかい……それに……)


柔らかさに加え、繊細でキメが細かい恭子の肌。
シルクと泡の効果を実感しつつも、同時に恭子の肌に触れ、
直美は自分の中の官能の炎が勢いを増していくのを感じていた。


(キョウちゃんの肌に触れてるだけなのに、
なんだかすごくエッチな気分になってきちゃう……)


恭子の肩、背中、お腹と洗い、直美は恭子の乳房に触れたくなっていた。


(キョウちゃんのおっぱい、どんな感触なんだろう……
キョウちゃんが冗談でやったみたいにあたしも触ってみようかな……)


直美がどうするか迷っていると、先に恭子が声を上げた。


「あっ、そうだ。
さっき直美の胸触っちゃったから、私のも触っていいわよ。これでお互い様ね」


恭子の方から許可が下りる。


(うぅ……そう言われると逆にやり辛いな……でも……)


直美はゆっくりと両手で恭子の胸を包む。


「んっ……」


恭子の声が聞こえたような気がした。


「へっへー! お返しだよっ! キョウちゃん。うりゃうりゃー!」


冗談っぽく始めなければ、とてもできない。
話し方とは裏腹に、直美は割と真面目に恭子の胸の感触を確かめようとしていた。
直美の両手が恭子の胸を滑る様に愛撫し、そのまま中心の突起を転がした。


「ぁっ……ん。はぁ……ぁあん!」


恭子が喘ぎ声を上げる。
直美は驚き、恭子の顔を見つめた。


「ふふふ、冗談よ。本当に感じさせたと思ってびっくりしちゃったでしょ?」


笑いつつも、恭子の目はなぜか艶めかしい。

直美はその表情にドキっとしながらも、
「もー、今日は冗談多すぎだよ」と言って笑って流すことにした。



※※※



身体を洗い終え、浴槽に浸かる直美と恭子。
さすがお金持ちなだけあり、恭子の家のお風呂はとても広かった。
学校の話題やテレビの話など、いつも通り世間話をする二人。


話をしながらも直美は恭子の身体を見てドキドキしていた。


(いつも綺麗だと思って見ていたけど、
キョウちゃんは身体も本当に綺麗だなぁ……)

(見てるだけでなんだか……
もし今キョウちゃんと抱き合えたらどうなるんだろう?)

『気持ち良くて安心感で包まれそう……』

(もしキョウちゃんとキスしたらどうなるんだろう?)

『嬉しくて、すごく幸せな気持ちになれそう……』


直美の頭にはいやらしい妄想が蠢いていた。



(……キョウちゃんとエッチしたい)



直美は心の中で、はっきりとそう思ってしまった。
[ 2017/09/27 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.22 【 初体験 】


お風呂上り、恭子と直美は寝巻に着替え、部屋でアイスを食べていた。


「おいし~い! パーゲンダーツのアイスってこんなに美味しかったんだ!」


冷蔵庫のアイスに舌鼓の直美。


「このくらいのアイスなら、普通にコンビニで売ってるわよ」

「そうだけど、高いから買えないの~。一個200円以上するでしょ?」

「そうね~。じゃあクストコで買うといいわ。売ってるのは大容量サイズだけど、分けて食べるなら断然お得よ」

「え~でもあそこって会員にならないと入れないじゃん。会員になるだけでも数千円かかるよね?」

「まぁね、じゃあ今度一緒に行きましょ。私会員になってるから直美もタダで入れるわよ」

「え~! キョウちゃんクストコ会員だったんだ! もちろん行く行く~!」


アイスの山に囲まれる妄想を始める直美を横目に、恭子は勉強の準備を始めていた。


「え? キョウちゃん、もしかしてこれからまた勉強するの?」

「当たり前でしょ……今日なんのために泊まりに来たのか、忘れちゃってるようね…」


少しあきれ顔の恭子。


「あ、そうだったっけ……美味しいもの食べて、
お風呂入ってアイス食べて、なんだか旅行気分になっちゃってた」

「まぁ、直美は最初ずっと寝てたわけだし、そう思ってしまうのも仕方ないわね」

「ごめ~ん。夜はちゃんと勉強するね!」

「ん~そう思ってたんだけど、直美は寝ちゃってもいいわ」

「え? なんで?」

「寝る前に覚えたことって一番頭に残るみたいなのよね。だから夜は暗記物だけ。
私が今日覚えようと思っていたところを、催眠術掛けながら覚えるだけだから、
むしろ寝ちゃってくれた方が楽なのよ」

「でも、そんなキョウちゃんだけに勉強させちゃって悪いし……」

「気にしなくていいわよ。クストコに行った時に、私の分もアイス買ってくれればいいわ」

「アイス買うのは別にいいんだけど……本当にそんなんでいいの?」

「もちろんいいわ。だから今日はオヤスミ。
その分、学校にいる時は一生懸命勉強するのよ?」

「うん…わかった。ありがとね…キョウちゃん。
あたし、キョウちゃんと同じ大学に行けるよう頑張る!」


恭子はそれを聞くと、そのまま直美を催眠術へと誘導した。



※※※



ぐっすりと眠る直美。

恭子は今日のことを思い出し、直美の頭を撫でていた。
主に思い出すのは、股間とショーツの間に糸を引き恥ずかしそうにしている姿と、乳房を撫でられ気持ち良さそうに悶えている直美の姿だ。


(今日の直美、可愛かったな……
やっぱり催眠状態より素の状態の方がずっと良いわね……)

直美の身体は度重なる肉体的刺激と精神的刺激で限界がきていると恭子は踏んでいた。

(今の直美はいつもとは違う。
起きている時でさえ、あんなにショーツを濡らしていたんだから、もう抑えが効かなくなってきてるはず……こんな状態でさらに興奮させたらどうなるのかしら……?)


恭子はこれから行うことに、強い期待を寄せていた。

これまでの催眠でも、
直美は恭子の身体にキスをしたり、舐めたりして責めてきていたが、
それは平常な状態から始めた催眠だったからこそ、その程度で済んでいたのだ。

もし今の興奮状態で同じように暗示をかけたらなら……
恭子は想像しただけで、体中が疼き、震えてしまった。

(今日でもし最後までいけたなら、後はそれを直美の心に刻みつけるだけ……
何度も何度も同じ快感を植え付けて女同士の快楽から一生離れられないようにしてあげる……)



※※※



「さぁ、直美。勉強始めるわよ。
いつものように服を脱いで、すっきりした気持ちで始めましょうね」


恭子の指示に従い、寝巻を脱ぎ始める直美。

服を脱ぎながらも直美は息をハァハァさせている。
顔は既に赤くなっており、恭子に自分の裸を見せることに興奮しているようだ。

案の定、新しく履きかえたばかりショーツには、
脱衣場の時同様、脱ぐ際に糸を引かせてしまっていた。

恭子は直美の腰に優しく手を添えると言った。


「見てたわよ。ショーツに糸なんか引かせちゃって……
そんなに私に裸を見られて嬉しいのかしら? 直美は女の子に自分の裸を見せてオマンコをキュンキュンさせちゃうエッチな女の子みたいね?」


直美は目をトロンとさせながらも頷いた。


「頷くだけじゃダメよ。
私の目を見て、自分の口でちゃんと言ってみて、直美はどんな女の子なのかしら?」


唇が軽く震える。
直美は恭子の目をしっかりと見据えながら答えた。


「あ…あたしは、キョウ…ちゃんに、裸を見られて……
嬉しくてオマンコ、キュンキュンしちゃうの……」

「よく言えました。これはご褒美よ」


直美に軽くキスをする恭子。それだけで直美は軽く喘ぎ声をあげた。



※※※



「次は私の服を脱がせて、今日も密着しながらお勉強しましょうね」


直美は頷き、恭子の前に立つと、目を潤ませながら寝巻に手を添え脱がせ始めた。


「ねぇ……女の子の衣類を脱がせるのって、すごくエッチなことじゃない? 
直美は女の子の服を脱がせる時にすごくいやらしいことを考えちゃうのよね?」


それを聞き、直美の手が止まる。

だんだんと発情した女の顔つきに変わり、疼きに耐えるように身体をくねらせ始めた。


「ほら、どうしたいの? 直美は女の子の服を脱がせてどんなことがしたいの?」

「ぁっ……あっ……
キョウちゃんの、おっぱい……すごくおいしそうで、食べたくなっちゃうの……」

「そうよね。直美は女の子のおっぱい大好きだもんね」


いつもの天使スマイルで直美に微笑みかける恭子。


「うん……好き……おっぱい大好き……」


恭子の胸に両手を添え、息を荒くする直美。


「今日、脱衣場でしたかったこと、ちょっとしてみたら?」

「うん……」


直美はそう言うと、恭子のピンクの頂きを口に含み、ペロペロと舐め、優しく吸い始めた。


「ぁ……ぁっ、直美はそんなこと考えてたんだ……親友の乳首を舐めて吸いたいだなんて…ホントいやらしいわね……」

「ちゅ……ちゅぱ……
だってだって……キョウちゃんの…ちゅ……
おっぱい…しゃぶりたくて……ちゅぽっ…仕方がなかったんだもん……」


乳首を吸い続けながらも、返事をする直美。
恭子はそんな直美の髪を優しく撫でながら、シルクのような声色で語りかけた。


「そう……仕方がないわよね……
だって直美は普段から女の子のおっぱいを見ては、いやらしい妄想をしちゃういけない女の子なんだもんね……」

「うん……いやらしい妄想しちゃうの……いけない子なのぉ……」


恭子は、夢中になって自分の乳首に吸いつく直美の顔に両手を添えると、優しく引き離し。


「はい、おっぱいはここまでよ。
直美はおっぱいも好きだけど、このおへその下にあるものも大好きよね? 
ほら、邪魔な衣類をとって、いっぱい楽しみましょうね……」



※※※



直美の手がそのまま恭子の寝巻を下にずらすと、
興奮ですっかり濡れてしまった恭子のショーツが姿を現した。

直美はショーツに顔を近づけると、鼻をくっつけ深呼吸を始めた。


「すぅーはぁー。すぅーはぁー。良い匂い……」

「んっ……ぁぁ……な…直美……
そのままショーツを降ろしてみて……直に嗅ぐともっと良い匂いがするわよ……」


ショーツの両端を指で掴み、下へずらす直美。
間に挟まれていたものがなくなり、直美の鼻と恭子の蕾が直に触れる。


「ぁぁん……キョウちゃんの香り……すごい……この匂い……大好き……」


恭子の愛液で顔を濡らしながら直美が言う。


「に…匂いだけじゃなくて……
舐めて…味わってみたら…? 直美は女の子のエッチな液も大好きなのよね?」

「うん……大好き。キョウちゃんの匂いも味も大好き♡」


そういうと直美は恭子の花唇に口をつけ、仔猫のようにペロペロと舐め始めた。


「ぁっ…んっ……直美、もうすっかり女の子好きになっちゃったわね……」

「ぺろぺろぺろ……うん……女の子……大好き。……ちゅ」


愛おしいものを見つめる表情で、直美は恭子の蕾を舐めることに集中している。

直美のそんな姿を眺めながら、恭子は初めの頃の直美を思い出していた。


(初めは女同士でキスするにも抵抗あったのにね……
今では下の唇にキスするのも大好きになっちゃって、すっかり女同士の虜ね)



※※※



一通り直美に女の味を堪能させた恭子は、予定通り勉強を開始することにした。

テーブルの前に座り、いつものように直美を自分の足の間に座らせる。

直美に英語の単語帳を持たせ、恭子は片手で直美の乳首をつまみ、もう片手を直美のクリトリスに添えた。


「今、直美はすごく頭が冴えてて、なんでも頭に入っちゃうようになってるの。
私の言った単語の発音と意味をしっかり頭に刻み込んでね」


1単語ずつ、発音・意味・用法を覚えさせていく恭子。

単語帳には記載されていないようなことについても、恭子はアドリブで説明を入れていった。

さすが国際派の両親がいるだけのこともあり、言語についてはお手の物である。

直美は自らの乳首とクリに添えられている恭子の手を気にしつつも、スポンジのように内容を吸収していった。

催眠術によって、人間が本来得られないような集中力を発揮しているようで、それが直美の勉強の効率を飛躍的にアップさせていた。

流れるように単語帳を読み進めて行き、十分過ぎるほど終えたところで恭子は直美に最初のページに戻る様に言う。


「頭にしっかり入ったかしら?
これからチェックいれていくわよ? 上手く出来たらご褒美あげるからね」


そう言い、今行った範囲をじっくりと問題形式で直美に問いかけていく。


「○○○が×××なのは?」

「□□□?」

「よくできました。正解よ」


恭子は微笑み、直美の乳首を軽くこねる。


「ふぁっ! ぅぅんっ……」


小さな刺激だが、それだけでも直美は声をあげてしまう。


「ほら、直美。こっちに顔向けて、ご褒美上げるから……」


直美が言われた通り、恭子の方を向くと、恭子は直美の唇に軽くキスをした。

思わず、笑みを浮かべてしまう直美。


「もっと答えられたら、もっと良いご褒美あげるからね」


そうして、テストは続けられていった。
催眠の効果が強力なためか、はたまた恭子の教え方が余程頭に残り易いのか、
直美はほとんど間違えることなく、正答を繰り返していく。

その度に直美は、乳首を捏ねられたり、クリを擦られたりして、官能を高められていった。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


勉強が終わる頃には、恭子の手は直美の割れ目から垂れ流された愛液でぬるぬるになっていた。
捏ね繰り回された乳首と、擦られ続けたクリトリスはこれまでにないほどビンビンに勃起している。


「よくできました。全問正解よ。
最後のご褒美に、直美のして欲しいことなんでもしてあげる……」


恭子は慈愛に満ちた表情で直美を見つめている。
直美は度重なる刺激ですっかり顔を上気させながら、恭子の目をじっと見つめ口を開いた。


「はぁ……はぁ……あ…あたし……キョウちゃんと……」


再び口を閉じる直美。
これから自分で言うことの、あまりの恥ずかしさに目は潤んでしまっている。


(さぁ、言って直美。
ずっと待ってたその言葉をあなたの口から聞きたいわ……)

恭子の手が直美の胸に触れる。
直美の心臓の鼓動は大きく、放たれる言葉が何かを告げていた。


「あたし……キョウちゃんと、エッチしたい……」


覚悟を決めて言葉を発する直美。
恭子はそんな直美を抱き締めると、優しくて頭を撫でながら言った。


「……いいわよ、エッチしましょ。直美のしたいこと全部受け入れてあげる」



※※※



ベッドの上で抱き合う直美と恭子。

お互いの背中に腕を回し、優しく愛撫している。
舌同士が絡め合うキスを行い、今まで我慢していた欲情をぶつけ合っているようだ。

恭子はそのまま直美の首筋にキスを始め、そのままうなじへと移動していく。


「ぁぁぁ……キョウちゃん、そこ気持ちいぃ……」

「そうでしょ? 女の子はここを舐められるとすごくゾクゾクしちゃうのよ……」


同時に背中に回した手の指を軽く曲げ、そのまま爪の先で優しくゆっくりと直美の背中に滑らせた。


「んんっ……」


その刺激を受けて直美の背中が反り返る。
恭子はそのまま直美の耳に唇を添えて怪しく囁いた。


「ねぇ……直美。知ってる? 耳って舐められるとすごく感じるのよ? ほら」


舌で直美の耳の裏側をわざと音を出すように舐め上げる。
同時に唇でリップ音を鳴らしながらキスをする。


「ぁぁ! キョウちゃん……ぁあっ! おと……音で感じちゃうぅ!」


恭子の鳴らす音で、直美の上半身にはゾクゾクっとした言いようの知れぬ甘い感覚が走った。

唇で直美の耳を責めながらも、手で胸の頂きを愛撫するのを忘れない。

唇から少しだけ舌を出し、首筋から直美の胸の頂きまで滑らせる。
そのまま舌の裏筋を使って勃起したピンク色の膨らみを撫でるように舐め上げた。

その間も手は休まることを知らず、直美の太ももを優しく円を描くように愛撫した。


「ふぁっ……っぁ! すごい……キョウちゃん……ぁぁっ、ダメぇぇぇ……」


恭子は直美を責める際は、必ず2箇所を同時に責めるようにしていた。
そうすることにより、直美は一箇所に意識を集中できず、与えられた快感をそのまま受け取るようになっていた。

恭子は幾度となくレズビアン物のAVを目にしてきており、自然とその技巧を身につけていた。
今回のは、どうすれば直美を気持ち良くできるのか、研究熱心な恭子の性質が如実に表れた結果である。

それと同時に、恭子本来の持つ器用さは、しなやかな指先から魔性の快楽を生んでいた。
触れる箇所全てが性感帯に変わる。
女を乱れさせる才能が恭子には備わっていたのだ。


(直美。いっぱい気持ち良くなってね。あなたにこうしたくてずっとイメージしてきたんだから……)



※※※



しばらく直美の嬌声が部屋中に鳴り響いていた。
いくら大きな声を上げても、広い庭に囲まれた恭子の家から、音が近所に届くことはない。

乳首にしゃぶりついている恭子の頭に手を添えて、直美が声を上げる。


「あぁっ! キョウちゃん。ぁあっ! キョウちゃん!」


ただ名前を呼んでいるだけではなく、呼ばれた気がした恭子は乳首への愛撫を止め、顔をあげる。


「……どうしたの? 直美」


乳首に与えられた甘く痺れるような刺激で意識を朦朧とさせながらも直美は言った。


「キョウちゃん……もうダメぇ……あそこ……が熱いの」

「あそこ?オマンコのことかしら?」

「うん……そうなの。オマンコ…熱くて……もう我慢できないの」


直美の目は潤み、泣き出しそうな顔で恭子を見つめている。


「そんなに熱いんじゃ大変ね。直美はどうして欲しいの?」

「キョウちゃんの舌で舐めて欲しいの……
あたしのオマンコいっぱいペロペロして欲しいの」


せいいっぱい甘えた声で、恭子に懇願する直美。
その声に背中をゾクゾクさせながらも恭子は答える。


「もちろん良いわよ。
愛する直美のためだもの。オマンコだってお尻だってどこでも舐めてあげるわ」


そう言うと直美の唇にキスをした。

恭子は直美の下半身に身体を移動させ、直美の薄く覆われた茂みの前に顔を近づける。

勉強時の淫核への刺激と、今まで受け続けてきた肉体と精神、両方への刺激により、直美の蜜壺からは止め処なく官能の滴りが漏れていた。
恭子は直美の腰を両手で掴むと、舌を大きく広げ、直美の割れ目へと這わした。


「ぁああんっ!!!」


一層大きな歓喜の悲鳴が鳴り響く。

恭子はそのままヒダの部分を丁寧に舐め上げていった。

直美は花唇に当たる恭子の舌に酔いしれ、恭子の頭を掴むと、背中を弓なりに反らし、その丘陵を恭子が舐めやすいように差しだした。


「キョウちゃん、すごい……すごく気持ち良い……
まるで天国にいるみたいに身体がほんわりとしちゃう……」


恭子はその言葉に気分を良くすると、今度は直美の勃起しきった淫核に舌を絡みつけた。


「あぁっ! もうダメ……
気持ち良すぎて……イっちゃいそう……キョウちゃん……」


直美の言葉を聞き、恭子はクンニリングスを中断した。


「えっ……どうして…やめちゃうの…?」


寂しそうな声でつぶやく直美。


「ううん、やめたわけじゃないわ。私も直美にして欲しくなっちゃって……」


艶めかしい表情で答える恭子。

恭子の言葉の意味をすぐに理解し、
直美は身体を反転させると恭子の股間に自分の頭を持ってきた。

いわゆる69の体勢だ。


「そうだね……キョウちゃん。一緒にしよっ」

「うん、お願いね。直美」


お互いの花園に顔を埋める二人。
一心不乱に愛する人の部分に愛情いっぱいのキスを続ける。


「あぁ…あっ! ……くっ…気持ちいぃ……ちゅ……ちゅぷ」

「レロレロレロレロ……キョウちゃんのココ、すごい美味しい……大好きっ♡」


巧みさはないものの、無邪気な直美の愛撫は十分過ぎるほど恭子に刺激を与えていた。


「私も直美のココ……好きよ。
こんなに私の舌に甘えちゃって……舐めるたびにピクンピクンして、本当に可愛いんだからっ……ちゅぅぅぅ」

「ひゃっ、ぁぁあん! だ……だってぇ……
キョウちゃんの中、すごくあったかくて…優しくて……包まれてるだけで、嬉しくなっちゃうんだもん……」

「そうねぇ……レロレロ……ちゅ……
こんなに女の子のお口が好きなクリちゃんは、もっともっと大きくしてあげるからね……ぢゅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

「ぁぁぁぁぁああああああん!!」


直美のクリトリスを吸引する。
皮が剥け、勃起した淫核は赤く充血している。
それを見ながら、直美のクリがもっと大きかったら、舐め応えあるのにな、などと恭子は考えていた。



※※※



二人のクンニは続く。

直美は猫がミルクを舐めるように丁寧に突起を舐めており、恭子の責めとは対象的に大人しかった。

しかし刺激は弱いものの、恭子に与える精神的な刺激は大きく、
顔は見えないものの、恭子は直美が自分のソコをペロペロと舐めている様子を思い浮かべ、淫泉から止め処なく湧水を溢れさせていた。


「あっ……キョウちゃん。さっきよりもドクドク液が出てきているよ。
ペロペロ……ペロペロ……じゅぅるるっ……ゴクンっ」

(ぁぁああ……もうダメかも……直美に舐められるとなんだか心まで舐められているような気持ちになってしまうわ……)


恭子はイキそうになるのを我慢しながら、直美へのクンニを続けた。


「直美……もっと感じて……
この快感を忘れられなくなるくらい、もっと深く……」


二人の間からは卑猥な水音がしばらく鳴り響いていた。


「キ……キョウ…ちゃん……
あたし…くぅ……ぁんっ。なんか……もう……イキそう…」

「ちゅ……そう…イキそうなのね……いいわよ。イっちゃいなさい」

「ダメぇ……キョウちゃんも……一緒にイクの……」


舌での愛撫を早め、拙いながらもなんとか恭子をイカせようと必死になる直美。


「大丈夫……あなたがイケば、私もイクわ……あなたが舐めてくれている事実、あなたがイッたって事実だけでも私は……」


徐々に激しさを増す、二人の愛撫。
そうしていくうちに、官能は極限まで高められ、そしてついに……


「ちゅぷちゅ……あっあっ! キョウちゃん! あっアッァッ! イクッ……ぁっ! イっちゃう……アッ! アァッ! アアアアッッ!!!」
「イッて……直美。ちゅぅぅ、レロレロレロ……あぁっ! 私も……私も……イクっ……イクっ……イっちゃう!!」



「ああああああぁぁぁぁっっ!!」



直美の方が1テンポ早かったものの、二人はほぼ同時に絶頂した。

直美は恭子から与えられる肉体的刺激で、恭子は直美を絶頂させた精神的刺激で……

二人はしばらくの間、荒い息を繰り返していたが、それが落ち着くと、
身体を起こして、愛する者と向き合い、抱きつき熱いキスをした。


「ちゅ……愛してるわ、直美。誰よりもあなたが好き」

「あたしも……キョウちゃんのこと、誰よりも好き。大好きっ!」



※※※



舌を絡め合うディープキス。

もう恭子は、直美が覚醒することを気にしていなかった。
直美は覚醒しない。心の底からこの状況を望んでくれている。
直美と抱き合い、その気持ちがしっかりと伝わってきていた。


「ねぇ、キョウちゃん。あたし、キョウちゃんともっとキスしたいよー」

「……? キスならしてるわよ。今だって……ちゅ」

「ううん。違う……こういうこと……」


直美はそういうと、身体を少し起こし、
座っている恭子の両足を開かせ、間に自らの足を割り入れていった。


「キョウちゃん……少しお尻を浮かせて……うん、そう……そのまま……はぁっんっっ!!」


直美の蕾と恭子の蕾が触れ合う、二人の身体に再び大きな痺れが走った。


「直美、あぁぁっ!!」


そのまま抱きつき恭子にキスをする直美。


「キョウちゃん……あたし、前からずっとこうしたかったの……キョウちゃんと上と下、両方でキスして抱きしめ合うの……」

「直美……すごい……これ……ぁぁ!」


直美は腰をくねくねさせ、自らの秘所を恭子のそれに擦りつけている。
テニスで鍛えているだけあり、こういった身体の使い方は直美の方が一枚上手だった。


「キョウちゃん……すごい気持ちいぃんだね。嬉しい……キョウちゃん、もっと感じて」

「なおみ、ダメっ……ぁああ! ダメっ! 耐えられない……」


あまりの刺激に恭子は倒れそうになるが、直美はしっかりと恭子を支え、貝同士のキスを続けた。


「ふふふ、キョウちゃん。かわいい……
あたしが支えてあげるからね。ちゅっちゅっ♡」


先程の69の時とは打って変わって、完全に主導権は直美が握っていた。


(あぁ…なんてこと……
直美にこんなにされて……気持ち良すぎて……意識が……)


直美の腰の動きは次第に激しさを増していった。
より強い刺激を恭子に与えようと、身体全体を使って愛撫をしているようだ。


「んっんっ! キョウちゃんには器用さでは勝てないけど、こういった身体の使い方はあたしの方が上だよ。
さっきいっぱい気持ち良くしてくれたお礼をいっぱいしちゃうからね!」


アスリートならではの動き、
力強いその振動に恭子は抗うことができず成すがままになってしまった。


「なおみぃ……もうだめぇ……わたし、イっちゃう……」

「はぁっ……はぁっ……! いいよ……イッて、もっといっぱい感じて、イッて!」


直美がラストスパートをかける。


「なおみ、なおみ……なおみ!! あぁっ! ぁぁぁぁ! あああああああ!」

「キョウちゃん、大好き♡んっんっん! あっあっ、イクッ!!!」


先程とは正反対で、今度は恭子の方が1テンポ早くイってしまった。

痙攣する恭子を優しく支え、ゆっくりとベッドに寝かせる。
そしてその隣に横たわり、恍惚とした表情を浮かべる恭子に語りかけた。


「どうだった? キョウちゃん。気持ち良かった…?」

「ハァ…ハァ……あたり前でしょ。
こんなの経験しちゃったら…もう忘れられなくなるわ…」

「あたしも忘れないよ……ずっと心に刻みつけとくからね…」

「直美……」


目を閉じてキスをする二人。
しばらくは口づけを交わしていたが、少しずつ意識が薄れていき、そのまま眠りについた。




※※※




――― チュン……
――― チュンチュン……



スズメの鳴く音と、カーテンの隙間から差しこむ光で目を覚ます直美。


(……なんかすごい夢を見ていたような気がするけど……どんなのだっけ……?)


ぼーっとしながら、ふと、部屋の中を見渡した。
昨日と変わりない光景。
隣には恭子が横たわり、寝息を立てている。


(……)


なぜか恭子の寝顔から目が離せない。


(……キョウちゃん。すごい綺麗……)


――― ドクン……ドクン……


直美の心臓の鼓動が激しくなる。


(なんでこんなにドキドキするんだろう……キョウちゃんの唇を見ているだけであたし……)


無意識のうちに身体が動いた。直美は恭子の顔に、近づき……


――― ちゅ……



軽く唇と唇が触れる。


(……)


――― ドクンドクンドクン……


(……え? あたし、今何を……?)


正気に戻り、自分がしてしまったことに顔を赤らめてしまう。

(あたし……キョウちゃんにキスしちゃった! なんでなんで…?)


慌てて恭子の方を見る。
軽く触れる程度の感触だったため、恭子の様子に変化は見られない。
どうやら気付かれていないようだ。


(良かった……とりあえず落ち付かなきゃ……トイレいってこよ)


そのまま恭子を起こさないように、ゆっくりとベッドから離れると、ドアを開けてトイレに向かった、



(……)


――― ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクン……


(~~~!! 直美が……私にキスを……! )


ドアの閉まる音を耳で確認し、途端に様子を変える恭子。
心臓が破裂しそうなくらい高鳴っている。

後少し直美が出て行くのが遅かったなら、この音に気づかれていたかもしれない。
鏡は見れないが、きっと顔は赤くなっている。


催眠にかかっていない状態での、直美との初めてのキス……


直美が戻ってくるまでの間に、心臓の高鳴りと赤面した顔を元に戻すのに、恭子は大変苦労したのであった。
[ 2017/10/01 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.23 【 火照り 】


午前、二人は食卓を囲んで朝食を取っていた。

食卓に置かれるハムエッグとサラダとパン。

直美が“勉強のお礼に”ということで食事の支度をしたのだが、
持ち前の不器用さが発揮され、説明されなければ、食べ物かどうかも分からないものが出来上がっていた。

それでも最初恭子は、初めての直美の手料理ということで喜んでいた。

だが全てを食べ終える頃には、諦めたような何かを達観したような表情へと変わっていた。

少しぐったりとした様子で、直美に尋ねる恭子。


「直美……今日のハムエッグ、使った材料って、卵とハム…だけよね?」

「ううん。違うよ。普通の作ったんじゃ面白くないと思って隠し味入れちゃった♪」

「……何……入れたの?」

「う~ん、全部英語で書いてあったからよくわかんないけど、
油の隣に置いてある調味料っぽいので、ちょっと舐めて合いそうなの全部入れたよ」


恭子の母親が以前帰国した際に、海外から持ち帰ってきた調味料だ。

香辛料や漢方など、よくわからないものが多く、
賞味期限が切れているものもあったため、ちょうど捨てようと思っていたころだった。


「直美は食べてみてどう思ったの……?」


恭子が食べたからには、もちろん直美も同じものを食べている。

後半食べるスピードが落ちていった恭子と比べて、直美はさも当たり前のようにパクパクと自分の作った料理を口にしていた。

その様子を見ていたこともあり、恭子もなんとか最後まで食べきったのだ。


「ちょっと変わった味だと思ったけど、
珍しい材料使ったんだし、こんなもんかな~っと?
キョウちゃんこそ、あたしの手料理食べてみてどうだった?」


期待に満ちた目。
自分の作った料理への感想を、待ちわびていたようだ。


「え…えぇ……ま、まぁまぁね……出来た方じゃ……ないかしら…」


こんな純粋無垢な顔をされて、率直な意見は言い辛い。
注意したいことは山ほどあったが、恭子はとりあえず控えめに褒めることにした。


「やっぱ、そうだよね! 
うちのお母さんったら、あんまりあたしに料理させようとしないんだよね。
一度、家族に食べさせたことがあるんだけど、それからはみんな「しなくていい!」の一点張りでさ、なんだか失礼しちゃうよねっ! あたしだってやればできるんだから、もっとたくさん作らせればいいのに、なんだかんだ言って……」

「へー…そうなんだー……」


だんだんと空返事になっていく恭子。


(大雑把過ぎるのはわかってたけど、
まさか味オンチもあったとはね……いつか直すことができるのかしら……)


心なしかお腹の調子も良くないような気がする……

げんなりとした顔をしながら、直美には一人で調理させない方が良いと感じた恭子であった。



※※※



食器を片づけ部屋に戻る。

直美は昨日とは打って変わって、真面目に勉強に取り組んでいる様子だ。

恭子に頼ってばかりではいけないと感じたのか、心を入れ替えて受験に向き合う気になってくれたようだ。


(ふふふ……昨日の約束ちゃんと守ってくれてる……
催眠だけで合格させることができるか心配だったけど、この調子で頑張ってくれたら、きっと大丈夫ね)


「ん? キョウちゃん、どうして笑ってるの?」

「ううん、直美が一生懸命勉強してくれているものだから嬉しくって」

「もぉー、あたしだってやる時はちゃんとやるんだからね!」

「はいはい、三日坊主にならないように気をつけてね」


和気あいあいと勉強を進める二人。
それから2時間ほど経ったところで、一旦休憩を挟むことにした。


「ふー疲れた~」


直美は珍しく真面目に勉強に取り組んだためか、少し大げさに疲れを表現していた。


「だいぶ頑張ったわね。肩揉んであげるわ」


さりげなく直美の肩を揉み始める恭子。

直美の肩に触れながら、激しく愛し合った昨日の情事を思い出す。

催眠時の直美の表情や喘ぎ声、それらを思い出すだけで自然と手付きが厭らしくなってしまいそうだった。

直美は記憶にはないものの、身体が昨日のことを覚えているのか、肩の凝りを解してもらうのとは別の気持ち良さを感じ始めていた。

以前の直美だったら、その変化に気が付いただろうが、恭子に触れられることで毎回同じ反応をしてしまうため、それがさも当たり前のことのように感じてしまっていた。


「どう直美? 気持ち良い…?」

「んっ……気持ち…いいよ…」


少し上ずった声色。
恭子は気付かないふりをしながらも、そのまま揉む範囲を広げていく。

第三者から見れば、今の二人の光景は、仲の良い女同士が、とても肩揉みをしているだけのようには見えないだろう。

それはどう見ても、女性同性愛者同士の前戯であった。


「ぁっ……はぁ……」


今まで長い時間をかけて身体を開発してきたためか、
ここにきて、直美の身体は受ける刺激を素直に感じるようになっていた。

顔を紅潮させ、身を委ねる様は、まるで恋人に甘えているようにも見えた。


(すごい……少し肩を揉んだだけでこんな反応するようになっちゃったんだ…)


直美の心は、ほぼレズ色に染まりつつある。

今朝、直美から受けたキス。

恭子は、なぜ直美がそのような行為に及んだのか、明確な理由はわからなかったが、直美が前以上の気持ちを寄せてくれているのは、はっきりとわかった。

女性同士のセックスをあれだけ激しく行っても覚醒しなかった以上、
身体はもう完全に女同士の性愛を受け入れたと言っても良い。

あとは、今朝直美が恭子にしたように、何度も自発的にレズ行為をさせていけば、心もレズビアン一色に染まっていくだろう……


(だとしたら、あとは……)


恭子は何かを思いついたようだったが、
まだ勉強を開始して2時間しか経っていなかったこともあり、一旦それを心にしまい、勉強を再開することにした。



※※※



「はい、正解よ。ほぼ合格点と言っても良いわ」

「え~! ? ほんと! ?」

「えぇ、本当よ。ほら○○点。これなら○×大学にギリギリ届くレベルね」

「うそっ信じらんない! そんなに! ?」


時刻は夕方に差しかかろうとしていた。

これまでの勉強の成果と、直美のやる気が上がったおかげで、去年の○×大学の過去問で、直美は今までもっとも高い点数を出していた。


「催眠にばかり頼らず、自分で理解しようとしたおかげね。
いくら催眠術が優秀でも、やる気のある人とない人では全然効果が違うわ。
頭の中の情報を引き出すスピードがアップした感じかしら?」


「そうそう! 覚えた記憶がないものでも、必要な時にすぐ駆けつけてくれる感じだったよ。前はそんなんじゃなかったのに、変われば変わるもんなんだね!」


直美は今まで催眠で記憶したものでも、思いだすのに時間がかかってしまっていた。本番は限られた時間の中で結果を出さなければならない。

恭子も直美の弱点に気が付いてはいたが、記憶の引き出し行為を反復させて、慣れさせるので精一杯だった。

一番の解決策はやる気を出させることだったのだ。

思いもよらない形で血路を見出すことができ、直美の大学合格への道は大きく前進することとなった。


「とりあえず成果が出たところで一旦終りにしましょ。あんまり詰め込み過ぎても逆に効率悪くなってしまうしね」

「うん、そうだね。お疲れ様、キョウちゃん」


無理だと思っていた難関大学が、自分の手の届くところまで来ている。
夢のような思いと共に、恭子へ対する尊敬と感謝の念を一際強く持った直美であった。


「今日は帰ってからも勉強するわよね?」

「もちろん! 一人でもちゃんと勉強するよ!」

「ふふ、頼もしいわね。そんな頼もしい直美に餞別をあげるわ」

「餞別?」

「直美の頭の疲れが早く回復するように暗示をかけてあげる。そうすれば帰ってからも効率よく勉強できるでしょ?」

「でも、キョウちゃんも昨日今日と、勉強、催眠の連続で疲れちゃったんじゃない…?」


直美が心配そうな目で見つめる。
恭子の気持ちは嬉しかったが、これ以上無理をさせたくないと直美は感じていた。


「大丈夫! 私にとって催眠は休憩みたいなもんよ。
直美が催眠をかけられるのが楽しいように、私も催眠かけるのは楽しいのよ?
ここでかけなきゃ、直美が帰った後、気分がすっきりしなくて、私の勉強の効率も落ちちゃうかも…?」


恭子の本音だった。

実際、催眠中の直美との触れ合いは恭子の心を癒していた。
恭子にとって催眠は、疲れる作業などではなく、むしろ心を癒す人生のオアシスのようなものであった。


「え~、そういうもんなんだ。じゃあかけてもらおうかな?」

「ありがと、じゃあベッドに横になって」


そう言い、直美をベッドへと誘導する恭子。


(これが最後の催眠よ……これで直美の心は完全に私のもの……)


天使の笑顔の裏に隠された邪な心。

直美の心を女同士の性愛の虜にするための儀式は、最後の仕上げに入ろうとしていた……



※※※



「長い長い階段を降りて、あなたはふかーい、ふかーい心の奥底に辿りつきました」


恭子は、いつもの通り催眠状態の直美を眺めていた。

昨日から今日にかけて、直美の女同士へのセックスの抵抗感は、ほぼ全て消し去ることができた。

直美は女同士の正常な交わりであれば、何をしても覚醒することはないだろう。

もしそれでも覚醒するとするならば、
それはもう同性愛とはかけ離れた、痛みや不衛生な行為によるものだ。

恭子はもちろん、そういったアブノーマルなプレイには興味はなく、
単純に直美と恋人同士になりたいだけであった。


「さぁ直美。目覚めましょ……ここはあなたの部屋の中。他には誰もいないわ……

私の声はあなたの心に響くけれど、あなたはそれを音として感じ取ることができません。
私の声はあなたの心の声。心の赴くまま行動していきましょうね……」


ゆっくりと目を開ける直美。


「あれ……? いつの間に家に戻ってきたんだろう……?」


(あなたは、恭子の家から帰宅した後、自分の部屋で横になっていました。
勉強を頑張ったおかげで、いつもよりも疲れてはいますが、気分はすっきりしています)

「あぁ、そうだっけ……さっきキョウちゃんの家から帰ってきたんだった」

(あなたは恭子の家であったことを思い出します。
強く思いだすのは、もちろんお風呂場での出来事……

あなたは無意識のうちに心の中で思ったことを口に出してしまいます。
でもあなたは、無意識の心の声を音として感じ取ることができません)


しばらくボーっとしたままの直美は、ゆっくりと口を開き始めた。


「キョウちゃんの裸、すごく綺麗だったな……
すべすべしててキメが細かくて……やっぱりシルクで洗うと、あぁなるんだろうな……今度キョウちゃんとクストコ行った時にでも探してみようかな……?」

(あなたは次にシルクのタオルで身体を洗った後のことを思い出します……)

「それに……最初、びっくりしちゃったけど……
キョウちゃんの手で洗ってもらって、すごく気持ち良かったな……
もしあの手で、もっといろんなところを触られてたら……どうなっちゃってたんだろう? ぁ……ハァ……」


そういうと直美は熱い息を漏らしてしまった。


「ダメダメ、そんなこと考えちゃダメ……キョウちゃんは、あたしの親友。
そんな厭らしいこと考えちゃダメなの……」

(そう思いつつも、あなたは恭子が自分の身体を手で洗う想像を止めることができません)

「……考えちゃダメなのに……ハァ…ハァ……ん、んんんっ……
もしキョウちゃんが、あたしのあそこを触ってくれたらどんなに気持ちいぃだろう……ぁ…ハァ…そんなこと……考えちゃ、ダメっ!」


心の中で葛藤を起こす直美。

いつもはここで妄想を止めることができていたのだろう。

しかし、今は恭子に催眠をかけられ支配されている状態。
直美は自分の妄想をかき消すことができなかった。


(あなたは、だんだん自分の性器を触りたくなってきます……
『もし恭子に触られたら?』そう考えるだけで、あなたはもっと気持ちよくなってきてしまいます……)

「はぁ……はぁ……ダメ……また濡れてきちゃった……
キョウちゃんのこと考えると濡れてきちゃう……こんなことダメなのに……」

(あなたはダメと思えば思うほど、逆に気持ち良くなってしまいます……
そしてもっとアソコ触りたくなってくる……触るとすごく気持ちいい……
恭子に敏感なところを触って欲しくて欲しくて仕方がありません)

「んんっ……もし、キョウちゃんの指が……あたしのクリに触れたら……
あぁぁっ……ダメなのぉ……
キョウちゃんはあたしの大事な親友。でも……触って欲しいよ……」


身体は興奮して小刻みに震えている。直美の指が、徐々に下半身に伸びていく。

しかし、すんでの所で動きが止まる。


「だめ……触っちゃ……ダメ……
そんなことしたら普通じゃ……なくなっちゃう……
キョウちゃんのこと、親友として見れなくなっちゃう……」


我慢強く自制を続ける直美を見て、恭子はやり方を少し変えることにした。


(あなたは今、身体に触れられても何も感じません。触れられていることにすら気付きません…)


そう言うと恭子は、直美の手を優しく掴み、スカートの中へと誘導していった。


「えっ……? なんてなんで? 手が……勝手に……」


(手が勝手に動くなんてことはあり得ません。あくまであなたが自らの意思で動かしているのです)


「ダメダメダメダメっ! 止まって! あたし止まって!!」


手が性器に近づけば近づくほど、直美の焦りの色が強くなっていく。
それと共に手に込める力も強くなっていった。

恭子は、直美の手をショーツの中に入れる難しさを感じると、追加の暗示で対処することにした。


(あなたは徐々に手の力が抜けていきます)


その言葉が直美に伝わると、次第に直美の手の力は抜けていき、恭子の力でも楽に動かせるようになってきた。

そうしてついに恭子は掴んでいる直美の手を、ショーツの中に差し込んだ。


「えっ! ウソ……中に手入れちゃった……早く抜かなきゃ!」


しかし、手の力が抜けるように暗示をかけられている直美は、恭子の手の拘束から逃れることはできなかった。

恭子は直美のクリトリスの位置をもう片方の手で確認すると、直美の手の人差し指をキュッと擦り付けた。


「ひゃんっ!!」


その瞬間、直美の身体がビクっと震える。


「ハァ……ハァ……どうしよう……触っちゃった……」


困惑する直美。人差し指をクリに接触させてはいるが、まだ自らの意思で動かそうとは思っていないようだ。


(あなたは、擦りたくなる。擦れば擦るほど、気持ちよくなってしまいます)


そういうと恭子は、直美の指で陰核付近を擦り続けた。


「ぁん! やぁんっ……」


硬く触ることを拒んでいた直美の指も、
何度も擦り続けるうち、次第に動きが滑らかになっていった。

恭子が直美の突起に触れてみると、そこは硬く勃起し陰口から溢れ出る愛液で滑り易くなっていた。


「んっ……ふぅ……いぃ……キモチイイよぉ……」


直美の声が甘く緩んできたのを確認して、恭子は直美の手を解放してあげることにした。

案の定、手が離れても、直美は指の動きを止めず、自らの意思でいじり続けていた。


「……ああぁっ! んっ! んっ! 
キョウちゃんの指が……あぁぁ……あたしの敏感なとこ……ふぅぅんっ!」


直美は体勢を変えひたすら甘い声をあげている。
目を閉じて、両手を使って思うままに自分の陰部を触り続けている。


(ねぇ、布が邪魔よね? 脱いだらもっと楽に触れるわよ?)


直美はそれを聞くと、一旦手の動きを止め、スカートとショーツを脱いでしまった。


「もうダメ……我慢できない……
キョウちゃんごめんね……今日だけキョウちゃんのこと考えさせて……」


“今日だけ”
直美が精一杯考え出した言い訳の言葉だった。

恭子はそれを聞くと微笑み。その言い訳を利用することにした。


(そう、今日だけだから思いっきりしても大丈夫よ。
今日だけ直美は恭子のことを考えてオナニーするの……
今日だけ直美はえっちなレズビアンになっちゃっていいのよ……)


「うん……今日だけだから……
あともうしないから……今日だけ思いっきりするの……」


そう言い、直美は両手で自らの股間をまさぐり始めた。


「あぁっ! キョウちゃん!! 気持ちいい! そこっ……あぁっ!」


片方の手でクリを触り、もう片方の手でヒダを触る。
どちらも力を込めず、優しくソフトに触っていく、心なしか恭子が普段、直美を触っている時の動きに似ている。

そんな直美の乱れる姿を見て、恭子も段々我慢できなくなってしまった。


(はぁ…はぁ……あなたは、これから外からの刺激を感じ取れるようになります。
でも、あなたはそれを自分が興奮して得ている刺激だと思いこみます……
さぁ、邪魔な衣服は全部脱ぎましょう……脱ぐともっと気持ち良くなれるわよ……)


興奮している直美はいてもたってもいられなくなり、
シャツに手をかけ急いでボタンを外すと、上半身に着ているものを全て脱ぎ捨ててしまった。

そして自分の部屋で一人だと思い込んでいることもあり、ベッドの上に座ると前かがみになり遠慮なくオナニーを始めた。


「んんんっ気持ちいいっ! キョウちゃん、キョウちゃん!! あっあっあ! キョウちゃん、好きぃ!!」


恭子は激しくオナニーに浸る直美を眺めながら、
自らも着ている服を脱いでいき、直美と同じように生まれたままの姿になった。

誠に使う予定だったローションをベッドの裏から取り出して自らの手につけると、
背中を丸めてクリトリスをいじくる直美の背中に、自らの胸を押し付け優しく呟いた。


(お風呂場で恭子におっぱいを洗ってもらったことを思い出して……すると本当にあの時の感覚が蘇ってくるわよ)


ひたすら股間を責める直美を援護するように、恭子は空いている直美の胸を責め始めた。

潤滑剤としてローションを直美の胸に塗りつける。
お風呂場の時の泡よりも滑りやすいローションによって、より強い刺激が直美の身体を走った。


「んんっ! 想像してるだけなのに……おっぱい気持ちいいっ! キョウちゃん、もっと♡ もっとしてぇ~♡」


恭子の存在を知覚できない直美は、妄想の中で胸を揉まれていると誤認している。
想像上の恭子を思い浮かべ、猫が甘える時のような声を出していた。


(あらあら、いいの~? 女の子相手にそんな声出しちゃって……普通そういう声は男の人に聞かせるものよ?)


恭子は直美が自分のことを妄想して乱れてくれるのが嬉しくて、
直美の胸を両手で揉みながら耳元で囁いた。


「いいの……今日だけあたしはレズビアンだからいいの……
女の子好きで、キョウちゃんのことが、大大、大好きなの! 
男の人のことなんてどうでもいいっ! もう女の人としかエッチしない!」

(そうなの、じゃあそんなレズビアンな直美ちゃんには、女の子の香りいっぱい嗅がせてあげる……)


恭子は一旦離れ、直美を仰向けに寝かせ顔の上にまたがると、そのまま自分の股間を直美の顔にくっつけた。


(ほら、レズビアンの直美ちゃんの大好きな女の子のオマンコよ? 女の子の香りをいっぱい楽しんでね)

「あぁ……女の子のオマンコぉ……んっんんんっ、すごぉい良い匂い……」


直美のヴァギナをいじる手の動きが早まる。
想像で匂いがするというのはおかしな話だが、今の直美にはそういったことは気にはならなかった。


(女の子のオマンコの匂いを嗅ぎながらオナニーするとすごい気持ちいいでしょ?
オナニーするだけでも気持ちいいのに、もし本当に女の子とエッチしちゃったら、どれだけ気持ちいいかしらね…?)

「したい……エッチしたい……キョウちゃんとエッチしたい……ぁぁんっ!」

(エッチできるわよ……そのうちね。今はオナニーで我慢しましょうね?
オナニーすればいつでも今みたいな気持ちでエッチできるわ)


恍惚とした表情を浮かべる直美。
あまりのオナニーの気持ち良さに、陶酔しきっている様子だ。


(今度は自分でおっぱいをいじりながら、
恭子にアソコを舐められている想像しましょうね)


直美の両手が股間から胸へと移動する。
恭子は直美の両足を開かせると、オナニーによりびしょびしょに濡れたそこに顔を近づけ、ビンビンに勃起したクリトリスを口に含んだ。

そして……


「ぁぁっ! キョウちゃんがあたしのクリ……ペロペロしてるぅん……
ダメぇ! キモチ良すぎるよ……
もう……もうイク……気持ち良すぎて……いっちゃうっ……!」

(んっ……いいわ……イっちゃいなさい……
女の子同士のエッチを想像して、オナニーで思いっきりイっちゃいなさい)

「ハァハァハァハァ……! キョウちゃん……キョウちゃん好きっ! キョウちゃん大好きっ!」


次の瞬間、直美は大きく痙攣し、
まるで高圧の電流を一気にかけられたかのように跳びはねた。


「あああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!」


大きな悲鳴を上げて直美は絶頂した。

心の声を漏らすようになっていたため、その声は部屋中に鳴り響いた。



※※※



「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……すごい……気持ち……良かった……」


恭子は腰を上げ直美の隣に寝転がると、そのまま直美を抱きしめた。


(直美……もし本当に女の子同士でエッチしたら、こんな風に抱き合って眠れるのよ?
レズビアンで女の子が大好きな直美ちゃんには堪らないシチュエーションよね?)


直美の唇にキスをする。


「はぁ……キョウちゃん……ちゅっ……ちゅ……好きっ…好き~♡」

(女の子同士のキスも気持ちいいわよね?
こんなに気持ちいいこと、本当に一回限りでいいの?)

「ん……一回限り……」


直美はどこか残念そうな、寂しそうな顔をする。


(別に誰かに見られているわけでもないし、黙っておけば何度しても良いんじゃない?
誰にも言わなきゃ良いだけ……
たったそれだけで同じ気持ち良さを、何度でも味わうことができるわ……)


少し迷ったような顔をしているが、恭子の言葉に促されるように声を出す。


「別に……今日一回限りじゃ……なくったって……いいかな?」

(自分の気持ちに正直になって、直美。
今は受験シーズンなんだし、ストレスを溜めるのはよくないわ。
むしろ良いストレス解消法を見つけられてラッキーじゃない?
調子が良くなるんだったら、毎日したって構わないわよね?)

「ストレス溜めるのは良くないし……
誰にも迷惑かけないし……別に……いいよね?」

(バレなきゃ大丈夫。夜だけ、夜寝る前だけ。
エッチなレズビアンの直美ちゃんに変身すればいいのよ……
これは一種の遊び……本気じゃないから全然大丈夫よ……)

「夜だけ……誰にも言わなきゃいいだけだもんね……
遊びでするだけだし…本当にレズビアンになっちゃうわけじゃないしね……」

(じゃあこれからもしたくなったら、またオナニーしましょうね。
もちろんする時は女の子同士のエッチを想像して……
すると最高に気持ちいいわよ……ストレス対策もバッチリね! )

「こんなに気持ちいい遊び、一回限りじゃ勿体ないもんね。
キョウちゃんには悪いけど……バレなきゃ大丈夫。また好きな時にしよっと♪」


恭子はそこまで聞くと目的を達成したとして催眠術を終えることにした。



※※※



恭子の家の玄関。
身支度を終え、靴を履き、別れの挨拶をする直美。


「それじゃあ、今日、昨日とありがとね~! 
おかげですごい勉強できるようになっちゃった!」

「この調子なら大丈夫よ。
でも出来るようになったからって気を抜いたらダメよ?」

「う~ん、気をつける! でも、あたし調子乗っちゃうから少し怖いかもー」

「直美ならあり得るわね……じゃあ、念には念をいれて、週末はうちに来たら? いつでも活を入れてあげるわよ?」

「えっ! ? いいの?」

「もちろん、いいわよ。私達、親友でしょ?」

「……うん! ありがとう、キョウちゃん!」


直美は、恭子の親友という言葉に一瞬声を詰まらせたが、いつもの調子で答えた。

それは恭子と親友という関係に違和感を抱き始める前兆であったが、
その時の直美が気付くことはなかった。



※※※



その日の夜、直美は悶々としていた。

いつものように入浴をし、パジャマに着替えてベッドに入ったが、自分の気分がどこかおかしいことに気づいた。

なぜか、目を閉じると恭子の顔が浮かぶのだ。
そしてその恭子は、昨日一緒に入浴した時と同じ下着姿だった。

直美は寝返りを打つ。


(なんでキョウちゃんの下着姿なんて考えてるんだろ?)


もう一度目を閉じるが、恭子の姿は浮かんだままだった。
それどころか、想像の中の恭子は下着を脱ぎ始めていた。

直美は自分の異変に気づいていた。
なぜだか、股間が熱くなってきたのだ。

自分の血液が、下半身と、脳に集まってくるのがわかる。
いつの間にか直美は口で呼吸をし、自分の胸を触っていた。


(はぁ……はぁ……キョウちゃん……)


そのまま、直美は恭子との淫らな行為を想像してオナニーを始めてしまった。


(あぁんっ!! )


それから一時間後、直美は絶頂した。

直美にとっては、初めての女同士を想像しての自慰行為。
初めての想像は裸でお互いの胸を軽く触り合う程度のものだった。


(はぁ……はぁ……あたし、とんでもないことしちゃった……
まさかキョウちゃんのこと想像して……しちゃうなんて……)



※※※



その一週間後……


(ぁぁ……そこ……洗って……)


直美は恭子とのお風呂場での出来事を思い出してオナニーをしていた。
恭子の手で敏感なところを洗ってもらい、自らもそのしなやかな手に秘部を擦りつけることをイメージして、その日も絶頂した。


(またしちゃった……こんなことダメなのに、気持ちよくてつい……)



※※※



その後、直美は平日の夜には必ず自慰行為をするようになっていた。

もちろん親友との甘い交わりを想像して……

直美がそうした自慰行為に抵抗を持たなくなるまで、そう時間はかからなかった。


(ぁぁん……キョウちゃん……そこ……
あたしのおっぱいもっと舐めてぇ♡ クリちゃんもペロペロしてぇ♡)


今日は、恭子に陰部を舐めてもらう想像をしてオナニーに耽る直美。

恭子の暗示が日を追う毎に、効果を発揮していったのか、既に遠慮がなくなってしまっていた。


(気持ち良くてやめられない……でもこれも受験の為、普段集中するためにも、ここで欲求を解消しなくちゃ! )



※※※



それからというもの、恭子が手を出さなくても、直美は自らレズビアンへの道をつき進んでいった。
志望校への試験が開始される頃には、直美の性愛対象は完全に女性のみとなっていた。

時折見せる直美の怪しい目。

恭子は直美の気持ちに気付いてはいたが、高校を卒業するまでは現状維持でいこうと決めていた。


(残す不安は……)


恭子は別れたばかりの直美の元彼、桐越誠へ意識を向ける。

直美との関係を脅かす存在は一欠けらも残さない。

恭子の次なる計画が始まろうとしていた……
[ 2017/10/16 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.24 【 変身 】


冬の訪れをひしひしと感じるようになる12月。

街は、粉のようにさらさらした雪が降り始めるようになり、
世間はクリスマスと正月のイベントの準備を始めていた。



直美と誠が別れてからというもの、
誠は一人で恭子の家に遊びに来ることが多くなった。

それは催眠術を受けて気持ちが楽になるという側面もあったが、
単に恭子と遊ぶのが楽しいからでもあった。


同じように、恭子の気持ちもだんだん変わってきていた。

当初は誠に対して男性に感じる嫌悪感を持っていた恭子だったが、
今ではそれも弱まり、友達として良き関係を築けていた。

直美への催眠が一段落して余裕が出てきたのも、
恭子と誠の関係が良くなった理由の一つである。

誠は男性ではあるが、中性的な顔立ちで、
今まで自慰行為などの痴態を見慣れていたこともあり、
他の男性とは比較にならないほど、身近に感じられる存在となっていた。

この日もいつものように誠は一人で恭子の家へ遊びに来ていた。



※※※



「じゃあ最近は直美も元気なんだね、よかった」

「そうなのよ、もうこれでもかってくらい元気」


誠は直美の様子を恭子から聞くと、安心したように足を伸ばし、紅茶を一口飲んだ。

別れたとはいえ、誠にとって直美が大事な人であることに変りはなかった。
また直美の方も、誠を一人の人間として好きだという気持ちは変わりなく、
避けてはいたが、どこか気にかけている様子でもあった。

ここにきて、恭子は二人が再び仲良くなるのは別に構わないと思っていた。

直美は既に女同士の性愛を受け入れており、
二人の仲をこれ以上引き離すのは意味のないことだったし
恭子自身も二人に対して、多少なりとも引け目を感じている部分があったからだ。


(二人が仲良くなるのは構わないわ。でもそれは別の形で……)


恭子は誠の前で長い髪を結わえ、
結んだところをバレッタで止めようとしたところだった。

ふと、誠を見る。


(……)


じっと見つめる恭子に気づいた誠が、不思議そうに尋ねる。


「どうしたの?」


そこで恭子は、前から考えていたことを口にした。


「誠くんって…女装が似合いそうな顔してるよね」

「へっ?」


誠はまったく予想していなかったことを恭子から言われ、目を丸くした。


「いや、綺麗な顔してるから、つい……お化粧してあげたくなっちゃうなーって」


恭子はそう言うと、ばれない程度に誠の様子を伺った。


「えーそうかなあ、自分ではわからないけど……」


誠は右手で頭をぽりぽりとかくと、
恭子の前に置いてあった手鏡を持って自分の顔を覗き込む。

驚いてはいるが、綺麗な顔、と言われて満更でもないらしい。

恭子はさも今思いついたかのように「そうだ」と言うと、
自分の髪に付けたばかりのバレッタを外し、誠に差し出した。


「ちょっとこれ、付けてみてよ」


そう言うと、誠が何かを言う前にバレッタを持っていき、
誠の顔にかかる前髪を耳にかけさせバレッタで留めた。


「え~すごい似合う!」


恭子は黄色い声で誠を褒めた。

実際、男子高校生の制服と、化粧を施していない顔にバレッタは多少ちぐはぐな感じもしたが、似合っているのは嘘ではなかった。

誠は持っていた手鏡で自分の姿を確認し、
前髪の具合を少し整えながら「そうかなあ」と言った。


「でもやっぱり、似合わないよ。こんな服装だしね」


誠は口では否定しつつも、
斜めの角度から自分の顔を除く姿は少し嬉しそうだった。

そこで恭子はすかさず考えていた言葉を口にした。


「ねえ、私の服着てみない?」

「えー、そこまではちょっと…」

「いいじゃん、ちょっと合わせてみるだけだから、お願い!」

「ん~どうしようかなあ……」


誠は悩んでいる様子だった。

誠は催眠で女装に興味を持たされてはいたが、
すんなりと恭子の提案を受け入れるのは恥ずかしいのだろう。


「私の服を着た誠くんの姿をどうしても見てみたいの、ダメ?」


両手を合わせてお願いのポーズをする恭子。

そんな恭子の態度に、受け入れやすくなった誠は、
視線を逸らしながら返事をした。


「いつも相談に乗ってもらっているしなあ……
催眠もかけてもらったり、お世話になってるし……わかった、合わせるだけだよ?」


誠が言い訳くさく言うと、恭子も待っていたとばかりに肯定した。


「やった~、誠くんありがとう! 普段から人助けはしておくものね」


恭子は大げさに喜ぶとクローゼットに駆け寄った。


「こうなったらとびっきり可愛くしてあげるね!」

「え~いいよ、適当で……」


誠は口ではそう言いながらも気になるのか、恭子の後ろからクローゼットを覗いていた。


「あ、だめ! 女の子のクローゼットは覗いちゃだめなんだよ! そこで待ってて」


恭子が笑いながらテーブルを指すと、誠はいそいそと元の位置に戻っていった。

恭子は実際わくわくしていた。
あれだけアクセサリーが似合うのだ、きっと誠も自分の女装姿を気に入るに違いない。


「はい、これね!」


恭子が選んだのは偶然か、
誠がいつか見た夢で着ていたコーディネートそっくりな服だった。

袖とウエストのところを絞ったデザインの白いトップスに、茶色いミニのタイトスカート、靴下はふちにレースがついた短いものだった。

誠はそれを見ると、少し動揺した。

選ばれたコーディネートがあまりにも可愛いものだったという理由もあるが、どこかで見覚えがあったからだ。

それに、少し気持ちが高揚している自分がいた。

最近気になっていた、女の子の服をこれから自分が着るのだ。
誠はそこまで考えて首を振った。

女の子の格好をするなんて恥ずかしいことだ。自分は「渋々」これを着るのだ。


「はい、じゃあ私廊下に出てるから、着替えたら呼んでね」


恭子はそう言うと、服一式と誠を残し、部屋を出て行ってしまった。

残された誠は、様々なことを考え複雑な気持ちだったが、意を決して制服を脱ぎ始めた。



※※※



「もーいーかい?」


恭子が部屋の外からかくれんぼのように聞く。


「あ、ちょ、ちょっと待って」


誠は慌ててスカートのチャックを上げると「もういいよ」と恭子に言った。
恭子がノックしてからドアを開ける。

そこには顔を赤くして、どこかもじもじとした様子の誠が立っていた。
そして、誠はやはり、女装が似合っていた。

恭子は初めて見たかのように大げさに目を丸くすると、誠を褒めちぎった。


「誠くん…いやマコトちゃん! すごい可愛いよ!」


マコトちゃん、と女子のように呼ばれた誠は動揺したように笑うと、


「ちょっとその呼び方は…」と恥ずかしそうに言った。

「女装したときだけ、こう呼んでもいいでしょ?」


恭子がそう押し切ると誠は「じゃあ…」と言って受け入れた。


「それにしても、どうなのかなあこの姿」


誠は俯いて自分の姿を見ながら照れたように言う。

どうやら恭子が心配していたような女装に対する嫌悪感はあまり感じていないらしい。


「よし、じゃあもっと可愛くしてあげる!」


恭子は困惑する誠をテーブルの前に座らせると自分の机から大きな箱を持ってきた。

「なに、これ…?」

「これはね、メイクボックス。今から最高に可愛くしてあげるからね」


恭子は誠に有無を言わさずメイクを始めた。


「今日は全体的にベージュのコーディネートだから、アイシャドウはピンクベージュかな~」


恭子は楽しさを隠さずにメイクをしている。
誠は動揺の中に確かな喜びを感じていたが、自分の気持ちをごまかしながら恭子のなすがままにされていた。


(自分は渋々女装をしているんだ)


呪文のように心の中で繰り返していると、恭子から様々な指示が飛んでくる。


「はい、下まつげ塗るから目線上ね」

「はい次目閉じて」

「じゃあ口を半開きでお願い」


恭子は最後にヌーディーな色のグロスを塗ると立ち上がり、クローゼットの横からスタンドミラーを持ってきた。


「はい、見てみて?」


恭子は誠を立ち上がらせ、スタンドミラーの前に立たせると、自分は誠の後ろに回り、一緒に鏡を覗いた。


「え…うそ……」


誠は大きな目をさらに大きくして鏡の中の自分を見た。
ベージュを基調としたコーディネートに、ピンクでまとめたメイク、髪の毛はストレートアイロンで伸ばし、耳の横にはあのバレッタがとまっていた。

誠はしばらく鏡を凝視していた。

その反応は当たり前だった。もともと綺麗に整った顔に、学年一の美女がメイクを施したのだ。誠は、一言で表すと綺麗な女性そのものになっていた。


「マコトちゃん、すっごい綺麗…!」


恭子が黄色い声で沈黙を破る。


「こんなに似合うなんて思ってなかった、ウィッグもつけてないのに女性に見えるなんて、女装にすごく向いてるんだね!」

「…女装に…向いてる?」

「そう、すごい似合ってるよ!」


誠は恭子と鏡を交互に見て、やはりまだ、驚いているようだった。
元々の面影はあるものの、まるで別の人生を歩んできたかのような美女が鏡の中にいる。
自分の動きに合わせて動くその姿に、誠はとても不思議な気持ちになった。

鏡を見てぼーっと立ちつくしている誠。
恭子はちらりと時計を見ると「もうこんな時間だね」と言った。


「今日もこれから催眠、する?」

「あ、できれば…お願いしたいかな」


誠が遠慮がちに言うと、恭子はもう一度時計を確認するそぶりを見せてから言った。


「メイク落としてからだと時間が足りないから…今日はこのまま催眠しない?」


恭子はいかにも自然に誠に提案する。


「うーん…そうだね、じゃあそうしようかな」


誠もすぐに元に戻るのはもったいないと思ったのだろう。
恭子の提案にそのまま応じ、女装姿のまま催眠を受けることにした。

直美と誠の新しい関係を築くため、
恭子の試みは次の段階に入ろうとしていた。
[ 2017/10/19 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)

part.25 【 女性化催眠 】

【注意】今回 BL要素 があります。



「さてと……」


恭子はベッドに寄りかかり眠っている誠を見つめていた。


(それにしても、本当に見れば見るほど女の子ね…)


今まで何度か女装をさせてきたが、
こうして化粧まで施したのは今回が初めてだった。

このままの姿で街に繰り出したとしても、
おそらく誠が男だと気付く者はいないだろう……

もし気づく要素があるとするならば、
それは歩き方、話し方、ちょっとした仕草や声質など、
誠が生まれてからこれまで培ってきた男の性質によるものだろう。


(こんなに可愛いんだから、
マコトちゃんにはそういった邪魔なものは全部捨ててもらわなくっちゃね。
男の心を全部洗い流して、女の子の心の色に染めてあげるわ……)


恭子は、眠っている誠の前に座るとゆっくりと暗示をかけ始めた。


「ここはあなたの夢の中……あなたは今、恭子の家にいます。
ここはとても心地が良くて安心できる場所です」

「あなたは心の中で思っていることを声に出してしまいますが、
全然気になりません。心の声を口に出すのはとても気持ちがいいこと。
声を出しているだけであなたは心がドキドキしてきます。
いいですね? では目を覚まして下さい……」


誠の瞼が動き、ゆっくりと目を開く。


「おはよう、マコトちゃん。気分はどう?」

「……おはよう、恭子さん。すごく気分が良くて、すっきりした感じかな」


これは今まで恭子が誠に催眠をかける際の一連の流れと同じであったが、
一つだけ違うところがあった。


それは『誠に声を出させること』


今までの催眠術では、
誠は頷いたり、首を横に振ることでしか意思を伝えることができなかったが、
直美への催眠術によって、心の声を口に出させる方法を学んだ恭子は、
誠にも同じ催眠をかけ、声を出させることができるようになっていた。


直美にかけたように、
恭子の声を自らの心の声と誤認させる催眠をかけることも考えたが、
男と女で考えることが大きく異なることも考慮して、今回は心の声をさらけ出させるだけにした。


「そう……すごく気分が良くて、すっきりしてるのね?
それはおそらく女装しているからじゃないかしら?」


恭子がそう言うのを聞き、自らの服装を確認する誠。


「あれ? いつの間にこんな姿になってるんだろう……
恭子さんの前なのに恥ずかしいな……」


催眠をかける前の出来事を思い出せないのか、恥ずかしそうに顔を俯かせている。


「恥ずかしかることはないわ……だってここはマコトちゃんの夢の中なんだもの。
夢の中だったらどんな格好をしてても平気でしょ?」


恭子の言葉に誠はハッとする。


「そうだったっけ。夢の中なら平気かな……」

「そうよね。夢の中だから誰にも気兼ねなく正直になっていいのよ?
マコトちゃんが心地よくて良い気分なのは女装しているからじゃない?」


改めて同じ質問を誠に投げかける恭子。


「うん……そうかもしれない……
女装してるとなんだか幸せな気持ちになってきちゃうんだ……」


以前、恭子が誠にかけた催眠が効いているようだ。
誠は幸せそうな笑みを浮かべている。


「今の姿、とっても良く似合ってるわよ」


いつもの天使スマイルで誠を褒める。


「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいよ」


同じように笑顔で答える誠。
いつもだったら否定するところだが、夢の中ということもあり、
正直に自分の気持ちを伝えることにしたようだ。


「本当によく似合ってるわ……
この姿を見ると逆にいつもの男の格好の方が違和感ある感じよね……」

「えっ…? そうかな?」

「そうよ。マコトちゃんに男の服装は似合わないわ。
なんだか男装している女の子みたいで少し気持ち悪いかも……」


恭子は、いかにも気持ち悪いものを思い出すかのような表情をしている。


「そこまで気持ち悪いかな……」

「ほら、こっちに来て自分の姿をもっと良く見てみてよ」


そう言うと恭子は、誠を立ちあがらせて姿見鏡の前に連れてきた。


「マコトちゃん、今の姿、とっても綺麗よ。マコトちゃんもそう思うでしょ?」

「……うん。すごく綺麗だと思う。
自分でもこんなに綺麗になると思わなかったからすごくびっくりしちゃったよ」

「そうよね……この姿と今までの自分の姿、見比べてみてどっちが良いと思う?」


誠はそう言われて少し戸惑った顔をしている。


「どっちかって言うと、今の姿の方が良いと思うけど……
でもそんなこと恭子さんに言うのは恥ずかしいな……」


心の声が漏れ出し、恭子は思わす吹いてしまった。


「ふふ……ここは夢の中よ、マコトちゃん。
そんなこと思わなくても良いの。私も今の方が良いと思うわ。

でもこの姿を見たら、今までの男の格好は変よね?
地味でマコトちゃんの良さを全て殺してしまっているわ」

「……そうかもしれない」

「そうよ。似合わない男装をしている女の子にしか見えないわ。
マコトちゃんはそっちの方が好みなの?」

「でも男なのにいつも女の子の格好するわけにもいかないし……」

「ううん……そうじゃなくて、マコトちゃんの好みの話をしてるの。
マコトちゃんは似合う女装と、似合わない男装どっちが好きなの?」

「……似合う方」


少し後ろめたそうな表情で答える誠。


「そう、マコトちゃんは女装をもっと好きになって良いのよ。
むしろ男装はダサいこと、似合わないと思っていいわ。

普段はそんなに女装する機会はないだろうから、
私の家に来た時くらいなら好きな服を貸してあげてもいいわよ」

「ありがとう、恭子さん。でも、そんな気軽に服借りても良いの?」

「もちろんよ。マコトちゃん本当に綺麗だから、喜んで服を貸すわ」


普通の女子だったら、自分の服を例え見知った男性であろうと着せるのは気が引けるものだが、
誠は本物の女性にしか見えないくらい女装が似合っていたため、
恭子は服を男性に貸す忌避感よりも、コーディネートを楽しむ気持ちの方が勝っていた。

いわば着せ替え人形を楽しむ女の子のような気持ちだ。


「ところでマコトちゃん、なんだか心臓の鼓動が聞こえるわよ……
もしかして女装してドキドキしちゃってるんじゃない…?」


最初にかけた催眠の効果を確かめる恭子。


「うん……なんでだろう……? 女装してるからなのかな……」


心の声を口に出すとドキドキするという催眠はたしかに効いているようだ。


「きっと自分の本当の姿に戻れて、身体と心が喜んでいるのね……
ほら、いつものようにオナニーを始めてみたらいいわ」

「うん……そうするよ……」


恭子はベッドの裏からコンドームを取りだすと誠に手渡した。



※※※



「今日は鏡を見ながらオナニーしましょうね。
せっかく綺麗にお化粧もしているんだから」

「うん……そうする……」


誠はスカートの両端を掴み、脱ごうとしていた。


「ちょっと、待って。せっかく女装しているのに脱いだらダメでしょ? 
中のパンツだけ脱いで、スカートは捲って、そのままの姿でした方がずっと気持ちいいわよ?」

恭子自身、自分の服を着せたまま誠に自慰させるのには少し抵抗があったが、
誠の男の心を洗い流すため、女の姿のまま誠に絶頂させ、女性化を進行させることにした。


「うん、わかったよ」


そう言いスカートを腰の高さまで捲りパンツを脱ぐと、
あいかわらずぷっくらとして可愛らしい男性器が姿を現した。


「……すごくよく似合うわね……」


捲ったスカートの下で控えめに佇む誠の白いペニス。
恭子は、それを見て思わず心の中に浮かんだ言葉を口に出した。


「えっ? 何が…?」


不思議そうに恭子の顔を見つめる誠。


「あ……えと……その……オチンチンよ……
マコトちゃんの今の姿に、そのオチンチンがぴったり合ってるって思ったの」


自らの性器を見つめる誠、恭子は説明を続けた。


「女の子の格好をすると、マコトちゃんの可愛らしいおちんちんも、まるで女の子のおちんちんって感じ。

女の子に本当におちんちんが生えていたら、
きっとマコトちゃんのおちんちんのように白くて可愛い姿をしてるに違いないわ」


それを聞き、誠はまた恥ずかしそうにしている。


「恥ずかしいけど…嬉しいよ。ありがとう、恭子さん」


お礼を言う誠。
誠の性器も恭子に可愛いと言われ、まるで喜んでいるかのようにピクピクしていた。



※※※



自慰の体勢を整え、誠は鏡で自分の姿を見ながら、男性器に手を添えて扱き始めた。


「ちょっと、違うわよ、マコトちゃん」


また恭子から声がかかる。


「えっ? まだ違うの?」


恭子の顔を見つめ、困惑した顔で見つめる。


「今のマコトちゃんは、女の子でしょ?
 だったら、おちんちんでオナニーするんじゃなくて、こっちでしなくちゃ!」


そう言って、誠の背後に周り、服の中に両手を入れる恭子。


「最初だけ、やり方教えてあげる。
どうやったら女の子が気持ち良くなれるのかしっかり学ぶのよ?」


恭子は、誠の服の中に入れた手を乳首のところまで持っていくと、
優しく摩り始めた。


「んっ……えっ……、これって……ぁっ…」


軽く声を上げる誠。
直美の乳首を責め慣れているだけあり、恭子の指の動きはとても繊細で、
気持ちの良いところを適度な強さで正確に責めていた。


「ほら……これが女の子の気持ち良さよ……
じわじわと触られているところから、
周囲に気持ち良さが広がっていくのがわかるでしょ?」

「はぁ……んっ……うん……そうだね……」


今まで感じたことのない快感に、背中をゾクゾクさせる誠。


「やり方教えてあげるから、自分の指でもやってみて」


そう言われ、誠は同じように乳首に自らの両手を添えていじり始めた。



※※※



「ぁっ……はぁ……ぁぁっ……気持ちいぃ……」


恭子の乳首への愛撫の教習はしばらく続いた。


「ふふふ……だんだんコツを掴んできたようね。
その触り方を忘れないようにね。マコトちゃん」

「ぁぅ……うん……わかった……
教えてくれてありがとう……恭子さん……んっ…はぁっ……」


コンドームの中なのでわからないことだが、
誠の性器の先端からは少しだけ液が漏れ出し始めていた。



「じゃあ、次の女の子の気持ち良さを教えてあげる」

「他にも……はぁ……はぁ……まだあるの……?」

「もちろんよ。でも、マコトちゃんにはない器官だから、
ちょっと別のもので代用するけどね」

「僕にない器官って何なの…?」

「もちろん、オマンコよ。マコトちゃんは男だから、味わえない気持ち良さだけど、似たような感覚を味わえる場所があるから安心してね♪」

「似たような感覚を味わえる場所があるの……?」

「これから教えてあげる。
でもちょっとここではできないから場所を移動しましょ」


そう言い、恭子はベッドの裏から何かを取りだすと、誠を引き連れ廊下へと出た。



※※※



「……この部屋は?」

「私のパパの部屋よ」

「勝手に使ってもいいの…?」

「大丈夫よ。パパは年に2回くらいしか帰ってこないし、
帰ってくるとしても必ず連絡をくれるから、十分掃除は間に合うし使ってもバレないわ」


恭子は中に入ると、誠を部屋の隅で待たせ、何やら準備を始めた。
花見の際に、公園でビニールシートを敷くように、マットを部屋の中央に敷いた。


「これ洗えるタイプのマットなのよ。
だから汚しても大丈夫。ほら、こっちにおいでマコトちゃん♪」


恭子はとても嬉しそうに誠を手招きした。
これからすることにウキウキしているよう
誠は恭子に言われるまま、マットの中心に座った。


「さすがに今回は服は脱いだ方が良いかもね。全部脱いでもらっていい?」

「うん、わかった」


誠は、着ている服を全て脱ぐと恭子に手渡した。


(……脱いでも違和感ないわね……これで髪がもっと長かったら、
本当におちんちんが生えてる胸のない女の子ってところね)


既にこの時点で、恭子は誠の裸に嫌悪感を全く持たないようになっていた。
化粧をしていることもあり、恭子の意識の中で、誠を男としてよりも女として見る感覚の方が強くなっていたのだ。


「じゃあ、今からこれをお尻の穴に塗ってね」


そう言い、恭子は先程ベッドの裏から取り出したローションを誠に見せた。


「これをお尻に…? もしかしてオマンコの代用って……」

「そう、お尻のことよ。
前にマコトちゃんみたいな可愛い男の子が、
これをお尻に塗ってアンアン言ってる動画を見たことあるわよね? 
これを使えばあの子達みたいにすっごく気持ち良くなれるわよ」


誠は以前恭子に見せられたニューハーフ同士のホモ動画を思い出した。
すると、誠の性器は硬くなっていき反り返る様になってしまった。


「あらあら、思い出しちゃったようね。
マコトちゃんのおちんちんも、嬉しくておっきしちゃってるわ」

「で、でもお尻を使うなんて……僕ホモじゃないし……
そんなことできないよ……」

「へぇ~。ホモじゃない人が男の子同士のエッチな姿を思い出して勃起したりするかしら? もっと素直になっても良いのに……まぁいいわ。
別にマコトちゃんは今からオナニーするだけなんだから気にしなくて良いの。
男の人とこれからエッチするわけじゃないんだから。ほら、手を出して」

「うん……そうだけど……」


誠が手を差し出すと、恭子はローションの液体をトロトロと手のひらに押し出した。


「じゃあ、指先も濡らして、お尻の穴を触ってみるといいわ」


恭子に言われた通り、恐る恐る誠は自分の菊穴を指先で触ってみた。


「あぁっ!」


少し高めの声を上げる誠。


「ふふっ……可愛い声出しちゃって、そんなにお尻の穴が気持ち良かったの?」

「うんっ……ひやっとして……なんだかお尻の穴がムズムズしちゃって声が出ちゃった……」

「別に良いのよ。それに今の声、すっごいマコトちゃんらしかったよ?
今の声を出した方が気分も出て気持ちいいだろうから、ずっとその声を出し続けてね」

「うん……わかった。……ひゃぁぁっ!」


再び穴をいじる誠、
優しく撫でているうちに誠の口からは少しずつ熱い吐息が出始めた。


「ぁっ……はぁ……はぁ……」

「気持ちよさそう……マコトちゃん。私もマコトちゃんが女の子の気持ち良さを 
もっと感じられるようにサポートしてあげるからね」


そう言うと恭子は、誠の乳首に両手を添えて優しく撫で始めた。


「ふぁっ! ぁぁあっ! 恭子さん……それ……ぁあ……」

「オマンコと乳首、両方の刺激で気持ちいいでしょ?」

「うん……気持ちいぃ……でも……オマンコって……?」

「今日から、マコトちゃんのお尻はオマンコなの、女の子の気持ち良さを知るんだから、マコトちゃんもオマンコって呼ばなきゃダメよ?」

「うん……オマンコ……気持ちいいよ……」



※※※



しばらくの間、誠の乳首とお尻への愛撫は続いた。
初め軽い吐息を出すだけだった誠も、徐々に深い息を吐くようになってきた。


「マコトちゃん、そろそろオマンコに指……挿れてみない?
挿れるともっと気持ちいいわよ?」

「えっ? ……挿れるの…? 大丈夫かな…?」

「自分でするなら平気よ。痛かったら自分で調整して止められるでしょ?」

「たしかに……そうだね……じゃ……じゃあ、やってみるよ」


誠は愛撫している手を止め、人差し指をゆっくりと肛肉の間に差しこんでいった。


「ぁぁあっ! んんんっ!」

「無理しないでね、入りにくかったら潤滑剤を指先にもう一度塗り込んで、
ゆっくり入れるのよ。
女の子だってオマンコに無理やり入れたら痛いんだから」


少し入れては抜いてローションを塗り、それを何度も繰り返すうち、
徐々に誠の肛肉はほぐれていき、自らの指の侵入を許していった。


「はぁ……はぁ……全部…入ったよ。恭子さん」

「よくできました♪ じゃあちょっとそのまま動かさないで、
目を閉じて可愛い男の子同士がエッチしていた姿を思い出しててね」


目を閉じ、以前の映像を思い出す誠。
その間にも恭子の乳首への愛撫は続く。

それから数分経過したところで、恭子が口を開いた。


「どう? 今、男の子達は何をしてるのかな?」

「……今、お尻におちんちんを挿れようとしているところ……」

「へぇ……今マコトちゃんのオマンコの中に入っているのは何かな?」

「……指…」

「ううん……違うわよ」

「えっ? だって今、指を…」


誠は、恭子に当たり前のことを否定されて、困惑している様子だ。


「今、マコトちゃんのオマンコの中に入っているのは、可愛い男の子のおちんちんなの」

「えっ?」

「ふふ……そう想像してみて?
おちんちんがお尻の中に入っていると想像して……」

「……うぅっ……ぁぁ……」


今まで頭の中でイメージしていた責められている方の男の子の姿が自分の姿に重なった。


「ほーら、ゆっくり指を動かして……目は閉じたままで……
可愛い男の子がマコトちゃんのオマンコにゆっくりおちんちんの出し入れを始めたわよ…?」


誠の呼吸がさらに激しくなる。
肛門に差しこんでいる指も恭子に操られるかのように動き始め、次第に誠の腰も揺れ動き始めた。


「もうマコトちゃんは、
男の子のおちんちんを自分のオマンコに出し入れされる妄想を止めることができない……
挿れられるとすごく気持ちいい……オマンコがキュンキュンして、おちんちんを求めちゃう……」

「ぁっ……ぁっ……こんなのって……こんなのって……」


触れてもいないのに誠の性器はみるみる硬さを増していった。


「今から、マコトちゃんは私の言葉を繰り返します……
繰り返すとどんどん心が女の子になっていって、すごく気持ちがいい……始めるわよ?」


恭子は、乳首への愛撫を続けながら、誠の耳元に顔を近づけ囁く。


『おまんこ気持ちいい』

「……おまんこ……気持ちいい……はぁ……はぁ……」


『おちんちん挿れられて気持ちいい』

「……おちんちん……いれられてぇ…んんっ……きもちいぃ……」


誠は、恭子の言葉を何度も繰り返した。

初めは男性に挿れられる暗示に抵抗を示していた誠だったが、恭子の暗示の効果により、徐々に快感に身を委ねるようになってきた。

そうこういくうちに誠の指の動きは激しさを増し、
恭子に撫でられている乳首と野放しになっている性器はこれまでにないほど硬く勃起していった。


『もっと奥までズンズン突いて』

「もっと……奥までズンズン、んんんんっっっ……つ……突いてぇ!」


『マコトを女の子にして』

「マ、マコトを……女の子にしてぇ……! ぁんっ!」


誠の声は裏返り、話し方も女の子らしいものへと変っていった。
そしてそれらの変化がより誠の心を女性化へと誘っていく。
勃起した誠のペニスからは、先走り液が止め処なく溢れだしていた。


(……そろそろイキそうな感じね……)


何度も見てきた誠の絶頂時の様子。
恭子は誠が射精するタイミングが感覚的に分かるようになっていた。


『ああ、イキそう。オマンコ気持ち良くって、
あたし、もうダメ、女の子になっちゃう』

「ぁぁあっ! イキ……イキそう……
オマンコ……気持ち……よくって、あたし……あたし、もうダメぇ! 
女の子になっちゃうぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!」


次の瞬間、誠は指を一気に奥に差しこみ、大きく痙攣した。
そして一切触れていない誠の小さなペニスからは、勢いよく熱いミルクが飛びだした。


「ぁぁぁぁぁああああ!!」


あまりの気持ち良さに誠はそのまま気絶してしまった。



※※※



「マコトちゃん、マコトちゃん!」


何度も呼びかける恭子、しかし誠から返事はない。
慌てて誠の心臓に耳をやる。先程の行為により興奮していたこともあり、誠の心臓は激しく動いていた。


(良かった……普通に動いているわ。
てっきり持病か何かがあって発症したのかと思っちゃった……)

「普通に息もあるようだし、ただ気絶しただけのようね……」


しばらく誠の姿を眺める恭子。


「……」


(えっ? 気絶ですって!!?)



ハッとする恭子。
以前、直美が気絶した時のことを思い出したようだ。

途端に恭子は悪魔のような笑みを浮かべる。


(ふふ……ふふふふ……誠くん……いえ、マコトちゃん……
あなたを可愛い可愛い女の子にしてあげるからね……
誰よりも弱弱しくて可憐な、思わず守ってあげたくなっちゃうような、か弱い女の子にしてあげる……)


気絶して横たわる誠に、ゆっくりとゆっくりと…
邪悪な思いを抱える悪魔が近づいていった……
[ 2017/10/22 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)