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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.12 【 決壊 】


「あ〜やっとテスト終わった! キョウちゃん、ドーナツ食べに行こ!」


「そうね、そうしようか」


チャイムも鳴り、ガヤガヤとする教室の中、直美は恭子に駆け寄って行った。
低迷していた直美の成績もどうにか持ち直し、一学期の中間テストが終わった。
恭子は直美を無事にクラス替えの危機から救った後も、定期的に恭子の家で勉強会を開いていた。

もちろん催眠を使った勉強だ。


以前同様、恭子は毎回の勉強終わりに二人で女性同士の動画を見ることを欠かさなかった。

直美の反応は様々だった。

顔を赤くすることもあれば、呼吸が荒くなることもあり、
最近では顔もすっかり上気して、まるで片方の女優に自分を投影しているかのように見えた。
動画が始まる前に恭子は直美にナプキンを付けさせるようにしているのだが、
催眠を解く際に外させるナプキンの濡れ具合は、初めの頃に比べて激しさを増していた。

初めは、少し染みが出来る程度だったのが、
徐々に大きな染みを作る様になり、ナプキンの面積を半分埋めるほど濡れるようになってしまった。

普段は表には出さないが、心の奥底では女性同士の身体の関係を受け入れ始めているのだろう。


恭子は思った。

これからもじっくりと直美の心に女同士の良さを染み込ませていこう……
直美が自らそれを求めるようになるまで何度でも何度でも……



※※※



「ん〜ドーナツ最高!」

「もー直美、口にドーナツについてるよ」

「え、どこどこ?」


ここ、と恭子が自分の口を指差して示すと直美は舌で唇を舐めた。
赤い舌がちら、と光って見える。
恭子は一瞬ドキッとしたが、すぐに目線の先をドーナツに変えた。
勉強中の直美の姿が頭に思い浮かぶのか、恭子も直美のちょっとした動作に反応するようになっていた。


(あの柔らかそうな唇と思いっきりキスをして、舌同士を絡ませ合いたい・・)


催眠中、いつも恭子が望んでいることだった。


(でも、もしキスをして覚醒させてしまったら・・)


その不安が恭子に、最後の一歩を思いとどまらせていた。



※※※



それから数日後、中間テストの採点が終わり用紙が返却された。

直美のテストの結果はまずまずといったところだった。
決して成績が良いわけではないが、
この調子で恭子に教えて貰えば受験は大丈夫だろう。
直美の成績が安定したところで、恭子の計画は次の段階に移っていた。


「直美、昨日美味しいケーキ買ったんだけどさ、久しぶりに桐越くんと二人でうちに来ない?」

「ええ! いいの? 行く行く!」


恭子と直美はいつもの通り二人で昼ごはんを食べながら話していた。


「ねえ何ケーキ?」

「それは秘密」

「え〜!」

「うちに来てのお楽しみね」


直美の頭の中はケーキでいっぱいのようだった。
もちろん恭子の目的はケーキを二人に振舞うことではない。
口実なんてなんでもいいのだが、甘いものに目がない直美にはこれが一番の口実だった。



※※※



「ん〜おいしい!」


直美は恭子の部屋でくつろぎながらチーズケーキを頬張った。


「ほんとにいいの?僕までもらっちゃって…」

「いいのよ、人数が多い方がおいしいでしょ?」


恭子は誠の方にもチーズケーキを差し出した。


「じゃあ、いただきます」


誠は遠慮がちにそう言うと、一口だけケーキを頬張り、目を丸くした。


「おいしいね、これ!」

「でしょ?これ結構有名なところのやつなのよね」


恭子は誠に微笑むと、自分もケーキに手をつける。
今日は早帰りの日だったが、
三人が食べ終わる頃には時刻は十六時をまわっていた。
恭子は今日の本題をさりげなく問いかけた。


「二人とも最近どう? なにかまた催眠で解決したいこととかある?」

「う〜ん、僕はやっぱり、頭をすっきりさせたいかな」

「あたしは…最近朝起きるのがつらいから、目覚めをよくする催眠とかできたりする?」

「わかった、全然オッケーよ」


恭子は二人をいつもの定位置に移動させ、目を閉じさせた。



※※※



「それでは二人とも、ゆっくり目を開けてください」

直美と誠を催眠状態にさせた恭子は、二人に最初の指示を出した。

「それじゃあ直美は、起き上がってベッドに座りましょうか」

直美がゆっくりと起き上がり、ベッドの上で膝を立てて座った。
恭子は誠の耳の傍まで口を近づけると、静かな声で暗示をかけ始めた。


「桐越くん。ここはあなたの夢の中の世界。
あなたは今、恭子の部屋で寛いでいます」


誠は全身の力を抜いて、リラックスし始めた。


「部屋の中には直美と恭子もいますが、二人とも裸で衣類を身に付けていません。でも慌てる事はありません。
ここはあなたの夢の中。それはあなたの願望が見せている幻に過ぎません」


声をかけられた誠が、振り返って恭子と直美を見た。
もちろん二人とも服を着ているが、誠の目には全裸の直美と恭子の姿が映っていた。


「あなたは私たちの裸から目がそらせなくなります」


恭子は誠に催眠をかけ続ける。
誠の顔は徐々に上気していき、そのうち口で荒い呼吸をし始めた。
初めて見る自分の彼女の裸と、気になっている女性の裸が目の前にあるのだ。
誠の股間は徐々に盛り上がり、すぐに興奮が見て取れる状態になった。

恭子は直美の背後に回ると、両腕を前に回し太ももを触った。
左手で太ももをさすりながら右手の指先で太ももの内側をなぞった。


「ん…」


直美の艶っぽい声が静かな部屋に響く。

直美と恭子からしてみればいつもの勉強時の光景だが、
誠から見ると裸の女性同士の愛撫のようにも見て取れる。
恭子は右手をそのままに、左手を直美の胸の上に置き、そっと撫でた。


「っはぁ…」


直美の呼吸も荒くなっていく。
誠は食い入るように二人のことを交互に見ては、胸や股間の辺りに目線を動かしている。
女性同士のセックスに興奮する暗示をかけられている誠にとって、
直美と恭子の裸の触れ合いはあまりにも刺激の強い光景であった。


「どう?興奮するわよね?」


誠は食い気味に頷くと、自分の右手を股間の上に持っていき、さすり始めた。


「いつもそんな風に服を着たまましているの?…違うわよね?」


恭子は嫌悪感を隠しながら、
いつも通り誠に服を脱いでオナニーをするように指示をした。

誠はそれを聞いて立ち上がると、
制服のズボンと下着を一気に引き下ろし、硬くなった性器を露わにさせた。


「オナニーする時はいつもこれを使っているのよね?
用意してあるから付けてした方がいいわ」


恭子はそう言うと、小袋を布団の下から取り出し、誠に渡した。コンドームだ。
普段の恭子の催眠によって慣れているのか、
誠はそれを受け取ると、小袋を開け、コンドームを自分の性器に装着した。
誠は興奮した様子で二人を見ながら自分の性器を扱きだした。


(やった、上手くいった! 誠が直美の前で自慰行為を始めたわ)


精子の匂いと、男性器への嫌悪感を我慢しながら、催眠中の誠へ行った自慰調教が功を成した瞬間だった。


(あとは直美に、この姿を見せつけて・・・)


はあはあと荒い呼吸をしながら自分の性器を扱く誠を尻目に、
恭子は直美の方に向き直り語りかけた。


「どう? あれがあなたの彼氏の本当の姿よ。
あんなに呼吸を荒くしてこっちを見ながらオナニーしてる…気持ち悪いわよね?」


直美は誠から目が離せないのか、誠の激しく動く右手を見ながら少しだけ頷いた。


「誠も気持ち悪い男たちと一緒。
あのグロテスクな色と形をしたものを直美の中に挿れたがってるわ。
以前話したことを思い出して、直美。

あれを無理やり突っ込まれたらどうなるの?
すごく不快で苦しくて失神するほど痛い思いをすることになるのよね?」


直美は以前、恭子の催眠によって植え付けられたトラウマを思い出した。
直美の顔色は途端に青白くなり、身体が震えだした。


なろう挿絵-黒百合


普段の生活では表に出る事はないが、恭子の度重なる催眠の効果によって、
直美は男性とのセックスをイメージする際に、
暴力で女性が抑えつけられ無理やり犯される姿を思い浮かべるようになっていたのだ。

誠はまばたきも忘れたかのように、
じっとこちらを見ながら性器を激しく扱いている。
そのうち呼吸が犬のように短く途切れるようになったかと思うと「うぅっ」と呻いて射精した。

その様子を見て、思わず直美は恭子にしがみついた。

誠の行動は、催眠時の不快な行動に当てはまり、
直美を覚醒させてしまいそうなものであったが、
直美の不快感は恭子から長い年月をかけて与えられた不快感であっため、
覚醒の原因とはならなかった。

恭子は直美の背中をさすり、ヨシヨシと落ち着かせると、
あらかじめ布団の下に用意しておいたピンセットを持って誠の元へ近寄った。

そして、なるべく顔を近づけないようにしながら、
誠の性器の上のゴムの部分を掴み、コンドームを外した。


「見て、直美。これは本当に臭くて、汚いものよ。
気持ち悪い男性の体からでてきた排泄物だからね。
男の人はこんなに汚らわしいものを女の人の口に突っ込んで飲ませようとしてくるのよ? ほら」


恭子は直美の鼻先に精子の溜まったコンドームを持っていくと、直美にそれを嗅がせた。
直美は顔を歪めながら一度だけ精子の匂いを嗅ぐと「うっ」と呻き自分の口元を押さえた。

もともと男性に嫌悪感と恐怖心を抱くように暗示をかけられた直美とって、
それは耐え切れないほどの気持ち悪さだったのだろう。
恭子は急いでピンセットとコンドームをごみ箱に捨てると、
直美をトイレまで連れて行った。

直美は何度か呻いたが、
胃液を出すほどには至らず、吐き気を必死に堪えているようだった。

恭子は直美の背中をさすりながら優しく声をかけ、


「大丈夫?気持ち悪かったよね。もう大丈夫だからね?」


優しく、それでいてしっかりと嫌悪感を直美に植え付けた。


「男は気持ち悪い。そんな男がするオナニーなんて耐えられないよね。
性器をあんなに硬くして、自分で扱くなんて最悪よ。
でも、もう大丈夫、私がいるからね?」

恭子はそう言いながら、
直美の口をハンカチで拭い、しばらく背中をさすっていた。

そして直美が落ち着いた様子を見せると、リビングに連れて行った。



※※※



リビングのソファーに直美を座らせて、優しい声色で語りかける。


「大丈夫、ここにもうあの男はいないから。
ほら、おいで。女の子同士で抱き合うと安心するでしょ?」


恭子がそう言うと、直美はすぐに抱きついてきた。
まだ先程の体験が収まらないのか微かに震えている。


「まだ怖いの?
………そうだ! 直美、私のこと、見ててね」


恭子はそう言うとブラウスに手をかけた。

いつもは知らない人の裸の画像で男女を比較していたが、
見知った人間の裸で直に比較したほうが、直美に強い印象を与えることができるだろう。
そう思い、恭子は直美の前で裸になることを決めた。

ブラウスのボタンを上から一つずつ外していく。

直美はそれをじっと見て顔を赤くさせ始めた。

開いたボタンが胸のあたりまで来たところで、
恭子は一度直美の方を見やり、微笑んだ。

そのまま全てのボタンを外し、
スカートのホックも外して立ち上がると、すとん、とスカートが落ちた。

直美の視線は恭子の全身に向けられている。


「…外してみる?」


恭子は直美にそう言うと、
直美の手を取り自分のブラジャーのホックの所へ誘導させる。
直美は少し目線を揺らして戸惑ったが、
すぐに意を決したように恭子のブラジャーのホックを片手で外した。

すっと音を立てて恭子のブラジャーがたわむ。

恭子は腕を前に寄せるとブラジャーをソファーの上に落とした。

直美の視線が恭子の胸に注がれる。

恭子は自分が少し興奮していることに気付きながらも、直美に微笑みかける。

直美は顔を赤くし、口から熱いため息を洩らした。

恭子はそれを聞くと、自分のショーツをゆっくりと下ろした。

少し糸が引いてしまったが、
気にせず、直美の前に膝を曲げて座り、長い髪を後ろへ流した。


「ふふ、興奮する?」


あまりに直美が自分の体を食い入るように見ているので、少し照れながらも訪ねた。

直美はこくり、としっかり頷いた。

そして恭子の方へゆっくりと手を伸ばしてきた。

恭子はその手を握ると、改めて暗示をかけた。


「いい? 女性の体は、見ても分かる通り白くて綺麗で、
いい匂いがするものなの。触ったらきっと安心感に包まれて、気持ちいいわよ」


そう言うと、恭子は掴んでいた直美の腕を自分の背中に回らせ、ゆっくりと抱き寄せた。

一瞬直美は驚きからか体を硬くしたが、
恭子が背中を撫でると徐々に力を抜いていった。


「体を私に預けてみて」


直美の体重がゆっくりと恭子にかかる。

恭子は腕の中の直美の頭を愛おしそうに撫でて言った。


「どう? 心地いいわよね?
さっきまでの恐怖が嘘のようにすうっと引いていくわ。
すっかり落ち着いて、私に頭を撫でられて心地いいわよね?」


恭子は直美の匂いにドキドキとしていた。

こんなに愛しい直美が、今自分に体を預けて心地良さそうにしている。
私の腕の中にいる。心臓の音が伝わってくる。

恭子が直美の髪の毛をくしゃっと揉むと、直美は顔を上げ恭子の目を見た。

恭子はハッとした。

なんて目をしてるんだろう。

頬は上気して薄いピンク色に染まり、子犬のような目は潤んでこちらを見ている。

口は何か物欲しそうに少し開いて、
そこから濡れた赤い舌がちらちらと見え隠れしていた。



(……!! )



恭子は、いつも以上に可憐な直美の姿に我慢できず、
まるで引き寄せられるかのように自分の唇を直美のそれと合わせた。

直美との初めてのキス

柔らかくて、いい匂いがする。
恭子は目を閉じて、直美の唇の感触を楽しんだ。
全身が幸せに包まれる。


(私、直美とキスしてる……
あぁ……すごい幸せ……この瞬間がいつまでもいつまでも続けばいいのに……)

(……)

(……え?直美とキス?)


ハッと恭子は我に帰る。
慌てて唇を離し、直美から顔を背けた。


(まずい……)


恭子は以前、催眠術を使って直美にキスさせようとし、
覚醒させてしまったことを思い出した。

その時は軽い冗談としてなんとか取り繕うことができたのだが、

今回は、キスをして、おまけに自分は衣類を何一つ身につけていない……
どう説明しても言い逃れはできない状況だった。

恭子の全身から冷や汗がにじみ出し始める。


(どうしよう……!?
直美が……直美が目を覚ましてしまう……
直美に嫌われしまう……
直美が離れて行ってしまう……
何もかも終わってしまう……
あぁ、私はどうしてこんなことを……)


恭子の心を絶望感が包む、涙が頬を伝っていくのが分かる。
誠の自慰行為を成功させ、直美に嫌悪感を抱かせる試みは成功した。

そこで気が緩んでしまったのだろうか?

恭子は普段は決してしないような失敗を犯してしまった。

今までずっと我慢してきた直美とのキス。
それがたった一度で終わってしまうなんて。

恭子は自分がしてしまったことを心から後悔した。
直美は今、どんな表情をして自分のことを見つめているのだろう……?


驚き?

軽蔑?

怒り?

またはその全てかもしれない……



※※※



恭子は置いてあった服に手をかけると、恐る恐る直美の表情を確認した。


「……」


恭子の意に反して、
直美の目は先ほど以上にとろんとして、こちらを見つめていた。
まるで今まで待ち望んでいたことをしてもらえたかのように、目をキラキラさせている。


(……えっ?)


恭子はしばらくの間、直美を見つめたまま呆然としていた。
今の状況を上手く飲み込めなかったからだ。


(直美が覚醒していない……どうして?)


催眠術は、無理な暗示をかけたり、
不快な行動をすると脳が覚醒し、催眠状態が解けてしまう性質がある。

以前は直美が同性の恭子とキスをすることなど、とても考えられない行為であった。


(そのはずなのに、直美は目を覚ましていない……)


しばらく考えた後、恭子はある事実に気付いた。
そして直美のことを抱きしめると、感情を抑えきれずに涙声で言った。


「うぅ……ぐすっ……
な、直美………やっと……やっと……私のことを受け入れてくれたんだね…」

「長かった……すごく……長かったよ……
わ、私……あなたに受け入れてもらいたくて……
ずっと……ずっと頑張ってきたんだよ?」

「すごく苦しくて切なくて……遠くからあなたを見てるしかなかった……
でも、やっと受け入れてもらえた。嬉しいよ……直美……」


恭子は目をグシャグシャにしつつも、直美を見つめた。
泣いている恭子を心配しているかのような表情、そこに先程のキスに嫌悪感を抱いている様子は微塵も感じられない。


(いけない……泣いている場合じゃないわ……
直美、今からあなたをこっちの世界へ招待してあげる。
もう帰りたくないって思えるくらい素敵な体験をさせてあげるわ)


涙を抜き、気を取り直すと、恭子は再び直美への暗示を再開する。


「直美……女の子同士のキス……気持ちよかったでしょ?」


直美はとろんとした目のままこくりと頷く。

あと一押しだ……
恭子は今日で決定的な結果を得るために、直美に後戻りできなくなるような経験をさせることにした。


「直美も分かる通り、女の子の唇は、こんなに柔らかくて、
唇同士触れ合ってると体が溶けちゃうみたいに気持ちが良いの……」


そこまで言うと、恭子は直美に再びキスをした。

体が溶けるように気持ちが良いと暗示をかけられ、直美はしなだれかかるかのように恭子に体重を預けた。
恭子は直美をしっかり支え、ゆっくり、でもしっかりと唇を唇に押し当てた。

そして唇を離すとさらに直美に語りかけた。


「直美、私はあなたのことが大好き。
好きな人とキスができて、今すごく幸せ……
直美も好きな人とキスをすると、全身が幸せでいっぱいになれるわ」


そう言うと恭子は直美とのキスを再開した。



※※※



しばらくの間、二人の唇の間からはキスのリップ音が鳴り続けた。
まるで恋人同士のように、二人は見つめ合い、お互いの唇の感触を味わい続けた。

直美と恭子がキスを開始してどれだけの時が流れただろうか?
いつしか直美の恭子を見る眼差しは、いつも誠を見つめる時と同じように、
愛する人を見つめる眼差しへと変わっていった。


(素敵……直美が私のことをこんな目で見つめてくれるなんて……
いつか催眠をかけなくても、今のように見つめてくれるようになるのかしら…)


そう思いながら恭子は唇を離し、時計を見た。

あまりに催眠の時間が長いと二人に不審に思われてしまう……

恭子は直美の頭を一度撫でると体を離し、
ソファーの上に置いてある自分の服を手早く身につけ、
服に乱れがないかリビングの鏡掛けでチェックして、直美に向き合った。

直美は先程のキスが忘れられないのか、
恭子のことを物欲しそうな目で見つめていた。

恭子は再び直美を抱きしめると、しっかりと直美の目を見据え暗示をかけた。


「あなたはもう女の子同士のキスの気持ちよさを忘れることができません。
男の人とのキスなんて気持ち悪くて想像することすら無理。
キスをするなら女の子同士よね?」


直美がコクリと頷くのを確認した恭子は、
軽く直美にキスをして、自分の部屋に連れて帰った。

そしてぐったりとベッドに背を預けている誠に自慰の後片付けをさせ、直美をベッドに寝かせた。

次に誠には頭がすっきりとなる催眠を、直美には朝の目覚めが良くなる暗示をかけ、催眠を解いた。


「ごめんね、なかなか直美が朝起きたくないって駄々こねて、時間かかっちゃった」


恭子は目を覚ました二人に言う。時刻は十八時を回っていた。


「え〜うそ! そんなことしないよ〜!」


直美は笑いながら否定する。
誰から見ても、いつもと変わりない平和な日常の情景であった。



※※※



直美と誠は恭子にお礼を言うと、いつものように二人並んで帰って行った。

二人の後ろ姿を見送る恭子、
しかし誠に対する嫉妬心は、もう浮かんではこなかった。
なぜなら、いつも当たり前のようにつながれている二人の手は、



『まるでその関係に終わりを告げるかように、つながれていなかったから』だ。
[ 2017/09/05 00:05 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
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