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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

魅惑の寝取らせ Part1

文章 小尾一


「はじめまして、リコです」

 風俗嬢のくせに名刺なんて渡すんだ。しかも玄関先で。

いや、きっと普通ではないのだろう、それこそ私の心境すら穏やかでも普通でもない状況なのだからそんな些細な常識の均衡を気にしている余裕なんてなかった。

 客に対して教えていいものなのかはわからないけれど、こっそり耳打ちされたリコさんの本名は「北条利巧」で源氏名はそこから来ているらしい。

利巧な人がデリヘルでは利己になるのか、なんて初対面に口をついては言えなかったけれどそう思われるのを知っていたうえで自虐的に名前を明かしていたのかもしれない。

 背が高い、長い髪も綺麗だ。葵はリコの姿を見てぼうっとしたままそんなことを考えてから玄関のドアを閉めると名刺を仕舞って彼女を奥へと案内する。

あまりにも事態が短兵急に進み過ぎて現実としてよく咀嚼し受け入れるための時間が足りていなかった。

ひっそりとした暑い夏の夜のことだった。

冷房の効いた涼しい2DKのマンションは所詮手狭なだけに彼女たちは寝室へとあっという間にたどり着く。

気持ち狭いだけ普段は居心地がいい場所なはずなのに今だけはもっと冗長に廊下が先へと伸びていてくれ、と稚く切に願わざるを得ない。

そこには一人の男が漫然とベッドのへりに腰を掛けていた。益々沈痛な顔になっていく葵は助けを請うように弱々しくその男、彼氏の島田晃に視線を向けようとして項垂れるしかなかった。

他でもなくこれは彼自身が望んだことだ。だから葵がいくら不安な顔をしたとしても斟酌されるようなことはない。

ひりひりと感じる切迫した雰囲気に身を縮めながら隅の椅子に腰かけている間、葵はリコと島田が目の前でやにわに交わしている会話から殆ど耳を塞いで暗澹たる気分をなんとか諫めようとしていた。

 どうしてこんなことになったのだろう。

深い後悔とともに葵はほんの数時間前からの記憶を遡って指の先が冷たくなるのを感じる。道理としてはわかっていても、いざ脈絡を辿るとなぜそうなったのかは判然としない。

塾講師をやっている島田と大学生の葵は付き合って一周年という節目を先刻来に迎えたばかりだ。

既に何度も性交渉に及んでいた二人はいつもとは趣向の違った情事について思案を巡らせるうちについ魔がさして思いついたのがコレだ。

いや、でも。と葵は頭をぐしゃぐしゃに掻きながら口を戦慄かせる。

あのとききっと私は酔っていたのだ。

チューハイを二缶空けてほろ酔いのいい気分だったし、全然彼の話なんて聞いてなどいなかった。だって、どうしたらそんなことを彼氏が思いつくだろうか。

私と他の見知らぬ女の子がまぐわっている姿を見て自慰をしたい、だなんて。

きっと私は上手く話しの全容を飲み込めずに普通に三人でヤるだけだとでも思っていたのだろう。それがまさか女性と私だけの同性愛の性交渉を見たいだなんて。

 ヘテロの葵や島田とは違って、風俗から派遣されてきたリコはレズビアンだ。いわゆるレズ風俗と呼ばれるところから来た彼女は元々純粋な女性同士の手慰みとして、男性の代わりに同性との前戯や性器の挿入が存在しない本番行為を行う。

勿論、島田という異性と付き合っている葵は同性とはコミュニケーション以上の接触を望んではいないし、そんな行為を考えたこともない。

葵は背が小さく大学生としては幼げな雰囲気の割には器用な部分があって同性の友達は多いほうだったけれど、同性からの劣情を感じたことなど二十一年間の人生の中では一度も存在しない。むしろそれが普通だ。

だからこそ今の彼女にとって不承の事態はただただ不気味で、中学の頃に処女を失っておきながら同性との行為だけはなにか不可侵な清純さを喪ってしまいそうで恐ろしかった。

 勿論、島田が嬉々としながらレズ風俗のデリヘルを呼んだときには葵はゴネて少し抵抗をしてみせた。

その頃にはやっと顔の赤みも落ち着いていつものような平静さを取り戻していたのだ。

そうなると当然同性との性交渉の様子をよもや彼氏に晒して視姦されるなんてことは受け入れられるはずもなく、それでも既に言質を取っていた島田は頑としてデリヘルの派遣をキャンセルしようとはしなかった。

酔っていたとはいえそれを安易に承諾してしまったのは葵自身だったのだ。

彼氏彼女の間柄であればそれくらいの融通を利かせてくれるだろうと葵は期待していたが、女性との性交渉を拒絶する葵に対して最終的に島田は「葵がデリヘルの相手をするか、それとも自分が相手をするのか」と強硬的な選択肢を迫って前者を選ばざるを得ない状況を強いて葵をうまく丸め込んでしまった。

今回島田があえてリコを指名した理由もレズ風俗嬢だが限りなくバイセクシャルに近い嗜好の持ち主で手淫程度であれば可能なのがたまたま彼女だったからだ。

どれだけ生理的に同性愛者を受け付けなかろうと葵にとって目の前で異性に彼氏を扱かせるのは矜持や対面からして決して許容できず、いわば自己犠牲の精神とを天秤にかけた末には自らの身体を差し出すしかなかった。

「それじゃあ、比奈木葵さん……葵ちゃんって呼んでいい? 彼には許可は貰ったけど、一応訊いておこうかなって。いいよね、葵ちゃん」

 早速リコは少し卑下た笑みを浮かべながら葵の手を取ってベッドへと引っ張っていった。

愉快そうに脇の椅子に座って興味深くこちらを観察している島田をじろりと葵は睨む。

普段は慈しみの感情があるのに、まるで見世物のようになっている今だけはその顔が憎かった。

「ああ……まあ、はい」

「なに? もしかして緊張してる? ガチガチだね」

 そりゃあするだろう。そう呟きこそはしなかったが馴れ馴れしく肩を抱かれると葵は明らかな不満を隠せない。

それでも反抗こそできず、未だに納得がいかない憮然とした態度のまま俯くしかなかった。

「葵ちゃん、あんまりこういうのは好きじゃないんでしょ。彼からちょっと聞いたよ。普通のノンケなんだってね。まあでも大丈夫、大丈夫。嫌がることはしないからさ」

「嫌がることはしないって……じゃあ今すぐやめてくださいよ……」

 それを聞いてつい葵は愚痴を零してしまった。

この行為事態が彼女にとっては苦痛だ。同性と、それも見られながらやるだなんて。

あまりにも素直になってしまったせいでセンシティヴな部分を侵してはいないだろうかと葵はリコへ恐る恐る視線を遣ると、そんな戯言を歯牙にもかけない彼女は無言で葵をベッドへと押し倒して島田に聴こえないように甘い声でそっと耳元で囁いた。

「あなたは私のことを嫌いにはなれないよ。この意味わかる? ……馬鹿なオスなんかどうでもよくなるくらい気持ちよくさせてあげるから」

 葵は恐怖で思わず目を瞑っていた。別に拳を振り上げられたり、体のどこかに強い痛みが走ったわけではない。

背筋がぞくぞくするような妖艶な声に殆ど反射的に身を守ろうとして全身を強張らせる。

同時に突然チュニックの中に手を滑り込ませて腹部をまさぐった優しい指の感触に、彼女は即座にびくんと弾かれるようにリコを押しのけて起き上がろうとした。

「いっ――」

 一瞬ではなにがおこったのかが理解できずにただ茫然とするしかなかった。

身体を起こそうとした瞬間に唇を塞がれてそのまま押さえつけられるように体重が掛かる。

次に感じたのは柔らかい感覚、腹部を這う細い指が徐々に胸のあたりまで伸びてきて、リコを罵ろうとする言葉を押し殺すように温かい舌がゆっくりと葵に挿入されていく。

 ぬるぬるして気持ちよくて、まるでそれが別の動物のもののようだった。

葵は動顛していた。男とはまるで違って柔らかく、そして温くて繊細なざらざらとした舌の味が愛撫するように執拗に神経を擦り上げて彼女の意識を犯していく。

島田よりも優しく、それでいて有無を言わさずに強引に差し込まれる感触に慄きながらも葵は無意識に舌を絡めてしまいそうになっていた。

リコのほうが島田より断然キスが上手い。遊びを排した同性とのキスの経験が皆無である葵にとって猫の舌のように少しだけざらざらとした彼女のものは複雑に唾液を介して脳の奥へと浸透していく。

 酸欠気味なせいで再び酔いが回ってしまったような、少しふわふわとした宙に浮くような感覚だった。

組み伏せられながらのキスに頭が痺れていってこちらを探るようにじれったく舌先で触れ合う味が魔性を帯びて葵の心臓を昂らせる。

リコは異性愛者の扱いをよく心得ていた。彼女は猫のように元来目移りが激しい性質だったから見定めた好みの女性が必ずしも自分と同じレズビアンである機会は稀有で、だからこそそんな普通の女性を手際よく篭絡する方法も十分に心得ていた。

 息が苦しい。葵はぐっと固く目を瞑って抑え込まれた両手首に掛かったリコの体重に屈しながらも薄目を開けた。

その瞬間に覆いかぶさっているリコとほんの少しだけ視線が合ってしまったような気がして急いで彼女は目を逸らす。

まるで心の奥底を見透かされているようでその瞳を直視することなどできない。

恍惚としたほのかに朱の差す密なキスは僅かに葵を喘がせるだけで実際は静かで淡々としていた。

ときより口が離れてはすぐに塞がれて、まるで機微を慎重に読まれているように先っぽだけで愛撫を交わす。

葵にとってはそれでは物足りない。

相手はレズビアンの女性だとわかっていてもくすぐったいような綺麗な交わり方をされると葵は徐々に本能的のほうが疼いてくる。

それに目を瞑っていさえいれば相手が誰であろうとそれはただただ理想的なキスだった。女性らしいリコの身体は至る部分が柔和で固くも筋張ってもおらず、キスだってこちらが嫌がっていると知っていながら決して押しつけがましくも独りよがりでもない。

リコは葵が求めるのと同じくらいの強さで舌を絡め返すだけだ。そのせいで葵は徐々に嫌悪を忘れて次第に自ら唾液を求めるようにしてゆっくりと淫靡に粘膜を擦りつけ合うようになっていく。

リコとの粘膜の接触は強かでいながら情緒的に懇ろで、イニシアティヴを征服され性欲に任せて交わされる男性のものとは根本的に雰囲気が違う。

下品さを欠くキスのために誘われるようにして次第に葵は自ら積極的にリコに甘えだしていた。もはや島田のことや、見られていることすらもすっかりと失念してしまっている。

 かつてないくらい心酔しリラックスしてもっと奥へ奥へと貪るようなディープキスは下半身をまさぐる力によって一気に覚醒した。

スキニ―のボタンを片手で易々と弾くとリコは下腹部より指を滑り込ませてショーツの上から割れ目を撫でるようにしてなぞる。

葵の身体が大げさに反応をして一層暴れ出そうとするが、叫び声を上げようとする口を今度こそキスで塞ぎこまれているせいでくぐもった鳴き声だけが響く。

「ん……ぐ、ぅ……待っ、リコさ……ぁ」

 やや前のめりになって彼女たちを観察していた島田にとって葵のそれはほとんど命乞いのように見えていた。

リコは楚々とした所作から一変し、やや興奮気味に喉の奥に届くほど無理矢理舌を挿入し彼女を黙らせつつ陰唇に這わせた左手をゆっくりと動かす。

既に葵は下着越しですら明確にわかるくらいに濡れていたのだ。同性とのキスだけで感じてしてしまった自分を認めたくない彼女はなんとか必死にもがいて抗おうとするがマウントポジションや体格差からしてそれが無駄であることは明らかだった。

湿った音のするショーツをずらしながら指を挿入すると葵の秘部は容易に親指と人差し指を飲み込む。既に熱されたように熱い膣がうねりながら硬直する。

「ぅ、く……ぁ……ッ……」

「あれ? もしかして葵ちゃん今のでイっちゃったの?」

 リコが膣の中を書き出すように本格的に指をストロークさせようとした途端に葵は身体を足の先までピンと伸ばして声にならない声を上げていた。

まだ本当に挿入をしただけだ。リコは島田から既に何度もセックスをしていることを聞いていたために、まだ初心な反応が出来る葵に気をよくしてまだオーガズムに歯を食いしばっているその耳朶を甘噛みしながらざらざらとした声で責めた。

「……そういう反応するの可愛くてズルいなぁ。ねえ、彼よりも私とするほうがずっと気持ちよかったでしょ? 言ってみなよ、正直に」

「そん……なっ、ぁ……ッ、こと……」

「そんなことあるでしょ。じゃあこれなに?」

 未だに押さえつけられて身じろぎすらできない葵の目の前にリコは濃い愛液にまみれた指を見せつける。

指間に糸引く手を突きつけられた瞬間ににわかに彼女の顔はわかりやすく歪んで、黙ったままぶんぶんとかぶりを振っていた。

葵は明瞭なその事実が理解できずただ怯えるしかなかった。

別にこの一瞬で同性愛者になったわけでも、彼女に心を許したわけでもない。ただ彼女が風俗嬢らしい手管に長けているだけだ。

だから別にこれは私が変なわけじゃない。

自分を納得させようと意固地になってもじんじんと疼いている下半身の熱が引かずに葵は戸惑っていた。

こんなに呆気なくイってしまったことはかつてならあり得なかった。

指が細いから? それとも、微妙に長いから? ぼうっとしてそのぬらぬらと光る指を眺めていると葵がほとんど虚脱していることを察して、リコは悪戯っぽく妖艶に笑いながら首筋に噛みついて少しだけ歯を立てた。

「嘘ついても無駄だってば。オンナのほうがオンナの身体に詳しいってわからないかなぁ……」

 自衛の方法ならまだいくらか存在した。

オーガズムにふやけている姿を見てリコは完全に油断をしていたから、渾身の力を込めて押し返したりあるいは身を縮めればこれ以上手痛く尊厳を犯されずとも済んだだろう。

隙を見て逃げ出すことだってできたかもしれない。

危機感でそう気が付くにはあまりに遅く、また容易に遠ざけられはしない快感を既に葵は身に覚えてしまっていた。

スキニーが下腿までずり下がった哀れな格好のまま脱力気味に開脚されていた股の割れ目は、葵の威勢からは信じられないほど簡単にリコの指を受け入れてすっかり飲み込んでしまう。

十分に潤滑液で満たされていた膣に中指と薬指がごく浅く挿入された瞬間に葵は閉口し声を抑えようとするが、次の刹那にはひだがぬるりと一気に収縮すると同時に口をめいいっぱい開きながら甘えたような嬌声をひり出していた。

「っ待――ィ、ぅぁ……ッ、ん」

 目の前が真っ白になるような感覚で葵は弓なりに背筋を伸ばす。

初対面でいて初めて身体を探っているというのに、まるで彼女の性感帯が透けているようにリコはにやにやと口角を上げてゆっくりと膣の浅い部分をストロークする。

「……ぃあ、ッ……ん、ぐ……」

「あ、ココがいいの? ああ、そっか。葵ちゃんの感じやすい部分って意外と浅めだからこれだと男といくらヤってもいいところに当たらなくて全然気持ちよくないでしょ?」

「ぁ、ぐ……ぅ、も動か……ッ、ない、で……」

「もうイキそう? そろそろ素直になってくれた?」

「んッ、わかったから……ぁ、イク、かりゃあ、も少し、ゆっぐ、り……ッ、ぁ」

 もはや葵はリコの思うがままだ。

身を強張らせただけでイってしまいそうになるせいで押さえつけられている腕を解かれても一切逃げる素振りすら取れない。

リコは屈服した彼女を見下しながら、それでも左指を膣に挿入したまま今度は反対の手でブラの上から優しく胸を揉みしだく。

それほど大きくない手頃な胸は既に布越しでも乳首が探れるほどに勃起していてじっくりと先っぽを擦るように愛撫すると面白いように葵は髪を震わせながら悶えていた。

 もうちょっとだけ手心を加えてやろうかともリコは思案していた。

あまりにも思い通りに感じてくれる都合のいい身体とアクメを堪えようとする姿にリコは気移りしかけそうになる。

しかし口では快楽に抗いながらも葵のひだは絶えず蠕動をして相変わらず愛液を垂らしながら指を奥へと飲み込もうとしていた。

とことんまでに身体は素直だ。ブラの隙間から直接乳首を摘まんでコリコリと弄び、力が抜けたひと時に膣に第二間接まで挿入した指を恥骨ごとに押し付けるようにしてGスポットを強烈に何度も擦り上げた。

「あッ……――く、ひぁ、リコさ、んぁ、っ――ぃく、イって、ぅッ……は、あ、んぃ無理ぁ、ぐ……晃助け、ぁ、ぃぐ、いぐいぐ、ぅッ――」

 葵はまるで強い電流でも浴びてしまっているかのようにビクビクと身体を痙攣させてリコの腕にしがみつく。

全身から力が抜けていってただ気持ちいいこと以外に葵は他になにも考える余地がなかった。

もはやそれが女性だとか、同性だとか、レズだとかの同義語で括って蔑視するだけの理性すらも残ってなどいない。

彼女の手付きの一々は島田のあらゆる部分よりもずっと剛柔でいて指が動かされる度に脳の皴が解けるほどの快楽が身体を支配して記憶を喪失させるくらい神経を鋭敏にさせていく。

「だめェ、壊りゃ、ッ、ぁあ、ひっ、んぁ……あっ、あ、ぁ、ッぃ――」

 絶頂に頭の中が燃えて目の前がチカチカと光る。

葵は何度も連続でアクメしながら要領を得ない言葉ばかりを嬌声と一緒に口走って、掻き出される愛液でぼたぼたとベッドに染みを作っていた。

目をむいて身体を反らしながら一向に止む気配がないリコの手マンの一挙手ごとに小さな四肢を大仰に強張らせて白い内股にいくつもの体液の筋を流す。

その姿を見て島田もいつの間にかペニスを取り出して勝手に扱き出していた。

亀頭には既に先走りの汁が滲んでいてめいいっぱい怒張したソレすらもここまで葵を悦ばせたことはない。葵にとってそれは不可解だった。

どうしてそんなことがあろうか、生き物として膣にぴったりと合致するように造詣された異性の性器よりも同性の指なんかで何度もイってしまうなんて。

「いっぱいイっちゃっていいよ。何回イったか数えててあげるから」

 一方で愉快なのはリコだ。元々サディズムの気があってノンケを責めて落とすことに無上の悦びを覚える彼女にとって葵のような素直で弱い女性は庇護欲を適度に刺激してもっと苛烈に指を突き立ててひだを擦り上げてしまいたくなる。

乳輪をこねるようにして葵の乳首を転がしながらあられもなく喘ぐ苦悶の表情に愉悦し額に口づけをすると、今度は葵のほうからキスをねだるようにしてやや不格好になりながら舌をひりだして必死に哀願をする。

リコは少しだけ驚きながら依然として高い声で鳴く彼女が愛おしくなって静かに舌を絡めながら愛撫を続けた。

おそらく葵は口を塞いで気を逸らすか方法を考えていただけなのだろう。

その手段がたまたまキスだっただけだ。

本分ではリコと舌を絡めることなど露ほども望んでなどいない。

そうはわかっていてもリコはなんとなく妙な昂りを覚え、涙を浮かべて必死に悶えている彼女を見て手を触れてすらいない自らの身体が疼くのを感じた。

とにかく葵の無意識な所作はどこか小動物的で思わず虐めたくなる。

いかにも倫理と道徳の整っていそうな小さな葵はそれほど大きくない胸や露出の少ない恰好、男受けをそこまで考慮していなさそうなセミショートの黒い髪など別段淫らというわけではないのにひたすらに蠱惑だった。

当初リコにとって付き合っている二人の間に割って入りただ女性を責めるという今回のプレイの内容は不可解で奇異に思えたが、今であればなんとなく島田の思惑がわかる。

この様子を外から見ていたらリコも自慰の手を止められなかっただろう。

熱ぼったく濃厚に舌を絡めて、少しだけ優しく、そしてもっとイってしまうように艶美にあらゆる性感帯をくまなく刺激してやりながら小刻みにひだを擦り上げて一気にアクメを誘った。

「――ぁ……ッ、ふぁ……――ッぃ、ン、ぉ……あ」

 葵がイった瞬間はわかりやすい。さっきから連続で絶頂していると尚更だ。

寸前に指をきつく締め付けるほど膣がぎゅうっと縮こまったかと思えば急に筋肉を弛緩して背筋を張る。今の彼女はその絶頂の繰り返しだった。

もはや諦観からなのか抵抗らしい抵抗も見せず、逆に受け入れるようにして葵は快楽に溺れ続けていた。

もう一分以上それを持続させているとそろそろ葵の反応が鈍くなっていく。

慣れてきたのではなく、相変わらず絶えず連続アクメをしながら意識のほうが朦朧として飛びかけているのだ。

手マンをしているだけでリコ自身も軽くイきかけながら、丁度そこに水を差したのは他でもない島田だった。

「葵……っ、そろそろ俺もイく……」

 早漏か、こいつ。せっかく二人っきりのいいところだったのに。

リコは悪態をつきかけながら不愉快な気分を葵で慰め彼女の身体を愛でた。

本格的にアクメで意識が飛ぶくらい強烈に調教してあげればいくらノンケであろうと落ちないはずがない。

もうリコにとっては反応のわかりやすい葵はお気に入りだった。

絶対に落とさずにはいられないが島田に風俗嬢として派遣されている以上リコもあまり大それたこともできない。

島田の手がペニスをひと際無様に激しく扱くのを横目に、リコはちゅぐちゅとわざと愛液の混じった音を激しく立てながら蕩け切った葵の表情を晒してやるようにして女性同士の唾液に塗れた顔を島田のほうへと仕向けた。

「ひ、ッ……ん、ぅっ、激し、っぁ、ッ――く、ふ……ぅ、ぅぁ、あ、ッ」

 葵の彼氏だろうと男になんか義理立てするつもりはないが、風俗嬢のリコにとって店を介さない個人的な客との接触はご法度だ。

つまり島田がこのプレイに味を占めて再度自分を指名しない限り葵を手籠めにする機会は二度と現れない。

だからどうでもいい島田に気に入られなければならなかった。

なんとしてもリピートしてもらえるよう男の喜びそうな葵の醜態を出来る限りあられもなく披露しながら島田には出来ないようなくぐもった可愛い声で葵を喘がせると目の前に白い筋が飛ぶ。精液だ。

何度か律動して大量にひり出したその一部が随分と離れたベッドのほうまで飛び散っている。

最後は乳首の先を抓るように強く摘まみながら犯すようにポルチオごと大きく力任せなストロークを指で繰り返すと葵は盛大にイキ果てて潮を吹いてぐったりとしていた。

 あとちょっとなのに。せめてもう一押し。

少しでも島田に堪え性があれば葵を中毒的なアクメに導いて従順にすることができたのに。

リコは平静を装いながら奥歯をぎりぎりと噛んで葵ではなく彼のほうを見つめていた。

島田が気が済んでしまえばいくら物足りなくても仕事はそれまでだった。

葵の頭を撫でながら軽くキスをしてリコは部屋から去っていく。

それは時間にしてたった30分にも満たない出来事だった。

それでも葵にとっては半日は徹底的に愛撫され続けたような強烈な快感が頭に染みついていて、彼女が居なくなってからもつい女性の指や舌の感触を思い出しては茫然と呆け、島田に抱かれながら眠っていてもどこか落ち着くことができなかった。

魅惑の寝取らせ Part2

「ん……っ、ぁ……は、っ」

 肉と肉がぶつかる汗ばんだ音が一定のリズムで小刻みに響く。葵は対面座位の格好で、島田に抱き着くようにもたれ掛かりながら腰を動かしていた。

 正しいセックスだ。生物的にも倫理的にも、男女の性交渉として暗黙の了解に何一つ掛け違っている部分すらない。

十分に濡れた膣に突き立てられた太くて黒々したペニスが打ち付けられてピンク色をした綺麗なひだを押し広げていく。

葵にとっては正常位よりもこの体位のほうが好みだった。

自分で動いたほうが気持ちいい部分を擦って苦手な部分を避けることが出来るし、セックスに耽って一心にがに股になりながら腰を振っている卑猥な自分の姿を想像するだけで濡れてくる。

普段の彼女はもっと冷静で人なつこい人物だった。ともすればかまととぶったり、清純さを印象付ける静かな笑い方は性的な興味の一切が欠けた清楚な人格を思わせながらその実はひと際性欲が強くてその点は島田との相性はよかった。

同じ大学生を相手にするとその本性が暴かれかねないが塾講師という堅い職場に勤める島田なら自らのこのセックスへの執着や淫乱の度合いを曝露されることもない。

そして彼自身もほぼ毎晩身体を求めるくらいに性欲が強かった。

互いにただオナニーして発散しようとは考えもせずどちらかが求めれば自然と身体を重ねて朝まで腰を打ち付け合って夜を明かすこともしばしばあった。

「あ、葵……もうそろそろ……」

「へ……ぁ、え? もうちょ、っと……ぁっ、我慢し、ッお願い……」

 座位は葵にとっては一番膣にだけ集中できる姿勢だ。

騎乗位もそそるがだらしない顔やコンプレックスの胸を見られることを気にして好きなだけ腰を振ることを控えてしまう。

首に腕を回して身体を密着していると島田の体温が感じられてより濃厚なセックスが出来ている気分になった。

反り返ったペニスが膣を押し広げ子宮の入り口をノックするごとに脳天が揺すられて軽く絶頂してしまう。

この何とも言えない甘イキの状態で何度も突かれるのが彼女の好みだった。

オーガズムへの気持ちが高まって敏感になってくるとひだのひとつひとつが亀頭のカリで擦られる感触や息遣い、律動するペニスの感覚までがよくわかる。

島田がイキたがって亀頭を膨らませていることを察知しながらも葵は自分のためだけにあえてゆっくりとグラインドをして子宮口にペニスを擦りつけた。

 まだだ、もうちょっとだけ我慢してもらわないと気持ちよくイけない。

出来るだけ静かに堪えて最後盛大に腰を振ってアクメしなければ葵は鎮まらなかった。

そのためには島田は少しだけ早漏気味でいつもどちらかが我慢を強いらなければならない。

それはそれで肉欲があって、いかにも若いリビドーだけのセックスで良かったのだけれど汗混じりの愛液の糸を引き打ち付ける腰の動きは悩ましく、普段の穏やかな彼女を知っているからこそ豹変してセックス狂いになっている葵を見て島田もそう長く堪えられない。

それは陰茎を介す狭くて熱くて湿った極上の肉感以上に精神的なギャップの問題だった。

無垢な顔の彼女が自らの意志で腰を振っているのを見るだけで島田は妙な背徳感を覚える。

初対面の頃はまさか彼女がこんな性癖を隠しているとは毛ほども思わなんだのにやはり人と人とは同じ極性で魅かれ合うのかもしれない。

「……女の子とシて葵はどうだった? 気持ちよかった?」

 我慢を強いられ、ペースを同調させる島田は手持無沙汰のためにやや意地悪くぽつりと耳元でそう呟いた。セックスで動きながら上気している葵はそれを聞いてもっと顔を真っ赤にさせて歯切れ悪く息を吐く。

その間膣はぎゅうぎゅうと膣を締め上げて切ないほどにペニスを絞り上げていた。葵はあの時のことを思い出していたのだ。

「そ、な……気持ちよく、なんて……」

「でもめっちゃ締め付けてくるけど。もしかしてハマったとか?」

 首に回された葵の腕も僅かにきつく締まる。それでも腰を動かすのはやめず、葵はかぶりを振って必死に言葉を打ち消す。

それは否定というよりも言葉を真に受けて聞いてしまわないように振り払おうとしているだけの随分子供っぽい所作だった。

いつもは見せないようなその仕草に島田は口角を上げながらあえて彼女の細いくびれをがっしり掴むと強引に叩きつけるようにしてその腰を打ち付けた。

「――っく、は……ッ、んぃ……」

 小柄な彼女の身体は男性が扱うには軽かった。

そうやって性玩具のように手荒に扱うことは困難ではない。

そのために常に島田とのセックスはオーガズムのタイミングまでをほぼ征服されているも同然だった。

 ペースを乱されながら強い衝撃が内蔵の底のほうから押し寄せて来て葵を襲う。

しばらく彼女は意識が飛んだように茫然としていた。

葵の膣には島田のモノは少し大きすぎたのだ。

勿論それは性交渉を困難にするほどの程度ではないが、こうやって奥にねじ込まれると自然と苦痛に混じった強い快楽が脳を支配する。痛い。

けれどそれは嫌になる痛みではなかった。

恍惚として頭をぼんやりとさせる葵に立て続けに島田はペニスを深々突き立ててゆっくりと、断続的に強く亀頭を押し付けて焦らすように腰を小さく動かしてピストンした。

「で、どうだったの? 女の子とするのは気持ちよかった?」

 わざとだ。島田は随分優しい声色でそっと囁く。

意地の悪い質問の時に限って彼は反対に温和になる癖があった。

あえてその感想を自白させることで男だろうと女だろうと等しく敏感になってしまう淫らな身体のことを責めるつもりなのだろう。そうとわかっていながらも葵は膣が疼くのが止まなかった。

 もう少しでイきそうだ。もどかしく自分で動こうにも押さえつけられている葵の口を割ろうと催促するように腰が打ち付けられる。

「ぅ、く……別に、よくなん……か、ッひ――っ、はぁ……待っ、それ、ぇッ」

「どうだったの? 正直に」

 ばちんと音を立ててペニスが膣の奥を圧迫していた。

そのまま僅かに許するように亀頭を押し付けて子宮を潰すように擦りつけられる。

あと少しだけストロークしてくれれば簡単にアクメするのに寸止めの限界を知っている島田はなかなか動いてはくれなかった。あれだけ明白に目の前でよがってオーガズムしていたのだから葵が答えられる言葉など一つしかない。全部を白状するまで葵はイかせて貰えなかった。

「葵?」

「ぅ……ぁ、ああっ」

 何度か僅かに腰を前後してひだを擦る。じっくりと嬲るように陰茎を動かすと葵の膣の形や熱さ、ひだの突起までもがよくわかる。興奮して粘度の高くなった愛液がペニスを絡め取るようにしてまとわりついていた。

「少しだけ……気持ちよかっ、ぁ……ッん、ぃぇ……」

「少しだけじゃないだろ。何回イったんだよ」

「ッ……だってぇ、晃……も限界、だから、ぁ……」

「ちゃんと言えたらイってもいいって。あのとき葵は何回イったの? どこをどうされるのがよかった?」

 上に跨っている葵をペニスで押し上げるようにゆっくりとしたピストンが始まる。

徐々に葵の視線は据わらなくなって理性が溶けていっているようだった。

島田の肩に額を押し付けるようにしながら同調するように彼女も腰を打ち付けた。

「もうわかんない……ッ何回も、イって、ぇ、気持ちよく……ん、ン、っ、んぐ……」

 そのとき島田はストロークのペースを早めて葵の堅い口を解かせようとする。

その思惑を知っていながらも葵は構わずに喘ぎ声を上げて、リコにされたときのことを思い出されながら片手で自らの乳首を弄り始める。

「あ、っぁ、それ、そこっ……ッ、浅いとこいっぱい、ぐりぐりって……っされ、てぇ、ッん、ぐ……乳首もいじわる、されて……ッ」

 島田はそれを聞いて腰を抑えていた腕を解いた。

解放された途端に激しく腰をグラインドしながらピストンを開始する葵は飢えているように息をせき切らして膣の底を打ち付ける。

「またあの風俗嬢のこと、リコちゃんのこと呼んでもいいよな?」

「ぁひ、あ……ッん、く……いい、んぁ、言われた通りにする、かりゃ、ぁ……イかせて、ぇッ」

 何度も頷きながら葵は段々と腰の動きが荒々しく奥を叩きつけるように激しくなっていく。

島田の耳に掛かる乱れた吐息は理性的ではない喘ぎ声が混じっていて盛った動物もののようだった。

既に限界だった島田は葵の動きに同調しながら自らのペニスを突き上げて激しくピストンをする。

「あっ、ッイク、ぁ気持ちい、ぅッ……奥、当たって、いいこれ、も、イ……ク、ぁっ、イクイク、ィぐ……」

「はっ……は、ほらイけよ。アクメ顔晒して腰振りながらちゃんとイけ」

 首に回された葵の腕の力が強くなる。

言葉で責められると本当に彼女はアクメしてしまう。

肉棒を奥に突き立て、ひだで竿をめいめい擦り上げながらビリビリと脳を痺れさせるほどのオーガズムに愛液を滲ませて果てていた。

同時に絶頂した島田のゴム越しの射精の感覚で葵の身体もぴくぴくと動く。

これが生だったらどれほど気持ちよかっただろう、と考えながら葵はゆっくりと腰を弾いて膣からヌルりとしたペニスを引き抜いた。

栓が外れた膣からはトロりとした体液が零れて脚を伝う。ベッドの上に横たわると仰向けになって葵は額の汗を拭った。

 足りない。確かに気持ちよかったのにどこか満たされていない感じがする。

オーガズムしたのだから気持ちよくないはずがない。

女としての悦びを存分に実感させる野心のあるセックスだったし、島田も最後までちゃんと持ってイクまで付き合ってくれた。

でもそれは所詮ただのセックスだ。

島田のペニスと同じ形のディルドがあれば一人でも同じことが出来てしまえる。

有機的に魅力的な部分を探しては他でいくらでも代替できてしまうことをより痛感する。

わかっている、これは惰性だった。

島田とのセックスは葵にとってただ肉棒を使ったオナニーのようなもので、根本的なセックスとしての感動を著しく欠いている。

島田との行為そのものが無二である感覚が葵はある日から完全になくなってしまっていた。別に下手だとか気障だとか、葵の気に障るいくつかの問題があるわけでもないのにリコとシた日以来身体の感じ方に変調を来していることは自覚せざるを得ないほど彼女を苛む。

 二人はセックスのあとで風呂にも入らずにそのまま目を瞑って寝た。

不潔だけれどどうせ朝寝癖を直したりしなければならないのであれば寝てしまったほうが得だ。

毎日のように何度もセックスを繰り返すごとにそういった気遣いは薄れていくものだ。

既に寝息を立てながら寝入っている島田に身を寄せてくっつきながら目を瞑る。

葵は島田のことが好きだった。

無論愛だ、そこには異性はもちろん同性やリコだって入り込む余地はない。

「……っ、ぁ……ん……く」

 それでも満たされない身体を持て余しつつ、いつしか彼女は寂しく手を秘所に這わせてオナニーを始めていた。

隣に彼氏が寝ているのに声を殺しながら自分で慰めているのは彼では足りないことを知っているからだ。

もっと責めてほしいところ、肉棒では当たらない場所、彼女であれば十二分に愛撫してくれた部分を思い出しながら葵は静かな声で自慰をして何度もイっていた。

魅惑の寝取らせ Part3

 次の機会は以外に早急に訪れた。

僅か二週間後の出来事だった。

リコの思惑通りにたった二週間のうちに再び島田によってお呼びが掛かったが、そのほんの少しな間隙さえもリコにとっては生殺しの日々だった。

葵と島田はその間に何度もセックスをしていたが、勿論その間にレズ風俗嬢の彼女は幾人もの同性を相手にして、あるいは葵の場合と同じように堅い異性愛者の相手をする機会もあったがすべてがうわの空でこの機を今や遅しと待ちわびていた。

どうしても葵のことが気がかりだったのだ。風俗をやっているとよくわかる。

人の感情や感性なんていつどうやって変遷するか定かではなく場合によっては宵越しの情緒を持たない無情な人間なんてどこにでも居た。

特にその場限りの後腐れのない風俗なんかでは。

興奮による一時の気迷いを勘違いする客が多いがために、あれだけ素をさらけ出していた葵も自分のことを忘れかけてはいまいかとリコは気が気ではなかった。

急いていたリコにとっては二週間はあまりにも長すぎていたのだ。

「ああ……ええと。リコさん。こんばんは?」

 そんなリコの危惧は杞憂だった。

先日と変わらない声色で恐る恐るといったようにマンションの玄関口で頭を下げた葵は目こそ合わせてくれないものの既に警戒感はなく顔色も艶っぽい。

あれだけ盛大に犯したあとではいくらリコが奉仕して連続でイかせる気持ちよさを教え込んだところで羞恥心や反動から拒絶を示される場合だって多分に存在した。

穿った見方をするリコからすればスウェットトップスとショートパンツのひらひらとした葵の服装は随分と脱がせやすい格好だと邪推してしまう。

 前料金の徴収と少しの間島田と会話を挟みつつやっとリコは葵の座るベッドへと腰かける。俯き加減で少しだけぎごちない葵の緊張を解そうと適当に言葉をかけても生返事ばかりでろくな会話が成立しない。

なんだか果敢なのか臆病なのか掴めないなあと苦笑いを零しながらリコは思い切って葵を押し倒すと頬に掛かった髪を払って静かにキスをした。

あの日のキスは結構酷いものだった。

途中までは一方的だったしリコからすればお世辞にも彼女の舌使いは上手いとは言い難かった。優しく差し込んで徐々に唾液で湿らせた粘膜を探ると控えめながらも今度は葵も積極的にちゃんと舌を絡めて一応のキスの体にはなっていた。

拙い感じよりもあいさつ代わりにすらろくに接吻を許してくれなかった前回と比べて僅かな大胆さを体得している彼女にリコは思わず目を細めずにはいられなかった。

 そのまま流れで胸を触ってもやはり彼女は抵抗しない。

その妙な布越しの感覚におやと首を傾げたリコはそれに気が付いてにたにたと笑いながら一気にスウェットをまくり上げて白い肌を露わにした。

観念したように息を飲む葵を見てサディシズムが触発される。

「……下着つけてないってことはもしかして期待してたの、葵ちゃん?」

 めくった服の下には形の整った小ぶりな乳房と血の気の帯びたピンク色の乳輪が無造作に現れる。既に乳首は勃起していていかにも触ってほしそうに天を衝いている。

ちょっと歪だ、彼女は胸の割に乳首が大きくて童顔には似合わない哀れに充血したそれが一層淫らに見える。

焦らすように下乳のあたりを持ち上げるようにして揺らすだけで葵は顔を赤くして手で顔を覆ってしまう。

それでも胸を隠したり遠ざけるような真似をしないことからして見られることも触られることも承服済みなのだろう。

なによりも妄りに勃起した乳首によってそれは明らかだった。

「やっぱり私のほうが気持ちいんだよね? 触ってほしいの?」

「さわ……」

 一瞬頷きかけたように見えた葵は急いでかぶりを振って浮ついた言葉を打ち消す。

「そ、そうじゃなくて。これは晃に言われたから……だってリコさんは仕事だし。わ、私も早く済ませられるなら少し恥ずかしいくらいはどうでもいいし……」

「仕事? まあそうなんだけどさ。じゃあ葵ちゃんは結構割り切ってるんだ。だったら私は気持ちよくすることが仕事で、葵ちゃんは彼氏のオナニーが捗るようになるべく気持ちよくなることが今の仕事なんだよね?」

 改めて言葉にすると文言のひとつひとつが強烈だ。

本音と建前があやふやに区切られていた葵は躊躇いがちになって頷いた後で、リコの語勢の意図するところを察してスウェットを完全に脱ぐとショートパンツも脱いで完全な裸体になる。やはり彼女は下も穿いてはいなかった。

一方でそれを見て躊躇なく易々と裸になったリコに葵は目を白黒させながらなんでもない女性の身体の凹凸に釘付けになっていた。

 こんなのはこれまでの人生で幾度となく目にしてきた。旅行で温泉にでも行けば女湯でよく目に掛けるしプールや海でも女性用の更衣室では異性の視線がなければ盗み見ずとも誰も隠そうとさえしない。だからそれは別段珍しくもないはずだった。

きめが細やかで張りのある大きな胸、くびれのある腹部と肉感の適度でやや小ぶりなヒップラインなどに葵は目を奪われていて、それが異性愛者としては常軌を逸した反応であることを自覚するまでは初めてグロテスクな男根を眺めたときよりも随分見入ってしまっていた。

 あまりにも葵が従容になりすぎていてリコは少しだけ調子が狂っていた。

勿論それを望んでいたのは他でもないリコ自身だったが手を借りずに服を脱いでしまった時点で肩透かしを食らった気分になる。

もう少しゆっくりと、倫理観の凝っている葵を徐々に懐柔するほうがよりスリリングで望ましい。リコは座った状態の葵の後背に回ると僅かに質量のある彼女の胸を救いあげて左右に揺さぶった。

「……葵ちゃんさ、オナニーして見せてよ」

 予想通りだ。一拍あとで彼女の心臓が高鳴ったことが肌を介して伝わる。葵がうしろを振り返った途端にリコはぷっくりと膨らんだ乳首を転がして敏感な反応を悦に入って楽しんでいた。

「んぁ……ッ、なん、で……リコさ、ぁッ」

「だってもう葵ちゃんもう濡れてるよ。そんなに期待してたならどうして欲しかったのか一回私にも見せてよ」

「そんな、濡れてなんか――」

 すかさずリコは中指を割れ目に沿わせる。

ごくごく軽い力で膣を探ると熱されたように熱いひだからはとろとろとした愛液が十分に零れて来て陰唇を濡らした。

「そこ、はァ、ッ……ぉ、ひ、んぁ……うぁ、あ……」

「そんなに前のが気持ちよかったんだ。もうぐちょぐちょ。一回アクメ出来たらもっと気持ちよくしてあげるからさ」

 中指と人差し指で割れ目を開くと殆ど愛撫していないにも関わらず膣がぱくぱくと口を開けて粘度の高い糸を引いていた。

葵が徐に視線を上げるとその先に座っている島田の股間が怒張しているのが見えた。

そうすることを期待されているのだ。

黒々としていて充血しそそり立つアレよりもリコの細くて白い指のほうが感じてしまうなんて信じがたい気分になりながら、葵は島田に見えやすいように膝を立てながら指を秘所へと運んだ。

「……ん、っ……ぁ……ッ、ぁ」

 葵のうなじに軽く歯を立てて神経を逆なでするように首筋を舐めながらリコは彼女の胸をうしろから愛撫した。

ごくごく控えめな手つきだ。

積極的に快感のみを与えるのではなく乳輪をなぞったり胸を大きく揺さぶって揉んだりより敏感に感じてしまう乳首を避けて興奮を駆り立て、あえて自らの手によるオナニーだけで絶頂へ導く様に仕向ける。

そのせいで葵の所作と声は小さく曖昧だった。

葵自身は性交渉に気後れをしたことはなかったが他人の目の前で、それも彼氏と同性の同時にその様子をまじまじと見られるようなシチュエーションは今まで体感したことのない身を焦がすような恥じらいで肺を逼迫する。

そのためになるべく自慰の声を抑えようと息を止め、遠慮がちに陰核を擦るのみでやや静まったまま葵は縮こまっていた。

段々荒くなっていく息遣いに焦れてリコは両方の乳首を親指で強く擦り上げながらビクンと反応をする小さな胸を執拗に弄った。

「あ、それ、ッぇ……リコさん、も、優し……痛い、っん、ぁッ、それ無理、ぃ、ぁッ」

 勃起したそれを潰すように強く擦って少し強引にこりこりと愛撫すると面白いように彼女の身体が跳ね上がる。

葵には自分で慰めるときにリコがしたのと同じように強く乳首を弄る癖があった。

感じているわかりやすい仕草にリコも気が付いて容赦なく手の中で転がして意地悪く責めると声が高くなって僅かにクリトリスを擦る親指の動きが早まる。

抑えていた声が段々大きくなって愛液が幾筋も脚を伝っていた。

「ッひ、あ……ん、ぃ、く……ンぁ……」

「ほら。葵ちゃんがオナニーしてるの見て彼あんなに必死にチンポ扱いてるよ。だから葵ちゃんもクリばっかり弄ってないでちゃんと膣内で気持ちよくならないと」

 耳元でそう囁くと葵は流し目で睫毛を伏せながら物憂げに背後のリコを見つめた。

身長差から少し上目を遣うように見上げたその視線と紅潮した頬からしてもその態度は口ほどに物を言っていた。

「……キス、したい?」

 返事の代わりに葵は噛みつくようにリコにキスをねだって、同時に膣に指を挿入する。あの日リコにされたときのように自分でGスポットを探りながら指を動かすと分泌された体液は空気を噛んでぬちゃぬちゃと音を立てて泡立っていく。

キスをされ舌を擦りつけ合っているだけなのに葵はまるで犯されているかのようにどんどん指の動きを強めてひだを刺激した。

「葵ちゃんは彼氏が抜くために気持ちよくなってるんだよね? これが本当にその仕事なの? どう考えてもただ自分だけ気持ちよくなってるだけじゃない?」

「言わ……ん、ぁないで……ッ気持ちい、んぁ、ッ……ぐちゅぐちゅって、あ、も……ィく、ぅぁ……ッ」

 口では辛辣な言葉を並びたてておきながらリコの舌は優しく、ぬるぬると余すところなく葵の要求に応えてくれる。

どこかが触れているだけで、触られているだけで満たされるような安堵を葵は感じていた。まるでセックスをして繋がっているような感覚だ。

リコとの行為は男性と性器をこすり合わせるよりももっと明確で気持ちがよかった。

ただ同性とキスをしながらオナニーしているだけなのに、そんな病的な倒錯した感覚に陥りながらぐちょぐちょと音を大きく立て視姦されながらする自慰は視界が暗転するほどの快感でオーガズムをする以前に呼吸がおぼつかなくなる。

とにかく、リコにGスポットを散々開発されて何度も果てたときから下品に膣を擦るその快楽が脳裏から離れずに島田の目を盗んでは葵は度々オナニーに耽っていた。

それでも断然こっちのほうがいい。自らの手でシているのには差異がないのにリコに乳首を執拗に責められ唾液を交えながら複雑にキスをしてやるほうが断然緊迫感や身体の感度が違う。身体の芯のほうから熱くなってきて頭が白くぼやけてくる。

もう性欲のことしか考えられなくなっていた葵は一気に膣を擦って喘ぐと、次の瞬間には全身が総毛立つほど強烈な感覚によってぎゅうっと膣が縮まった。体中の筋肉が強張って奥歯を噛みしめる。そうやって葵が果てたのと同時に程なく島田もいきり立ったペニスの先から白くてドロっとした液体を飛ばして射精をすた。

生臭くて少し本能が疼く。それでも葵は以前ほどその匂いや色、もしくはカウパー液の染みた男性の性器に興奮しなくなってきていた。

別に割り切った関係として女性との行為が気持ちいだけで同性愛者になったわけではない。

葵はイったばかりの緩い脳ではそう否定したがりながら目の前でぐったりと萎えている彼氏のペニスよりも、むしろ柔らかく背筋にぶつかったリコの胸のほうに関心がいってしまっていた。

つかの間の浮遊感に四肢を投げ出そうとするとすぐにリコは唇で口を塞いで間髪入れずに指を挿入する。

「ぃ――ッ、ぐ……ぁ、あ、んひぁ……っ――ぅ、ぁ」

 錯乱したように目を見開きながら葵は全身を一直線にピンと伸ばして絶頂する。オーガズムの昂りが収まる前の敏感な身体のこと無視してリコは遠慮なくその身体を蹂躙していた。わけがわからずにただ与えられる感触に身体を筋張らせながらビクビクと連続でイキ続けるそれは殆ど拷問のようで葵は要領を得ない獣のような嬌声が発されていた。

あまりにも刺激が強烈過ぎて脳で処理しきれるキャパシティを超えていたのだ。

Gスポットをごりごりとアクメさせるためだけに力任せに執拗に擦りながら親指で性器としては一番感度の高いクリトリスを弾く様に直接嬲り、勃起して肥大した乳首の先をくりくりと転がしてキスをする。

女性だからこそ女性がどうされれば感じるかをリコは十分熟知していた。下からは愛液と潮が混じったものがどろどろと溢れ、叫ぶように喘いで開けっ放しの脱力しきった上の口からは唾液が垂れる。

苛烈に責め続けられ悲惨なほど連続でアクメしている葵のことを見て島田は心配するよりもつい先ほど射精したばかりで落ち着いたはずの男根を再び充血させギンギンに勃起させながら再び扱き始めていた。
 今度こそリコは徹底的だった。

ヘテロの葵が同性との性交渉に身体だけではなく精神から抗えないようにするためにもどこも敏感な部分ばかりをしつこく刺激してイキ狂わせる。

同時にそれはリコによる島田への当てつけでもあった。

かつてこの十分の一程度も葵のことを悦ばせたことがないであろう彼は本来的には彼氏として正しい異性のセックスを行うべきはずでありながら、今はリコの思うがままによがる彼女を遠巻きに見つめ腰をへこへこさせてただ肉棒を扱くだけだった。

あえてリコは力の抜けた葵をM字に開脚させ、綺麗なピンク色の膣を開き彼へと見せつけながらいやらしい音を立てて何度もピストンをした。

その頃には葵は半分昏倒していて反応すらも虚ろだ。ただ水気を帯びた肉感のある湿った音だけがぐちゅぐちゅと響いて自慰に動く彼の手を羨まし気に加速させる。

彼女にその自覚はなくとも完全に葵はリコの手中へと落ちていた。

これ以上ないくらいにイかされて子宮を宿した身体の生物的な使命や諸々を忘れて興奮すればただ刺激を求めるだけの淫乱な身体になっていた葵は、むしろレズビアンに目覚めたというよりも異性や同性の見境を失っただけに過ぎない。

気持ちよければそれが男根だろうが女性の指だろが、無機質なディルドだろうが関係なかった。

 葵は気が付くと犬のような格好でリコの秘部をクンニして舐めながら自慰をしていた。

二人ともが汗まみれで葵自身、自分が何度オーガズムを迎えたのかも覚えていない。

ただ全身が筋肉痛のように気だるげでひたすらに喉が渇いていた。

何度アクメしても愛液が零れてきて指が止まらない。

ちらりと視線を向けると島田は椅子に座りながら未だにこちらを見てオナニーを続けている。

その足元には水たまりのように何度射精したのかもわからないくらいおびただしく飛散したどろどろの精子がべったりとこびりついていた。

でもそんなことは葵にとっては既にどうでもよかった。リコのクリトリスを吸いながら彼女がイクのと同時に葵も絶頂に達して二人はそろって果てていた。

魅惑の寝取らせ Part4

 リコと出会ったのはほんの偶然だった。

大学の帰りになんとなくぼうっと歩いていただけで特に行き先もなく、三限が突然休講になってしまっていたせいで駅に向かうにはまだ陽の位置は高かった。

暇つぶしをしようにも彼女には別段な趣味もなく、また同輩の友人を呼ぼうにも彼女たちはまだ講義の真っ最中だ。

一人で街中をうろうろしていてもキャッチにしつこく付きまとわれるしウインドーショッピングなんて所帯じみたことをするつもりもない。

そしてカフェなどで一服するには彼女はまだ少し幼稚だった。

悠長に珈琲を嗜みながら悦に入っていてもきっと三十分も持ちこたえられない。

それならじっとして立っていたほうがマシだ。

仕方なく葵は人気の少ない路地裏を当てどもなくふらふらと低回していた。

電線とアスファルトだらけで散歩と呼ぶにはあまりにも虚無な景色だったけれどともすれば出不精になりがちな彼女にとってはいい運動だった。

喉が渇いていることを思い出して丁度近くにあったコンビニにでも寄ろうかと遠目に眺めながら思案していると、葵の足がぴたりと止んだ。

 リコだ。コンビニのガラス越しにリコが雑誌を漁りながら立っていた。

かなり距離があるから正確にはリコのような女性、と形容すべき確信の低さながらもなぜか葵はそうと決めつけて駆け出すように道路を跨いでそっちへと向かってしまう。

やがて葵に気付いて雑誌から視線を上げた彼女はぱあっと表情を弾けさせて本を閉じると、こちらも一目散に走り出していた。

「葵ちゃん? どうしたの? こんな時間にこんな場所って」

 コンビニの駐車場に出て来たリコは伸びをしながらまじまじと葵を見遣った。二人の取ってはこれが初めてプライベートで出会った瞬間だった。

「やっぱりリコさんだ……あ、利巧さん? 源氏名は外で使っちゃマズいですよね。北条さんって呼んだほうがいいですか?」

「いいよ、別にリコで。そっちのほうが呼ばれ慣れてるし」

 考えてみれば奇妙な関係だった。

葵とリコの二人は友人でもなければ知人という定義にすらも合致しない。

それは感情的ではなく整然とした風俗嬢と客の関係だった。だからこそ遭遇に興奮して声をかけたあとで簡単な挨拶の会話にすら詰まってしまう。

色々話したいことあるはずなのに息が詰まるように言葉が出てこない。それはリコも同じだった。なんとか息を飲んで無理矢理頭を動かす。

「あ、私……大学の授業が突然休みになっちゃって。それでここら辺ぶらぶらしてて……」

「っていうことは今、暇なの? 時間ある?」

「ああ、はい。まあ」

 余暇の有無を聞いてくるあたりそのリコの口ぶりはどこかへ一緒に出掛けようという誘いの文句のようだった。

誘う友達も居なければただ無聊を託つだけの葵にはそれは好都合だった。

連れだって店を回ったりすればリコのパーソナルな部分、風俗嬢としてではない素の部分も覗けるのではないかと密かに期待していた葵に対して、彼女は神妙な顔をしながら手を取って近づく。

ただ繋いだだけじゃない、それは指を絡める恋人握りだった。手だけじゃなくて顔すらも熱い。

「そっか……」リコは妙な表情をして微笑んでいた。

「じゃあ、ホテル行こ」

 その言葉に葵は愕然として戸惑う。

ホテルって。それはつまりそういうことだ。

あまりにも直接的過ぎて回りくどくない表現にかえって彼女は怯む。

それに今はまだ昼間だ。陽は高く、遠くでは蝉が鳴いているし人の往来もまばらにある。

それなのにどうして、結局出会ってヤることが風俗嬢として相対しているときと同じなんて。

 しかしそのままこくりと頷いてしまったのは他でもない葵自身だった。

その言葉を聞いた瞬間から淫らな想像が止まらなくて、リコのよく知っている一番手近なホテルまで歩くちょっとの距離でさえも我慢できずに期待に自然と膣が濡れてしまっていた。同性愛者ではないはずなのにやっていることは軽薄で性欲しか頭にないレズビアンそのものだ。

違う、そうじゃない。

私は島田晃が好きだしその心は不変だ。

何度も心の中で反芻しながらも到着したラブホテルのエントランスでは握った手を更に強く握り返して甘えたように腕にもたれ掛かっていた。

 喉が更に乾くほど最初からリコは激しかった。

いつものような島田に見せるための前戯ではなく、すべてが葵のための愛撫はシャワーを浴びる時間さえも与えずに立て続けに彼女を襲っていた。部屋に入ってすぐ、鍵を閉める間もなくリコは葵をドアに押し付けながらキスをして舌を絡める。

同時に片手を服の隙間に滑り込ませて下半身を触ると既にそこはぐちょぐちょに濡れてしまっていた。

リコは服を着せたまま葵にドアに手をつかせるとバックの体勢で後ろから指を動かして愛液を掻き出していく。

元々濡れやすい体質な上に、玄関口でイキやすいGスポットばかり強引に愛撫されると葵は声すら止められない。

リコの手つきは男のそれよりもより力強く粗野なのに、どうしようもなく気持ちいい部分ばかりを見透かされているようだった。

やがて腰が砕け立っていられなくなった葵は倒れ込むのもそぞろに、自らの愛液がたっぷりとついたリコの指をフェラチオして掃除をする。

もう彼女は殆ど女性への抵抗感がなくなっているどころか、段々異性へと感じるはずの価値観すらも朧気になっていく。

ベッドにたどり着くまでどれだけ長い時間まぐわっていたのか葵は覚えてなどいられなかった。ただひたすら汗をかいていて、冷房の効いていない蒸し暑い部屋の中で愛液や汗や唾液を混ぜ合いながら身体を密着し合って互いの性器を弄んでいた。

ペニスを使うセックスと女性同士のセックスは根本的に異なる。

だが意味は同じだった。

お互いに真正面に向かい合い、蹲踞のような下品な格好で股を開き陰唇を擦り合わせながら愛液に塗れ勃起した互いのクリトリスを打ち付け合っているとペニスも性別もどうでもよくなる。

その上で乳首や膣への指の挿入があるだけで、島田とヤるときよりも呆気なく果てることが出来た。とにかく、リコといる間は葵はどの神経も尖ったように強烈なのだ。

相手が女性だからこそ女性の気持ちい部分だけを執拗なほどに責めてイかせるだけならばリコは男の何倍も秀でていた。

 倫理ではそれは間違っていることだ。

葵は島田と付き合っていたし、レズではないのに昼間からラブホテルへと易々と連れ込まれて女性同士てセックスをしてしまっている。

便利で都合のいい女になってしまっているこの状況を考えるだけで葵は軽くイってしまいそうだった。友人はまだ真面目に授業をしている最中だろう。

それなのに、こんなにもよがり狂って陰核を擦り合わせながら快楽を得ようとしている自分は明日友達を顔を合わせたときには一体どんな表情をしていればいいというのだろうか。

最早葵は同性を見る目つきが変わって、物色するような視線を友人にすら向けるようになってしまっていた。

そんな些細な懺悔なんて腰を少し上下させ押し付ければ膣と陰核からせりあがる電流のような快感によって全部霧散してしまう。

今の葵とリコは間に金銭すらも介在しない都合のいいセフレの関係だった。

そんな浅はかな繋がりを自覚しながらも余計に葵はリコを求めるように陰部を擦りつけていた。

魅惑の寝取らせ Part5

「どうしたんだよ急に……」

 葵は深夜仕事から帰って来てネクタイに指を掛けたばかりの島田をベッドに押し倒すとスラックスのチャックを開けてペニスを咥え込み丁寧にフェラチオを始めた。

口の中でどんどん膨張していくそれを舌で舐め取り、同時に手で扱きながら根元までを飲み込む。

かつて葵はここまで積極的にリードをすることはなかったし、自ら進んでフェラチオをするほどその行為自体が好きなわけでもない。

喉の奥にあたってむせかけても彼女はペニスを咥えるのを止めなかった。

ひとつには罪悪感だ。それは昼日中リコと偶然出会いセックスに耽ってしまったことへの謝罪であり後悔だった。

勿論昼間そんなことがあったとは正直に白状できるわけがない。

だから良心の呵責を押して誠意を無言で表すしかなかった。一刻も早く島田とセックスをして男の感触を上書きしないとリコのことばかり考えてしまい頭がどうにかなりそうで葵は焦っていた。

 裏筋を舐め取って歯にあたらないように亀頭を転がして唾液を絡める。

ただの肉の棒なのに脈を打ち青筋が立つだけでなぜこんなにも淫靡な気持ちになるのだろう。

一方の島田は多少の変化には気が付きながらもかえって男根を求めて来た葵に対しては悪い気はしない。

むしろ快いばかりに見下しながら奉仕的に舌と口を動かす彼女を見遣っていた。最近の葵は明らかに舌使いが上手くなった。

それがリコのおかげだとは島田は認めたくないものの、キスはおろかフェラに関しても如実に、的確に亀頭をなぞって射精欲を昂らせる。

恥がなくなったというか、昔は恐る恐るというように咥えていたし小さい口をめいいっぱい広げてやっとフェラチオをしていたのに今はもう手慣れているかのように情熱的だった。

葵は口の中に徐々に青臭い味が広がり、より一層陰茎が充血していくのを感じていた。もうちょっとでイくのだろう。それを察すると今度は口を離して、手でペニスを扱きながらゆっくりと自身の服を脱いでいった。

「お、おい葵。ゴムは?」

 葵はなにかに憑かれたように一心不乱に島田のペニスを欲っしていた。

いつもならしっかりとコンドームをつけてから挿入するのを忘れないのに生憎と手の届く周囲にそれはない。

探せば至る所に見つかるだろうが、それでも彼女は一時の無駄を恐れて生のままのペニスを陰唇に宛がって騎乗位の体勢でもう既に半分ほど亀頭を飲み込んでしまっていた。

「大……丈夫ッ、ぁ……今日安全だから、膣内に……出しても、ッ、はぁ、ああ……」

 言うが早いか、腰を下ろした葵はゴムを介さない熱いペニスを膣に感じた。いつもの感触とは明確に違う。

そこにスキンがあるのとないのとでは、直接の肉棒の形や律動の伝わり方などがまるで異なっていた。これなら、このペニスならリコのことを忘れて男とのセックスに没頭できる。

ついでに膣内に中だししてもらえば不貞を働いたことに関しても許してもらえるだろうと勝手に考えていた。

葵は島田のことを愛していた。

愛しているはずだと信じている葵は一時の気の迷いを振り払うためにも禊のように子宮に精液を注がれなければならないと感じていた。

 今日は安全日とは言い切れないごく微妙な周期だ。

こと最近ではよくズレるからそもそもどの日も危険日とほぼ変わらなかった。

それでも身も心も彼のものになってしまえばきっと邪な感情は綺麗に消えてしまうだろう。

葵は、愛する島田との生セックスがそれほど気持ちよくはないことに薄々勘付き始めていた。

いくら腰を振っても、どれだけ子宮を叩いても背筋が強張るような快感が欠けていて大した感動もない。

ただもう一方の彼は精液を搾り取られるような天にも昇る快感に顔を歪めていて気を緩めてば今すぐにでも果ててしまいそうだった。

こんなはずじゃない。もっと男とのセックスは気持ちいはずだった。

だってそうなるように出来ているのだ。

ペニスの造形は膣に挿入して気持ちよくなるために形作られている。だからこんなはずでは――

 必死になったピストンの途中でペニスが痙攣し、次の瞬間には膣の中が温かくなっていく。葵は茫然としながら腰を落として深々とそれを突き立て子宮で受け止めた。

もう射精してしまったのだ。

呆気なくどくどくと注がれ続ける精子の勢いは男らしかったが、こんなのではきっと孕むまいという妙な確信が葵にはあった。

膣内に出されるのは初めてのことなのに葵は愛する男とのセックスですら淡々と乾いた感情しか持ち合わせていなかった。

 ペニスを膣から引き抜くと栓を外された秘部からはおびただしくザーメンが溢れる。

島田はご満悦といった表情で深いため息をついていた。

さぞ気持ちよかったのだろう。

そんな満足げな彼を見て葵は憮然としながらシャワーを浴びた。

 中出しは構わないのだけれどあとからあとから精子が膣から零れて来て鬱陶しい。

特に立った状態で力を抜くといくら洗っても足を伝うそのどろどろした体液には辟易した。

もうなんだか、ペニスやザーメンといった異性とのセックスのシンボルですら鼻白む。

以前はその匂いだけで興奮できたのに……と思考を頭の中でぐるぐるとさせながら、ふと葵は昼間リコからもらった個人の電話番号のことを思い出してしまう。

風俗店宛ての番号ではない。それは北条利巧の番号だ。

電話番号の交換になんらかの意味があったとは考えられない。

例えば、実際はどうであれ大っぴらに性的な欲求不満を解消し合うセフレとしての約束を交わしたわけでもなければ、定期的にホテルで会うような予定すらもない。ただ連絡先を交換しただけ、電話番号を貰っただけだった。

だからこんなに身体が熱くて切なくなってしまうことなんてまさかリコも見通してなどはいなかったはずだ。

結局イったふりしかできなかった葵はどうしてもリコとシたくなっていたのだ。

 シャワーで身体を打ちながら葵は自分の胸を揉み、秘部に指を這わして慰めようとするのだけれどどうやっても物足りない。気持ちよくないわけではないのにそれ以上のことを知っている身体は簡単にイけなくなっていた。

 レズになってしまったわけではない。

ただリコならこの膣の物悲しさや愛撫されなかった乳首を余すことなく満たしてくれるだろう。

むしろそれは信頼感だ。

だから、島田に足りない部分を補足的に埋め合わせているだけなのだからこれはきっと不貞には含まれない。

そもそも別の『男』とシているわけじゃないのだ。

そんな詭弁は葵の後ろめたさを薄めて、「コンビニに行く」と島田に嘘をついてまでリコとラブホテルで落ち合う口実になってしまっていた。

   ◇

 そのまた数か月後も比奈木葵と島田晃は同じマンションの一室で同棲を続けていた。

理由のひとつはどちらも縁を切るに至るほどの致命的な原因に欠けていたからだ。

現在は殆どセックスを行わなくなっただけで情事には関係のない世間的に見た人間性には葵も島田も欠陥がなかった。

だから正しくは今現在も男女のカップルとしての付き合いが続いているというよりもただ別れていないだけ、
そのきっかけがないだけで、互いのコミュニケーションに別段支障があるわけでもないのに彼らは一室で共に過ごしながらまるで殆ど他人のようだった。

別に険悪というわけでもないし、
挨拶やキスくらいは容易くするけれどもう以前のように毎日セックスを行ったりはしない。

でもたまのセックスですら惰性による儀式のようなもので、
葵にとってはここに住まう家賃を肉体で島田に払っている、という感覚だった。

 葵がその部屋に居つく理由は他にもあって、
単純に学生身分の彼女からすると大学にほど近く便利な部屋をみすみす手放したくなかったからだ。

かねてより衣食住を島田に頼ってきていた葵は今更労を買ってまで別の部屋に引っ越すことが億劫だった。

一方の島田も未だに葵に対しての未練や情が募っていて、
一応の同居人として料理や洗濯の家事を進んで行う彼女のことを快く思っていたこともあって追い出すこともままならない。

性欲が絶えず絡み男女として常に意識していたときとは違いある意味で二人は以前よりもずっとより深い純粋な共存関係に陥っていた。

 困憊した深夜に島田はマンションへと帰宅した。
既に道すがらでアルコールを数缶ひっかけて飲み歩き既にへべれけの状態だった。

それでも家に葵が居るだけで心身が癒される思いがした。
例え心と身体で繋がっておらずとも島田は彼女の存在に心を開いて無防備なほど全幅の信頼を置いていた。

ただ最近の葵は風俗遣いが荒くなっていつ帰宅しようとも大体は誰かが来ていた気配や匂いが玄関にすら残っていて、
何度かはリコと盛っているその場に遭遇したこともあった。

彼にとってはそれは気まずいというよりただただ羨ましく、
帰ってきた島田には一向に構わず汗だくになりながら貪るようにセックスを続けるその姿を脳裏に焼き付けて浴室で一人寂しく自慰をすることもあった。

魅惑の寝取らせ Part6

 その日もやはり葵以外の人の気配があって玄関で靴を脱いでいると喘ぎ声が僅かに聞こえていた。

このマンションは防音壁で隣室を隔てているから苦情が来ることはあり得ないが、ほろ酔いで威勢がよかったこともあって募りに募った日々の不満は疲れ切っていた島田を突き動かす。

2DKの一室、寝室に二人で生活していたかつてはただの物置部屋で現在は畳の床をフローリングに張り替えて急造した葵の部屋のドアをノックすると悩ましい声が一瞬だけ止む。
が、それは間をおいて再度響いてくるどころか、より一層激しく喘ぎ出して愛液が零れる音が扉越しにもぐちょぐちょと聞こえてくる。

思わずドアに聞き耳を立てかけてハッとした島田は自分を恥じた。

そして怒鳴り声を上げてドアを蹴破るように開けるとそのまま薄暗い部屋へと押し入った。

「は、ぁ……だめ、葵ちゃ、ぁ、ぁあッ……見られて、ぁ、ぃぐ、ぁ――ッ」

 島田はその光景に我が目を疑った。

どうせまたリコが風俗嬢として部屋を訪れて葵を支配的に慰めているのだろうと高を括っていた。

そうじゃない。今回ばかりは葵を肌を重ねているもう一人の女性はリコではなかった。

薄暗がりでも見まがうはずもない。

リコは女性としては長躯で葵の隣に居ると尚更それが際立った。

今居るもう一人は葵と殆ど変わらないかむしろ少し小さいくらいの女の子で、あろうことか四つん這いに這いつくばる姿勢を強制されながら彼女に手マンをされていた。

アクメによって四肢の力が抜けたのかガクガクと膝を震わせるその女の子を続けざまに攻め立て、ねっとりとしたキスを交わしながら押さえつけるように手を動かす葵は最早人が変わってしまっているようだった。

「んぐ……く、ぁ……ッ、ィっちゃう……ごめ、なさっ……葵ちゃん、ごめ、ッ、今は駄目なの、ッに……」

「ちゃんとイクことだけに集中しててよ。十回連続でイくまで止めないから。無駄なこと喋ったからまた最初からね」

 もう一人の彼女は荒い息遣いで必死に手で口を塞いで島田に声を聞かれまいと堪えているようだった。

この部屋の中では彼こそが部外者で場違いなのだ。

葵に対して対して抵抗もできないまま愛撫されている見知らぬ女性は島田を気にする素振りを見せながらも後ろから勃起した乳首を指でこりこりと扱かれると理性が決壊したかのような声で鳴いて、同時に島田も無意識に興奮してスラックスに男根のテントを張っていた。

「ああ、晃くん帰って来たんだ。おかえり……この子可愛いでしょ? 大学の友達で橋田彩佳ちゃんって言うんだけどね、さっきコンビニで偶然会っちゃってさぁ。誘ったら無警戒にここまで付いてきちゃったから無理矢理押し倒して今調教してたの」

「ひぐ、っ……あ、ぁ……ィ、ぁ……」

「ほら、あと六回アクメしなきゃいつまで経っても終わらないよ……あれ? ……あーあ、漏らしちゃった。彩佳ちゃん、そんなに気持ちよかった? それともそういう性癖?」

 彩佳と呼ばれた女の子は突然静かになったあとで倒れ込むと失禁していた。

じわじわと広がる床の染みは明かりのついていないここでは尿なのか愛液なのかも判然としない。あまりにも苛烈に愛撫されたせいで一度失神しかけたらしく、脱力して床にへたり込んだ彼女は微かな呼吸をしていた。

「……ぁ、か……は、んぁ」

 自らがレズ風俗を呼んだことに端を発した事態だったが、リコと出会ってからというもの島田の生活の一切は滅茶苦茶だった。

場合によっては暴力に訴えかけて殴ることも辞さないほどの余勢で部屋に駆け込んでいたというのに、彼はそれを目にした途端に急に血相を変えて黙り込んでしまっていた。

相手は明らかに風俗嬢ではない。葵が言っていた通り、見かけやその反応からしても嘘ではなくただの女の子のようだった。

「彩佳ちゃんのことそんなに気になる? ああ、まあ可愛いしね……でも彼女はレズだから多分晃くんじゃ無理だよ。最近気づいたんだけど、彼女ずっと前からスキンシップが過剰だったんだよね。講義中もたまに手を握ってきたりして。そのときはよくわからなかったんだけど最近お返しで揶揄い半分に胸を触ったら変に私のこと意識しちゃって突然避けるようになってさ」

 葵はそう言って無力に横たわる彩佳の髪の毛を愛おしそうに撫でる。

亜麻色の短い髪だ。

よく手入れされていて元々つやつやしているだろうその髪は既にぼさぼさになっていて所々跳ねている。

その憔悴からしてかなりの時間行為に及んでいたのだろう。屈辱的な場面に遭遇しながらも島田は興味津々だった。

「だから彩佳ちゃんレズなんだってそのときやっと気づいたんだ。大学の中だと逃げられて話しかけられなかったんだけどさっき偶然そこで会って『仲直りがしたい』って言ったらすぐ油断しちゃって。それで部屋に連れ込んでこの通り。案外エッチな子だったからすぐに脱いでくれたよ。まあ私も暇だったし、リコさんを呼ぶ手間が省けて丁度良かったけどね」

「葵ちゃ……ん、彼氏居たの? そんなの……私聞いてないのに……」

「だって言ってないもん。そもそもこの部屋は彼のものだから」

 気だるげに身体を起こそうとした彩佳はうわごとのようにそう呟いて非難をする。

葵は事情の一切を彼女に言っていなかったのだ。

勿論純粋な恋愛行為だと思っていたからこそ同性愛のマイノリティを晒したり易々と身体を預けただけで彩佳は本来そういった性質の人間ではない。

実際葵は彼女を軽い気持ちで誘っていたこともあったし、同居している彼氏の存在や、今やその彼氏が彼氏とはほとんど呼べないような無味乾燥の仲であることも全部ひっくるめて説明するには冗長だった。

単に彼女の身体目当てである葵はそこまで深く告白をするつもりはなかったのだ。

都合のよくてお金のかからない風俗嬢の替わりとして彩佳のことを便利に扱おうとしていたのである。

 脱ぎ捨ててあった服を手繰り寄せてなんとか裸体を隠そうとする彩佳に対して葵は素早く秘所に指を遣るとわざと大きく湿った音が立つように大げさに手を動かして島田の耳を挑発的に犯す。

そうすることで彩佳が余計に恥ずかしがって濡れることを知っているのだ。

敏感になったままろくに動くことのできない彩佳はまた弱々しい声で喘ぐと服従するように四つん這いになっていた。

「ぁあ……ッ、イクイク、ぅ……ぃぐ、ぁ待っ、て……待って、ッ……葵ちゃ――……ンぁ、ッィぐ、ぁ――ッ」

 再び盛り出す二人にはもう島田の姿はまるで見えていないようだった。

蚊帳の外に放り出され自尊心を傷つけられた彼はやっと拳を握りしめて険のある声を出す。

「……おい葵、俺はおまえの彼氏なんだぞ。目の前に居るときくらい盛るのはやめろ」

 葵は目遣いだけで彼を一瞥するがすぐに逸らして構わずに愛撫を続けながら彩佳とキスをしていた。

その「彼氏」という言葉は存外形骸化していて少しの威圧感を与えるにも至らない。

島田の知っている彼女はこんなことをする女性ではなかった。

どこから変わってきたのかを考え出すとやはり分水嶺はごく最近、リコとの出会いからだろう。

あの日以来少しずつ葵の清純さは失せて行っていた。

 全く知らない女性が自分の彼女とセックスをしている。

ちろちろと細かく動く舌や下品に音を立てて解される膣の音、それから女性同士の汗や体液の匂いが充満した部屋に突っ立っている島田は憤懣やる方ない手持無沙汰に怒髪天を衝いて憤った。

「ふざけんなよおまえら! いい加減にしろ、止めろつってんだよ!」

 わざとだったのか偶発なのか、ひと際激しい指のストロークで頼りない声で高く鳴いた彩佳の喘ぎとぐちゅぐちゅという音で半分以上はその悲痛な島田の叫びはかき消されてしまっていた。

ビクビクと爪先から頭までを痙攣させてオーガズムしている彩佳の呼吸が落ち着くまで葵は執拗にディープキスを迫りながらやっと翻って島田と目を合わせた。

「……なに?」

 遠慮のない返事には今度は明確な敵意があった。

かつての彼女はそんな荒っぽい口調になったりはしない。

島田絶えず『かつての葵』についてばかりの恋慕ばかりを引き摺っていた。

「言う通りに出来ないなら今すぐ荷物まとめて出てけ、ここは俺の部屋だ。二度と顔も見せるな」

「え? 殺生な、そんなこと言わないでよ。ほら怖い顔しないで。無視してごめんね、悪かったって思ってるから。でもさ――」

 葵の視線がゆっくりと下がって下半身を見つめた。

「――勃起しながらそんなこと言われても全然怖くないよ。いつもよりギンギンなんじゃない? 毎回それくらいので責めてくれれば浮気しないで済んだかもしれないのになあ……」

 嘲笑されて島田は思わず視線を下げる。

そこには暗くてもよくわかるほど、かつてないほどそそり立ったペニスが熱くなって勃起していた。

葵とのセックスや自分でするオナニーでもここまで隆々と固くなることはなかった。

そもそも最近では疲労で一切の性欲が失せたとすら感じていたのに、かつて愛した葵が女性同士でシている現場を見ただけで先走りした汁がトランクスを濡らすほどガチガチに勃起してしまっていた。

「ああ、もしかして抜きたい? ……いいよ別に。勝手にシゴけば。そのまま窮屈に勃起させたままだと可哀想だし、触らせたりはしないけど見抜きに使っていいよ、ほら。女の子とのセックスを教えてくれたのは晃くんだから一応感謝はしてるよ。だからこうやってオナニー手伝ってあげてるんだし」

 それは情けというよりも憐れまれた末に馬鹿にされているだけだった。

葵は島田の五つも年下だ。

そんな小娘に嘲られて男の矜持では黙っていられるはずがない。

葵はより貧乳で慎ましい彩佳の乳房を咥え音を立てて淫靡に吸いながら、指でとろとろになった膣を押し広げて島田へと見せつける。

ほんの数か月前まで葵は正常な異性愛者で、何度セックスしたかは数えきれない。それなのに今では男よりも女とするほうに快感を見出していた。いつの間にか島田は恥も外聞も捨ててスラックスを脱ぐと苦しくなったペニスを勢いよく扱き出す。

「ぅ、あ……ひぁ、ぐ、ぁッ、っ……イっちゃう、イ、っく……」

「だから『出てけ』なんて言わないでよ。

これからも一緒に居ようよ。そうしたら抜くのは手伝ってあげるからさ」

 ローションも唾液もないのに亀頭から分泌されたぬるぬるとした薄い精液で血管の浮いた赤黒いものはよく潤滑した。

半分以上冗談でけしかけていたらしい葵は本当に下半身を露わにしオナニーを始めた島田のことを蔑むようにして見下していた。

 目の前には恥部を十分に濡らした女性が居るというのに彼はただ突っ立ってそれを眺めながら必死にペニスを扱き続けた。

以前なら葵は言われるまでもなく口や手でもよく奉仕をしたというのに。

デリヘルを呼びつけて女性同士のセックスを見世物にしていた島田だったが今度はあまりにも恥じらいなく豪快に自分の男根を扱いて自分こそが見世物になっていた。

 まだ満足のいっていなかった葵は情けない姿でオナニーをする島田を完全に無視し、二人っきりで居たときと全く同じく遠慮なく彩佳と濃厚に舌を絡めながら彼女の膣を弄り始めていた。