高校三年の10月を迎えた。
長かった残暑も終わり、秋風が吹き始め過ごしやすい季節となった。
直美を誠と別れさせることに成功した恭子は、
この時期から催眠のかけ方を徐々に変えていくことにした。
二人がすぐに復縁することは考えられなかったが、直美と誠の絆はとても強く、
離れているように見えるが、どんな弾みで元に戻るかわからないと恭子は考えていた。
直美にはより女性を好きにさせ、誠には男性を好きにさせる。
そうすることが最も安全で平和的な解決策だ。
まずは直美の女性への欲求を上げるにはどうしたら良いか考えることにした。
(今まで、服を着たまま催眠をかけてきたけど、
そろそろ直美にも裸になってもらって、
女同士の生の触れ合いの気持ち良さを感じてもらうのはどうかしら?)
恭子はそう考えたが、それには危険が伴っていた。
服を着ている時と違って、覚醒時のフォローが効かないのだ。
これまで催眠中に、何度も直美を絶頂させてきたが、
いずれも服を着ている状態で行われていた。
服を着ていれば、覚醒しても言い逃れできるが、
初めてキスした時のように、どちらか一方が裸だと切り抜けることはできない。
ここまで来て失敗はしたくない。
慎重に慎重を重ね、あくまでも直美が自分から求めるように仕向けよう。
こちらから刺激を与えるのは危険だが、
直美が刺激を与える立場だったのなら、おそらく覚醒はしないだろう。
そう考え、恭子は新しい計画を実行に移すことにした。
※※※
金曜日の学校帰り、
二人はいつものように並んで歩き、恭子の家に向かっていた。
「直美数学の時間寝てたでしょ?」
「げぇっばれてた?」
「ばれるよ~いくらうちで勉強できるからって、授業はきちんと聞きなさい」
「ちぇっ、はーい」
直美は最近誠と別れたが、
そのことは少しずつ気にならないようになってきていた。
恭子が催眠によって、
誠と別れたことを気にならない暗示をかけているのもあったが、
男自体に興味がなくなっていることもあり、あまり悩むような問題にはならなかった。
最近の直美は、
クラスの男子を極端に避けるようなこともなく、問題なく日々を過ごしていた。
男性に嫌悪感を感じることもなくなったうえに、
心地のいい気温が作用したのだろう、授業中の居眠りもそのためのようだった。
恭子はバッグから家の鍵を取り出すとドアを開け、玄関に入った。
「じゃあ、お茶用意するから先部屋行ってて」
「はーい」
直美は先に階段を上って部屋へと入る。
恭子は手を洗って紅茶を入れると、後を追って二階へと上った。
そうして部屋に入ると、
直美はベッドに寄りかかって座り、目を閉じていた。
紅茶をテーブルに置き、直美の向かいに座る。
(まつげ長いなあ…)
催眠中に何度も見た表情だが、改めて見るとやはり愛しさを感じる。
恭子が何も言わず直美を眺めていると、しびれを切らしたのか、直美が目を開けて笑った。
「もー、寝ちゃったのかとかツッコんでよ!」
「ああ……そっか」
「そっかって、何よ~」
恭子はふと、顔をまじまじと眺めていたことを不審に思われていないか気になったが、直美は笑いながら教科書を取り出していた。
恭子もリュックから教科書類を取り出すと机に広げた。
「えっと、じゃあ始めよっか。わからないところとかある?」
「んー今日の数学でやったとことか?」
「やっぱりわかってなかったのね、もー教えるのも大変なんだからね?」
恭子は笑いながら直美を叱ったが、実際大変なことはひとつもなかった。
勉強中は直美と密着してスキンシップが取れる。
もちろん、そのことを直美が知ることはなかったが、直美の匂い、ぬくもりを感じながらの勉強は、恭子にとって幸せなひと時であった。
恭子は直美をいつものようにベッドに寝かせると催眠をかけ始めた。
※※※
勉強はいつものように進められた。
ただ一つ違ったのは勉強後のあの習慣だ。
恭子は教科書類をしまうと、
パソコンは開かず、直美と一緒にベッドに上がった。
次に自分の服を脱ぎ始めると、
脱いだものから順に畳んでベッドの端に置いた。
そして直美に向き合って座ると、初めての暗示をかける。
「じゃあ、次は直美の番よ。
私の裸を見てたら、なんだか自分も脱ぎたくなってきたでしょ?」
直美は恭子の胸のあたりに視線を置いていたが、
興奮した表情で恭子の顔を見るとこくりと頷いた。
直美はセーターを脱ぎ、
ベッドの上に置くとシャツのボタンに手をかけたところで下を向いた。
「どうしたの? 脱ぎたくないの?」
恭子が声をかけると、直美は小さい声で答える。
「…恥かしい…」
恭子は考えた。
催眠中でも自分で服を脱ぐのには抵抗があるのか。
たしかに誠に服を脱がせた時は、銭湯で服を脱ぐイメージをさせていた。
そういったイメージなしに、
急に脱いでと言われても、抵抗があるのは当たり前だった。
しかし敢えて恭子は、
イメージを持たせずに直美の服を脱がせることにした。
「じゃあ私が脱がせてあげる。
私に脱がされると、とてもドキドキするけど、恥ずかしくはないわ」
直美が頷いたのを確認すると、
恭子は直美のシャツのボタンを上から一つずつ外していった。
だんだんと直美のブラが見えてくる。
直美の胸はピンクのブラに包まれて、ひっそりとそこにあった。
恭子ほど大きくはないが、見た目からも柔らかさのわかる白い肌。
恭子は今すぐにでも直美を押し倒したかったが、気持ちをこらえ、シャツのボタンを最後まで外すと直美の肩にかかっていたシャツを後ろへと落とした。
ふっくらとした胸に、狭い肩幅。
誠の裸を中性的に感じていたが、
本物の女性の可愛らしさには到底及ばないことに気がついた。
恭子は直美をベッドの上に立たせると、
スカートのホックを外しジッパーを下ろした。
すとん、とスカートがベッドに落ちる。
直美は恭子の前で初めて下着姿になった。
上下とも薄いピンクの下着をつけた直美を見て、恭子は心臓が破裂しそうなほど興奮していた。
それと同じように、直美も顔を真っ赤にして興奮しているようだった。
直美をまた、ベッドに座らせる。
恭子は直美に近づくと、両手を直美の背中に回した。
一瞬抱きしめられるのを期待したのか、
直美はビクッと体を硬くしたが、違うとわかると体から力を抜いた。
恭子は直美のブラのホックを外した。
直美のブラが胸の前でたわむ。
「…いい?」
恭子は直美に了解を取った。直美は真っ赤な顔で頷く。
恭子は直美のブラをストンと前に落とした。
直美の胸が露わになる。
恭子の興奮はピークに達していた。
初めて見る直美の胸。
腕などとは違って日に焼けていない白い肌に、誰にも汚されていないようなピンク色の乳首が付いている。
恭子は自然と荒くなる呼吸を抑えながら、直美の顔を確認する。
直美の顔は耳まで赤く染まり、
口で呼吸をしながら顎を引き、恭子を上目遣いで見上げていた。
その目は興奮からか潤んでいて、恭子に助けを求めるような視線を送っていた。
「大丈夫、ドキドキは気持ちいいことよ」
恭子は直美の頭を撫でると、ショーツに手をかけた。
直美は恭子が脱がせやすいように腰を浮かす。
恭子が直美のショーツを下ろしていくと、
勉強時につけさせたナプキンと直美の性器の間から一本の糸が伸びた。
「濡れちゃったね?」
恭子は直美に微笑みかけると両足からショーツを引き抜いた。
直美は恥ずかしさから、先ほどよりも顔を紅くし俯き目を閉じていた。
ショーツをベッドに置くと、恭子は直美に向き合って座った。
「ほら、目を開けて、どう?
女の子同士で裸を見せ合うって、ドキドキして興奮して、気持ちいいでしょ?」
恭子は一つずつ確認するかのようにゆっくりと直美に語りかけた。
直美は黙って恭子を見ている。
否定をしない代わりに、とろんとした目が肯定の意を表していた。
直美の目は何かを期待するかのように恭子を見つめている。
恭子は何も言わず、両手を直美の方に差し出した。
直美が遠慮がちに体を恭子の方に傾ける。
恭子は直美の腕を掴み優しく引き寄せて抱きしめた。
直美の体は緊張からか硬くこわばっている。
しかし二人の心臓の音は今にも破裂しそうなほど響いていた。
恭子は直美の頭をそっと撫でた。そうしているうちに、徐々に直美の体から力が抜けていく。
「大丈夫、力を抜いて。とっても安心するわよ?」
直美が体重を恭子の方に預けた。
恭子はさらに直美が愛しくなり、直美の背中を優しくさすった。
直美の呼吸は荒いままだったが、だんだんと落ち着きを取り戻しているようだった。
「どう? どんな気持ち?」
恭子が直美に尋ねる。
直美は熱い吐息と共に小さな声で答えた。
「あったかくて…気持ちいい…」
恭子はそう言った直美の顔を見る。
直美も視線に気づいたのか、こちらを見上げた。
潤んだ目と光る唇。少し開いた口からは舌が覗いた。
「あったかくて、気持ちよくて、ドキドキするのに、とっても落ち着くわね」
恭子は直美の唇に一度だけキスをすると、念を押すように繰り返した。
直美は恭子の言葉にしっかりと頷く。
恭子は今すぐに直美を自分のものにしたかったが、気持ちを理性でこらえ、体を離した。
直美は少し寂しそうな表情で、体勢を元に戻す。
「…さあ、寒くなっちゃうから、もう着ましょうか」
恭子は空気を変えるように言った。
寂しげな直美の瞳につい釣られそうになるが、いきなり刺激の強いことをするにはリスクが高すぎる。
少しずつ、少しずつ慣らす必要があるのだ。
(焦ったらダメよ、恭子)
恭子は心の中の自分に語りかけた。
確実に直美を手に入れたいなら、もう少しの辛抱。
この日、恭子は直美に服を着させると、自分もさっと服を着て催眠を解き、何事もなかったように直美を玄関まで送った。
※※※
それから数日間は、同じ催眠をかけ続けた。
服の脱衣着衣を繰り返し、徐々に全裸になることに慣れさせていった。
勉強が終わると、いつも同じようにベッドに上がり裸になる。
直美は照れているようだったが、自分で下着を外した。
どちらからともなく手を伸ばし、体温を確かめ合う。
「あったかいわね?」
「…うん」
「ドキドキする?」
「ドキドキする…」
直美の心臓の音は恭子も容易に聞き取ることができた。
自分で確認をさせるのは、催眠の効果を深めるためだ。
裸になるのを今まで何度も繰り返してきたが、まだ完全には慣れていないのだろう。
直美の体からは、緊張と期待が見て取れた。
恭子はそんな直美に優しくキスをした。
「ん……」
直美の鼻から小さな息が漏れる。
恭子は何回かついばむようなキスを繰り返すと、直美の唇に舌を差し込んだ。
直美はそれに拙い動きで応じる。
直美のぎこちない舌の動きが、恭子は愛しくてたまらなかった。
唇を離すと、直美の濡れた唇との間に一本の糸が引いた。
直美は潤んだ目でこちらを見ている。
恭子は直美の手を取ると、自分の胸に当てさせた。
直美は一瞬戸惑いを見せたが、やはり興奮するのだろう、恭子の胸を優しく撫で始めた。
直美が、自分の胸を触って興奮している。
その事実だけで恭子は嬉しくてたまらなかったが、平静を装い、直美に暗示をかけた。
「ん…私の肌、どう思う?」
直美は一瞬考え答えた。
「白くて、綺麗…」
「そうでしょ? それに、とってもすべすべなのよ」
「うん…」
直美は恭子の暗示通りに、恭子の胸を触りながら、感触を確かめるように指を動かした。
「キスしてみたら、もっとさらさらなのがわかるわよ?」
恭子はそう言うと、直美の唇を自分の親指でなぞった。
直美はそれでたまらなくなったように、恭子の肌に唇を近づける。
恭子が首を上向きにそらすと少し浮き出た喉に、直美が遠慮がちにキスをする。
「…ん、もっといろんなところにしていいのよ…?」
恭子がそう言うと、直美は唇を喉元から鎖骨にかけて滑らせた。
「っあ…そう、そんな感じ…」
直美はまるで唇で恭子を味わっているようだった。
最初は遠慮がちだった直美も、恭子の声を聞いて興奮してきたのか、恭子の肌に音を立てながらキスを繰り返した。
「ちゅ……ちゅぷっ……ちゅっちゅっ……」
「あっ……はぁ……」
いつの間にか直美は恭子の胸を揉んでいた。
恭子は直美に胸を揉まれキスをされ、自分の性器がじわっと熱くなっていくのを感じていた。
「…ん、あ、そこ…」
直美の指が恭子の乳首をかすめると、恭子は耐え切れなくなって、直美の胸に手を伸ばしてしまった。
(……だめっ! )
だが、そこで思い止まる。
こちらから刺激を与えてはいけない。
何度か直美のことを絶頂させたことがあるが、
それは服を着ていたからできたことで、
今、刺激を与えて、目を覚まさせてしまったら誤魔化しきれない。
……直美の好きなようにさせるしかない。
恭子が湧き上がる欲情を抑えている間に、直美は自分から恭子の乳首を触り始めた。
恭子の首筋を舐めながら、指先で乳首を転がす。
「ふ、ぅん…な、直美?」
恭子は動揺しつつも、漏れる声を抑えきれずにいた。
直美がしていることはいわゆる愛撫に近かった。
恭子は薄れゆく理性の中で、いい機会だと捉えていた。
このまま、直美に私の体を覚えさせよう。
「直美、そこ、舐めてみたらどう…?」
恭子は直美をじわじわと誘導する。
直美は首筋を舐めていた舌を、下へと動かした。
つつつ、と舌の位置が下がるにつれ、恭子はぞくぞくとした感触を背中に感じていた。
直美の左手は恭子の右の乳首を指でつまんでこりこりと動かしたままだ。
直美の舌が乳首に近づくにつれ、恭子は声を抑えきれなくなった。
「ぁ…ん…は、ぁあっ!」
恭子は直美に乳首を舐められ、首を反らした。
直美はそのまま恭子の胸に吸い付き、舌で乳首を転がしてくる。
恭子は動揺し、喘ぎ声を我慢することができなかった。
「んんんんんっ! ああっ! ああっ!
あっあっあんっ! んんっ、いぃっ……はぁはぁ……」
誠と別れたことで、直美の女性に対する気持ちのタガが外れてしまったのだろう。
恭子が勉強の後に繰り返し見せていた動画も直美に影響していた。
恭子はぼんやりと考えた。
直美が自ら恭子の身体を求め始めてきている。
これは恭子にとって好都合のほかならなかった。
恭子はぞくぞくとした感触に身を任せ、徐々に力を抜いていった。
そのまま直美が上になる形でベッドに倒れこむと、直美は胸への愛撫を激しくさせた。
「ぁあ…はぁんっ」
恭子は直美の頭を抱えて愛撫を受け入れていた。
そうして直美の心の赴くままに、恭子の身体を好きにさせ、
最後はベッドの上で抱き合ってゆっくりとキスをした。
しばらく抱き合って呼吸を整え、ふと時計を見ると二十時を回っている。
恭子は元の制服に着替えながら、遅くなってしまったことの言い訳を考えていた。
※※※
次の日の朝、二人は一緒に登校していた。
「も~キョウちゃん、勉強長くなるなら言ってよねー」
「ごめんごめん、なんか集中しちゃって」
集中しちゃってというのはあながち間違いではなかった。
時間を忘れて抱き合っていたので、時計を見ることすらしなかったのである。
「お夕飯の片付け全部あたしがやることになっちゃったんだから」
直美は恭子に文句を言っていたが、表情は大して怒っていないようだった。
親に連絡をしなかっただけで、
高校三年生の二十時は夕方みたいなものだったからだ。
その証拠に、直美は自分から恭子を誘った。
「ねえ、今日も勉強会やるでしょ? これから授業の予習もしちゃわない?」
催眠中のことを何も覚えていないのだろう、直美は成績が上がることを純粋に喜んでいた。
直美の成績はクラス平均より少し上になってきていた。
授業の復習が毎回完璧なのだから、当たり前のことだった。
「わかった、じゃあ今日も気合入れてやろっか?」
「わーい、またキョウちゃんと勉強できるー!」
直美の喜びに他意はなかったのだが、
恭子は自分の催眠が認められているようで嬉しかった。
もう少し、もう少ししたら直美を自分のものにできる。
恭子は前を飛び跳ねている直美を微笑んで見つめていた。