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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.4 【 直美の変化 】


それから恭子は、直美が家に来るたびに催眠遊戯に誘うようになった。


「一段…二段…あなたは心の中に降りていきます」


慣れた口調で直美に催眠をかけていく。
直美を自分のものにしたいと心に決めてから、恭子はすぐにある催眠をかけた。


「あなたはだんだん、催眠をかけられることが楽しくなってきます」


罪悪感は、もう捨てた。恭子はこう続けた。


「桐越くんより、私と一緒に催眠術で遊ぶ方が楽しくなってきます」


直美は昨日も誠と学校帰りにデートをしていた。
良くなっていくばかりの二人の仲を見ながら、恭子はいつも寂しさを感じていた。
行ってほしくない。私以外の人と、笑っていてほしくない。

誠といる時間が減れば、自然と自分といる時間が増えるだろう。
直美を自分のものにするには、まずは誠と直美の距離を離さなければならない。


「あなたは明日から桐越くんに嫌悪感を持つようになります」


直美の眉が一瞬、ぴくっと動いた。
恭子はどきっとして直美の表情を見たが、それ以上は動かない。


(かかった…?)


眠っているかのような直美のおでこを、前髪の上からふわっと撫でた。
染めてないのに少し明るい猫っ毛の髪。テニスの練習で焼けたのだろう。

どきどきする恭子の胸。この気持ちはなんだろう、どうしたんだろう。
直美を独占したい。私だけのものにしたい。
恭子はしばらくの間、直美の前髪を撫でていた。



※※※



「キョウちゃんおはよう!」


毎日乗る電車が一本違うのか、いつも直美は恭子の後ろから声をかけてくる。


「お、おはよう」


いきなり声をかけられたことと、
昨日のこともあり、恭子は一瞬ひるんでから挨拶を返した。
そんなことには気づかずに、直美はいつものとおり話題を振ってくる。


「あのさ、昨日のテレビがさー」


恭子はどこか上の空で相槌だけを繰り返した。


「あ、誠だ!」


びくっと反応する恭子。
誠〜と声をかけながら直美は誠に駆け寄っていった。
少し遠くから挨拶と、また昨日のテレビの話が聞こえてくる。


(あれ…?)


恭子は困惑を隠せずに二人を遠目で見る。


(催眠が、効いてない?)


昨日は確かに、直美に誠への嫌悪感を持たせるよう催眠をかけたはずだった。
しかし今の直美はいつもと変わらぬ表情で誠に接している。
いつもと変わらぬ、愛する人を見つめる眼で……


(ああ、直美は誠が「本当に好き」なんだ……)


このやり方では、強い気持ちを自由に変えることはできない。
恭子は少し考え、方法を変えることにした。



直美に不自然に思われないように、
あれから三日を空けて、恭子は直美を家に誘った。

恭子の暗示により、
以前よりも催眠術への依存度が高まっている直美は喜んでその誘いに乗ってきた。

今の直美には、誠と接するのと同じくらい、催眠術で遊ぶのが楽しいと感じられていた。





「今日はどんな催眠?」


直美はわくわくとした表情で恭子に尋ねる。


「こないだトマトジュースは克服したから、こんどはトマト丸かじりいっちゃう?」


恭子は直美にかけもしない催眠のことを笑顔で話した。
そのとき恭子の良心はチクリと痛んだが、すぐに理性がかき消した。


(これは、直美と一緒に居られるためのおまじないみたいなものよ。悪いことじゃないわ)


直美は自分からいつものようにベッドに上がった。
枕の方に頭を向けて横になると、ニヤニヤしながら目を瞑る。
恭子はいつものように直美に階段を下りる様子をイメージさせ、催眠をかけ始めた。



※※※



それから数ヶ月経ったある日、
直美は朝、いつものように一人で電車に乗っていた。

混んでいる反対車線とは対照的に、こちらの電車はいつも空いている。
直美はドアの近くの席に座る。優先席の反対側、一番端のお気に入りの席だ。
直美の家から学校までは一本で行けた。都会に近いここの三駅は十分もかからない。

いつものように深く席に座りぼーっとしていると、
少し腹にぜい肉のついた四十代のスーツ姿の男性が乗ってきた。
直美は特に気にもせず前を見てぼーっとしていたが、
男が直美の隣に座った時、少しだけ気温が上がったような気がした。

しばらくは前を向いていた直美だが、
なんだか隣の男が不潔に見えて不快になってきた。

男はいたって普通のサラリーマンに見えたが、直美にはなぜか隣から感じる微かな体温が、どうしようもなく不快に感じられたのだった。

直美は今まで気にしていなかった男性への不快感を特に気に留めず、自然な感じを装って席を立った。
幸い、電車は直美の学校の最寄駅に着いたところだった。



※※※



直美が学校につくと、ちょうど恭子が靴箱にローファーをしまうところだった。
恭子の靴箱は腰よりも低い位置にあり、
恭子はローファーを片手で持つと少しだけ上半身を傾けた。

直美は声をかけようとしたが、恭子のスカートが少し持ち上がり、いつもは見えない太ももの裏が見えたことがなぜか気になり、声をかけられないでいた。
ローファーをしまった恭子は、上履きに履き替えたと同時に直美に気づく。


「あ、おはよう。…どうしたの?」


恭子を見て立ち止まっている直美が不思議に見えたのだろう、恭子は直美に問いかけた。


「あ、ううん、なんでもない、おはよ」


直美は直美で、動揺している自分が不思議でたまらなかったのだが、
それを恭子に言う必要性も感じず、何事もないかのように振る舞った。


(どうしたんだろう、あたし)


直美は自分の変化を少し疑問に思ったが、恭子がすぐに先に行ってしまったので、後を追いかけて早足になるうちに疑問はどこかへ消えてしまっていた。



※※※



教室に入り、自分の席に着いた恭子は心の中で喜んでいた。
直美の変化は計画通り、少しずつだが恭子の思った通りになっているようだった。

恭子があの日からかけ始めた催眠は二つあった。


一つは、直美が男性に対して嫌悪感を抱くようになるという暗示。


誠一人に対しての嫌悪感が持てないなら、
男性という性別に嫌悪感を持つようになればいい。


もう一つは、女性に対して好意的な感情を持つようになるという暗示だった。


それが恭子に対してではなく、女性全般に対してとしたのは、
あくまでも男性への嫌悪感を相対的に上げるためであり、
女性への感情との差をつけることが目的だった。

それに、すでに恭子と遊ぶことを楽しいと感じるようにも暗示をかけているため、二重にかける必要はないのだ。

直美本人はまだ気づいていないが、
周りの女友達の中には以前の直美より打ち解けやすくなったと感じる者もいた。


しかし肝心の誠は幸運なことに、
中性的な顔立ちをしていたためなかなか効果が出なかった。

直美は周りの男子に対して少しずつ距離を置くようになったが、周りも誠に気を使って避けているのだろうと感じる程度で、さほど気にする者はいなかった。

恭子の狙いはじわじわと直美を変えていくことだった。
恭子は少しずつ手応えを感じていた。



※※※



今朝も直美はいつもと同じ電車に乗っていた。
最近は男性に、隣の席に座られないようにドアの近くに立つことが多くなった。

ふと隣に貼ってある広告を見る。
いつだったか、催眠術で虫を食べさせられていた女性タレントが薄着をしてポーズをとっている広告で、エステか何かの宣伝だとわかる。


(キレイな肌…やわらかそうだな)


最初はぼーっと広告を眺めていた直美だったが、
だんだんと自分がその女性タレントだけを見ていることに気がつき、
なんとなく恥ずかしくなって下に目を逸らした。

するとそこには髪の長い女性が座っていて、
十一月にも関わらずぴちっとしたショートパンツを履いていた。
直美はやはり気恥ずかしくなって、ドアにもたれ、視線を逸らした。

直美は自分の変化に戸惑ってはいたものの、この時はまだあまり深刻には考えていなかった。
[ 2017/08/16 19:46 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
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