その後、誠は度々一人で恭子の家に来ては、
直美の様子を報告して催眠をかけてもらい、帰って行った。
催眠の内容は、表向きはストレスの軽減がほとんどだったが、
実際には、恭子の計画が着々と進められていた。
まず恭子は、自分の前で誠を裸にさせることに取り組んだ。
今までは直美に裸体の男性の画像や射精映像を見せてきたが、目の前で誠本人がそのようなあられもない姿になり、それを見せつけながら悪い暗示をかければ、二人の距離を開かせることができるのではないか、と考えたのだ。
恭子は誠に催眠をかけては服を一枚脱がさせる、ということを数度にわたって繰り返した。
催眠は学校帰りに行われていたため、
誠はいつも制服姿で恭子の家を訪れていた。
家に入った時点でブレザーは脱ぐものなので、始めはワイシャツからになる。
「あなたは今旅行に来ています。そうね…季節は夏。夏の沖縄よ。周りはみんな半袖。長袖のワイシャツは暑いわね?」
誠が頷きながらネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを上から外していった。
「そうね、そのままシャツ姿になっちゃいましょう」
恭子は男性が服を脱ぐということに嫌悪感を持ち、目を逸らしながら言った。
誠はするりとワイシャツを脱ぐと、軽く畳んで床に置いた。
恭子は誠の半袖姿を見ると、少し首を傾げた。
普段なら感じるはずの嫌な感情を、あまり感じなかったからだ。
(あれ、こんなに白かったっけ?)
誠の腕は夏に見たときよりも日に焼けておらず、男性らしくない細さをしていた。
※※※
次の日にはさらにズボンまで脱がせた。
恭子は、襲われかけたあの日に見た制服の下だけを下ろした男子の姿が重なり、なかなか目を向けられなかったが、ちらりと見てみて、驚いた。
誠の脚は腕と同様に白く、しかもムダ毛が極端に薄かったのだ。
太ももの男性らしい筋肉のつき方はあったものの、細い足首などは女性のそれとほとんど同じだった。
次の週も同様に誠はシャツと下着姿になっていた。
恭子はその時点で震えるほどに嫌悪を感じていたが、同時に他の問題にも気付き始めていた。
誠の体が、思っていたほど男性的ではなかったからだ。
でもまだだ。その下着の中には、グロテスクな性器が隠れているに違いない。
恭子は、あの日見た、いきり立った性器を想像してしまい、目の前でシャツを脱いでいる誠から顔を逸らした。
(やっぱりダメ……でも、直美を手に入れるためよ)
恭子は下着姿の誠を見て、動揺した。
シャツの下には、シミひとつない白い肌が広がっていた。乳首すらも色素が薄く、まるで飾りのように付いていた。
(まさか)
恭子の中で、複雑な思いが大きくなっていく。
「あなたは今脱衣所にいて、これから銭湯に入ろうとしています。下着のままでは入れませんね?…脱いでしまいましょうか」
恭子はトラウマの恐怖から、顔を背けていた。
誠が下着をゆっくり脱ぎ、足元に置いた音が聞こえた。
そろり、と誠の方に向き直る。
唖然とした。
誠の男性器は、肌同様に白く、親指ほどの小ささで、
いつも直美に見せているような逞しい男性の性器とは、まるで正反対だった。
中学校から今に至るまで、直美とキス以上の関係を持たなかったのは、もしかすると催眠の効果だけではなく、その小さな性器をコンプレックスに感じていて、直美に見せることができなかったからではないか?
恭子は誠の体を見て、少なからずショックを受けていた。
これでは、今までの催眠は逆効果ではないか。
おそらく直美は誠の体を見たら、ネット上の男たちとは違って、嫌悪感を抱かないだろう。
むしろ、嫌悪感を抱かない唯一の男性として誠こそが自分が望んだ相手だと思う可能性すらある。
(どこまで手強いのかしら…桐越 誠)
恭子はショックを受けたが、すぐに考え直した。
(大丈夫、問題ないわ。時間はかかるかもしれないけど、また一から催眠をかけ直せば良いだけ。
いくら小さくて男性器っぽくない形をしていたとしても、精子を出すのは一緒よ。
直美には精子を通して誠に嫌悪感を抱いてもらうことにするわ)
恭子は誠に直美の前で射精をさせ、直美に嫌悪感を持たせるという計画を続けることにした。
これ以降恭子は、直美に男性の全裸画像を見せる際は、中性的で比較的性器の小さい人を選んで暗示をかけるようになった。