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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.1 【 直美と恭子 】

なろう挿絵-黒百合


いつもの教室の、よくあるお昼休みの光景。
屈託のない笑顔で、猫っ毛ショートカットの女の子が、対面の黒髪ロングの女の子と食事をしていた。

今年で高校一年生になったばかりの二人は、所謂親友の仲だった。



声をかけられた黒髪ロングの女の子、
少々幸が薄そうな雰囲気をしているが、
ひと目で美人と評される彼女の名は甘髪恭子(あまがみきょうこ)という。


恭子は美術部所属で、
人物画を描いたり服飾デザインを考えたりするのが得意な子であった。

その美貌と御淑やかな身の振るまいから、
とりわけ異性にモテており、校外でも噂になるほどだ。

しかし、幼い頃からチヤホヤされて育ったせいか、
異性にあまり興味がなく、告白をされても無下に断ってしまうため、
女子と一部の男子から反感を買っていた。

本人は至って悪気はないのだが、見た目の上品な様とは裏腹に、
オブラートに包まず端的に物を言う性格であったため、誤解を受けやすいタイプであった。



もう一方の少し落ち着きのない猫っ毛ショートカットの女の子、
明るくクリクリっとした目が特徴的で、
どちらかというと可愛いに分類される彼女の名は藤崎直美(ふじさきなおみ)という。


直美はテニス部所属で、スポーツ万能、明るく楽天的な性格で、
いつも笑顔で愛くるしい様は、周りにいる人たちを元気にさせる力があった。

だが、あまり物事をよく考えず、大胆すぎるその様は、少々女性らしさに欠け、
同年代の女子からも、もっと女らしくしなさいと冗談交じりにたしなめられるほどであった。



※※※



こんな二人の仲が始まったのは、今から1年前の夏。
恭子に振られた男子が、腹いせに恭子を襲おうとしたことがきっかけである。

その日、直美は副部長になったばかりのテニス部からの帰りで、
なんとなく普段は行かない男子更衣室の前を通って帰ろうとしていた。


(帰りにスーパーに寄ってアイスでも買って帰ろうかなあ)


平和なことを考えながら男子更衣室のある通路へ曲がると、
モゴモゴと押し殺された小さな女性の声が聞こえてきた。

不審に思って更衣室に近づき耳をそばだててみると、小さくだが確かに何かに抵抗する声だとわかる。

考える間も無く体が動いていた。
更衣室の鍵は古く、外れかけていたのが幸いして、簡単に壊すことができた。


「……! なにやってんのよ!」


中には目を丸くした男子が一人と、
こちらは名前を知っている、同学年の美人で有名な“甘髪恭子”だ。

恭子は男子に押さえつけられており、
誰が見ても今から襲われるという状態だった。

状況を理解した直美は、護身術として習っていた合気道をこれでもかと披露し、
か弱そうな恭子だけ押さえつければいいと甘くみていた男子は、去り際に舌打ちをして逃げていった。

直美は息を整えながら、泣きそうな恭子に振り向き


「自分には必要ないと思ってたけど、こんなとこで役に立つとはね、合気道」


と笑ってつぶやいた。
恭子はそこでホッとしたのか、一気に泣き出してしまった。


「……ありがとう……」


これは恭子にしかわからないことだが、
辛い時に誰かに助けてもらえたのは、恭子の人生においてこれが初めての出来事だった。



※※※



恭子は幼い頃から男子にモテてはいたが、
その見た目から、他の女子の虐めや嫉妬の対象となり易く、
また不器用な性格でもあったため、自ら男子に助けを求めようとはしなかった。


他の女子に嫌がらせをされていても周りは見て見ぬふり、
たまに男子で恭子の味方をしてくれるものもいたが、ほとんどは下心があり、
恭子がそれを頑なに拒否すると、途端に態度を翻すような輩ばかりであった。


真に恭子のことを案じ身を挺して助けてくれる者など、誰一人としていなかったのだ。



上品で物静かな恭子、活発で楽天的な直美、
そんな正反対な二人が仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。



※※※



「直美…あなたほんとファッションセンスないわよね」


ある昼休みのこと、恭子が直美に対して冗談交じりに言った。


「えーひどい!」


先日買った、微妙な丈の靴下を恭子に嬉々として披露したところ、
思わぬ返り討ちにあいショックを受ける直美。


「だって、その柄はないでしょ…えっと、うさぎ?」

「くまだよ!」


直美の靴下には妙に耳の長いくまの絵柄がワンポイントとして刺繍されている。


「……明日、桐越君とのデートに着ていく服は決まったの?」

「うーんそれが、なかなか決まらないんだよね」



※※※



直美には桐越誠(きりごえまこと)という恋人がいた。
彼はいわゆる中性的なイケメンタイプで、成績も優秀、困っている人を放っておけない優しい性格で女子からの評判もよかった。

父を幼い頃に亡くし、母子家庭で育った誠は、
母親思いで、よく家事を手伝っていたため料理や掃除も得意で、
少しだらしない直美とは対照的であった。

二人の出会いは、直美の弟がデパートで迷子になった際に、
誠が泣きじゃくる弟を、迷子センターまで連れてきてくれたことがきっかけだった。

その後、二人はすぐに意気投合し、
中学二年に上がる頃にはどちらからともなく付き合い始めていた。

あまりにも仲睦まじい二人の様子は、
周りからはオシドリ夫婦と揶揄されるほどであった。


そういう時、誠は照れたり恥ずかしがったりするのだが、
直美はからかわれていることにも気付かず、


「聞いた!? オシドリ夫婦だって! 
高校卒業したら結婚しようねっ! マ・コ・ト♡」


などと皆の前で言うもので、誠はあまりの恥ずかしさに卒倒しかけてしまった。


そんな二人であったが、デートは毎週欠かさずしており、
いつも手をつなぎ、お似合いのカップルであった。



※※※



直美はそんな誠のためにも女性らしくありたいと、
いつも恭子を見本にしてコーディネートを真似していたのだが、
これまでうまくいった試しはなかった。


「そうだキョウちゃん、明日キョウちゃん家、行ってもいい?」


直美の突然の誘いに思わずドキッとした恭子は、動揺を隠しながら頷いた。


「やった、これでキョウちゃんの服を貸してもらえる♪」

「ちょっと直美、勝手に決めないでよ」


恭子は口ではきつく言いながら、
昨日の夜、部屋を綺麗に掃除しておいたことに安堵していた。

直美に汚い部屋は見せたくない。


その気持ちがどこからくるものなのかは、まだ恭子にはわからなかった。
[ 2017/08/16 15:55 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
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