2ntブログ

霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.3 【 恭子の決意 】


時刻は午後二時、
日は高く昇り、恭子の部屋の窓からもさんさんと光が入っていた。

そんな健全な天気の中、
恭子はパソコンでインターネットを開き、熱心に何かを調べていた。


この日、恭子は直美の服をコーディネートしてデートに送り出してから、
今までずっとパソコンに向かっていた。

何時間も画面ばかりを見ていたからか、
さすがに目の奥がじんじんとしてきたので、
ぐーっと腕を上げ背伸びをすると一気に息を吐き全身の力を抜いた。


「はぁー、つかれた」


床に引いてあるパステルピンクの絨毯に座ったままベッドに寄りかかった恭子は、ぼんやりと今日あったことを考えていた。


(催眠術、すごかったなあ……)


午前中にデートに出かけてしまった直美は、
どうやら何も覚えていないようだったが、
恭子の頭には催眠にかかった直美の姿がしっかりと残っていた。

それに加えて恭子の中には、なにか大変なことをしてしまったような気持ちと、面白いことを成し遂げたような手応えがあった。
催眠の効果に驚き、喜びを表したのは直美の方だったが、
一方で、恭子の方も驚きを隠せずにいた。

そして、もっと催眠術について知りたいと強く思ったのだった。


(でも調べても曖昧なことしか載ってないんだよなあ……)


恭子は静かにため息をつく。
三時間ほどインターネットで催眠術について調べ、
得た情報は大きくまとめると一つだけだった。

催眠術は、相手を何でも自分の思い通りにできるわけではないということ。

しかし、ある程度の年月をかければ、
本人の元の性格・性質に影響を与える事ができるというものだった。

直美は大嫌いと言っていたが、トマトジュースをすべて飲み干せたのも、
直美がトマトを「少しだけ苦手」だったかららしい。

これがトマトを「本当に嫌い」だったなら、
それを変えるのには何年もかかっただろう。


(これはこの催眠術がどれほどのものか試してみる必要があるわね)


そう考えると恭子はパソコンの電源を落とし、時計を見た。午後三時。

直美はちゃんとパンケーキ屋さんまでいけたかしら。
あそこはバターの追加ができること、言っておけばよかったかな。

パンケーキと並ぶほど、
今の恭子にとって催眠術は軽い遊び程度のものでしかなかった。



※※※



次の日、恭子が学校に着いて教室へ向かい階段を上っていると、後ろからとん、と押され振り返った。


「キョウちゃん、おはよ!」


後ろから声をかけてきた直美は今日も元気そうで、なにやらニコニコしている。


「月曜の朝だっていうのに元気ねー。なに、パンケーキがそんなにおいしかった?」

「そうなのー! バターまで追加できて、すっごい親切な店員さんだった!」


恭子は適当に言った冗談が当たったので、平和だなあと感じていると、直美は急になにか企んでいるような顔つきになり小声で恭子に言った。


「ねえ、昨日あたしが帰った後、催眠術について調べたでしょ」


恭子は内心ぎくりとなったが、別に隠すことでもないだろうと思い直し、


「調べたけど、どうしたの?」


と聞くと、直美はそんな恭子の様子に気づくこともなく続けた。


「あたしかけられるの気に入っちゃったからさ、
また今日もキョウちゃん家でやろうよ!」

「えーまたー?」


催眠術を早く試したい恭子にとっては願っても無い誘いだったが、
それを悟られないため冗談っぽく言った。


「いいじゃんいいじゃん! 決まりね、帰り一緒に帰ろ」


直美は半ば強引に言うと、恭子を追い越して先に教室へ行ってしまった。



※※※



それから何度か二人は催眠術で遊び、直美は催眠術にかかる時の不思議な感じに、恭子は純粋に催眠術の面白さにはまっていった。
たびたび失敗を繰り返したが、恭子はその度にこの催眠術について熟知していった。

その中でわかったことが二つある。

一つ目は無理な暗示をすると脳が覚醒し、催眠状態が解けてしまうということ。
これは恭子が直美に


「あなたは私に…キスをしたくなりまーす!」


とふざけた口調で言ったとき、
直美が少し考え込んだ後、目を覚ましてしまったことでわかった。

目を覚ました直美は笑いを堪えられず、「なにそれー」と言った。

実はそれは恭子にとってあまり冗談ではなかったため、
保険をかけたふざけた口調に、直美が笑ってくれたことに心から安堵していた。

もしそれが冗談として捉えられなかったら…
恭子は自分が安堵している理由がわからなかったが、
とりあえずその場をしのげたことにホッと息をついた。

ここでわかった通り、
二つ目は催眠途中で目が覚めると、前後の記憶が少し残るということだった。



※※※



ある日、いつものように催眠術で遊んでいると、恭子はあることに気がついた。
それは、自分の心の変化だった。

恭子はこれまでずっと、孤独で寂しさを抱えていた。
恭子の家庭はとても裕福だったが、
両親はいつも出張などで家を空けることが多かった。

その上、恭子は小さい頃から色々と習い事をしてきたが、
両親は恭子をあまり褒めたことがなかった。

上手くできれば、出来て当たり前、
上手くできなければ、なぜ出来ないのかと厳しく叱られ、
時に感情をぶつける事もあったが、
両親共に基本、自分のことにしか興味のない性格で、
恭子と一度でもまともに向き合おうとはしてこなかった。

どちらも、娘をステータスの一部にしか考えていなかったのだ。

そのような育てられ方をされた恭子は、他者への承認欲求が高くなり、
同時に他人に対して厳しく接するようになり、
結果として孤独を感じることが多くなっていった。


それがどうしたんだろう。


恭子はいつものようにベッドに横になり自分に身を任せている直美を見て考えた。
ここにいる直美は私を信用して、目を閉じている。


私を認め、受け入れてくれている。
そう考えると、長年の寂しさが嘘のように和らいでいくのを感じた。

友達として大好きな直美、自分を信用してくれている直美、
その直美を催眠によって自由に変えられるのなら、
それは、世界で一人だけ、絶対に自分を裏切らない、
最高のパートナーを得ることになるのでは?

恭子は確かに美人だが、
美人すぎるゆえにいつも女子の間では悪い噂が立ち、友達は少ない。

反対に恭子のことを気になっている男子は何人もいるが、
恭子の男子への人当たりの悪さから、気に入らないと思っている男子も少なくない。

過去に襲われかけた経験から、
恭子のガードは堅く、男子への警戒が強いことで有名だった。

両親も不仲で恭子のことを気にかける様子もなく、親戚ともあまり仲はよくない。

恭子のまわりにいる人の中でただ一人、心を許せる人は直美だけ。
その直美もいずれは恋人と結婚して、恭子から離れていってしまうだろう。


(いつかはひとりぼっちになる)


恭子はいつもそう考えていた。

自分が今しようとしていることが間違っているのはわかっている。

でも親友として大好きな直美と、いつまでも一緒にいられたら?


(やろう)


恭子はそう心に決めた。
[ 2017/08/16 19:21 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する