2ntブログ

霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.18 【 直美の勘 】


「ごめん、誠。あたし、二人の関係を見つめ直したいの……」



夏休みも終わりに差しかかる頃、
学校のすぐ近くの公園で、誠は直美から、別れ話を切り出されていた。

なんとなく予想はしていた。

二人の関係を元に戻そうと、今まで幾度となく直美と接しようとしてきた。
恭子にも協力してもらい、原因解明に努めていたが、結局この事態を避けることはできなかった。

誠は最初、背筋が凍る思いで直美の第一声を受け止めたが、
この雰囲気に呑まれてはならないと、懸命に心を落ち着かせ、直美の目を見据えながらゆっくりと口を開いた。


「最近一緒にいてくれなくなったから、何かあると思ってたよ。
せめて、理由だけでも教えて欲しい……
何が原因かわからなければ、こっちだって納得できないよ」


至極当然の言葉を、直美に投げかける。

普段は伝えられないことでも、
別れ話を切り出すほどの覚悟を持ってきているのであれば、理由を話すはずだ。

直美が理由を明かした後、もし可能であればこの場で問題を解決し、
難しいようであれば、一旦この場は保留にして、恭子に協力してもらい解決策を見つけることにしよう。

誠はそう考えながら、
俯き口を閉じてじっと地面を眺めている直美が口を開くのを待った。

公園の草むらでは、鈴虫が鳴いている。
鈴虫が鳴くのは、雄が雌へと求愛するためのものだ。

今の二人を包む雰囲気とは、なんとも真逆な音を鳴らしていた。

直美はしばらく何かを考えていたようだったが、意を決して話し始めた。


「ごめんね、誠。これだけは信じて……
あたしも、何が原因なのか全然わからないの……
このまま一緒にいたら、
どんどん誠のこと嫌いになっちゃいそうな気がして……
だから、これ以上嫌いになる前に、離れておこうと思ったの……」


誠にとっては、予想外の答えだった。
まさかこんな状況でも何も話してくれないなんて……
暗い気持ちが誠の心を包んだ。


「くっ……どうして………そんなんじゃわからないよ!」


直美は再び口を閉じてしまった。
しばらく二人の間には気まずい沈黙が続いた。


(……)


誠は気を取り直すと、再び直美を見つめ、静かに話し始めた。


「……直美……愛してる。

二人の未来を作りたい。
結婚して、子供を作って、家族団欒で楽しい家庭を作りたい。
おじいちゃんおばあちゃんになっても仲良しで、最後まで一緒に暮らしたい。

何が原因なのか二人で探していこうよ。
二人で力を合わせればきっと見つかるはず、もう一度二人で頑張っていこう」


誠らしい台詞だった。
直美のことは決して責めず、
あくまで前向きに、自分の気持ちを伝え、幸せな未来を思い描かせた。

誠の気持ちが直美に伝わったのか、
直美は顔を赤くし、目には涙を浮かべ始めていた。
震える嘆息を漏らし、必死で言葉を紡ぎながら直美は声を発した。


「うぅぅ……ひっく……ごめん……ごめんなさい……
でも…でもこれが……ぐすっ

二人にとって……これが一番良い結果につながるって……
あたしの中で何かが……強く告げているの……

信じてもらえないかもしれないけど……本当なの!」


直美はそういうと泣きだしてしまった。

誠は直美のそんな様子を見て、嘘をついていないと感じた。
長年一緒にいた仲だ。
直美の性格はよく知っていたし、
こういう時、決して口から出まかせを言うような女性ではない。

原因が何なのかはわからない。
以前恭子が、直美は宇宙人に攫われて洗脳されてしまったのではないかと、
冗談で言ったことがあったが、今はそれを信じてしまいそうになるくらいだ。

昔から直美の勘はよく当たっていた。
守護霊だとかのアニミズム的なものを、誠はあまり信じてはいなかったが、
直美はこういう時、何かに取り憑かれたかのように正しい道を選ぶのだ。



※※※



中学校の時、直美の弟のユウが迷子になった時だってそうだった。

誠は学校の帰り道、デパートの入口で泣いているユウを見かけて、
中の迷子センターまで連れて行ったのだが、
ユウはたまたまデパートの前にいただけで、実際は別のところから歩いてきていたのだ。

にも関わらず、直美は数ある建物の中から、そのデパートを選んで、
誠と一緒に待っているユウを見つけた。

あとから直美にどうしてあの場所がわかったのか聞いてみたのだが、


「よくわからないんだけど、
何かがあたしに『ここだよ! 』って教えてくれた感じだったかな?
たまにそういうことあるんだよねー!」と、あっけらかんと答えていた。


そういうことがあったのもあり、誠は直美の勘を信じていた。
理屈はわからなかったが、今はあまりその勘に逆らわない方が良い、と感じていた。


「わかった……直美。信じるよ……
でも最後に、もう一度だけ抱きしめさせて欲しい」


それを聞いて、直美は誠に抱きしめられるのをひどく嫌悪した。

本当に訳がわからなかった。
どうしてこんな場面でも嫌な気持ちが芽生えるのだろう?

直美は一度は拒否しようと思った。
しかし、これが最後かもしれないという思いが、直美の背中を後押しした。


「いいよ……誠……このまま抱きしめて……」


誠は直美を抱きしめた。
とても優しくゆっくりと……
鼻腔に直美の匂いが広がる。
直美と抱き合うのはとても久しぶりだった。
懐かしさと安心感が心を包む。

しかし同時に、これが最後だという思いが、誠の心をきつく締め上げた。
目頭が熱くなるのを感じ、誠はぐっと目を閉じた。

直美の方は誠に抱きしめられる不快感と、
決して離してはならない存在への言い知れぬ思いを感じていた。

こんなに悲しいのは、今でも誠のことを心のどこかで愛しているからなのだろう。

直美の頬を再び大粒の涙が伝う。
抗えない力に押されるかのように、この道を選んでしまった直美。
しかし、薄暗く沈んだ心に、なぜか微かな光が灯っているような気がしていた。


(ううん、これが最後なんかじゃない……
いつかきっと一緒になれる……そんな気がする)


やがて、二人は身を離し、お互いの幸せを願って別れた。



※※※



二人がいなくなった後、死角となった物陰に一人の女性の姿があった。
髪の長い黒髪の女性は、己のしてしまった罪の重さをひしひしと感じていた。
身体は微かに震え、顔を俯かせている。

しかし目は鋭く研ぎ澄まされ、決して後戻りのできない思いを胸に秘めていた。
しばらく女性はその場所に佇んだ後、静かにその場を立ち去った。



※※※



直美と誠が別れて数日後。


誠は以前と変わらず恭子の家を訪れていた。
直美と別れた誠のショックは大きく、思いの丈を恭子にぶつけていた。

以前と違い、恭子は誠に真面目に向き合っていた。
今まで直美一筋できた恭子としては大きな変化であった。
誠の悩みを聞きつつも、恭子は今までのことを思い返していた。

恭子は悪人としての自覚があった。

己のエゴのために二人の仲を引き裂き、心をズタズタにしてしまった。
決して許されることではない。
二人の本来の性質を歪め、自らの望むように操作した。
もしも贖罪を願うのなら、それこそ一生をかけて償わなければならないことだ。

直美も誠もどちらも優しすぎるくらいの善人だ。
人を信じ、困っている人がいたら助け合う。
だからこそ催眠術にかかりやすいのだろう。

こんな二人を騙し、好きなように操るなど悪魔の所業である。
2年前、初めて直美に催眠をかけた時に、恭子は覚悟していた。
もし成功すれば、こうなることも、
自分が今のような気持ちになることも全て予測していたのだ。


恭子の記憶はさらに遡る。


恭子は自分のことを大切にしてくれる人がいつか現れるなどとは考えなかった。
血のつながった実の両親にも大切にされてこなかったのだ。
周りに信じられる人もおらず、そのような希望は自らの心を傷つけるのみで、
むしろ邪魔なものでしかないと考えていた。
気持ちが常にモヤモヤとうごめき、視界もぼんやりと生きてきた。

そんな閉塞的な心の檻に突如現れた光、それが直美だった。

直美と一緒にいると心が落ち着いた。
視界もクリアーになり、生きているという実感が湧いた。
直美とキスをして、初めて心の底から幸せと思えた。

同時に手に入るはずのなかった光を手に入れ、
逆にそれを失う恐怖が恭子を包んでいた。
恭子にとって、直美を失うことは既に人生の死を意味していたのだ。

だからこそ、直美と誠の別れ話の現場にいても、
恭子は一度手に入れた光を決して離そうとは思わなかった。
罪は償おう、だがそれは今ではない。
確実にその光を手にしてから………


恭子はその日、相談にきた誠に、いつもと同じように催眠術をかけ家に帰した。



※※※



恭子が誠の心を女性化させる催眠を始めて数週間が経過していた。

誠は自身の変化を少なからず感じていた。
最近、制服姿の女子が可愛く思えてきたのだ。
一見すると年頃の男性には当たり前のことだが、誠の感情はそういったものではなかった。

学校で見る女子の「制服」が可愛く思えてきたのだ。

誠は学校から帰ると、制服のままベッドに上がり、スマホをいじる。
調べることはここ最近決まっていた。

『制服 女装』

検索窓にそう打ち込み、出てきた画像をなんとなくスクロールしていた。
セーラー服、ブレザー、そこにはいろいろな体格の男性が、
様々な制服を着て写っている画像が並んでいた。

中にはどこから見ても女性にしか見えない画像もあったが、
多くはすぐに男性とわかるような画像で、誠はそのままスクロールして綺麗な女装の画像を探していった。


(なにをやってるんだ、僕…)


ハッとした誠はそう思うと、スマホをテーブルに置いた。
シャワーでも浴びて、すっきりしよう。頭の中のもやもやも晴れるかもしれない。
誠は風呂場へ向かい、脱衣場で服を脱ぐ。

ふと、鏡に映った自分の姿が見えた。
毎日見てきたはずの全裸の自分。なんとなく、自分の性器に目をやる。

小さくて、白い。
感想はいつも感じるものと変わらなかったが、今日は少し違っていた。
なんだか、目が離せなくなる。

そのうちに誠はある変化に気づいた。
徐々に性器に血液が集まり始め、硬く勃起を始めたのだ。

誠は動揺していた。

どういうことだ。自分の性器を見て、今、自分は興奮している。
心臓の音が速くなる。誠はおもむろに性器に手を伸ばしてみた。
触れるか触れないかのところで、手を止める。


(…何を考えているんだ)


自分は今、確かに自慰をしようとしていた。
誠は考えていたことを振り払うように頭を振った。
誠はその状態のまま、シャワーを浴びた。
振り払おうとした考えは、頭の中をぐるぐる回っていた。
思えば画像検索した時から薄々気づいていた。

ありえない、男性器が気になるなんて。

誠は考えを打ち消すようにがしがしと頭を洗った。
[ 2017/09/21 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する