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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.7 【 誠 】


三人は高校二年に上がり、夏が来た。


恭子の催眠は依然として続き、直美の性嗜好もじわじわと変わっていった。
特に恭子の催眠による直美の男嫌いは顕著になっていた。

直美は電車で隣に男性が座るなんてもってのほか、クラスの男子のことも極力避けるようにしていた。

男性は臭くて汚くて気持ちの悪い生き物だという恭子の催眠が心の奥深くに根付いているのだろう。

恭子は、段々と自分の思い通りに変わっていく直美のことを毎日観察し、より好きになっていった。

しかしまだひとつだけ、恭子の思い通りにいかないことがあった。


「直美、帰る準備できた?」


帰りのホームルームが終わると、しばらくして誠が直美を教室まで迎えに来た。


「あ、うん、ちょっと待って」


直美は急いで教科書をリュックに入れる。
恭子はそんな二人を冷めた目で見ていた。

そう、二人の絆は恭子が予想していたよりも強く、未だに二人の関係を壊せずにいたのだ。


(なにか他の手を考えなきゃ…)


「あ、キョウちゃんも一緒に帰る?」


直美は恭子の方へ振り返り言った。


「あ、うん、じゃあそうしようかな」


なにか二人の仲を崩せる良いきっかけがあるかもしれない。
恭子がそんなことを考えているとは想像もつかない直美は、喜んで誠に報告しに行った。



※※※



「ごめんね、なんか邪魔しちゃって」


恭子は誠に謝った。


「いいよいいよ、人が多い方が楽しいし」


三人で歩く帰り道、話は自然と催眠術の話題へと変わっていった。


「それでね、恭子がわたしのトマト嫌いを治してくれたの!」

「へえ、それはすごいな、甘髪さん、催眠術なんてできるの?」

「ええ、まあ……ちょっとだけね」


そこで恭子はあることを思いついた。
直美だけに催眠をかけてもこれ以上の効果は期待できない。
なら、誠にもかけてみるのはどうだろうか?


「ねえ直美」

「ん?」


恭子は隣を歩く直美の耳元に口を近づけて小さな声である提案をした。


「…おもしろいかも!」


その提案に乗った直美は誠に言う。


「ねえ、今度キョウちゃん家で三人でお茶しない?」



※※※



「おじゃましまーす…」


誠は直美以外の女子の部屋に入るのは初めてなのか、
緊張した様子で恭子の部屋に入ってきた。

この日は休日、
直美と誠は、恭子の家でお茶をした後、正午からデートに出かける予定だった。


「もー緊張しないでいいよ、あたしの部屋みたいなもんだし?」

「なによそれー」


恭子が直美に提案したのは、誠にも催眠術をかけてみないかということだった。
誠のことが好きな直美は三人で遊べることを喜んで了承し、今に至る。


「じゃあまず直美に催眠術をかけてみるね」

「えっ? あたしにかけるの!?」

「最初は桐越くんに興味持ってもらわなきゃ。お手本よ」

「ぶー……わかった」


直美は人前で催眠状態を見せるのが恥ずかしいのか、
少し渋りながらも恭子の言うとおりにする。
いそいそとベッドに上がり薄いタオルケットの上に横になる直美。


「変な顔してたらすぐ起こしてよ?」

「はいはい」


恭子はそう言うといつものように催眠をかけ始めた。


「では目を閉じて、リラックスしてください」


目を閉じる直美をベッドの横に座った誠が見守る。


「あなたは今とっても心地の良い場所にいて、階段を降りています」


直美は何度も聞いた、恭子は何度も言ったセリフを、はじめて誠の前で披露する。


「一段…二段…だんだんあなたは心の中に降りていきます」


誠はときおり恭子の顔を見ては、直美に視線を戻す動作を繰り返していた。


「はい、今直美は催眠状態になりました。そこで桐越くん」

「え、僕?」


直美の安心しきった顔を興味深く見ていた誠は、
突然恭子に話を振られ、驚いて恭子を見た。


「そう。なにか最近直美のことで悩んでることはない?」

「悩み?」


誠は腕を組んで考える仕草をした。


「直美との仲はうまくいっているし……
しかも最近はなんだか一途に思ってくれているみたいで嬉しいくらい……あ」

「なにかあった?」


誠はなにか思い出したように腕組みをやめて恭子に向き直った。


「恥ずかしい話なんだけど……もう僕ら付き合って結構経つんだけど、
最初の頃より好きって言ってくれなくなったかも」


誠は少し顔を赤らめながら言うと、頭をポリ、とかいた。
恭子は男子高校生からそんな女子のような悩みが出てくるとは思わなかったので、少し拍子抜けしながらも、顔には出さずにこう言った。


「わかりました。
じゃあ本当は直美が桐越くんのことをどう思っているか、催眠で聞いてみるわね」


恭子は再び直美の方を向くと、催眠を続けた。


「ゆっくり体を起こして、目を開けてください」


直美は言われた通りにゆっくり体を起こすと目を開けた。


「あなたは桐越くんのこと、どう思っていますか?」


恭子が尋ねると、少しの間、誠を見て


「愛し…ています」

と言った。


それを聞いた誠は途端に顔を真っ赤にして、


「…ありがとう、直美」

と言った。


恭子は胸がちくりと痛んだが表情を変えずに誠に向き直った。


「どう?」


誠はハッと我に帰ると、そこに恭子がいたことを今思い出したかのように言った。


「あ、甘髪さん、すごいね、催眠って」


恭子はそれを聞くと直美の方を向いて、いつもの通り催眠を解いた。


「おはよう、直美」


誠はまだ催眠が解けたばかりでぼんやりとしている直美の手を取って言った。


「…へ? あ、そっかあたし催眠を……」


直美はそこまで言ってから恭子に向かって言う。


「あ! どうだった? どんな催眠かけたの!?」

「…ふふ、秘密」

「え〜!!」


そんなやりとりを見て笑う誠に、恭子はさも今思いついたかのように提案した。


「どう、桐越くんも催眠かかってみない?」

「そうだよ! やろうよ!」


普段の催眠の内容を知らない直美は、誠に催眠を勧める。
恭子は少し考えてこう言った。


「そうね……桐越くんは心と体が安らぐような催眠をかけましょうか。
直美も見てるから、変な催眠はかけられないしね」


恭子は冗談らしくそう言うと誠の様子を伺った。


「うーん…じゃあ、お願いしようかな」

「じゃあ、そのままベッドに寄っかかってくれる?」


恭子は、誠のことを男として見ていたのでベッドの上には上がらせなかった。

恭子の一番の目的は、誠の催眠耐性を探ることだった。

もし直美と違って催眠にかかりにくい体質だった場合、
この計画は練り直さなければならない。

だがそれは恭子の杞憂にすぎなかった。
直美ほどではないが、誠も催眠にかかりやすい体質だったからだ。


「目が覚めた?」


恭子の宣言通り心と体が休まる催眠をかけられた誠は、ゆっくりと目を開けた。


「どう?」


直美は心配そうに誠の顔を覗き込む。


「ああ…なんかすっきりしたよ。体が軽い、リラックスできたみたい」


誠は片手で自分の肩を持って腕を回す。
恭子の計画通り、誠は催眠に対して好印象を持ったようだった。


「あ、もう十一時だ、そろそろ行かなきゃ」


直美は時計を見て思い出したように言った。
玄関に出て恭子は二人を見送る。


「また二人で遊びにおいでよ」

「うん! またくるね」


直美はそう言うと、誠と手をつないでデートに行ってしまった。

それを見た恭子は笑って振り終えた手を下ろし、きつく握りしめる。

(本来そこにいるべきは私なのに。愛していますって?)

(…落ち着いて、焦ったらだめよ。まずは桐越くんを、催眠で変える)

恭子は新しい計画を立てていた。



※※※



それから何回か、恭子は二人に催眠をかける機会を得た。

睡眠時によく眠れるようになる催眠、
スポーツで自分の力を最大限に発揮できる催眠など、
恭子は生活の手助けとなるような催眠を二人にかけた。

すぐにでも計画を行動に移したい恭子だったが、
自分の嫉妬心や焦りを落ち着かせ、二人を完全に信用させることに努めた。



そしてある日、恭子は行動に出た。


「ねえ、今度は二人一緒に催眠をかけてみない?」


場所はいつもの恭子の部屋、三人で集まった時のことだった。


「二人一緒?」

「そう、別々にやっていると時間がかかるのよ。今日は学校帰りでしょ、お夕飯もつくらなきゃいけないし…」


直美はいつも恭子に催眠をかけてもらっているので、特に考えもせずに頷いた。


「桐越くんは?」

「ああ、大丈夫だよ」


普通なら警戒するところだが、恭子が直美の親友であること、
直美が普段から催眠を受けているが、何も悪い影響がないこともあり、
疑う心配はないと誠は判断した。

ふたりの了承を得た恭子は、
直美をベッドに寝かせ、誠をそのベッドに寄りかからせる。


「では始めますので、二人とも目を閉じてください」


二人は指示通りに目を閉じた。


「ゆっくりと呼吸をして、リラックスしてください」


誠が息を吸い、直美が体勢を調節する。


「今日は二人でとても心地のいい場所に来ています。そこに下へ降りる階段がありますね」


恭子は二人の顔、表情を見ながら続けていく。


「では降りていきましょう。一段…二段…そこはあなたたちの心の中です」


恭子はまず、直美に向かい暗示をかけた。


「直美、あなたは今とても心が安らかです。
まるで草原の中で寝転がっている感じ。
空は晴れていて暖かく、とてもリラックスしています」


堅く目を閉じていた直美の表情から、力が抜けたように見えた。

次に恭子は誠の横に来ると、今日の目的であるいくつかの暗示をかけ始めた。


「私は恭子、わかるわね?」


少し声色を変えて、艶っぽく喋りかける恭子に、誠がこくりと頷く。


桐越 誠、直美の恋人…


(この男さえいなければ、今頃直美は私のものになっていたかもしれない。
催眠が終わった後、いつも私は誠とのデートに嬉しそうに出かける直美の背中を見送っていた。

最初は仕方ないと思っていた。
私と直美は女同士、直美はノーマルで普通に男子が好きな女の子。

直美を見送る時にいつも感じていた寂しさ、
それは私が小さな頃からずっと持っていた感情。

本当はずっと気付いていた。寂しいって
付け入る隙はないと思っていた。催眠術を知るまでは……

私はここで運命を変えてみせる)


恭子は誠に向き合うと、ゆっくりとした口調で話し始めた。


「あなたは私の顔、小ぶりな胸、制服から伸びる脚、
私の全てが気になって気になって仕方なくなります」


男の本能を刺激した催眠だからかかりやすいのか、
誠の顔が少し上気したように見えた。

今までの経験で、
本当に好きな人を嫌いにさせる催眠は効果がないとわかっている。
誠に直美のことを嫌いにさせる催眠をしたところで全く意味はないだろう。

だとしたら、逆に恭子のことを好きにさせれば良い。

好きにさせれば、誠に催眠をかける機会も増えるはず、
一度の催眠の効果は薄いけど、何度も繰り返しかけることにより心の奥底へ深化していくのだから…


「私にもっともっと催眠をかけてほしくなります」


まずは誠の催眠の機会を増やすこと。
元々、恭子と催眠に好意的な誠にとって、これは受け入れやすい暗示だろう。


「直美以外に好きな女の子はいる?」


恭子は誠に問いかけた。考える間もなく、誠は首を横に振った。
予想をするまでもない答え、直美同様、誠も直美に対して一途な思いを持っているのだ。


「直美はとっても魅力的な女性よね。
明るくて、優しくて、可愛くて、まさに理想の女の子。
でも直美の周りにも魅力的な女性がいるわよね?

特にあなたが今気になっている目の前にいる私…直美ほどではないけど、
綺麗でスタイルが良くて、見ているだけで心が安らいでくるでしょ?」


まるで誠に自分のことをアピールしているみたいで、嫌な気持ちだった。


恭子はそれから、今後の催眠をかける上で重要なことを尋ねた。


「あなたは直美とキス以上のことをしたことはある?」


内心ドキドキしながら、恭子は誠に問いかけた。
誠は少し困ったような顔をして頷かなかった。


(よかった……直美はまだ何もしてないんだ……)


心から安堵する恭子。続けて誠に問いかける。


「直美とキス以上のことをしたいと思いますか?」


誠は少し間を置いて、頷いた。


(やっぱりそうだ。
このままじゃ直美が汚されてしまう….このまま置いておくのは危険だわ)


恭子は差し迫ったような表情で暗示をかけた。


「あなたの貞操観念はとても堅いです。
直美はとても大事な恋人、直美のことを大切に思うなら、結婚まで純潔は守るものよね?」


誠が、付き合っている直美と事に及んだらすべての計画が台無しだ。


「直美とは健全な関係です。
身体が目的で付き合っているわけではないですよね?
本当に好きならキスも結婚まで取っておきましょうね?」


誠はゆっくりと頷いた。
[ 2017/08/22 18:07 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
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