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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

聖十字騎士エルフィーナ ~百合と背徳に溺れていく女騎士~ Part.1

文章:白金犬



聖王国王都にある大聖堂。

 ステンドグラスから差し込む明るい日差しにさらされるように1人の女性騎士が、正面に祭られている女神ファマロスの像へ祈りを捧げていた。

 青と白を基調とした制服は、ドレスのようにスカートが優雅に広がっており、その上から銀の胸当てを身に付けている。その胸当てには、聖王国の象徴でもある大きな十字架が刻まれており、聖王国の最上位機関・聖十字騎士団の中でも更に上層に位置する、ほんの一握りの騎士にしか許されないものだ。

「直りなさい。騎士エルフィーナよ」

 女神像の前に立つ老齢の神父の声に従い、彼女――エルフィーナ=ラ=エバグリーンは、組んでいた手を解き、膝をついていた状態から立ち上がる。

「今日ここに騎士エルフィーナは大いなる母ファマロスの洗礼を受け、新たに聖十字騎士となりました。祝福の拍手を」

 厳かな神父の声に従うように、聖堂内に参列者からの静かな拍手が響き渡る。参列者はいずれも国の政治に関わる高官であったり、各騎士団の幹部級の人間であったりがほとんどだった。

「ご苦労様でした、エルフィーナ様。お疲れでしょう」

「様はお止め下さい、神父様。エバグリーン家の人間とはいえ、私はまだまだ若輩の小娘に過ぎません。何卒、今後もご指導の程を宜しくお願い致します」

 形式的な儀式が終わると、老神父がにこやな表情を浮かべてエルフィーナに言葉を掛ける。するとエルフィーナは、瞳を閉じながら胸に手を当てて礼儀正しく身体を折って、無表情のままそう言い返した。

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「あぁ~、素敵ですわねぇ。エルフィーナ様」
「本当に、あの方程に聖十字がお似合いになられる方はいらっしゃいませんわね」
「私たちの永遠の憧れですわぁ~」

 エルフィーナが洗礼を受けた大聖堂の周りで、聖十字騎士の鎧を身に付けた彼女が出てくるのを待っていた人々から歓声が上がる。

 エルフィーナの出自であるエバグリーン家は、国内でも有数の名家であり、貴族の血筋である。遠い祖先を辿れば、王族にも連なる血を引いたエルフィーナは、常に泰然自若にして清廉な振る舞いで、老若男女問わずとても評判が高かった。

 洗礼を終えたエルフィーナが、新人にも関わらず、周囲に幾人かの騎士を付き人のように従えて歩いていると、人々は感嘆の息を吐きながらその道を開けていく。

 無表情だが、その瞳には確かな力強さが宿っている。傷や汚れなど1つなく、美麗という言葉ですら足らないようなその美しい顔は、異性同性問わず虜にしてしまう程だった。

「本当にお美しい方だ……いつか、私もあのような方の相応しい騎士に……」
「もう次期騎士団長というお噂も経っているらしいですわ。さすがはエルフィーナ様です」

 エルフィーナを賞賛する声は尚も止まない。

 褒められて悪い気はしないだろうが、こうもしつこく続けばいい加減辟易してくるのではないだろうか……と、彼女についている中年の聖十字騎士が、前を行くエルフィーナに声を掛ける。

「大した人気者だな。まるでお姫様だ」

「エバグリーン家という噂が先行しているだけですよ、おじ様」

 これだけ周囲の注目に晒されながらも、エルフィーナは微塵にも感情の動揺を見せずに、冷たさすら込めた言葉で返事をする。

「周りの声など関係ありません。私はこの国のため、そして我らの母ファマロスのために生涯剣を捧げ続けるだけです。その想いに一点の曇りもありません」

「そうか。相変わらずだな」

 頑としたものを思わせるエルフィーナの声に、中年騎士は苦笑しながら顎を撫でる。

「とはいってもだな、年頃の娘なんだし、こう……色のある話の1つでもあっていいんじゃないか? ファマロス様は、婚姻前の姦淫は禁じられておられるが、清い交際までをも咎めてはおられないぞ」

 氷を思わせるような冷たい表情のエルフィーナにそのようなことを言えるのは、聖王国広しといえども、おそらくは彼――叔父カイエンくらいのものだろう。

 叔父の言葉に、エルフィーナは目つきを細くしてキッと睨みつける。

「下らないですね。色恋など、私には無縁のものです」

「そうかぁ? そんな美人なのに、勿体ないなぁ」

 姪の容姿端麗さを心底惜しむようにカイエンはため息を吐くが、エルフィーナはツンとしたまま歩みを進めていくのだった。

□■□■

「エルフィーナ様、鋼鉄騎士達です」

 大聖堂から聖十字騎士団の兵舎へ向かっている途中、向かい側から歩いて来るのは、同じ聖王国に仕える鋼鉄騎士団の男達だった。

 女神ファマロスに誓いを立てて品位・清廉・誠実を重んじる聖十字騎士団に対して、常に最前線で血と暴力に溢れる戦場を活動の場とする鋼鉄騎士団には、粗野で乱暴な気質の者が多い。

そんな対極的な立場の両騎士団の関係は、少なくとも良好では無かった。

「おーおー、エバグリーン家のご令嬢様が取り巻きを連れて良い御身分ですなぁ。新人騎士だってのに、聖十字は家柄だけで偉くなれるんだから、楽だよなぁ」

 早速、向かってくる男3人の内、最も大柄で筋骨隆々の男がエルフィーナ達に絡んでくる。

「貴様っ……エルフィーナ様に向かって……!」

 エルフィーナについていた1人の女性騎士が敵意を露わにして、今にも腰の剣を抜きそうな勢いだが、瞑目したままのエルフィーナが静かに手で制す。

「ごきげんよう、ウルシマス団長。相変わらずご健勝のようで、何よりです」

「かーっ! 『ごきげんよう』だってよ、アルフレッド! どう思う?」

 唾を吐き捨てながら、鋼鉄騎士団団長ウルシマスが、側にいた若者――アルフレッドの首に腕を回す。ウルシマスとは違って、スラッとした体型の、整った顔立ちをしている青年である。

「団長、止めましょうよ。聖十字騎士団と揉めたら、また上から怒られますよ。しかもエバグリーン家のお嬢様ですし」

 ウルシマスに詰め寄られるようにされているアルフレッドは、彼に暴言を吐かれても瞳を閉じたままツンとしたままのエルフィーナを見ながら、気まずそうに言う。

「どうせ聖十字騎士団様は、前線で泥臭い仕事はぜ~んぶ俺ら鋼鉄騎士団に任せて、自分らは後方で優雅にお茶でも飲んでるんだもんなぁ? ああ?」

 普段から聖十字騎士団へ対して反感でも抱いているのか、その悪意を隠そうともせずに言うウルシマスだが、やはりエルフィーナはほとんど反応を見せない。

「そんなことありませんよ。彼女達が後ろで支えてくれるから、俺達は安心して前線で戦えるんじゃないですか」

「――あ? てめぇ、聖十字の味方すんのか?」

「いや、味方も敵も、味方じゃないですか。あたた……!」

 団内でも横暴を振るうウルシマスに珍しく反抗するアルフレッドは、拳で頭をグリグリとされている。

 そんなじゃれ合っているようにも見える鋼鉄騎士達を見て、エルフィーナは「はあ…」とため息を吐いて歩きだす。

「付き合っていられませんね。そこの貴方――」

「は、はい?」

 すれ違いざま、ウルシマスに絡まれているアルフレッドへ、エルフィーナは一言だけ言葉を掛ける。

「騎士団長への諫言は素晴らしいことだと思いますが、もっと憮然とした態度でありなさい。それでも騎士ですか。男性であろうかたが、全く情けない……」

 と、アルフレッドの方を見向きもせずに、その場を去って行ったのだった。

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 エルフィーナが聖十字騎士としての洗礼を受けた、その日の夕刻。

 鋼鉄騎士団の寮の裏庭に、アルフレッドがきょろきょろとしながら姿を現した。明らかに誰かを探している様子で

「あ、アルフ。会いたかったわ♪」

「わっ」

突然、物陰から出てきた何者かに抱き着かれるアルフレッド。

 それは、男しかいない男子寮においては、有り得ないくらいに美しい容姿をした美少女。筋肉ばかりで汗臭いのとは違い、とても柔らかくて良い匂いをするその彼女はーー

 聖十字騎士エルフィーナ=ラ=エバグリーンだった。

「エ、エルっ! あんまり大きな声出したら……」

「だって、早くアルフに会いたかったんだもの。私に寂しい思いをさせて、悪いコね」

 と、どこかふざけたように振る舞うエルフィーナの表情は至福に満ちている。正に恋する乙女という言葉が適切で、とても幸せそうだ。

 ちなみにお忍びのつもりなのだろうか、エルフィーナは聖十字騎士団の制服ではなく、平民が着るような、地味で質素な服を着ていた。それでも群を抜いた彼女の美しさは、人の目に触れれば、とても隠し切れるものではないが。

「さっきはごめんなさいね。おじ様達がいた手前、素気ない態度で……怒っちゃったかしら?」

 先ほどの凛とした態度からは考えられないような、殊勝で弱弱しい態度で見上げてくるエルフィーナに、アルフレッドも動揺しながら首を振る。

「だ、大丈夫だって、あんなこと。エルにも立場があるのは分かってるし」

「よかったぁ。実はね、あの後すごく後悔していて、ずっと気になっていたの。――でも、ウルシマス団長にちゃんと言ってくれたのは、すごく格好良かった。惚れ直しちゃったわ」

「……はは」

 恋人モードになったエルフィーナを見て、アルフレッドは苦笑する。

 見ての通り、2人は恋人同士である。それも熱愛カップルだ。

 アルフレッドの一途さと誠実さに触れたエルフィーナが彼に惹かれる形で交際がスタートしたのだが、いかんせん平民のアルフレッドと王族に所縁あるエルフィーナでは身分の差がありすぎる。

その上、お互いが所属する騎士団が犬猿の仲ということもあり、2人はこうして周囲から隠れる形で逢瀬を楽しむようにしていた。

「私が聖十字騎士団の騎士団長にまでなれば、お父様も私達に反対できないわ。それまであともうちょっとだから、待っててね。――ああ、そうそう。浮気なんてしたら、許さないから」

「浮気なんてしないって」

 エルフィーナは、戒めというよりはどこか悪戯をするような表情と声で言う。明らかにその会話も楽しんでいるようだ。

 普段の凛としている聖十字騎士エルフィーナにも憧れるが、こうして2人だけの時に見せる恋人エルの顔も、アルフレッドにとってはこの上なく愛らしい。それが自分にだけ見せてくれる顔だと思うと、とても暖かい気持ちが胸に広がって嬉しくなっていく。

「エル……」

「っあ……アルフ……」

 そんな恋人が溜まらなく愛おしくなると、アルフレッドはエルフィーナの頬を撫でながら、ゆっくりと顔を近づけていく。エルフィーナは近づいてくる恋人の顔を、熱っぽい瞳で見返すが……

「だ、だめぇぇぇっ!」

「ぎゃふんっ!」

 唇が触れるか否かで、突然エルフィーナがアルフレッドの身体を突き飛ばす。聖十字騎士として鍛え抜かれている彼女の力で、文字通りひっくり返るアルフレッド。

「だめっ! だめだめっ! ダメよ、アルフ! 私達、まだ婚姻の儀式を済ませていないもの。ファマロス様は、婚前の姦淫を厳しく禁じられているのよ。信徒である聖十字騎士として、接吻なんて卑猥なこと……だめよっ!」

「いつつ……い、いやごめん。エルが可愛くてつい……」

 アルフレッドが頭を抑えて申し訳なさそうに謝ると、エルフィーナは泣きそうになりながら身をぶるぶると震わせる。

「う、ううんっ! 私の方こそごめんねっ! で、でも……アルフも男の子だもんね。そういうこと興味があるのは分かるわ、うん。実は私だって興味があるもの。アルフと接吻してみたいし、その先も……っきゃ! 私ってば!」

 アルフレッドが口を挟む間もなく、エルフィーナは身をもじもじとさせて、両手で顔を抑えている。普段の姿からすると考えられないが、これはこれで見ているだけで飽きない可愛らしい小動物のようだ。

「ちゃ、ちゃんと結婚したらアルフがしたいこと、したいだけしていいから……って、わ……私何を言っているの? で、でも少し楽しみ……かも。私、唇も身体も、その時までアルフのために大切に取っておくわね。ふふふ」

 そんなことを言いながら、甘えるようにアルフレッドの胸に身体を預けてくるエルフィーナ。そんな恋人がとても愛おしくて、アルフレッドはエルフィーナの美しい金髪を優しく撫でるのだった。

「大丈夫だよ。俺も、エルとキス出来る日が来るのが楽しみだな」

□■□■

 そんな、純粋で無邪気な恋人達に許された僅かな逢瀬の時間を、物陰から盗み見る影が1つあった。

 それはエルフィーナと同じく、この男子寮には本来存在してはいけない女性の姿だった、赤髪に引き締まって無駄な肉のない美しい痩身。歳の頃はエルフィーナ達よりも僅かに上の20半ばくらいに見える。どこか妖艶な雰囲気をまとったその美女は、聖十字騎士団の階級騎士の制服。

「ふ~ん。エバグリーン家のお嬢様に、こんな意外な一面があったのね。可愛いじゃない」

 ペロリと、彼女はピンク色の舌で同じ色の唇を舐めずりまわす。

「リリーナ様」

 音もなく彼女――リリーナの背後から現れたのは、同じ聖十字騎士団の制服を着た女性騎士だった。その制服はエルフィーナが着るのと同じ上級騎士の制服だった。歳もリリーナよりも上に見える。

 そんな明らかに目上であろう先輩騎士に対して、リリーナは振り向きすらせず

「明日は予定通りよ。最初が肝心だから、手抜かりのないようにね。――ふふふ、まさかあんな冴えない男がいたなんて知らなかったけど、これは思わぬ幸運ね。ますます興奮しちゃうわ」

 一言だけ指示を飛ばした後は、まるで彼女の存在などないように、リリーナは頬を赤らめて悶え初めて、1人の世界に入っていく。

「あ、あの……リリーナ様」

 完全に存在を無視されている中、女性騎士はおずおずと切り出しにくそうに言う。決して存在が見えていなかったわけではないリリーナは、うんざりしながらようやく振り向くと、明らかに面倒くさそうに

「なに?」

 と、あからさまな不機嫌な反応を返す。

「そ、その……随分と、あの……出来れば……」

 がくがくと身を震わせながら、歯切れ悪く言葉を紡いでいく女性騎士。しかしリリーナは、頬を赤らめている彼女を見れば、何を言わんとしているのかはおおよそ察しがついた。

(正直、もうこんな使い古しに興味は無いのだけれど、不機嫌になって明日失敗しても困るわね)

 胸中で嘆息しながら、リリーナは女性騎士へと微笑みかける。

「そういえば、貴女とは随分とご無沙汰だったわね。いいわ、今晩は一晩中相手をしてあげるから、一足先に私の寝所の準備をしておいてくれる? ――たっぷり、可愛がってあげるわ」

「は、はいっ……!」

 傍から見ているだけでは、その2人の上下関係は逆転しているようにしか見えない。

 しかしリリーナのその言葉を聞いた女性騎士は、ぱあっと顔を輝かせると、足早にその場を後にしていった。

聖十字騎士エルフィーナ ~百合と背徳に溺れていく女騎士~ Part.2

文章:白金犬


 翌日、聖十字騎士の上級騎士の制服に身を包んだエルフィーナは、聖十字騎士団事務所の小会議室を訪れていた。

「貴女がリリーナ先輩、ですね?」

 肩まで伸びた栗色の髪に、どこか猫を思わせるような切れ長な目をした妖艶な雰囲気を纏った聖十字騎士リリーナは、窓から外の様子をうかがっていた。

エルフィーナが部屋に入ってくると、リリーナは振り向いて微笑みながら彼女を出迎える。

「ごきげんよう、エルフィーナ様。この度は、聖十字騎士団への入団おめでとうございます」

 にっこりと、聖十字騎士に相応しい優雅な笑みと所作でもってエルフィーナを称えるリリーナ。こうまで純粋な行為はエルフィーナにとって悪い気がするものではなかったが、あくまでも無感情に瞑目すると。

「ありがとうございます」

 と、一言だけ礼を言ってから、再び顔を上げて不思議そうにリリーナの顔を見返す。

「しかし、少々妙ですね。私にリリーナ先輩が待っていると伝えに来たのは、上級騎士の方でした。リリーナ先輩、失礼ではございますが、あなたは平民――下級騎士、で間違いありませんよね? 経験の長さについては存じ上げませんが、下級騎士が上級騎士を使用するようなこと、規律上あまり宜しくないと思います」

 誰よりも清廉且つ厳格な聖十字騎士たるエルフィーナは、昨日入団したばかりの新人騎士である立場など厭わず、真っ直ぐとリリーナへと諫言を呈する。

 いくら新人とはいえ、エバグリーン家の血筋の令嬢、それにこれだけの迫力を前にすればどんなベテラン騎士でも気圧されるだろう。

 しかし、リリーナはその圧力をまるで受け流すようにして、優雅な笑みを浮かべる。

「ええ。私もどうかとは思ったんですが、どうしても彼女が私のために働きたいと言って聞かないので、止むを得ず。エルフィーナ様のお気に触ったのなら、よく言ってきかせておきますよ」

「……」

 掴みどころのない返答をしてくるリリーナに、エルフィーナは眼を細くして警戒心を強める。どうも、ただの下級騎士ではないようだ。

「私がここにエルフィーナ様をお呼びしたのは他でもありません。ぜひ、エルフィーナ様の入団をお祝いして、贈りたいものがあるんです」

「贈り物……?」

 エルフィーナが切り出すよりも先にリリーナが本題を持ち掛けてくる。

「そのまま、前を向いておいてくださいね」

 ニヤニヤと笑いながらエルフィーナの方へ近づいてくるリリーナ。

 この得体の知れない先輩騎士へ対して油断は出来なかった。……が、エルフィーナは家名の高等さを笠にして横暴を働くような愚者ではない。

先輩騎士が後輩を祝いたいというのであれば、上級・下級関係なく、ありがたくそれを受け入れるのが当然の礼儀だ。

 エルフィーナの背後に回るリリーナが回ると、エルフィーナは首に違和感を覚える。

 エルフィーナの首には、黒いチョーカーが装着されていた。

「これは……?」

「ふふ。やっぱり、とてもお似合いですよ」

 首にまとわりつく違和感を持ちながら、エルフィーナは小会議室内の片隅に置いてある姿見の中の自分の姿を見ていた。

「……あ」

 騎士として、特に女神ファマロスに仕える聖十字騎士などが装飾品などというのは、あまり好ましくはない。とはいっても、禁止されているわけでもないので、団内の騎士にはあまり派手ではない装飾品を身に付けている女性騎士が少なくない。

 リリーナから贈られたそのチョーカーも、黒く地味なものでありながら、聖十字騎士の制服やエルフィーナの白い肌とよくマッチしており、控えめなお洒落という点では、とても良いセンスをしているように思えた。

(これ……アルフ、喜んでくれるかなぁ)

 つい、そのようなことを考えてしまうエルフィーナ。

「よくお似合いですよ、エルフィーナ様」

 思わずボーっとしていたエルフィーナは、そのリリーナの言葉によって現実に引き戻される。リリーナの細い指にうなじをなぞられると、全身をゾクゾクとさせてしまいながら

「こ、このような浮わついたもの、聖十字騎士には相応しくありません。リリーナ先輩のお気持ちはありがたく受け取らせていただきますが――」

 エルフィーナがそこまで言った時、彼女はハッと言葉を飲んだ。

 何故ならば、背後からリリーナが力強くエルフィーナを抱きしめてきたからだった。

「なっ、何を……?」

 背中にリリーナの柔らかく暖かい体温を感じながら、狼狽えるエルフィーナ。そんなエルフィーナの反応を楽しむようにクスクスと笑いながら、その美しい金髪を手で掬うようにするリリーナ。

「ふふ……良い匂い。この時を待ち焦がれていましたよ、エルフィーナ様」

「リリーナ先輩……貴女は一体何を……っひゃ?」

 エルフィーナの不意をつく形で、リリーナはエルフィーナのうなじに唇を押し付けてくる。そのくすぐったいような感覚に、エルフィーナはリリーナの腕の中でビクンと身体を反らせる。

「や、止めなさいっ! 何を……!」

 そんな制止を求めてくるエルフィーナの言葉など全く意に介さないリリーナは、そのまま後ろからエルフィーナの乳房を下から持ち上げるように、優しく揉み始める。

「っく! な、何の真似ですかこれはっ! 私にこのような真似をして……!」

「ふふふ。貴女を士官学校で見かけたときから目を付けていたんですよ。正に聖十字騎士そのものである、清廉高潔なエルフィーナ様を、女性同士のドロドロとしたセックスにハマらせてあげますから……」

「ふ、ふざけるなっ!」

 ぺろりと舌なめずりをしながら耳元でそんな卑猥な発言をしてくるリリーナに、エルフィーナは激昂しながら、彼女を睨みつけようと顔を振り向かせる。

 その時、エルフィーナの唇に柔らかい感触が伝わってくる――リリーナがエルフィーナの唇を奪ったのだ。

「っっっっっ!!???」

 あまりに突然のことに、思考が追い付いてこないエルフィーナ。最初何が起こったのか分からずに身体を硬直させた後、ようやく現実に頭が追い付いてくると、リリーナの身体を突き飛ばした。

「っきゃ。ふふ、いたぁ~い」

 エルフィーナに突き飛ばされたリリーナは、多少顔をしかめるが、どこかふざけたような態度のまま、微苦笑を浮かべる。

 対するエルフィーナは、眼に涙を溜めながら、必死に奪われた唇を手の甲で拭っていた。

(く、唇が……アルフのために取っておいたファーストキスが……こんな、こんな……っ! しかも女相手にっ!)

 まるで親の仇でも見るような激しい憎悪を込めた目つきで、リリーナを睨みつけるエルフィーナだが、リリーナは全く堪えていないようだった。

「ふ、不潔なっ! この件は王宮の査問委員会に報告させていただきます! 聖十字騎士のままでいられると思わないで下さい!」

 くすくすと笑っているだけのリリーナを見ていると、エルフィーナはポロポロと涙をこぼし始める。

(ど、どうしてこんな奴に……アルフのための唇が……ううっ……!)

 あまりに唐突に唇を奪われたことが、本当に悲しくて、理不尽で受け入れられなくて、目の前のこの先輩騎士への憎悪がこみ上げる。この衝動のままに、腰の剣を抜いてその身を切り裂いてやりたい――その想いを堪えるだけ精一杯だった。

「クスクス……そんなの、無理よ。貴女は、もう私の唇を味わってしまったもの」

「……は?」

 ぺろりと自分の唇を舐めるリリーナ。その薄いピンク色の舌が、やけに妖艶に見えてしまうエルフィーナは、自分が付けられたチョーカーが淡く光るのに気づいていなかった。

「唇に私の柔らかい感触が残っているでしょう? ふふふ。男のごつごつとしたキスなんかと比べ物にならないくらい柔らかい感触が。女同士のキス……気持ちいいんだから」

「……く、来るなっ!」

 唇を尖らせ、先ほどの口づけをエルフィーナに意識させながら近づいてくるリリーナ。エルフィーナがつけているチョーカーの光が明滅し始めると、怒りと悲しみで一杯になっていたエルフィーナの唇に、先ほど触れたリリーナの唇の感触が鮮明に思い出される。

(た、確かに柔らかくて……それに、暖かかったけど……)

「もう1回しましょ?」

 唇に指を当てて、エルフィーナがリリーナとのキスの感触を思い出していると、すぐ目の前にリリーナの顔が迫っていた。お互いの吐息が吹きかかる程の至近距離だ。

「ん~……」

「や、止め……」

 チョーカーの明滅が激しくなると、唇に残るリリーナの唇の感触が強くなっていく。あの甘くて柔らかい感触を思い出すと、エルフィーナはリリーナの身体を突き飛ばすことが出来なかった。

「……ちゅうう」

「んんん~っ!」

 そのままリリーナに唇を吸われるエルフィーナ。

 今度は不意を突いたものでも、強引なものでもない。抵抗しようと思えば、その余地は充分にあった。しかし、何故かエルフィーナはリリーナの唇を拒否出来なかった。

(や、やだっ! 女同士でこんな……)

 同性同士の粘膜接触の嫌悪感に、唇を塞がれたエルフィーナは、ようやくそこでリリーナを突き飛ばそうとするが、そのエルフィーナの両手をリリーナが握ってくる。

「は、離せっ……んんんぅ?」

 指を絡め合わせるように両手を握りしめてくるのと同時、リリーナの唇が開き、その舌がエルフィーナの唇をなぞってくる。

 キスは唇を触れ合わせる恋人同士の神聖なる儀式――そう信じ込んでいたエルフィーナにとっては、衝撃的なことだった。

「やめっ……き、汚い……んんうっ?」

 ねっとりと唇を舐られたと思ったら、突如リリーナの舌が唇を割って入ってくる。エルフィーナの口内を愛撫するように舌でなぞっていくと、舌同士が触れ合う。

「っ……!」

「れろ……ちゅっ……」

 口内で逃げようとするエルフィーナの舌を、リリーナは深く舌を突き入れるようにして、決して逃がさない。逃げ場のないエルフィーナの口内で、リリーナがエルフィーナの舌を絡めとる。

「はむぅ……ん……れろ……っ!」

 両手を握られたまま、エルフィーナは同性の舌の感触に、身体をビクビクと震わせる。同時に首のチョーカーの明滅が徐々に激しくなっていく。

(し、信じられないっ……し、舌が絡められて……っ……で、でも……なに、これ。とても柔らかくて……不思議な……)

 舌が絡め取られて、リリーナの感触を感じている内に、堅く固まっていたエルフィーナの全身が徐々に弛緩していく。両手を握られている指先から、リリーナの細くて暖かい指の感触が伝わってくると、エルフィーナもまるで握り返すようにして力を込めてしまう。

「ふふ、チョロいですね。エルフィーナ様……んむぅ……」

 一度唇を離して、頬が赤らんでいるエルフィーナにそう零してから、再び唇を塞ぐリリーナ。舌を差し入れれば、今度は抵抗は見られない。半開きになっている唇から舌を差し込むと、難なくエルフィーナの舌を絡め取ってしまう。

「んっ……んっ……んっ……」

 眉間に皺を寄せながら、しかしエルフィーナはリリーナの舌の感触を楽しんでいるように見えた。首のチョーカーが、エルフィーナの内心を代弁しているように明滅するのを見ながら、リリーナは囁く。

「その調子ですよ、エルフィーナ様。さあ、貴女からも舌を伸ばしてくださいな」

「い、ぃや……無理、私……女性同士でなんて……っああ……れろぉぉ」

 リリーナが片手を離して、エルフィーナの首のチョーカーを指でなぞる。その際、リリーナの指先が淡い光を放ち、魔力をチョーカーへ込めると、エルフィーナは言葉とは矛盾しながら、おずおずと舌を伸ばし始める。

「んっ……れろ……は、恥ずかしいっ……!」

「いいのよ、エルフィーナ様。ここには私達しかいないんですから……ちゅば……ちゅう」

 控えめに舌を伸ばしてきたエルフィーナの舌を吸い出すようにすると、リリーナはお互いの口の外で舌を絡め合わせる。

「はふっ……れろ……んんぅ」

「ちゅ……れろ……れろ……」

 何も知らなかったエルフィーナだったが、リリーナの舌の動きに合わせるように、自分からも舌を動かして絡めていく。頬を赤らめて、瞳を閉じているエルフィーナは、まるで助けを求めるようにリリーナの手を握りしめている。

「はうっ……れろ……だ、だめ! 止まらない……怖い……ちゅっ……!」

 チョーカーから、何か暖かいものが込みあがってきて、エルフィーナは自分の身体を止められない。リリーナの舌に求められれば求められる程、自分も積極的に舌をからませていく。

「エルフィーナ……目を開けなさい。私を見ながら、キスをするの。ちゅば……ちゅ……」

 舌を動かしながら、リリーナは甘く囁く。その声を聞くと、何故かエルフィーナは逆らえない。ぎゅっと閉じていた瞳をゆっくりと開いていくと、舌を絡ませながらリリーナと見つめ合う。

「ふぁ……ぁ……ちゅうう……れろっ……れろっ! ちゅうう……」

 リリーナの妖艶な瞳と見つめ合っていると、まるでその中に吸い込まれていくような感覚に陥り、エルフィーナの思考は全て真っ白に染め上げられていく。

 エルフィーナも瞳を細めながら、うっとりしたような表情へと蕩けていく。

「ん……ちゅ……そう、もっと唾液を絡めなさい。もっと激しく……ちゅば……ちゅう……そうよ、上手。もっと私を求めて……」

「……んちゅう……ちゅっ、ちゅっ……れろぉぉ……んぐ、ごくんっ……!」

 2人は見つめ合いながら、恋人同士のような濃厚な唾液交換を重ねていく。びちゃびちゃと淫猥な音が響き、2人の口からは唾液が垂れ落ちるくらいの濃厚なキスを十数分もの間続けながら、ようやく2人が唇を離すと、唾液の糸が地面に垂れ落ちていく。

「ぷはぁ……はぁ、はぁ……あうぅ……わ、私をどうするつもりなのですか……!」

 脳が溶けるような、激しく甘いキスから解放されたエルフィーナは、口の周りをお互いの唾液でべとべとにしながら、リリーナを見つめていた。言葉では気丈に振舞っているが、その瞳は欲情に濡れているのは明らかだった。

「言ったでしょう? 女同士の良さを教えてあげるって」

「っ! い、いやっ……何をっ……?」

 リリーナがエルフィーナの制服のボタンに手を掛け始める。しかし既に濃厚な口づけで身体が蕩けているエルフィーナはそれを遮ることが出来ない。身体を震わせながら、なすがままに服を脱がされていく。

「最初に徹底的に女の良さを教えてあげるわ。男なんかじゃ決して満足できない変態に仕上げてあげる。ま、キスはもうそうなっちゃってると思うけどね」

 リリーナが妖艶な表情でそう言いながら、エルフィーナの頬から首筋へかけて舌を這わせていく。そして首に付けているチョーカーをペロリと舐め上げると、一際大きく輝いて、何かの力がエルフィーナの中に入り込んでくる。

「っく……! こ、これ……何かの魔術具?」

「ご名答。でも、安心しなさい。これには貴女の嫌がることを強制させるような効力は無いわ。すこ~しだけ素直になれるお手伝いをするだけの道具よ。本気で嫌なら、すぐに自分で外せるしね」

 耳元でエルフィーナの耳を舐りながら吐息を吹きかけるエルフィーナは、再び彼女のうなじへ舌を這わせながら、制服をはだけさせて脱がせていく。

「んっ……っふ……い、いや……」

 リリーナの柔らかくて官能的な舌の動きが、エルフィーナから抵抗する気力を奪っていく。

「好きよ、エルフィーナ。愛しているわ」

 同性同士なのに、何度も囁かれながら、首筋から鎖骨へキスをされていく。するとエルフィーナは身体的にも精神的にも反応してしまい、ビクビクと身体を震わせる。

「っん……や、止めなさい……」

 漏れ出る声を、何とか耐えるために指を口に咥えるエルフィーナだったが、リリーナはそんな抗弁など全く無視をする。制服を剥がし、その美しい肉体と純白の下着を見て、熱っぽいため息を吐きながら。

「真っ白くて綺麗ね……でも、貴女には紫とかピンクの派手なレースも似合いそうね。お上品な騎士様が、そういう低俗で下品な下着を身に付けるようになるのも……ふふふ、ゾクゾクしちゃうわ」

 エルフィーナと同じように、リリーナも身体をゾクゾクと震わせながら、極めて慣れた手つきで下着のホックを外してブラジャーを取り払う。

 すると形の良いエルフィーナの乳房がポロンと零れ出てくる。

「い、いやっ! 見るな……見ないでっ!」

「無理よぉ、こんな可愛いおっぱい。うふふ、いただきま~す」

 リリーナは悪戯っぽく言いながら、半開きにした唇を近づけていき、先端の突起物を唇に含む。

「っん! な、なんということを……っふああっ!」

「ん……む……敏感ね。すぐにコリコリに固くなってきたじゃない。ちゅ……れろ……ちゅう……」

 リリーナは熟練した娼婦のように、唇で先端部を吸って、舌で転がすように愛撫をする。エルフィーナの反応を見ながら、もう片方の乳首も唇と舌で可愛がりながら、もう片方の乳房は手で愛撫を加えていく。

「っあああ! ど、どうして……これは……エバグリーン家に対しての侮辱以外の何物でもありませんっ! 許さない……っあああ~!」

「へぇ、私の舌で可愛がられてもまだそんなこと言ってられるなんて、本当に真面目な騎士様なのね。まあ、でもすぐに変態になっちゃうんだけど」

 身体の反応はともかくとして、言葉では未だに気丈な態度を保っているエルフィーナに、リリーナは乳房への愛撫を続けながら、手をエルフィーナの下半身へと下ろしていく。

 スカートの中に手を伸ばし、内腿を焦らすように擦りながら、その手を徐々に足の付け根の方に伸ばしていく。

「っひ! や、止めなさい……この変態っ!」

「あら、今頃気づいたの? そう、私は可愛い女の子大好きな変態なの♪」

 エルフィーナの侮蔑の言葉すら、嬉々として受け流すリリーナは、スカートの中でその指で、彼女の最も敏感な部分へと触れる。

「でも、エルフィーナも私以上の変態になるのよ? 私の手で、女の子だ~いすきな、生粋のレズビアンにされちゃうの」

「っひう! や、やだ……そんなところ触らないでっ!」

リリーナはエルフィーナの腰へ手を回して逃がさない。そのまま、エルフィーナの尻肉の感触を楽しむように揉み解す。

「こ、これ以上は本当に止めなさい……貴女、この国で生きていけなくなりますよ……!」

「へぇ~、この期に及んで脅してくる度胸は大したものだけど、涙目じゃ説得力ないわよぉ?」

 もはやエルフィーナの言葉などリリーナには全く届いていない。リリーナはスカートの中へ伸ばした指を踊らせて、ショーツの上から優しくその敏感な部分を刺激し始める。

「っん! んんんっ……!」

 リリーナの指から与えられる甘い疼きが、エルフィーナの全身に込み上がってくる。エルフィーナは漏れ出る甘い声を抑えるために、再び指をしゃぶるようにして耐える。

「そうやって、甘い声を出している方が可愛いわよ? これから言葉使いはゆっくりと仕込んであげるから、とりあえず手っ取り早く、快楽を知ってしまいましょうか?」

 リリーナが次第に指の動きを速く、そして深くしていくと、やがてそこがショーツの上からでも分かる程の熱さと湿り気を帯びてくるのが分かる。

「う、あ……ぁ……わ、私お漏らしを……? どうして……?」

「えっ? 嘘? 本当にオナニーもしたことないの? --ふふふ、思っていた以上のお宝じゃない」

 そんなエルフィーナの反応に、リリーナは興奮しているようだった。顔を赤らめて息を荒げ始めると、ショーツの中へと手を滑り込ませる。

「ひゃうっ……!」

「これはね愛液っていって、女の子がもっと気持ちよくなりた~いっていう気持ちなのよ。エルフィーナはエッチで変態なレズビアンだから、これからたくさんこれを出すのよ?」

「い、意味が分からない……あい……えき?」

「そ。まあ、でも変態なエルフィーナはそんな上品で可愛らしい言い方じゃなくて、マン汁って呼ぶといいわよ」

 エルフィーナにその意味は分からなかったが、低俗で下品なイメージだけは伝わってくる。自分がそんな言葉を使うはずなど有り得ないと思いつつも、リリーナに囁かれば、本当にそうなってしまいそうな恐怖に、エルフィーナは顔を引きつらせる。

「っあ……っあ! だ、だめ……んんん~~~っ!」

 リリーナの指が直接エルフィーナの秘裂を責め始めると、クチュクチュという淫音が響いてきて、エルフィーナの羞恥を煽る。意志とは関係なしに身体の底からこみ上げてくる声を、指を咥えて必死に我慢するエルフィーナ。

「ああっ、すごいわエルフィーナ。その物欲しそうな顔も素敵よ。私の指で感じているのね? でも、我慢なんてさせないんだから」

 悦楽に顔を歪めるエルフィーナに興奮しながら、リリーナは指の動きを激しくすると共に、乳房への愛撫も加えていく。

「っくぁぁ……っあ……も、だめ……ああああ~っ! ああああんっ!」

 激しく、そして恐ろしい程までに官能的なリリーナの責めに、エルフィーナはついに声を上げてしまう。それは自分でも驚くくらい、今までに出したことのない甘い喘ぎ声だった。

「んっ! も、ダメっ! だめだめだめっ! 何これっ! 身体が飛びそう……アソコが……アソコが、おかしいっ!」

 生まれて初めての絶頂の予兆で、目を剥いて身体を痙攣させ始めるエルフィーナに、リリーナは耳を舐りながら囁く。

「いいわよ。イキなさい。私が、生まれて初めて貴女に女の絶頂を教える女よ。私の指で、幸せになりなさいな」

「ひ、ひうっ……はううっ! し、幸せに……ひゃあああんっ! んああああ~~~! も、もう……私っ……!」

 身体が、頭がはじけ飛びそうになる。そんな未体験にして強烈な感覚にギュッと身体を固くして絶頂に備えるエルフィーナだったが、彼女が達する前にリリーナが唇を塞ぐ。

「っっっっ!! ~~~っ! !!!!」

 舌を絡ませながら唾液を送られて、深いキスと共にエルフィーナは絶頂を迎える。

 リリーナの腕の中で、陸に上げられた魚のようにビクンと身体を大きく反らせるエルフィーナ。

尚も舌を絡めてくるリリーナと身体も心も繋がっている感覚になって、エルフィーナは嬉しそうに目尻をトロンと下げてしまう。

「……ぷはぁ。ふう、ごちそうさま♪ どうだったかしら、エルフィーナ? 初めての絶頂は?」

 初めての絶頂に脱力したエルフィーナは、そのまま後ろの会議机に背中をぶつけるように倒れると、胸を激しく上下させる。

「き、気持ちひい……こんなの、初めて……♪」

 完全に気をやっているエルフィーナから漏れ出た本音に、リリーナは満足そうに微笑む。そして彼女の首筋に付けられたチョーカーを指でなぞると、再びチョーカーは淡い光を帯び始める。

「これは、私と貴女の愛の証。いつ、どんな時も、絶対に外してはダメよ」

 聖十字エルフィーナの、百合の快楽に塗れた日々がここから始まるのだった。




聖十字騎士エルフィーナ ~百合と背徳に溺れていく女騎士~ Part.3

文章:白金犬


 エルフィーナが聖十字騎士団に入団してから3ヶ月ほどが経過していた。

 その日もエルフィーナとアルフレッドは、騎士団の業務を終えた夕刻の時間に、人目のつかない場所で、ささやかな恋人同士の逢瀬を楽しんでいた。

「本当に気に入ってるんだね、そのチョーカー。いつも付けてる」

 ふと、アルフレッドに言われると、エルフィーナは虚を突かれたように目を見開きながら、首のチョーカーをなぞる。

「え、えと……ちゃんと毎日洗っているわよ」

「いや、そうじゃなくて……」

「ひょっとして似合わない? やっぱり私みたいな真面目な堅物には、お洒落しちゃダメかなぁ?

「いや、そんなことないよ。よく似合っていて、可愛いよ」

 アルフレッドにそう言われると、エルフィーナは嬉しそうに微笑む。

「ありがとう、アルフ。嬉しいな。アルフが褒めてくれるなんて」

「ちょっと意外だったけどね。エルは、てっきりこういう飾り物、あんまり好きじゃないと思っていたから。それ、どうしたの?」

「……ええと」

 それは何気ないアルフレッドの問いかけだったのだろう。それを聞いて少しだけ気まずそうな顔をするエルフィーナは、すぐに笑顔を取り繕うと

「アルフが喜んでくれたらって思って、少しお洒落してみたの。だからアルフが気に入ってくれて、良かった」

 そんなエルフィーナの言葉がアルフレッドも嬉しかったのか、微笑みながらうなずいてくる。

 --そんな、恋人の純粋無垢な笑顔を見ていると、エルフィーナは泣きたくなるくらいに辛かった。

「今日はまだ時間あるんだろう? 実はさ、エルを連れていきたい場所があるんだけど」

「あ、ごめんアルフ。実は急用があって……」

 と、エルフィーナは言いにくそうに切り出すと、アルフレッドはさすがに残念そうな顔をする。

「まあ、仕方ないよな。聖十字騎士団は忙しそうだし……俺の方は、大丈夫だよ。気にしないで行ってきて」

「う、うん。ごめんね、アルフ。近いうちに、必ずそこに連れて行ってね。楽しみにしてるから」

 エルフィーナは時間を気にする素振りを見せながら、慌ててアルフの前から駆け去っていく。

「愛しているわ、アルフ」

 それは、まるで自分に言い聞かせているようにも聞こえる言葉だったが、アルフレッドは何の疑いもなく愛する恋人を見送るのだった。

□■□■

「あっ……んんっ! んはぁぁっ……!」

 聖十字騎士団女子寮のリリーナの部屋で、エルフィーナはその美しい金髪を振り乱しながら甘い嬌声を上げていた。

「んっ……ふっ……ちゅるるっ……」

 ベッドの上、全裸のエルフィーナは、同じく全裸で仰向けに横たわったリリーナの顔を跨ぐようにして、秘部を押し付けていた。リリーナはエルフィーナの太ももを抱え込むようにして、濡れそぼっている秘肉を舌で舐め上げていた。

「っああ! だ、だめっ……私、また……!」

 リリーナの甘く魅惑的な舌の感触に限界を感じるエルフィーナは、その時の癖になったのか、親指を口に咥えて全身をビクビクと痙攣させる。

「そういう時はなんて言うんだっけ? お姉様に教えて、エルフィーナ?」

 秘肉を舌でなぞりながら、ぷっくりと肥大している肉芽を舌で押しつぶすようにして、エルフィーナを追い詰めていくリリーナ。

「っはぁぁ! い……いくっ! イクぅっ! エルフィーナ、イキますぅぅぅ! いっくううううう!」

 エルフィーナは甘い声で叫びながら、唾液を唇の端からが垂らしながら、身体を弓なりに反らして絶頂に達する。

「はぁ……はぁ……も、もう許して……下さい……」

 リリーナの上で意識を朦朧とさせながら、エルフィーナはか細い声で訴える。

 あの日、リリーナと関係を持った日からずっと、エルフィーナは毎晩のように快楽調教を施されていた。

 エルフィーナは、リリーナから強制的な服従を強いられるということは無かった。呆気ないとすら思うくらいに、この背徳的な行為の時以外は、エルフィーナはいつも通り自由に振舞えている。

 それなのに、エルフィーナはリリーナとの関係を公に出来ていなかった。

 その気になれば、最初にエルフィーナが自分で言ったように、査問委員会へリリーナのことをかけて懲罰を与えることなど、エルフィーナの立場からすれば容易い。

 しかし、逆にエルフィーナ程の立場だからこそ、事を公にすることは憚られた。

 そもそも自らの貞操が奪われたこと、しかも平民出の下級騎士の同性が相手だということは、エルフィーナにとってはこれ以上ない恥と言っても良い。それにそんなことを、愛するアルフレッドになど絶対に知られたくない。

 ――いや、そんな建前の理由などよりも

「まだまだよ。今日も貴女の心が折れるまで可愛がってあげるから、次は四つん這いになりなさい」

「はぁ、はぁ……はい……♡」

 この甘くて蕩けるような感覚を手放すことを、エルフィーナの本能が拒絶していた。

 四つん這いになったエルフィーナの下にリリーナが身を滑らせる。するとお互いの性器が目の前にある態勢となる。

「今度はエルフィーナも私を気持ちよくしなさい……ん……ちゅ……」

 再びリリーナがエルフィーナの秘肉へ舌を這わせ始める。

「っんあ! はぁ、はぁ……こ、こんな格好……あぁんっ! へ、変態よ……っんあああ!」

 再開された敏感な部分への愛撫に、エルフィーナも再び甘い声を漏らし始める。

「そうよ。やっと気づいたの? 貴女は変態なの。女同士でアソコを舐め合って、興奮して、気持ちよくなっちゃうレズビアンなのよ? ほら、よく見て……私のオマンコ」

 リリーナはエルフィーナへの愛撫を続けながら、股を開いてエルフィーナを誘う様に腰をくねらせる。

「ち、ちが……私は変態なんかじゃ……レズビアンなどでは……」

 首のチョーカーが明滅するにつれて、エルフィーナの声は弱弱しくなって力を失っていく。そしてフラフラと頭を下げて、リリーナへの秘部へと顔を近づけていく。

「ふふ、どうかしら?」

 その大事な部分にエルフィーナに視線を感じるリリーナは、顔を赤くしながら、秘裂の奥から愛液を溢れさせていく。それを間近で見るエルフィーナは息を飲みながら

「っあ……すごく、綺麗です……こ、こんなに濡れてて……熱くて、匂いも……」

「エルフィーナのオマンコもすごく濡れてるわよ。ちゅ……れろ……ちゅば……ね、一緒に愛し合って気持ちよくなりましょう?」

「一緒に……愛し、合う……? で、でも私……女の人は……」

「一緒にオマンコを舐め合って気持ちよくなって、一緒にイキましょうよ。そしたら、きっとエルフィーナは私のことを、もっともっと好きになるわ。女同士、愛し合いましょう? ちゅうう……ちゅば……れろ」

「っあぁぁん! はぁ、はぁ……ひゃうっ……舌、すごい動いて……っんああ!」

 リリーナの甘い言葉と舌の動きがエルフィーナの思考を曇らせていく。そして首のチョーカーから流れてくる魔力が、エルフィーナの身体を火照らせて、肉の快楽に溺れさせようとしてくる。

 エルフィーナは焦点の合わない瞳でぼーっとした表情のまま、自らリリーナの秘裂へと舌を伸ばす。

「……ぺろ……ぺろ……」

「っんんんぅ! ふふ、そうよエルフィーナ。優しく、恋人にするように丁寧に舐めてみて。ちゅっ……ちゅばあっ! ちゅうううっ!」

 わざと音を立てながら、激しくエルフィーナの秘裂を責め立てていくリリーナ。その音がエルフィーナの羞恥心を煽り、最初は控えめだったエルフィーナも、積極的にリリーナを責め始める。

「はむ……ちゅ……れろ……」

「ちゅば……ちゅっ……ちゅうう。そうよ、エルフィーナ。貴女が興奮して気持ち良くなればなるほど、私も気持ちいいの……れろれろ……んちゅうう」

「はぁっ、はぁっ……ん……む……リ、リリーナ先輩……ちゅうう……すごく、濡れて……ぢゅるるっ!」

 いつの間にかお互いの秘裂を貪るのに夢中になっていく2人。しかし尚もリリーナはエルフィーナを追い詰めていく。

「お姉様よ、エル。先輩じゃなくて、お姉様と呼びなさい……あむ……れろれろれろ……」

「きゃうううんっ! んああっ!」

 舌先でエルフィーナの肉芽を転がし、押しつぶし、吸い立てていくと、エルフィーナは一層高い声を上げながら。

「ぁんっ! り、リリーナ……お姉様ぁ! リリーナお姉様……ちゅっ……ちゅううっ……」

 先輩ではあるものの、平民の下級騎士に過ぎないリリーナのことを姉と呼び、そして愛称で親し気に呼ばれるエルフィーナ。その首のチョーカーが激しく明滅すると。

「はぁぁぁっ……ど、どうして……お姉様って呼ぶと……エルって呼ばれると、すごく嬉しくなっちゃう。はむ……れろ……もっと、もっとお姉様に気持ちよくなって欲しくなっちゃう!」

「ちゅば……ちゅううっ! エル、エル……大好きよ。誰よりも愛してるわ。大好き。絶対に私のモノにしてあげる……ちゅばちゅば……ちゅううっ!」

「んはぁぁぁっ! だめ、止めてっ! それ以上エルって呼ばないで! そんなに言われたら、私も……私も……」

 お互いに秘裂を貪り合い、愛液を啜る音を立てながら、お互いを昇りつめさせていく。

「言って……エルも私のこと好きって言いながら、イクのよ! 一緒にイキましょう、エルっ!」

「ちゅるる……ちゅっ……ちゅうう~! あ、ああ……だ、だめ……お姉様……そ、そんなこと言ったら……私、私……!」

 リリーナの言うがままにすれば、もう後戻りが出来なくなる。しかしそれと引き換えに、想像すらできない圧倒的な興奮が待っていると分かると、エルフィーナは止まらなかった。

「お、お姉様ぁぁぁぁ! ちゅっ……ちゅううっ! い、一緒に……お願い、一緒にイッて下さい! 好きですっ……ちゅば……ちゅううっ……リリーナお姉様、好きっ!」

「あむ……ちゅばあ……れろれろ……わ、私もよエル! 好き、好き好き! エル愛してるわ! イク、イクイクっ! いくううううっ!」

「エルも、エルもイキますぅぅ! お姉様と一緒に……ちゅば……んちゅうっ……お姉様、愛してますうう! いくううううううう!」

 2人の嬌声が重なり合い、2人は同時に身体をピンと伸ばして絶頂に達する。

「はぁ……はぁ、はぁ……」

 リリーナの上で激しく肩と胸を上下させるエルフィーナは、そのまま脱力する。その首のチョーカーは、激しい明滅を繰り返しながらエルフィーナの体内へ魔力を注ぎ込み続けていくと、これまで以上の幸福感をエルフィーナに与える。

 リリーナと肌を重ねている感触が、リリーナの体温が、リリーナとの快楽の貪り合いが、自身にとっての何よりの幸福だと、エルフィーナの脳に刷り込んでくるのだ。

「ふぅ……ふふ、可愛かったわよ、エル」

「んっ……ちゅ……」

 エルフィーナの下から出てきたリリーナは、エルフィーナの身体を優しく抱きしめると、その唇を奪う。するとエルフィーナの方から舌を伸ばし、リリーナを求め始める。

(ダメ……このままじゃ、私……アルフ、助けて……)

 リリーナとの舌の感触を心地よいと感じながら、エルフィーナは僅かに残った理性で危機感を抱いていた。

 こうして日々精神的に追い詰められていく中、エルフィーナは決断したのだった。

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「い、いいのか……エル?」

「うん……アルフだったら、いいよ」

 リリーナによって女同士の快楽を刻み込まれていき、その世界に堕ちていきそうになる日々の中、エルフィーナは一大決心をした。

 エバグリーン家の権力とコネをあらゆる総動員して、夜にアルフレッドが聖十字騎士団の女子寮に入れるように取り計らったのだ。

 そして問題のリリーナに対しては、無理やり遠征任務を押し付けて、女子寮から排除した。そう何度も使える手ではないが……

(大丈夫。アルフと結ばれてしまえば、あんな女のことなんてもう気にならなくなるわ)

 リリーナとの関係が深みにはまればハマる程、つまらない意地を張っている場合ではなく、すぐにでも公にして問題にすべきだと危機感が増す。

しかし同時にリリーナとの関係を消したくないという本能が強くなっていき、結局今エルフィーナがリリーナのことを問題に出来ない理由は当初からは変わっていた。

 つまり、自身の貞操が同性の下級騎士に奪われてしまったというプライドや、恋人に知られることへの羞恥心や罪悪感ではなくなっていたのだった。

 リリーナから与えられる女同士の快感に酔っていたいから、今の状況を保持したいという本能の欲求へと変化していることを、誰よりもエルフィーナ自身が自覚してしまっている。

(それを断ち切るためには……)

 本当の想い人、アルフレッドと身体を結ぶことだ。

 今、エルフィーナがリリーナに抱かされている妙な感情は、あの変態的な行為とこの首のチョーカーによって生み出された偽りの感情だ。

 リリーナとの行為に耽っている時は、とても愛おしい感情を彼女へ寄せてしまう。しかしこうして冷静な時、エルフィーナの想いは常にアルフレッドだけに向けられている。アルフレッドが好きで好きでたまらない。これは純然たる事実だ。

 人が愛することが出来るのはただ一人だけなのだ。だから、エルフィーナが真に愛しているのはアルフレッドだけ。アルフレッド以外の、ましてや同性のリリーナを好きになるはずがない。

 身も心もアルフレッドと結ばれてしまえば、それ以上の幸福はない。きっとリリーナの妙な魔術も打ち破れるはずだ。

「私、初めてだから……優しくしてね」

 アルフレッドがごくりと生唾を飲むのを感じる。緊張しているのはエルフィーナも同じだ。

 女神ファマロスは、婚姻前の姦淫を禁忌としている。特に敬虔な信徒とされている聖十字騎士、しかもその最たるエバグリーン家の人間がその禁忌を破ることは大罪に値する。これはエルフィーナにとっても、生半可な勇気で決断できるものではない。

 事が露見すればエルフィーナ自身は勿論、エバグリーン家自体も危ぶまれることとなるのは間違いない。しかしエルフィーナ或いはアルフレッド自身が口外する以外に、このことが明るみ出ることなど有り得ない。

 それ以上に、リリーナとの関係から抜け出せずに、このままアルフレッドとの愛が無くなってしまうことの方がエルフィーナにとっては怖かった。

「いや……でも……意外な格好だな」

「……え?」

 アルフレッドを自らの部屋に招いたエルフィーナは、目的が目的なだけに、下着が透けて見えているネグリジェ姿だった。以前のエルフィーナであれば、異性の前でその格好を晒すだけでも相当の抵抗があっただろう。しかし、今は羞恥心を感じながらも、むしろアルフレッドを挑発しているようにふるまっている。

 その上、更に彼女が身に付けている下着は、いつものような清廉潔白を思わせる純白の下着ではなく、赤くて派手なレースやガーターベルトがついているものであり、あからさまに雄を誘惑するものだった。

「に、似合わないかな……? 男の子はみんな、こういうのが好きだって教えてもらったんだけど」

「い、いや。そういうのも凄く良いと思うけど、エルが着るのは意外だって思っただけでさ……っていうか、教えてもらったって、誰に?」

「それは、騎士団の先輩に--」

 と、そこまで言ってエルフィーナは慌てて口をつぐんだ。そんなエルフィーナの反応にアルフレッドは首を傾げる。

「どうした?」

「う、ううん! 何でもない!」

 自然にリリーナのことを考えて胸が熱くなってしまっていたエルフィーナは取り繕う様にいう。

(もう! そんなことどうだっていいじゃない、アルフのバカ! そんなことより、早くセックスしたいのに! あの、気持ち良くて、幸せな気持ちになって、フワフワになる……セックス)

 そうやって少しでも油断すると、エルフィーナの頭に浮かぶのは、リリーナとの甘美な行為のことだ。

 そうしてすっかりリリーナのことを受け入れ始めている自分に気づき、エルフィーナは首をぶんぶんと振って、リリーナのことを頭の中から打ち払う。

「アルフ……キスして……」

「エル……」

 エルフィーナが瞳を閉じて唇を差し出す。アルフレッドも緊張したような声を出しながら、そっと近づいてくる。

 顔が近づいていき、2人の唇が重なろうとする。

 緊張しているのは2人とも。お互いの心音が相手に届いてしまいそうなくらいに激しく鼓動している。

(あんな女とのキスでも、あんなに気持ち良かったんだもの。アルフとのキスだと、私どうなっちゃうんだろう……)

 リリーナとのキスの感触を思い出しながら、エルフィーナはアルフレッドの唇の感触を待つ。

 そして、遂に触れ合う唇。暖かくて、柔らかい恋人の唇が触れると--

 そのまますぐに離れる。

「……え?」

 ここから何度も何度も唇を吸い合って、そこから舌を伸ばして、お互いの舌を絡め合わせて、唾液を交換し合って、唾液が滴り落ちる程の貪り合いを--

 そんな恋人同士のキスはこれからなのに、もう終わり?

 思わず拍子抜けしたような声を出して、エルフィーナは瞳を開いてアルフレッドを見る。するとアルフレッドはエルフィーナの顔を伺うように、こちらを見ていた。

「エルの唇柔らかくて……キスって、すごいな」

 照れたように視線をそらしながら、そんなことを言ってくるアルフレッド。

 エルフィーナがまだキスの経験さえなければ、これだけでエルフィーナの胸はときめき、幸せな気持ちになって満足していただろう。

(ち、違う! こんなのキスじゃないわ。キスっていうのは、もっとこう……)

 唾液の音が響くくらいに舌を擦リわせながら、愛をこめてお互いの舌をしゃぶり合うーーそれが恋人同士のキスのはずだ。お互いの瞳を見つめながら、夢中になって貪り合うような、あのリリーナのキスとは全く違う。

「……もっと、して」

 エルフィーナは羞恥心に耐えながら、再びアルフレッドにキスを求める。

 アルフレッドは、おそらくエルフィーナが期待したのとは違う緊張感でうなずきながら、再び唇を重ねてくる。

「ん……ちゅ……」

 再び唇が一瞬触れ合うだけの、優しいキス。

(違う……違う、こんなの……!)

 求めているものが得られないエルフィーナは、耐え切れなくなってアルフレッドの首に腕を回すと、今度は自分から唇を重ねる。

「ん、む……エ、エルフィーナ……」

 エルフィーナから舌を伸ばし、アルフレッドの唇を舐り、彼の口内へ舌を伸ばして、舌を絡める。

「ん……ふ……」

 エルフィーナの積極的なキスに、アルフレッドはくぐもった声を漏らす。

(どうして……どうして、アルフ?)

 しかしアルフレッドの反応は極めて消極的だった。抵抗するようなところはないが、エルフィーナになされるがまま。アルフレッドからは全く反応を返してこない。いや、少しは反応しているのかもしれないが、リリーナと比べると全く足りない。

(足りない……足りないよ、アルフ)

 リリーナはあんなにエルフィーナを求めてくれるのに。あんな貪るように愛を込めてくれるのに、アルフレッドにはそれが全くない。

「ん……ふぁ……すごいな、エル……」

 ようやくエルフィーナから唇を解放されたアルフレッドが顔を赤らめながらそう言ってくる。その熱っぽい瞳で、真っすぐこちらを見つめてくる恋人の瞳を見ると--

 エルフィーナの気持ちは、どんどん冷めていく。

「ベ、ベッドに行きましょう。続きはそこで、ね……?」

 そのままアルフレッドへの想いが無くなっていってしまうのがとても怖くて、エルフィーナは事を速く済ませようと、アルフレッドをベッドに誘うのだった。

□■□■

(どうして……全然気持ちよくない……)

 ベッドに横たわってアルフレッドの愛撫を受けるエルフィーナ。乳房を揉まれ、身体中に舌を這わせられて、優しく秘部を刺激される。その手つきは不器用でたどたどしいものだったが、優しさに満ち溢れており、深い愛を感じるものだった。

 しかし、それでもエルフィーナの胸は全くときめかない。リリーナの時のような、騎士の威厳もエバグリーン家の誇りもどうでもよくなってしまう程の興奮が得られないのだ。

(どうして……どうして? アルフのこと、こんなに愛しているはずなのに……!)

 アルフレッドは懸命に愛撫してくれているのは分かるが、一向に快感も多幸感も得られないことに、エルフィーナは泣きそうになってくる。そんな中、アルフレットの指が秘裂をなぞってくると

「……っつ!」

「あ、ごめん……!」

 全く濡れないそこを強めに刺激されると、思わずに痛みに顔をしかめてしまう。

「む、難しいもんだな。なかなか濡れないんだね」

 苦笑しながらアルフレッドは明らかに焦っていた。エルフィーナの反応も淡白なので、彼も不安なのだろう。

 大好きな恋人を不安がらせて、エルフィーナもだんだんと焦ってくる。

「ね、ねえ。クンニして?」

「クンニ……?」

「そう。オマンコを舐めるの。私、指でされるよりも舐められる方が好き……って……あっ……」

 アルフレッドのために思いがけず言った言葉だが、エルフィーナは発してから気づいてしまう。

 何故エルフィーナがそんな言葉を知っているのか。どうして、そんなことが言えるのか。

 案の定、アルフレッドが不思議そうにエルフィーナの顔を覗き込んでくる。

(うああ……ど、どうしようどうしようどうしよう……あ、でも……)

 こんな時ですら、リリーナのあの舌の感触を思い出してしまう。あの柔らかい舌で、自分が気持ちいいところを的確に刺激してくる。あの舌で舐められながら、自分もリリーナを気持ち良くするあの行為は……

 ーー最高だった。

「はぁ……あぁ……」

 アルフレッドを前にしてリリーナとの行為を思い出すエルフィーナは、興奮する時の癖である、指を口で咥えるような仕草をしてしまう。

「分かった。やってみるよ」

 そんなエルフィーナの反応をアルフレッドがどう受け取ったかは分からない。この場でエルフィーナを追求しなかったのは彼なりの優しさかもしれなかった。

 アルフレッドはエルフィーナの足を押し広げて股を開かせると、その秘肉へ顔を近づけてくる。

(あぁぁ……アルフの舌が、私のオマンコにっ……き、きっとあの女よりも……早く、早くぅ)

 女同士の行為でさえあんなに気持ち良かったのだ。愛する恋人からの愛撫であれば、どれだけ気持ち良くなれるのだろう。エルフィーナはその期待に胸を震わせて親指を咥えながら、それまで一向に濡れなかった秘部を想像だけで濡らしてしまう。

「ん……れろ……」

(……あれ?)

 アルフレッドの舌が秘肉をなぞってくるのを感じる。とても優しい愛のこもった愛撫だ。

 --でも、それだけ。

 リリーナにされた時のような、目も眩むような快感など全くない。

(嘘、でしょ……? どうして?)

「ん……ちゅ……ちゅ……」

 エルフィーナの胸の内など露知らず、アルフレッドは懸命に愛撫を続けてくれる。

 しかし、その優しいだけの愛撫を受けていても、一向に快楽は得られない。エルフィーナが求めているのは、もっともっと、セックスのことしか考えられなくなるくらいの快感なのに。

 期待が大きかった分、この現実に、エルフィーナの胸はアルフレッドの失望感で満たされていく。

「どう、エル? 気持ちいい?」

「う、うん……気持ちいいよ。あ~ん……」

 恋人を気遣うための、あからさまな演技が、余計にエルフィーナの心を空虚にさせる。アルフレッドはそれに気づいているのかは分からないが、一層懸命に愛撫を続けてくれる。

「ね、ねえ……アルフ。そろそろ……」

「……ああ、分かった」

 リリーナとの行為を回想して濡らしたのが、このままでは乾いてしまう。アルフレッドの唾液で多少は秘肉がほぐれたところで、エルフィーナは本番行為をアルフレッドへ促す。

(お願い……これ以上、私を失望させないで……)

「それじゃ、行くよ。エル」

 股を割って腰を突き入れてくるアルフレッド。エルフィーナの秘裂の入り口を探るようにしてくる感触から、その肉棒は硬くそそりっているのが分かる。

(やっ、やだ……どうして……?)

 その肉棒の感触が分かると、エルフィーナはぞっとする。

 アルフからすると、エルフィーナは、未通の秘裂を貫かれるという処女が故の怖さに怯えているように見えたかもしれない。

しかし、決してそういうわけではない。

エルフィーナのこの身体の奥底から湧き上がるのは、そんな恐怖とは無関係な、ただただ純粋な嫌悪感だった。

(気持ち、悪い……!)

 アルフレッドは、あんな愛撫で自分――エルフィーナが、興奮していたと思ったのだろうか。あんな白々しい演技で、本当にエルフィーナが快感を得ていたように見えたのだろうか。

 エルフィーナは、自分とアルフレッドとのあまりの温度差に、心も身体もどんどん冷めていく。

(どうして……どうして? 相手はアルフなのに、あんなに好きだったのに……)

 そんな自分の気持ちを自覚したところで、エルフィーナは認めざるを得なくなっていた。

 もう、自分はアルフレッドのことを愛していいないのでは……と。

「う……く……エルっ……!」

「っああ……!」

 そんなエルフィーナの胸の内は関係なしに、遂に秘裂の割れ目に辿り着いたアルフレッドはゆっくりと肉棒を挿入してくる。乾きかけていたエルフィーナの秘肉は、そもそも入り口も狭く、挿入されようとする異物に強く抵抗するようだった。

「く……き、キツ……」

 アルフレッドは顔をしかめながら呻くようにそう言うが、エルフィーナはそれ以上に

「っいたあああああ! 痛い、痛い! 痛いよぅ、アルフぅ! すっごく痛いっ!」

 まるで腹を裂かれるのではないかというくらいの強烈な痛み。アルフレッドの肉棒が奥へと沈みこめば込む程、ミチミチミチという音を感じくらいな苛烈な痛みを感じる。

「エ、エル……力を抜いて……っく……」

「いやあああああっ! 痛いよぅ! 痛い、いたぁ~い! やだぁぁぁぁっ!」

 あまりの激痛に泣き叫ぶエルフィーナ。アルフレッドは何とかしようと、エルフィーナの頬を優しく撫でたり声を掛けたりするが、エルフィーナは髪を振り乱しながら少女のように苦痛を訴えるだけだった。

 あくまでもエルフィーナのことを想い、ゆっくりと時間を掛けて挿入を続けるアルフレッド。それがかえってエルフィーナの苦痛を長引かせることとなっていくのだが、なんとか奥まで挿入すると、結合部からは純潔の証が流れ出てくる。

「ひんっ……ひんっ……! 痛いよぉぉ……アルフぅ……」

 少しだけ慣れてきたのか、声のトーンは下がりつつあるエルフィーナ。

 一方、流れ出るエルフィーナの血を見ながら、アルフレッドはようやくエルフィーナと繋がれたという実感を持つ。併せて、初めての女性器の暖かい感触にアルフレッドは、容易く限界を迎えそうになると、慌てて肉棒を引き抜く。

「っうあ! はぁ、はぁ……」

 引き抜いたところで、アルフレッドは射精をする。白濁液がエルフィーナの腹へと吐き出される。

「う、ぐ……ごめん、エル。気持ち良すぎて……」

「うううっ……ぐすっ……ぐすっ……うわああああんっ……!」

 しかしエルフィーナはそれどころではなかった。

 期待とは全く違う恋人との行為。崇拝する神が定めた禁忌を犯すという覚悟まで持って臨んだというのに、それは想像すらしていない、壮絶な苦痛しかなかった。

 痛みもそうだったが、それ以上に悲しかったのは、世界で一番愛していたアルフレッドへの想いが急激に冷めていくという自分の気持ちだった。

(も、もうやだ。アルフとはもうセックスしたくない……!)

 エルフィーナにとっては、苦痛と嫌悪しかない最悪の初体験となってしまい、ただひたすらにエルフィーナは泣き続けた。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

 遠征任務を終えて聖王国に戻ってきたリリーナは、報告等の事後処理や身支度などを整えた後に、聖十字騎士団女子寮の寮長室にいた。

「あぁ~ん、リリーナお姉様ぁ。久しぶりに、とっても燃えちゃいましたぁ」

 寮長室のベッドの中で、一糸も纏わぬ姿で、同じく全裸のリリーナに抱き着いているのは、寮長だった。明らかにリリーナよりも年上の彼女は、甘えた声でリリーナの頬にキスをする。

「それで、間違いない? 私がいない間に、エルフィーナ様は男を連れ込んだのね?」

「はい~。エルフィーナ様も色々とバレないように頑張ってたみたいですけど、寮長の私の協力は必須ですからね。間違いありませんよ。鋼鉄騎士団の若いコを連れ込んでいました」

「……ふふ、そう。全部予定通りね」

 その報告を聞いてリリーナは笑みを深める。

(あんな軟弱そうな男が、私以上にエルフィーナを悦ばせることなんて不可能だし……ふふふ、ここで徹底的に男への嫌悪感を強めてあげるわ)

 自分との行為に溺れかけていたエルフィーナが、今更経験もない初心な男との行為で満足できるはずなどない。痛い思いをして終わりだろう。

 エルフィーナが聖十字騎士の禁忌を犯すタイミングやその結果などは、全てリリーナの思惑通りになっていた。

「そういえば、貴女はウルシマス鋼鉄騎士団長や、エルフィーナ様の叔父上であるカイエン様とも面識があったわよね?」

 エルフィーナとは何かしらの因縁がある2人の名を出すと、寮長は嬉々としてうなずく。

「私を紹介してくれないかしら?」

「別にいいですけどぉ……何を考えているんですかぁ? もう、悪い人」

 リリーナは、公にしてはいないが、聖十字騎士団の中でも随一の精神操作魔術の使い手である。短時間であれば、他人を思い通りに操ることなど造作でもない。その術にかかり、今やリリーナのセックスフレンドとされてしまった寮長自身だったからこそ、リリーナが何かしらよからぬことを考えているのは容易に察せられた。

 鋼鉄騎士団団長や、エバグリーン家に連なる聖十字騎士など、この国の重鎮である。リリーナの特殊な性的嗜好の犠牲にするなど、断じてあってはならないことだ。

 が、既にリリーナにとって都合の良い女になっている寮長は、迷うことなく、そのリリーナの要望を受け入れる。

「お姉様のためなら、私なんでもしますからぁ。だから、これからは週に4日……ううん、せめて3日は可愛がってくださいよぅ」

 そんな風に甘えてくる寮長を、リリーナは冷めた目で見る。

(この女も、そろそろ面倒臭くなってきたわね。色々便利だったから仕方なく付き合ってきたけど……そろそろ切り時を考えないとね)

 リリーナにとって興味があるのは、まだ自分に興味が無い相手。男の恋人がいると、尚良い。

 生物として当然である異性への欲求や愛。その当然を、快楽や欲望でもって、同性へのものへと歪めていく。その過程に至上の興奮を覚えるのだ。逆に言うと、この寮長のように、すっかりレズビアンとなってしまった相手には興味が無い。

(ふふふ……)

「っあ……お姉様、また濡れてきてる……」

 エルフィーナがこの寮長のように、聖十字騎士として、エバグリーン家としての誇りなど捨てて自分に甘えてくる姿。それこそ今は恋人アルフレッドの前でしか見せない姿を自分の前で見せるようになった時のことを思い浮かべるだけで、リリーナの身体は熱く火照るのだった。

聖十字騎士エルフィーナ ~百合と背徳に溺れていく女騎士~ Part.4

文章:白金犬



 それは、エルフィーナがリリーナとの関係をずるずると続けてから半年程が経った時だった。

 鋼鉄騎士団兵舎内の会議室にて、エルフィーナは団長のウルシマスに犯されていた。

「はぁっ、はぁっ! このクソ生意気な雌ガキがっ! 一丁前に逆らいやがって!」

「や、止めなさい、ウルシマス団長! こ、このような……うううっ、い……痛いっ! 痛いですっ!」

 犬猿の仲である聖十字騎士団と鋼鉄騎士団の今後の関係について相談があるということでウルシマスに呼び出されたエルフィーナは、部屋に入るなり襲われたのだった。

 高貴なる聖十字騎士団の上級騎士の制服を半脱ぎにされて、エルフィーナは壁に手をついた状態で、後ろからウルシマスに腰を打ち付けられていた。

「てめぇ、うちのアルフレッドとヤッたらしいじゃねえか。聖十字騎士様とあろう方が、女神様の教えを破っちゃあいけねえよなぁ?」

「ど、どうしてそれを……っあく! ら、乱暴にしないで……っあああ!」

 ウルシマスはエルフィーナの美しい金髪を乱暴に引っ張り上げると、下卑な笑みを浮かべる。

「これを聖十字騎士団長に報告したらどうなるかなぁ? お前の退団は言うまでもないが、平民のアルフレッドが聖十字騎士ーーしかも、エバグリーン家のご令嬢に手を出したとあったら、極刑は免れないだろうな」

「っ! そ、それは……!」

 表面上は焦って見えるエルフィーナだが、実はアルフレッドへの想いはそれ程ではなかった。

さすがに自分のせいで彼が極刑に処されることは避けたいという気持ちはあるが、それ以上にエルフィーナが動じてしまったのは、自分が聖十字騎士を罷免されてリリーナとの関係が終わることの方だった。

「黙っててほしかったら、分かってるよなぁ?」

「う、く……こ、この卑怯者がっ……!」

 秘部にねじこまれている肉棒の苦痛に、顔を歪めて憎悪の視線をウルシマスへ向けるエルフィーナ。しかしそんなエルフィーナの反抗的な目つきすら楽しむように、ウルシマスはけらけらと笑っている。

(最悪……アルフ以外に、こんなことされるなんて……!)

 悔しいーーしかし、エルフィーナにはどうしようもなかった。

 従属の意志を示すように、エルフィーナは目を伏せる。

「さすが頭の良いご令嬢は物分かりが良いなぁ。それじゃ、楽しませてもらうとするか」

 そうして、エルフィーナのことなど全く配慮しない、ウルシマスが己の欲望を満たすだけの乱暴な性行為――エルフィーナにとって痛く苦しいだけのその行為は、随分と長い時間続けられた。

□■□■

「うあっ……あああっっ……!」

 エルフィーナの艶を帯びた声が、リリーナの寝室に響いていた。

 アルフレッドと関係を持ち、ウルシマスから強姦された後も、リリーナとの行為は毎夜のように続いていた。

 リリーナの手により、次々と開発されていくエルフィーナの身体と心。既にリリーナへの抵抗感はすっかり失せていた。

 2人は生まれた姿のままベッドの中で絡み合っており、リリーナはエルフィーナの美しい乳房を舌で愛撫していた。

「っんん……ふああっ……!」

「可愛いわ、エル。ここが気持ちいいのね? くす……どうして欲しいのかしら?」

 ウルシマスとは違い、エルフィーナが興奮して快楽を得られるように、リリーナは官能的な愛撫を施してくる。

「う……ぁ……し、舌で乳首を潰されるのが好き……です……」

 瞳をトロンと蕩けさせながら、恥ずかしそうに言葉を紡ぐエルフィーナ。そんな彼女の態度に、リリーナは妖艶な笑みを浮かべると

「こうかしら……れろぉぉ……」

 リリーナは舌を伸ばし、固く尖っているエルフィーナの乳首を押しつぶすように押し付けていくと、エルフィーナはビクビクと身体を震わせる。

「っあ……そ、それぇ……すごく、刺激的っ♡ ああっ、もっと……もっと強くっ♡」

 エルフィーナが悦びの声を上げると、リリーナは顔を動かしながら舌の動きを激しくして、そのままエルフィーナの乳首を激しく責め立てる。

 アルフレッドのように優しいだけではない。優しくて、官能的で、激しい愛撫。

「す、すご……気持ちよくなっちゃう……ああっ……♡」

 エルフィーナは感じている時にいつもそうするように親指を噛みながら、甘い声を漏らす。

「どう? 優しいだけで軟弱な男だったり、自分のことしか考えていない男だったりよりも、同じ女の私の方が気持ちいいでしょう?」

 乳房を愛撫されて身悶えるエルフィーナの背中を抱き起して、お互いの身体を密着させるリリーナ。

 リリーナの柔らかくて暖かい肌の感覚が伝わってくると、エルフィーナは思わず頬が緩んでしまう。

(な、なんで……? アルフの時と全然違うよぉ……!)

「どう? 女同士のセックス……良いでしょう?」

「わ、私は……それでも女同士は……そもそもこういった肌の重ね合いは、愛する者同士でやるもので……んむ」

 身体はすっかりリリーナに溺れている割には、相変わらず心は強く保っている。女性同士の行為を否定しようとするエルフィーナに、それを許さないように、リリーナは唇を塞ぐ。

「女同士のセックス、よ。ちゃんと言葉にして言いなさい」

「ん、む……ちゅ……ちょ、止め……んむ」

 リリーナは何度も何度もエルフィーナの唇を啄むようにしてくる。エルフィーナは、そんなリリーナの唇を感じる度に、強く保とうとする心がドロドロに蕩けさせられていく。

「ん……ちゅ……わ、私は……女同士のセックスは……ちゅうううう……」

 リリーナの望む言葉を言うと、ご褒美と言わんばかりに、ねっとりとエルフィーナの唇を舐ってくるリリーナ。そのままエルフィーナの瞳をのぞき込むようにして

「もっと……何度も言うのよ。女同士のセックス……女同士のセックス……」

「ぅあ……あぁ……」

 まるでエルフィーナの脳に直接刷り込むように、囁きかけるリリーナ。リリーナの首のチョーカーが明滅して、エルフィーナの理性を揺さぶり始める。

「お、女同士のセックス……ちゅば……ちゅ……セックス……れろれろ……女同士のセックス……」

「レズセックス……ちゅ…れろ……れえれろ……気持ちよくて、幸せになるレズセックス……ちゅううっ」

「あむ……んぐ……レ、レズセックス……ちゅば……ちゅうう……幸せになれるの……ちゅば……女の子同士のレズセックスで、気持ちよくなる……ちゅううう」

「そうよ。レズセックス……ちゅば……ちゅっ……レズセックス好きになるの。レズセックスなら、貴女が好きなベロチューもこんなに……ちゅっ、ちゅっ、ぢゅるるるるっ」

「~~っ♡ れろぉぉぉ♡ んふえぇぇぇ……あっ、あっ……♡」

 お互いの瞳を見つめ合いながら、リリーナはエルフィーナの舌を吸いだすようにして、音を立てながらしゃぶっていく。

「んっ……んっ……っぷはぁ……ふふ、これが女同士の、と~っても気持ちいいキスよ。レズキスよ」

「ふっ……ふあっ……はぁ……レズキス……はぁぁ♡」

 リリーナが顔を離すと、お互いの伸び切った舌が唾液の糸でつながる。

「どうかしら、エル? キスの本当の意味、理解出来た? これでもまだ、恋人と愛を誓い合う神聖な儀式だとでも言える?」

「うあ、あ……」

 熱っぽい瞳で見つめられて、両手を握られるエルフィーナ。その妖艶な視線にさらされれば、エルフィーナはもはや逆らうことが出来なかった。

「ち、違います……キスは、女の子同士で気持ちよくなるもの……♡ 愛とか神様とか関係なくて、舌を絡めて、唾液をべとべとに絡めて……お姉様、レズキスでもっと幸せにしてっ♡ んちゅうう……」

 そうしてエルフィーナは伸ばした舌をそのままに、自分からリリーナの舌を求めてくる。

(ふふふ、もう少しね……)

 エルフィーナからの積極的な舌の動きに合わせて舌を絡めるリリーナは、目を細めながら、エルフィーナが女性同士の快楽に堕ちていくのを楽しんでいた。

□■□■

(この、チョーカーのせいよっ!)

 何度も何度もリリーナと身体を求めあった後、冷静に戻って嫌悪感に苛まれていたリリーナは、自室に戻ると、首に装着されたチョーカーを外そうとしていた。

 リリーナは、エルフィーナが本気で外そうと思わないと外れない呪いが掛けられているといった。しかし実際にはそんなことはなく、簡単に外すことは出来たのだが、その途端に強烈な空虚感に襲われる。

 チョーカーが無くては、リリーナを近くに感じることが出来ない。リリーナのことを忘れてしまいそうになることが怖くて、チョーカーを外しても、それを再び付けたいという強烈な焦燥感に駆られるのだ。

 結局、洗濯等で外すことはあっても、その後に再び装着する――それがリリーナの思い通りであると分かりながらも、抗えないでいた。それがリリーナの言う「呪い」の本当の意味なのだろう。

 しかし――

「……え?」

 今この時、チョーカーを外してみると、その後に襲ってくる空虚感も、再び付けたくなるような焦燥感も無かった。妙な魔力的な圧迫感も無い。

 唐突に解放感に包まれるエルフィーナ。

 呆気なさ過ぎていまいち実感がわかないが、これでリリーナの呪縛から逃れられたようだ。

「あ、あはは……そ、そうよね。私が女同士になんて……そんな不潔な行為……」

 おそらくはこの魔術具に加えて、リリーナからも直接強力な精神魔術を受けていたに違いない。だから、あのリリーナの部屋でのことは、自分の本心ではないのだ。操られていたにすぎない。

 --本来の自分の心は、まだこんなにも気高く潔癖を保っていられる。

(アルフ……良かった……♪)

 身体は汚れてしまったものの、心はまだ穢れていないことを実感し、エルフィーナは心底安心して深く息を吐いた。まだアルフレッドとはやり直せる。まだ自分はアルフレッドを好きでいられる。

「それと……ウルシマスとリリーナ……ただではおかないわ」

 よくよく冷静に考えれば、無理に自分1人で抱え込む必要なんて無いじゃないか。

 あれだけ卑劣で最悪な犯罪者には、相応の鉄槌を下さねばならない。個人的な復讐ではなく、きちんと法に則った罰を与えることこそが、女神ファマロスに仕える聖十字騎士として、そしてこの国の支えであるエバグリーン家の人間としての務めのはず。

 確かに自分の恥にはなるが、それは自分の弱さが招いたことだ。受け入れて、未来に活かすしかない。それに、アルフレッドだって、それで自分を軽蔑するはずなどないと信じている。

 魔術具であるチョーカーの呪いから解放されたことで、それまでの誇り高き清廉なる心を取り戻すことが出来たエルフィーナは、そうやって自分の弱さも恥も受け入れながら、最悪な現実にも真っ直ぐと向き合い始める。

「そうしたら、まずはおじ様に相談しないといけないわね。すぐにでも……」

 と、エルフィーナが動き出そうとしたその時、唐突に部屋のドアがノックされる。

 不意のノックにエルフィーナは虚を突かれたが、すぐにドアを開けると

「おじ様? 丁度良かった……」

 訪ねようと思っていた相手が来てくれたことで意識が一杯になっていたエルフィーナは、明らかにいつも優しい叔父の様子が違うことに気づいていなかった。

「うおおおおおおおっ!」

「っ? お、おじ様っ?」

 だから完全に不意を突かれて、エルフィーナはおじーーカイエンに押し倒される。

「はぁっ、はぁっ! ええ……エルフィーナぁぁぁ……」

「お、おじ様っ! どうしたのですかっ! 正気に戻って……おじ様っ!」

 唾液をボタボタと零しながらエルフィーナを見下ろす目には、精神魔法の影響を受けた者特有の瞳ーー赤い光が宿っていた。

□■□■

(どうして……どうして、こんな……っ!)

 カイエンがエルフィーナの部屋を訪れてから、カイエンはエルフィーナの頭を両手で抑えながら、自分の肉棒を咥えさせていた。

「おおぉぉぉ……エルフィーナの口が、舌がっ……おおおおおっ!」

「ふぐ……んんん……んぐ……」

(に、苦い……臭いし、大きくて、口が裂けそうっ! これが男の人の……き、気持ち悪い……!)

 生まれて初めての雄の象徴への口唇奉仕だったが、その悍ましさに吐き気を堪えるのがやっとだった。

 口は塞がれて、喉奥まで突っ込まれれば、満足に息も出来ない。そんなエルフィーナの苦痛など全く配慮せず、カイエンはエルフィーナの口をまるで道具のようにして、腰を振って快楽を貪っていた。

(い、いやぁっ……臭くて、汚くて……吐きそう。気持ち悪い……! 男の人って、こんなのばっかりで……!)

 アルフレッドも、ウルシマスも、カイエンも、全て自己満足な行為しかしない。

 恋人のアルフレッドも、愛など優しさなどといって、エルフィーナに全く快楽を与えない。

 ウルシマスやカイエンは、逆に自分の快楽のためだけに、エルフィーナの身体を乱暴に扱う。

 その点、リリーナだったら--

「うぐああああああぁぁぁっ!」

「っきゃああ!」

 エルフィーナの口に満足したのが、咆哮のような声を上げながら、カイエンは彼女の身体を乱暴にベッドで押し倒した。そしてスカートの中に手を入れると、力任せにショーツをずりおろそうとしてくる。

「や、止めてっ! 止めて下さい、おじさまっ! 正気に戻って……いやぁぁぁぁぁっ!」

 普段は姪思いで、冗談を言ったりすることもするあれだけ優しい叔父が、まるで性欲の権化のようにエルフィーナを襲ってくる。この時のエルフィーナは、恐怖と混乱で正常な思考が出来ないーーつまり、リリーナの関与を疑える程の余裕が無かった。

 だから、単純に信頼していたおじに裏切られたという絶望感しかなく、ただ必死にもがきながら助けを求める以外のことが出来ない。

「うう……ぐす……おじ様、お願い……痛いのは嫌……嫌なんです……」

 もう逃げられない覚悟をしたエルフィーナは、アルフレッドやウルシマスとの行為を思い出す。あの激烈な痛みと壮絶な苦しみしかない挿入行為を思い出すだけでも、身が竦み、気が遠くなるのだった。

「エェェェェルフィイイナァァァ……」

 しかし強力な精神作用を受けているカイエンは、今は獣そのものになっている。可愛い姪の許しを乞う声など届くはずが無い。

 満足に濡れてもいないエルフィーナの秘裂に、大きく屹立した肉棒を力任せに挿入する。

「んぎぃああああああああっ?」

 目を剥きながら、これまで生きてきた中で最大の痛苦に苛まれる声を上げるエルフィーナ。

「い、いやぁぁぁぁっ! 痛い、痛い! おちんちん、痛いの! オマンコ、裂けちゃうっ!」

 あまりの苦痛に正気すら奪われたエルフィーナは、リリーナとの行為で刷り込まれた淫語をそのまま叫びながら、必死になって許しを求める。

 しかし獣となったカイエンは、ただひたすらに腰を振って自らの欲望を満たすだけだ。

「ふんっ! ふんっ……ふおおおおおおっ!」

「や、やだぁぁぁぁっ! すごく痛いっ! もう嫌っ! おちんちん嫌いっ! 臭くて汚くて、気持ち悪いのっ! 大嫌いっ! 男の人とセックス、もうしたくないよぉぉ!」

「ふおおおおおおおおっ!」

 泣き叫ぶエルフィーナの姿が興奮を誘ったのか、カイエンは腰の動きを速めると、射精の瞬間に素早く肉棒を引き抜いて、エルフィーナの腹に白濁液をぶちまけた。

「あっ、あうっ……ひ、ひどい……うう……ぐす……」

 あまりにもひどい仕打ちにエルフィーナは涙を流しながら、尚も怯えた声を絞り出す。

 しかし、カイエンの肉棒は全く萎えることを知らない。

 カイエンは、次はエルフィーナの身体を持ち上げて四つん這いにさせると、次は後ろから犯し始める。

「いやあああああっ! もういやっ! 本当に嫌なのぉっ! おちんちん、気持ち悪いっ! 臭い! 汚い! 痛いよぅぅ!」

「おおおおおっ! んおおおおおお~!」

 しかし、そんなエルフィーナの悲痛な声がカイエンに届くことなく、その後数時間にわたってエルフィーナはカイエンに犯され続けるのだった。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

 カイエンに強姦されたことも、エルフィーナは事実を外に漏らすことが出来なかった。

 信頼していた叔父に襲われたことは相当にショックだったが、それでもカイエンが処罰されることは、心優しいリリーナにとっては、充分に躊躇われる理由であった。しかも、当の本人は、それからも今までと変わりなくリリーナと接してくるのだ。まるで、記憶が無いかのように。

(おそらく、本当に記憶が無いのね……)

 そこまでして、エルフィーナはようやくリリーナの関与を察することが出来た。

 だから、その間にリリーナに呼び出された時に、そのことを問い詰めようとしたが

「あら、せっかくのあのチョーカーを外してしまったの? ふふ、でも私の指、気持ちいいでしょう?」

「き、気持ちいいー! 優しくて、激しくて、愛がこもっていて……気持ちいいです!」

 あの魔術具を外してもリリーナは動じることなく、相変わらず--いや、今まで以上に官能的に責められると、エルフィーナは何もかもがどうでも良くなっていく。

 時には指で絶頂に達せられ

「はむ……んちゅ……ちゅるるっ……ん……」

「ああんっ……! いいわ、エル。随分上手になったわね。どう、お姉様のオマンコの味は。おちんちんと比べたらどっちが美味しい?」

「ちゅばっ……ちゅううう……お、お姉様のオマンコの方が、エッチで美味しいです……れろれろ……はぁ、好き……♡」

「おちんちんよりも?」

「男の人のおちんちんは、臭いし汚くて、見ているだけでも吐きそうになります。だからオマンコの方が、綺麗で甘くて、すごくエッチです。ちゅ……ちゅううっ……癖になりそぉ、オマンコの味♡ オマンコ、好きぃ♡」

 舌での奉仕で、女性器の味を刷り込まれたり

「どう……女同士だと、こんなことも出来るのよ。ぁあ……あんっ……!」

「あんっ……! すごいっ……乳首同士がキスしてるっ! もっと、もっと……あぁんっ! ヌルヌルして、お姉様の乳首と擦れてるっ!」

 身体中にローションを塗りたくりながら、互いの乳首同士を擦り合わせたり

「どう? レズセックス、すごいでしょう?」

「す、すごいっ! レズセックスすごい! このままじゃ、レズセックスに溺れちゃう……! レズになっちゃう……!」

 ただひたすらに女同士の快楽を刷り込まれ続けるエルフィーナ。

 それでも、魔術具を外したせいもあってか、行為が終わった後は、エルフィーナは理性を取り戻すとリリーナをキッとにらみつける。

「はぁ……はぁ……わ、私は貴女を絶対に許しません。こんな姑息な行為などに、絶対に負けないっ! どうせウルシマス団長もおじ様もあなたの仕業でしょう? 必ず貴女を罰してしてみせます」

(へえ、ここまで来て、まだそんなことを言っていられるなんて、正直驚きだわ)

 胸中で驚きながらも、リリーナは余裕の笑みを浮かべていた。



聖十字騎士エルフィーナ ~百合と背徳に溺れていく女騎士~ Part.5

文章:白金犬




 エルフィーナとリリーナとの関係が続いて1年が経過しようとしていた。

 この時、とある日を境にリリーナからの呼び出しが途絶えていた。それまでは毎日のように行為に及んでいたにも関わらず、急にそれを止められて、開発されていたエルフィーナの身体は疼いていた。

(でも、今なら……)

 エルフィーナは、あの初めて結ばれた日以来、再度アルフレッドを自室に招いた。

 今なら身体が火照っていて仕方ない。これであればアルフレッドとの行為でも快楽を得られるはずだ。そうすれば、リリーナに刻まれた歪まれた性癖も、正しいアルフレッドの愛で上書き出来るだろう。

 正直、ウルシマスやカイエンに立て続けに強姦されたことで、男性との行為への抵抗感はすさまじかった。それでもアルフレッドへの想いを取り戻したい、リリーナとの関係を解消したいとの思いから、その嫌悪感を必死に抑え込んでアルフレッドと身体を重ね合わせた。
 
 しかし--

(う、く……やっぱり、痛いっ……! それに、すごく気持ち悪い!)

 今度はエルフィーナがアルフレッドに跨る格好で行為に及んだが、唇の触れ合いは物足りないどころか気持ち悪い。男性器を挿入しても、苦痛と嫌悪感しかない。いくら身体が火照って、秘部が濡れそぼっていても、男性そのものに対する嫌悪感はどうしてもぬぐえ切れなかった。

 だから、当然快楽も興奮も無い。

「それじゃ、動くね……」

 それでも、何とか必死になって腰を動かし始めるエルフィーナ。

 そうやってエルフィーナがアルフレッドの肉棒を悦ばせていると

「……っう!」

 あっという間に、アルフレッドは限界を迎えて射精してしまう。

「はぁ、はぁ……ご、ごめんエル。気持ち良すぎて……」

「--ううん」

 アルフレッドだけが先に満足すると、エルフィーナは彼の横に寝そべる。

(ずるい……アルフだけ勝手に気持ちよくなって……)

 アルフレッドの満たされた顔を見ていると、なんとも言えない気持ちになっていく。自分の身体は全く満足していない。そっと秘部に指を這わせると、クチュという淫音が聞こえる。しかし、男性器を受け入れたいとは全く思わない。

 思い出すのは、リリーナの指や舌の感触だ。

 あの指で狂わされたい。あの柔らかい舌と、唾液を絡めながら濃厚にキスをしたい。

「じゅる……」

 もう何日もご無沙汰となっているリリーナの体温を思うと、エルフィーナは物欲しそうに舌なめずりをしてしまう。

「そういえばさ、もうすぐエルの誕生日だったよな」

 そんなエルフィーナの胸中など、やはり察することもなく、アルフレッドが能天気に聞いてくる。

「えっ? あ……そ、そうだね……」

「俺達も付き合って1年以上経つし、俺もエルもお互いの騎士団の中でそれなりにやってきたから……それに、こういうこともしちゃってるしさ。そろそろ、良いかなと思うんだ」

「……そう、だね」

 何か意を決したような口ぶりに、エルフィーナはアルフレッドの意図を察する。

 おそらく、アルフレッドはエルフィーナの誕生日に、正式に婚約を結ぼうとしている。

 --リリーナを知らない頃のエルフィーナであれば、それだけで胸がときめいてしまい、幸せで頭がおかしくなってしまいそうだっただろう。

 しかし、今のエルフィーナはリリーナを知ってしまっている。

「ありがとう。嬉しいわ、アルフレッド」

 そんな彼女は、もう恋人を愛称で呼ぶことなく、公の場の騎士口調で空虚な返答をするだけだった。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「どうされましたか、エルフィーナ様?」

 エルフィーナの部屋は、聖十字騎士団の女子寮の中でも、限られた上級騎士用の高級な部屋だった。その部屋へ、エルフィーナは公務としてリリーナを呼び出していた。

「お仕事であれば執務室の方に呼んで下さればよかったのですが……」

 リリーナを部屋に招きいれたエルフィーナは、彼女に背を向ける格好で、窓から外を見ている格好だ。聖十字騎士団上級騎士の制服を見事に着こなし、慄然と立つその後ろ姿は、いつもながら精悍で高潔で、異性同性問わず見惚れてしまいそうだ。

「大事なお仕事です、リリーナ先輩……」

 いつも通りの、透き通った凛とした声でそういうエルフィーナが、ゆっくりと振り向くと--

 その顔は、媚びたように笑いながら、頬を赤く染めており、恋人アルフレッドの前でしかーーいや、それ以上の雌の顔をしていた。

「お姉様ったらぁ。分かってるくせにぃ……ずっと寂しかったんですよ」

 いきなり甘えたような声色になり、リリーナへと歩み寄るエルフィーナ。すると制服のポケットから、何か黒く細いものを取り出す。

 それは、以前にエルフィーナが強固な意志でもって外した、リリーナから付けられた魔術具ーーリリーナへの劣情を促進させるチョーカーだった。

 エルフィーナは恥ずかしそうに笑いながら、自らチョーカーを付けた。

「アルフレッドと……気持ち悪くて汚らしい男と初めて関係を持ったこの場所で、私を抱いて下さい。嫌な思いをお姉様とのあま~いセックスの想い出の場所に塗り替えて欲しいの。お願いします♡」

 トロンと目尻を下げた表情で、エルフィーナは歪んだ悦楽に蕩けた笑みを浮かべるのだった。

□■□■

「あ~っ……幸せ幸せ幸せっ……気持ちいいっ♡」

 その日、エルフィーナは人生で至福の時を過ごしていた。

 想い人と身体を交わらせることで得られる快楽に、完全に溺れていた。

「どう? これが女同士のセックスなのよ。おちんちんなんていらないの……オマンコとオマンコを擦り合わせて……っんあああ!」

 ベッドの中で、リリーナはエルフィーナの片脚を持ち上げなら、お互いの女性部分を擦り合わせていた。

「んあああああ~っ! すごいっ! 女同士のセックス気持ちいいっ! 男なんて、いらないっ……レズセックス、気持ちいいよぅ!」

 リリーナの腰が振れる度に、エルフィーナはビクンと身体を反らせて快楽の声を漏らす。

 女神の教えだとか、女同士だとか、何をつまらないことにこだわっていたのだろうか。

 この快感がこそが全ての答えだ。快楽こそが、幸せなのだ。

 その前には、騎士としての誇りも、家名の威厳も関係ない。気持ち良さの前に、それらは全て何も意味も無い。

 それを教えてくれたリリーナは

「ああぁ~……お姉様ぁ♪ エルは、エルはぁ……んはぁぁぁぁっ!」

「ふふふ、可愛い娘。それじゃ、お望み通りトドメをさしてあげる。エルを変態レズビアンに堕としてあげるわ」

 自分の舌でビクビクを悶えるエルフィーナ--リリーナはその首に巻かれているチョーカーを指でなぞると、光を帯び始める。

「もっと……もっと下品になりなさい。女同士の快楽の前に、礼儀も常識も理性も不要よ。恋人には聞かせられない、汚い言葉をたくさん吐きなさい。ほら、ほらぁ♪」

 緩急をつけた腰の動きで、エルフィーナを翻弄するリリーナ。

 敏感な部分のこすれ合いの、程よい刺激だが、絶対にそれ以上は昇りつめられない絶妙な腰遣いに、エルフィーナはだらしなく舌を伸ばして、唾液を零してしまう。

「はううっ……あっ、あっ……♡ こ、この焦らされる感覚……好きぃ♡ お姉様のセックス、上手過ぎるぅ♡ 男のおちんちんセックスと全然違うのぉ♡ ま……ま……マン汁が溢れちゃうよぉ♡」

 リリーナに刷り込まれた下品な淫語を口に出すと、エルフィーナの心臓の鼓動がドクンと高鳴る。それだけで、エルフィーナは一人で表情を蕩かせてしまう。

「あ、う……い、今私……すごいこと言っちゃったぁ……♡」

「ふふふ、いいのよ。すごく変態っぽい♪ 普段は鋼の意志を持っているエルも、女の子前ではすぐにオマンコユルユルになってマン汁をダラダラ垂れ流す雌になっちゃうんだものね。ほらっ、ほらっ……オマンコセックスどう? こうしてクリトリスを……女の子のおちんちん同士を擦り合わせると、すごくいいのよ♡」

 リリーナがそう言いながら腰の角度を変えると、今度はお互いに肥大した陰核同士を押し付けて、擦り合わせる。

「っああああぁぁ♡ こ、これ……すごっ……お姉様のクリトリスが、エルのクリトリスを潰してりゅっ♡」

「違うわよ。女の子のおちんちん、よ♪ 男とは違う女のおちんちん、擦り合うと気持ちいいわね~」

「き、気持ちいいぃっ♡ 女の子同士のおちんちん、擦り合わせると気持ちいいのっ! エルも腰動いちゃうっ♪ エルのおちんちん、お姉様のおちんちんと擦っちゃうよぅ♡」

 リリーナの動きに合わせてエルフィーナも腰を動かし始める。お互いが快感を得るために腰を動かし始めると、エルフィーナだけではなく、リリーナにも強烈な快感が伝わってきて、すぐにお互い限界が近づいてくる。

「はぁっ……はぁっ……素敵よ、エル。このまま変態レズビアンになっちゃう? 私のオマンコに負けて、おちんちん嫌いの変態レズビアンになっちゃおっか♪」

「な、なるっ……なりますぅっ! トドメ、さしてっ……!」

 もはや理性の色が消え失せた瞳で見上げるエルフィーナを見て、リリーナは嗜虐的な笑みを浮かべながら

「いいわっ……もう戻れないくらいに、脳みそぐちゃぐちゃにしてあげる。だから、認めなさい。私のオマンコに完全敗北したって。一生女の子しか愛せない変態レズビアンになって、これからの一生を生きるって、誓いなさい!」

「ふあああっ……うああっ♡ あっ♡ は、激しいっ……!」

 グチュグチュと音を立てながら、リリーナがエルフィーナを絶頂に追い詰めるべく、腰遣いを本気のそれへと変えていく。

 リリーナの言う通り、もはやエルフィーナはまともな人間の思考などできないほどに頭の中を蕩けさせられて

「エ、エルはぁ……リリーナお姉様のオマンコに、完全に負けちゃいましたぁぁ♡ もう女の子しか愛せないっ♡ エルのオマンコは、もう女の子とセックスするためのものですっ♡ 残る一生、ずっと女の子とセックスしますからぁぁぁ♡

 んあああああぁ~~♡ なるっ、なるぅぅぅ♡ 変態レズビアンになっちゃう♡ エルは、変態レズビアンになるのぉ♡ あああああ~、脳みそがぐちゃぐちゃになりゅうう♡ 気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいっ♡ オマンコセックスで、いきゅううううううう~♡」

「はぁ、はぁ……いいわ、エルっ♡ これで、貴女も立派なレズビアン……っああああああ~♡」

 呂律が回らないくらいに快楽に溺れたエルフィーナの片脚にギュッと抱き着くようにしながら、リリーナが最後に腰を深くグラインドさせる。すると、エルフィーナとリリーナは、激しく身体を痙攣させながら、同時に絶頂に達した。

「はぁ……はぁ……うふ、うふふふ……可愛い、エル♡ 生まれ変わった気分はどう? ほらぁ……」

 激しい絶頂の余韻に酔いながら、リリーナはふらふらになりながらエルフィーナの上に覆いかぶさすようにすると、激しく明滅しているチョーカーを指でなぞる。

 未だ絶頂の余波で意識がもうろうとしているエルフィーナは、更にチョーカーから流れてくる魔力にビクンビクンと身体を震わせると。

「あ、あはは……お姉様。エルは……エルは女の子大好きになりましたぁ♡ これから一杯、レズセックスの良さを広めていきたいですぅ♡」

 そうして完全に同性の快楽に堕ちたエルフィーナの至福の表情を見て、口づけをするリリーナ。

(さて……あとは最後の仕上げだけね)

聖十字騎士エルフィーナ ~百合と背徳に溺れていく女騎士~ Part.6

文章:白金犬




 女神ファマロスを祭る大聖堂。

 聖王国に住まう人、特に敬虔なるファマロスの信徒である聖十字騎士は、ここで婚姻の儀を捧げることとなる。

 ステンドグラスから日光が差し込む昼下がりのその時、その聖なる礼拝堂にて、エルフィーナとリリーナは快楽を貪り合っていた。

「あっ、あああっ……ファマロス様の前でお姉様と愛し合えるなんて……ちゅっ……ちゅうう……」

 エルフィーナはウェディングドレス姿ーー但し、ヴェールやグローブやタイツなどのみで、それ以外は全裸に近い衣装だった。並ぶ礼拝堂の机に座るリリーナは、いつもと同じ下級騎士の制服を着崩すようにして乳房などを曝け出しており、そのリリーナの膝の上にエルフィーナは乗っていて、リリーナの首に腕を回しながら唇を貪り合っていた。

「本当に、お姉様のお嫁さんになったみたい♡ この場所で、この衣装でレズセックス出来るなんて……あむ……ちゅば……ああ、好き♡ レズキス、大好き♡ ねえ、お姉様、おっぱいもキスしよ。んっ……んんっ……♡」

 エルフィーナは身体を密着させていくと、リリーナの乳房と自分の乳房を押し付けるようにしながら、その先端部を擦り合わていく。

「ふふっ、エルは本当にこれ好きね」

「だ、だってぇ……男となんかじゃ絶対に出来ないもん☆ っあん……お姉様の乳首、固いっ……♡ エルの乳首も悦んでるの分かりますぅ? えいっ、えいっ……こうやってコリコリして……あああぁ~、きもちいいっ♡ ファマロス様ぁ、レズセックスって最高の気持ちいいですよぉ♪」

 女神像の前で、快楽に溺れるエルフィーナとリリーナ。2人がその行為に夢中になっていると--

 突然、礼拝堂の大扉が開かれる。

「エ、エルっ……? これは……?」

「ア……アルフ?」

 現れたのはエルフィーナの恋人アルフレッドだった。彼をここに呼び寄せた張本人であるリリーナは、2人に知られないように静かに冷たい笑みを浮かべる。

「これが、本当のトドメよ。愛する彼氏の前で、変態レズビアンになったエルの姿を見せてあげなさい」

「っえ……そ、それは……」

 さすがにエルフィーナも、リリーナが作り出した状況に動揺を隠せない。そんな僅かに抵抗の色を見せたエルフィーナだったが、すかさずリリーナがその首筋にキスをしながら、乳房を責め始める。

「んあっ♡ ああぁ~ん♡」

「エ、エルっ……?」

 自分との行為では聞いたことのないような、明らかに艶を帯びた甘い声を漏らすエルフィーナの様子に、アルフレッドは目を剥いて驚く。

「アルフレッド君だったっけ? ごめんなさいねぇ。君の情けない軟弱おちんちんじゃ満足出来ないって言うから、エルのこと私が寝取っちゃった☆」

「は、はぁ? 意味が分からない……! エル、しっかりしてくれっ! 無理やりなんだろ? なあ、エルっ! 聞いてくれよっ!」

「はぁ、はぁ……っう……アルフぅ……」

 こんな痴態を前にしても、アルフレッドは愛するエルフィーナを信じて、真摯で真っすぐな瞳を向けている。そんな一途なアルフレッドの想いに触れて、完全に溺れていたエルフィーナの瞳に正気が戻りかける。

 --が

「今度はエルからも愛して欲しいわ。ほら、いつも貴女を気持ちよくしてる私のお・ま・ん・こ♡ 今日は貴女が好きなようにしていいのよ」

 リリーナは誘惑するようにそう言いながら、スカートの裾をまくって、愛液に塗れた秘裂をエルフィーナに見せつける。

「う、あ……ぁ……オマンコ……お姉様の……好きに……♡」

「しっかりしろ、エル! エルーっ!」

 半裸の花嫁姿のエルフィーナが、発情しきったリリーナの女性器を見て唾液を垂らす。そんな恋人にアルフレッドは必死に声を掛けるが、もはやエルフィーナは聞く耳を持っていなかった。

 エルフィーナはアルフレッドに首を向けると

「ごめんなさい、アルフレッド。私、女の子だぁ~いすきの変態レズビアンになっちゃったんだ♪ もうアルフレッドの痛いだけで気持ち悪いおちんちんなんていらないの。だから、ごめんね。そこで、私の気持ちいいレズセックス見てていいから」

「エ、エル……?」

「いただきまぁ~す」

 じゅるりと舌なめずりをしながら、エルフィーナはリリーナの股を開き、自らの秘部を押し付ける。

「っあん! いいわ、エルフィーナ。そのまま動いて……」

「はい、お姉様♡ んっ……んんっ……ああ、やっぱりこのオマンコの感触、最高っ♡」

 女性器がこすれ合う感触に、エルフィーナは唾液を垂らしながら悦ぶ。そして快楽に溺れる表情を見せつけるようにして、アルフレッドの方へ顔を向ける。

「すごいんだよ、女の子同士のセックス♡ オマンコ同士を擦り合わせるだけじゃなくて、こうやってクリトリス……知ってる? 女の子同士のおちんちんを擦り合わせても……あぁぁぁんっ♡ いいっ♡」

「っああ! 気持ちいいわ、エルっ♡ 上手よっ♡ もっと動いて私を気持ちよくして」

 甘い声を上げながら、エルフィーナとリリーナは、やがてアルフレッドのことなど意識の外に置いて、楽しみ始める。

「はぁ、はぁ……好き♡ お姉様、好き♡ 大好き♡ 愛してる♡ ちゅば……ちゅううっ♡」

「私も好きよ、エル♡ 貴女のことを愛しているわ♡ ちゅば……ちゅうう♡」

 恋人のように愛を囁き合い、濃厚に唇を重ね合わせる2人。アルフレッドはもう口を挟む余裕もなく、ただ黙って雌の絡み合いを見続けることしか出来ない。そうしているうちに……

「くすくす。見て、エル。あの男の子、私達のレズセックスを見て、おちんちん勃起させてるわ」

「えっ……? あ、本当だ……きもちわる~い。私とセックスしている時より大きくなってるみたい。ふふ、でもこうなっちゃったお詫びに、私達をオカズにしてオナニーしてもいいよ♪ その代わり、あんまりこっちにその汚いおちんちん見せないでね。気持ち悪いから」

「うあああ……あああああああっ……!」

 愛していた、信じていた恋人に最悪の言葉を投げかけられたアルフレッド。しかし現実は彼女らの言う通りで、アルフレッドはエルフィーナとの行為よりも、その時も快楽に溺れているエルフィーナを見て、激しく勃起させてしまっていたのだった。

 訳が分からなくなったアルフレッドもまた、理性を捨てて雄となり、ズボンを引きずり下ろすと自らの肉棒を扱き始める。

「うわ~、本当に始めっちゃった。気持ちわるぅ~い」

「私達は私達で楽しみましょう、エル♪ さ、今日は貴女が私をイカせて……♡」

 そうして自慰を始めたアルフレッドのことなど無視をして、再び腰を動かし始めるエルフィーナとリリーナ。

「っあん♡ イキそっ♡ お姉様とのラブラブオマンコセックスでイク♡ アルフの軟弱おちんちんよりも、最高の気持ちいオマンコでイクっ♡ イク、イクイクっ♡ レズセックスでイクうううううう♡」

「っうあああっ! エル、エルぅぅ♡ エルぅぅぅぅぅぅ♡」

 リリーナの上で腰を振るエルフィーナが達したのと、肉棒を自分で擦っているアルフレッドが射精をしたのは同時だった。

 圧倒的な興奮と快楽の後ーーエルフィーナとアルフレッドの胸の中には、もう後戻りできない、絶望が残っていた。

「うあ……ああぁ……」

 アルフレッドはその感情に膝を崩して、嗚咽を漏らし

「はぁ、はぁ……お姉様、もう1回しよっ。今度は汚い男なんていないところで、2人きりで愛し合いたいです♪」

 エルフィーナは至福の表情を浮かべていた。


 こうして、エルフィーナは聖十字騎士団に入団してから1年の時をかけて、リリーナの手によって女同士の快楽に完全に溺れていったのだった。








 エルフィーナが聖十字騎士団に入団してから2年が過ぎていた。つまり、エルフィーナがリリーナの手によって女同士の快楽に溺れてから1年の月日が経っていた。

 エルフィーナは、エバグリーン家の人間らしく、聖十字騎士として入団直後から目覚ましい成果を上げ続け、入団3年目にして副団長への就任という、異例の出世を遂げていた。

「おめでとうございます。エルフィーナ副団長」

 就任式を終え後、彼女にそう声を掛けてきたのは鋼鉄騎士団第1師団長アルフレッドだった。

 鋼鉄騎士団は、1年と少し前に当時の団長だったウルシマスが突然失脚したせいで、団内でゴタゴタがあり、その一環でアルフレッドは最近師団長へと昇進していた。こちらも異例の出世といってもいいものだった。

「鋼鉄騎士がわざわざ聖十字騎士の副団長を祝いに来るなど、ご苦労なことです」

 エルフィーナは冷たくそう言うだけで、述べられた祝辞の礼すら言わずに、アルフレッドの側を通り過ぎていく。

「あ、あの……エルっ……!」

「私はエルフィーナです。それと、いくら組織は違うとはいえ、私は貴方の上席です。騎士ならば礼儀を逸せずに敬称をつけなさい、アルフレッド師団長」

 その口調は静かだったが、氷を思わせる冷たさと、全てを断じる圧力があった。

「申し訳ありません」

 悲しみを隠せずに、アルフレッドが頭を下げる。それにもやはり見向きもせずに、歩き去っていくエルフィーナだったが、ふと立ち止まって振り返ると

「ごめんなさい。もう私、男には興味無いの。貴方とやり直すなんて、ありえないから」

 それだけ言い残して去って行った。

□■□■

「ぁあんっ! あんっ……リリーナさん止めてっ! 私、女の人は……んあああっ!」

 その日、リリーナは例年のように、新入団員から好みの女性騎士を選び、自室に連れ込んで行為に及んでいた。

「あっ、あっ……気持ちよくなっちゃう! アウグスよりも上手ぅ♪ 気持ちいいよぉ」

(ふふ、たまらないわね)

 普通の性癖の女子を、快楽で同性同士の快楽へと溺れさせていく。理性や良識と欲望や本能の狭間で揺れながら、結局は快楽に溺れて、女性同士の行為にハマっていく過程にたまらなく興奮する。

 相変わらず、そのような歪んだ性癖を持ったリリーナは、また新たなターゲットと身体を重ねていた。しかしその新しい相手も、1度女同士の行為に溺れさせてしまえば、彼女への興味は急速に失われ、リリーナはまた新しい生贄を探すだろう。

 つまり、完全に女同士の行為に堕ちきったエルフィーナは、既にリリーナのターゲットではなくなっていたのだった。

「ほら、どう? ここが気持ちいいんでしょう? 彼氏と比べてどう? 女同士はいいでしょう?」

「ああっ、いいっ! 男の人とのセックスよりも、リリーナお姉様の方が気持ちいいっ♡ もっと、もっとしてぇぇ♡」

 そして今日もリリーナの毒牙にかかった女性騎士がまた一人ーー

□■□■

「ん……ちゅ……ふぁ……ふ、副団長……」

「ここでは、エルお姉様と呼びなさい……ん、ちゅ……」

 一方、エルフィーナは副団長という立場を利用して、好みの女性騎士を自室に連れ込んでいた。

元々、その美しい容姿と清廉な性格で異性同性問わず人気の高かったエルフィーナである。エルフィーナの方からも、それとなくそういった素質のある娘を選び、自室でこのように迫れば、強く抵抗する者はいなかった。

「可愛いわ、エリン……」

「ん……エ、エルお姉様……んんぅっ! わ、私初めてなの……優しくして下さい……」

アルフレッドと決別することとなったあの日から少しして、エルフィーナはリリーナに切り捨てられるようにして、関係が終わった。

 すっかりリリーナに溺れた後に関係が無くなったことは、エルフィーナにとってはあまりに酷い仕打ちであった。

そして、それとは別の話で、開発されたエルフィーナの身体はその解消する先をなくしてしまい、激しく疼いて仕方なかった。だからといって、その火照りを鎮めるためにアルフレッドとよりを戻すーーいや、男と関係を持つこと自体が有り得なかった。

 そんなエルフィーナが、こういった行動に走るのは当然だった。

「んっ……あっ、気持ちいい……エル姉様、愛しています♡」

「私もよ、可愛いエリン……♡」

 こうして、更にこの先聖十字騎士団長となるエルフィーナは、聖王国の栄えある聖十字騎士団を、己のハーレム騎士団として成り立たせていくのだった。

 これが、百合と背徳の快楽に敗北し、溺れていった、とある聖十字騎士の顛末である。


聖十字騎士エルフィーナ ~百合と快楽に溺れていく女騎士~ 了