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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.66 【 小早川の過去 】



真里が意識を取り戻す一時間前。

小早川は拉致した誠を洗脳すべく、催眠に取り掛かろうとしていた。

最初は軽い暗示から、徐々に強い暗示に変えていくつもりだったのだが、
誠が思いの外、暗示に掛かりやすいタイプだったため、予定を切り上げて次の段階へと進めることにしていた。


「しかしこの子。ホント暗示に掛かりやすいわネ。優しそうな顔してるし、素直で良い子ちゃんタイプの男の子なのかもしれないワ」


帯を外し浴衣を脱がせると、彼の白く透き通った肌が外気に晒された。


「はぁ!?」


その場にいた全員が大きく目を見開く。
彼の胸には、女子中学生のような膨らみかけの胸があったのだ。


「これって、もしかして、おっぱい? 
女っぽい顔立ちしてると思ったけど、本当に女なの!?」


小早川の顔が歪む。
レズカップルを間違えて拉致してしまうとは、なんという不覚……。
彼女は両手で頭を抱え、大きく項垂れた。

だがそこで誠のトランクスに小さな膨らみがあることに気づく。


「何かパンツの中に隠しているようネ。脱がせてしまいなさい」


どうせ変態レズカップルがおもちゃを挟んで遊んでいたのだろう。
そう考えていたのだが、


「小早川さん、大丈夫です。ちゃんと付いていました」


トランクスを脱がせた黒服が、その場を離れる。
床に仰向けになる誠の股間には、陰毛の生えてないツルツルの綺麗なちんちんが生えていた。


「なによこれ……こんな可愛いちんこ……見たことないワ」


小早川は誠のペニクリの可愛さに感動する。
そのまま彼の股間の前でしゃがみ込むと、さわさわとそれに触れた。


「ふふ……手触りも最高ネ……これぞアタシが探していた逸材だワ。
この美貌、滑らかな肌、男離れした体。新規顧客をゲットする最高の武器になりそうネ」


小早川は満面の笑みを浮かべて暗示を続けた。


「よーく、聞きなさい……あなたはネ。
本当は女の子よりも男の人の方が好きなの……特に太くて逞しいおちんちんを持つ男の人が好き。見てるだけで舐めたくなってしまうほどにネ」


男でありながらも、女性よりも男性が好き。
男らしくありたいと思うよりも女らしくありたい。

しかし、これらは既に恭子が掛けたものと大差はなかった。

今の誠はそれを乗り越えてなお、真里のことが好きなのだ。
小早川がいくら催眠を掛けようとも、誠の現状に変化を及ぼすことはなかった。

だが、小早川は恭子にはない武器を持っていた。


「自分が男好きって十分理解したところで、さっそくこれを舐めてもらおうかしら?」


そう言い、小早川はスカートをたくし上げると、タイツとショーツを下にずらし、あるものを取り出した。

それは、あまりにも猛々しい極太の男性器。
作り物ではない、本物の男性器だ。

なんと小早川は女性ではなく、ニューハーフだったのだ。



※※※



彼女改め彼は、元はニューハーフヘルスで働く平凡なニューハーフだった。

そんな彼が催眠術に出会ったのは、今から約二年半前。
常連客の既婚の男性と恋仲になったものの、最終的に振られ自暴自棄になっていた頃であった。


(ちくしょー! アイツさえいなければ、〇彦さんはアタシのものだったのに……。あの人を奪っただけでなく、一丁前に慰謝料まで請求しやがって、あの女……)


小早川は浮気の代償として多額の慰謝料を請求されていた。
自分の店を持つのに貯めていた準備資金から、それを支払わなくてはならず、
人生設計が崩れてしまったのと、失恋のショックで、彼はひどく憔悴(しょうすい)していた。


(もうこの本を読む必要もないわネ……)


彼は将来のために経営学の勉強をしていた。
家の近くにある国立図書館で本を借りていたのだが、
資金を失った今となっては、それも不要な代物だ。

トボトボと図書館に出向き、無言で本を返す小早川であったが、そこで運命の出会いをすることになる。

このまま自宅に帰っても塞ぎ込んでしまうだけ。
彼は、何の気なしに図書館を回り、時間を潰していた。

今の心を癒すような本が見つかるかもしれない。
淡い期待を抱いて、本のタイトルを眺め歩いていると、図書館の係員と思しき女性が真っ黒な装丁(そうてい)の本を棚に戻しているのを見かけた。

小早川は一目見て、違和感を覚えた。
その本には、本来であれば付いているはずの図書番号と請求記号のシールが貼られていなかったのだ。

図書館の係員であれば、そんな本を本棚に戻すはずがない。
小早川は気になり、女性に声を掛けようとする。

しかし彼女は、足早にその場を離れようとし、本棚の角を曲がり、見えなくなってしまった。小早川も同じように角を曲がり、声を掛けようとしたのだが……。


「えっ?」


一瞬にして女性の姿が消えてしまう。
慌てて他の本棚の列を探すも、どこにも彼女の姿は見当たらなかった。
コーナーを曲がったのは、ほんの二、三秒の差。

そんな短い時間で姿を消すなど出来るはずがない。
あまりの不気味さに、若干恐怖を感じる彼であったが、その頃の自暴自棄の精神も相まって、逆に女性が置いた本に強い興味を持ってしまった。

元の場所に戻り、棚の上段を確認すると、確かにそれはあった。
さっそく手に取ってみる。
イラストも何も描かれていない黒でびっしりと埋め尽くされた表紙だ。

その表紙には『日本語』で『人生の転機を図る催眠術の本』と書かれてあった。


(人生の転機を図る……。今のアタシにずいぶんとタイムリーな内容ネ……)


小早川は、その本にまるで自分の心の内を見透かされてしまったような嫌な感じがした。冷や汗をかきつつも、本をめくる。

そこには実に分かりやすく、様々な催眠の方法が書かれてあった。
目で文字を見て、脳で理解するというより、直接情報が脳に書き足されていくような不思議な感覚だった。


(もしこの本に書かれている内容が本当なら……
まぁ単なるオカルトでしょうけど、暇つぶしにはなりそうネ。借りてみることにしましょ)


期待半分、疑い半分に借りることを決めた小早川。

図書番号すら付いていない本であったが、係員がそれに言及することはなく、難なく借りることができてしまった。
そういったこともあり、図書館を出る頃には、彼はこの本に確信的な期待を寄せるようになっていた。

これは、ただの本ではない。
魔力を帯びた悪魔の書。直感的にそう感じるようになっていたのだ。


その後、彼の期待通り、
黒い本は紛い物ではない本物の催眠能力を彼に与えてくれた。

同時に慰謝料の問題も解決された。

小早川が愛した男は、初めから妻と結託し、小早川の店の準備金を狙っていたのだ。
激怒した小早川は、催眠で男を真性のホモに変えて給与を貢がせ、
女の方は風俗嬢へと変えて、身体で金を貢がせた。

そうして金を稼ぐことに味を占めた小早川は、念願の自分の店を持つことになる。

彼は、店の周辺で見つけた美男子を捕まえては、催眠術を使ってその性的指向や考え方を変え、自分の店のニューハーフ嬢として働かせた。

この業界ではなかなか見かけないほどの美男子がニューハーフとして働いているということもあり、店の噂は瞬く間に広がり、彼は巨万の富を築き上げるようになった。

今では、政治家や大企業の役員など、有力者とのコネクションを構築し、社会的な影響力を強めつつある。


(今よりも高い地位を手に入れるには、母数の少ない同性愛者を抱き込むだけではダメ。可愛い男の娘を使ってノンケの大物を釣り、洗脳してアタシの支援者にしてしまえば、いずれこの世はアタシの思うがまま……)


小早川が望むのは、この世の全ての男性が同性愛者として過ごし、
女性は単なる子供を産む道具として蔑視される世界。

小早川は不運にもこれまで数々の恋人を女性に奪われてきた過去があった。
長年蓄積された女性への怨嗟(えんさ)は最悪の形で果たされようとしていたのだ。



※※※

ビクンッと勢いよく跳ねる小早川の男性器。
彼は誠にそれを差し出していた。


「ほーら……美味しそうでしょ……? 
あなたはだんだんこれが舐めたくなってくる……男の人のおちんちんが愛しい……舐めると、とっても気持ち良くなれるわヨ」


誠は虚ろな瞳でそれを見つめると、ゆっくりと舌を差し出し這わせた。


(ホントにこの子、ニューハーフの才能があるわネ。
普通、ここまで簡単に舐めないわヨ。
ガールフレンドがいるようだけど、これも簡単に別れさせることができそうね。
まぁ、その前にこんな美男子と付き合った制裁は、あの女にしっかりさせてもらうけどネ)


小早川は誠にペニスを舐めさせながらも、これまで別れさせてきたカップルのことを思い出していた。

男には、男性から受ける刺激を敏感に感じられるよう暗示をかけ、彼女の目の前でホモセックスで果てさせ、女には、男同士のセックスに異常な興奮を覚えるように変え、彼氏の前でオナニーをさせイカせた。

お互いに涙を流しながら、快楽にのめり込んでいくカップルもいれば、相手を変態だと罵り合うカップルもいた。

全てのカップルに共通していたことは、ノーマルな恋愛ができなくなり破局を迎えるということだ。


その後、男は例外なくホモに目覚め、ニューハーフ嬢になるか、
他に好きな男性を見つけて、付き合い始めたりしていた。

女はBLにハマり、男性と付き合うことに興味を失ってしまう者がほとんどであった。

小早川の元には、風俗店の売上と、BLにハマった女性達が小早川の会社で制作したAVやBL本を買い漁ることによって得た収益が舞い込んできていた。


「ふぅ~まだまだだけど、初めてにしてはなかなか筋が良いんじゃない? これからしっかりとおちんちんの舐め方を教えてあげるから頑張るのヨ?」


小早川は誠を四つん這いにさせると、彼のお尻の穴にローションを塗り始めた。
そしてゆっくりと指を挿入していく。


「うぅっ!」

「大丈夫よー全然痛くない……全然痛くないワ……。
むしろこれは、とても気持ちの良いこと。
女の子におちんちんを突っ込むより、こうしてお尻に突っ込まれる方がずっと気持ち良いのヨ」


指が奥に挿入される度にビクンと反応する誠。


(おかしいわネ? すんなりと入っていくワ。元からこっちを使ってあの女とエッチしていたとか?)


小早川は不審に思い、尋ねることにした。


「いい? 質問するから答えなさい。
あなた、彼女と普段どういうエッチしてるの?」

「……エッチ……したこと……ありません」


首を傾げる小早川。彼の質問は続く。


「じゃあ、普段どうやってオナニーしているか答えなさい」

「お尻に……指を入れて……乳首をいじって……してます……」

「ぷっ! あら、そうなの」


誠の言動に小早川は興味津々だ。


「普段どんな想像してオナニーしてるの?」

「……真里さんのことを……考えてます……」

「あっそ……」


もしかしたら普段から男に犯される妄想をしているのかもしれない。
小早川はそう期待したが、お決まりの返事にがっかりした。

これが半年前であれば、小早川の期待する答えが返ってきていたであろう。
しかし誠は雪山遭難の時から、男を妄想してオナニーするのを止めていた。

それは自分が真里に対して特別な感情があることに気づき、彼女以外の人を想像する気になれなかったからである。


「どうしてあなた、彼女がいながらお尻でオナニーしてるの? どうしておちんちんでしないの?」

「だって……おちんちん触っても、あんまり気持ちよくないし……真里さんが入れてくれるって考えただけで……はぁっ」


かなり変わった性癖の持ち主であることは理解した。
おそらくこうして指を入れられるのも、彼女からされていると考えているのだろう。

小早川にとって、それは屈辱であった。


「ぐぅぅぅ……おのれ……まぁ良いワ。
もうこれ以上、解(ほぐ)す必要もないし、目に物見せてやるわ」


小早川は立ち上がり誠の前に立つと、勃起し脈打つ男性器を見せつけた。


「よく見なさい……逞しいペニスよネ?
これは女には付いていないもの。
今からこれがあなたの中に入るから、しっかりとその感触を頭に刻みつけなさい。オナニーする時も、女の指じゃなくて、この逞しいペニスを想像してするのヨ?」


そう言うと小早川は慣れた手つきで、ペニスにローションを塗り、誠のお尻へと宛がった。


「アタシのペニスをお尻に受けて、これまでまともにノンケでいられた男は一人もいないワ……あなたもアタシ達の仲間になるの。女になんて全く興味を持たない、男しか愛せないホモの仲間入りをするのヨ!」


ズブッ!! 


「あぁんっ!!」


小早川の剛直がお尻の穴を突くと、誠は声を上げた。

今までオナニーで幾度となく妄想してきた男性による生挿入。
それが現実のものとなったのだ。

これまでイメージでしかなかった男性器の感覚が全身に駆け巡る。
灰色だった男同士の性行為の世界に、小早川のペニスが色を与えていく。

何人ものノンケを堕としてきた彼の肉棒は、誠の性感帯を的確に突いていった。

前立腺を始め、直腸の奥に至るまで、どこをどうすれば男が感じるか知り尽くした動きだ。

それは決して女性には、マネのできない領域。
同じ男同士だからこそできる、ニューハーフならではのスキルであった。


「んっ! んっんっんっ! あっあっあっ!」


誠は一気に絶頂の寸前まで追い詰められた。
ノンケキラーの小早川が挿入を繰り返しているのだ。無理もない。

しかしそこで新たな暗示が誠を襲う。


「誠ちゃん……あなたは決してイクことができない……
アタシが許可を出すまで、どんなに気持ち良くてもイクことはできないワ」


「んんっあああ! ああああぁぁぁぁ!」


小早川の突きが、より激しさを増す。
本来なら、この刺激で既に絶頂を迎えてしまってもおかしくないのだが、
暗示の効果により、誠は限界を超えてもなお、感じ続けるだけであった。

小早川は誠の背中に覆いかぶさると、腕を誠の胸に回し、そのまま自分の方へと引き上げ、挿入したまま床に座った。

そして熟練の指使いで彼の乳首を責め始める。


「ふあぁぁぁぁ!! ふぁああああ!!!」


誠の嬌声が室内に響く。
小早川は腰を揺らし、お尻への刺激を続ける。
誠のペニクリの先端からは、透明でサラサラな液体が漏れ出し始めていた。

だがそれは未だ勃起していない。
小早川は苦い顔を浮かべて言った。


「くっ……あなた、なんで勃起しないの? ここまでして、勃起しなかった男はあなたが初めてヨ……」

「あっ! あっ! だ、だってぇ! 勃起の仕方……忘れちゃった……んだもん!」

「はぁあ?」


勃起の仕方を忘れた。
一体この男は何を言っているのだろうか? 

正常な男だったら、誰しも勃起をするのが当たり前。
女性ホルモンでも打たない限り、もしくは相当歳をとっていない限り、できないはずがない。


(ま、まさか……)


小早川は再び誠の胸を見た。

この不自然な膨らみ。
それは彼の店で女性ホルモンを打たれ始めたばかりのニューハーフの胸にそっくりであった。


「あなた……もしかして女性ホルモンを打ってたりする? 
その顔立ち、身体つき。ホルモンを入れたのなら納得がいくワ」

「ふぁっ、あっあーん、打って……ません……」


快感で喘ぎ声をあげながらも誠は答えた。
しかしその回答でますます小早川は悩むことになる。


(打ってない? それでこんな女みたいな身体になるの? 勃起ができないことといい、意味がわからないワ)


催眠を掛けられている状態では嘘はつけない。
本当のことを言っているからこそ、意味がわからないのだ。

小早川は腰の動きを一旦止めて、乳首責めのみを継続し考えることにした。


(もしかして、生まれつきの性ホルモンに異常があるとか? 
胎生期に男性と女性を決定するテストステロンの分泌が上手くいかなくて、
男性でも、女性の要素を持ったまま産まれてきてしまうという現象が起こることがあると聞いたことがあるワ。
この小さく膨らんだ胸、柔らかい肌、可愛いおちんちんは全てそれが原因。
でなければ、こんな身体つきになるわけない……)


乳首を愛撫され女のように喘ぐ誠を見て、小早川は思う。


(だとしたら、完全な女の子として育て直してあげなくちゃネ♡
勃起しないのは問題だけど、まぁそのうち何とかなるでしょ。素敵なニューハーフレディーとして育てて、店一番の稼ぎ頭にしてあげるワ)


小早川にとって女は全て嫌悪の対象であったが、元が男であれば話は別だ。

女に生まれ変わった男は、いわば自分と同じ存在。
それに巨万の富を与えてくれるものであれば、嫌う理由がない。

小早川は誠の腰を少し浮かせ、身体を左にずらすと、右腕で背中を支え、左手で乳首を責めながら言った。


「誠ちゃん、こっちを向きなさい……」


暗示に従い、顔を向ける誠の唇に唇を寄せる。


ちゅっ……んんっ……


そして始まる舌技の連続。
暗示で自意識を失っている誠は、その全てを受け入れるしかなかった。

男からの愛撫、男の舌、男根の挿入。

その全てが男同士の快感を誠に教えていく。
暗示の効果によりイクことを許されず、常に絶頂寸前の状態で、ホモの感度を高められていく誠。

一度知ってしまったら忘れることのできない快感に、彼は一歩、また一歩、ホモの道へと導かれていった。

そうして小早川から責められること数十分。
真里の部屋を監視していた黒服の報告により、ようやくその行為は終わりを迎えることになる。


「小早川さん、女が目を覚ましました」

「……ちゅっ……あらそう」


うっとりとした表情を浮かべ同性との行為に溺れる誠に、小早川は締めの暗示を行うことにした。


「うふ♡ 誠ちゃん、もうすっかりホモの虜のようネ。
それじゃあ、そろそろイカせてあげるわネ♡
あなたは、今からアタシにお尻を突かれると、口から喘ぎ声と一緒に、女の子とエッチしたい気持ちが抜けていってしまうの。
喘げば喘ぐほど、男の人としかエッチしたくなくなるのヨ。
もしあなたの中で、女の子とエッチしたい気持ちがゼロになったら、
その時初めてあなたは、最高のエクスタシーを感じることができるワ♡ いいわね?」

「はい……あぁん♡」


誠は返事をしながらも、小さな喘ぎ声を上げてしまっていた。
その時誠の中で、真里のことを考えながら自慰をしていた時の感覚が少し抜ける感じがした。


「さっそく女の子みたいに鳴いちゃって、ホント誠ちゃんは可愛いわネ♡」


小早川は誠と口付けを一度交わすと、彼の勃起した乳首を口に含んだ。
唾液を絡めて、舌先で愛撫する。


「くっ、ふぅうっ!」


ジンジンとした快感が乳首の先から周囲に広がり、身体をくねらせ喘ぐ誠。
その喘ぎ声と共に、真里のおかげで目覚めかけていた男の欲情が抜けていってしまう。その抜けた欲情の分だけ、彼の中で男性への欲情が生まれた。

次に小早川は、一物を挿入したまま、誠を床に仰向けに寝かせ、正常位の体勢になる。誠の足を畳んで、入れやすいようお尻を浮かせた状態である。
腰を掴み、ゆっくりピストンを開始する。


「ふっ! うっ! ンっ! ンっ!」


誠は、乳首を責められていた時以上に過敏に反応した。
真里への欲情が少しずつ抜けていく不安が無意識のうちに芽生えてきたのか、先ほどよりは抵抗している感じである。
しかしアナルに与えられる快感が強過ぎて、とても相手にならない様子であった。


「アっ! ダメっ! ダメっ! ふぁ! アァっ!」

「うふふふ、ダメじゃないでしょ~? イイでしょ~?
アァ~いつ聴いてもイイワ~♡
このノンケの子が、無意識のうちに抵抗する声……
新しい性の目覚めに戸惑いながらも、ホモに堕ちていく断末魔の叫びは、ホント最高ネ♡」


陶酔した表情を浮かべる小早川。
元々大きな彼の一物はさらに膨張し、より活発に暴れ始める。

それに合わせ、誠の喘ぎ声も激しさを増し、真里への性的欲求も、より顕著に抜けていった。
一度は恭子に封印され、真里が一年以上かけてようやく目覚めさせようとしていた女性に対する性的欲求は、ここに来て完全に消滅させられようとしていた。

誠が戸惑いがちに上げていた喘ぎ声は、徐々に遠慮がなくなっていき、高く大きいものへと変わっていった。


「アッ! アァッ! ヤダぁ! ヤぁん!」

「ヤダって言いながら、さっきより素直になってきてるじゃない♡
ホラホラ、早く目覚めなさい。イイって言うの。素直にイイって言うと、もっと気持ち良いわよ♡」


小早川は、ペニスの先端を意識し、誠の前立腺を捏ねるように撫でまわした。


「ンンッ! イイっ♡ ふぁっ! アァっ!」


前立腺に突き抜ける刺激に、誠の嬌声はより甘く艶めかしいものへと変わる。
もはや誠は、女性への欲情を誰に抱いていたかも思い出せなくなりつつあった。

逆に、男性へ対する性的欲求は、比べ物にならないほどはっきりしたものに変わり、曖昧だった彼の性的指向も、ここに来て確定されようとしていた。


「あとちょっとネ。そのコメ粒ほどに残った女への欲求を捨てなさい。
あなたはホモに生まれ変わるの。女に興味を持たない真性ホモの仲間入りをするのヨ」

「イイっ♡ イイイっ♡ アぁっアぁっ! イイっ!♡ イイの!♡」


誠のペニクリは未だ萎えたままであったが、その先端からはドクドクと愛液が漏れ出し、周辺を濡らしていた。


「うふふ、素直になってくれてお姉さん嬉しいワ。さぁ、もっと大きな声で喘ぎなさい!」

「イイっ!♡ ハァっアアアアぁん! イっちゃう! イっちゃううう!!」


誠は絶頂への階段を駆け登っていった。
ここでイクということは、すなわち女性への性的欲求を捨てるということ。

元々は誰に対して性的欲求を感じていたのか。
それを忘れてしまった誠には、もはやここで立ち止まることなどできなかった。
数十分にも焦らされた絶頂へのゴールを、ついに彼は迎えることになる。

小早川は大きく腰を振り、ストロークを最大まで伸ばし、肉竿の摩擦がアナルに常に感じ続けられるようにした。さらに腸の奥の奥を突きあげる。


「さぁ、熱い精液を受け取りなさい。じっくりと身体の中で味わうのヨ……」


誠の男同士の初体験を最高の形で仕上げるべく、
小早川は、自らの射精をもって、誠を絶頂に導くことにした。
彼はこれまでの経験から、誠の限界がすぐそこまで来ていることを悟っていた。

誠の最後の女性への欲求を、自らの精液をもって洗い流す。
小早川にとっても最上の絶頂の仕方であった。


「イクぅ! イクぅう! イっちゃ……イっちゃう! イッちゃううう!!」

「イキなさい! ンンっ! ハァあああ! アアァァッんッッ!!」


小早川の肉棒が激しく脈打ち、
熱い鈴口の先端から、一層熱い淫欲のエネルギーが注ぎ込まれる。

体内に流れ出す悦楽の波を知覚し、誠も絶頂に達する。


「はぁんっ!! イッックぅぅぅぅぅぅぅ!!」


誠の身体が激しく痙攣を起こす。
それと同時に、萎えたペニクリの先端から、より多くの愛液が垂れ流された。

誠はついにイってしまった……。
彼の中の女性への性的欲求は、完全に死滅してしまったのだ。

全身に汗を浮かべ荒い息を吐く誠は、女として一皮剥けた雰囲気であった。封印されていた女性への欲情がなくなってしまったので、当然といえば当然である。

小早川の掛けた暗示は、恭子とほぼ一緒であるが、
今回は男同士の性行為を体験しながらの暗示である。

男同士の肌の触れ合い。
男の身体を知り尽くしたホモの巧みなテクニック。
そして熱を帯びた剛直が身体の中を暴れまわる感覚。

以前と状況は異なり、その影響は恭子が掛けたものとは比べ物にならないほど大きかった。


小早川は、放心して口から涎を垂らす誠の耳元で囁いた。


「男同士のエッチ、気持ち良かったでしょ? 
これに比べたら、女の子とのエッチなんてゴミみたいなもの。
あなたはもう男の人でしか快感を得ることができない真性のホモになってしまったのヨ」


小早川はさらに暗示を重ねる。


「今から言うキーワードをしっかり覚えなさい。

【純白の姫君】

あなたはこのキーワードを聞くと、今の状態に戻ってしまうの……。
何をしていても、どんな時でも必ず今の状態に戻ってしまう…いいわネ?」


誠は力なく頷くと、自我を失い、再び虚ろな表情へと戻ってしまった。



※※※



(もうやめてぇ!! 私に……これ以上、BLを見せつけないでぇええ!!)


鮫島が誠を抱く姿を前にして、真里は心の中で叫んでいた。

これ以上、誠の生BLを見せつけられたら正気でいられる自信はない。
彼女の割れ目からは、次々と愛液が流れ出し、床を汚し始めていた。歯を喰い縛り、オナニーをしたい欲求を必死で抑える。

もしそれをしてしまったなら、自分が男同士で興奮する変態だということがバレてしまう。

真里は己の中の燻る腐女子の欲求にひたすら耐え続けなければならなかった。

そんな彼女の目に、おぞましい光景が飛び込む。鮫島が誠を座らせ、口淫の体勢に入らせたのだ。

Part.67 【 BL調教 】



全裸で対面する二人の男性。

一方は色白で女性と見間違うほど美しい顔立ちをした男の子。
もう一方は色黒で野性味と逞しさに溢れた強面の男だ。

見つめ合う二人。

腐女子の真里は、その光景を見て沸き起こる興奮と劣情に身悶えしていた。

少しでも気を抜けば、彼女のしなやかな指は、
快楽の園を欲望の赴くまま、掻きまわしてしまうだろう。

これまで築き上げてきた誠との関係を代償に得られる快楽は、まさに口にしてはならない禁断の果実であった。


仁王立ちになり、男性ホルモンの塊のようなそれを反り立たせる鮫島。
実に逞しい、見る者を支配してしまうような完璧な形状と貫禄だ。

誠はそれを見て、前立腺が締め付けられるような感じがしていた。

(お尻が何だかスースーする。しかもピクピクうねって……。まさか、僕の身体がこれを……望んでる?)

受入れ準備が完了した後ろの穴に、この脈打つ肉棒を当てられたら、彼はどうなってしまうのだろうか? 

熱い接吻を受け、彼の両乳首はピンと張り、
ペニクリの先からはポタポタと透明な液を落としていた。

そしてこの全身の震え。怖くて震えているのではない。これから受ける快楽を期待して高揚しているのだ。

小早川の催眠により、誠の身体は以前とは比べ物にならないほど、強い性欲を男性に向けるようになっていた。

それは誠の初体験が、彼をホモに変えるために為されてしまったのと、
女性への性的欲求が、完全に消されてしまったことが原因だった。

彼は逞しく反り立つ男性器を見て、
思わず唾を飲み込み、渇望する眼差しを向けていた。

「おい、誠」

誠はビクっと反応する。
鮫島は自らの剛直を、誠の顔に近づけると言った。

「よく見ろ、これが本物の男性器だ。
お前の股間にぶら下がったニセモノとは違う。
貫かれる者を心の底から屈服させる支配者のチンポだ」

支配者のチンポ、まさにその通りだ。

誠はそれを見ているだけで心が奪われそうになってしまった。

支配されたい……
この剛直で貫かれて心の底から支配されたい……

だが彼は、沸き起こる気持ちを必死に否定する。

もしそれに支配され、自ら求めるようになってしまったら……
きっと真里を失望させてしまうだろう。

彼女に嫌われたくはない。
誠はなるべく心を無にして鮫島に接しようとした。
しかし鮫島はそれすらも許さない台詞を言う。

「誠、俺のチンポにキスをしろ。恋人同士でするように心を込めてな。もし心がこもってないと判断したら、その時はいいな?」

「……」

(恋人同士がするようにキス。そんなことできるわけない! ただでさえ嫌なのに、ましてや心を込めてだなんて……)

鮫島は「二度目はない」と言った。
心がこもっていないと判断すれば、黒服に真里を襲わせるだろう。

その時誠は、真里とキスをした時のことを思い出した。あの時の気持ちを思い出してすれば出来るかもしれない。

彼女との大切な思い出をそんなことに使うのには抵抗があったが、そうしなければ、真里が危険に晒されてしまう。

誠は意を決して、鮫島のペニスに唇を近づけた。
そして真里を抱きしめるように両手で優しくそれを包むと、心を込めてキスをした。

ちゅ……ちゅぷ……ちゅぷ……んっ……ちゅぅ……

小早川も鮫島もその光景を見てニタニタと笑っている。
健気な少女のように、一生懸命奉仕する誠の姿は、彼らの気持ちを満足させていた。



(あぁ、誠くぅん……はぁんっ、だめっ……あ……あ……あ……そんな男の人のおちんちんを……熱っぽく……愛おしそうに……ふ、ふぅぅんっ♡
恋人のを舐めるように……ふっふっふぁああ!)

小早川の催眠により、
普段よりも男同士に感じてしまう真里は、最愛の人を男性に奪われ、倒錯的快感を感じていた。

(あっ! だめ、誠くぅん! そっちに目覚めちゃ……だめぇぇ!!
あぁ、でもすごい……あぁ……ホモの誠くん♡
ホモォォォォォォォォ!!!
はッ!? ダメっ! そんなこと考えちゃダメっ!)

必死に理性を繋ぎ止める。
これがただの妄想であれば、どんなに良かったことか。彼女は理性と妄想の狭間で苦しんでいた。

「アラアラ、あなたの彼氏。
あんなに夢中になって、男の人のおちんちん舐めちゃって……すごい刺激的ネ。あなたもそう思わない?」

苦しそうにする真里を見て、揶揄(からか)う小早川。

「ハァハァ、あれは……あなた達に無理やりやらされているだけです!
もうこれ以上、彼にひどいことしないでっ!」

「あらそう? でも、もしあなたの彼がホモに目覚めて、いつも男の人を相手にするようになったら、どうかしら? とっても官能的じゃない?」

「そんなこと……おも、思いませんっ!」

「女には目もくれず、ひたすら前後の穴を男性に捧げ、恥ずかしい液をぴちゃぴちゃと辺りにまき散らす彼……
想像してご覧なさい……すごく厭らしくて興奮するでしょ?」

小早川の言うイメージが、いとも簡単に頭の中に入ってくる。
男同士の性交に溺れ、愉悦(ゆえつ)を浮かべる誠の姿。
それを想像するだけで全身を愛撫されているような感覚が真里に走った。

「んんッ! はぁはぁ、そんな、んんッ!
そんなの、ハァハァ……気持ち悪い、だけです。
はぁはぁ、そんなので……はぁはぁ♡
興奮なんか……ハァハァ……しませっンンッ! ふぅうんっ!♡」

「ふふふ……遠慮しなくてもいいのヨ♡
本当はあの光景を見ながらオナニーしたいんでしょ?
大丈夫♡ 彼は今おちんぽに夢中で、あなたのことは見ていないワ。
こっそりとしちゃいましょうヨ♡ とっても気持ちいいわヨ~♡」

「しない……うぅっ、ぐぅ……そんなこと……絶対しないっ!!」

もはや誰の目から見ても、真里が興奮しているのは明らかであった。

目は男同士への欲望に染まり、全身を小刻みに震えわせ、割れ目からは恥ずかしい液体を垂らし水たまりを作っている。

そんな状態にも関わらず、真里は頑なに自慰を始めなかった。

(この子は、素直で催眠効きやすいんだけど、かなり強情ネ。
今までの女だったら、もうマンズリ始めてイキまくってる頃ヨ。
彼氏に向かって、もっとしゃぶってとか、もっと感じてってお願いする女もいるくらいなのに、どうしてこの子はこんなに耐えられるのかしら? 不思議ネー)

小早川の催眠下にあっても、真里が己を保っていられる理由。
それは彼女の中にBLへの強い耐性が備わっているからだった。

ノーマルな女性であれば、初めて見る男同士の行為に度肝を抜かれ、抵抗する間もなく、新しい性癖に目覚めさせられてしまっていただろうが、

元から腐女子の真里は、純腐女子だけが持つ、
BLへの自制心が日々の生活の中で培われてきていたのだ。



オナニーをするしないの問答が、小早川と真里の間で繰り広げられる中、
鮫島は次の行為に移ろうとしていた。

「よし、もういいぞ」

鮫島の言葉を受けて、ようやくフェラから解放される誠。

本来であれば、嬉しい瞬間のはずであるが、
彼はなぜか名残惜しそうに口を離していた。

もちろん彼が意識してそうしたのではない。
小早川に植え付けられたホモの本能がそうさせたのだ。

そんな誠に、鮫島は言う。

「四つん這いになって、尻をこっちに向けろ」

誠はギっと歯を食いしばった。
催眠の記憶がない彼にとっては、これが初体験。

初めての相手は好きな人と……。

昔から純な性格の誠にとって、
初めてがレイプによって、しかも彼女の前で奪われてしまうのは、耐えがたいことであった。
だが、真里が同じ目に遭うのは、それ以上に耐えられない。

苦渋の表情を浮かべ、四つん這いになる誠のアナルに、黒服達はローションを塗り込み始める。男の指が触れる度、そこはピクピクと震えていた。

そして彼らは、鮫島の肉棒にもそれを塗り込むと元の位置へと戻っていった。



鮫島の前に差し出された誠のお尻。

白く透き通り、シミ一つないそれは、ペニスさえ付いていなければ女と見間違えるほど綺麗な代物であった。

だが鮫島はすぐには挿入を始めなかった。

「誠、おねだりしろ。自分でケツの穴を開いて、ちんぽを入れてくださいと言え。できるだけ可愛いらしくお願いしろよ」

「……」

ただでさえ屈辱的なこの場面で、そんな卑猥な台詞を言わせるとは……。
誠は心を締め付けられるような思いだった。

だが、再び真里のことを考える。

自分はどんなに汚れたっていい、彼女だけは綺麗なまま帰してあげたい。
誠は心を切り替えると、お尻の穴が鮫島に見えるよう、両手を当て両側に開いてみせた。

「ちんぽを……入れて……ください……」

目を閉じて屈辱的な言葉を口にする。
だが、鮫島は、

「よく聞こえなかったようだな。俺は可愛いらしくお願いしろと言ったんだ。どうやら、あの女のことは」

「鮫島さん、お願いです♡ 僕のお尻におちんぽ入れてください!♡」

「………」

鮫島が真里のことを言い出す前に台詞を言い直す。そのまま鮫島に続けさせたら、真里に危険が及んでしまう。誠は必死だった。

しばらく沈黙を続ける鮫島。

「ふん、まぁいいだろう。
だが俺は中途半端なオカマには興味はねぇ。
やるんだったら、心の底から女になっておねだりしてみろ」

誠は覚悟を決めた。
半年前までは、ずっと女性として過ごしてきたのだ。女の話し方には慣れている。誠は息を吐くと再び鮫島に懇願した。

「鮫島さんの、おちんちん……私のお尻おまんこに入れてください♡ あなたのおちんぽが入ってないと寂しいの……だから……おねがい♡」

「ぷっ……くっくっく……はーはっはっはっは!!」

鮫島が笑い出す。それに合わせ黒服達も笑い始めた。その笑い声がチクチクと誠の心に突き刺さる。

「ブラボー!! 初めてにしては、なかなかやるじゃなーい? 
あなた、本当にニューハーフの才能あるわネ。
そこまで男を捨てて女のマネできる男は、ほとんどいないワ。
大抵はオカマっぽい話し方になるんだけど、あなたの話し方・アクセントは本物の女性と変わりないワ!」

それもそのはず、誠は恭子から女性の話し方を教わっていたのだから。



男を捨て、女として鮫島に接する誠を見て、
真里の方も大変な状態になっていた。

泥酔したような赤い顔、目はしっかりと開かれ誠の姿を凝視している。

どこにも行き場のない欲情のオーラ。
それが真里という器に収まり切れずに破裂しようとしていた。

(アアアアアアッ!! カワイイ、カワイイ!!
誠くん、可愛いよぉぉおお!!!
ハァー! ハァー! ハァー! ハァー!
あぁん! もぅ誠くんのお尻にペニバン突っ込んで、アンアン喘がしたい!!!
もっと潤んだ瞳で、おねだりさせたいぃっっ!!)

真里は小早川により、
『彼氏とエッチするより、彼氏が男の人とエッチしてる姿を見る方が好き』と、暗示を掛けられている。

しかし、幅広い性癖を持つ真里には、
ギャップ萌えと、百合というジャンルもあった。

誠が男に戻る前、一年以上も女の誠と接してきた真里は、かつて清楚だったマコトが娼婦のようにおねだりする姿を見て、ギャップ萌えと百合的感情を併発してしまっていたのだ。

今の真里にとって、誠は彼氏であり彼女。

男同士の性交に興奮する気持ちと、
淫らな女に変貌したマコちゃんを自ら喘がしたい気持ちが交錯し、真里の欲情は爆発寸前であった。

「もっとだ、もっとおねだりしろ、でないと入れてやんねーぞ?」

「いやっ!もぉ、いじわるしないでぇ♡
私のお尻おまんこ、鮫島さんのおちんぽ欲しくてうずうずしちゃってるの♡
お尻に入れてくれないと、マコト、寂しくて死んじゃう♡」

初めは演技掛かっていた話し方も、徐々に板につき、誠自身もまるでそれが本心であるかのように錯覚しようとしていた。

「じゃあ、そろそろ入れてやるか。
マコトちゃんがちんぽ欲しくて仕方ないみたいだからな」

「ほんとぉ? 嬉しい♡ 早く入れてぇ♡」

やれやれといった態度で、誠の尻に両手を添える鮫島。そんな彼に誠は自然と笑顔を作ってしまっていた。

ずずっ……ずずずっ…………

「んふっ…………あぁんっ!♡」

鮫島の剛直が菊門を通過する。
アナルのヒダに男の象徴が擦れるのが気持ち良くて誠は嬌声を上げた。

ずぶっ……ずぶっ……

「ひゃん♡ あっ、ああああぁぁ!!」

鮫島の熱い肉棒の先端が、誠の前立腺に触れ、じっくりと押し潰すかのようにそれを突いた。

既にオカマと化していた誠の前立腺は、男同士の初めての触れ合いに激しく喜んでいた。

きゅん♡ きゅん♡ きゅんきゅん♡

そんな前立腺の動きに呼応するように、
誠のケツヒダはうねうねと動き、鮫島の肉棒に吸い付いていった。

「くくく……ずいぶん淫乱なケツだな。
お前がさっきフェラしてた時よりも、激しく吸い付いてくるぜ」

前立腺だけではない、誠の身体は既に、お尻も乳首も全身ホモと化していた。
女性の肌よりも、男性同士の肌の触れ合いで快感を得るホモ。

恭子の催眠術により始まった誠のホモ化は、
小早川と鮫島の調教により完結を迎えようとしていた。



(んふぅぅぅぅ!!!
あああああ!! マコちゃーーん!! 
ホモになっちゃ、だめぇえええ!!
そんな女の子みたいに、可愛い喘ぎ声出して、男の人を誘惑して……
おちんちん、お尻で美味しそうに飲み込んで、ちゅぱちゅぱ音を立てて、お尻フェラするなんて……
私も……もぉ我慢、できないぃぃいいい!!)

ぷしゅっ……ぷしゅっ……

真里の秘貝からは、透明な液体が勢いよく噴き出しては止まってを繰り返していた。

「ふぅ……見てたら、なんだかアタシも催してきちゃったワ。あなたの彼のお口、借りるわネ」

「えっ!?」

小早川は立ち上がりピストン運動を繰り返す二人の方へと移動すると、ショーツを脱ぎ、硬く勃起した男性器を取り出した。

「あ……あなた……男だったの!?」

「誰も女だなんて言ってないわヨ?」

「くっ……それに、あなた誠くんには手を出さないって言ったじゃない!!」

「あーら? 黒服には手を出させないって約束したけど、アタシが手を出さないなんて………ひとっ言も言ってないわヨ? ぷっふふふふふ!!」

「くぅっ!!」

「だけど、あなたが抵抗する気なら、今度こそ黒服を仕向けるワ。それでも良ければ立ち上がりなさい」

「鬼っ、悪魔!!」

真里は涙を浮かべて抗議した。
ただでさえ、鮫島の肉棒でホモに目覚めかけている誠が、口からも挿入されてしまったら、完全に目覚めてしまうではないか。

それはそれで嬉しい気もしたが、現実と妄想は別だ。真里は自分から誠が離れていってしまうのが、怖くてたまらなかった。

「そろそろ、黙りなさい。でないとわかるわネ?」

小早川はそう言い真里を脅すと、誠の唇に自らの肉棒を宛がった。
そして口を開くよう命じ、そのまま突っ込んだ。

真里は黙ってその様子を見ているしかなかった。
いくら力任せに妨害しようとも、女の自分では容易く防がれてしまう。
それにそんなことをすれば、状況は悪化するばかりだ。

「あなた、お口も名器なのネーとぉっても気持ちいいワー」

「んふー♡♡ んふっんふっ♡ んんんっ!!」

これまで何人ものノンケを葬り去ってきたノンケキラーのエキスパート。
その二人が、自らが持つホモの技術を駆使して誠に快感を与えているのだ。

腸内に感じる男の肉棒の感触。
口内に感じる男の肉棒の匂い、味。

すっかりホモ漬けにされてしまった誠の心は、恭子の創り出した仮初のホモの世界ではなく、匂いと味と熱を伴う本物のホモの世界へと足を踏み入れていた。

(はぁ♡はぁ♡はぁ♡
おちんちんが……こんなに気持ちいいなんて……
オナニーなんかと全然違う、
熱くて……逞しくて……全身が満たされるみたい♡
男の人とエッチするのがこんなに良いなんて知らなかった♡)

そんな誠の感情を読み取った小早川は最後の締めを行う。

「真里ちゃん、あなたもっとこっちに来なさい」

「!?」

急に小早川に呼びかけられ、真里は身構えた。

小早川が指し示す位置はちょうど誠の真横。
誠の身体に触れられるくらいの位置だ。

ここから誠を眺めているだけでも危険な状態なのに、間近で見てしまってはもう耐えられそうになかった。

だが命令を無視するわけにはいかない。
真里は荒い息を吐きながらも、快楽で震える足を三人の方へと進めた。

その最中にも真里の膣口からは止めどなく愛液が滴り落ちる。
彼女の歩いた場所には、愛液の跡がくっきりと続いていた。

Part.68 【 断罪 】




「んん♡ ぅんっ♡ ん……♡ うぅん♡」


恋人が前後の穴を犯され、喘ぐ姿をじっと見つめる真里。

距離にして約50cm。
まさに彼女の目と鼻の先で誠は犯されていた。

彼女は目を背けることも、身体を慰めることもできず、男同士の淫行を、ただ見つめているしかなかった。

そんな彼女の姿を、横目で観察する小早川。
彼は誠の口に肉棒を差し込みながら、勝ち誇った顔をしていた。


(ふふふ、なかなかの表情ネ。
これでバカみたいに自慰してくれていたら、もっと良かったんだけど。
まぁ、これからもっと歪んだ顔になるでしょうから、別にいいけどネ)

彼はこれまでも女の目の前で男を寝取り続けてきた。快楽漬けにした男にホモを認めさせ、女に別れを言い出させる。

それが彼にとって最高のエクスタシーを迎えられる瞬間であった。


(別れを言い出された時の女の顔。
蒼ざめた顔で涙を流しながらも、自慰でイキ続ける様は、あまりにも滑稽で無様。

付き合っているカップルが相思相愛であるほど、より深いエクスタシーがアタシを満たしてくれるワ。

この真里って女、彼氏のことを世界で一番愛してるって言ってたわネ。
そんな女から彼氏を奪ってやったら、どれほど気持ちイイかしら?
ふふふ、考えただけでイっちゃいそうだワ……)


小早川にとって、寝取られ女の悲しみや絶望は、
ノンケ男を食す味わいを深めるソースの役割を果たしていた。


(あぁんっ! もうやめてぇえ!
これ以上、私の腐女子心を刺激しないでぇぇええ!!)


声にならない悲鳴をあげる真里。
誠に近づいたことにより、彼女の心は常に半イキ状態であった。

それでも彼女は必死に堪える。
口からはだらしなく涎(よだれ)を、膣からはトロトロと液を流しながらも、自身を蝕む腐女子の本能に全力で抗(あらが)っていた。

しかし無理を続ければ、どこかで限界がきてしまうものである。


(うぅ……な、何? こ……腰が勝手に!?)


真里の腰がカクカクと揺れ始める。
彼女の意思とは無関係に、身体が快楽を求め始めてしまったのだ。


(うそっ! そんな、ダメっ! 止まって……止まってぇ!)


「はぁあんっ!♡」


お尻が床に擦れ、僅かな刺激が下半身に走る。
それだけで真里は艶めかしい声を上げてしまった。

その彼女の変化を、小早川は決して見逃さない。


「あなた、何をしているのかしら? そんなに腰を振っちゃって。
もしかして、アタシ達のエッチを見て興奮してるんじゃないでしょうネ?」

「!!」


彼の言葉に真里は青褪める。
しかしそれでも腰の動きを止めることができなかった。


(くくく……ずいぶん耐えたようだけど、そろそろ限界のようネ。さぁーて、苛めてやろうかしら)


小早川の口元が歪む。
先ほどまで真里にオナニーを勧めていたことなど、
まるで覚えていないといった様子で、侮蔑を込めて言い放った。


「なんて淫乱な女なのかしら?
彼氏が犯されてるのに、興奮して床オナを始めちゃうだなんて」

「してないっ……私、興奮なんてしてませんっ!!」

「ふん! 今のアンタを見て、誰が信じるって言うのヨ? 
もうみんな分かっているわヨ。アンタが彼氏を犯されて喜ぶ変態女だってネ! 
誠くんも可哀そうねーこんな変態に騙されて付き合っちゃうなんて」


侮辱を受け、顔を震わせ涙目になる真里。
彼女は反論することができなかった。


「誠ちゃん、もーいいわヨ。
気持ちよくしてくれて、ありがとネ。サメちゃんも一旦休憩してネ」

「おうよ」


話しを聞き、腰の動きを止める鮫島。
彼は男性器を誠の尻に突っ込んだまま、黒服に指で合図を送り、タバコを口に持ってくるように命じた。

小早川は誠の口から肉棒を引き抜くと、
その場にしゃがみ、唇を彼の耳元に添え、真里に聞こえないくらい小さな声で囁いた。


「純白の姫君」


そして催眠のキーワードを言う。
彼は最後の仕上げに、もう一つ暗示を加えるつもりでいた。


「あなたは、なんでも正直に話してしまう……決して嘘は付けないワ。
例え誰が傍にいようとも、遠慮なく本当のことを言ってしまうの」


小早川は先を見越して、誠に無言を貫くことを禁止した。

これから誠には、いくつかの質問に答えてもらう。
内容は男同士の性行為を体験して、どう感じたかというものだ。

おそらく誠は真里を傷つけまいと曖昧な返事をするだろう。

だがそうはさせない。
男同士の快感にどっぷりハマったことを、彼女の前で告白させるのだ。

小早川はこれまでの経験で、既に誠が同性との行為を受け入れていると確信していた。
本当のことしか言えないのであれば、確実に彼はそう答えるであろう。

ここで真里にショックを与えるために、
辛辣な言葉を彼に言わせることもできるのだが、敢えてそれはしない。

あくまでも大事なのはリアリティ。
催眠で本人が思ってもいないことを言わせても面白くない。

小早川は本当の意味で、男を女から寝取らないと気が済まなかったのだ。


(あの人、何してるの?)

小早川の不審な行動を真里は探るような目で見つめていた。

彼女はまだ小早川が催眠術を使えることを知らない。それを見て、まさか催眠を掛けているなどとは考えもしないであろう。


「今、アタシが言った言葉はあなたの記憶から消える。でもあなたは必ずそうしてしまうの……いいわネ?」


小早川は慣れた調子で、誠に深化と忘却催眠を行うと、目を覚ますよう言った。
そして立ち上がり真里の方を向く。


「あなたの彼氏のお口、気持ち良かったわー♡
あなたは女だから一生味わえない快感でしょうけどネ」

「……一体、いつまでこんなことを続けるつもりですか?」

「終電までって誠ちゃんと約束してるから、あと1時間くらいかしら?
そしたら解放してあげる。アタシは男の子との約束はきちんと守る女だから間違いないワ」


真里は彼のその潔さがよく分からなかった。
もし本当に解放されたなら、自分はすぐに警察に駆け込むだろう。

なのになぜこの男達は、こんなにも平然としていられるのだろう?
まさか自分達がこのことを警察に黙っているとでも思っているのだろうか?

もしかしたら解放するというのは、
『ここから』という意味ではなく、
『この世から』という意味なのではと、彼女は心配していた。

そんな不安に駆られながらも誠の様子を見る。

彼は未だ蕩けた顔で、お尻に埋まった男根の感触に悶えていた。
嬌声の混じった息を吐き、すっかり男性とのセックスにハマったメスの表情をしていた。

そんな彼の姿を見て、こんないつ死ぬか分からない状況にも関わらず、真里の女芯は疼いてしまっていた。

どうせ死ぬならいっそのこと、ここで思いっきりオナニーしてしまうのも……
と思い浮かぶも、誠への想いから断固拒否する。

逆に死ぬまで誠に対して誠実であろうと固く決心した。



「ふぅ~~突っ込みながらのタバコはやっぱりうめぇな。んじゃ、そろそろ終わりにすっか」

「こっちも準備万端ヨ。最後の仕上げ、よろしく頼むわヨ」

「おう」


鮫島が一服を終え、調教を開始する小早川。
彼はさっそく真里の心を貶めようと誠に質問を開始した。


「誠ちゃん、男同士のエッチ気持ち良かったかしら?」

「はい……すごく気持ち……良かったです」


とても幸せそうな表情で答える誠。
真里が隣にいることなど、まるで気にしていない様子だ。

真里はその顔を見て、胸をキュンとさせてしまった。


(あぁあああ! 私のバカーーーーー!!!! 
こんな時でも興奮するなんて何考えてるのよおぉおおおお!!)


真里は自分が情けなくて情けなくて仕方がなかった。長年すくすくと、彼女の中で元気に育ってきた腐女子の心。
それが否(いや)が応(おう)にも彼女に快感を与えてくる。

彼女はあまりの不甲斐なさに、悔し涙を浮かべていた。


「ふふふ……彼、とっても気持ち良かったって♡
もうあなたとするより、男同士の方が良いって思ってるんじゃない?」

「そっ……そんな……ふぅあっ! あっ! 
そんなこと……誠くんが考えるわけ、んっないっ!」

「あらそう? じゃあ本人に聞いてみましょ♡」


小早川はニコニコとしていて実に楽しそうだ。
こうして女に屈服感を与える時間が、彼は大好きだった。


「誠ちゃ~ん、正直に答えてネ♡
誠ちゃんは、逞しい男の人と、隣にいるその女、どっちとエッチしたいと思う?
もし彼女を選ぶなら、終電までの間、彼女とさせてあげても良いわヨ♡」

「!!」


小早川の発言に再び驚く真里。
彼は誠が自分を選ぶのなら、これから二人でエッチしても良いというのだ。

もちろん誠は自分のことを選ぶに決まっている。
なのに、なぜこのオカマはわざわざそんな選択肢を彼に与えたのだろう?

オカマの意図はよく分からない。
しかし好都合だ。

こんな男達の目の前で、誠と初めてを経験するのは嫌だったが、
彼がレイプされるよりはずっとマシだと思った。

いや、思っていた。

急に彼女の中で、この男同士の淫靡な光景を見られなくなることを残念に思う気持ちが広がった。


(なに、考えてるの……誠くんが助かるのに、今のままの方が良いっていうの?
そんなわけない……そんなこと、あるわけない)


真里はなぜだか分からなかったが、誠と直接エッチするよりも誠が男性としている姿をもっと見ていたいと思った。
いくら腐女子とはいえ、こんな状況でそこまでのことを望むであろうか?
真里は己のあまりの腐り具合に呆然(ぼうぜん)としていた。



小早川の質問を受けて、真里の方を向く誠。

妖艶(ようえん)な和風美女が全裸で座り、彼のことを見ている。
ほんのりと赤く火照った身体。
乳首は全開まで勃起し、下半身は恥ずかしい液でびしょびしょの状態だった。

ノーマルな男子あれば、迷うことなく真里を選ぶであろう。
しかし、今の誠は彼女の身体に性的な魅力を感じることはできなかった。


「男の人の方がいい……」

「えっ……」


信じられない言葉にショックを受ける真里。
まさか誠が自分のことを選んでくれないとは……
彼女は目頭が熱くなるのを感じていた。

「ふふふ……彼女、あなたの恋人でしょ? 
それでもあの娘とするより男の人の方が良いんだ?」

「うん……」


女として性交に及んでしまったせいか、誠の声は半年前の状態に戻ってしまっていた。
真里は、誠が完全に女性に戻り、自らの意思で男性との性行為を受け入れてしまったことを理解した。

そしてその瞬間、彼女の身体に大きな衝撃が走る。

胸がドクドクと振動を始め、
同時に名状しがたい興奮が内側から湧いてきた。

そう……この時、真里は目覚めてしまったのだ。
恋人が他人に寝取られることで興奮する寝取られ属性に……。


「ねぇ聞いた? 彼、あなたとするより男の人とする方が良いんだって?」

「ふあっ……♡ ふあっ……♡ ふあっ……♡」


小早川の言葉は真里の寝取られ属性を鋭く突いていた。彼女は悲しみと倒錯的な快感で、男の鬱勃起のような状態に陥っていた。

テンションが上がってきた小早川はさらに質問を続ける。


「ねぇ、誠ちゃん、知ってる? 
男の人同士でエッチする人のことをホモって言うのヨ?」

「うん……知ってる」

「じゃあ、誠ちゃんはどっちかしら?
女の子のおまんこに、おちんちん突っ込むのが好きなノーマルな男の子?
それとも、おちんぽお尻に突っ込んでもらうのが好きなホモの男の子?」

「ほ……ホモ……」


消え入るような声で、伏し目がちに答える誠。
真里の前で、こんな言葉を吐いてしまうことに後ろめたい気持ちがあるのだろう。
だが暗示の効果により、彼は素直に答えざるを得なかった。


「よく聞こえなかったわネ。
もっとハッキリと答えてちょうだい。
誠ちゃんは、女の子の裸が好きな男の子なの?
それとも、男の人のおちんぽを舐めたり、突っ込んでもらったり、おちんぽ同士を擦り合ったりするのが好きなホモなの?」

「わ、わたしは……ホモなのぉ」


先ほどよりもはっきりとした声で認めた。
彼は身体をモジモジとさせ、頬を染めて恥ずかしそうにしている。


「そう……誠ちゃんはホモ……
女の子の柔らかいおっぱいよりも、男の人の硬い胸板が好き。
女の子に挿れるよりも、男の人に挿れてもらう方が好きな男の娘なのヨ」

「はい……♡」


ついに自らをホモと認めてしまった誠。
プロのノンケキラーが与えた刺激は、誠をノーマルな男の子から、男好きの男の娘へと変えてしまったのだ。


「ふぁっ!♡ はぁっ!♡ あぁっ!♡」


生の誠が発したホモ宣言。
そのあまりの官能的な刺激に、真里は再び潮を吹いてしまっていた。


「うふふふ……変態ネェ。
誠ちゃん、どうして彼女が腰を振ってるのか分かるかしら?」


誠は再び真里を見つめた。

先ほどまでは犯されていたため、気づかなかったが、考えてみれば、どうして彼女はこんなにも股間を濡らしているのだろう。

快感を感じているかのようなあられのない声も、
ただ座っているだけの真里から発せられるには、あまりに不自然だった。

まるで意味が分からないといった様子の誠に、
小早川はすっと立ち上がり、真里を見下しながら説明を始めた。


「想像もつかないようネ。じゃあ教えてあげる♡
彼女はネ、誠ちゃんが男に犯されるのを見て興奮していたのヨ!」

「!!」

「不謹慎よネ? 誠ちゃんがせっかく彼女の代わりに犯されてあげてるのに、それを見て興奮しておまんこトロトロにしちゃうなんて、ふざけるのもいい加減にしろって感じよネ!」


ついに決定的な言葉を告げられ、嘆息をつく真里。

自分でも誤魔化しきれないのはわかっていた。
誠にこんな姿を見られ、しかも興奮している理由もバラされ、彼女は絶望しガクガクと身体を震わせていた。


「んっ……うぐっ……ごめんなさい……」


真里は罪悪感に耐えきれず謝罪した。
拉致状態であったものの、それで彼氏が犯されて興奮するのは別問題。

小早川に催眠を掛けられ、腐女子の感覚を高められていることを知らない真里は、心の底から反省していた。


「もうこんな変態女には愛想尽きたでしょ?
ここでコイツとは綺麗さっぱり別れちゃいましょ。
これ以上付き合ったって、あなたが男に犯される姿を想像してオナられるのがオチヨ!」


これも図星だ。
真里は常日頃から、誠が男に犯される姿を想像してオナニーしていた。
誠と付き合い始めたからといって、その癖を止めるどころか、
逆にエスカレートしてしまう可能性の方が高かった。


「誠くん……ごめんなさい。
わたし、なんて馬鹿なことを……こんな変態で、ごめんなさい。
ひっぐ……ひっぐ……ずっと……ずっと黙ってて……ごめんなさい」


今回の件は常日頃からBL妄想をしてきた自分への罰だと真里は思った。

いつも不謹慎なことを考えているから、
いざという時に自分自身をコントロールできなくなってしまうのだ。

自分は誠の恋人には相応しくない。
こんな変態女はどこかに消えてしまえば良い。

真里は自分のことを責め続けた。


そんな彼女の様子を見て、小早川は確信した。

もう誠は自分の物。
今の謝罪で真里が変態女だということは十分理解できたはずだ。
こんな不謹慎なことをされ、誠も心底愛想が尽きたことだろう。


「ひっぐ……ごっほごっほ!
ごめ……ごべんなさい、誠くん……ううぅぅっ……ううぅぅ……」


誠は、ひたすら泣きじゃくる真里を悲しい眼差しで見つめていた。

これが最後。
小早川は誠の目線に顔を降ろすと、優しく語りかけた。


「ここで彼女とは終わりにしましょ? 
付き合うなら男同士が一番ヨ♡
これからは女なんか相手にしないで、いっぱい男の人と愛し合いましょ♡
アタシも全力であなたをサポートしてあげるから♡
あなたが望むなら、全ての男性に愛してもらえるニューハーフにしてあげるワ♡
さぁ、誠ちゃん……彼女にお別れの挨拶をして……」


誠は真里の方へ目線を移す。

彼女は誠に顔向けできないのか、額を地面に付けて泣いていた。
そこには普段の元気で愛らしい彼女の面影はなかった。


(ふぅーいつ見ても、この光景は良いものネ。
あとは別れを告げた誠ちゃんを、この女の前で思いっきり犯してやる。

今度は自慰を我慢できないように、
無理やり手を掴んでおまんこを擦らせてからネ。 

最初にそうしてやれば、
あとは自分の意思で擦り続けるようになるでしょ。

その時の彼女の顔を見るのが楽しみ~♡
どんな絶望的で情けない顔で自慰に耽るんでしょうネ♡)


小早川は再び性器を勃起させていた。
先ほど誠を犯していた時と比べても、そのサイズは遥かに大きい。

彼は誠を犯しながら、
真里にどんな罵詈雑言を吐いてやろうかと考えていた。

Part.69 【 絆 】


薄暗いホールの真ん中で真里は泣いていた。

腐女子の趣味をバラされたショックと、
最愛の人が犯される姿を見て興奮してしまい、彼女の心は自虐と絶望で満たされていた。
小早川は、そんな彼女を嘲(あざけ)り笑いながら、
鮫島に次なる指示を出す。


「その女と向かい合わせになるよう、誠ちゃんの向きを変えてちょうだい」


鮫島は四つん這いになる誠を軽々と抱き上げると、指示通り動かし始めた。その間も熱い肉棒が、誠の腸内を掻き乱す。


「ふぁっ♡ ぁぁぁ!♡」


男の熱い塊に腸壁を抉(えぐ)られ喘ぐ誠。

鍛えられた男の腕の中で、彼の華奢な身体はビクビクと打ち震えていた。
勃つことを忘れた彼の小陰茎(しょういんけい)からは、
前立腺への刺激で産み出されたオカマ汁が、ポタポタと零れ落ちていた。

誠は真里の真向かいに立たされ、再び四つん這いの姿勢にされる。
顔を隠すこともせず、快感で蕩けきった雌の表情を余すことなく彼女に向けていた。


「おい誠、さっさとそいつに別れを言え。
お前も早くこれを動かして欲しいだろう?
終わったら、好きなだけ掘ってやるから早くしろ」


誠の白いお尻を軽く叩きながら鮫島が言う。
差し込んだ肉竿を早く出し入れしたいのか、急かすように言っていた。


「誠ちゃん、焦らなくてもいいのヨ? 
彼女に言いたいこと、じっくり伝えてあげて♡
もう思い残すことがないようにネ、うふふふふ♡」


ノンケの男が女と別れ、自分たちの仲間となる。
小早川にとって、こうして女から男を奪うのは、
何事にも代えがたい悦楽のひとときであった。

その時間は長ければ長いほど良い。

男が女を口汚く罵れば罵るほど、
女の心が傷つけば傷つくほど、彼の心は癒される。

女性が人権を剥奪(はくだつ)され、卵子を生成する道具として扱われる社会になるまで、彼の復讐は続くであろう。

この絶世の美少年、桐越誠はそのための強力な武器となる。これほどの美少年をニューハーフにできれば、今よりも楽にノンケの男性を籠絡(ろうらく)できるようになるだろう。

そのためにも、この二人は何としてでも別れさせなければならない。
配偶者や彼女がいる男性は、催眠の継続性が低く、
ニューハーフ嬢として働かせても、途中で暗示が切れてしまうのだ。

しかし恋人の存在がなくなれば、催眠の深化は留まることを知らなくなる。

いずれは催眠と素の状態が逆転し、
催眠を解いても、従順なニューハーフ嬢として働くようになるのだ。

そう……今この場で黒服として働く元ノンケの男達のように。






誠を堕とすには、先ほどの真里の行動が重要となってくる。

彼女は、誠が身代わりに犯されたにも関わらず、
その自己犠牲の精神を踏みにじるかのように、興奮して股を濡らしてしまっていた。

そのため誠が真里を軽蔑している可能性は高い。

それに加え、誠の女性への性的欲求は、既に完全に消えてしまっている。
性欲が湧かないのであれば、彼にとって彼女はもはや必要のない人物であるはずだ。

催眠により、今の誠は本音を口にすることしかできなくなっている。

いったい彼はどんな罵声を浴びせ、別れを告げるのだろうか? 別れを告げられた彼女の反応は?

これから起こる愛憎劇に、小早川は心を躍(おど)らせていた。


「真里さん……んんっ♡」


甘い吐息を漏らしながら、話を始める誠。


「うっ、うっう……ごめんなさい、誠くん」


真里は泣きながら誠に謝罪した。
彼女にとって、彼は世界で一番大切な人。
そんな人をこんな状況でも淫らな目で見てしまい、彼女はひどく後悔していた

そんな真里に誠は言う。


「真里さん……わたしが犯されて興奮していたって本当なの?」

「う、うん……本当。
誠くんが男の人に犯されて……興奮しちゃったの。
私、本当は……男の人同士のエッチを見て、興奮しちゃう変態なの……」


もう隠し立てはしない。
罪を誤魔化して、これ以上彼を裏切りたくはなかった。真里は、これまでひた隠しにしてきた腐女子の性(さが)を、全て打ち明けるつもりであった。

彼女の暴露に戸惑いながらも、誠は質問を続ける。


「……満足した? わたしが犯されるのを見て、真里さんは満足したの?」


それを聞き小早川は、誠が真里を問い詰めていくつもりなのだと感じた。


(ふふふ……良い調子ね。ああやって追い詰めていくのネ。まっ、自分が大変な目に遭っているのに、興奮されたら誰だって怒るわよネ)


これまで引き裂いてきたカップルと同じだ。
別れを切り出させる前に喧嘩を始める者もいたが、流れとしてはこちらの方が断然良い。殴り合いに発展したら、騒がしいし興醒めでもあるからだ。


「ううん……満足しなかった」

「どうして?」

「触らなかったから……誠くんが襲われているのに、自慰することなんてできなかったから……」


ここですかさず小早川の野次が飛ぶ。


「触らなくても、おまんこ濡らしてたら同じことでしょ? 何、自分はさも頑張りましたよって感じ、出してるの?

そんなこと言っても、アンタが不謹慎なことを考えてたのは変わらないワ。
本当に愛してるんだったら、そもそも発情すらしないわヨ!

ホント、女って自己擁護が多くてヤーネー! 
なんだって人のせいにするし、いつだって自分は悪くないって言うし、ホント嫌になっちゃうワ。誠ちゃんもそう思うでしょ?」


一切の自己弁護を許さない。
小早川は般若のような顔で真里を睨みつけていた。


「うっうっ……ごべん……なさぁいぃ……ん、んぐっ……ご、ご……ごべん……なざいぃぃぃ」


真里は両手で顔を覆うと、再び床にひれ伏してしまった。
小さくなった背中は、罪悪感に打ちひしがれ、小刻みに震えている。
この広いホールを、しばらく彼女の泣き声だけが木霊していた……。


「……」


誠は何も言わず、ただ悲しい目つきで真里を見つめていた。

彼が何を考えているのか?

おそらく長い付き合いのある直美であれば、
彼の今の心情を察することができたであろう。

誠は一旦目を閉じて、
心の中で彼女にかける言葉を決めると口を開いた。


「いいよ、真里さん」

「…………」


誠の声を聞き、泣き止む真里。


「……え?」


彼女は誠の言葉の意味が分からず、聞き直した。


「だから……私が犯されるのを見てオナニーして♡ 真里さんがそれで気持ち良くなってくれたら、私も嬉しい。私……真里さんのこと大好き……だから、いっぱい触って気持ちよくなって!」

「……誠くん!」


なんと誠は真里を非難するどころか、
その性癖を認め、彼女が自慰するのを許可してしまったのだ。

どちらにしても、ここから逃げ出すことはできない。そうであれば、彼女を苦しめているものを、できるだけ取り除いてあげたいと彼は思ったのだ。

誠は、四つん這いで床についた両腕に力を込めると、鮫島のものが差し込まれたお尻を動かし始めた。


「あっあぁん!♡ 気持ちいぃ!!♡♡」


そして快感に喘ぐ女のように、嬌声を上げた。
真里にこの想いが伝わるように、彼女の目をしっかり見据えて、誠は叫んだ。

想定外の出来事に鮫島は驚く。
まさか誠の方から腰を動かしてくるとは……。


(くっ、しかもこの締め付け……さっきとは大違いだ!!)


誠はお尻の筋肉を締めて、
鮫島の肉棒を貪(むさぼ)るように腰を動かしていた。


「はぁっ♡ いぃのぉ!♡ 真里さぁん!
わたしのお尻……おちんちんが入って……
はぁあん!♡ すっごく気持ちいいっ!!♡」


その光景を見て、真里の中で何かが弾けた。
男の象徴をその身に受け、女の性に歓び喘ぐ誠。
しかも誠は、それを自分を喜ばせるためにしてくれている。

言葉で表現できないほどの喜びと感動。
そしてこれまで感じたことのない安らかな快感が真里を襲った。


「あぁぁん!!♡♡」


既に許容量を超え、愛液を垂れ流すだけとなった蜜壺に、彼女は指の一本一本をうねる触手のような動きで這わせた。


「ああぁっ! 気持ちいい! はぁ♡
すっごく気持ちいいっ!! 誠くぅん♡♡」

「もっと! もっと良くなって、真里さん♡
あぁん♡ 私もおまんこ気持ちいぃっ♡♡」


慈愛に満ちた眼差しで微笑む誠。
そんな彼の優しい瞳に包まれて、安心して快感を堪能する真里。

二人の動きはすっかりシンクロし、
まるで激しく交尾する動物のような動きになっていた。


(なんてことなの……信じられないわ……)


小早川は度肝を抜かれていた。
これまでのカップルは、一方的に男が女を罵るか、女が応戦して罵り合いに発展するかのどちらかであった。
誠のように、彼女の変態性を受け入れ、自分をオカズに自慰を許可する者など一人もいなかったのである。

だが、このまま彼らを満足させてはならない。
慌てた小早川は鮫島に指示を出した。


「サメちゃん! すぐに止めさせなさい!!
誠ちゃんを抑えるのヨ!!」

「ぐっ、だめだ……こいつのケツ、気持ち良すぎて理性が……」


肉棒に与えられる未知の快感。
それは、これまで数々の男の尻を犯してきた鮫島にでさえ、理性を忘れさせるほどの魔力を秘めていた。本気を出した誠のアナルは、まさに名器中の名器だったのである。


「誠くぅん!! すきぃいい!! 愛してるっ!
あっあぁん♡ 気持ちぃいいよぉぉおお!!!」

「私も! 真里さんのこと愛してるっ♡」


愛を叫び合う二人。
もっと奥に、もっと奥に、鮫島の抵抗が弱まっていることを良いことに、誠は肉棒の根本まで、お尻でちゅうちゅうと吸いついていった。
さらに腰をくねらせ、前立腺を舌のように扱い、それを嘗め回す。

自分が男と淫らに交わるほど、真里は気持ちよくなってくれる
彼女が気持ち良くなってくれるのが嬉しくて、
彼女をもっと喜ばせたくて、誠は積極的に行為に徹していた。


「はぁん♡ 誠くんっ、おちんぽ突っ込まれるってどんな感じなの?」

「うんっ! ああぁっ♡♡ すごく……熱くて、硬くて、蕩けちゃいそうなのぉ♡♡」

「ふぁっ♡ すごぉい♡♡」


娼婦のような怪しい目つきで、見せつけるように言う誠に、真里は大いに興奮した。


ここで鮫島が大きく叫ぶ。


「うおおおおおおおおお!!!!」


既に彼は目がイってしまっていた。
アナルから押し寄せる快楽の波に飲み込まれ、理性を失ってしまったのだ。彼は自らの肉棒を美味しそうに頬張る誠の尻を掴むと、一気に腰を動かした! 


「サメちゃんっ! 待ちなさいっ!!」

「うおおおおおおおおおおおお!!! 
俺の本気の突きをおおおおおおおっ!
喰らいやがれぇえええええ!!!!!」


小早川の静止も聞かず、鮫島は本気で誠を犯し始めてしまった。


「ちょっと、あんた達っ! 見てないで、鮫島を止めなさい!!」

「はいっ!」


黒服達が一斉に止めに入る。
しかし高速で打ち出される鮫島の拳によって、
彼らは次々と吹き飛ばされてしまった。

顎を砕かれる者。
目が有らぬ方を向き意識を失う者。

まさに一撃必殺。

誰一人、彼の拳を受けて立ち上がれる者はいなかった。


「だめだ、今の鮫島さんに近づくのは危険過ぎる」


怯える黒服達。
既に半数以上がノックアウトされてしまっていた。


「くっそ……あんのバカ!」


そこで小早川は思いつく。
鮫島が止められないのなら、他を止めれば良いのだと。


「あの女を捕まえなさいっ! すぐに自慰を止めさせるのヨ!」


慌てていた小早川は、つい大きく叫んでしまった。
その声を聞き、誠は真里に言った。


「真里さん、私の身体の下に隠れて!」

「はいっ!♡」


真里は四つん這いになる誠の身体の下に足を入れると、仰向けになるように滑り込んだ。


「くっ! なんてとこに逃げ込むの! 早くそいつを引きずり出しなさい!」


黒服が真里を掴もうと手を伸ばす。
しかし、誠が両腕で真里の肩をがっちり抑えているため、上手くいかない。

それでもなお、黒服は真里を引っ張り上げようとするのだが……。


「邪魔すんじゃねーー!!」


誠の腰の動きが鈍り、快感が弱まったことにキレた鮫島が、黒服の袖を掴み強烈な頭突きをくらわせた。
その場に倒れる黒服。もちろんピクリともしない。
既に鮫島は誠の尻から与えられる快楽の虜になり、邪魔する者を全て排除するようになっていたのだ。


「あのヤロー!!」


ギリっと据わった目で鮫島を睨みつける小早川。そんな彼に黒服の一人が進言する。


「小早川さん、鮫島さんに催眠を掛けて眠らせるのはどうですか?」

「それができればとっくにやってるわヨ!
あいつは、どういう訳か催眠が全然効かないの! でなければ、素っ裸でその辺うろつかせたりしないワ!」


ギリギリと歯切りをして悔しがる小早川。
だがこれ以上、戦力を失いたくはない。
彼は一旦鮫島を止めるのを諦め、静観することを決めた。


再び腰をグラインドさせる誠。
彼が見下ろす目線の先には真里がいる。
彼女はすっかり欲情した目付きで、誠が男に犯される姿に見入っていた。


「誠くん……すごいエッチ♡
男の人に犯されてエロカワイイ♡ はぁ♡ はぁっ♡」

「もぉ、カワイイだなんて……恥ずかしいよ♡」


鼻先が触れる距離で笑い合う二人。
彼らは鼻がぶつからないように顔をずらすと、唇を合わせた。


「ンンッ! ンフー♡ ンッ♡ ンッ♡」


接吻を交わしながらも、鮫島の剛直が誠の前立腺を押し潰す。そのあまりの快感で、誠は淫らな吐息を彼女の口に吐いてしまった。

そんな彼の息をうっとりとした表情で受け入れる真里。誠が男の肉棒を受入れ吐く息は、なんとも淫靡で甘い香りがした。
そのまま見つめ合いながら、舌を絡ませ合い愛情を表現する二人。

催眠の影響もあり、
誠にとってこの行為自体は性感を伴わないものであったが、真里と触れ合いたいという気持ちは変わらなかった。

いくら催眠を受けようとも、どれだけ男性への欲求を高められようとも、誠の真里へ愛は変わらなかったのだ。





ここで突き方を変える鮫島。
さすがノンケ堕としのエキスパートなだけあり、
実に飽きさせない巧みな動きをしている。


「ぁんっ♡ 鮫島さん。それ、すごいのっ!♡」


新しい刺激が与えられ、快感でアヘり出す誠。

彼のペニクリから溢れる液は、ちょうど真向かいにある真里の女性器にポタポタと垂れていた。
真里は誠の愛液を指で掬うと、そのまま割れ目に擦り付けた。


「あぁ……マコちゃんの女の子の液、私のと混ざってる♡」

「あっ♡ ンッ♡ マコ……ちゃん?」


真里が初めて誠のことをマコちゃんと呼んだ。
これは誠が女の子だった頃に、サークルのメンバーが使っていた呼び名だ。
真里だけはこれまで一度も誠をそう呼んだことはなかった。


「もう私には……はぁはぁ♡
マコちゃんのこと……女の子にしか見えません。
こんなに可愛くてっ♡ はぁん♡
エッチな声出してぇ、んんっ♡
男の人のおちんぽ突っ込まれて喘ぐなんて……
もう完全に女の子ですよ♡」

「うん、そうなの……はぁッ♡ はぁッ♡
おちんぽにぃ……目覚めちゃってぇ♡
あぁんっ! 女の子になっちゃったの♡」

「ふふふ、かわいい♡ この小ぶりなオッパイも。ピンク色のぷるんとした乳首も。
撫で肩なところも、華奢なところも、つるつるした肌も♡ もちろん性格も含めて全部大好きです。愛してます♡」

「わたしも……真里さんのこと全部好き♡ 愛してる!」


再び口付けを交わす誠と真里。
様々な人に、あらゆる加工を受けてきた二人であったが、彼らの心のピースは、再びぴったりと当てはまったのだ。

真里は誠の愛液がもっと欲しくて、
彼のペニクリを牛の乳しぼりのように握った。
鮫島に突かれていることもあり、次々と新しい液が絞り出される。

ねっとりとした愛液がたっぷりと割れ目に付着し、
興奮した真里は、誠の背中を両腕で、誠の腰を両足でがっしり抱きしめ、腰を上げて直接そこをペニクリに密着させた。


「マコちゃんのクリちゃん擦れて気持ちイイッ♡」

「あぁ……真里さぁん♡」


まるで女同士の貝合わせのように、お互いのクリを接触させる二人。

その光景を見て、小早川は激怒した。


「あのクソ女! 誠ちゃんのおちんちんはアタシのものヨ! ぶっ殺してやる!」


目を血走らせて殴りかかろうとする彼を、黒服達は必死になって止めた。
ここでリーダである小早川が鮫島に潰されてしまったら、大変な事態に陥ってしまう。

そんなオカマの心情などお構いなしに、二人はさらに愛を深めていく。


「ねぇ、真里さん……」

「なぁに?♡ マコちゃん♡」

「わたし、もっと激しいのが欲しいの……」

「うふ♡ 私もマコちゃんがもっと激しく犯される姿、見てみたいです♡」


阿吽(あうん)の呼吸と言うものか、
二人は同時に同じことを思い浮かべていた。
誠は身体をよじり鮫島の方を向くと誘惑を始めた。


「ねぇ、鮫島さん……私にキスして♡
キスしながらあなたの逞しいおちんぽ、わたしのお尻オマンコに入れて♡」


鮫島の目に映る誠の姿。

男にも女にも見える中性的な顔立ちに、
赤く火照りすっかり色欲に塗れてしまった肌。
男も女も魅了してしまう美貌。

そして直接男性器を刺激するような淫乱な声。

鮫島はまるで操られるかのように、
男根を引き抜くと、誠の身体を裏返した。

真里はその動きに合わせ、誠の背中にぴったりと張り付くと、後ろから腕を回し、彼の両足を広げて持ち上げた。

ちょうど母親が小さな子供をシーシーさせるような姿勢である。

鮫島は、発射寸前の大砲を再び菊門に差し込むと、誠の身体を強く抱きしめキスをした。そして誠も、彼の背中に細くしなやかな腕を回すと、それに応じた。


ちゅうぅぅぅぅぅ!!! 
ちゅっちゅぷ、ちゅぷちゅぷ、ちゅぶ♡♡


男同士のキス。
お互いに積極的に舌を絡め合い、
男の舌、男の唾液、男の息を確かめ合う。
真里の目の前で、これでもかと濃厚な男同士の性交が繰り広げられる。

鮫島の動きに合わせ、
支えている誠の身体を揺らす真里。
ジュポジュポと逞しい男性器が、誠のお尻に突き刺さるたび、彼女も大きな快感を得た。

まさに生粋(きっすい)の腐女子。
全身がBLを求め、誠のホモ化を望んでいる。

そして彼女はそれが二人を別(わか)つものでないと理解したことにより、心から快感を受け入れられるようになったのだ。


「そう……もっと! もっとキスして! 
あふぅ♡ そうそうそうそうそう♡
ふぁ♡ あ……イク……イ……イク……!!
イっちゃう! マコちゃんのホモセックス見て……イっちゃううう!!
イッ………ちゃぁぁぁぁあううううう!♡♡♡」


ビクビクビクビクビクビクビクビクッ!!! 
ビクンッ! ビクンッ! ビクンッ!! 


体を大きく反らせて潮を噴く真里。
触ってもいない彼女の女性器は、
男同士のセックスを見ただけでイってしまった。

誠は背中で激しく痙攣する真里に気づき、
彼女が絶頂に達したことを理解した。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


鮫島が一段と激しく突き入れる。
目にも止まらぬ速さで、ジャブを撃ち出すように奥の奥を突くと、一気にそれを膨張させ、特大の砲弾を発射した。


ドクドクドクドクドクドクドクドクドクッ!!! 


誠の中に特濃の精子が大量に注ぎ込まれる。
お尻の許容量を超えるそれは、アナルのヒダの僅かな隙間から噴出した。

そのあまりの激しさに、誠は大きく叫ぶ。


「あぁあああああああああっ!!
熱いっ! すごく熱いいいいぃ!!
イっちゃう!♡ わたしも……はぁん!♡
イッちゃうううううううううう!!♡♡♡」


ビクビクビクビクビクビクビクビクビクッ!!! 
ビクビクンッ♡ ビクンッ♡ ビクンッ♡


真里と鮫島に続いて、誠も絶頂に達してしまった。

彼は、己の体内に満たされる男の体液の熱さと、
男に抱擁されることによって得られる女としての快感、そして最愛の真里がイったことへの喜びで絶頂を迎えたのだ。



※※※



「…………」


意識を失い倒れる二人を見つめる小早川。

彼は何も言うことができなかった。

誠への催眠はたしかに成功していた。
誠の性の対象は完全に女から男に移ったはずだ。

なのに、どうして誠は真里のことを愛していると言ったのだろうか? 

彼は先ほど起きた出来事を未だに信じられずにいた。


「あの、小早川さん……」

「……なにヨ?」

「こんな時にすみません。まもなく終電の時間が近づいてますが、いかがしましょうか?」

「いかがって……帰すしかないでしょ!! 
このまま帰さなかったら、誰にどう疑われるか分かったもんじゃないワ! 
さっさと洗って服を着せなさい!!」

「ははっ! かしこまりました!」


黒服達が一斉に動き出す。

小早川はあまりの悔しさに震えていた。
本当は二人ともぶん殴ってやりたい気持ちでいっぱいであった。

だが、誠は大事な商売道具になる身だ。
傷を付けるわけにはいかない。
女の方も、背後にどんな交友関係があるか分からない以上、安易に手を出すのは考えものだった。


「ふーすっきりしたぜー」


実に呑気な顔をして、鮫島がやってくる。
彼はシャワーを浴びて身体を洗ってきたのか、バスローブに身を包み、笑顔すら見せていた。

この男が、快楽に負けなければこんなことにならなかったのに……


「よく平気な顔していられるわネ? あんたは、あの二人に都合の良いオナニーの道具として使われたのヨ? 何とも思わないの?」

「俺は気持ち良ければ何でもいい。あれはあれで気持ち良かったぜ」

「ホントにセックスのことしか考えてないのネ……」

「へっへっへ、そうだな。だが、別にこれが最後ってわけじゃないんだし、そこまで気にすることでもないだろ?」


鮫島は今回のことをあまり気にしていない様子であった。

たしかに失敗はしてしまったが、既に催眠は掛け終えてある。いつでも好きな時に呼び出し、彼らを調教することは可能だ。


「……たしかにそうネ。いくらでも時間はあるワ。
あの二人には時間を掛けて、じっくりと復讐してやる。このアタシの顔に泥を塗ったことを、絶対後悔させてやるんだから!」



※※※


その後、二人は健忘催眠を掛けられ、拉致された場所近くの喫茶店で起こされることとなった。


「お客さん。起きてください。閉店の時間ですよ!」

「んっ?」

「すみません、店を閉めたいのですが……」

「あっ! すみません、なんか眠っちゃっていたみたいで……真里さん起きて」

「はぇ? あぇ? ここは? 
あっ、そっか! 話してるうちに寝ちゃったんだ」


喫茶店で揃って眠るというなんとも不自然な状況であったが、催眠でそう思い込まされている二人は、特に気にならない様子であった。


「あっ! もうすぐ終電だよ! 急いで真里さん」

「ハイ!」


お金を支払い、駅に向かって走る二人。

小早川は、その様子を高層ビルの窓辺からギロギロと睨みつけていた。

Part.70 【 性の不一致 】

執筆:波時すゆあ  校正・アドバイス:皇海



ピン ポン パン ポン♪


《まもなく一番線に、◯✕行きの最終電車が到着します。
危険ですから白線の内側でお待ち下さい》


「ハァハァ……真里さん、一番線だよ。急いで」

「ヒィーフゥー、ハァー……走り……過ぎて……横腹が痛いです……ハァハァ」


真里は喫茶店から駅まで全力で走り、激しく息切れを起こしていた。
高校時代運動部に所属していた誠と違って、真里は漫画研究部だ。あまり運動をしてこなかったこともあり、基礎的な体力が常人より少しだけ劣っていた。


「真里さん、私、先に行って切符買ってくるね」


真里より先行して自販機で切符を購入する誠。
すぐに振り返り、ノロノロと付いてくる真里に寄り添う。


「大丈夫? 真里さん、ほら切符買ったよ」

「ゼェゼェ……もう、私に構わず……ゼェゼェ……誠くんだけでも……ハァハァ……電車に乗って……ください」

「そんな……真里さんだけ置いていける訳ないでしょ。
私の肩に掴まって、さぁ行こ?」


真里をフォローしながらホームへの階段を上り始める。
既に電車は到着しているようだった。


タラタラタラタッター♪ タラタラタラタッター♪

出発を告げる音楽が鳴り始める。


(これはさすがに……間に合わないかな……)


誠が苦い顔をする。
電車も心配だったが、脇腹を抑えて苦しそうにしてる真里を無理に走らせることはできなかった。


タラタラタラ、タタタタ、タンッ♪

《一番線、ドアが閉まります。ご注意下さい》

プシューーーーー!!



ようやく階段を上りきり、電車を目視するも、
既にドアは閉じられた後だった。


「あーー、ダメだったか……」


過ぎ行く列車のテイルランプを、
真里と誠はがっかりした気持ちで見つめていた。


「ハァハァ……電車……行っちゃいましたね」

「そうだね……」


誠は頷き、ため息をついた。


「すみません……ハァハァ……私がノロいばかりに……」

「仕方ないよ。とりあえずそこのベンチで休も?
何か飲みたいものある?」


気分を切り替えるように誠が言う。
二人は自販機で缶ジュースを購入すると、ベンチに腰かけた。


「真里さんのせいじゃないよ。そもそも私がさっきのお店で居眠りなんかしたのがいけなかったんだ……ごめんね、真里さん」


誠が申し訳なさそうに謝る。

彼の記憶では、気絶した真里を介抱するため喫茶店に立ち寄ったことになっていた。
不自然なシチュエーションではあるが、暗示を掛けられている二人には、それがさも自然なことのように思えていた。


「そんなことありません。私こそ寝ちゃって……あれ? 私、いつ寝たんでしたっけ?」


真里は気絶する直前の記憶を思い起こそうとした。
薄暗い川沿いの草の上に誠と二人きり、
その情景が思い浮かぶ。


(たしか誠くんに告白されて……OKして、それから、それから……あっ!!)


ボッ!という音と共に一気に赤面する真里。

誠にキスされたことを思い出したようだ。


「ま、まままま、誠くん。
私たち、あの、その、あの……キ、キキ、キス……しちゃいました?」

「うん……急にごめんね。まさかあんなことになるなんて思わなくて……」

「いーんです、いーーーんですよ。
私、その、あっ、全然平気です!あの、えっと、その、ひゃーーーーー!!!!♡♡」


居ても立ってもいられなくなった真里は誠に抱きついた。
兼ねてからの念願であった誠と付き合えて、かなり舞い上がっているようだ。

誠は応えるように真里の背中に手を添えた。
しかし周りの様子が、少し気になるようだ。

深夜のホームといえど、
人気(ひとけ)が全くない訳ではない。

二人の様子に注目が集まり、向かいのホームの中年の男性などは不機嫌な顔をしていた。
いかにも「家でやれ」と言わんばかりの表情だ。


「誠くん……私たち、ついにカップルになれたんですね……」


感慨深く真里が言う。


「うん……そうだね。
でも真里さん、ここで抱き合うのはちょっと……」

「ダメです。恋人になったんですから、私のことは真里と呼んでください。さん付けだと、あまりに他人行儀です!」


真里は周りの様子が全く見えていない。
彼女の誠に対する愛情表現が激しくなればなるほど、周囲の非モテへのダメージは大きくなってしまう。

現に不機嫌な表情に変わるものが増え続けているのだ。

周囲の様子に慌てた誠は、とりあえず真里を連れてこの場を離れることにした。


「わかった。真里さん、いや真里。
とりあえずここを出よう。ここにいてもしょうがないし、歩きながらどうするか決めようよ」

「はい!わかりました。
誠くんと一緒ならどこにでも行きます♡」


立ち上がる誠にギュッと密着する真里。

本当の恋人同士になれたことで、彼女はさらに過剰なスキンシップをするようになってしまった。

誠への気持ちを隠す必要がなくなり、
完全にラブラブモードへと突入している。

そんな二人のリア充っぷりに、
心を滅多刺しにされた男達の中には、
「ちっくしょー!!」と涙声で叫びながら線路に侵入し、駅員に取り押さえられた者もいたとかいないとか……。


※※※


真夜中の歓楽街に繰り出す二人。

真夜中と言っても、
コンビニやスナックなど深夜営業のお店が多く、
飲み屋帰りのサラリーマンや、お祭り帰りの人の姿も多く見られ、以前住んでいた街と比べてもずっと賑やかである。

駅を出た二人は、ひとまず行き先を決めることにした。


「これからどーしますか?誠くん♡」


真里が満面の笑みで尋ねる。
手は恋人繋ぎをしており、誠以外は何も目に入っていない様子だ。


「このまま歩いて帰ろうと思う。
真里……も一人で帰るのは危険だし、今日はうちに泊まっていきなよ」

「はいっ!♡ お言葉に甘えて、誠くんの家に泊まらせてもらいます! あっでも、着替えが……」


明日は午前中に大学の講義を控えている。
浴衣で出席はできないので、一度帰って着替えなければならなかった。

しかしここから家までは、タクシーを使っても30分以上はかかる。金額にして数千円だ。
少し考えたが、真里は改めて誠の家に泊まることを決めた。


「大丈夫です。明日始発で戻って、すぐに出れば間に合うと思います」

「んーでも、それだと慌ただしいよね。
着替えだったら貸すよ。私もレディースの服持ってるし、フリーサイズのもあるから、真里……が良ければだけど」

「えっー!? 誠くんの服、貸してもらえるんですかっ! 是非、是非お願いします♡」


大好きな誠の服を貸してもらえると聞いて、真里は大喜びだ。


(ハァハァ♡誠くんの匂いが詰まった服を着れるの?
アーー!!ヤバイヤバイ♡
全身、誠くんに包まれちゃったら、
私、正気でいられる自信ないかも♡
いくらでも誠くんの匂いクンカクンカできちゃうじゃん!♡)


いつもながらの変態妄想を真里が繰り広げている中、
誠は真里の新しい呼び名に抵抗を感じていた。

真里の望むまま、呼び捨てにはしてみたが、
『実はすごく呼びにくい』のだ。


それは大学進学後、
直美を呼び捨てにできなくなった時の状況に似ていた。

今でこそ誠と直美は、マコちゃんナオちゃんと呼び合う仲であるが、元々は呼び捨ての仲であったのだ。

もちろんそれは二人の信頼関係の現れでもあったのだが、
誠が女性化したことで、
直美は誠をマコちゃんと呼ぶのが普通になり、
誠も直美をナオちゃんと愛称で呼ぶのが普通になった。

恋人から友達へと立場を変えた二人であるが、
もっと細かく言うと、対等な関係から、
守る側、守られる側に変わったという事情もあった。

直美にとって誠は、可愛らしくて守ってあげたくなる女の子に変わり、誠にとって直美は、
強くて頼りがいのある女性へと変わっていた。

そういった関係上、
誠は直美を呼び捨てにすることはできなくなったのである。


それらの効果をもたらした恭子の催眠術であるが、
最近は徐々に弱まりを見せ始めてきていた。

雪山で勇敢に真里を救護したり、納涼祭で自ら告白をするに至ったのも、その結果である。

しかし不幸にも誠はここで新たな催眠術を受けてしまう。

ほぼ数時間にも及んだBL催眠調教。

小早川から受けた暗示により誠は、

男らしくありたいと思うより、女らしくありたい
女性を守るより、男性に守られたい
女性を愛するより、男性に愛されたい

と感じるようになり、
彼氏としての保護を伴った呼び捨てを、
女性である真里にすることができなくなってしまったのだ。


ネオンが光る歓楽街を歩きながら誠は言う。


「あ、あの、真里……さ。呼び方のことなんだけど」

「はい?」

「やっぱり今まで通り、
"さん"付けして呼んでも良いかな?」

「えっーどうしてですか?」

「ずっとそうして呼んできたってもあるけど、
真里さんを呼び捨てにするのって、まだ慣れなくて……」

「うーん、たしかに慣れないと難しいかもしれませんね……名字から名前に変えるのとは違いますからね。ちょっと試しに私も誠くんのこと、呼び捨てにしてみますね」

「うん」



「誠」



真里は目を閉じて、
呼んだ感覚をじっくりと咀嚼してみた。


「あーなんか少し失礼な感じがしますね。
先輩だから余計そう感じるのかな?」

「失礼というより関係性の問題だと思うよ。
私達、まだ付き合うようになったばかりだし……」

「たしかにそうですね……私、焦りすぎてたかもしれません。誠くんの呼びやすいように呼んでください!」

「ありがとう、真里さん。
でも真里さんが呼び捨てで呼んで欲しいのは分かったから、なるべくそう呼べるように意識してみるね」

「はい!ありがとうございます!」


にっこりと微笑み合う二人。

人の呼び名は関係性や心情によって変わるもの。

そしてそれは、
自分自身への呼び方にも適用されるものである。


二人はこの時、誠が自らの呼称を"僕"から"私"に戻していることに気がつかなかった。



※※※



コツ、コツ、コツ、コツ。

古びた鉄の階段を登り、
"桐越"と表札が貼られたドアを開ける。

ギィーーーーー

部屋の中から、お香の匂いが漂ってきた。


「誠くんの玄関、あいかわらず良い匂いしますね。
これ何の匂いなんですか?」

「あぁこれね、キヨちゃんに貰ったお香の匂いだよ」


誠は下駄箱の上に置いてある箱を指差した。
箱には民俗風の衣装を着た男女のイラストが描かれ、外国語で"ネバール製"と書かれてあった。

恭子が旅行先で買ってきたお香であるが、中身は催眠用のお香に入れ替えてあった。その事実を誠は知らない。


真里は靴を脱ぐとお香を見つめた。


(うーん、なんだろ?
つい最近同じような匂いを嗅いだ気がするんだけど……)


考えてみるが思い当たる節はない。

気になったが、真里は奥へ進んだ誠を追ってリビングへ入った。



「お疲れ様」

「お疲れ様です。何度来ても、やっぱりこの部屋は落ち着きますね!」


真里は荷物をソファーの横に置くと、ベッドに腰かけた。
少し弾力のあるマットレスにほんのりと誠の匂いがして、それだけで良い気持ちだった。

同じようにベッドに腰かける誠。
真里は彼に顔を向けると、改まるように話を始めた。


「ねぇ、誠くん……」

「なぁに? 真里さん」

「私と誠くんって、もう付き合ってるんですよね?」

「……? うん、そうだけど」


誠は不思議そうに答える。

真里は返事を聞くと、
ゆっくりと身体を傾け、そのまま彼の太ももに頭を乗せた。


「彼女だから、こんなことしても良いんですよね?」


上目遣いで確認する。
男からすれば、まるで誘ってるかのような表情だ。

できれば、性的関係を結びたい。
誠と触れ合い、愛し合いたいーーそう真里は思っていた。

しかし奥手な誠のことだ。
軽い男と違って、この程度で襲ってくることはないだろう。

健全な関係を続けて、早くて数か月、もしくは1年以上経って、ようやく身体の関係といったところだ。

真里は、そう何か月も待てる気がしなかった。
根は年中発情している変態女なのだ。

誠のBL妄想を始め、恭子とのレズ妄想、自分がふたなりになって誠を犯す妄想だってしたことがある。

そして小早川から受けた催眠により、
彼女はいつも以上に興奮してしまっていた。


「うんいいよ。
でも、真里さん付き合う前からよくしてたじゃない?」

「んっ? あっ、そういえば……」


たしかに真里が太ももに頭を乗せるのは、今回が初めてではない。お祭りの時も、以前遊びに来た時もしていた。

真里は付き合う前から、
カップルがするようなスキンシップをしていたのだ。


「たしかに、そうですね。
無意識にしていたかもしれません……」


真里の過剰なスキンシップにより、
誠はある程度のことまでなら、当たり前と思うようになっていた。

誠を誘惑するための仕草も、並大抵のことでは意味を成さない。

出鼻を挫かれてしまった真里は、それならばと、
これまでにないスキンシップを決行することにした。

顔をあげ、視線の高さを誠と合わせると、
熱っぽい瞳で見つめた。


「じゃ、じゃあ、今までできなかったこと、してもいいですか?」

「できなかったこと?」

「はいっ! 誠くんにキス……したいです」


言った途端、顔が紅く染まる。

改めて言うと恥ずかしかった。
こんなこと女性から言うことだろうか?

そんなことを頭でぐるぐると思案しながら、
真里は彼の返事を待った。


「う、うん……もちろん良いよ。
私も真里さんにキスしたしね。
でも改めて言われると、なんか恥ずかしいな……」


誠の顔も紅く染まり始める。
彼は狭い肩幅を更に狭くし、恥ずかしさで身を捩(よじ)らせていた。

誠の変化に目を見張る真里。

純な少女のように目をつむりキスを待ち受ける姿は、
まるで彼が半年前の状態に戻ってしまったかのようだった。


(な、なんだろ?
誠くん、女の子に戻っちゃったみたい……。
いや、でもこれも自然な反応っていうか、
誠くんだったらあり得るというか、
元々そうだったと言われれば、妙に納得はできてしまうけど……)


だがお祭りでキスした時とは明確に違う。
あまりにも短時間で変わり過ぎである。

あの時の男らしかった誠はどこにいったのだろうか?

高校時代の真里だったら、
ここで躊躇(ちゅうちょ)していたであろう。

しかし様々な経験を積み、彼女は成長していた。


(ふん…………今さら、こんなことで戸惑う私じゃない。
誠くんが女の子の部分があっても良いじゃない。
カッコいい誠くん。可愛いマコちゃん。
今の私ならそのどちらも愛せる)


既に迷いはなかった。

彼女は誠の肩に手を置くと、
目を閉じて、ゆっくりと口付けを交わした。

誠の唇は想像以上に柔らかく、甘く淫靡な味がした。


(誠くんの唇柔らかい……肩幅も狭くて女の子みたい。
もしこれで女の子の格好をしていたら、本当に女の子とキスしている気分だったろうな……)


ファーストキスの時のような激しさはなかったものの、
女の子同士でキスをするような優しさと柔らかさ、
そしてほんの少しの背徳感が彼女の心を包んでいた。


(気持ちいい……
もしこれがレズなんだったら、私はレズでも構わない)


真里は誠とのセカンドキスを受け入れた。

限りなくレズキスに近い行為ではあったが、
誠への愛が、真里の同性愛への忌避感をうち壊したのだ。

そうしてしばらくして二人の唇は離れた。
頬を紅潮させ、うっとりとした目付きで真里は言う。


「誠くんとのキス、良かったです……」


愛おしい彼、
それはゆっくりと目を開けると言った。


「うん、そうだね…………
あ、お風呂沸かして来なくちゃ。ちょっと行ってくるね」

「えっ? あっ、はい!」



真里は、その反応に驚いた。

てっきりキスの余韻に浸るのかと思っていたのに、
彼は湯を沸かすため、すぐに離れていってしまったのだ。

心に冷たい空気が流れる。
そして、胸が痛むような感じがした。


(誠くん、どうして……?)


お風呂に入らなければ、寝るのが遅くなってしまうのは理解できる。

しかし今は心を通い合わせる方が、ずっと大事なことではないだろうか?

寂しい気持ちはしたが、男と女ではその辺の捉え方が違うのかもしれないと思い、真里は我慢することにした。



※※※



(急にこっちに来ちゃって、真里さん傷ついていないかな……)


蛇口から流れ出るお湯を見つめながら、
誠は彼女のことを心配していた。

誠がお風呂場に来た理由は、
お湯を入れるためではなく、真里から離れるためだった。

唇を抑え、力なく息を吐く。
彼はその場でうずくまり目を閉じていた。


(最初にした時は、こんなこと感じなかったのに……)


実は、誠は真里とのキスで強烈な違和感を感じていた。

それは、まるで『同性とキスしている』かのような違和感。
言い換えれば、『恋愛対象ではない性別とのキス』といったところだ。

愛する人とキスをして、
なぜこのような気持ちになるのか理解できなかった。
自分は男で、女である真里を好きなはずだ。

なのに、なぜ真里を同性として認識してしまったのか?


(違う……もしかして逆なのかな?)


真里を同性、すなわち男性として認識したのではなく、
自分を女性と認識しているから、真里を同性として感じたのではないだろうか?


(まさか……そんな……だって初めてキスした時はこんなこと……)


思いもしなかった。
果たして、本当にそうだろうか?


誠は起き上がり、
その時のことを思い返してみることにした。

あの時、彼女はすぐに気絶してしまった。

異変に気を取られ、キスの感覚をしっかりと受け止めることができていなかったのではないだろうか?

もし真里が気絶していなかったなら、
もっと早く違和感に気づいていたかもしれない……。

だが、だからといって、どうだと言うのか?

「違和感があったので、告白を取り消します」

などと言えるわけがない。



………………………………




誠は自らの性的違和感を解消したつもりだった。

日が経つにつれ、薄れゆく女性としての心。
恭子の催眠が解けてきて、徐々に男性としての自己認識が深まってきていた。

だからこそ告白した。

真里と一緒にいたかったから、
いつまでも守り続けたいと思ったから。

決して生半可な気持ちで告白した訳ではない。


(なのに…………どうして…………)


自分の胸に手を当ててみる。

膨らんだ女性の胸。

最近は少しずつ違和感を抱き始めてきたこの胸の膨らみも、今では無くてはならないもののように感じられた。

今着ている男性物の浴衣だって、すぐに脱いで、久しぶりに可愛い服を着てみたいと思っている。

誠はそこまで考えて、自分の物の考え方が、
完全に女性寄りになっていることに気がついた。


(私は男じゃないの……? 本当は女なの……?)


誠の心は、再び揺れ始めていた。



Part.71 【 三度目の正直 】

午後1時半

湯が溜まるまでの間、誠は洗面台の掃除をしていた。
真里の元に戻る気になれず、
こうして時間を潰すことにしていたのだ。

洗面台の鏡を拭いていると、ふと自分の顔が気になった。
頬に指を添え、じっくりと見つめる。


(なんで私……こんなに女っぽく見えるんだろう?)


他人では気付かないような印象の変化、
誠はそれに気が付いた。

ここ数ヶ月は女装をすることもなくなり、
顔立ちも元の雰囲気が出てきたように思えていた。

しかし今は、どう見ても女性にしか見えない。
まるで生まれながら女性として過ごしてきたかのような
自然な女性らしさだったのだ。


思い当たる節がない。
最近は一日中男性として過ごしている。
男性的に見えるならまだしも、
女性的に見えるようになったのはなぜなのだろうか?

美容液を変えた覚えはないし、
新しい健康法を取り入れた訳でもない。

もしかしたら心理的なものなのかもしれない。

そう考えた時、漠然とではあるが、
自分の中で何かが欠けてる気がした。

そう、大切な何かが…………。

しかしいくら考えても、
彼がその答えに行き着くことはなかった。


誠の中で失われしもの……


それは恭子の催眠によって封印されてきた
『男性として女性を好きになる心』であった。

誠は催眠により、女性を性的対象として見る男性の心を、完全に死滅させられていたのだ。

今あるのは、後天的に植え付けられた女性としての心のみ。

そしてそれは二度と元に戻ることはない。

その事実が誠の容姿を、中性的なものから女性的なものへと変えてしまっていたのである。


ジャバジャバジャバジャバ


(あっ、いけない! 出し過ぎちゃった!)


浴槽から溢れ出るお湯の音に気付きハッと我に返る。

誠は急いでお湯を止めると、
浴槽に蓋を被せ、リビングへと向かった。



※※※



「真里さーん、お風呂溜まったよ。どうする? 先に入る?」


リビングのソファーに座って、テレビを見る真里に言った。
真里はテーブルの上のクッキーをポリポリと噛りながら返事をする。


「いつも見てる番組があるので、先に入ってもらって良いですか?」

「そっか、じゃあそうするね」


誠は脱衣場へと引き返した。

いつもと同じように服を脱ぎ始める。
裸になった彼は鏡に映った自分の身体を観察した。

色白で、小柄で、柔らかく女らしい凹凸のある身体。
小さいが、この胸の膨らみも張りがあって女性的だった。

先ほど顔を観察していた時もそうであったが、
誠は、そんな自分の姿を見て、内心喜んでいた。

白くて小さなちんちんは付いているものの、
それ以外は完全な女性の姿。

今はそれがとても嬉しく感じられた。


(昨日までこんなこと思わなかったのに……)


しばらく男性として過ごしてきたことへの反動だろうか?

その気持ちは、以前女性になろうとメイクを練習していた頃に比べ遥かに大きかった。

それに気付き、誠は愕然とする。


(私は、やっぱり女だったんだ……
なんで男に戻ろうとしていたんだろう?

告白なんてしなきゃ良かったな……

これじゃ、真里さんのことを傷つけちゃう……
あんなに真剣に向き合ってくれたのに……
ごめんなさい……真里さん)


自分にはもう、真里という彼女がいる。
告白した以上、彼氏として彼女のことを守り続けなくてはならない。

自分はもう女として生きることはできないのだ。

その気持ちが、誠の心に暗い影を落とそうとしていた。



※※※



(ふっふっふ……誠くんと一緒にお風呂入れる~♪)


真里は脱衣場のドアに耳を当て、
シャワーの音を確認すると、不敵な笑みを浮かべていた。

彼女は嘘をついていた。

本当は見たい番組などなく、
単純に誠とお風呂に入りたかっただけなのだ。
正直に伝えると「そういうのはまだ……」と断られそうだったので、入浴中に突撃することを考えていた。


(前は、恭子さんと直美さんが一緒だったけど、
今度こそは正真正銘、二人きり♡)


少々強引な方法であるが、
奥手な誠と早期に身体の付き合いをするにはこれしかない。
その想いが彼女をこうした行動に駆り立てていた。

ゆっくりとドアを開けて脱衣場へと侵入する。
予想通り、誠は鍵を掛けていなかった。

誠は髪を洗っていて、こちらには気づいていない様子だ。
真里はなるべく音を立てずに服を脱ぐと、浴室の戸を開けた。


ガラガラガラーーーー

「失礼しまーす。見たかった番組、野球の延長で見れなくなっちゃいました。なので、私も一緒に入ることにします!」

「えっ!? あ、そ、そっか。じゃあ狭いし私は一旦出るね」

「えっ!? だ、ダメです!」


出ると言われて慌てて引き留める真里。

ここで出ていかれたら立つ瀬がない。
彼女はサッカーのゴールキーパーのような鉄壁の守りで出入口を死守した。


「別に良いじゃないですか、前の旅行でも一緒に入ったことですし、また一緒に入りましょ♪」

「あの時、私は女だったし、今は……」


今は男。そう言おうとしたが、ふいに言葉が遮られた。
既に性自認を女性と認めている誠にとって、それは嘘になるからだ。


「今だけ誠くんは女の子なんですぅ~!
だって、ほらっ、こんなに可愛いおっぱい付いているじゃないですか!♡」


真里は誠の小ぶりなおっぱいに手を添えると、軽く愛撫した。


「あぅんっ!♡」


突然の愛撫に誠は声を上げてしまう。
普段は出さないような高く艶やかな声だった。


「ひぇっ!? す、すすす、すみません……
冗談のつもりだったんですけど……
でもほら。この通り、可愛い声出ますし……
女の子同士の洗いっこってことで……ダ、ダメですか?」


誠の喘ぎ声に怖(お)じ気(け)づいたものの、
真里は改めてお願いした。


(ど……どうしよう……)


誠は迷っていた。

真里への罪悪感から、これくらいのことは受け入れても良いという気持ちもあった。

しかし真里はおそらく自分を彼氏として扱ってくるだろう。ただの洗い合いではなく、それ以上の事態に発展する可能性もある。

先ほどのキスで感じた違和感。
同性とするキスの感触。

正直もう一度真里とキスをしたいとは思えなかった。

万が一、キス以上のことを真里が求めてきたら、自分は冷静でいられるだろうか?

真里を傷付けるような態度を取ってしまうのではないだろうか?

不測の事態を恐れた誠はやんわりと断ることにした。


「ええっと……まだこういうのは早いんじゃないかな?
たしかに付き合うことになったけど、
お互いのことをもっとよく知ってから……」


誠の返事に真里は暗い顔をする。
普段なかなか見ない彼女のそんな顔に、誠は驚いた。

いつも明るい真里が、どうしてこのくらいのことで、
こういう反応になるのだろう?

その答えはすぐに彼女の口から聞くことができた。


「誠くん、何か隠していることありませんか?」

「えっ…………?」


突然の真里の問いにさらに驚く誠。
その言葉に彼は内心を見透かされたような気がした。


「誠くんはお互いのことをもっとよく知ってからと仰りますが、私達、もう十分、分かり合ってますよね?
私はそう思ってます。だからさっきのキスの時だって……」


やはり真里は分かっていたのだ。
誠の心境に変化があったことを。

おちゃらけた雰囲気から一転、
真里は真剣な表情で誠を見つめていた。


「教えて下さい。どうして急に切り上げたのですか?
誠くんは、あんなデリカシーのない終わり方をする人ではありません。
だって女の子だったんですから……女の子の気持ちは普通の男の子よりずっと分かるはずです」

「それは……」


どう答えたら良いか誠は迷った。

言い方を間違えれば、
確実に真里を傷つけてしまう内容だったからだ。


「誠くん、今考えていることも分かりますよ。
私のことを傷つけずに、どう伝えたら良いか考えているんですよね?」

「!!」

「やっぱり…………誠くん優しいから、そうだと思いました。
安心して下さい。私、そんなに弱い人間じゃないですから。
どんなことを言われても平気です。
それに誠くんだったら、『絶対に自分勝手な理由じゃない』
そう信じられます」


澄んだ眼で誠を見つめる真里。
その瞳には誠への全幅の信頼が込められていた。

それを受けて誠は思う。

自分はなんて愚かだったのだろうか。
奥手の人間が言うような紋切り型の台詞で切り抜けようだなんて。

初めからきちんと話し合うべきだったのだ。
説明の困難な内容ではあるが、真里ならきっと分かってくれる。

誠はそう確信すると、
自分に起きた心の変化について静かに語り始めた。



※※※



「つまり、今、誠くんの心は、
女の子になっているってことなんですね」

「うん……おかしな話だけど、そうなの……」


浴槽に向かい合わせで浸かる真里と誠。
長話になりそうだったので、浴槽に入りながら話をすることにしていた。

誠はこれまでのことを真里に説明した。

告白する前は、心はたしかに男だったこと。

告白した辺りから、心が女性に変わり、
帰宅後のキスでは、同性としているような感覚に陥り、受け入れられなかったこと。

女性らしく変わった自分の姿に幸福感を感じたことなどを説明した。


真里はそれを聞き、改めて誠の顔を観察した。


「…………言われてみれば、お祭りの時に比べて女の子らしくなった感じがしますね。……というか女の子です。
すっぴんで化粧もしていないのに、女の子にしか見えないです」


変わったのは些細な点である。
しかしその些細な変化が誠の全体的な印象を大きく変えてしまっていた。


「キスについても、分かりました。
だからあんな感じだったんですね。納得です」

「きつかったら言ってくれて良いよ……。
こんな男だか女だか分からない彼氏、嫌だよね……」


誠のその言葉に、真里は大きく顔を横に振る。


「そんなことありません。
私は誠くんから、二度振られても諦めなかったんですよ?
今更そのくらいどおってことありません!」

「じゃあ、真里さんは私が女でも付き合えるの?」

「はい」

「どうして?」


真里は天井を見上げると、少し迷うような顔をした。
そして言いにくそうなことを言うように口を開いた。


「…………私、二回目振られた時、友達になって欲しいって言いましたよね? 」

「うん」

「あれ本当は誠くんを男の子に戻すためだったんです。
誠くんに女の子の良さを思い出してもらって、好きになってもらおうって。でも……」

「でも……?」

「女の子のマコちゃんと仲良くしていくうちに、だんだん良いなって思えるようになってきちゃって……」


真里はそう言うと、顔を伏せてしまった。
余程恥ずかしいのだろうか、目線を横に反らしている。


「あ、すみません。なんか急に恥ずかしくなってきちゃいました……なんででしょう?」

「?」

「それで思ったんです。男の子の誠くんも、女の子のマコちゃんも、どっちも好きだって」


真里は起き上がり、誠に顔を近づけると言った。


「私は誠くんが男でも女でも構いません。
誠くんが女の子だと言うのなら、私はレズビアンになります。マコちゃん、愛してます……いつまでも一緒にいて下さい」


誠の目頭が熱くなる。
性自認に問題を抱えている誠にとって、真里のその言葉は強く響いた。


「……真里さん」


誠は起き上がると、彼女の胸に抱きついた。
まるで聖母に縋(すが)り付くように、彼は身体を小さく震わせ泣いていた。


「うっうううっ……真里さん。
うううぅ……ありがとう……ぐすっ」

「もぉ、マコちゃんは泣き虫ですね。こんなに顔をくしゃくしゃにしちゃって、本当に女の子になっちゃったんですね♡」

「うん……」


真里は誠の頭を優しく撫でると、
もう片方の手で背中を擦(さす)ってあげた。


「マコちゃん……
私の三度目の告白、受け取ってもらえますか?
愛してます。付き合ってください……」

「うん、もちろん……私も愛してるよ。真里さん」


優しい彼女の身体に包まれて誠は思った。

真里に告白して本当に良かったと。

今も同性同士で抱き合っている感覚はあったものの、
真里が女同士でも構わないと言ってくれるのだったら、
自分も女として真里のことを愛そう。

女同士への違和感も、性自認が不安定なことも、
真里と一緒ならきっと乗り越えていける。

誠はこの時改めて、真里を愛し続けることを誓った。


Part.72 【 キスの攻防◇ 】



そうして数分が経ち、
誠の気持ちが落ち着いたところで真里は言った。


「マコちゃん、落ち着きましたか?」

「うん……もう大丈夫」

「良かった……じゃあ改めてキスしませんか?
さっきのキスのやり直しです!」

「うん、良いよ、でも……」

「きつかったら途中で止めて大丈夫です。
付き合ってるのにキスもできないのは私も寂しいので……
少しずつ慣らしていきましょ?」


真里の提案に誠は頷く。

女同士のキスへの忌避感は依然としてあったが、
改めて恋人として付き合っていくと決めた以上、
こういった触れ合いには慣れていかなければならない。

真里がレズになるというのなら、自分もレズになってみせる。そういった決意を胸に、誠は真里とのキスに挑んだ。


「じゃあ、いきますよ」

「うん」


再び二人の唇が触れる。

(うぅ……!)

誠の身体がビクッと震えた。

身体が女性を拒否している。
両腕に鳥肌が立つのを感じた。

誠の女性としての心が真里を拒否しているのだ。

誠は男性でありながら、
ノンケの女性と同じ反応をしていた。


「んっ…………ちょっとごめん」


一旦誠は離れることにした。


「ハァーーハァーー……ハァーーハァーー……」


深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
吐き気をも催し兼ねない状態であった。

真里はそんな誠の様子を見て悲しげな顔を見せていた。


「そんなに苦しかったんですね……
すみません……やっぱり、無理しないで下さい……
私はできなくても大丈夫ですから……」


慣らしていくと言ったばかりだが、
真里としても誠が自分とのキスでこのような反応をしてしまうのはショックだった。

キスなどできなくても、プラトニックな関係でも良いのではないだろうかと、彼女は考え始めていた。


「ダメ、今して、真里さん。
なんだか今しかできないような気がするの。
明日になったら、私、もっとできなくなっちゃう」

「でも私も辛いです。なんだか拒否されてるみたいで……」

「私は真里さんとキスしたい。
たしかに身体は拒否してるけど、それが本当の気持ちなの」

「マコちゃん……」


真里は目を閉じて精神を集中させると再び開いた。
誠の両肩に手を添えて、はっきりとした口調で伝える。


「わかりました。そこまで言うのでしたら私も鬼にになります。マコちゃんがどんなに嫌がっても、マコちゃんの身体が私を受け入れてくれるまで続けますよ」

「ありがとう、真里さん。来て……いっぱいキスして」


誠の返事を合図に、真里が責め始める。

手始めに、誠を優しく抱き寄せキスをした。
誠の身体が硬直し、耐えるような反応を示す。

しかし真里は構わず、
精一杯の愛情を込めてキスを続けた。


「マコちゃん、愛してます。私を受け入れて下さい」


誠は悪寒に苦しみながらも、
真里から送られる愛情をしっかりと受け止めていった。


「私も愛してる。このまま続けて」

「はい!」


真里はキスを繰り返した。
時には彼の頭を撫で、時にはギュっと抱き締めて。
そうして10分ほどキスを続けると誠の身体に変化が訪れた。


「うんっ……んっーーっぷぁ、ハァハァ……」

「どうかしましたか? マコちゃん」

「うん……あのね、私の身体、だんだんマヒしてきたみたい」


誠の身体は度重なる同性との接吻で嫌悪感の限界を迎えていた。それにより、安全機能が働き、麻痺を引き起こしたのだ。


「わかりました。では場所移動しましょう。
だんだんお湯も冷めて来ましたし、ベットで続きをしませんか?」


真里の次なる提案。
それはすなわちセックスをするということ。

誠の身体に無理やり女同士の関係を認めさせるのなら、キスだけでは不十分だ。身体の触れ合いを通して認めさせるしかない。

誠が真里の提案に同意すると、二人は浴室を出た。
身体をタオルで拭き、髪を乾かす。

その合間も、真里は誠にキスをした。

部屋の電気を消し、ベッドに並んだ時には、
誠の顔はすっかり上気してしまっていた。


※※※


ちゅ……ちゅぷ……ちゅぷ…………。

暗がりに重なる二つの影。
真里が誠を押し倒しキスをしている。

既に何度目か分からないほどの接吻を行っていた。


「マコちゃん、口を開いてください」

「んっ……はい……」


女性からの責めにすっかり怯えた誠の身体。
誠は震えながらも、口を開いた。


んちゅ……レロ……レロ……レロ……

「んんんんんんっっっ!!」


真里が舌を差し入れ、誠の舌と絡み合わせる。
その動作に誠は堪らず悲鳴をあげてしまった。

誠の身体は引き続き真里を拒否する。

しかし誠の真里を愛する心は、しっかりとその舌を受けとめ、彼女がそれ以上不安にならないよう、両腕で彼女の身体を抱き締めた。


ちゅぷ……んんっ……ちゅ……んっ…………レロレロ……


誠の動きに応えるように、
真里は誠の胸に手を添え優しく愛撫する。


「んっ……♡ あぁっん!♡ ふぁっあぁっ!♡」


誠が喘ぎ声を上げる。


「ふふ……マコちゃん、相変わらずおっぱい弱いですね」

「んっ♡ あぁ……あ……♡ うん……おっぱい弱いの……」

「良かった……弱点があって。このままおっぱいを責め続けますよ。私の手で気持ちよくなってください」

「うん……お願い……♡ 真里さんの手で……あぁん♡ 気持ち良くして……」


幸運にも誠の胸は女性の真里に刺激されても素直に快感を得られるようになっていた。
真里もこれを好機と考え、胸とキスの両方で誠の身体を陥落させることを決めた。


(はぁ……♡ 真里さんの手……気持ちいい……♡
私は真里さんが好き、だから気持ちいいの、だから受け入れて)


誠は身体にレズ愛撫を受け入れるよう説得した。

たしかに真里の愛撫は気持ちが良いものの、
誠の胸は、男性の熱い手ではなく、女性のひんやりと繊細な手つきで快感を与えられることに困惑していた。

だが良い調子ではあった。

このまま胸に彼女の手の感触を記憶させ、好きになってもらおう。一気に全身は無理でも、部分的にでもレズに目覚めてくれれば十分である。


「マコちゃん、女の子のおっぱいは女の子が一番詳しいんですよ。だから早く目覚めてくださいね♡」


レロォ……

「ふぅっ!?♡」


ヌルっと生暖かくも優しく繊細な舌の動きが誠の乳首を襲う。身体を弓なりに反らせ跳ねる誠の身体。

どう弄れば気持ちが良いか、よく分かっている同性の舌の動きは、誠の乳首の先端から全身へと快感を送り出していた。


「あぁぁぁっっ! 真里さぁん、それ……気持ちいぃ♡」

「うふふふ♡ マコちゃんのおっぱい、すっかり勃起しちゃいましたね♡ ここは女の子でも十分いけるんですね♡」

「うんっ! 真里さんの口の中、温かくてヌルヌルして気持ちいいの♡ はっううぅっんっ!♡」


真里は勃起した誠の乳首を指先で刺激しながらも、キスを再開した。


ちゅ……ちゅうぅぅ……ちゅっちゅっちゅっ♡

「ふぁん♡ 真里さぁ……ん……♡ んんんっ……ちゅ♡
あぁっああぁん♡」


誠の目が徐々にトロンと蕩け始める。
籠絡されたおっぱいから伝わる快感により、誠の唇は真里の唇を思うように拒否できなくなっていた。

さらに唇を通して想いを伝える。
真里は精一杯の愛を、誠の唇を通して誠へと伝えていた。

そして誠も真里の愛を受け取りたいと、全身へ想いを伝えていた。


(私が愛しているのはこの人なの!
どうしてこんなにも愛してくれる人をそんなに拒否するの?
相手が女だなんてことはもう忘れて! 私に真里さんを感じさせて!)


内と外、両方の気持ちを受け取り、
誠の緊張していた唇の力が徐々に抜けていく。


(あっ……マコちゃんの唇がだんだん柔らかくなってきた……まさか……?)


誠と目が合う。誠はふんわりと微笑むと小さく頷いた。


(やった!)


真里は喜ぶと、再び誠の口内へ舌を差し入れた。


「あむっ……んっ♡ ちゅ……ちゅぷ……ちゅ……♡
レロレロ……レロ……あん♡ ちゅぷ……」


先ほどまでのぎこちない舌の動きは感じられない。
誠の身体はたしかに真里とのレズキスを受け入れたのだ。


「真里さんとのキス、気持ちいいよ……♡」

「私も、マコちゃんとのキス、気持ちいいです♡」


二人の黒髪の美女。
誠のペニクリにさえ注目しなければ、
それは女同士の性行為に他ならなかった。

彼女達はそれから三十分もの間、
お互いの唇の感触を愉しんだのだった。



※※※



午前三時半、
二人は布団の中で裸のまま抱き合っていた。


「良かったーマコちゃんと上手くエッチできて」


真里が微笑み言う。

エッチといっても、キスをして胸を揉み合った程度なのだが、童貞と処女の両者にとっては十分満足だったようだ。


「ありがとう真里さん。
私、真里さんとエッチできて幸せだよ」

「もぉーそんな潤んだ瞳で言わないでください。
マコちゃんの方が私より女子力高いみたいじゃないですか」


このシチュエーションは、むしろ真里が誠にしてみたかったシチュエーションである。
今回はお姫様役をまんまと誠に奪われた形となってしまっていた。


「ところで、あんなにキス嫌がっていたのに、どうして途中から平気になったのですか?」

「あぁ……あれはね」


真里の方からでは誠の細かな心情の変化は分からなかった。
何度もキスを続けるうちに、急に大丈夫になったという感じであった。


「たぶん真里さんのことを女の人としてでなく、
真里さんそのものを好きになろうとしたからなんだと思う」

「えっ……それって、あーなるほど」


口癖のように頭の中で繰り返してきた言葉だっただけあり、
彼女は彼の意図することをすぐに理解できた。

真里が男とか女とか関係なく、誠そのものを好きになったのと同じように、誠も真里そのものを好きになるよう方針転換をしていたのだ。


「でも不思議ですね。誠くんは男バージョンと女バージョンの二種類があるので分かるのですが、なんで女バージョンしかない私にそれが適応されたのでしょう?」

「うーん、なんでだろうね?」


誠自身、特に狙ってした訳ではなかった。
たまたま運良く『すり抜けることができていた』のだ。

小早川は、誠に男を好きになり、
女を好きにならないように暗示を掛けていた。

しかし真里の言葉がヒントとなり、
誠は性別を意識せずに真里を受け入れるようになった。

そのため、暗示の条件をうまく外れることができていたのだ。


こうして破局の危機を上手く回避できた二人であったが、
執念深い小早川の離間工作は、
今後も彼女達を苦しめることになるのであった。



Part.73 【 処女 】

いつもの日常のいつもの朝。

大学の講義に出席するため、
恭子と直美は出かける準備をしていた。


「直美―早くしないと遅れるわよ?」


玄関で外履きを履き、廊下の奥を見つめながら恭子が言う。


「もうちょっと待って~! スマホの充電器なくしちゃってー! 見つけたらすぐ行くから!」


そう返事をする直美に、
恭子は外で待っていると言い残し、玄関の扉を開けた。


「きゃっ!」


ドアを開けてすぐに、見慣れぬ鉄の柱と人の足が映った。予想もしなかった外の光景に驚き身を屈める恭子。

彼女に気が付き、作業服姿の男が声をかける。


「あっ、すみません。すぐにどきますから」


男は最近チカチカと点滅を繰り返し、調子の悪かった照明の交換を行ってくれていたようだ。

古くなった電球を片手にいそいそと脚立を降りる男性に、恭子はオーバーなリアクションをしてしまったなと思い、謝ることにした。


「こちらこそすみません……照明の交換してくださったんですね。ありがとうございます」


いつものエンジェルスマイルでお礼を言う恭子に、脚立を降りたばかりの男は固まってしまった。

目を見開き、瞬き一つしない男性。
歳は30代後半から40代前半といったところか。
小太りで脂汗をかいていた。

制服は小綺麗にしているようだったが、
肌が汚く汗の臭いが強いため、少し不潔な印象を受けた。

時が止まったかのように身動きしない男性に、恭子は再び声をかける。


「あの……どうかされましたか?」


心配そうに見つめる彼女に、男はハッと気がつき返事をする。


「あっ……いえ。ななな、なんでも!」


目が踊り、慌てて反応する。
それは恭子にとって、見慣れた男性の反応だった。

芸能界でも通用する美貌の恭子に対し、このようにたじろぐ男性は多い。

高校時代は、こうした男性を無下に扱ってきた恭子であったが、直美と付き合うようになってからは心に余裕が出来たのか、落ち着いて接することができるようになっていた。


「おまたせ―キョウちゃん! 充電器あったよ~!」


勢いよく直美が飛び出す。
すぐに恭子と手を繋ごうとしたのだが、見慣れぬ男性がいることに気づき、キョトンとした。


「ん? この人だーれ?」

「ほら、照明。チカチカしてたでしょ? この作業員さんが交換してくれたのよ」

「あっ、なるほど! ありがとうおじさん!」


納得し元気にお礼を言う直美に、男は自己紹介を始める。


「いえいえ、今月からここで管理人として働くことになりました牛久沼(うしくぬま)と言います。お部屋や建物のことで、何かありましたら、いつでもご連絡下さい!」


そう言い牛久沼は二人に名刺を手渡した。


「そうなんですね、今後もよろしくお願いします」


頭を下げる恭子に、彼は笑顔で返す。
しかし普段笑っていないのか、少し引き攣りを起こしていた。

そんな不自然な笑い方を気に留める様子もなく、恭子と直美は再びお礼を言い、エレベーターホールへ向かって行った。


チーン!

ドアが開き、中へ入る二人。
階下のボタンを押され、ドアが閉められた。

そんな二人の様子を……というより恭子の姿を見ながら牛久沼は思った。


(て……てんし……いや……あれは紛れもなく女神だ……)


恍惚とした表情で二人が消えたエレベーターホールを見つめる。
彼はそのまま女神と出会った感慨に耽りながら立ち尽くしていた。


38歳独身 マンション管理人
牛久沼(うしくぬま) 達郎(たつろう)

これが彼が甘髪恭子に恋をした瞬間であった。


牛久沼は恭子が出てきた部屋の番号をスマホで撮影すると、不気味な笑みを浮かべて非常用階段を降りていった。



※※※



その日の夜

大学の講義を終え、帰宅していた直美は、
リビングで、デスクトップパソコンのスクリーンをじっと見つめていた。

画面には裸の女同士が映し出されており、
69の姿勢で互いの膣に指を出し入れしているところだった。


「う~ん……なんでだろ?」


思っていることを口に出す。
直美はこのレズ物のAVを観賞し、何かを疑問に思ったようだ。

両腕を組んでゆっくりと首を左右に振る。
将棋の巨匠が長考をしているかのような重々しい雰囲気である。


「ただいまー」


ビニール袋を片手に恭子が帰宅する。


「おかえりーキョウちゃん」


恭子は直美がパソコンで何を見ているのか気になったが、
ひとまず夕飯の材料を入れに冷蔵庫へと向かった。


「今日は遅くなっちゃったから、お惣菜売り場で直美の好きな蟹クリームコロッケとクジラの竜田揚げを買ってきたわよ」

「えー! クジラの竜田揚げもあったんだ! やったぁー!」

「最近クジラの漁獲量が増えて、スーパーでもよく見かけるようになってきたわ。クジラの脂身と刺身も買ってきたから、後でクジラ汁でも作るわね」

「今日はクジラ三昧だね! 楽しみー♪」


炊飯器のご飯のスイッチを入れ、恭子が直美の元へやってくる。一旦休憩してから夕飯の支度をするようだ。


「ところで何の動画を観てるのかしら?」


興味津々に画面を覗き込もうとする恭子。


「レズ物のAVだよ」


ガタン!

ちょうど座るタイミングだった恭子は、そのままスッ転んでしまった。


「ちょ、ちょっとなんて物を観てるのよ……」


普段毎日のようにセックスをしているのに、直美はそれでも性欲を抑えられないのかと飽きれ気味だ。

とはいえ、直美がどんな物に興味を持っているのか気になる。恭子はツッコミを入れながらもAVを観ることにした。


「ぁん……あっ、あぅん……ずぅるるるぅぅ……ピチャッピチャッ」


そこには、片方の女優がもう片方の女優の膣に指を突っ込み、勃起したクリトリスを丹念に舐めている様子が映し出されていた。

女優は慣れた手つきでリズミカルに指を出し入れしている。受けている方は実に気持ち良さそうだ。


(特に変わったAVではないわね……これなら私達が普段していることの方がずっとハードよ)


直美がなぜこのAVを選んだのか恭子には理解できなかった。

さらに不思議だったのは、
直美がその映像を観て全く興奮していないことだ。
無表情に、ただ眺めているだけなのだ。

プレイ内容ではなく、女優が好きなのかもしれない。
少し妬(ねた)ましい気持ちにはなったが、尋ねることにした。


「…………直美はこういう娘がタイプなのかしら?」

「ぜーんぜん、
キョウちゃんの方が100000000000000倍良いよ」

「あ、そう。じゃあなんでこんなもの観てるの?
私とのエッチじゃ不満なの?」

「ううん……そうじゃないよ……」


直美は考えるような顔をして、少し間を置くと言った。


「ねぇ、キョウちゃん、なんでキョウちゃんは、あたしの処女を奪ってくれないの?」

「えっ……?」


直美から告げられた言葉は実に意外なものだった。
恭子は、自身の体温が急激に下がるのを感じた。


「あたし達、付き合ってもう二年になるよね?
その間、キョウちゃんとは何百回もエッチしてきたけど、こうやって指入れあったことは一度もなかったよね?」

「そ……そうね……」

「キョウちゃんって処女なの……?」

「私も直美と同じ処女よ……」


直美と恭子は、これまで一度も膣を使ったセックスをしてこなかった。

そもそも入れる物がないのだから入れようがないのだが、このレズAVのように指を入れることはいくらでも可能だ。

しかし二人はそれすらもしてこなかったのである。


「そっかーまさか他の人と経験があって、処女じゃないのがバレるのが嫌だったから、避けてるのかなって思ってたんだけど、そうじゃなかったんだね♪」

「えぇ、もちろん違うわ。
直美以外の人とエッチしないわ」

「じゃあ、あたしの処女を奪って。
あたし、キョウちゃんに処女を捧げたい」

「…………」


恭子は即答することができなかった。

直美の気持ちは嬉しかった。
もちろん直美の初めては自分が貰いたい。

しかし恭子には、それができない事情があった。


「直美…………膣って何に使うものか分かってる?」

「うーんと、たしか赤ちゃんを作るためのものだよね?」

「そうよ。そして赤ちゃんを作るためには、女の人の膣に男の人の醜い男性器を突っ込んで、精子と呼ばれる汚い液体をぶちまけないといけないの」

「うっ…………」


恭子の説明を聞き、直美はさも気持ち悪そうな顔をしている。


「想像してみて、あんな気色の悪いものを自分の膣内に入れられて、臭くてベタベタした排泄物を流されたら、どんな気持ちか」

「やだっ! やめて、キョウちゃん! 気持ち悪い!!」


直美は頭を振り、恭子の言葉を想像しないように必死だ。


「ごめんね、直美。
私は膣に物が入る感触を経験したくないし、
直美にも経験してもらいたくないと思ってるの。

その動画みたいに女同士で指を入れ合うこともできるけど、その感触は男性器が入る感触と一緒なのよ。

直美はそれでも私に指を入れたい? 入れられたい?」

「絶対やだーーーーーー!!!」


そう言い直美は急いで、
再生している動画を閉じてしまった。


「ハァハァ、ハァハァ…………」


息を荒くして直美は震えている。
恭子はそんな彼女の身体を抱き締めると優しくキスをした。


「ちゅ…………直美、ごめんなさい。嫌なこと想像させちゃって……」

「ううん……あたしこそ、変なことお願いしてごめんね」


直美は恭子の身体を抱き締め返すと言った。


「ねぇ、キョウちゃん、ご飯は後にしてこれからエッチしよ? あたし、キョウちゃんとエッチして、この気持ち悪さを消したい」

「もちろん良いわよ。直美が余計なことを考えないようにいっぱい気持ちよくしてあげるわ」

「ちゅっ♡ ありがとうキョウちゃん♡ 大好き!♡」


そうして直美と恭子は寝室へと消えていった。

それから二人で三時間ほど愛し合った後、戻ってきたのだが、クジラ汁を作る時間がないことに気付き、
電子レンジでコロッケと竜田揚げをチンして食べたのであった。


※※※


寝室で幸せそうな寝顔を浮かべて眠る直美を見て、
恭子は思う。


(直美、ごめんなさい。私、また嘘を付いてしまったわ)


恭子は誤魔化していた。

彼女は膣を使うことに、
実はそこまで忌避感を抱いてはいなかった。

恭子が抵抗があったのは、直美の処女を奪うことだ。

別に処女に価値があると感じている訳ではない。
単純に催眠状態にある直美の処女を奪いたくなかったのだ。

催眠状態の直美は、本当の直美ではない。
元々は男性に興味を持つ、普通の女の子だったのだ。

恭子の理想は、催眠に掛かっていない直美が自らを受け入れてくれることだ。

しかし、それは絶対に起こり得ないこと。
催眠を解けば、直美は確実に自分を嫌い、離れて行ってしまうだろう。

本当は直美と処女を捧げ合いたい。

だが催眠状態にある直美の処女は奪えない。
奪えば、それはレイプになってしまうからだ。

逮捕される恐れがあるから言っているのではない。
恭子が自分自身を許せなくなってしまうからだ。

恭子はこれからも催眠状態の直美と生き続けていくだろう。

直美の催眠が解けるその日まで。

そして彼女の終わりなき贖罪は、
彼女の命が絶えるまで続くのだ。


Part.74 【 鈴乃屋 忍◆ 】

古宿(ふるじゅく)区歌舞伎町。
この国で初めてゲイバーが出来た街であり、
ニューハーフビジネスで栄える街でもある。

同性愛者の聖地とも言えるこの場所に、
小早川が経営するニューハーフバーが存在した。

その店の一角、
怪しい雰囲気を持つこの部屋に、複数の男性の姿があった。

格式高いベッドの上には、
四つん這いになり、一物を受け入れる全裸の青年と、
突き入れる鮫島の姿があり、
さらに奥には、ソファーに座り美酒を愉しむ小早川と、
青年が逃亡しないよう入口を塞ぐ黒服達の姿があった。


「うぐ…………あぁ!」

「オラオラ! もっと喘げよ! 声が小せぇーぞ?」


苦渋の表情を浮かべ一物の振動に耐える青年。

中性的であるが、彫りの深い顔立ちをしており、
まるで映画の世界から飛び出てきたかのようなハーフ系の美男子だ。

年齢は真里と同年、身長は誠よりも高く、どこか大人びた雰囲気である。

彼の名は鈴野屋(すずのや) 忍(しのぶ)という。

半年前に、彼女と拉致され、
小早川の催眠の支配下に置かれた被害者だ。


「ずいぶん具合が良くなったもんだ。ここまで開発できれば十分だな」


忍を堀りながら鮫島が言う。


「そうネ、でもここからが本番ヨ。
躰を堕としても、心を堕とさないことには、お客様の前に出せないワ。自ら望むようになるまで掘り続けて頂戴」


小早川の言う通り、忍は感じてはいたものの、
その瞳の奥には、まだまだ抵抗の意志が残っていた。

普通、半年もの間、彼らの調教を受け続けたのなら、
身も心も堕とされているものである。

忍のように抵抗を続けていられる者は、ほとんどいなかった。


「まったく……忍ちゃんには手を焼かせられるわネ。
催眠は効きにくいし、感じにくいし、強情だし、
それに加えて、このクソ女がセットになってるんだから、ホント参っちゃうワ」


テーブルの上の資料を手に取る小早川。

そこには、忍の住所・携帯番号・家族構成などの個人情報が記されてあり、一際重要度の高い項目として、
忍の彼女の写真が載せられていた。


(この女さえいなければ、もっと簡単に堕とせたのに……
忌々しいアバズレめ……いずれ誠ちゃんの女共々、地獄に送ってやるワ)


不快な表情で写真を睨み付ける。

彼は気分を切り替え深呼吸を行うと、
調教中の忍、もとい忍の男性器に注目した。


「うっ……くっ……あぁっ!!」

「オラ、早く素直になれよ。オメーのデカチンのようにな。まったく女にくれてやるには、勿体ねーくれーだ」


そう言い鮫島は忍のペニスを握る。

男の熱い体温を感じ取り、
一段と膨張したそれは鮫島以上の巨根であった。


「ホント、何度見ても素晴らしい竿ネ♡
思わずしゃぶりつきたくなるような大きさと形状。
色素沈着せず真っ白なのも良いところネ♡」


小早川は、うっとりとした表情で忍のペニスを見つめている。

誠の小さくて可愛らしいペニスも、
忍の大きくて真っ白なペニスも、彼のお気に入りであった。

彼は興奮してきたのか、
ベッドに上って、忍のペニスの先を指先で撫で始めた。


「もぉーあんな女のことなんかさっさと忘れて、早くこっちの世界に来なさいヨー。
女なんかじゃ味わえないような気持ち良さをいっぱい味わせてあげるわヨ?」

「そんなもの……いらない」

「ホント、強情ネー。
でも、こうして嫌がっているのも、ある意味貴重よネ。
完全に堕としたら、嫌がる忍ちゃんとできないもの♡
時間はいくらでもあるから、じっくりと堕とさせてもらうわヨ……」


小早川は忍のペニスを両手で優しく包み込むと、ニヤリと笑った。そして口を大きく開け、目の前の巨根にしゃぶりついた。


「や……やめろーーー!!!」

ヂュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウ!!!

「んんんっ!! はあぁぁぁっ!!」

「うふふ、前後を男に愛されるのは気持ちが良いでしょ? もっともっと気持ちよくさせてあげるから♡」


男を知り尽くした巧みな舌技が、
忍の限界まで勃起したペニスに炸裂する。

同時にゲイのエキスパートである鮫島の剛直が、
的確に前立腺を突き立てた。

最高レベルのホモセックスを受けた忍は、
女性とのセックスでは決して辿り着けない高みへと、
一気に登らされてしまった。


「あっ! あっ! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ブシューーー! ビュッビュッ! ビュッビュッ!


小早川の口内に忍の精液が勢い良く発射される。

小早川は噴き出された精液を飲み込むと、
忍の巨根の根本から最後の一滴まで全てを吸い尽くした。

それに合わせ、鮫島が濃厚な精液を流し込む。


ドクドクドクドクドクドクドクドク!!

「んんんんんんっっ!!!
あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


お尻の中を熱い精液が駆け巡る感覚。
ノンケの忍にとっては、身の毛もよだつ瞬間だ。

しかし催眠により、
それは全て背徳的な快感へと変えられてしまう。

忍は、逆海老ぞり形に身体を張らせると、
許容量を超える快感に耐えきれなくなり、気を失ってしまった。



※※※



「お疲れ様、サメちゃん」

「へへへ、やっぱ忍は他の奴と一味も二味も違うな」


後始末を黒服達に任せ談笑する二人。
用意された酒に口をつける。忍を犯した後に飲むビールは格別だった。


「ところで忍をどっちにするかそろそろ決まったか?」


ゴクゴクとお腹にビールを流し込み鮫島は言う。


「んー……ニューハーフにしたい気持ちはあったけど、
忍ちゃんはそうしちゃうのが勿体ない気がするのよネ……

男のまま犯したいってお客様も一定数いるし、
ニューハーフのトップは誠ちゃんに任せちゃって、
忍ちゃんは今のまま男好きにさせるのが良いと思うの」


女性らしさに特化した誠と違って、
忍は今もなお男性としての美を備えている。
それを単純にメス化させ、
失わせてしまうのは勿体ないと小早川は考えていた。


「単純に男らしい男を男娼にするのではダメなのか?」

「そう言うのとは全然違うのヨ。
忍ちゃんの良いところは、あの王子様的な美しさにあるの。女だったら、誰でも見惚れてしまうような王子様を物にするって、アタシ達ニューハーフにとってはすごい快感なのヨ」

「分かんねーな」

「これは精神的な問題なの。
物語の主人公を、憎きヒロインから奪い取る。
それを体験させてくれるのが忍ちゃんなのヨ」

「つまり忍には客を取らせねーで、内部だけで使うってのか? まぁ俺はそれでも構わねーけどよ」

「アタシ達の組織は初めの頃に比べてだいぶ大きくなったワ。これからはお金を稼ぐだけじゃなく、組織を良い状態で維持していかなきゃいけないの。
忍ちゃんには、そういう働きをしてもらうことにするワ」


小早川はこれまで何十人もの優秀なニューハーフを、
世に送り出してきた。

そのほとんどが元ノンケの美少年であるのだが、
元ノンケ故(ゆえ)に、仕事に掛かるストレスは真性ホモに比べて遥かに大きかった。

もちろんそれは最初だけで、
慣れてしまえばそこまでではないのだが、
初めのサポートで失敗し、
自殺者を出してしまうこともある。

ストレスを受ける度に催眠で緩和することも可能だが、
何十名といると、さすがに手が回らない。
組織の中で催眠を使えるのは小早川だけだからだ。

客に対して本気で恋をしてしまったり、
ニューハーフ同士で客の取り合いをしたりなどのトラブルも最近は多くなってきている。

それらを解決するためにも忍の存在は重要だった。

忍には思い悩むニューハーフ達のサポート役に回ってもらおうと小早川は考えていた。

忍が相談役に回れば、
現在抱えている問題のほとんどが解決できる。

この王子様的な美貌と逞しい巨根に、
ニューハーフのほとんどが恋をするようになるだろう。

客に対してドライに対応できるようになるのは勿論のこと、本物の女性でもなかなか手の届かない王子様とすることにより女性に対する優越感も得られる。

そうして全体の士気が上がれば、接客の質も上がる。
各店舗の売上が上がれば、
忍に直接客を取らせるより遥かにリターンが高いのだ。

小早川は、ニューハーフ嬢達のホスピタリティとして、
忍に大きな可能性を感じていた。


(でも忍ちゃんには、もう一つ役割があるのヨネ)


不敵な笑みを浮かべて、テーブルの資料を取る小早川。
彼の手には桐越誠の資料が握られていた……。



※※※



〇✖大学、サークルLilyの部室前。


「おはよーナオちゃん」
「直美さん、おはようございますー」

「おはよー真里ちゃんマコちゃん! 今日も一緒なんだね」


ちょうど出入り口で会い、
直美・誠・真里の三人は挨拶を交わしていた。


最近、真里と誠の二人は、
以前にも増して一緒にいることが多くなった。

講義によって別行動もするのだが、帰宅するのは大体同じ時間で、二人の関係が変わったことは、誰の目から見ても明らかであった。

少し遅れて恭子がやってくる。


「おはよう、みんな。
聞いたわよ、真里ちゃんマコちゃん。
二人とも付き合い始めたんですって?
いつも同じ時間に帰るようになったけど、
もしかして同棲でも始めてるのかしら?」


恭子の質問を受け、真里と誠が目を合わせる。
ワンテンポ置いて、真里が返事をした。


「はい、実はそうなんです……同棲はまだですけど」

「えぇー! そうなの!? 付き合ってるの!?」

「声が大きいわよ。直美」


ちょうど開いていた部室の扉。
直美の声に反応し、中にいたメンバー達が注目する。

女性メンバーの中には、
驚いたり青ざめたりしている者もいて、
その者達が秘かに誠を狙っていたことが伺えた。

照れくさそうに誠が言う。


「うん、ちょっと前にね。私の方から告白したんだ」

「へぇ~マコちゃんからなんだ。意外だね」


最近は男性の服を着ていた誠であったが、
今日は男女どちらにも見える格好をしていた。

話し方もなんとなく女性的な印象である。

そんな誠を見て恭子は思う。


(やはり私の予想通り、真里ちゃんはマコちゃんを男に戻して、自分を恋愛対象にさせてから、女性に戻すつもりだったんだわ……ここまで計画通りにできるなんて、すごいわね……)


誠が記憶を取り戻すのを心配していた恭子であったが、
真里がここまで優秀であれば問題はない。

自分は再度催眠をかけることなく、
直美との関係を続けられるだろう。

そう思い、恭子はそっと胸を撫で下ろした。


しかし実際は彼女が考えているようなものではなかった。

誠の変化は真里によるものではなく、
小早川の催眠術によるもの。

恭子がそのことに気づくことはなかった。



※※※



サークル活動を終えた二人は、
帰りのスーパーで夕飯の材料を買っていた。

買い物袋を片手に手を繋いで帰る姿は、まるで新婚夫婦のようである。


「えぇ~!? 誠くん、フォンドヴォー作ることできるんですか?」

「うん、ガス代掛かっちゃうけどね。
子牛の骨や鶏ガラを炒めるところから始めるからすごい時間かかるよ。それに材料もたくさん必要だから、お金も結構かかっちゃうね」

「そうなんですね……そういうのどこで習ったんです?」

「母さんが洋食屋に務めていたことがあって、その時に教えてもらったんだ」

「へぇ~いいですね~~♪ あー誠くんと料理作るの楽しみ~♪ コンソメスープを鶏ガラを煮るところから始めるなんて初めてです!」

「ちょっとだけ作るとガス代勿体ないから、材料多くなっちゃうけどね。でもコンソメは色んな料理に使えるから損ではないと思うよ。しばらく洋食が続いちゃうけどね」

「洋食大好きなので望むところです! ビーフシチュー、ミネストローネ、ローストチキン……クリスマスにぴったりですね!」

「そうだね。クリスマスが近づいたら、フォンドヴォー作りもしてみようか? サークルのみんなでクリスマスパーティーするのも良いかもね。恭子さんすごい料理上手だから、真里さんもびっくりすると思うよ」

「恭子さんも料理するんですか?」

「うん、私よりもずっと上手だよ。
昔、ナオちゃんの誕生会で食べたクリームシチューのパイ包みは絶品だったな~
今までどんなレストランで食べたものより、ずっと美味しかったよ」

「うへ~~~その話聞いただけで涎が出てきてしまいそうです。お腹空いちゃうので、もう止めましょう……我慢できなくなっちゃうから……」

「ははは、そうだね」



何気ない日常の会話。

こうした二人の幸せな時間は、
刻一刻と終わりを迎えようとしていた。



※※※



「ふぅー! 美味しかった~♡ ご馳走様でした!」

「う~ん、ちょっと老酒が効き過ぎてたかも……入れる分量間違えちゃったかな」

「そんなことないですよ! このビーフシチュー、
なんだか大人の味って感じがして、すごく美味しかったです!」


そう言いつつも真里の顔は少し赤い。
老酒のアルコール分で酔っぱらってしまったようだ。


「あの、食器洗い終わったら……
誠くん……んや、マコちゃんのも……味わっていいですか?」

「えっ……?」

「だってぇ~♡ マコちゃんの勃起不全治さないといけないじゃないですか~♡ いっぱい刺激して、大きくできるよう今日も頑張ります」


淫らな目付きで誠を誘う真里。
普段は誠のことを"くん"付けで呼んでいる彼女であったが、エッチなことになると、"ちゃん"付けで呼んでいた。

これは誠が女として扱われると感じる身体であったためだ。

初体験を終えてからというもの、誠の身体は真里を受け入れるようになり、どちらも精神的な充足感を得られていた。

だが問題もあった。

勃起力を失っていた誠のちんちんは、
真里がどれほど刺激しても反応することがなかったのだ。

いずれは二人の子供か欲しい。

そう考えていた二人は、治療という名目で誠のちんちんを舐めるのが日課になっていた。

初めの頃は、性器への刺激に鈍感だった誠も、
日が経つにつれて徐々に感じられるようになってきていた。


「う、うん……♡ とりあえず食器洗おっか」

「はぁ~い♡」


タララ、タッタ、タッターン♪ タララ、タッタ、タタター♪


食器を洗おうと、立ち上がろうとしたその時、
誠のスマホの着信音が鳴る。


「ん? 誰だろう?」


非通知でかかってきた電話だ。
誠は不審に思いながらも、電話に出た。


「はい、もしもし桐越です」

「純白の姫君」


その瞬間、彼の目から生気が消える。
誠はスマホを片手に動かなくなってしまった。


「誠くん、どうしたんですか?」


心配そうに見つめる真里。


ターララ、タッター、ターララタッター♪


続いて真里のスマホの着信音が鳴る。
進撃の小人のオープニングテーマ曲だ。


「もしもし一ノ瀬です」

「腐海に沈む女」


真里の目からも生気が消える。


「真里さん……私……でかけて来るね……」

「はい…洗い物は…済ませておきます……」

「うん……よろしく……」


これから夜の営みを始めようという時に、二人はあっさりとその予定をキャンセルしてしまった。

誠は靴を履き外に出ると、
アパートのすぐ外に停まっていた黒い高級車に乗った。

そして車はそのまま闇夜へと消えていってしまった……。

Part.75 【 北風と太陽◆ 】

何者かの声がする。

不快な響き。悪しき感情。
何かが警鐘を鳴らす。

望まぬ色に染められるような気がして、
誠は目を覚ました。


「…………」


見慣れぬ部屋の光景が映る。
水槽の壁、シャンデリア、150インチ以上はある超大型テレビなど
備え付けられている家具はどれを見ても高級品ばかりだ。

誠は貴族が使うような豪華なベッドの上に寝かせられていた。

ベッドの横には、椅子に座った女性がいる。
派手な身なりをしたその女性は、椅子の手すりに肘を掛け、脚を組んで白けた様子で誠を見ていた。


「やっぱり起きちゃったワ……あの女の記憶を変えるには、まだまだ時間が必要ネ」

「……あなたは? ここはどこなんですか?」

「あらまぁ♡ 素でそんな女らしい話し方になってたの?
そっちはなかなかの調子のようネ♡」


誠の質問に女は答えない。
初対面にも関わらず、彼女は顔馴染みのように振る舞っていた。


(この人、誰だろう……? 全然記憶にないけど、知ってる人かな? それに女の子らしくなったって……何のこと?)


誠の話し方は女性として過ごしていた頃の状態に戻っていたが、催眠の自覚のない彼はそのことに気づいていなかった。

辺りを見回すと、黒いスーツの男達が入口を塞ぐようにして立っていた。
誠はこのよく分からない状況に不安を抱き始めていた。


「そんなに緊張しないで、誠ちゃん♡
今日は、アナタにお友達を紹介しようと思って呼んだの♡
とぉーっても綺麗で、魅力的な子ヨ♡ 誠ちゃんもきっと気に入ると思うワ♡ あの女以上にネ……」


女はそう言うと、入り口の扉を指し示した。
誠が注目したのを確認して、黒服が扉を開ける。

扉の先には、顔を俯かせた美しい女がいた。

女性にしては彫りが深く、
三つ編みのロングヘアを肩から垂らしている。

歳は誠と同じくらいだろうか?

肩出しのブラウスを身に着けており、
すらっとした首筋、肩のラインは実に扇情的であった。

腰には、サラサラとした黒いスカートを履き、
まるで舞踏会に参加するような服装である。

海外映画の世界から飛び出してきたかのような少女は、
少し苦しげな表情を見せながらも、ゆっくりと部屋の中へ入ってきた。


「誠ちゃん、紹介するわネ。この子は忍ちゃんって言うの。誠ちゃんより一つ年下の男の子ヨ♡」

「っ! 男……!?」


驚き後退(あとずさ)る誠。
忍は誠をチラ見すると、顔を赤らめながらスカートを捲り上げた。


「!!!」


綺麗な顔には不釣り合いな突起物。
そこにはギンギンに勃起した巨大な男性器があった。



※※※



誠は目を見開き忍の男性器を見つめている。

下着は履いておらず、剥き出しのまま晒されていた。

誠のペニスとは比較にならないほど立派なそれは、
脈打ちギンギンに震えており、白桃のような綺麗な色をしていた。

それを見て誠の胸が高鳴り始める。


(うっ……な、なんで?)


急な身体の反応に戸惑う誠。

アナルの周りの肉がキュウキュウと伸縮を繰り返し、
前立腺もピクピクとうねり始めていた。

彼はその身体の変化を誤魔化すように声をあげる。


「なんで、私にこんなものを見せるんですか……」

「なんでって、今から彼と恋人同士になってもらうためヨ。アタシのお店で働くには、乙女の心を理解しないといけないの。誠ちゃんも立派なニューハーフになるために、男の人と付き合う経験をしないといけないワ。

そのために最高の彼氏を用意してあげたってワケ♡
今は誠ちゃんが慣れるために女の子の格好をしてもらっているけど、彼、男に戻ったらすごくカッコイイのヨ?

誠ちゃんもきっと、見ているだけで胸がキュンキュンするようになって、彼のことが頭から離れなくなると思うワ♡」


誠の気持ちを無視した勝手な言い分。

この人は一体何を言っているのだろうか?

お店で働くとか、ニューハーフになるとか、
まったく意味が分からなかった。

誠は毅然とした態度で返した。


「お断りします。そもそも私にはお付き合いしている女性がいます。ニューハーフになる気もありません。勝手なことを言わないで下さい」

「あら、ソーウ? アタシの勘違いだったのかしら?
あなた、女の子みたいな綺麗な顔してるから、てっきりアタシ達の仲間かと思ったワ。ごめんなさいネー! オーーホホホホホホホホッ」


この見た目からそっちの人と思われていたようだ。
このような形で連れてこられたのには腹が立ったが、誠は女性の素直な返事に安心した。


「でも、すぐに解放するわけにはいかないワネ。
あなたが本当に男に興味がないと分かったら解放してあげるワ」

「!?」

「うふふ……驚いた顔しちゃって……
うぶな子の中には、本当の自分に気づかない可哀想な子もいるのよネ。本当の自分を知ればもっと幸せになれるのに…………

アタシはそういった可哀想な子達を救済する活動をしてるの。

初めは多少強引でも、目覚めた子達はみんなアタシに感謝するようになるの。こんなに素敵な世界があるなんて知らなかった、教えてくれてありがとうってネ。

あなたが本当に男に興味がないんだったら、すぐに解放してあげるワ。
でも少しでも興味があると分かったら、さっき言った通りニューハーフとして働いてもらうわヨ?」

「一体なんの権限があって、そんなこと言うんですか」

「権限? あるに決まってるでしょ?
あなたは今、アタシ達に拉致されてるのよ。
解放するかどうかはアタシの気分次第なワケ。
まだ解放される見込みがあるだけ良いと思わない?
嫌なら、ずっとここにいても良いのヨ?
アタシはそれでも構わないけど♡」

「どうやって……確かめるつもりですか……?」

「そうネー。今から一時間。そこにいる忍ちゃんとエッチして、最後まで勃起しないでいられたら、男に興味がないと認めてあげるワ」

「そんな……エッチだなんて……嫌です」

「どうするかはアナタ次第ヨ?

エッチして解放される道を進むか、
エッチしないで他の男達にアンアン言わされるか、好きな方を選びなさい。

あら…………どっちにしてもエッチすることになるわネ♡」


実質選択肢はあってないようなものだ。
誠は仕方なく、前者を選んだ。

自分は拉致されている立場。
何をされても仕方ない。

一時間だけ耐えれば良いのであれば、まだマシな方だ。

それに誠には自信があった。
例えどんなに感じさせられても、決して勃起しないと。

恋人の真里に刺激されても、一度も勃起しなかったのだ。
ましてや、今回は好きでもない男性が相手。

誠の勃起不全が、今、逆に役立とうとしていた。


※※※


「じゃあ始めて頂戴。忍ちゃん任せたわヨ♡」

「……はい」


忍は小さな声で力なく返事をする。
伏し目がちに床を見つめ、気の進まない様子で身体を動かす。

誠はそんな忍の様子を疑問に思った。


(なんだろう……この忍って子、あまり乗り気じゃないみたい)


忍が誠の視線に気が付く。
彼は悲し気な目をこちらに向けていた。
それを見て、誠は理解する。


(そっか、この人、無理やりやらされてるんだ……)


忍以外の男性は、全員黒い服を着ている。
どの人も人相が悪く、小早川に協力的だ。
誠は忍も彼らの仲間だと思っていたのだが、彼の態度を見て同じ被害者だと理解した。


「さぁー手始めに忍ちゃん、キスしてあげなさい」

「わかりました」


忍はなるべく感情を込めずに返事をすると、ベッドに上がり誠の真正面に座った。
彼との距離が縮まり、よりいっそう身体を強張らせる誠。

これから好きでもない人とキスをしなければならない。

彼は神妙な面持ちで、忍が近づいてくるのを待っていた。
同時に真里に対して申し訳ないという気持ちが沸いた。

目を閉じて彼を待つ。
だが、いざ唇が触れようとした瞬間。


「ごめんね……こんなことして」


声が聞こえた。
目を開けると、目と鼻の先に忍の顔があった。

彼は精一杯、謝罪の意を込めてこちらを見ていた。

すぐにでもキスをしなければ、どんな叱咤が飛ぶか分からないこの状況で、忍は敢えて一旦止まり、意思を伝えてくれたのだ。


「いいよ……仕方ない……」


誠は許すように返事をした。

この忍という男性は良い人だ。
自分が危険に晒されるかもしれないのに、こちらを気遣ってくれた。

ひどい状況ではあったが、他の人から責められるのに比べたら、ずっとマシだと思った。

忍の目が閉じられる。
今度こそ本当にキスをすると合図を送っているのだ。

フワッと彼の服から香水の匂いがした。
優しい花の香り、女性物の香水の匂いだ。

男だと言われても、女性と認識してしまうほど綺麗なハーフ顔。
ゴシックな服を着ていることもあり、フランス人形のような可愛らしさもあった。

忍の気遣いのおかげで、誠の恐怖心は大きく減っていた。

誠は身体の力を抜くと、目を閉じた。


………………チュ。


ピトっと唇が触れ合う。
真里と比べると少しだけ硬い唇。
調教の記憶を消されている誠にとっては、これが初めての同性とのキスである。

恋人の真里の手前、気持ちが良いとまでは言えなかったが、
何度も繰り返し慣れさせた彼女とのキスと違って、忍とのキスは、なんとも自然な感じがした。

なおも触れあう男性の唇の感触。
吐き気を催すような気持ち悪さもなかった。


「はーい、もう良いわヨ」


小早川の合図で忍が離れる。
小早川はニヤニヤと笑みを浮かべながら誠に尋ねた。


「どーお? 誠ちゃん♡ 忍ちゃんとのキス、気持ちよかったでしょ?」


返事はできない。
これが他の男性なら、はっきりと否定できるのだが、自分の言葉に忍が罪悪感を感じるかもしれないため、黙っていることにした。


「あーら、てっきり否定するのかと思ったけど意外ネ。誠ちゃん、やっぱりアナタ、ホモなのヨ♡
男の子同士でキスしても平気なホモ
良かったわネー忍ちゃん、彼、あなたとのキス、気持ち良かったそうヨ♡」


小早川の言葉に忍は反応しない。
否定すれば厳しい命令を下され、肯定すれば調子に乗ると分かっているからだ。
彼のこの感情を表に出さない態度は、小早川の調教を耐えぬいてきた経験の知恵であった。


「もぉー相変わらずつまんないわネ。まぁいいワ。
じゃあ次はディープキスをしてあげなさい。
熱愛中のカップルのように舌を絡ませあって、うんと激しいのを頼んだわヨ♡」

「……わかりました」


再び忍が近づいてくる。

今度はディープキス。
誠は身構え、それを待った。

忍の手が顎に添えられ、唇と唇がしっかりとくっつく。
熱を持った肉の塊が隙間から入ってきて、自身の舌に絡み付いてくる。


(んんっ……)


その舌の動作に思わず胸が踊ってしまった。

忍の手を煩わせないよう、なるべく抵抗しないようにしていたのだが、なんともあたたかくも親密な気持ちになるディープキスであった。

無理やりさせられているという気持ちを忘れてしまいそうになるほど、優しく穏やかなキス。

これも忍が本当に良い人だからこそ、できるキスなのだろう。

誠は無意識のうちに、彼の舌の動きに合わせて舌を動かしてしまっていた。


チュウ…………ピチャ……ピチャッ……チュ…………

キスが長引くにつれ、
誠の身体はだんだんと熱を帯びてゆく。


(どうしよう……頭がボーっとしてきちゃった……)


誠の目がトロンとしている。
忍とのキスで感じているのだ。


(この人、すごく上手い……)


実に慣れた動きだった。

忍はちょっとした誠の反応を見て、
感じるポイントを探し当てていた。

弱点を攻めるのは不本意であったが、
手を抜けば、小早川にすぐにバレてしまう。
そうなれば、より厳しい命令が下されることを忍は分かっていた。


これまでも忍は小早川の命令で責め役をこなしてきた。

初めは調教済みでホモを自認しているニューハーフを相手にした。

元々は彼女がいたであろう美形のニューハーフ達は、女に興味があったことなどすっかり忘れ、忍との交わりを心から楽しんでいた。

毎日女性ホルモンを服用し、後戻り出来なくなった身体で、忍を誘惑し、ペニスに舌を這わせ、娼婦のような表情でしゃぶりついてきた。

その刺激に耐えきれず勃起してしまうと、熟して男を受け入れる穴へと変わってしまったアナルで、ゴシゴシと竿をしごかれ射精させられてしまった。

彼女達は忍の一物を取り合うように、交代でお尻の穴に入れ、チュウチュウと精液を吸い付いていったのであった。

これにより、忍の男根は男のアナルの味をしっかりと覚え込まされてしまったのである。


しばらくすると、今度はホモの道に進むのを躊躇(ためら)っている子達を紹介された。

女の服を着せられ、化粧を施された彼らは、
ひどく怯え、新しい自分へと変えられてしまう恐怖に、必死で諍(あら)がい続けていた。

小早川は、そんな彼らを犯すよう忍に命じた。

男のアナルの味を知り、そそり立つ忍の淫棒。

いくら静めようと思っても、差し出されたお尻に反応してしまって収まらなかった。

まるで思春期の男の子が初めて女性の裸を前にして悦び勇んでしまうかのような興奮の仕方である。

迷いに迷ったが、結局彼は命令に従い、彼らを犯した。
決して欲望に動かされたわけではない。

犯さなければならなかったのだ。

忍には愛する恋人がいた。

気は強いが、さっぱりとした性格で、
心から分かり合える大切な人だった。

デート中に拉致され、共に催眠を掛けられた彼女。
どこかに監禁されてるわけではなかったが、
いつでも拉致できる状態にされていた。

もし命令に従わなければ、彼女に危害が及んでしまう。

忍は心を無にすると、
怯える彼らがなるべく苦しまないよう、
優しく責め立て、完全なホモセクシャルへと変えてしまったのだ。



※※※



(ふっふっふ…………良い感じ♡
押してダメなら、引いてみろって言うけど、ホントそうネ)


熱いキスを重ねる二人を、小早川は微笑み見守っていた。

彼は忍が調教相手を気遣うのを敢えて黙認していた。

忍は誠と同じく優しい性格である。
正義感が強い性格と言っても良い。

窃盗を見かければ捕まえ、財布が落ちていれば、そのままの状態で交番に届ける。

列車のホームに落ちた老人を危機一髪助けたこともあったし、川で溺れた子供を救助したこともあった。

彼はその容姿同様、性格もイケメンだったのだ。


そんな彼が小早川に捕まり、
ホモの調教師役として、無理やり働かされている。

怯える子をなるべく苦しまないよう優しく責める。

実に忍らしいやり方だが、
それにより、自発的に相手をホモの道に歩ませていたことを忍は知らなかった。

小早川、鮫島の恐怖の調教で心が弱っていた彼らにとって、忍の調教は実に安らぐものであった。

女性よりも美しい女装姿の彼。

忍に調教を受けた者達は、彼と交わることにより、ホモへの嫌悪感と調教への恐怖が和(やわ)らぎ、最後には元カノよりも彼を愛するようになっていたのだ。

調教後の彼らを見て、小早川はその有用性を認識していた。


(忍ちゃんが完全に堕ちれば、その力を思う存分発揮できるようになるんだけど……ま、今は好きにやらせておくしかないわネ)


「はい、良いわヨー。忍ちゃん、一旦離れて」

「チュ…………わかりました」


小早川の指示に従い、離れる忍。

キスの影響で誠はすっかり上気している。
身体はすっかり弛緩し、熱い息を吐いていた。


「ぁ…………はぁ♡ はぁ……はぁ……はぁ……♡」


全身がキスの余韻に浸る。こんな状況にも関わらず、誠の心は多幸感で満たされていた。


「あらあら、忍ちゃんとのキス、ずいぶん良かったようネ? 彼女とのキスより感じちゃったんじゃない?♡」

「はぁはぁ……♡ そんなこと……ありません……♡」


甘い息を吐きながらも否定する。
しかしその様子を見れば、感じていることは誰の目から見ても明らかだった。


「ふーん、そうなの。まぁいいわ。
じゃあ、そろそろ検査させてもらおうかしら?
忍ちゃん、誠ちゃんの下を脱がせて、おちんちんが勃ってないか確認しなさい」

「…………はい」


忍は、未だ荒く息を吐く誠を寝かせると、彼の腰のベルトを外し、ボトムを脱がせた。
誠の履いているボクサーパンツが目に入る。


「………?」


そこで忍はあることに気づいた。
パンツの大事なところにあるべき窪みがないのだ。

ボクサーパンツはトランクスと違い、ぴったりと肌に密着するタイプのパンツだ。

男であれば、必ずと言って良いほど盛り上がる部分、誠にはそれがなかった。

忍は脱がせてみれば分かると思い、パンツを腰から引き抜いた。


「…………小さい」

「ぷっ! ふふふふ……誠ちゃんのおちんちん可愛いでしょ?
良かったわネ、忍ちゃん。久しぶりに女の子のクリトリスを舐めれるわヨ♡」

「………」


小早川の言葉に忍は動じない。
ただ誠の小さなものを見つめるだけだ。


「それにしても、やっぱり勃起してないようネ。
前にあれだけ責めても勃たなかったんだから仕方ないけど……ほら、あなた達、さっさと次の準備をしなさい」

「ははっ!」


黒服達が誠の上着を脱がせにかかる。
彼らは誠の服を皺(しわ)にならないよう畳むと、
大切に檜(ひのき)の箱の中へと入れた。


「さぁ、忍ちゃん、始めなさい」

「………はい」


誠のペニスに両手を添える。

人差し指と親指を使って皮を剥くと、
自らの舌を大きく出し、誠のペニスを乗せた。

そして滑らすように根本まで舌を進め、
口全体を使って包み込んだ。


「んんっ!?」


意外な感触に誠は驚く。
忍の舐め方は、真里とまったく異なる舐め方だったからだ。

真里は吸ったり舐めたりを繰り返し、
舌先で丹念に掃除するように舐めるのだが、

忍はあらかじめ唾液を舌の上に溜めておき、
船が湖面に浮かぶように、誠のペニスを浮かせ、直接舌に触れないよう、唾液で愛撫した。

人間の舌には、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と呼ばれるザラザラした部分がある。

剥き出しになったペニスは敏感に出来ており、
ここに触れることにより、刺激が強すぎて逆に快感を引かせてしまう恐れがあった。

忍は粘着性の高い唾液を間に挟むことによって、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)のザラザラの部分に膜を張り、柔らかな愛撫ができるようにしたのだ。


(うぅ何これ……すごく柔らかい……真里さんの舐め方と……全然違う……)


感じたことのない未知の快感。
誠のペニスは忍のフェラチオに不思議な心地よさを感じてしまっていた。

だが、忍のフェラチオはこれだけでは終わらなかった。


すぅーーすぅーーー


忍は、誠のペニスと唇の間に隙間を作り、
新しい空気を送り込み始めていた。

涼しい風が口内に入り込み、中の温度を冷ましていく。


ちゅぷ……ちゅぷ……

「ふぅうん……あぁっ!!」


とても快適だった。

誠のペニスは、ズボンの中に籠った熱で熱くなっていた。

それを忍が冷たい空気を送り込むことによって適温に変え、快適さを与えていたのだ。

忍が意識した温度は33℃。
体温より少し低い温度であるが、これは陰嚢にとって最適な温度であり、精子が活発に動く温度でもあった。

この温度調整と、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)への膜のおかげで、誠はこれまで感じたことのない柔らかな快感を感じることができていたのだ。


(ふぁぁあん……気持ちよくて……あぁん♡ 心が溶かされちゃうみたい……)


安らかな表情を浮かべる誠に、
小早川は満足げな笑みを浮かべていた。


(ふふふ、さすがアタシが仕込んだだけあるワ。
誠ちゃんのあの反応を見る限り、完全に舐め方をマスターしたようネ)


ヴィジュアルに問題のある小早川と違って、忍は女装すれば絶世の美女へと変わる。

そんな美女から、このような舐め方をされれば、どんな男でもイチコロだ。

こういう飲み込みの早いところも、
忍によるホモ覚醒の犠牲者が増えた原因の一つであった。


ちゅぱちゅぱ………レロレロ………

「んんっ!!」


追い打ちをかけるように、忍は更なる愛撫を開始する。
今度は舌に乗せたペニスを、揺り籠のように優しく揺らし始めた。


「あぁっ! ダメぇっ! ダメぇぇ!!」


誠が高い声で悲鳴をあげる。
あまりに気持ち良すぎて、怖くなってしまったようだ。

こんなに気持ち良くなってしまったら、この快感が忘れられなくなってしまう。
いつまでもいつまでも忍の口の中に収まっていたいと思ってしまう。

そしてこの快感が行き着く先は……もちろん誠の前立腺だ。

ペニスに与えられた快感は、
その裏側を通り、奥にある前立腺を刺激する。

優しい愛撫により作り上げられた刺激は、
前立腺にメスの快感を目覚めさせていた。


「はぁっ!♡ こんなの……っ♡ ダメぇっ!♡ イッちゃう! イッちゃうぅぅぅぅぅぅぅ!!♡」


ビクビクビクビクビクッッッッッッ!!!

前立腺がビクビクと激しくうねる。
誠は忍のフォラチオを受けてイッてしまったようだ。

力なく横たわる誠を見て小早川は言う。


「どう、忍ちゃん。誠ちゃんは勃起したかしら?」


ペニスから口を離すと、
忍は振り返り首を横に振った。


「ふーむ……これでもダメなのネ。
とりあえず誠ちゃんのペニスを吸いなさい」

「はい」


再び誠のペニスを口に加え、吸い込む。


ぢゅううぅぅ……

「あぁんっ!♡」

誠が可愛らしい悲鳴をあげる。


「飲んじゃダメよ? 口の中を見せなさい」


忍が小早川の方を向き口を開く、
そこには透明な粘液がわずかに残っているだけだった。


「うーん……前はよく見ていなかったけど、
ホント少ないわネ。しかも無色透明じゃない。
この子、無精子症なのかしら? 味はどう?」

「すごく薄いです」

「今までの子と比べてどうかしら?」

「ダントツで一番薄くて、量も少ないです」

「あっそう。
でもまぁ、これはこれで可愛いからいいワ。
あとは勃起さえできれば完璧なんだけど……
とりあえず時間勿体ないから、次、行くわヨ」


小早川が手を叩き、合図を送る。

すぐさま黒服達が、粘着性の高いローションを持ち、忍のペニスに塗り込み始めた。


「シリンジも用意して、誠ちゃんのお尻に突き刺しなさい」

「ははっ!」


別の黒服が奥から注射器の形をしたシリンジと呼ばれる器具を持ってくる。


「忍ちゃん、誠ちゃんのお尻を持ち上げて」

「……はい」


忍は仰向けになった誠の腰に枕を差し込むと、誠の太ももを両側に広げ、お尻を開かせた。


「はぁはぁ……な、なにするの……ヤダ……怖い」


巨大なシリンジを見て、誠の顔が恐怖に歪む。
忍はそんな誠を憐れむような目で見ていた。


「はい、ではお注射開始~♡」


楽しそうに小早川が言う。
黒服は手に持ったシリンジの先端を誠のアナルに差し込むと、ゆっくりと押し子を押した。



「やだっ!そんなの入れな……」

ジュウウウウウウウウウゥゥゥゥ!

「あぅぅぅっ!!あああぁぁぁ!!」


シリンジの中の液体が誠のアナルに注入される。


「うううぅぅぅ!!」


苦しそうな顔で、ローションを受け入れる誠。
忍は彼を再び四つん這いの姿勢にさせると次の指示を待った。


小早川がチョイスしたローション。
実はこれは小早川が所有する製薬会社、小早川製薬によって秘密裏に開発されたローションであった。

このローションには、幸せを司る物質セロトニンによく似た働きを持つ5つの成分が配合されており、快楽物質ドーパミンを大きく分泌させる効果があった。

だがこれは実験段階に置いて、多くの男を廃人に導くほど危険な代物であり、
これでも調整を加えた方であったが、それでも並みの男性の理性を狂わせてしまうほどの媚薬であった。


「中毒者にしたら、売り物にならなくなるから、このローションを使うのは今回だけヨ。
だから今回でキッチリ勃起させなさい。わかったわネ? 忍ちゃん」

「……わかりました」


忍は心の中で誠に謝罪すると、勃起した巨根を近づけていった。



Part.76 【 甦ったペニクリ◆ 】

ぷっくらとした白い桃尻の合間に、
同じく白桃色の綺麗な男根があてがわれる。

同性同士の繋がりを許した倒錯交尾の穴は、
自ら望んで忍の白竿を飲み込み、
注入された潤滑液は、
まるで高級レストランのホールスタッフのように、
訪れた肉棒を奥へと招き入れていた。


「んんんっ……くぅ……ぁあん❤」


誠が嬌声を上げる。
狂おしいほどのアナルの渇きが忍の熱い塊で満たされていく。

愛する真里を胸に秘めながらも、
裏の小さな花弁が開かれていく感覚は、
背骨に伝わる心地の良い痺れもあいなって、
メスの幸せを感じさせてしまっていた。


「いやだ、やめてぇ……」


言葉では否定の色を示すものの、
優しい彼の腕が自身を包み込むことにより、快楽に抗えないメスの吐息を漏らしてしまう。

そのまま太い幹を身体に突き刺されたまま、背面座位の姿勢で忍の股間に腰掛けさせられる。
潤んだ瞳は見開かれて、歓喜の涙を流しているものの、
誠は首と肩をぐいぐいと回し、最愛の人への心の操を立てようとしていた。


「あなた達、誠ちゃんと忍ちゃんの太ももをテーピングして、お腹にベルトを巻きなさい。二人が離れないようにネ」


黒服が両脇に付き、一人が暴れる誠を抑えにかかる。
太ももにテーピングを施し、肥満用のフィットネスベルトで二人のお腹を一つに巻く。

これにより忍が足を閉じなければ、誠も閉じれない状態となってしまった。


「これなら誠ちゃんがいつ勃起しても分かるワ。しかし、素晴らしい眺めネー♡」


その見た目には不釣り合いなほど立派な忍の高射砲が、誠のマーガレットの穴に差し込まれている。
さらに上では、象の赤ちゃんの鼻という表現では足りないほど可愛らしい誠のおちんちんが純粋無垢な姿を晒していた。

あまりの絶景に小早川は感激し、
スマホで写真を撮り始めてしまう。

パシャ! パシャ!

「やめてぇー撮らないで」


こんな写真撮られたら、どこでどう使われるか分かったものではない。誠は泣きながら小早川に抗議した。


「小早川さん、そんなもの残していたら、あなたの立場もまずいのではないですか……? いつ誰に見つかるか分かりませんよ?」


誠を可愛そうに思った忍は、小早川にそう伝える。


「大丈夫ヨ。あなた達が身も心もニューハーフになるまで、アタシの金庫の中に入れておくつもり♡ こういうのって今しか撮れないでしょ? 後になって生まれ変わったあなた達と、このノンケだった頃の写真を眺めて、一緒にエッチするの♡ 楽しみネー♡」

(くっ…………この変態め…………)


あまりに悪趣味な小早川の言葉に、改めてドン引く忍。

このままこのオカマに従っていたら、
どんな変態に変えられてしまうか分からない。
しかしこの状況を打開する策は未だに思い付かなかった。

今でこそ小早川の正体が分かっているが、
調教が終われば記憶を消され、これまで通り過ごすことになるのだ。

身体に傷をつけてメッセージを残そうにも、
小早川がそんな分かりやすい証拠を残すはずもなく、
抵抗する道は残されていなかった。


「う……ん……♡ はぁ……あ……あ……あ……♡」


先ほどまで暴れていた誠が大人しくなっている。
媚薬が効いてきたのか、思うように動けなくなったようだ。


(あ………お尻が、お尻が気持ちよくて、どうにかなっちゃいそう…………これ以上……この人のおちんちんを意識しちゃっ……だめぇ……♡)


忍はまだ腰を動かしていない。
挿入して、誠が乗っているだけだが、
誠のアナルはしっかりと忍のペニスに吸いついていた。


「っ…………!」


誠のアナルの動きに、次第に忍も反応を始める。
あの鮫島さえも狂わせた誠の名器だ。無理もない。
忍は少し息を吐きながらも、発情している今の状態を小早川達に知られないようにしていた。


(くっくっく……無感情を貫き通そうとしているようだけど、バレバレよ忍ちゃん。
ようやくアナタに、そういう顔をさせることができたワ。
アナタはいつも通り男の子を調教してるつもりだったようだけど、今回ばかりは相手が悪かったわネ。
アナタが誠ちゃんを調教し、誠ちゃんがアナタを調教する。
それがアタシの本当の狙いヨ)


忍は誠と違って暗示に掛かりにくい性格だった。
さらに感じにくい体質でもあり、
小早川は以前から手を焼かせられていた。

そこで目をつけたのが誠だ。
鮫島の理性を飛ばすほどの名器であれば、きっと忍にも効く。
小早川はこの機会に、
二人の催眠深化を一段階引き上げようと企んでいたのだ。


「もう薬も浸透した頃でしょ。忍ちゃん、腰を振り始めなさい。誠ちゃんの身体に男の子同士の気持ち良さを刻みつけてやるのヨ」

「っ…………は、い」


忍は努めて冷静に返事をしようとした。
こんな状態でピストンを始めてしまったら、
自分はどうなってしまうのだろうか? 忍は不安だった。

だが始めるしかない。
打開策を見つけるまで、小早川には従い続けるしかないのだ。


「んっ!♡あっ!♡あっ!♡あっ!♡」

「んっ……!くっ………………はぁっ……!」



誠のソプラノボイスと共にピストンが開始される。
忍が一突きするたびに誠のクリトリスが上下に揺れた。

ちゅう……ちゅうううう……♡

ピストンが始まることにより、
誠のアナルの吸い付きもより積極的になってきた。


(うっ……! ダメだ……この子のお尻、全然吸い付き方が違う……
このままじゃ俺も……ダメになってしまう)


初めて忍が危機感を覚える。
誠のアナルがあまりに気持ちよすぎて理性が保てなくなってきたのだ。

このまま続けたら、飢えた野獣のように誠のお尻を犯し始めてしまうだろう。そうなればホモと一緒だ。


「忍ちゃん、誠ちゃんのおっぱいも揉んであげなさい。
あの女としてるんだから慣れてるでしょ?
女の子にしてあげるみたいに優しく揉んであげるのヨ♡」

「………………」


忍は無言で両手を誠の胸に回した。
小さくて柔らかい。
それに触れた瞬間、彼女のことを思い出した。

忍は最近彼女としていなかった。
ずっと男同士で性行を重ねてきたため、
身体がそちらに慣れてしまったのだ。

勃起することもできず、
ただの触り合いだけで終わることも多かった。

彼女は「疲れているからだよ」とか「次頑張ろう」と優しい言葉を掛けてくれていたが、内心は傷付いていたことだろう。

こんなに愛しているのに……。

忍はまだ健全に勃起できていた頃に、
彼女とした感覚を思い出し、誠の胸を揉み始めた。


「あっ…………胸♡ 気持ちいい……♡」


忍の愛情を込めた愛撫に、誠はつい本音を言ってしまう。

忍は恋人の膣に入れる感覚を思い出しながら腰を振っていた。
久しぶりの彼女とのセックス。
誠だったらその妄想も容易に想像することができた。


「気持ちいい……!♡  もっと……もっとして♡」

「うん……はぁはぁ、俺も気持ちいい……」

「私……はぁはぁ♡……もうすぐイキそう……」

「んっ……俺もいく…………あぁ…………!」


二人の気分が盛り上がったその時、冷たい声が流れた。


「純白の姫君 孤高の騎士」


その瞬間、二人の意思は途絶えた。



※※※



「良い感じだったけど、こっちは全然ネ……」


小早川は誠のペニスに注目していた。
誠は小早川製薬の媚薬を持ってしても勃起していなかったのだ。

このまま二人が絶頂を迎えても、
先程のように空イキをするだけで終わってしまう。

そうなればタイムオーバーだ。
そこで小早川は一旦二人を眠らせ、新たな暗示を掛けることにした。


「ふーーやはり生まれつきのものネ。でもアタシの店で働くなら勃起は最低条件。今こそアタシの催眠の真価を見せる時だワ」


小早川は黒服から羽扇を受けとると、
誠の勃起した小ぶりな乳首へ添えて優しく愛撫した。


「誠ちゃん……とっても気持ち良かったわよネ?
天にも昇るような気持ちってまさにこのことかしら?
でも、アナタにはもう一つ知って欲しいことがあるの……

それはおちんちんを勃起させること。
あなた以外の男の人がみんな当たり前にできることヨ。

これからその方法を教えるから、よぉーく聞いてネ?

勃起をするためにはおちんちんに血を集めないといけないの……。血がどんどん溜まって圧力がかかると勃起できるのヨ。

今、お尻とおっぱいを責められてすごく気持ち良かったでしょ? 気持ちがいいと、身体の血液がみんなおちんちんに集まって来るの……イメージして……全身の血がおちんちんに集まってくるワ……」


誠のペニスが僅かに動く。

その反応を小早川は見逃さなかった。
続けて忍に暗示を開始する。


「忍ちゃん……彼女とのエッチ気持ち良かったでしょ?
アナタはこの感覚を忘れることができないの……。
彼女との経験なんだから忘れる必要もないわよネ?

目を覚ますとアナタはちょうど彼女とエッチの真っ最中。
久しぶりのエッチで気分も上々ヨ♡
今まで出来なかった分、思いっきりしなさい。

でも…………アナタは射精すると目が覚めてしまうの。
自分が誰とエッチしてるのか思い出すことができるワ。

だけどこの気持ち良さは止められない…………。
もっとエッチがしたくてしたくて堪らなくなるの。
良いわね? じゃあ始めなさい……」


小早川の暗示で忍が目を覚ます。
先程と違って、目が少し虚ろだ。
彼は今の状況を思い出すと、腰振りを再開した。


「んっ…………♡んんんっ…………♡」


目を瞑りながらも自身に与えられる快感に反応する誠。
小早川は彼の耳で囁くように暗示を掛けた。


「ほら…………どんどん血が集まっていく……
集まれば集まるほど、もっともっと気持ち良くなれるわヨ……」


ピク……ピク……ピクピク……
誠のペニスに変化が起き始める……。


「おおっ!!」


黒服達が一斉に声を上げる。あれほど反応しなかった誠のペニスが、少しずつ膨らみ始めたのだ。


「おちんちんに血が溜まると気持ちいい……
どんどんどんどん血が集まっていく……
おっぱいを男の人に撫でられると気持ちいい……
気持ちいいと身体中の血がおちんぽに集まっちゃう……
お尻の中をおちんぽで撫でられると気持ちいい……
気持ち良いと、おちんちんが大きくなってきちゃう……」


むくむく………むくむくむく………

誠のペニスが少しずつ少しずつ、
土の中から飛び出した植物の芽のように自立を始めた。


「さすが小早川様だ……なんという奇跡……」


黒服達が小早川を誉め称える。
羨望の眼差しは、まるでカルト集団の信者のようだ。


「ほーら、すっかり勃っちゃった♡
男の人のおちんぽで勃起しちゃうホモちんぽの誕生ネ♡
アナタは男の人でしか勃起できないホモになっちゃったの♡
さぁ、その喜びをホモちんぽで表現しなさい。
男の人のおちんぽが入っているわヨ?嬉しいわよネ?」


小早川がそう言うと、
誠の勃起したペニスはピクピクと跳ね。その喜びを表現した。

恭子の催眠により勃起力を失っていた誠のペニスは、
真性ホモちんぽとして甦(よみがえ)ったのだ。


「ふふふ……大きくなっても可愛いのネ♡
あとは盛大に射精させるだけネ……」


誠が無事勃起したことに満足した小早川は、
さっそく催眠を解除することにした。


「あなたはアタシが椅子に座ると意識を取り戻すワ。
でも催眠を掛けられたことは覚えていない。
勃起の仕方だけを身体が理解したまま目を覚ますのヨ」


そうして小早川は、ニヤニヤと笑いながら足を進めると、黒服に勝利のワインを注ぐように指示し、どっさりと椅子へ腰かけた。


「ああぁぁぁぁ♡ あっ! あぁっ! あぁん♡」


誠の喘ぎ声が再び部屋中に響き渡る。


「ふふふ………誠ちゃん~?♡ ずいぶん気持ち良さそうだけど、股間で起立しているそれは何かしら~ん?」


白々しく小早川が言う。
誠は息を漏らしながらも、自らの股間に目を向けた。


「はぁ……はぁ……えっ!?  うっ……うそ……」

「はい、今53分。
残念、あと7分我慢すれば大丈夫だったのにネ♡」


トクトクトクトク……
黒服が勝利の美酒ロマネコンティを小早川のグラスに注ぐ。


「ゴク……ゴク……ゴク…………
あぁ~~~美味しいわ~~♡ さ・て・と………」


小早川は立ち上がり、
再び誠の元へ歩み寄ると、しっかりと顔を見据えて言った。


「約束ヨ……勃起したら、ホモを認めてくれるんだったわよネ?」

「うっ……うっ……んっ♡ あぁ……うぐっ……んん♡」


誠は泣きべそをかいていた。これまで何度真里とセックスしても勃起しなかったペニスが、見知らぬ男性相手に勃起してしまったからだ。

小早川は泣きそうになる誠の髪を掴むと、鬼のような形相で睨みつけた。


「答えなさい! まさか今更認めないとでも?
アナタ……アタシ達のこと騙したのぉおおおおおおお!?」

「うぅっうぅ………わ……わたしは……ホモです……ふぁ♡」

「うん? 聞こえなかったわネ? もう一度?」

「わたしは………うっ……ひっぐ……ホモです……ひぃぐ♡」

「あらーん♡ ちゃんと認めてくれるのネ♡ やっぱり誠ちゃんは素直で良い子ネ♡ あとはホモらしくイキなさい♡
一時間以内に勃起しちゃったから、無制限にホモセックスしてもらうわヨ♡ 真性ホモちんぽの誠ちゃん♡」


無制限と聞き、誠が絶望の顔を浮かべる。

自分はこれからどうなってしまうのか?
本当にニューハーフとして働かされてしまうのか?
真里の元へはもう戻れないのか?

だがその理性も忍の巨根によって溶かされてしまう。

そしてそれはホモを認めた今となっては、抗いきれるものではなかった。


「あっ♡ あぁっ♡ あああんっ♡」

「可愛い声出しちゃって♡
素直にホモを認めたから、前よりも気持ちいいでしょ?」

「はいっ……んんっ♡ 気持ちよく……なりました♡ あぁん♡」

「勃起した自分のおちんぽ見るの初めてでしょ?
アナタのおちんぽ……男の人のおちんぽが気持ちよくて、こうなっちゃったのヨ? 自分のホモちんぽを見て、どうかしら?
勃起してて、可愛らしくて、嬉しいわよネ?♡」

「うんっ……はぁはぁ♡ 私のホモちんぽ……大きくなっても可愛いの……♡ 男の人のおちんぽが気持ちよくて……あぁん♡
嬉しいのぉぉぉぉ♡♡♡」

「そう、良かったわネ♡ 真性ホモちんぽの誠ちゃん♡
これからも男の人相手にいっぱいオッキしなさい♡
大きくなったホモちんぽ同士でチュッチュッしたり、すりすり擦り合うともっと気持ちよくなれるのヨ?♡ 想像してご覧なさい♡」

「あぁぁぁん♡ おちんぽとおちんぽがキスして……♡
いやらしいよぉ♡ こんなのダメぇぇぇ♡♡」

「ダメじゃないの♡ とっても良いものヨ♡
こんな真性ホモおちんぽにしてくれた忍ちゃんのおちんぽに感謝の意を込めて、お尻でチュッチュッしてあげなさい♡」

「はい……♡ あぁん♡ 私のおちんぽ、ホモちんぽにしてくれて……はぁはぁ♡ ありがとうございます……♡」


完全にトランス状態に陥ってしまった誠に微笑む小早川。
彼は誠の催眠深化を引き上げたことに満足すると、忍に注目した。


「はぁ……あぁ…………イキそうだ……」


どうやらこちらも限界が近いらしい。

誠のお尻が積極的に締め付けるようになったことで、
忍は更なる快感を得られるようになっていた。
誠の胸を揉みながら腰を揺らし、ラストスパートに入る。


「忍ちゃん、ガンガンいきなさい。思いっきり射精するのヨ」


パンパンパンパンパン!!!


「あっ♡ やぁん♡ なんか……何か……きちゃう………」


パンパンパンパンパン!パンパンパンパンパン!!!


「あんっ!♡ あんっ!♡ おちんぽ気持ちいいっ!♡」

「誠ちゃん、ニューハーフになりなさい……ホモちんぽでホモちんぽをイカされちゃうニューハーフとしてイクのよ!」

「きちゃう……きちゃう! 何かきちゃうのぉお!!
私……ニューハーフになっちゃう! なっちゃうぅぅ!!
イヤっ! イヤっ! イヤァアアアアア!!」


誠が叫んだ次の瞬間、忍の精液が放たれる。

ドクトクドクドクトクドク!!!


「あああああぁぁぁぁぁあ!!!!!♡♡♡」


ビクンっ!! ビクビクビクビクっ!!

ぴゅっぴゅっ……トクントクン……


誠は性器に一切触れることなく、
精液を数滴、小さくトコロテン発射してしまった。


「はぁ………はぁ………はぁ………♡ ぁんっ……♡」


絶頂を迎えた誠は、抱き支える忍の身体に体重を預けていた。
真性ホモちんぽとして迎えた初めての射精。
生まれ変わったホモちんぽは、静まり返ることなく大きさを維持し、更なるホモとしての快感を待ち望んでいるように見えた。


「はぁはぁ………はぁはぁ…………えっ?」


そこで忍が気がつく。
誠のお尻に射精してしまった事実に。


(しまった…………いつの間にか催眠を掛けられて俺…………)


「うふふふふふ、忍ちゃん♡ いつもはイカないのに、今日はずいぶんとサービス旺盛じゃない? 相手が誠ちゃんだからかしら?」

「くっ…………」

「二人の拘束を解いてあげなさい。もう必要ないでしょうからネ♡」


黒服達が二人を取り囲み拘束を解く。
あまりに強烈な絶頂を体感した誠は、そのままベッドに横たわった。


「忍ちゃん、見てたわヨ?
アナタ途中から誠ちゃんをあの女に重ねて、シテいたでしょ?」

「!!」

「やっぱり図星だったようネ。そう思ってアナタの心に少し細工をしておいてあげたワ♡ 誠ちゃんのことを見てご覧なさい」


冷や汗をかきながら誠を見る。
あいかわらずの女性のような身体つき。

誠が初めに忍を見た際に、男だと聞いて驚いていたが、
忍も同じ気持ちだった。

今まで相手をしてきたニューハーフや美男子の中でも、
天然でここまで美しく女性らしい者はいなかった。


ドクン…………ドクン…………
誠を見て忍の心臓が高鳴り始める。


(うっ……まさか……)


忍は誠に劣情を抱いてしまっていた。
一瞬の隙、忍に催眠術を掛けた小早川は、
恋人へ感じるはずの感情を誠にも向けられるようにしていたのだ。


「ホーント、長かったワー。
正直言って、途中から無理なんじゃないかと諦めかけていたのヨ。アナタ、催眠は効かないし、感じないし、クソ女のリカバリーはあるし。でも誠ちゃんがいてくれてホントに良かったワ。
この子じゃなきゃ、アナタの心を揺さぶることなんて出来なかったでしょうネ」


小早川が不気味な笑みを浮かべている。
笑ってはいるが、瞳の奥は忍を睨み付けているようだった。


「覚悟は良いかしら? これから反撃させてもらうから…………
必ずアナタをホモに堕としてやる」


あまり男性に恨みを持たない小早川にでさえ、
ここまで憎しみを抱かせたのは、ひとえに忍が手強い男だったからだ。

小早川にとって、その難易度は真里・誠以上であった。


「じゃあ、さっそくだけど、そこで眠っている誠ちゃんに、
もう一度突っ込んでもらえるかしら?
従わなければ……良いわね?」


忍に反撃する手段はない。
そもそもこれまでだって守る一方だったのだ。

なるべく感情を殺し、催眠の切っ掛けを作らない。
それが小早川に抵抗する最善の防衛策だった。

しかし忍は心の隙を突かれ、誠に興奮するように変えられてしまった。これまでのように無感情を押し通すのはもはや難しい状態であった。

それでも命令に従い、倒れる誠に覆い被さる忍。
先ほどまでと違い、どうしても感情が込み上げてしまっていた。

早くこの人に挿れたい。
キスをして愛撫して共に絶頂を迎えたい。

自然とそう思ってしまう。

ここで挿れるのは危険だ。
そう本能が警鐘を鳴らしている。

だがやらねばならない。
彼女のためにも。

忍は誠の腰を持ち上げると、巨根をゆっくりと差し込んだ。


「うぅっ!」


気持ちいい。
初めてこの誠に肉棒を入れた時とは比べ物にならないほど気持ちよくなっている。

否応がにも、気分が高まってしまった。


「あ……ぁ……ぁ……」


僅かな喘ぎ声を上げて、誠が目を開ける。
肉棒を突っ込まれたことで気がついたのだ。

誠の生まれ変わったペニスは、
男の肉棒が差し込まれた喜びでピクピクと震えていた。


(この子、いつの間に勃つようになったんだ?)


忍は誠が勃起した瞬間を見ていない。
勃起しているということは、誠が小早川との勝負に負けたということだ。


「誠ちゃんネ、ちゃーんと、おちんぽ大きくできるようになったのヨ♡ 約束通り、自分がホモだってことも認めてくれたの♡
そうヨネー、誠ちゃん? ほら、ホモちんぽを勃つようにしてくれた忍ちゃんにお礼を言いなさい」


相変わらずキュウキュウと締め付けてくる誠のアナル。
誠は淫乱な娼婦以上に乱れた目付きで忍を見つめていた。


「あ、あの…………私のホモちんぽ…………
大きくしてくれて……はぁはぁ♡
ありがとうございます。おかげでわたひ……んっ♡
はぁはぁ、ホモに……ぁんっ♡ なれました♡」


誠の言葉にショックを受ける忍。

また一人、ホモの道に進ませてしまった。
誠も勃起できるようになったことで、他のニューハーフと同じように男にハマっていくことになるだろう。


「ダメでしょー? 誠ちゃん。
言葉だけじゃなくて、ちゃんと態度でもお礼をしなくちゃ♡
忍ちゃんにキスしてあげなさい♡」

「はぁい……♡」


その目は、恋する人を見つめる少女のように。
誠は忍を抱き締めるとキスをした。


ちゅ……♡


キスをすることで、誠のアナルの締め付けが増す。

(離れないとまずい)

忍の本能がそう告げる。
だが小早川に見張られている今、そんなことできるはずもない。

「私のオマンコ気持ち良くして……♡
私、ホモだから……我慢できなくって……♡
私のホモちんぽ、あなたのおちんぽで、もう一度ピュッピュッさせて欲しいのぉ♡……お願い…………」


興奮している誠は、
命じられていないにも関わらず、忍の口に舌を差し込んだ。


ちゅぱ……ちゅ…………ちゅぱちゅぱ……ちゅううう♡


急なディープキス。
1分にも及ぶキスを終えた誠は、
そのまま潤んだ瞳で忍を見つめ、気持ちを伝えた。


「はぁはぁ♡ お願い……私のことをもう一度、愛して…………♡」


彼女の姿が誠に重なる。
そこで忍の理性の糸が途切れた。

忍は誠にキスを返すと、ベッドに押し倒した。



※※※



その後、誠と忍は何時間もの間、男同士で愛しあった。

忍も着ている衣服を全て脱ぎ捨て、
キスをして抱き締め合い、 お互いの肉棒をしゃぶり合った。

そうして解放された後も、
週に一度、こうして呼び出されては男同士の肉欲を身体に刻み付けられたのである。

いつしか二人は「忍くん」「誠ちゃん」と愛称で呼び合う仲になっていた。

季節は早秋(そうしゅう)。
熱さもピークを過ぎ、木の葉も色付き始めようとしていた。

Part.77 【 欠陥住宅? 】

誠のアパートから〇✖大学を挟みちょうど反対側に、
真里の住むアパートがあった。

3階建ての建物、その2階の中央に真里の部屋がある。

真里の部屋は、手前に4.5畳程度のキッチンがあり、奥に飲食就寝するスペースがあった。
バスとトイレは、一体化されたユニットバス方式で、防水性のカーテンで仕切りがされていた。

窓から外を眺めると、
荒廃した建物と雑草の生い茂る空き地が見える。

暗くどんよりとした雰囲気。

コンビニやスーパーまでも遠く、
あまり賑やかな土地とは言えなかった。

そういう環境であるためか、はたまた別の理由があるからか、
真里の部屋の上下両隣には誰も住んでおらず、
騒音を気にせずに暮らせるといった意味では、よい環境であった。


真里がこのアパートを選んだ理由は、
敷金礼金がいらず、家賃が極めて安かったからだ。

真里は住む家にお金を掛けるよりも、
趣味である同人グッズに使いたいと思っていた。

実家にいた頃と違い、
親の目を気にする必要もなくなり、
狭い部屋には、彼女のBLの同人誌が山積みにされていた。


(…………どうしよう)


その山積みになった同人誌を見つめ、
真里は何やら考え事をしている。

和室、キッチン、お風呂場など
生活スペースを見回し、何やら焦っている様子だ。


(くっ………まずいな………
あと20分以内にこれをなんとかしなくちゃ……)


彼女はこの膨大な同人誌を隠す場所を探していた。



※※※



1時間前……

午後の講義を終え合流した真里と誠は、
食材を買うためスーパーへと向かっていた。


「ねぇ、真里さん」

「はい?」

「たまには真里さんの家で過ごしたいんだけど、どうかな?」

「えぇ~、私の家、すごく狭いですよ……」

「それでもいいよ。真里さんがどんな生活してるか見てみたいし」

「う~ん、いつも誠くんの家にお邪魔させてもらってますし、良いですよ」

「本当! ありがとう」


真里の部屋に行けることになり喜ぶ誠。
こうして二人は、別のスーパーで買い物をして、
真里の家に向かうことになった。


「真里さんの家、初めてだなーすごい楽しみ♪」

「何にもないところですよ。でも静かで良いところです。
夏もなぜかクーラーなしで過ごせるくらい涼しいんですよ」

「へぇ~風通しの良いところなんだね」

「それとご近所の方がとても親切です。
具合悪いところはない?とか、最近変わったことはない?とか、顔を合わせる度に気に掛けてくれるんです!」

「それは良いね。静かで過ごしやすくて、ご近所さんも親切だなんて何も言うことないね」

「そうなんですよ。ただやっぱり少し狭いかなって思います。本を置くところだって………はっ!」

「ん? どうしたの?」


(やばい……同人誌のことすっかり忘れてた……)


真里の顔から血の気が引く。

実は前にも、誠から家に行きたいと言われていたのだが、本を隠す場所がないため断っていたのだ。

しかし最近は誠の家で過ごすことが多くなったため、BL本をそのままにしていることをすっかり忘れてしまっていた。


(どうしよう……今更断ることなんてできない。
誠くんの部屋に泊めて貰っているのに、自分の部屋はダメだなんて言えないよ……)


「あっ……え、ええっと……すみません!
実は少し散らかっていたのを思い出したので、
入る前に10分、20分ほど待ってもらえますか?」

「大丈夫、気にしないよ。私も片づけ手伝うよ?」

「だ、ダメです……女の子ですから、ちょっと、その……いろいろ……いろいろあるんです!」

「いろいろ?」


真里が女の子と言えど、
誠も半分女の子みたいなものである。

女の子の気持ちは理解してたし、真里が泊まるようになってからは、生理について話すこともあった。

誠の家のトイレには、
真里用のナプキン入れもあるくらいだ。


「んーでも真里さんのプライベートスペースだしね。
良いと言うまで外で待ってるよ」


とはいえ、真里が嫌がっているなら無理強いはしない。
誠はにっこりと微笑むと、そう答えた。



※※※



(とりあえず、入れられるだけ布団の中に入れよう)


真里は押入れからマットを取り出すと、脇のチャックを降ろし、同人誌を詰め込んだ。


(10分の1も入らない。全然ダメだ……)


膨大な量の同人誌。
高校時代に購入し、ダンボールに詰め込んだ物もあった。

押入れの下の段は、既に同人誌で埋め尽くされている。
洗面台やキッチンの棚は調味料や洗剤でいっばいだ。


(同人誌だけじゃない……グッズもポスターもあるし、これを全部隠しきるなんて無理だよ。
ある程度、見せる物、隠す物で分けた方がいいな……。
グッズとかは、漫画研究部の思い出の品ということにして、過激なエロ本は……)


真里は高く聳(そび)えるBL本の山を眺める。
霊峰BL山(ざん)。数々の尊みを祭った神聖な山である。
これを隠すなど、手品師でもなければ無理な話だ。


(せめて収納する大きな棚があれば良いんだけど……大きな棚……あっそうだ!!)


真里は一旦同人誌を入れたマットを押入れにしまうと、
余分に入れてあったシーツを取り出した。


(棚がなければ……作れば良い……)


かなり不格好なものになるが、
真里は“同人誌”で棚を作ることを決めた。


壁の端に同人誌を積み上げ、
端を揃えてシーツを掛けて固定する。

そうして柱を二本作ったところで、
柱の間の床に同じ高さで残りの同人誌を並べていく。

最後に並べた同人誌の上にシーツを被せて、ズレ落ちないように固定し同人誌の棚の完成だ。

あとは中央のシーツの上にポットや同人グッズなどを並べていけば、本当の棚のように見えてくるものだ。


(これを、わずか20分で完成させました)


そう思い時計を見ると、既に40分以上は経過していた。


「ダメじゃん!」


真里はそう言って項垂(うなだ)れると、
すぐに誠を迎えに行った。



※※※



「おじゃましまーす」


真里に迎えられ入室する誠。
初めての真里の部屋ということで、内心ワクワクしていた。
そこに40分以上も待たされ、気分を害している様子はない。


「誠くん、外寒かったですよね?
今お茶入れますから座ってください」


真里は座布団に誠を座らせると、
急須にお茶を入れ、ポットからお湯を出した。


「少し変わった部屋だね。その棚?……はどうしたの?」

(ギク……)


さっそく、棚について指摘が入る。


「えっと、私大きな棚が欲しかったんですけど、高くて買えなかったので、古本を使って自作したんですよ」

「えぇっ、これ古本で出来てるんだ!」


真里は棚が本で出来ていることを説明した。

ただでさえ不格好な棚だ。
触れば、どっちみち本で出来てることは分かるだろう。
BL本であることがバレなければいいのだ。


「ホントだ……本で出来てるね。これ何の本なの?」

「なんの本かは確認してないので分かりません。
チリ紙交換所に行って、同じサイズの本を集めて来ただけなので……」

「なるほどね。でもこういうこと出来るってすごいよね。
真里さん、絵も上手いし、デザインもできるし、こっちの方の才能が抜きん出てるよね」

「いやいや……そこまでは……」


即席で作った棚をそこまで褒められると微妙な気分である。

もっと時間があれば、さらに完成度の高い棚に仕上げることも出来ただろうが、ここまで不格好だと、自分の作品として紹介するのが恥ずかしかった。


ギィーーッ…………


ユニットバスのドアが開く音がする。


「あれ? なんだろう? ドアが開いたよ?」

「あー立て付けが悪いので、よく勝手に開くんですよ。
家賃だけは安いので、しょうがないと思っています」

「そっかー」


キュウ……チョロチョロチョロ……


洗面台の蛇口から水が勝手に流れ出した。


「水が流れてるみたいだよ?」

「これも古い建物なので仕方ないですね……大家さんに言ったら、その分水道料金を安くしてくれまして、なんと半額にしてくれたんですよ」

「半額に!? すごい気前の良い、大家さんだね」

「ええ、だからこのことは他の人には言わないようにって口止めされました。あ、言っちゃダメですよ~誠くんだから教えたんですからね?」

「うんうん、大丈夫。わかってる」


そんなこんなで、急にテーブルの物が落ちたり、電気が消えたりなど欠陥住宅っぷりが露呈したものの、二人は特に気にせず過ごしたのであった。



※※※



「いただきまーす!」


この日、真里と誠は、スーパーで買い集めてきた材料で餃子ハンバーグを作って食べていた。

通常のハンバーグと違って、
ポン酢を掛けて食べるこのハンバーグは、
表面のカリカリっとした皮がなんとも香ばしく、

シャキシャキした白菜とニラの食感と、
ジューシーでプリプリっとした豚肉の合わせ技で、
なんとも多種多様な食味を口の中で展開してくれるのだ。


「うーん♡ おいしーい!
生姜とニンニクが効いてますねー」

「うん、おいしいね、食欲のない時でも、
これならいっぱい食べられそうだね」


そうして食事を終え、食器を洗い終えた二人は、
仲良く一緒にお風呂に入り、就寝の準備を始めたのであった。



ゴシゴシゴシゴシ………

真里が洗面台で歯を磨いている。
既に歯磨きを終えていた誠は、敷いた布団の上で横たわっていた。


(静かな場所だなー
真里さんが歯磨きしている音以外は何も聞こえないや)



………………………テ
………ワカ………テ



(んっ? なんだろう……? 何か声がしたような?)


誠は起き上がると、
キッチンで歯を磨く真里に確認した。


「真里さん、呼んだ?」

「ンンー? ヨンフェマフェンヨー ゴシゴシゴシゴシ………」


気のせいか、誠は部屋へ戻ると再び横になった。



………………レテ………



(ん? やっぱり何か聞こえる………押入れの方からだ)



押入れの前に立ち、ふすまを開ける。

すると………。


チューー! チューーー!!


「うわっ!!」


鼠だ。

布団がなくなった押入れの上段に鼠が二匹。
誠を見上げるように座っていたのだ。

誠は驚き、体勢を崩してしまう。

彼は左足を下げて踏ん張ろうとしたのだが、
後ろに置いてあったティッシュケースを踏んでしまい、さらに大きく仰け反ってしまった。

その際に真里の作った即席棚を掴んでしまう。
見る見るうちに棚を形作っていた柱は傾き、ついには崩れてしまった。


ドスン!! ドスン!!

「フェ!? ナンニョオト?」


真里は慌てて口をゆすぐと誠のいる部屋へと入った。

そこには倒れる誠と、彼の身体の上に散乱している大量のBL同人誌があった。


「ひょえぇぇ!! 色々ヤバイ! 誠くん! 大丈夫!?」



…………………クスクス
……………………………クスクスクス


どこからか女性の笑う声がした。
しかし今の二人は、それどころではないのであった。

Part.78 【 桑原 幽子 】




散乱するおびただしい数の同人誌。
スイッチが抜けて倒れたポット。
踏みつぶされたティッシュケース。

もちろん即席の棚は跡形もなく崩れている。

だが幸い、物が壊れたり誠が怪我をしたりなどの被害はなかった。

倒れたポットを元に戻し、
散らかった同人誌を片付ければ、復旧できる程度の被害である。


「ごめんね、棚を壊しちゃって……押入れの中に鼠が」


そこで誠は、散らかった本の表紙に、
見慣れたキャラクターが描かれてることに気がついた。

どれも男性キャラクター同士が、
裸で抱き合ったり、キスをしている表紙ばかりだ。

その中の一つを手に取り、開いて中を見てみる。

紛れもない男同士のエロを題材とした漫画だ。


「えっ?これって……」

「はわわわわ……」


起きてはならないことが起きてしまい、青ざめる真里。

そんな二人の様子を、
腹を抱えて笑っている女性の姿があった。

透き通った身体で宙に浮かび、白装束を身に付けている。

首には痛々しい縄の跡が残っており、
彼女がこの世の者でないことは明らかだった。


「あーーいい気味。ざまーみろ!
しばらく見ないと思ったら、こんなイケメンを連れてきて……ほんとに恨めしいったら、ありゃしないわ!」


彼女は、慌てる真里を睨みつけながら、そう言い放った。
だがその声は彼女には届いていない。


この幽霊の名前は、桑原(くわばら) 幽子(ゆうこ)という。

真里がこの部屋に引っ越してくる四年以上も前に、
ここで首を吊って死んだ自殺者だ。

自殺の原因は男女関係のもつれ。

当時付き合っていた男性が浮気し、
失意のうちに命を絶っていたのだ。

それからというもの、彼女の魂はこの部屋に縛られることになり、今日(こんにち)に至る。

いわゆる、地縛霊という存在だ。


「ちょっと珍しい漫画を集めて、オナニーばかりしてるモテないオタク女だったから気に入っていたのに。
その変態趣味がそいつにバレて別れちゃえば良いんだ!
アハハハハハハハハハハハハ!!!」


自殺の原因が恋愛問題だったこともあり、
彼女の嫉妬は深かった。

初めはドアを開けたり、水道の蛇口を捻ったりして怖がらせるつもりだったのだが、
あまりにも二人が鈍感すぎて、それらが全く効かなかったことと、美味しそうな餃子ハンバーグを目の前で食べられ、なおかつイチャイチャされたことで怒りが爆発してしまったのだ。


「ま、誠くん……それは、その……えっと……」


うろたえる真里を尻目に、
誠は辺りに散らばった同人誌をチェックしていった。

どれも真里のお気に入りで、
特に性描写の激しいものばかりであった。


「真里さん、これって……」

「あう……あうあぅ、あうあぅ……」


もはや言い逃れはできない。
チリ紙交換所で、こんな漫画がたまたま集まるはずもなく、嘘をついたのはバレバレだった。


「ぷぷーーー! くすくすくすくす……
あー面白い。この狼狽(うろた)えた顔。
ヘタなバラエティ番組より、よっぽど面白いわ。
こうなったら別れるのは必至ね。
貴女にはもっとランクの低い男がお似合いよ」


笑いながらも、冷たい目つきで二人を見据える幽子。

彼女は自らの心の内に溜まった怨念で、
霊障を引き起こすタイプの幽霊だった。

これまでも数々の霊障を引き起こし、
このアパートの住人達を怖がらせていたのだ。

それが、真里の部屋の上下両隣に誰も入居者がいない理由であった。


「この漫画……もしかして真里さんの?」

「うっ……」


誠が核心を突く。
この慌てふためく彼女の姿を見たら、
誰だって真里が所有者だと分かるだろう。

真里は考えた。一度嘘を付いてしまった以上、誤魔化すことはもうできない。誠がどんな反応をするか心配だったが、全てを打ち明けることにした。


「ごめんなさい……嘘ついてました。
この本、チリ紙交換所で集めたんじゃなくて、全部私のなんです……」

「やっぱり……」


誠は、同人誌と真里を交互に見ている。

よっぽど本の中身が気になるのか、こんな状況にも関わらず、彼はイラストと吹き出しに注目していた。

誠が手に持っている同人誌は、
真里のお気に入りのカルテト本で、
人気漫画〇〇教室のカールとテトが裸でお互いのちんちんをしゃぶり合っている表紙だった。

そこで誠の身体に変化を生じる。
それは太ももの間で何かが膨らんできている感覚であった。


(この感覚は……)


誠はこの感覚に身覚えがあった。
男だったら誰しも経験したことがある感覚……【勃起】だ。

今まで不能だった男性器が勃起を始め、誠は慌てた。


(なんでこんな時に?)


誠は正座して勃起した一物を太ももで挟み、
両ふくらはぎを左右に広げてお尻を床にペタンと付けた。

いわゆる女の子座りと呼ばれる座り方だ。

その間もむくむくと、誠の控えめなそれは膨張を続けていった。彼の身体はカールとテトのしゃぶり合いを見て、忍から受けたフェラチオの感覚を思い出してしまっていたのだ。

しかし記憶を消されている誠には、その明確な理由が分からなかった。


「あれ? このイケメン、
なんで急に座り方変えたんだろう?」


幽子は不審に思い、床に身体を沈ませた。

そのまま誠の座る床の下まで移動すると、
寝間着をすり抜け中を確認した。


「この人、勃起してる!! てか、ちっちゃ!!」


幽子は誠の視線の先を確認した。
そこにあったのは、過激なBL本。
しかもお互いのモノをカワイイ男の娘同士で舐め合うというハードなものだ。

男でこういったものに興奮する人種は一つしかない。


「この人、もしかしてホモ?」


この座り方と言い、女装が似合いそうな容姿と言い、このイケメンがいわゆるそっち系の男子である可能性は極めて高いと幽子は感じた。

ではなぜ男は真里と付き合っているのだろうか?

付き合っていると自分が勘違いしてるだけで、
実はただの友達同士ということだろうか?

幽子の怨念のレベルが一段下がる。

勘違いであれば、
真里に迷惑をかけてしまったなと少し反省した。


「私、中学の頃からこういうのが好きで……
実は前々から、誠くんが男に犯される姿を妄想してました。エッチの時だって、可愛いマコちゃんを男になってメチャクチャに犯してやりたいって思っていたんです……」


真里が次々とカミングアウトをする。
幽子はそれを聞いて、微妙な気持ちになってしまった。


「エッチしていたということは、やはり彼氏か。
この男のホモっぽいところと言い、カミングアウトの内容と言い、素直に嫉妬できないわね……」


微妙な顔をする幽子。
誠がホモをカモフラージュするために、
真里を利用しているのでは?とも考え始めていた。


「そうなんだ。
それならそう言ってくれたら良かったのに……。
私は、真里さんがこういうの好きでも構わないよ。

だって真里さんは、私が男の人が好きだと言っても、
ずっと好きでいてくれたじゃない?
私も真里さんが何を好きになっても好きだよ」

「本当……? 誠くんうれしい!♡」


真里は捨て身の覚悟で打ち明けた趣味を受け入れてもらえて、嬉しさのあまり誠に抱き付いた。


「はぁ? なんで!? なんでよっ!?
真里はホモって知ってて付き合ったの?
こいつもホモなのに真里を好きになったの?
ぜんっぜん意味分かんない……」


幽子の理解を超える発言の数々。

唖然として二人を眺める幽子は、
さらに不可思議な光景を目の当たりにする。


「誠くん……好きっ! ちゅぅ♡」


真里が誠を布団に押し倒す。
大切な同人誌が散らばってることなど、どうでもいい様子だ。
誠の股間に真里の太ももが当たる。


(んっ!? なんか当たった?)


普段と違う感触。何やら硬い物が当たったような?
真里は気になり、接触部分を確認した。

誠の股間が少し盛り上がっている。

ハッとして、誠と顔を見合わせると、
彼はほんのりと頬を染めて、恥ずかしそうにコクンと頷いた。


「うそっ!? 誠くん、ホントなの!?」


真里はガバっと起き上がると、
誠の寝間着に手を添えて、下着ごと引き下ろした。


「 こ、これはぁ!!」


そこには可愛らしくも
ピコンと挨拶をする誠のペニスがあった。



※※※



「誠くん……お、おちんちんが!」


真里は両手を口に当て、目を見開き驚いている。
まるで長年探し求めていた財宝に巡り会えたかのような反応だ。

そしてしばらくすると、
顔を真っ赤にさせ泣き出してしまった。


「うっ……ひっぐ……えっぐ……やっと……勃ったんだね……」

「真里さん……」


誠は起き上がり真里を抱きしめた。


「グスン……やっと……やっと勃った……嬉しいよ……うぅっうぅっ……」


二人が初体験を済ませてから、
既に二か月以上が経過しようとしていた。

その間、真里は毎日のように、
誠のふにゃふにゃペニスをしゃぶり続けていた。

その他にも、乳首を刺激したり、貝合わせをしたり、
様々な方法で勃起させようとしてきたのだが、
一度も成功したことはなかった。


「今まで苦労駆けさせてごめんね。
それとすごく言いにくいことなんだけど、
真里さんのエッチな本を見て勃起しちゃったみたいなんだ……
今まで頑張ってくれてたのに、
こんなことで勃起しちゃってごめん……」

「ううん……いいよ。
それはそれで、なんか良いかも……♡」


真顔で二人の会話を聞く幽子。

時間が静止したように固まっている。
機能が停止したロボットのようでもある。


「なんなの、この感動のひとシーンみたいな展開。
長らく不能だった彼が、ホモ漫画を見て勃起して、
今までの努力が無駄だったにも関わらず、
彼女はそっちの方が好みだったってわけね。
映画化決定だわ。全世界が感動、
ミリオンセラーも夢じゃない……って……んなわけあるかい!」


幽子がツッコミを入れている間にも、
真里は誠の寝間着を完全に脱がせてしまっていた。


「うふふ♡ さぁ、マコちゃん、今日もさっそくシヨ♡」

「うん……♡」


真里の誘いに女の子のように頷く誠。
彼は舐めやすいように足を広げていた。
真里はさっそく顔を降ろし、勃起した誠のペニスと対面する。


「はぁ♡ はぁ♡
マコちゃんのおちんちん、おっきい……♡」


実際そこまで大きくはない。
むしろ小さい。すごく小さい。

あくまで今までの誠に比べれば大きいという意味である。

真里は舌を出し、
アイスクリームを舐めるようにそれをペロリと舐め上げた。

が、しかし………


「ペロ……ペロ……ペロ……んっ……?」


真里が舐めれば舐めるほど、誠のペニスの硬度は下がっていき、元のふにゃちんへと戻ってしまった。


(ガーーーーン!!)


さすがの真里もこれにはショックを受ける。


「うぅ……これは気の毒かも……」


その様子を見て、幽子は同情的な眼差しを向ける。
もはや真里のことを羨ましいなどと、全く思っていない様子だ。


「ご、ごめん、真里さん」


誠はすぐに謝罪した。

誠にはちんちんの硬さを維持する力はなく、
仕方がないといえば、仕方のないことなのだが……


「いいえ……別に構いません。
誠くん、もう一度私の同人誌を読んでもらえますか?」


そう言うと真里は起き上がり、
先ほど誠が持っていた同人誌を手渡した。


「これを読んでください。
そして読んでいる間は、私にしゃぶられているのではなく、
その漫画のキャラクターにしゃぶられていると思ってください」


勃起したとは言え、
真里はすぐに誠が膣内射精できるとは考えていなかった。

いつかはそこまでできるようにしたいが、
そこに行き着くまでには、いくつか段階を踏む必要があると考えていた。

今は自分の存在を消し、誠を勃起させるに至った同人誌のみで、射精させることを第一の目標とした。

勃起に慣れさせて、
いずれは自分とのセックスでイケるようにする。

いわば、同人誌は自転車の運転が苦手な子のための、
補助輪のような存在だと考えていた。


「私に構うことはありません。
せっかく勃起できるようになったのですから、
このチャンスを逃さず、射精できるようにしましょう!」

「うん……わかった。私も頑張って射精してみせるね」


そうして誠は同人誌を読み始めた。

誠は漫画をあまり読まないタイプであったが
〇〇教室は映画化したほどの有名な漫画で、
大体の内容は把握できていた。


「これって、〇〇教室だよね?」

「そうです、〇〇教室の18禁スピンオフ作品です。
誠くんは、テトに自分を重ね合わせてください。
カールが誠くんのおちんちんとお尻を責めてくれるので、
テトになりきって感じてくださいね」

「うん、やってみる」


同人誌の内容は、
テトとカールが喧嘩をするところから始まる。

二人は内心は両想いであったのだが、
男同士ということでなかなか素直になれないでいた。

そこに怪人が現れ、テトを攫っていってしまう。

女の子のように可愛いテトは、
女装させられ怪人の慰め物にされる毎日を過ごす。

そこにカールと仲間たちが現れ、怪人を追い払うのだが、
既に発情の呪いを掛けられていたテトは、
快感に悶え苦しむようになっていた。

この呪いを解くためには、
心から愛している人と結ばれる必要がある。

初めは〇〇教室のヒロイン役のキャラクターが選ばれたのだが、テトの呪いは解けない。
ショックを受けたヒロインは、テトに冷たい言葉を投げ捨てて立ち去ってしまった。

落ち込むテトを見兼ねたカールは、
そんな身体じゃこの先何の役にも立たないだろうから、
性奴隷として扱ってやるよと言ってレイプしてしまう。

だがカールの本心は、
そんなテトを放っておけないというものであった。
素直になれないカールは、
自分を誤魔化すためにそう言ったのだ。

初めはカールのそんな態度に、
ショックを受けていたテトであったが、
身体を重ねるうちに、カールの本心を感じ取るようになる。

カールはテトの身体を好き放題にして弄(もてあそ)ぶのではなく、
恋人を労わる優しい触り方をしていたのだ。

そんなカールの心に気づき、
テトは自分の想いを打ち明けることにする。

それに応えるようにカールも想いを告げ、
二人は絶頂を迎える。

テトにかかっていた呪いは無事解け、
二人は幸せなキスをして終わり、といった内容だ。


(薄い本だけど、これだけの内容が詰まっている。
私のお気に入りの同人誌ベスト100に入るほどのカルテト本……この本ならきっと誠くんを射精まで導いてくれるはず)


真里は誠のペニスを見つめながら、
勃起するのを今か今かと待ち受けていた。



Part.79 【 BL同人誌の使い方◇◆ 】

寂れた町の古びたアパートの一室。

誠は全裸で仰向けになり、
膝を立てて両側に広げながらBL本を読んでいた。
脚の間にはうつ伏せになった真里がいる。

彼女は彼のペニスを真剣な眼差しで見つめながら、
勃起するその時を静かに待ち望んでいた。

そして少し離れたところには幽霊の姿。
二人の行為をなんとも引いた目で見守っていた。


(おいおい……なんか始めちゃったよ……。
彼氏にBL本読ませて勃起したちんぽを舐めるだなんて、
真里がここまでクレイジーな女だとは思わなかったよ……)


幽子は真里の提案にドン引きしていた。
真里も大概であったが、それを受けてしまうホモの彼氏にも冷ややかな目を向けていた。



アパートの周辺は車の交通量が少なく、
誠が同人誌を捲(めく)る音しか聞こえない。

その音を聞き、漫画の内容を思い浮かべる真里。

重度の腐女子である彼女には、
お気に入りの同人誌のどのページにどんな絵が描かれているか、正確に想起できる特殊能力が備わっていた。

誠が現在読んでいる8ページ目は、
ちょうどヒロインとテトがセックスしている場面である。

ヒロインが一生懸命テトの身体を慰めるのだが、気持ちよくさせることができず、心を折られてしまうシーンだ。


(まるで、私と誠くんみたい……
女の私は誠くんを勃起させることができなかったのに、
BL本は、いとも簡単に勃起させてしまった。
この漫画のヒロインは心を折られてしまったけど、
私は絶対に諦めない。
誠くんと赤ちゃんを作って幸せな家庭を築くんだ!)


そんな真里を見て、幽子は意外そうな顔をする。


(そうか、そういう理由があったんだ。
この子、やってることはおかしいけど、考えてることは真面目なんだな。彼も本気で真里のこと好きみたいだし、変な奴ら同士、気が合うのかもね)


幽霊の幽子は人の心を読むことができる。
常時聞こえている訳ではないが、
意識すれば本音を探ることは可能だ。

しかし彼女の活動範囲は上下両隣の部屋までに限られ、
真里が外にいる間に起きた出来事については把握できない。

だが、これまでの会話や心の声で、二人の関係がどんなものなのか大体把握できるようになってきていた。


(うーむ、この二人は本当に恨みにくいな……
訳分からないし、可哀そうな部分もあるし、
変なところ真剣だから、見ていて面白いしね)


男はBL同人誌を読みふけり、
女はペニスが勃起する瞬間をじっと待つ。

こんなセックスを真剣に取り組むカップルはそうはいない。

二人を別れさせるよりも、
その成り行きを見守る方が面白いと幽子は感じていた。



むくむく……むくむくむく……

そうこうしているうちに誠のペニスが勃起力を取り戻す。

彼が現在読んでいるのは12ページ目。
テトがカールに押し倒され、
性奴隷として扱ってやると宣言されたシーンだ。

壁ドンならぬ床ドン状態の二人であるが、
テトに自分を重ね合わせた誠は、カールに組伏せられていると思い、勃起してしまっていた。



ページはさらに捲られ16ページ目……

カールはテトの両手首を紐で縛りつけていた。
同じように両足首も縛ると、左右に開かせ固定した。

ヒロインには一切勃起しなかったテトのちんちんは、
カールに責められると分かっただけで勃起していた。

カールは冷笑を浮かべると、
焦らすように息を吹きかけ、テトのちんちんに指先を這わせていった。


(3……2……1……今だ!)


真里は心の中で数を数え、
誠のペニスにフッと息を吹きかけ指先を這わせた。


「あぅ!?……うぅぅ……んっ♡」


読むタイミングとほぼ同時に息を吹き掛けられ誠は驚く。

真里は、誠のこれまでのページを捲る速さから、
本を読むスピードを計測し、ちょうどカールがテトのペニスに息を吹き掛けるタイミングで、息を吹き掛けたのだ。

これにより、誠はさらに同人誌の世界に没頭しやすくなる。
ペニスに感じる指先の感触。実際は真里が触っているのだが、カールが触っているものと容易に誤認することができた。



18ページ目……

カールはテトのペニスの先端から透明な我慢汁が出てることに気づき、それを指先で掬う。
そして勃起して敏感になったテトの両乳首に練り込んだ。


現実では真里がタイミングを見計らっている。

幸運なことに誠のペニスの先端からは、
テトと同じように我慢汁が出ていた。
真里はそれを掬うと、誠の両乳首へと練り込んだ。


「はぁっ……♡ んっ……ふぅ♡ 気持ちいぃ……カール♡」


誠がカールの名を呼ぶ。
すっかりテトに成り切っているようだ。

だが、テトと違って誠にはおっぱいがある。
マンガのテト以上に、誠には大きな快感が与えられていた。


(ホント、女みたいな声で喘ぐな、この人。
おっぱいもあるみたいだし、昔ニューハーフだったのかな?)


誠の身体は、幽子が生前付き合っていた男性とは全く異なる形をしていた。

華奢な身体つきに白い肌、
女性のようなムチムチ感があり、ちんちんも小さい。
体毛もなく、おまけに小ぶりだが形の良いおっぱいまで付いている。

男なのに女という不思議な身体つきであったが、
嫌悪感を抱くことはなく、むしろ清潔で美しいとさえ思った。



20ページ目……

カールは人差し指を使い、
テトの乳輪から勃起した乳首の先端へと線を引く。

力を伴わないフェザータッチ。まるで羽毛でさわさわと撫でるように繊細な刺激を与えていく。
それだけで、テトの起立したペニスと前立腺は、ピクピクと反応してしまった。

真里も同じようにフェザータッチを始める。


「んっ……くっふ………♡」


あまりにも繊細な快感により、
誠は真里の指先から逃げるように身体を捩(よじ)らせていた。

このような繊細な触り方は、男性よりも女性の方が得意なことが多く、真里の細くてしなやかな指は、まさに適任といった感じであった。



22ページ目……

いよいよ、カールがテトのペニスを責める。
舌先で亀頭の付け根の部分を優しく上下に撫で上げながら、唾液で濡らした指をアナルに添えて愛撫する。

同時にここでカールのテトへの想いが語られることになる。

ヒロインの力を持ってしても解かれることのなかった発情の呪い。このまま永遠に呪いが解けないのであれば、いっその事二人で失踪しようかとカールは考えていた。

テトのこんな姿を自分以外に晒したくない。
テトには恨まれるかもしれないが、
そうして彼のことを一生守り続けようとカールは誓うのであった。


(誠くんは勃起不全が治りかけている。
けど、もしここでイカせることができなかったら、また元の状態に戻ってしまうかもしれない。
ようやく掴んだ射精への足掛かり、無駄にはできない。
今度こそ絶対にイカせてみせる!)


真里は初めて誠と肌を合わせた時のことを思い出していた。

急激な誠の性自認の変化。自分とのキスで嘔吐(えず)きそうになる姿は、見ていて辛いものがあった。

だが女性を受け付けない身体になりながらも、誠は自分を彼女と認めてくれた。

何度も何度もセックスを繰り返し、キスにも抱擁にもフェラチオにも慣れ、ようやくここまで来た。

夢見てきた誠との結婚生活。
二人の子供と幸せに過ごせる日々。

それは勃起した誠のおちんちんを中に挿れ、
射精してもらうことで叶う。

真里は気合を入れると、
カールと同じように亀頭の付け根部分を上下に舐め始めた。


レロレロ……ピチャッ……ピチャッ……

「んっ………んんっ♡」


反応は上々だ。
間髪入れず、指に唾液を付けてアナルを愛撫する。


「あぁぁぁっ!! いいぃっ!!!♡」

(えっ!!?)


誠の反応に真里は驚く。誠はこれまで聞いたことがないほど、激しく声を上げていた。ペニスはさらに勢いを増し、ギンギンに硬くなってる。


(誠くん……まさか、お尻が弱点なの……?)


真里はこれまで何度も誠のお尻を犯したいと思っていた。
しかしアナルセックスは一般的な性行為から大きく外れてしまうため、彼女は自分の希望を伝えられずにいた。

今回はたまたま漫画にアナルを責める描写があり、仕方なくといった流れであったが、これにより真里は誠の弱点を見つけることができたのだ。

そしてその彼女の反応であるが……

(うへへへへへへ!! マジッ!? マジッ!? マジッ!?
誠くん、お尻が弱点なの!? ウハーーーーー!!♡
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!
アァーーーヤバイ!! チンコ欲しい!!
誠くんのアナルおまんこにおちんぽじゅぼじゅぼして喘がしたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!)

…………フィーバーなのであった。


だが真里はすぐに冷静になった。

今は誠を射精させることが先決だ。
この最後になるかもしれないチャンスを無駄にはできない。

真里は改めて気持ちを引き締めることにした。



24ページ目……

ゆっくりとアナルに指を沈みこませ、
テトの前立腺を撫でながら、ペニスを口に含むカール。

舌の裏を使って、最愛の棒に愛撫を加えていく。
ペニスに負担を与えない優しい舐め方。
これによりテトはカールの本当の想いに気づくことになる。

たまたまであるが、この舐め方は、忍の糸状乳頭(しじょうにゅうとう)の周りに膜を張る方法に似ていた。
舌の裏で舐めれば、舌のザラザラ部分がペニスに負担をかけることはない。あとは技術力の問題である。


これまで真里は様々な舐め方を実践してきたが、
忍の技術に比べて、真里のそれは拙いものであった。

自分の身体でどうすると気持ち良いか感じれる忍に対して、
真里は誠の反応を見て判断するしかない。

それに真里は誠しか知らないが、
忍は何人もの男性と経験してきている。

二人の技量は、まさに月とスッポンであった。

だが忍と違い、真里と誠はお互いに愛し合っている。

同人誌の中でも、カールのテトへの愛の深さが表現されており、
そのことにかけては真里はいっさい忍に負けていなかった。



真里は改めて誠のアナルに注目する。

色素沈着していないその穴は、まるで誰かに手入れをされているかのように清潔で、女性の性器のように縦割れしていた。

普段から誠以外のアナルを見慣れている訳でもない真里が、その縦割れの形に疑問を持つことはなかった。

真里はなるべく誠の身体に負担を与えないよう、唾液を指に絡めると、アナルへの挿入を開始した。

ズブッ…………

「んっ♡」

誠のアナルは真里の指をすんなりと受け入れた。
指の第一間接、第二間接を抜け、根本まですっぽりと。
忍の巨根に慣れてしまった菊門は、どこか物足りなさを感じているようだった。


「はぁ……♡ はぅ……♡ あぅ……♡」


指を入れられたことにより、誠の吐息が熱を帯びる。
ここまでは良い調子だ。

だが油断してはならない。
真里はこれから鬼門とも言えるペニスに挑むのだ。

先ほどの萎えたペニスが思い浮かぶ。

今はギンギンに勃起しているが、少しでも舐め方を間違えれば、また元のふにゃちんに戻ってしまうかもしれない。

真里は緊張のためか、
通常よりも速いペースで呼吸をしていた。


「はぁ…………はぁ…………あむっ…………れろぉ…………」


歯が誠の性器に触れないよう注意しながら、
舌の裏筋を使って刺激していく。

幸運なことに、テトと違って誠のペニスは小さく
真里の小さな舌でも十分包み込めるほどの大きさだった。

真里は目を閉じて、
前立腺の位置をイメージすると、肉壁を指先で撫で始めた。


「あぁ……そこぉ……♡ 気持ち……良いところ……♡」


誠の身体にメスの快感が生じ始める。

宙に浮かぶようなふんわりとした感覚。
前立腺から生み出された快感により、誠は背中を反らせて身悶えした。


(あ……なに……これ……なんだかお尻の奥が……
触れられているところが冷たい……)


実際に前立腺付近の温度が下がっているわけではない。
ツーンとした刺激が前立腺を中心に広がり、
それが心地よさに変わっているのだ。

これはメスイキの前兆。
前立腺を犯されることによって起きる男の娘特有の生理現象であった。

ペニスの先端からは、多くの愛液が生み出され、真里の口内を満たし始めている。

摩擦力が減った真里の舌は、
効果的に亀頭を刺激できるようになっていた。

前立腺のツーンとした冷たい感覚が、亀頭からも発生し始める。


(あぁっ…はぁ♡ 気持ちいぃ……お尻もおちんちんも……ひんやりして……なんかどこかに飛んでいきそうな感じ……)


ビクビク……ビクビクビク………
真里の口内で、誠のペニスがかつてない反応を始める。


(この反応って、もしかして……!!)


真里の心臓の鼓動が大きくなる。
彼女は焦る気持ちを抑え、冷静にフェラチオを継続した。

速過ぎず、遅過ぎず、強過ぎず、弱過ぎず

誠のペニスを確実に絶頂に導くためには、
今のペースを続けることだ。

調子に乗って速度を上げたり、舐める力を強めるのは、
天国への階段を登り続ける誠を阻害することになる。

階段を踏み外し、落ちてしまわぬよう、
真里は着実に快感を与え続けることにした。


チュプ……レロ……レロ……レロ……レロ……レロ……レロ……

「はぁぁあんっ♡ はぁっすごいっ♡ イキそう……♡」


ゆっくりと……実にゆっくりと……誠は絶頂の階段を登っていく。

鮫島が与えるような激しく爆発するような快感ではなく、
じわじわとじわじわと蓄積されていくタイプの快感だ。


「ふっ……ふっ……ふぅぅんんっ♡ もうダメ……もうダメぇ♡」


アナルの伸縮が始まり、真里の指をきつく締めあげる。
これぞ、絶頂寸前のアナルの動きだ……。


(イッて、誠くん……私の舌と指で……射精して………)


真里は祈った。

教会の十字架の前で、修道女が神に祈るように、
跪(ひざまつ)きペニスを口に含み、
入念にフェラチオをしながら祈り続けた。


(愛してます、誠くん。この世の誰もよりも………
だから全身全霊の愛を込めて、あなたにフェラチオをします。
私の舌で、イってください……)


教会のシャンデリアが眩(まばゆ)い光を放つ。
祈る真里の身体を光明が優しく包み込み、
愛の女神アフロディーテの祝福を与える。


「んんっ! んんんっ!!
イクっ♡ イクっ♡ あっ、あっ……!♡
イっちゃう……イっちゃう♡ イっちゃう!!
イ……………ちゃぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!♡♡♡」


ビク………………ビクビクっ!!
ビクビクビクビクビクビクビクビクビクビクビク!!!!


誠の身体が大きく跳ね、激しく痙攣する。
それと同時に………………


びゅうっ! びゅっ!! びゅっ!!


口に、誠の精子が噴き出される。
真里は大きく目を見開いた。


(やったっ!! 出たっ!!!)


「あぁっ♡ あぁぁっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」


余程、強く絶頂してしまったのか、
誠は痙攣し嬌声を上げていた。


(誠くん、こんなに激しく……私の口でイッてくれたんだ……)


真里はペニスから口を離し、アナルから指を引き抜くと、
身体を起こして、誠にキスをした。


ちゅ……♡


その後、真里は何も言わず、彼の息が落ち着くのを待った。

口には、まだ精液が残っている。
精液は苦いものとネットに書いてあったが、
誠のそれは無味無臭であった。

飲むか、一旦吐いて膣に入れるか、どちらにするか迷ったが、
子宮に入れるには処女膜を破らなければならないということを思い出し、飲み込むことを決めた。


ゴクン………

誠の精液が喉を通る。
サラサラとした液体で、特に飲みにくいとは感じなかった。

喉から先の感覚は分からなかったが、誠の精液がお腹の中にあると考えると、幸せで身体が温かくなる気がした。



※※※



「誠くん、ついにイクことができましたね」

「う……うん……♡」


真里の言葉に誠は恥ずかしそうに頷く。
その反応は控えめで可愛いらしいものであった。


「さっきの同人誌、気に入って貰えましたか?」

「うん……♡ 真里さんが漫画と同じタイミングで触って来るからびっくりしちゃった」

「ふふふ……私のお気に入りの本ですから、当然ですよ♡」


カルテト本は26ページまで読み終えていたが、
実はここまでで全体の半分ほどである。

この後、カールとテトはお互いの性器を舐め合ったり、カールのものをテトのお尻に差し込むシーンになるのだが、真里には挿れるものがないので、実際に対応できるのはここまでと言える。


「でも、私だけ気持ち良くしてもらって悪いから、真里さんにも」

「ううん、誠くんの気持ちは嬉しいですけど、また元に戻ると困るので、しばらくは私に攻めをやらせてください」

「えっ、でも……」

「せっかく上手くイケたんです。
今は自分が気持ちよくなることだけを考えてください。
誠くんが私を攻めるのは、安定して勃起できるようになってからでお願いします。そしてその時は……中に挿れてくださいね♡」


本当は真里も誠に攻めて欲しかった。
撫でられたり舐められたり突っ込んでもらいたかった。

だがいつ誠が勃起不全に戻るか分からず、
そんな不安な状態で攻めてもらう気にはなれなかった。

どっちにしても不安な状態では気持ち良くなれない。
まずは今回と同じシチュエーションで何度もエッチして、完全に勃起と射精に慣らしてから攻めてもらおう。

それが真里の考えであった。

二人はそれから次はどの同人誌でするかなど、簡単におしゃべりしてから眠りについた。

これ以降、真里と誠はBL同人誌を使ってセックスを繰り返すことになる。

誠は同人誌無しで勃起をすることは難しかったが、
ようやく安定して勃起と射精ができるようになり、
あとは膣内での射精を果たすのみとなったのであった。



※※※



(ホント、面白い二人だな、どっちも変態だけど。
私もこういう人達と出会えてたら、自殺しなかったかもな。
とりあえず邪魔するのはやめとくか、なんか気の毒だし)


真里の部屋の地縛霊。桑原幽子。
嫉妬に狂う怨霊であった彼女は、大分落ち着きを取り戻そうとしていた。

しかし自分を裏切った男性への恨みは消えず、
彼女が成仏を迎えるのは、まだまだ先の話となるのであった。

Part.80 【 商談 】

十月、○❌メッセでは、サークルLILYの秋・冬の新作アイテムが展示販売されていた。

男性モデルは引き続き誠が務め、
女性モデルには、恭子ではなく、初めて真里が起用されていた。

これは前回、メンズアイテムを出展したことでサークルの知名度が上がり、来客が著しく増えたためだ。

接客以外にも多くの時間を費やさなければならなくなった恭子は、モデル役を真里に任せ、自らは裏方に徹することにしていた。

時刻は午後に差し掛かり、一人の女性客が現れる。


「ふーん、なかなか良い店じゃないの」


高級そうなアクセサリーをじゃらじゃらと身につけた派手な服装の女性。年齢は三十後半から四十代くらいであろうか?
黒いスーツを着た男性二人従え、ブース内に立ち寄っていた。


「いらっしゃいませ、何かお探しでしょうか?」


どう見ても一般人とは思えない様相の女性に、
真里では荷が重いと感じた誠は、駆け寄るように応対を始めた。


「あらーあなたカッコいいわネ。
噂を聞いて来たんだけど、LILYの展示ブースってここかしら?」

「はい、さようでございます」

「そう、色々と見せて欲しいんだけど、お願いできるかしら?」

「承知しました。どういったものをお探しでしょうか?」


誠に案内され奥へと入る女性。
もとい男性である小早川であるが、
彼はついに学生生活を送っている誠に接触を試みてきた。

彼の目的は、普段の誠と接点を持つことだった。

いくらニューハーフに仕立てたところで
それまで接点のなかった誠が、
急に風俗で働き始めたら不自然である。

ごく自然に働かせるためにも、
誰もが納得できる物語を作る必要があったのだ。


これまでも小早川は、
ノンケの美男子にそれぞれ自然な理由を付けさせていた。

敢えて女装した姿で知人と遭遇させたり、
レンタルショップでホモAVを借りているところを目撃させたりと、方法は様々であるが、そうやって男に興味があると周囲に思わせるようにしていたのだ。

普段はこういった仕事を黒服に任せていた小早川であったが、今回は誠が相手ということで、本人が直々に出向いてきたというわけだ。


「噂以上のクオリティね、気に入ったワ♡ 大量購入は受け付けているのかしら?」

「数にもよりますが、どれほど必要になりますか?」

「アナタが着ている服を、ざっと500着ってところかしら?」

「500着ですか!?  か、かしこまりました……ただいま上の者に確認してまいりますので、少々お待ちください」


誠はそう言い、小早川を椅子に座らせると、
奥の控え室へと入っていった。


※※※


「キヨちゃん! キヨちゃん! 大変だよ!」

「どうしたの? マコちゃん」


奥で来場者の分析していた恭子が、キョトンとした顔で応える。


「それが、今来たお客さんなんだけど……
キヨちゃんの服を気に入って500着注文したいって言ってるの」

「500着!? ……冷やかしとかじゃないの?」

「それが高級そうなアクセサリーとか付けてて、いかにもお金持ちって感じなんだよね。冷やかしとかではないと思うんだけど……」

「そう分かったわ。私も行ってみる。直接話してみて判断するわ」


LILYは大学の服飾サークルではあったものの、素材はそれなりのものを使っていた。

イタリアのファッションデザイナーである母親の仕入れルートを借りて、買い集めたものであるが、
職人を呼んで指導を受けるためのアドバイザー費用や、
材料費、人件費、広告費、
ブース使用料なども価格に転嫁していたため、
展示されている服は、どんなに安く見積もっても一着一万円以上はする代物であった。

もし本当に500着注文したなら、その費用は500万から1,000万円以上になってしまう。

これだけの大口取引であれば、やはりリーダーである恭子が出向かなければならない。
そもそも本当にそれだけの取引ができる相手なのか、見極めねばならないのだ。


「いらっしゃいませお客様。
初めまして、LILYデザイナーの恭子と申します」

「あらーあなたがそうなの?
アタシは小早川グループROSEの取締役、小早川憲子ヨ」

「この度は大変多くのご注文をいただき、誠にありがとうございます。私のデザインを気に入っていただけて光栄です」

「ホホホ、そこまで畏まらなくてもいいわヨ。アタシの経営する海外のダンスホールで踊り子達が着る服を探していたんだけど、ちょうどアタシのイメージにピッタリだったの」


そう言うと、小早川は恭子に名刺を差し出した。
慌てて恭子も名刺を取り出し小早川に手渡す。


「あの、つかぬことをお伺いしますが、芸能プロダクション○○のスポンサーになられているROSE興業の小早川様でしょうか……?」

「あら詳しいのネー。
そうヨ、そのROSE興業の小早川で間違いないワ」


それを聞き、恭子は度肝を抜かれてしまった。
芸能プロダクション○○と言えば、数々のアイドルを輩出し、世界に名を轟かせている一流企業である。

そしてROSE興業は芸能以外にも、薬品、観光、飲食、製造など、様々な分野で活躍するモンスター企業であった。

その取締役である小早川が直々に出向いて来たなら大事件。
恭子はこの急な出来事に胸をドキドキさせていた。


「驚かせちゃってごめんなさいネ。アタシ休みの日になると、こうしてプラプラと出歩くのが趣味なのヨ。ところで注文の方だけど、引き受けてもらえるのかしら?」

「は、はい! それについてなのですが……
このような大量の注文はこれまで受けたことがないため、
一度お時間をいただき、対応可能かどうか検討させていただきたかったのですが、よろしいでしょうか?」

「別に良いわヨ。金額が大きいからといって、
よく考えもせず二つ返事で受けるより、ずっと好感が持てるワ。
決まったら、その名刺の番号に電話ちょうだい。アタシの方から何かある時は、この名刺の番号に連絡すれば良いかしら?」

「はい、そちらの方にお願いいたします」


そうして小早川は話を終えると、
黒服を連れ、別の場所へと買い物に出掛けてしまった。



※※※



「すっごーい、キョウちゃん!
大手プロダクションの社長さんに気に入られたんだって!?」


誠から話を聞き、直美がピョンピョン跳ねながら恭子に言う。


「大手プロダクション以上よ……
ROSE興業はこの国のコングロマリット(複合企業)。
様々な分野で活躍する、まさにモンスター企業ともいえる会社よ」

「数年前にできたばかりの会社だけど、すごい勢いでM&Aを成功させて、今の地位に登り詰めたんだよね」

「私もニュースで見ました! 最近も○○自動車の事業買収に成功したってありましたし、その会社の社長さんがわざわざ来てくれるなんて、すごいことですよね!」


三人の話を聞き、制止する直美。


「あ……あたし、わかんな~~い……」


直美は話に付いていけず、
頭をクネクネさせて、困惑の表情を浮かべていた。


「よーするに、すごいってことよ」

「そうなんだ!」


恭子の説明に大助かりの直美。
全てを理解したようだ。すごい!


「問題は私達で、この500着もの服に対応できるかって話よ」

「ハンドメイドだから、サークルのメンバーだけではまず無理だろうね」

「でもせっかくのチャンス、ここで断るのは勿体ないですよね」


真里の意見に頷く恭子。
ROSE興業で経営するイベントホールで服を使用されるということは、この業界で名を売るビッグチャンスである。

相当無理してでも引き受けたい仕事だ。

しかし失敗してしまえば、取り返しのつかないことになる。
もしそんなことにでもなれば、恭子は大学を卒業する前に、この業界の信頼を失ってしまうのだ。


「とりあえず……ママに相談してみるわ。ママの生産ルートを借りることができれば、もしかしたらできるかもしれない」


恭子はそう言うと、メンバーに片付けの指示を出し、一足早く自宅へ帰ることにした。


その後、恭子は上手く母親と折り合いをつけ、生産ルートを貸してもらえることになる。しかしマージンが高過ぎて、赤字にはならないが黒字にもならないといった内容であった。

そうして小早川の秘書に連絡を取り、依頼を引き受けると伝えた。後日、小早川から恭子の電話に連絡が入る。


「こんにちは、小早川ヨ。お久し振りネ」

「お電話ありがとうございます。LILYの恭子です」

「この間は仕事引き受けてくれてありがとネ。それでなんだけど、貴女の過去の作品で余っているものがあれば、いくつか見せて貰いたかったんだけどよろしいかしら?」

「はい! もちろんです。すぐにお持ちいたします」

「それは良かったワー♡  じゃあこの前のモデル役の男の子と、可能なら撮影できる子も用意して欲しいんだけどお願いできるかしら?」

「わかりました。そちらも確認し再度ご連絡いたします。直接私が行って商品の説明をさせていただきたかったのですが、よろしいでしょうか?」

「貴女は来なくても良いワ。大量の注文で他にやることいっぱいあるでしょ? 確実に納品してもらいたいから、最小限のメンバーだけを寄越してちょうだい」

「かしこまりました。ありがとうございます」


大口のお客様ということで、恭子は直接会って商品を説明したかった。しかし小早川の言う通り、慣れない海外の職人との打ち合わせで忙しかったことも事実。

恭子は誠と真里に、それぞれモデル役と撮影役を依頼し、
当日は誠と真里、運転手役の部員一名で事務所へと向かうことになるのであった。



※※※



某日、誠、真里、運転手の三名は、
小早川の事務所を訪れていた。

そこで誠と真里だけが奥に通され、
運転手役の部員は、別の部屋で眠らされた。

応接室に通された誠はさっそく恭子に教わった通り、服の説明に入った。さすが頭が良いだけあり、完璧な説明である。

小早川は誠の説明に笑顔で反応していた。
いつもの淫乱な姿とは違った、彼の素朴な姿に、心ときめいていたと言っても良い。そうして一通り説明を聞き終えると、小早川はとんでもないお願いを始めた。


「メンズ服については大体分かったワ。今度はレディースについてを教えてもらいたいんだけど、あなた着てもらえないかしら?」


そう誠に伝える。
真里ではなく誠に伝えたのだ。


「えっ……?  私ですか?」

「そうよ、そっちの子は撮影役でしょ? うち、今女の子出払っているから、試着できる子がいないのヨ」

「しかし私は男ですし、こういうのは……」

「大丈夫ヨ。あなたすごく綺麗だから、きっと似合うと思うワ。
それに同じ人が着てくれた方がイメージしやすいのヨネ。
どうしてもイヤかしら?」


小早川は少し不機嫌そうな顔で伝える。

誠は迷ったが、ここで断れば、せっかくの商談に水を差してしまうかもしれないと思い、渋々引き受けることにした。


「わかりました……着替えてまいりますので、しばらくお待ち下さい」

「ごめんネー変なお願いしちゃって、大事なことだから、どうしても確かめたかったのヨ。よろしくネ」


隣の部屋に移動して服を着替える誠。
真里も微妙な顔をしながら、彼の着替えを手伝っていた。


「誠くん、あの人変じゃないですか?
誠くんに女物の服を着てくれだなんて」

「そうだけど、恭子さんにとってすごく大事な商談だからさ……できるだけ協力してあげなくっちゃ」

「着るだけだったら、私でも良いのに……」

「撮影した写真を見て、どうするか決めたいんじゃない?
私じゃカメラの使い方わからないし仕方ないよ」


小早川が恭子に依頼した人選であるが、
彼は事前に真里にカメラの趣味があることを知っており、
それで撮影役を用意して欲しいと伝えていたのだ。

目的はもちろん二人に催眠術を掛けるため。
着替えを終えた二人は、さっそくその姿を見せることにした。



※※※



応接室のソファーに座り二人を待つ小早川。
ドアが開かれ、女装した誠が姿を現す。


「ブラボー! なんてことなの……素晴らしいデザインネ~。
気に入ったワ……追加で、その服も500着ちょうだい」


女装姿の誠を見て、小早川は大絶賛。

気分を良くした彼は、その場で追加注文をした。
さらには旧作も全て買い取ってくれるとのことだった。

誠と真里は、思わぬ注文に驚いていた。


「とりあえず追加の分、用意できるかどうか分かったら連絡頂戴。それと今日の分の請求書もメールで送ってもらえるかしら?」

「はい! すぐに甘髪に確認し連絡いたします。
請求書もなるべく本日中にお送りいたしますね!」

「そう、ありがとネ。
それじゃあ、そろそろ眠っていただけるかしら」

「はい? 寝る……のですか?」

「純白の姫君、腐海に沈む女」


誠と真里はその場に倒れ込んでしまった。

Part.81 【 偽りの恋人◆ 】

誠と真里が気を失って数分後。

商談が行われていた部屋には、
誠、真里、小早川の他に、忍と黒服達の姿があった。

忍は、誠と真里が持ってきた男性用衣装を身に着け、ぼんやりと立ち尽くしている。どうやら既に催眠状態に入っているようだ。

誠は女装したままソファーの上で眠っていた。
その姿はまるで眠れる森の美少女。
忍と並べると、まさにお似合いのカップルといったところである。

そして真里は下半身の衣類を全て脱がされ、椅子に縛られる形で座らせられていた。
彼女のお尻の下にはタオルが敷いてある。
おそらく前回同様、自慰をさせるつもりなのだろう……。


「準備ができたようネ。それじゃあ始めようかしら」


誠と忍に催眠深化を行ってきた小早川は、
二人の被暗示性が上がったことにより、
いよいよ誠と真里を別れさせる手段に出ようとしていた。


(誠ちゃんの催眠も安定期に入ったことだし、
ここでこの女と別れさせることができれば、ニューハーフデビューもすぐネ)


誠への催眠を始めてから、既に三か月が経過している。
その間、小早川は一週間ごとに誠を呼び出しては、繰り返し暗示を与え続けてきた。

通常ならここまでしっかり掛ける必要はない。

拉致後すぐに恋人と別れさせ、
あとはニューハーフ風俗を利用させて、のめり込ませるだけだ。

だが誠は立場上、完璧な形で仕上げる必要があった。

普通のニューハーフなら、性交中に催眠が解けても、店の中なので容易にフォローが可能であったが、誠にはそれができなかった。

誠は店の看板となるニューハーフである。
夜伽(よとぎ)の相手は、大物政治家や裏稼業の成功者となる可能性が高く、また出張することも多くなるため、万が一にも催眠が解けてしまってはならなかったのだ。

催眠は本人が嫌がることをさせると、覚醒に向かってしまう性質がある。ノーマルな男性を、催眠で一時的にホモにすることは可能であるが、途中で覚醒してしまうことが多く、
それは心の中で表に現れた自分を否定しているからこそ起こる現象であった。

それを防ぐためには、身も心も完全なホモに染め上げる必要がある。それには彼女と縁を切らせることが必須条件であった。

恋人のいない男性と比べ、恋人のいる男性は覚醒の頻度が高く、催眠の効果も大幅に下がってしまう。
誠を完璧なニューハーフにするためには、真里の存在を何としてでも消さなくてはならなかったのだ。

もし誠と真里を別れさせることができたなら、
あとは一度掛けた催眠を解いていくだけだ。

少しずつ少しずつ催眠を解きながら、男同士の快楽を心に刻み付けていく。そうすると最終的には、全ての催眠を解いた状態で、誠をニューハーフとすることが可能となるのだ。

そしてここまで施せば、誠が元に戻る心配はない。
催眠に掛かっていない状態で、ニューハーフなのだから当然と言える。

そしてこれが小早川の求める最終目標であった。



※※※



「あなたには付き合っている恋人がいます。
でもあなたはその子のことが思い出せなくなるの。
名前、性格、姿……過去の思い出に至るまで、全て霧に包まれ分からなくなってしまうワ」


小早川は、忍に暗示を掛けていた。
忍は険しい顔をしているが、覚醒にはまだ至っていない様子だ。


(フゥーーここまでするのに、ずいぶんと苦労させられたワ。もう何度失敗したか分からないほどネ。でもやっとここまで来れたワ……)


小早川はこれまで何度も恋人の記憶を消す催眠を試みてきた。
忍にとって愛する彼女の存在は、最大の覚醒要因。
それを何か月も掛けて、ようやくこの状態まで持ってこれたのだ。
その難易度は元から催眠に掛かりやすい誠と比べると雲泥の差であった。

小早川は誠を加えて、二人同時に暗示を唱え始めた。


「霧がだんだん晴れてきてきたワ。目を開けると恋人の姿がはっきりと見えるようになるワ……ゆっくりと目を開けてご覧なさい」


声に従い目を開く二人。
互いに見つめ合い、存在を確認し合っている。
だが忍はまだ目が泳いでしまっている状態だ。


「どうしたの、忍ちゃん? 変な顔しちゃって。恋人の顔を忘れたの? あなた達は心の底から愛し合っている。これまでだって何度も裸で抱き締め合ってきたでしょ? 思い出して……」


暗示により、二人は過去の性行の記憶を思い出した。
そしてその快感を思い出し、ペニスを大きくしてしまう。


「んっ……んん……」「はぁ……はぁ……」

「思い出したようネ。いい? その子があなたの恋人ヨ……。
恋人以外の人とそんな激しいセックス、普通はしないわよネ?
また忘れてしまわぬように、よーく心に刻みつけておくのヨ」


二人は力なくコクりと頷いた。


(よし、今回は上手くいったワ!)


これまで成功率が低かったのか、
小早川はついガッツポーズをとってしまっていた。



※※※



一時的に恋人の記憶を消し、空いた穴にお互いを埋め込む。
恋人同士と思わせる誤認催眠は無事成功を遂げた。

その様子を見ていた黒服が疑問に思い、質問をする。


「小早川様、不躾ながら質問させてください。なぜそれほどの力をお持ちなのに、わざわざを別れさせる必要があるのでしょうか? 記憶を消せるのでしたら、もう良いではありませんか」


人の記憶を消せるのであれば、あとは催眠でなんでも上書きできるはず、黒服の疑問は当然のものであった。
ソファーで休んでいた小早川は、黒服の質問に軽く答えた。


「ん? そうネー今掛けた催眠もようやく成功したんだけど、
実際、記憶を消すだけじゃ、弱いのヨネー」


葉巻を吸い、一息入れる。
フゥーっと煙を吐くと説明を続けた。


「だっていくらでも思い出せるじゃない? 催眠で思い出せないようにしても、時間が経てば必ず思い出してしまうワ。

でも〖別れたという事実は決して消せない〗

例え催眠が解けても、一度は別れを認めているわけでしょ?
つまり、その程度の関係だったってことヨ。

それなら暗示の効果の方が強いワ。
例え寄りを戻しても、別れるさせることは簡単だし、そんなに簡単に別れる関係なら、本人達もいずれこだわらなくなるワ」

「なるほど……そこまで考えられてのことだったのですね。
大変勉強になりました」


小早川の説明に納得する黒服達。
そうして一通りの説明を終えたところで彼は調教を再開した。


「ここはアナタ達のプライベートルーム。
他には誰もいないワ。さぁ目を覚ましなさい」


パチンッ!
指が鳴り、二人の目に生気が戻る。


「あ、誠ちゃん……」

「あれ……? 私達何してたんだっけ?」


互いに目を見合わせ、辺りを見回す。
すぐ隣に黒服がいても気付かない様子だ。


「あなた達はこれからエッチをしようとしていたところなの。
だんだん興奮してきちゃったでしょ?」


小早川の言葉を聞き、二人は思い出したようにハッとする。
少しずつ興奮が高まってきているようだ。


「誠ちゃん、キスしよっか?」

「うん♡ 良いよ、来て、忍くん♡」


誠はこれまでの調教で、すっかり忍の彼女としての立場が板についてしまっていた。彼氏に誘われ実に嬉しそうだ。

二人は熱を帯びた目付きでキスを開始する。
唇で、舌で、相手の感じるところを愛撫し合いながらのキスだ。
すでに実際の恋人よりも多く口付けを交わした仲となっていた。


「ちゅ……忍くん、大好き♡」

「俺も……誠ちゃんのこと大好きだよ……」


愛を囁き合う二人。
本来であれば、彼女に向けるべき言葉を互いに向けていた。


「キスをすればするほど、相手のことがもっと好きになる……
欲望の赴くままに乱れ合いなさい……」


小早川はそう暗示を掛けると、
椅子に座って眠っている真里の方を向いた。


(さーて……いよいよ復讐の第一段開始ネ。
この女には絶望という絶望を味合わせてやるワ)



※※※



「んっんっん!♡  あ、ぁんっ♡」

(…………んん……? 誠くん……?)


誠の喘ぎ声が聞こえ、意識を取り戻す真里。

目を開けた彼女の前に広がっていたのは、女装姿の誠がソファーの上で見知らぬ男性にバックから攻められている光景であった。

後ろ姿だったので、相手が誰かは分からなかったが、
恭子のデザインしたメンズ服を着ていることから、男性ということだけは分かった。


「えっ!?」


一瞬何がなんだか分からず、目をパタパタさせる。
だが徐々に状況が把握できるようになり、彼女は怒りの声を上げた。


「ちょっと、あなた! 誠くんに、何してるんですか! やめてくださいっ!」


まだ完全に状況は掴めなかったが、誠が男性に襲われているのは事実。
今はとにかくこの行為を止めさせることだ。

だが真里がいくら叫んでも、二人は反応しなかった。
仕方なく立ち上がり実力行使に出ようとしたのだが……


(あれ……? 身体が動かない……?)


よく見たら、身体が椅子に紐でくくりつけられている。
真里はそのことに気付き驚いた。


「お目覚めはどうかしら? 一ノ瀬さん」


声のする方に顔を向けると、
そこにはROSE興業の社長 小早川憲子がいた。


「これは、どういうことですか……?」


あまりにも理解し難い状況。
誠が犯されているのは気がかりだったが、この大口のお客様が関わっているのであれば冷静に判断しなければならない。

真里はひとまず、小早川に状況説明を求めた。


「あらあら、アタシとしたことが、記憶を戻すのを忘れていたワ。これじゃあ意味が分からないわよネ」


そう言い、小早川は真里の催眠を一部解除した。
身体の状態はそのままに、以前拉致した記憶を思い出させたのだ。


「あ……あ……あなたは小早川!」


全てを思い出し目を見開く真里。
それと同時に以前の恐怖が甦り、全身が震え始めてしまった。

彼女がもっとも恐ろしかったのは、ここ三ヶ月あまり、拉致された記憶を一度も思い出せなかったことだ。
これほどの重大事件なのに、警察に助けを求めることすらできなかったのだ。


「なんで……どうして……?」

「困惑するのも無理はないワ……実はアタシね、催眠術が使えるの」

「催眠術!?」

「えぇ、アナタを前に解放した時に、アタシに関する記憶を封印させてもらったワ」

「そ、そんなこと……」

「実際、アナタは誰にも助けを求めず、これまで通り過ごしてきたのよネ? その間、彼氏に何か変化はなかったかしら?」


真里はそれを聞いてこれまでのことを思い出した。

男性に戻りかけていた誠が、急に女性らしくなってしまったこと。BL同人にハマり、ホモで興奮するようになったこと。

後者は真里にとって美味しい要素だったので、別に構わないのだが、一番の問題はファーストキスをした時に感じたトキメキを奪われてしまったことだ。

誠の家に泊まり、初めて肌を合わせた日。
誠は真里とのキスで吐き気を催すようになっていた。

何度もキスを重ね、慣れさせることはできたものの。
本来であれば、もっと素敵な夜になるはずだった。
それを奪ったのが、このオカマだ。

真里は人外(じんがい)の力に震えながらも、小早川を睨み付けていた。


「くっくっく……心当たりがあるようネ……。
彼の心は、もうこっちに靡(なび)きかけているワ……。
あなたに別れを切り出すのも、時間の問題ネ♪」


小早川は、ここで少しズレた挑発をしてしまう。
彼の予想では、誠と真里は既にセックスレス状態にあり、
その関係は既に冷え切っているものと考えられていた。

しかし実際二人は、毎日セックスをしており、山のようにある真里のBL本を使って、疑似ホモセックスをして愉しんでいた。
それにより、二人の絆はさらに強く結ばれるようになっていたのだ。

真里が元から腐女子で、誠が元からホモであることに気づいていない小早川は、二人を分断させることが全くできていなかったのである。


「くっ……今度は何をするつもりなんですか?」

「今日はアナタに素敵なものを見せてあげようと思って呼んだの。彼らを見てごらんなさい!」


言われるがまま、誠の方を向く。
あいかわらず彼はお尻を突かれているところだった。


「どこが素敵なんですか……ただ誠くんのことを苛めているだけじゃないですか、もうこんなことするの止めてください!」

「苛めているわけじゃないわヨ。
今あの二人は愛し合いながらエッチしてるの」

「ふざけないでっ! 誠くんが愛しているのは私だけです!
あんな男を誠くんが好きになる訳ない!」

「もちろん今は催眠を掛けて愛し合ってもらっているだけヨ。
あくまで〖今は〗だけどネ。
二人の熱愛っぷりをもっと見やすい場所で見てごらんなさい。
アナタと忍ちゃん、どちらが誠ちゃんにふさわしいか、よく考えてみることネ」


小早川は黒服達に、真里をソファーの前へ運ぶよう指示した。
すぐに真里は運ばれ、誠と忍がよく見える位置に固定される。


(ふぁあ!?)


四つん這いになり淫らに鳴き叫ぶ誠と、
それをバックから優しく突き立てる忍の姿。

それは腐女子である真里が、日頃から夢見てきた幻の光景、
三次元のカールとテトがイチャラブセックスをする光景であった!


(あああああああああああああああああああああ!!!
すてきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!♡♡♡♡)


あまりに素敵なビジョンに感動する真里。

竿役の忍は○○教室のカールによく似ていた。
女装したテトとカッコいいカールがラブラブしているのだ。

真里が感動しないはずがない。


(なにこの……幻想郷……と、尊い…………尊すぎるよ……)


「はぁん♡ そこ良いの!!♡
忍くんのおちんちんが良い所に当たって気持ちいい!♡」

「はぁはぁ、誠ちゃんの中、すごく良いよ…………
俺のちんちん…………溶けちゃいそうだよ…………」


愛の言葉を交わし合い、セックスに勤しむ二人の姿は、
腐女子の真里にはあまりにも刺激的な光景であった。


(うほぉぉぉぉぉ、エロイ!!♡
テトぉぉぉ!! カールぅぅぅぅ!!!
はぁはぁ♡ たまらんんんん♡ ヤバ過ぎるぅぅぅ!!)

キュンキュン♡ キュンキュン♡ キュンキュン♡

真里の胸がキュンキュンしまくる。
既にキュン死寸前である。

冷静さを失った真里の目からは、大量の汗が吹き出し始めていた。


(フフフフフ、あまりのショックで泣き始めたようネ。
あんな美男子二人が愛し合ってる姿を見せられたら、
ホモ好きに変えられた真里は負けを認めるしかないワ♡
さぁ苦しめ! アタシの顔に泥を塗った罪を購(あがな)いなさい!)


小早川は、ニヤニヤと真里の様子を見つめている。
ようやく一矢報いることができて大変ご満悦な様子だ。


(ヤバイヤバイヤバイヤバイ……胸が苦しくなってきた…………
本当にキュン死しちゃう…………うれしくて死んじゃいそう…………
もうダメ…………安らかな死を迎えちゃう…………)


真里はあまりの興奮に苦しそうにしている。


「さぁ、どうかしらん?
愛しの彼があんな感じになってて、どんな気分~~?」


心底バカにした口調で真里に問う小早川。


「はぁ……はぁ……はぁ……胸が苦しくて…………
(ときめきが強過ぎて♡)
心臓を引き摺り出された気分です……
(心臓が飛び出すくらい衝撃的で素晴らしいです♡)」

「あら、そうなのー♡ 大丈夫かしらん?
オホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ!!」


あまりに真里が素直に苦しさを表現するもので、
小早川は圧倒的勝利感に浸っていた。

実際、真里は別の意味で言っていたのだが…………


(ここまで精神的にダメージ受けているんだったら、もう勝ったも同然ね♡ あとは二人の交際を認めさせて、誠ちゃんと別れさせるだけだワ♡)


そう考えながら真里の股間に目を向ける。椅子に敷かれたタオルは、既に彼女の愛液でビシャビシャに濡れていた。

Part.82 【 次元の異なる話◆ 】

(あっ!♡ あっ!♡ 誠くん、そんなイケメンに抱き締められて、女の子みたいにうっとりしちゃって……すっっっごく、良いけど……ダメぇ……ダメなのぉ♡ はぁはぁ♡)


誠がカール似のイケメンに優しく抱き締められている。

彼女としては決して許していけない行為のはずなのに、
そんなニャンニャン愛し合っている二人を見つめていると心が温かくなってきてしまう。

腐女子としての心がお気に入りのカップリングを静かに見守ろうと、真里に諭しているのだ。

幸せそうな誠の笑顔。それを見ているだけで真里は、どうぞどうぞいつまでも続けてくださいと言ってしまいそうになっていた。

しかしどんなに幸せそうに見えても、これは小早川の催眠術によるものだ。この行為を許してしまえば、誠はニューハーフにされてしまう。

小早川達が何のためにこのようなことをしているかは分からなかったが、彼らの性格を考えると、ろくな理由ではないことだけは分かった。

真里が頭の中で葛藤を続けていると、
誠と忍は体位を変えて、まぐわい始めた。

誠のケツマンコに忍の愛棒が埋まり、
突き挿れる彼の背中を誠の両足がホールドしている。
いわゆるだいしゅきホールドと呼ばれる体勢である。

忍の剛直がケツヒダを擦るたびに誠が喘ぐ。
ローションによって滑(ぬめ)りを得ていた誠のアナルは、美味しそうに忍の物を頬張り、自ら意志があるかのように吸い付いていた。

そんな誠の愛情表現に応えるように、
忍の一物も誠の前立腺に目掛けてキスをする。

上下両方を使った情熱的なキス。
女にはできない、男同士ならではのキスの仕方であった。

誠の前立腺と精嚢が誰を孕ますわけでもないオカマ汁を分泌する。ホモちんぽの先端からサラサラのオカマ汁を垂らし、白くプニプニした誠の股間を濡らす。

そしてそれは忍と誠の身体を滑らす潤滑剤と化し、誠のホモちんぽをお腹とお腹の間で気持ちよくすり潰すのであった。


(ダメ……もう耐えきれないよ……こんな尊い姿を見せられたら、二人の交際を認めざるをえないじゃん……♡♡
あぁ♡ いぃ♡ 女の子の格好をして、イケメンとおちんぽすり潰し合って、おちんぽ汁で身体中を汚しちゃうマコちゃん……♡ すてき♡)


美男子二人のホモプレイを見て、
真里の心はいとも簡単に陥落してしまっていた。

これは彼女が前回、誠から腐女子の趣味を許されたことが要因であった。真里はここで興奮してしまっても、それが二人の仲を別つものではないと感覚的に覚えていたのだ。

また誠が全然嫌がっていないことも、その気持ちに拍車をかけた一因であった。


「アナタ、つらそうネ♡ オナニーしたいなら、しても良いのヨ?♡ 彼らにアナタの姿は見えていないワ。だから安心してオナニーなさい♡」


口角を上げながらも蔑んだ目で小早川が言う。


「そんなことしたら……はぁはぁ♡
また誠くんに変態女だって言うつもりでしょ……
もう騙されないんだから……はぁはぁ♡♡」

「へぇーちゃんと覚えてるじゃない。
でも身体に無理は良くないワ……
今回は特別にアナタに言い訳を用意してあげる♡」


パンパンッ

小早川が手を叩くと、すぐに黒服が真里の手を掴んだ。


「なっ……何!?」

「何って、オナニーをさせてあげるのヨ。
アナタの意思じゃなくて催眠術を使ってネ♡」


前回の調教で真里の頑固さを目の当たりにしていた小早川は、自らの意思で自慰させるのを諦め、強制的に行わせることにした。

指示を受けた黒服が、
真里の手を介して女性器に愛撫を始める。


「ふぅんっ♡ はぁっ♡ やめ、やめてっ!」


美男子二人のBLを見て、パンパンに張っていた真里のおまんこは、クリへの刺激で素直に感じてしまっていた。


「気持ち良いでしょ♡ アナタはその手の動きが止められなくなるの……擦れば擦るほど、もっと気持ちよくなって、彼氏のホモプレイから目が離せなくなるワ♡」

「んんんんっ♡♡……いい、嫌ぁ……あっんんんっ♡♡」


クリトリスへの無機質な刺激。
サーモンピンクの開口部からは、
淫らな粘液がより勢いを増して流れ出していた。

普段の生活では感じることのできない強烈な快感。

抗うこともできず、あっという間に登らされてしまった。


「くっ……あっ♡……あ……んんっ♡♡……も……ダメぇぇ♡」


ビクビクビクビク!! プッ…………プシュー…………

真里は、あっけなく絶頂を迎えてしまった。
紅く染まった貝の隙間から潮を吹いてしまっている。

役目を終えた黒服は、
不快な顔をしながら、手を消毒して元の位置に戻った。

小早川が朦朧としている真里に暗示をかけ始める。


「ほーら……アナタは二人のエッチから目が離せなくなる……。
アナタは男同士で性行に励む誠ちゃんを美しいと思えるようになるの♡」


そんなこと言われなくても分かっている。
元々、誠をそういう目で見ていた真里は、特に抵抗することもなく賛同の意を示した。


「あ……あ……あ……誠くん……綺麗……はぁはぁ♡」

「そう……綺麗……とっても綺麗で可愛らしいワ♡
ああして美男子におちんぽ入れられて喜んでる彼と、
女の子に勃ちもしない粗ちんを挿れようと悪戦苦闘する情けない彼、どっちが彼らしいと思う?」


暗示を受けてイメージを開始する真里。

勃たないクリちんぽを一生懸命女性に挿れようとする誠の姿は、あまりに頼りなく情けなく感じられた。

それよりも男性に女として扱われ、逞しい男性器をお尻で受け入れて幸せそうにしている今の彼の方が、ずっと彼らしいと思えた。


「入れてもらっている方…………」

「ふふふ……当然そう思うわよネ♡
さぁ自慰を続けなさい……あれが彼の本当の姿なの。
アナタはそれが全然嫌じゃない……
さぁ……男の彼のことなんかもう忘れて、女になった彼のことを認めてあげなさい」


真里の指が自然と動き出す。
指先でクリトリスを擦るたびに、男だった頃の誠の姿が霞んでゆく。

その代わり、女性の服を着て、
慎ましくしている誠の姿が鮮明になってくる。

浴衣姿の誠、ワンピース姿の誠、
水着姿の誠だって、素敵な誠だ。

半分脱がされているが、恭子のデザインしたレディース服を着た誠も、とても可愛らしく、そして綺麗に見えた。


(ハァハァ……♡ 女の子の誠くん……可愛い♡
あんな……カールのおちんぽ入れられて気持ち良さそうに……
かわいいテト……女の子の誠くん……あぁぁ♡♡)


すでに誠が催眠をかけられていることなど気にならなくなっていた。色欲に染まった顔で自慰を続ける真里に、小早川は追撃の暗示をかける。


「あんなに女の子らしい彼を見ちゃったら、男の子の彼なんて大したことないわよネ? 最近彼がアナタに勃起してくれたことなんてあったかしら?」

「ハァハァ♡ な……ないです」


誠が勃起するのはBL同人誌であって自分ではない。
真里は正直に答えた。


「そうよネ♡ それは彼が男の人が好きだから♡
彼のおちんちんを見てご覧なさい。ずっと勃ちっぱなしでしょ? あれは相手が男の人だから勃ってるのよ。

彼は女には、もう勃たないの。
アナタに勃起もしてくれない彼のことなんか忘れてしまいなさい。彼は女の子。アナタと一緒。いいわね?」

「ハァハァハァ……誠くんは……女の子……」

「そう……女の子。
アナタは男の子が好きでしょ?
彼は女の子だから、好きになる相手とは違うわよネ。

アナタはもう彼とエッチしたいと思わなくなるの……
女になった彼が男の人とエッチする姿を見ていたい……

女の子の彼は素敵。
可愛くて生き生きしてて、男の姿でいるよりずっと良い……

男の子の彼は頼りない。
なよなよしてて、おちんちんも小さくて挿れることもできない……そんな魅力のない彼なんかいらない……」

「あ……あ……あ……」


小早川はそれから繰り返し同じ暗示を掛け続けた。

時には誠と忍の性行為を見せて絶頂させ、
意識が朦朧としたところに追加の暗示をかける。

いつしか真里は小早川の言葉を、
はいはい素直に聞くようになっていた。


ビクビクビクビクビクビクッ!!!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!♡♡♡」

「どーお? 女の子の誠ちゃんと男の子の誠くん。どっちが良いかしら?」

「はひぃ♡ おんにゃにょ子の誠ちゃんの方が何倍もいぃでしゅ……♡ すごく可愛くて……男の人に愛されてすてきぃ……♡」

(クックック……ようやくこの女も金蔓と化したワ。
せいぜいお金を稼いで、
誠ちゃんのホモAVや生ホモ観賞に貢いでちょうだい。

あとはリアルで誠ちゃんがニューハーフになるよう、この女を使って誘導すれば完了ネ♥️)


真里が誠を女装させ、女の子として生活させるようにすれば、誠が変態女に騙されてニューハーフに走ったと物語を作ることができる。

世間から批判を受けるのは真里であって、小早川に疑いが掛かることはない。ノーリスクで誠を雇用できるようになるというわけだ。

小早川の暗示はしつこく続く。


「彼のおちんちん、まだ挿れて欲しいと思う?」

「もういらないですぅ……あんな……ちっちゃくて、女の子相手に大きくもできないおちんちん……どっちみち挿れられません」

「ぷっ……そうよネ、挿れようとするだけ無駄よネ」


合理的な真里の返事に小早川は笑っている。
例え勃起できたとしても、誠のちんちんなら、女性が女性膣にクリトリスを擦り付けている程度にしかならない。


「誠ちゃんがニューハーフになって、
男の人とエッチしてお金を稼ぐようになったらどう思う?
毎晩毎晩、男の人におちんぽ挿れられて、幸せそうにメス顔を晒すようになるの♡ 彼にとって天職だと思わない?♡」

「そ……それは……あぁんっ!!!♡♡」


真里はここで軽く絶頂してしまう。
誠が毎晩、色んな男性と抱かれる姿を想像して、興奮してイッてしまったようだ。


(あぁん♡ マコちゃん、毎晩男の人に抱かれてぇ♡
おちんちんで囲まれて、すごくえっちなのぉ♡
おちんちん大好きマコちゃん……すてきぃぃ♡♡♡)


興奮して知能が猿並みに堕ちてしまった真里は、そんな暗示にも同意を示すようになっていた。

元々腐女子力の高い真里が、
催眠によって、さらにパワーアップした感じだ。
彼女は彼氏を男に抱かせても平気な、究極の腐女子の域に達しようとしていた。


(もう十分ネ。ずいぶん時間が掛かったけど、あとは別れさせて終わりネ)


小早川はここで最後の暗示をかけることにした。


「ニューハーフの誠ちゃん、良いでしょー♡
彼女がウチのお店で働くようになったら、特別価格で招待してあげるワ♡ いつでも誠ちゃんが男の人と愛し合う姿を見せてあげる♡

それじゃあ真里ちゃん、誠ちゃんにお別れしなさい。

アナタはこれから女友達として、彼女と仲良くするの♡
彼女のニューハーフとしての門出を祝福してあげてネ♡」

「………………それは嫌です」

「………………は?」


二人の間を沈黙が流れる。
場に聞こえるのは、誠と忍が愛し合う声だけだ。

先ほどまでの余裕の表情は小早川から消え失せ。
真里の目には固い意志の光が戻っている。

〖そこだけは絶対に譲れない〗

そう言っているかのような鋭く刺すような眼光であった。


「………………き、聞き間違いかしら? アナタ、誠ちゃんを彼氏として魅力がないと感じてるのよネ?」

「はい……誠くんは男として魅力がありません」

「じゃあ、なんで別れないのヨ!?」

「誠くんが好きだからです!!」

「はぁ!?……お、お友達として好きってことヨネ?
それは許すワ。アナタには誠ちゃんをニューハーフとして育てていく役目があるの。だからお友達として好きなのは全然構わないワヨ」

「いえ……恋人として好きなんです!!」

「ふっざけんじゃねーーーーわヨ!!」


ようやく終わりそうな時に、こんな面倒な返事をされ、
小早川は、怒りのあまり男の口調に戻り掛けてしまっていた。

今回はかなり念入りに暗示を掛けたはずだった。
さすがの彼にも疲れの表情が見え始める。
終わりの見えない催眠に嫌気を感じているのもあった。

忍の女は気が強く、罵詈雑言で催眠を跳ね返すタイプだったため、ずいぶんと苦労させられていたが、
真里は暗示が効いているように見えて、今回のようによく分からない反応をするため実態が掴めなかった。


(また、一から催眠を掛け直し? でももう時間がないし……さすがに体力も限界ヨ……一度帰してやるしかないわネ……)


既に時刻は夕刻に差し掛かろうとしていた。
恭子の元に帰すにしても、あまり遅いと怪しまれる。

それに真里が賛同しない理由が分からないことには、
これ以上時間を掛けても無駄なだけだ。
いったん家に戻し、原因が判明してから再度調教すべきだろう。

小早川は瞼(まぶた)に掌(てのひら)を添えて軽く項垂れると、黒服に撤収を命じた。



※※※



「この度は遅くまでお相手してくださり、誠にありがとうございました」


真里と誠がこぞってお礼を言う。


「今日は有意義な時間を過ごせて良かったワ。甘髪さんにもよろしく伝えといてネ」


小早川は疲れた様子で軽く礼を言うと、そのまま事務所の奥へと引っ込んでしまった。


「小早川さん、何かあったんですかね?」

「元々、体調が悪かったんじゃないかな?
追加の注文も貰えたし商品に問題はなかったと思うけど」


二人は小早川の心配をしつつも、
恭子に今回の件を伝えるため足早に立ち去った。

その後、小早川は催眠時の映像や音声を確認し、原因究明に急いだのだが、元々真里が腐女子であることを知らない彼は、その謎を解くことはできなかった。

前回ホモ好きにさせる暗示を掛けていたこともあり、
彼女がBL本を買い漁っていると報告を受けても、
それが元からの性質だと見抜けなかったのだ。

不幸にも催眠を掛けたことが、
問題点を見えなくする原因となってしまっていた。



※※※



真里が誠と別れるに至らなかったのは、
彼女のBLへのものの考え方にあった。

真里は小早川の言うことに、初めからおおむね同意であった。
誠が女として生きるのも、忍に女として愛してもらうのも、カルテト派の真里にはむしろ大歓迎であった。


小早川の失敗は、
忍と誠が付き合うことと、真里と誠が別れることは、
まったく次元の異なる話であると見抜けなかったことだ。

真里にとって、忍と誠はカルテトの関係。

いくら二人が愛し合おうとも、
それは崇め奉る対象であり、踏み入れてはならない至高の領域。

真里は誠と忍のカルテト関係と、誠と自分の恋人関係を、
〖どちらも同時に望む女〗だったのだ。

だから小早川から別れろと言われても、真里は断固拒否した。真里からすれば、部外者は引っ込んでろといった感じなのだ。

そんな特殊な文化を築いていることなど、
小早川が知るよしもない。

いくらこの路線で二人の分断を謀ろうとも、
真里を喜ばせるだけで無意味だったのだ。

こうして二度目の離間工作は失敗に終わった。
小早川は再び計画を立て直さなくてはならなくなったのである。

Part.83 【 ストーカー◇ 】

「ふぅ、疲れた……直美もお腹空かせているだろうし早く帰らなきゃ」


商品の検品を終え、帰り支度をする恭子。
先日、小早川から追加の注文を受けていた彼女は、忙しい日々をおくっていた。


(まさか500着も追加されるとは思ってもいなかったわ……
納期を多めにとってくれるのは良いんだけど、
この調子でどんどん来られたら、対応できるか不安ね……)


業界最大手のROSE興業とつながりを持てたのは良かったが、
こう毎日忙しいのも考えものだった。

彼女は直美との時間が取れないことを気にしていた。


(今日こそは直美と過ごす時間を作るわ。
直美はお肉が好きだから、今日は豪勢にしゃぶしゃぶね)


スーパーに立ち寄り、
しゃぶしゃぶ用にすき焼き用の松長牛を手にする。

すき焼きの肉はしゃぶしゃぶの肉より厚く、
湯にさっと通すと、内側から肉汁が染みだして、とても美味しいのだ。

彼女は、松長牛に加え野菜とポン酢をカゴに入れると、
レジを済ませ家路へと向かった。

既に夕刻を過ぎ、辺りは暗くなり始めていた。



※※※



リーリンリンリン♪
ツクツクホウシ♪ ツクツクホウシ♪

秋虫の鳴き声が路地の草むらから聞こえてくる。

部室を出る前に小雨が降っていたせいか、人通りは少なく、パッと見渡す限り、黒いジャケットを着た男性が一人いるくらいだった。


(少し肌寒いわ……明日からはもう少し厚着した方が良さそうね。直美にも新しい服買ってあげなくっちゃ)


歩きながら直美のことを考える。

以前は毎日のように自分を求めてきていた直美であったが、最近はこちらが忙しいのが分かっているのか、
自慰で性欲を発散させているようだった。

直美の部屋には、どこから集めてきたのか、
女性同士がセックスする漫画が山積みにされており、
恭子はなんとなく罪悪感のようなものを感じていた。


(仕事も一山越えたことだし、今日はご飯を食べたら、好きなだけ直美の相手をしてあげるわ)


そう思い、少しニヤつく。
彼女も欲求不満が溜まっていたようだ。


(あら? ちょっと行き過ぎてしまったようね……)


直美との情事を思い浮かべていた恭子は、
仕事で疲れていたこともあり、
マンションへ帰る道を通り過ぎてしまっていた。

すぐに来た道を戻ろうとする。

そこで彼女は気が付いた。
自分を追う男の影があることにーー


(あの人……さっきまで反対側の歩道を歩いていた人だ)


恭子から50mほど離れたところに、黒いジャケットの男が立っている。スーパーを出た時に見かけた男だ。

男は恭子が振り向くなどと考えてもいなかったようで、電柱に貼られたポスターを見るなどして、慌てて誤魔化していた。


(怪しいけど……この道を通らなきゃ帰れないし……)


恭子は不安であったが、ひとまず進むことを決めた。

薄暗い路地とはいえ、
一応この付近は警察の巡回ルートに入っている。

それに犬の散歩をしている老人や、
コンビニの袋を持った夫婦とおぼしき人達の姿もあり、
人目のある中で何かを仕掛けてくることはないだろうと思った。

恭子は警戒しながらも男の背中を通りすぎた。

そしておもむろにスマホを取り出し、
カメラを後方に向け、男の動きを観察する。

案の定、男は恭子の後ろ姿をじっと見つめていた。

黒いキャップの付いた帽子、大きめの白いマスク、サングラスを付けており、顔の詳細は分からない。

少しして男は恭子の後を尾行し始めた。


(くっ……こういう男、久しぶりね。まだ警察に連絡するほどではないと思うけど、一応直美には連絡しておこうかしら?)


そう考え、画面に映る直美の番号をクリックしようとする。しかしすぐに思いとどまった。

直美のことだ。
恭子が危険に晒されていると分かれば、
大騒ぎで家を飛び出し、ここまでやってくるだろう。

そうなれば、この男は姿を眩まし、
次はもっと用意周到に近づいてくる可能性がある。

恭子はひとまずマンションの防犯カメラのある位置を目指して歩くことにした。警備会社側でカメラの映像を保管できれば、警察への連絡もスムーズにできる。

だがカメラのすぐ傍に来たところで、
男は尾行を止めてしまう。

まるでカメラの位置を知ってるかのようにーー


(なんで分かったの? まさか同じマンションの人?? それとも近所の人かしら? 前々から付け狙っていたとか?)


マンションの防犯カメラの位置を把握している人は、そうはいない。だが、少なくともこの男が突発的に尾行を始めた訳ではないということだけは分かった。

恭子は肝を冷やしながらも、無事家に辿り着いた。


「ただいま」


恭子はドアの鍵とチェーンロックを掛けると、
玄関に座って靴を脱ぎ始めた。


「おかえりーキョウちゃん! あっ、お肉だー♪」


恭子の声を聞き、笑顔で出迎える直美。
スーパーの袋に入っている松長牛に気付き、大喜びの様子だ。


「今日は直美の好きなしゃぶしゃぶよ。
今からお鍋とご飯の用意するから待っててね」

「はーい♪」

「ところで直美」

「んっ?」

「最近、この辺りで変な男を見掛けなかった?」

「変な男?」


恭子は夕食の準備を進めながらも、
帰り道、見知らぬ男に付け回されたことを話した。


「何それー! キョウちゃんを付け狙うなんて許せない!」

「一応、警備会社に連絡しておくわ。直美も危ないから、これからはタクシーを使って帰るようにして」

「そんな男、あたしがコテンパンにやっつけてやる!」

「ダメよ、危ないわ。凶器を持ってるかもしれないし、もし逃げられたら、次はどんな奇襲をしてくるか分からないわ。こういうことは警察と警備会社に任せましょ」

「えーーそれくらい、あたしでも倒せるのにー」


直美は並の男であれば圧倒するくらい身体能力に優れている。だが相手が凶器を持っていたら話は別だ。

万が一ということもあり、任せるのは不安だった。

今回直美に知らせたのは、犯人を捕まえるためではなく、自分自身を守ってもらうためだ。

恭子はそれを直美に言い聞かせると、しゃぶしゃぶ用の野菜を切り始めた。


※※※


夕食後、仲良く入浴を済ませた二人は、
寝室でいつものように裸で愛し合っていた。

ベッドに座り、恭子のクンニを受ける直美は、
久しぶりに恋人から受ける愛撫に、恍惚の表情を浮かべていた。


「あぁ……キョウ……ちゃん、もっと強く吸ってぇ……」

「うふふ……これ以上強く吸ったら、クリちゃんもっと大きくなっちゃうわよ?♡」

「うん、いいの……キョウちゃんの口で、あたしのクリ、もっと大きくして……んんっ! あぁっ!♡」


恭子は慣れた様子で直美の敏感な果実に吸い付いている。
彼女の緩急を付けた口淫に、直美は腰をくねらせ快感に震えていた。

しばらくして恭子が口を離すと、ビンビンに勃起し紅く染まりきった尖塔が姿を現した。それは平均的な女性に比べ二倍ほどの大きさがあり、いわゆる巨大クリと呼ばれるものだった。

性欲が旺盛な直美には、元から巨大クリになる素質があった。それに加えて、胸や淫核のみでの性交を二年以上も続けてきたこともあり、ここまでの成長を遂げていたというわけだ。

だが直美にそのことを気にしている様子はない。
大きくなることで、恭子とのセックスをより気持ちよく行えることを彼女は知っているからだ。


「はぁはぁ♡ じゃあキョウちゃん、今日もいくよー♡」


直美は恭子を仰向けに寝かせると、恭子の足を片方、肩に乗せ、熟した淫核同士を密着させた。

恭子はその様子をウットリとした目で見つめている。

直美との貝合わせを何度も経験している彼女の心と躰は、自ら直美に支配されることを望んでいるようだった。


「来て、直美。今日も私のことをめちゃくちゃにして」


久しぶりの貝合わせ。
初めて身体を合わせた日から二倍の大きさに成長した直美のクリトリスは、今もなお小ぶりで慎ましやかな恭子のそれを捏ね繰り回した。

直美の腰が元気に揺れる度に、恭子の抑えのない色声が部屋中に鳴り響く。


「あっ、あっ、なおみぃ♡ すごぃっ、それ、あんっ♡」

「はぁはぁ、キョウちゃん、かわいい♡
もっと気持ちよくなってね♡ えいえいえいっ!♡」


体力が有り余っている直美の腰使いは、彼女の天才的な身体能力もあいなり、レズビアンとしては最高峰の技術を有していた。

もしノンケの女性が彼女の貝合わせを受けてしまったなら、
すっかりレズビアンの快感が身体に染み付いてしまって、
二度と男性とのセックスで満足することはできなくなってしまうだろう。

並の男性とでは決して得ることのできない快楽。

ノンケの女性にノーマルの道を踏み外させてしまうほど危険な技術を、直美はすでに有してしまっていた。

女性は男性を好きになり、男性とセックスを行う。

そんな当たり前のことすら疑問に思えてしまうほど、恭子にとって女同士の身体の触れ合いは自然なものとなっていた。

目の前にいる恋人は、優しく美しく良い匂いがして、柔らかくも繊細だ。
直美と比べたら、がさつで汚い臭いオスと触れ合うことなど、正気の沙汰ではなかった。

社会の一般常識に捉えられ、本当の気持ち良さを知らずに一生を終えてしまう女性は、ある意味可哀想な人達なのかもしれない。朧気ながらも恭子はそう感じていた。

そしてそれは直美も同じこと。

一切、男に興味を持たない二人のレズビアンは、女同士でしか得られない快感をいつまでもいつまでも共有し合っていた。

それから二時間後、行為を終えた二人は、抱き合いながらピロートークをしていた。


「今日も最高だったわ……♡
直美ってば、どんどんエッチが上手くなっていって、
このままどうなってしまうか不安だわ」

「えーー! そんなにー?♡
キョウちゃんてば、誉めるの上手なんだからー♡」


エッチを誉められ直美は嬉しそうにしている。
たまらなくなり、彼女は恭子にキスをした。


「ちゅっ♡ 相手がキョウちゃんだからだよ♡
どうすればキョウちゃんがもっと気持ちよくなれるのか、いつも考えながらしてるんだー♡」

「うふふ♡ 嬉しいわ直美。
それくらい熱心だったら、何でもできそうね♡
勉強とかバイトとか習い事とか、あと勉強ね」

「キョウちゃん以外は、みんなついでだから良いの。キョウちゃんさえ傍にいてくれたら、あたしは他に何もいらない」

「私もよ。あなたさえいてくれたら何もいらないわ」


幸せな会話を続けているように見える二人であったが、
恭子は今もなお、心にわだかまりを抱いていた。

気になるのはもちろん催眠のこと。

直美とこのように愛してあってはいるが、
これは偽りの愛なのだ。

本来であれば、直美は自分とではなく、誠とこういう関係を結んでいるはずであった。

そういった事実が、
今もなお、恭子の心を締め付けていた。


「直美、一つ聞いて良いかしら?」

「んー? なあに?」

「直美って元々は男の人が好きだったのよね?
その時を思い返してみて、何か感じることってない?」

「うーん、そうだねー。中学校くらいまでは普通にイケメンが好きだったよ。男性アイドルがテレビに出てると、あの人カッコいいって言ってたかも?」


恭子は、直美の催眠深度が下がってきていないか心配していた。

催眠の影響下にあった誠が、今は真里と付き合っている。

真里の手腕によって、女装レズビアンに変えられようとしてるので、そちらは問題ないのだが、直美はこれまでと変わらず放置してるだけだ。




「でもそう言われてみると、あたしすごく変わった感じがするなー。
昔はレズ苦手だったのに、今はすっごく好きになっちゃったし、逆に男の人のことなんか、なんとも思わなくなっちゃった。
なんであんな気持ち悪いものぶら下げている人のこと、カッコいいと思ってたんだろう?って感じ」

「直美ってば、周りに流されやすいところがあるから、そう思い込んじゃったんじゃない?」

「なるほど、たしかにそうかも?
みんなも女の子の良さを知ったら、
絶対男よりも女の子の方が良いって思うはずなんだけどなー。
おっぱいは柔らかいし、身体はプニプニするし、臭くないし、世の中の女の人、みんなレズになっちゃえば良いのに。

あっ……でもそうすると、ライバル増えちゃうか……
キョウちゃんのこと、誘惑する人増えたらヤダなー」

「私は直美以外と付き合う気はないわよ」

「キョウちゃんってば魅力的だから、誰かに誘惑されて取られちゃうんじゃないかっていつも不安なの。
キョウちゃんが浮気しちゃったら、あたし悲しくて死んぢゃう……」


直美が悲しげな顔を作る。
恭子がそういうことをしないのがよく分かっているのか、かなりオーバーに演じてる感じだ。


「大丈夫。絶対にそんなことしない。誰に誘惑されても、私は直美以外に身体を許すつもりはないわ」


気持ちが落ち込んでいたこともあり、恭子はわりと真剣に伝えた。それを受けて直美が顔を少し赤らめる。


「もぉ、分かってるってば……♡
あたしもキョウちゃん以外と一生しないよ♡」


恭子は少し笑うと、

「むしろ直美の方が心配ね。いつも色んな女の子に目移りしてるから、誰かを誘惑しないか心配だわ。私、悲しくて死んぢゃう」

直美のマネをして見せた。


「あーそれとこれはー……あたしは、女性の美というのを研究してるのであって、あー決してキョウちゃん以外の人にー目移りしてるわけでわ」

「ホントにー?」


いじわるそうに言う、顔は半笑いだ。


「もぉー! ホントなのー! キョウちゃん以外、絶対好きにならないんだから!」

「えっ!? ちょっと……なおみ! ぁんっ♡」


直美は言い終わると、再び恭子に淫欲の牙を剥いた。
恭子の身体に噛みつき淫毒で満たしていく。

そうして一時間後に二戦目を終え、二人は眠りにつくのであった。



※※※



薄暗い寝室で静かに横たわる二人。
恭子は目を開けて考え事をしていた。


もし催眠を掛けていなかったら、
直美と誠はどうなっていただろうか?

誠は◯◯大学に合格し、直美はどこか別の学校に通うか、既に就職していたかもしれない。

誠は良い会社に就職し、二人は結婚。
幸せな新婚生活を築いていたことだろう。
誠と過ごし、幸せそうに微笑む直美の顔が思い浮かんだ。

自分では本当の意味で直美を幸せにしてあげることはできない。結局は催眠をかけ直し続け、この関係を維持していくことになるだろう。

そう考えると涙が溢れてきた。
この涙は何によるものだろう?

直美と本当の恋人になれないことへの悔しさだろうか?
直美を幸せにしてあげられないことへの悲しさであろうか?
二人の幸せを潰してしまったことへの罪悪感か?

涙と共に鼻水が出そうになり、恭子は軽く息を吸った。
起き上がりベッドの棚にあるティッシュを一枚取る。

そしてなるべく音を立てないように鼻をかみ、直美の寝顔を見つめた。

安らかな吐息を立てて眠る彼女。
恭子は思わず言葉を洩らした。


「直美…………ごめんなさい…………」


再び鼻をかむ、涙はまだ止まらなかった。

辛い、悲しい、苦しい。

何度も何度もこの現実に落とされては、心の中で謝罪を繰り返してきた。いつかは耐えられなくなる日が来るかもしれない。

自分はその時どうするだろうか?
直美に全てを打ち明けるだろうか?

だが打ち明けたところで彼女のことを余計不幸にするだけだ。なら、やはり騙し続けるしかない。

しかしそれが何の解決にもならないことを恭子は知っていた。


「キョウちゃん、なんで泣いているの……?」

「!!」


ふいに声がして、直美の方を見た。
先程まで眠っていた彼女は、目を開けて心配そうにこちらを見つめていた。


「起きてたの……?」

「キョウちゃんが泣いていたら、すぐに起きるよー。
あたしに謝っていたみたいだけど、何かあったの?」


謝罪の言葉も聞かれていた。

心配半分、興味半分。
覗き込むように直美は見つめている。

一瞬、恭子は迷ったが、
切り替えの早さから、すぐに冷静になり返事をした。


「今日ストーカーに追われていたじゃない?
その夢を見て怖くて泣いてしまったの……直美にも心配掛けてしまったし、それでごめんなさいって謝っていたのよ」

「あーそっか。あたしのことは気にしなくて良いのに……。
キョウちゃん、明日から学校に行く時も帰る時も、時間合わせるようにしよ?
ストーカーを見つけたら地の果てまで追いかけて、やっつけてあげるから!
そしたら警察に突き出して逮捕してもらおうよ?
あたしなら出来るから、絶対大丈夫だから」


たしかに直美ならできるかもしれない。
だが問題点はそこではない。

恭子は再び話を誤魔化すと、再度直美に危険なマネをしないように伝え、眠りに付くのであった。


次の日……


「はい、そうなんです。不審な男で、黒いジャケット、黒いキャップの付いた帽子、大きめの白いマスク、サングラスを付けていました」

「わかりました。情報提供ありがとうございます。
すぐに警備体制を切り替え、厳重に見回ることにいたします」


マンションの一階にある警備室に電話をする恭子。
夜にも電話を取り次げるので、次回からは見かけたらすぐに連絡して欲しいと伝えられ、話を終えた。

その後、恭子と直美は、誠と真里のように時間を合わせて行動をするようになった。



※※※



「ふぅ……ふぅ……はぁ……はぁ……ぐふ……ぐふふふ……」


びゅっびゅっ!


薄暗い部屋の中、
小太りの男がパソコンを眺めて自慰をしている。

床はゴミで散らかっており、
テーブルの上にある飲みかけのジュースは少し発酵しているようだった。
流し台にはカップメンの容器が捨てられ、ハエが集(たか)り悪臭がひどい。

何度も射精を繰り返し、男は床に寝転がった。辺りには男が投げ捨てた精子入りのティッシュがいくつも転がっていた。


(不審な男だって?
せっかくぼくが見守ってあげていたのに……失礼しちゃうな)


壁には警備服が吊るされている。
仕事終えたばかりであろうその男は、パソコンを再び注視した。

スピーカーから女性二人の喘ぎ声が聞こえてくる。


『あっ、あっ、なおみぃ♡ すごぃっ、それ、あんっ♡』

『はぁはぁ、キョウちゃん、かわいい♡
もっと気持ちよくなってね♡ えいえいえいっ!♡』


パソコンの音声を聞き、このマンションの管理人。
牛久沼(うしくぬま) 達郎(たつろう)は言う。


「まさかあの女神がレズだったなんて……。
ぼくが……彼女に男の良さを教えて、正しい道に導いてあげるんだ……ぐふふ……ぐふふふ」


Part.84 【 張り型◇ 】


私はアダルトショップの店員。


昨今は動画サイトや通信販売などで、アダルト動画や大人のオモチャを購入する層が多くなり、店の売上は年々減少傾向にある。


現在はパソコンの操作が分からない中高年や、

アダルトサイトへの個人情報の登録を嫌がる層、

実物を見て購入したい人などがいて、なんとか経営できている状態だ。


ほとんどは男性客であるが、

ごく稀に挙動不審な人物が紛れていることがある。


それはこういった物を買うことへの恥ずかしさからか、

年齢制限に引っ掛かっているためか、未成年や童貞の場合が多い。


だがこの日は違った。

忘れもしない。

実に特異な人物と出会うことになったのだ。



ガラガラガラガラーーーー


「いらっしゃいませ」



店の扉が開き、見るからに不審な人物が来店する。


晩秋にしては重すぎるコートの重ね着。

深いニット帽を被り、そこから茶に染めた長髪が伸びていた。


極端にでかいサングラスに顔の半分が隠れるほどの黒マスク。なぜか手袋を着用しており、長靴も履いていた。


概ね雪国から来た不審者と言ったところであろうか?


その者は実にオドオドとした様子で、店内をうろつき始めた。他の客もとんでもない奴が入ってきたといった感じで注目している。


暑いのか、動きにくいのか、それとも緊張しているのか、息を荒くしながら商品を物色しているようだったが、お目当ての商品を見つけると途端に動きを制止させた。


その注目された商品とは『ペニスバンド』


男性器を模したゴム性のおもちゃをベルトで腰に固定し、女性が女性に挿入するために使用する淫具だ。

女性がマゾの男性に使用する際に使われることもあるという。


不審者は、豊富に取り揃えてあるペニスバンドの中でどれを選ぶか迷っている様子だった。


三十分以上経っても決められないようだったので、

仕方なくサポートを始めることにした。



「お客さん、どういったものをお探しで?」



普段はこのように声を掛けることはない。

怪しすぎる相手だったので、早く帰って欲しくて声を掛けたのだ。



「あ、あ、あの……これ……初心者向けで良いのありますか?」



奇妙な声だった。

太い声だが、明らかに作り声。


マスクの隙間から見える肌や、

透けたサングラスを通して見える眼。


店員はそれが男性に扮した女性であることをすぐに察した。



(なんだ女性か、どうりで挙動不審だったわけだ)



女性が一人で来るケースは珍しい。

来たとしても大抵は彼氏と一緒だ。


とはいえ、客に女性も男性もない。

店員はひとまず警戒レベルを下げると問いに答えた。



「相手の方は男性ですか? 女性ですか?」


「あ、えっと……その、だん…………じょ、女性です」


「女性でしたら、こちらの性剣Xカリバーがおすすめです。

長さ15cm、太さも最大2.7cmほどで、大きすぎず、初心者の方でも安心です。

しかも電動機能もあり、スクリューのように中をほじってくれるので、感じること間違いなしです」


「なるほど……じゃあそれで……」



女性は、よく分かっていない様子であったが、とりあえずオススメされたものなので買うといった感じであった。



「ありがとうございます。他に入り用はありますか?」


「いえ、これだけで十分です……」


「わかりました。ではレジの方までお願いします」


「はい」



店員と共にレジに向かう女性。

ようやく重い仕事を終え、晴れ晴れとしている様子であった。


しかしレジに向かう途中で、展示してあるピストンマシンに足を引っ掛け転倒してしまう。



「あっ!」



分厚いコートを重ね着していたため、受け身を取ることができず、身体を激しく床にぶつけてしまう。


その衝撃で被っていたニット帽とウィッグが、ずり落ちてしまった。ついでに付けていたサングラスと黒マスクも取れてしまって大パニックだ。


店員も急な出来事に驚いたが、

何より彼を驚かせたのが、問題の彼女の容姿だった。


長く艶のある黒髪に、色白の美しい肌。

大和撫子風のおっとりとした気品ある顔立ちは、とても一人でアダルトグッズを買いに来る人物に見えなかった。


女性こと『真里』は、

素顔がバレてしまったことに狼狽(うろた)え、

顔を紅く染めて恥ずかしがっていた。


(ひぃえっ!! どうしよう! どうしよう!?

せっかく変装してきたのに!!

あぁっ!! マスクの紐の部分取れちゃってるし、サングラスも耳に掛ける部分が折れちゃってる!!

な、なんでこんな時に~~~~)


ウィッグも鏡の前でないと再セットできない。

髪をウィッグの中に入れなければならないため、簡単には被れないのだ。



「だ、大丈夫ですか?」


「あっ、はい! その、ごめんなさい、引っ掛かってしまって……あうぅ……」



取り乱しながらも謝罪する真里。

そんな彼女を見て店員は思う。



(なんやこの人、めっちゃかわええ!)



男の目から見て、うろたえて恥ずかしそうにする真里はかなり可愛かった。それこそアイドル顔負けである。


そんな彼女に加虐欲を駆り立てられた店員は、つい意地悪をしてしまった。



「良かった、怪我がないようで……危ないので性剣Xカリバーはこちらでお持ちしますよ。お姉さん」


「はうぅぅ……お願いしますぅ……」



敢えて商品名と性別を言い、羞恥心を煽る。

店員としては失格であるが、彼も一人の男だ。

こんなアイドルのように美しい女性とこんな会話をする機会など滅多にない。そのため常識外の行動に出てしまったのだ。


真里は、消え入りそうな声になりながらも大人しく店員に付いていった。

お姉さんと呼ばれ、既に性別がバレてしまったことから、顔を隠すことも、裏声を出すことも止めてしまったようだ。



ピッ!ピッ!


「お会計6,128円になります」



商品のバーコードを読み取り袋に詰める。

真里が手袋で出しにくそうに小銭をいじっていると、

店員が覗き込むように話しかけてきた。



「お姉さん、確認なのですが、お相手の方は女性で間違いありませんか? こちらは女性向けの商品になっているのですが」



真里はそれを聞き、再び顔を赤らめた。

本当は誠に入れるために購入したペニスバンドであったのだが、男性に変装していたため、相手を女性と答えるしかなかったのだ。


だがこれから男性と訂正するのも恥ずかしく、

なおかつ訂正した場合、もう一度商品を選び直さないといけなくなる。一刻も早くここから逃げ出したかった真里は仕方なく肯定することにした。



「ま、間違いありませんっ……女の人です……」



その返事に店員はニタリと笑みを浮かべ追撃する。



「わかりました。お姉さん、レズビアンだったのですね」


「はぅ……はぃぃ……レズビアンです…………」



もうこれ以上ないほど、顔を紅く染める真里。

お酒を飲んで酔っぱらってしまったかのような紅さだ。


泣き出しそうになりながらも、

ようやく会計を終え、彼女は足早に店を立ち去るのであった。


真里のいなくなった店内では、

店員が十分満足したような顔つきで椅子に座っていた。

股間は完全に盛り上がっており、元気いっぱいだ。



(はぁーー俺、この店で働いていて本当に良かったわ)



その後、彼はこの記憶を元に自慰に耽るのであった。




※※※




その日の夜……



パジャマを着た真里と誠は、

いつものように勃起不全の治療に取り組もうとしていた。


最近、誠は慣れてきたのか、勃起中に萎えることも減り、同人誌なしでも真里のフェラチオを受けられるようになっていた。

射精するには、まだ同人誌の力を借りねばならなかったが、それでも二人にとっては大きな進歩であった。



「誠くん、今日はいつもと違うことをしたいのですが良いですか?」


「違うこと?」


「はい、前からしたかったのですが……言い出しづらくて……」


「遠慮しないで。私、いつもしてもらってばかりだったから、真里さんにそう言ってもらえて嬉しいよ」


「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて……」



そう言うと真里はクローゼットの扉を開け、中から紙袋を取り出すと、布団に座る誠に差し出した。


紙袋の中には、真里が高校時代に着ていた夏用の制服が入っていた。



「…………? 真里さん、これは?」


「これは私の高校時代の制服です。この前、実家に帰った時に持ってきたんです」



なぜこれを持ってきたのだろう?

まだ意図が飲み込めない様子の誠に、真里は説明した。



「今日はこれを着てエッチして欲しいんです!」


「えぇ!?」


「なんだか最近マコちゃんのことがすごく可愛くなってきちゃって……完全に女の子に戻ってもらって、エッチなことしたくなっちゃったんです……」



性交時に真里がしていることは、誠のちんちんとお尻とおっぱいへの愛撫だ。

女のように喘ぐ誠を見て、彼女も股間を濡らしていたのだが、最近その傾向が強くなってきていた。


原因は、先日、掛けられた催眠術にある。


小早川に商談で呼び出された真里は、

女の誠を男の誠よりも良いと暗示を掛けられていた。


元々は二人を別れさせるために掛けた催眠術であったが、意図せず真里のレズっ気を上げる結果となってしまっていた。


今の真里は、男の誠よりも女の誠の方に魅力を感じるようになっていたのだ。



「少しびっくりしたけど、良いよ。女の子の服着るのなんだか久しぶりだな」



心が女に戻った後も、誠は男として生活していた。


理由は、これまで男として過ごしてきた誠が、

急に女に戻ったら、付き合い始めたばかりの真里がどんな誤解を受けるか分からなかったからだ。


巷では真里はレズビアンなのではないかと言われている。自分が女性に戻ったなら、おそらく疑惑は確信へと変わるだろう。


だが真里は厳密に言えばレズビアンではない。


現に彼女は、女性に欲情することはないし、

読んでいる同人誌だって9割以上が男同士の恋愛物だ。


誠は真里に有らぬ誤解が生じぬよう、男の姿で過ごしてきたのだ。実際、話し方が変わっているので、意味などなかったのだが……。



「じゃあ、さっそく始めましょうか!」


「うん、いいよ」



誠は真里の化粧道具を借りてメイクを始めた。

がっつりとした厚化粧ではなく、うっすらとしたナチュラルメイク。久しぶりに行う化粧は、とても楽しく感じられた。


それは本来の自分に戻る感覚。

こうして女性の姿に身を包むことが、誠に安心感を与えていた。



(はぁ……マコちゃん綺麗……)



女性的な誠の容姿が、より女性らしく変わっていく。

以前は戸惑いしか感じなかった彼のそんな姿に、真里はトキメキを感じていた。



「マコちゃん、すごく綺麗です……次はこれに着替えてください」


「うん……」



真里の前で女性に変わっていくことに、誠は一種の背徳感と多幸感を得ていた。恋人に今の自分を認めてもらえる幸せ。

真里の限りなく広い包容力に、もっと包まれていたいと思った。


真里の制服に袖を通す。

愛する恋人の制服を着ることを嬉しく思う。



(あぁ……真里さんの匂いがする……なんだか一つになれた感じ♡)



通常の女装とは違う感覚に、誠は自然と微笑んでいた。そんな彼の姿を見て真里は思う。



(マコちゃん……かわいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!♡

すっごく綺麗で、めちゃくちゃ可愛い♡)



負の感情は一切湧かなかった。

むしろ誠への愛おしさが何倍にも膨らみ、同時にこんなに可愛い彼女をこれから好き放題できることに喜びを感じていた。



「着てみたよ、真里さん。ど、どうかな……?」


「すごいです! 本当の女子高生ですよ! すごい似合ってます♡」


「そ、そうかな……ちょっとだけサイズが小さいかも?」


「サイズが小さいのは仕方ないですね……

でもおかしいってほどではないです。あっ、そうだ!」



真里は何かを思いつき、再びクローゼットへと向かった。引き出しの下の段を開き、中からショーツを取り出す。



「えっ……真里さん、まさか……」


「そのまさかでーす♡

さぁ、マコちゃん、私のショーツ履いてください♡」


「そ……それは……」


「何でも聞いてくれるんですよね?」


「う、うん……」


「じゃあ、今履いてる邪魔なパンツを脱いでください♡」


「うん……いいよ……」



誠は真里に言われた通りパンツを脱ぎ、ショーツに足を通した。真里が着替えを手伝い、普段真里の性器が密着している部分に誠の性器が密着する。



「あぁ……真里さぁん」


「どうしたんですか? そんな声出して。

もしかして私のおまんことマコちゃんのおまんこが間接的にキスしてるから、切なくなっちゃってるんですか?」


「うん……そう……」


「恋人同士だから良いんですよ。

ほらぁ、もっといっぱいチューしてください♡」



そう言い真里は、誠の性器をショーツ越しにすりすりと撫で始めた。



「あぅんっ♡ はぁ……ダメぇそんなの……はぁはぁ……♡ 真里さんのショーツ、汚れちゃう……」


「また洗えば良いんです。マコちゃんが汚しても、私は平気ですよ♡」



そうして真里はしばらく甘く責め続けると、本題に入るために誠を一旦布団に座らせた。



「マコちゃん、私が良いと言うまで目を閉じてもらって良いですか? 今日はマコちゃんにプレゼントがあるんです♡」


「プレゼントあるの? ありがとう、真里さん!」



プレゼントと聞き、誠は大喜びだ。


真里は廊下を進んで下駄箱まで行き、

隠してあったプレゼントの箱を取った。

そして中身を取り出し、

服を脱ぎ全裸になると、それを装着した。



「準備できましたー♡

マコちゃーん、目を開けてくださーい♡」


「はーい♡」



ニコニコと笑い、目を開ける誠であったが、

目の前に突き出された見慣れぬ棒に、目の色を変えた。


それは男性器によく似た突起物であった。

腰に固定された突起物、ベルト、どちらも肌色で、本当に真里におちんちんが生えているようだった。



「ふふふ……驚きました? マコちゃんにと思って買ってきたんです!」


「真里さん、これって……」


「私のおちんちんです♡ 今日はこれでマコちゃんのことをいっぱい気持ちよくしてあげますね♡」



女子高生の制服を着た誠とペニバンをつけた真里。

端から見ると、女子高生を犯そうとしている痴女の構図だ。


真里はすっかり色に染まった目で誠を見ていた。

彼女は目の前の可憐な女子高生の頭を優しく撫でると、

口元にペニスの先端をあてがい舐めるよう指示した。



「さぁ、マコちゃん、さっそくご奉仕してください。

私がいつもしているように、私のおちんちんを舐めるんです♡」


「は……はぁい……」



誠はまるで魔法にでも掛かったかのように、真里のチンチンを舐め始めた。



「ペロ……ペロ……ペロ……」



初めは辿々しくフェラを続けていた誠であったが、

すぐにコツを掴んだのか、慣れた動作へと変わっていった。


真里を上目遣いで見つめ、舌と唇を巧みに使い分けている。


ディルドに頬擦りをして見せたりと、まるで手慣れた娼婦のようである。それが可愛らしい女子高生の姿で行われるのだ。

並みの男性であれば、堪らずすぐに挿入へと移行してしまうであろう。



(うわぁ……なんかすごい厭らしい……私もこんな感じなのかな? 私より舐めるの上手そう……)



誠は覚えていないが、彼はプロのフェラテクを叩き込まれている。それが今回、実践で生かされていた。


そしてそうしている間にも……



むくむく……むくむくむく……



誠の小さなペニスが勃起を始める。

真里のショーツの中で静かにしていたそれは、

男の一物を舐めていると勘違いし、元気になってしまったのだ。



「あぁ……」


「どうしたんですか?」


「真里さん、私……立っちゃったみたい……」


「えっ? もう?」



一旦フェラを中断し、ショーツの中を確認する。

そこには嬉しそうに勃起する誠のペニスがあった。



「ホントだ! 同人誌なしでも勃起できましたねっ!」



新しい勃起方法を見つけ大喜びの真里。

彼女はそのままショーツを下ろし、勃起したポークピッツを露出させると、自らのペニスで擦り付け始めた。



「それにしても……マコちゃんのおちんちん、ちっちゃいですねーー♡ 私のおちんちんと比べてみてどうですか? ほーら、すりすり♡」


「やぁん……恥ずかしいよ……

はぁはぁ……真里さんのと全然ちがぅ……」


「マコちゃんのは大きくなってもこの大きさですもんね♡

私のちんちんの三分の一か四分の一くらいしかないじゃないですか? これじゃあどっちが本物か分かりませんね」



誠は真里に言葉責めされ、羞恥に身を捩らせる。

振る舞い方もより乙女に近いものへと変わり、本当におもちゃのペニスを付けた女子高生のようである。



「あぁんっ……真里さんの……私より逞しくてすごいの……」


「そうですね♡ マコちゃんのおもちゃと違って、長くて太いですもんね。それにいつまでも萎えないし、こっちが本物ですよね」


「うん……そうなの……私の方がニセモノなのぉ……あぁんっ♡」



真里の立派なペニスで擦られ、誠の勃起したオモチャちんぽの先からは、擬似精液がトクトクと溢れていた。


真里のおちんちんが大好きな誠のホモちんぽは、この兜合わせがたいそう気に入った様子だ。



「ふふ♡ マコちゃんはおちんちんバカにされると感じちゃうんですね♡ でもちょっぴり可哀想だから、優しくキスしてあげますね♡」



そう言い真里はペニバンの先端で、誠のペニスとキスを始めた。



「あっ……真里さん、それ厭らしいよ……」


「マコちゃんの大好きなおちんちん同士のキスですよ♡」


「はぁん♡ せつないよ……もっとしてぇ……」


「じゃあマコちゃんも自分のを持ってください。上下両方でキスしましょ♡」



真里と誠は、お互いのちんちん同士をキスさせたまま、唇でもキスを始めた。誠は完全に受け身で真里にされるがままだ。



(あぁ……なんだか本当に女の子のマコちゃんの方が良くなってきてる……。

私、やっぱりレズになっちゃったのかな……?)



己の変化に気付き始める。

これまで誠という性別が好きだと豪語してきた彼女であったが、ここに来て女の誠の方が好きだと認識し始めたようだ。


少しの動揺はあったものの、目の前の美少女をもっと愛したいという気持ちがそれを打ち消した。



「マコちゃん……そろそろ、入れましょうか?」


「うん……私も真里さんのおちんちん、欲しくなっちゃった」



キスをしている間も、誠のアナルはひくひくと反応していた。真里のちんちんを飲み込みたくて、うずうずしていたのだ。それは誠の身体がハッキリと真里を恋人として認めている証拠であった。


催眠によって女性への欲情を完全に消された誠であったが、二人の見事な迂回策により、真里限定で興奮するようになっていたのだ。


四つん這いになりオネダリする誠。

縦割れのお尻の穴を見せつけ、男を誘惑するように腰を揺らしていた。



「ハァハァ……私のおまんこに……真里さんの逞しいおちんちんちょうだい……」


「すぐに入れてあげますから、待ってくださいね♡」



真里は棚からワセリンを取り出すと、ペニバンに塗り、誠の菊門に宛がった。



「マコちゃん、このおちんちんって聖剣エクスカリバーって名前らしいですよ。今からこの剣を、マコちゃんの鞘に収めてあげますからね」


「そ、そんな名前なんだ……あっすごい……♡

私、鞘になっちゃうんだ……真里さんの鞘に……」


「鞘になってください♡ 私のエクスカリバーを収納して、私専用の鞘になってください!」


「うんっ! なるぅ……真里さんの鞘になるのぉ♡」



プフッと外野から吹き出す声がする。

幽霊の幽子が、堪らず吹き出してしまったのだ。

今日も今日で、幽子は二人の変態セックスを観賞して楽しんでいた。


「おーおー、今日もやっていなさる。なんだ、また新しい変態プレイ思い付いたんだ。この二人のエッチは見ててホント飽きないな」



ズブッ!


「あぁぁんっ!♡」



伝説の剣(つるぎ)が、誠のお尻の鞘に収められる。

ゆっくりと慎重に収納されていき、誠は熱い息を吐いた。


真里の本物のエクスカリバーと違い、

誠の偽物のエクスカリパーは、

収納する鞘もなく、だらしなく地面に向けてサラサラの体液を垂れ流すだけであった。


そうして完全に収納を終えたところで真里は一旦動きを止める。



「すぐに動かすのは止めておきますね。まずはおちんちんをお尻に馴染ませないといけないみたいなんです」


「ハァハァ……そうなの?」


「えぇ、なのでしばらくこのままですかね?

あっ、そうだ! 体勢変えましょう。

マコちゃん、このまま私の股間の上に座ってください」



四つん這いから背面座位の姿勢へと変え、

誠をペニバンが起立する真里の股間の上に座らせた。


誠の体重がペニバンに乗り、より深く奥を抉る。



「んんん……あぁ……」


「大丈夫ですか? 痛くないです?」


「うん……大丈夫……平気だよ」


「それなら良かったです。じゃあ始めますね♡」



真里は誠のおっぱいを制服越しに鷲掴みにすると、優しく揉み始めた。



「はぁ……はぁ……あぁんっ!♡」


「気持ちいいですか?」


「うん……真里さんの手、気持ちいぃ♡」


「ふふふ、私もマコちゃんのおっぱい柔らかくて気持ちいいです♡」



誠の履いているスカートには、

小さな盛り上がりと愛液で濡れた染みが出来ている。

そこさえなければ、見た目は完全なレズビアン同士のセックスである。誠の方が真里より年上のはずであるが、今は真里よりも幼く見えるようだった。



「マコちゃんのおっぱい、私が大きくしてあげますからね。

これからは毎日、こうしておちんぽ入れておっぱい揉んであげます♡」


「あぁん……真里さん、好きぃ……♡」


「もっとおっぱい大きくして、もっと女の子らしくなりましょうね♡」


「うん……私を真里さんの彼女にして♡」



そんな誠のセリフに真里はハッとする。



(うわぁ……これデジャブだ……前、こんな夢見たよね……?)



夢ではない。正確に言うと真里のオナネタの一つである。

以前T北に旅行に出掛けた際に、真里は妄想の中で誠をふたなりちんぽで犯し、同じセリフを言わせていたのだ。



(がんばれば夢は叶うんだね。そろそろ動かしても良いかな?)



ここで真里は腰を少しグラウンドさせてみた。

誠のアナルの内側をペニバンで擦り始める。



「はぁうううっ!♡ はぁ……はぁ……」



刺激がアナルに走り、誠は嬌声を上げた。

誠の様子を伺いながらも、小さな振動をお尻に与えていく。同時に胸への愛撫も忘れない。


誠はおちんぽとおっぱいをギンギンに勃起させながら、真里の腰使いに身悶えしていた。


そうしていくうちに、徐々に限界まで高まり……



「真里さぁん……わ、私……イキ…………イキそう」


「良いですよーイッてください♡

私のおちんぽで、おまんこ気持ちよくなってください♡」



純な女子高生が、レズの痴女にペニバンで突かれている。

男女逆のセックスではあるが、真里と誠の関係においては、この姿こそが自然体と言えるであろう。



「イク……わたしの……おまんこ……イッちゃうの……

はぁっ……はあんっ!♡ いくぅ……いくぅ……いっちゃうう……」


「思いっきりイッて良いですからね、女の子のマーコちゃん♡

男を捨てて女の子として、イッちゃってください♡」



誠のお尻おまんこが彼氏である真里のおちんぽをキュウキュウと締め付ける。

標準的な女性よりも大きな誠の淫核は、ピクピクと最後の痙攣を起こし、内側に溜まった愛液の塊を外へと押し出した。



「真里さんの……おちんぽで、わたしっ!

いっちゃうのおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!♡♡♡♡」



ビクビクビクビクビクビク!!


ぴゅっぴゅっ♡



誠は直接性器に触れることなくトコロテンしてしまった。

二人はついに同人誌に頼らずに、絶頂に到達することができたのだ。



「はぁ……はぁ……」


「ハァハァ、ついに……イケましたね……」


「う……うん……真里さん、わたし……嬉しい……」



誠は目を潤ませ真里を見ている。

彼氏の真里に抱きつき、控えめに息を吐く。

彼は真里でイクことができて、感動していた。


これまで同人誌で絶頂に至っていた誠であったが、

精神的には満たされない気持ちが強かった。

彼は同人誌ではなく、真里で満たされたかったのだ。



「マコちゃん、どうしたんです?

もしかして泣いてるんですか?……痛かったとか?」



心配そうに見つめる真里に誠は顔を横に振ると答えた。



「ううん……全然痛くなかった……

真里さんでイケて、嬉しかったの……」


「マコちゃん……ぐすっ……わたしも……わたしも嬉しいです。やっと二人だけで出来ましたね……」



誠に釣られて、真里も泣き始める。

真里は誠を仰向けに寝かせると、覆い被さるように身体を重ねてキスをした。



「マコちゃん……私、マコちゃんがずっと女の子のままで良いと思ってます。

なんだか今のマコちゃんの方が本物って感じがして……

それに……私、男の子の誠くんよりも、女の子のマコちゃんの方が好きになっちゃいました。元々、レズじゃなかったのに……マコちゃんのせいですよ」



にっこりと微笑み気持ちを伝える。


不特定多数の女性に性的欲求を持つ直美と違って、

真里は女性化した誠にしか興奮しないため、レズビアンとは言えない。


しかし真里は誠限定でレズビアンになることを決めたのだ。



「でも……二人の赤ちゃんを作るんじゃなかったの?

私が女としてしかエッチできなかったら、真里さんの中に入れられないよ……」


「それもよく考えてみたんですけど……」



真里は未だに勃起する誠のおちんちんを指先で摘まんで言った。



「見てください。こんなにちっちゃくて、可愛らしいおちんぽ。膣の中に入れても入り口までしか入らないですよね?」


「…………そう言えば、そうかも」


「元々、マコちゃんのおちんぽは、女の子を妊娠させられるように出来ていないんですよ。これじゃあ中に入れても全然分からないと思います。

それにもし射精できたとしても、簡単に押し戻されて、外に出されちゃいますよね?」



真里が核心を突く言葉を吐く。


これまでも彼女は、

そういう考えが思い浮かばなかったわけではない。


現実に向き合うと悲しくなるので、見ないふりをしていたのだ。


だが今の真里は女の誠の方が好きになってしまっている。


これまでは男の誠に配慮して、

なるべくそういう意見を言わないようにしてきたのだが、

女の誠の方が好きになってしまった今となっては、

誠のおちんちんに配慮する必要は全然なかった。


なおも真里の猛攻は続く。



「それにマコちゃんの精子って全然白くないし、苦くもないんですよね。

ネットで調べましたが、本当はもっと白くてネバネバしてて、苦くて臭いらしいんですよ。

マコちゃんって、見た目や心だけじゃなくって、おちんぽ自体が既に女の子なんですよ。だから精子というより、女の子の愛液に近いんだと思います。もし運良く子宮まで入ったとしても、妊娠は難しいんじゃないですかね?」


「うん……そうかもね……」



しょんぼりと答える誠。

真里に次から次へと、自分のおちんぽが、いかに男性としての機能が備わっていないかを解説され、哀愁さえ漂わせているようであった。



「ですがっ! 」



真里は誠の頬に両手を軽く添えて言う。



「マコちゃんの身体が男であることに変わりはありません。

調べてみたのですが、体外受精って方法もあるそうなので、それを試してみませんか?」


「体外受精?」


「はい! 特殊な道具を使ってマコちゃんの精子を採取して、同じく摘出した私の卵子に入れて受精させるんです。

それを私の子宮に戻して妊娠させる方法らしいのですがどうでしょうか?」


「そういう方法もあるんだね……」


「これなら、マコちゃんの精子を無駄撃ちしなくて済みますし、精子を出す時は今みたいに、私のおちんぽを突っ込めば良いんです!」


「それなら出来そうだね。

でも真里さんは私のちんちん入れなくても本当に良いの?」


「んーー前は入れて欲しかったのですが、今はそれほどでもないですね。

レズビアンになったので、男の人のおちんちんはもう要りません♡

その代わり、マコちゃんのおまんこにはいっぱい入れされてもらいますよ♡」


「なんだか、男女逆になっちゃったね……」


「そうですね。だから、安心して……ちゅ♡

女の子になってくださいね♡」


「うん……私、真里さんのお嫁さんになるね♡」



そうして愛を誓いあった二人は、

今度は正常位の姿勢で行為に励んだのであった。


それから行為後のピロートークで、

誠の今後について話し合うことになり、

世間的には男で過ごした方が都合が良いということで、

行為時のみ女性として付き合うこととなった。



(ふぅーー今日も見応えのある変態っぷりだったなー

まぁ上手くエッチできるようになって良かった。

二人の子供も見てみたいけど、私はここから出られないから無理かなーー)



二人の幸せな姿に微笑む幽子。

嫉妬と同情を経たこの幽霊は、何度も二人の交わりを見ていくうちに親近感を覚えるようになっていた。


今では二人の幸せを望む幽霊へと変貌を遂げていた。

彼女を包む霊気も、初めの薄暗いものから、明るく光を帯びるものへと変化していた。


幽子は、二人の幸せな未来を信じて疑わなかった。

彼らが恐ろしい事件に巻き込まれていることも知らずに……。



※※※



「小早川様、誠と、忍の女について新たな情報が入りました!」



一人の黒服が、報告書を片手に社長室を訪れる。


小早川はネイルアートの途中で、爪に絵を描いて過ごしていた。

黒服の方を見もせずに返事をする。



「なにヨ? 騒がしいわネ。大した内容じゃなかったら、ケツの穴百突きの刑に処すわヨ?」


「ありがとうございます。

それは願ってもないことなのですが……実はですね……」



黒服は努めて冷静に仕入れた情報を伝えた。

それを聞き、小早川は笑みを浮かべる。



「へー良いことを知ったワ……まさかあの二人がネェ……」



小早川は彼らを更なる地獄に落とすべく、新たな策を思い付くのであった。