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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.77 【 欠陥住宅? 】

誠のアパートから〇✖大学を挟みちょうど反対側に、
真里の住むアパートがあった。

3階建ての建物、その2階の中央に真里の部屋がある。

真里の部屋は、手前に4.5畳程度のキッチンがあり、奥に飲食就寝するスペースがあった。
バスとトイレは、一体化されたユニットバス方式で、防水性のカーテンで仕切りがされていた。

窓から外を眺めると、
荒廃した建物と雑草の生い茂る空き地が見える。

暗くどんよりとした雰囲気。

コンビニやスーパーまでも遠く、
あまり賑やかな土地とは言えなかった。

そういう環境であるためか、はたまた別の理由があるからか、
真里の部屋の上下両隣には誰も住んでおらず、
騒音を気にせずに暮らせるといった意味では、よい環境であった。


真里がこのアパートを選んだ理由は、
敷金礼金がいらず、家賃が極めて安かったからだ。

真里は住む家にお金を掛けるよりも、
趣味である同人グッズに使いたいと思っていた。

実家にいた頃と違い、
親の目を気にする必要もなくなり、
狭い部屋には、彼女のBLの同人誌が山積みにされていた。


(…………どうしよう)


その山積みになった同人誌を見つめ、
真里は何やら考え事をしている。

和室、キッチン、お風呂場など
生活スペースを見回し、何やら焦っている様子だ。


(くっ………まずいな………
あと20分以内にこれをなんとかしなくちゃ……)


彼女はこの膨大な同人誌を隠す場所を探していた。



※※※



1時間前……

午後の講義を終え合流した真里と誠は、
食材を買うためスーパーへと向かっていた。


「ねぇ、真里さん」

「はい?」

「たまには真里さんの家で過ごしたいんだけど、どうかな?」

「えぇ~、私の家、すごく狭いですよ……」

「それでもいいよ。真里さんがどんな生活してるか見てみたいし」

「う~ん、いつも誠くんの家にお邪魔させてもらってますし、良いですよ」

「本当! ありがとう」


真里の部屋に行けることになり喜ぶ誠。
こうして二人は、別のスーパーで買い物をして、
真里の家に向かうことになった。


「真里さんの家、初めてだなーすごい楽しみ♪」

「何にもないところですよ。でも静かで良いところです。
夏もなぜかクーラーなしで過ごせるくらい涼しいんですよ」

「へぇ~風通しの良いところなんだね」

「それとご近所の方がとても親切です。
具合悪いところはない?とか、最近変わったことはない?とか、顔を合わせる度に気に掛けてくれるんです!」

「それは良いね。静かで過ごしやすくて、ご近所さんも親切だなんて何も言うことないね」

「そうなんですよ。ただやっぱり少し狭いかなって思います。本を置くところだって………はっ!」

「ん? どうしたの?」


(やばい……同人誌のことすっかり忘れてた……)


真里の顔から血の気が引く。

実は前にも、誠から家に行きたいと言われていたのだが、本を隠す場所がないため断っていたのだ。

しかし最近は誠の家で過ごすことが多くなったため、BL本をそのままにしていることをすっかり忘れてしまっていた。


(どうしよう……今更断ることなんてできない。
誠くんの部屋に泊めて貰っているのに、自分の部屋はダメだなんて言えないよ……)


「あっ……え、ええっと……すみません!
実は少し散らかっていたのを思い出したので、
入る前に10分、20分ほど待ってもらえますか?」

「大丈夫、気にしないよ。私も片づけ手伝うよ?」

「だ、ダメです……女の子ですから、ちょっと、その……いろいろ……いろいろあるんです!」

「いろいろ?」


真里が女の子と言えど、
誠も半分女の子みたいなものである。

女の子の気持ちは理解してたし、真里が泊まるようになってからは、生理について話すこともあった。

誠の家のトイレには、
真里用のナプキン入れもあるくらいだ。


「んーでも真里さんのプライベートスペースだしね。
良いと言うまで外で待ってるよ」


とはいえ、真里が嫌がっているなら無理強いはしない。
誠はにっこりと微笑むと、そう答えた。



※※※



(とりあえず、入れられるだけ布団の中に入れよう)


真里は押入れからマットを取り出すと、脇のチャックを降ろし、同人誌を詰め込んだ。


(10分の1も入らない。全然ダメだ……)


膨大な量の同人誌。
高校時代に購入し、ダンボールに詰め込んだ物もあった。

押入れの下の段は、既に同人誌で埋め尽くされている。
洗面台やキッチンの棚は調味料や洗剤でいっばいだ。


(同人誌だけじゃない……グッズもポスターもあるし、これを全部隠しきるなんて無理だよ。
ある程度、見せる物、隠す物で分けた方がいいな……。
グッズとかは、漫画研究部の思い出の品ということにして、過激なエロ本は……)


真里は高く聳(そび)えるBL本の山を眺める。
霊峰BL山(ざん)。数々の尊みを祭った神聖な山である。
これを隠すなど、手品師でもなければ無理な話だ。


(せめて収納する大きな棚があれば良いんだけど……大きな棚……あっそうだ!!)


真里は一旦同人誌を入れたマットを押入れにしまうと、
余分に入れてあったシーツを取り出した。


(棚がなければ……作れば良い……)


かなり不格好なものになるが、
真里は“同人誌”で棚を作ることを決めた。


壁の端に同人誌を積み上げ、
端を揃えてシーツを掛けて固定する。

そうして柱を二本作ったところで、
柱の間の床に同じ高さで残りの同人誌を並べていく。

最後に並べた同人誌の上にシーツを被せて、ズレ落ちないように固定し同人誌の棚の完成だ。

あとは中央のシーツの上にポットや同人グッズなどを並べていけば、本当の棚のように見えてくるものだ。


(これを、わずか20分で完成させました)


そう思い時計を見ると、既に40分以上は経過していた。


「ダメじゃん!」


真里はそう言って項垂(うなだ)れると、
すぐに誠を迎えに行った。



※※※



「おじゃましまーす」


真里に迎えられ入室する誠。
初めての真里の部屋ということで、内心ワクワクしていた。
そこに40分以上も待たされ、気分を害している様子はない。


「誠くん、外寒かったですよね?
今お茶入れますから座ってください」


真里は座布団に誠を座らせると、
急須にお茶を入れ、ポットからお湯を出した。


「少し変わった部屋だね。その棚?……はどうしたの?」

(ギク……)


さっそく、棚について指摘が入る。


「えっと、私大きな棚が欲しかったんですけど、高くて買えなかったので、古本を使って自作したんですよ」

「えぇっ、これ古本で出来てるんだ!」


真里は棚が本で出来ていることを説明した。

ただでさえ不格好な棚だ。
触れば、どっちみち本で出来てることは分かるだろう。
BL本であることがバレなければいいのだ。


「ホントだ……本で出来てるね。これ何の本なの?」

「なんの本かは確認してないので分かりません。
チリ紙交換所に行って、同じサイズの本を集めて来ただけなので……」

「なるほどね。でもこういうこと出来るってすごいよね。
真里さん、絵も上手いし、デザインもできるし、こっちの方の才能が抜きん出てるよね」

「いやいや……そこまでは……」


即席で作った棚をそこまで褒められると微妙な気分である。

もっと時間があれば、さらに完成度の高い棚に仕上げることも出来ただろうが、ここまで不格好だと、自分の作品として紹介するのが恥ずかしかった。


ギィーーッ…………


ユニットバスのドアが開く音がする。


「あれ? なんだろう? ドアが開いたよ?」

「あー立て付けが悪いので、よく勝手に開くんですよ。
家賃だけは安いので、しょうがないと思っています」

「そっかー」


キュウ……チョロチョロチョロ……


洗面台の蛇口から水が勝手に流れ出した。


「水が流れてるみたいだよ?」

「これも古い建物なので仕方ないですね……大家さんに言ったら、その分水道料金を安くしてくれまして、なんと半額にしてくれたんですよ」

「半額に!? すごい気前の良い、大家さんだね」

「ええ、だからこのことは他の人には言わないようにって口止めされました。あ、言っちゃダメですよ~誠くんだから教えたんですからね?」

「うんうん、大丈夫。わかってる」


そんなこんなで、急にテーブルの物が落ちたり、電気が消えたりなど欠陥住宅っぷりが露呈したものの、二人は特に気にせず過ごしたのであった。



※※※



「いただきまーす!」


この日、真里と誠は、スーパーで買い集めてきた材料で餃子ハンバーグを作って食べていた。

通常のハンバーグと違って、
ポン酢を掛けて食べるこのハンバーグは、
表面のカリカリっとした皮がなんとも香ばしく、

シャキシャキした白菜とニラの食感と、
ジューシーでプリプリっとした豚肉の合わせ技で、
なんとも多種多様な食味を口の中で展開してくれるのだ。


「うーん♡ おいしーい!
生姜とニンニクが効いてますねー」

「うん、おいしいね、食欲のない時でも、
これならいっぱい食べられそうだね」


そうして食事を終え、食器を洗い終えた二人は、
仲良く一緒にお風呂に入り、就寝の準備を始めたのであった。



ゴシゴシゴシゴシ………

真里が洗面台で歯を磨いている。
既に歯磨きを終えていた誠は、敷いた布団の上で横たわっていた。


(静かな場所だなー
真里さんが歯磨きしている音以外は何も聞こえないや)



………………………テ
………ワカ………テ



(んっ? なんだろう……? 何か声がしたような?)


誠は起き上がると、
キッチンで歯を磨く真里に確認した。


「真里さん、呼んだ?」

「ンンー? ヨンフェマフェンヨー ゴシゴシゴシゴシ………」


気のせいか、誠は部屋へ戻ると再び横になった。



………………レテ………



(ん? やっぱり何か聞こえる………押入れの方からだ)



押入れの前に立ち、ふすまを開ける。

すると………。


チューー! チューーー!!


「うわっ!!」


鼠だ。

布団がなくなった押入れの上段に鼠が二匹。
誠を見上げるように座っていたのだ。

誠は驚き、体勢を崩してしまう。

彼は左足を下げて踏ん張ろうとしたのだが、
後ろに置いてあったティッシュケースを踏んでしまい、さらに大きく仰け反ってしまった。

その際に真里の作った即席棚を掴んでしまう。
見る見るうちに棚を形作っていた柱は傾き、ついには崩れてしまった。


ドスン!! ドスン!!

「フェ!? ナンニョオト?」


真里は慌てて口をゆすぐと誠のいる部屋へと入った。

そこには倒れる誠と、彼の身体の上に散乱している大量のBL同人誌があった。


「ひょえぇぇ!! 色々ヤバイ! 誠くん! 大丈夫!?」



…………………クスクス
……………………………クスクスクス


どこからか女性の笑う声がした。
しかし今の二人は、それどころではないのであった。
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