真里が意識を取り戻す一時間前。
小早川は拉致した誠を洗脳すべく、催眠に取り掛かろうとしていた。
最初は軽い暗示から、徐々に強い暗示に変えていくつもりだったのだが、
誠が思いの外、暗示に掛かりやすいタイプだったため、予定を切り上げて次の段階へと進めることにしていた。
「しかしこの子。ホント暗示に掛かりやすいわネ。優しそうな顔してるし、素直で良い子ちゃんタイプの男の子なのかもしれないワ」
帯を外し浴衣を脱がせると、彼の白く透き通った肌が外気に晒された。
「はぁ!?」
その場にいた全員が大きく目を見開く。
彼の胸には、女子中学生のような膨らみかけの胸があったのだ。
「これって、もしかして、おっぱい?
女っぽい顔立ちしてると思ったけど、本当に女なの!?」
小早川の顔が歪む。
レズカップルを間違えて拉致してしまうとは、なんという不覚……。
彼女は両手で頭を抱え、大きく項垂れた。
だがそこで誠のトランクスに小さな膨らみがあることに気づく。
「何かパンツの中に隠しているようネ。脱がせてしまいなさい」
どうせ変態レズカップルがおもちゃを挟んで遊んでいたのだろう。
そう考えていたのだが、
「小早川さん、大丈夫です。ちゃんと付いていました」
トランクスを脱がせた黒服が、その場を離れる。
床に仰向けになる誠の股間には、陰毛の生えてないツルツルの綺麗なちんちんが生えていた。
「なによこれ……こんな可愛いちんこ……見たことないワ」
小早川は誠のペニクリの可愛さに感動する。
そのまま彼の股間の前でしゃがみ込むと、さわさわとそれに触れた。
「ふふ……手触りも最高ネ……これぞアタシが探していた逸材だワ。
この美貌、滑らかな肌、男離れした体。新規顧客をゲットする最高の武器になりそうネ」
小早川は満面の笑みを浮かべて暗示を続けた。
「よーく、聞きなさい……あなたはネ。
本当は女の子よりも男の人の方が好きなの……特に太くて逞しいおちんちんを持つ男の人が好き。見てるだけで舐めたくなってしまうほどにネ」
男でありながらも、女性よりも男性が好き。
男らしくありたいと思うよりも女らしくありたい。
しかし、これらは既に恭子が掛けたものと大差はなかった。
今の誠はそれを乗り越えてなお、真里のことが好きなのだ。
小早川がいくら催眠を掛けようとも、誠の現状に変化を及ぼすことはなかった。
だが、小早川は恭子にはない武器を持っていた。
「自分が男好きって十分理解したところで、さっそくこれを舐めてもらおうかしら?」
そう言い、小早川はスカートをたくし上げると、タイツとショーツを下にずらし、あるものを取り出した。
それは、あまりにも猛々しい極太の男性器。
作り物ではない、本物の男性器だ。
なんと小早川は女性ではなく、ニューハーフだったのだ。
※※※
彼女改め彼は、元はニューハーフヘルスで働く平凡なニューハーフだった。
そんな彼が催眠術に出会ったのは、今から約二年半前。
常連客の既婚の男性と恋仲になったものの、最終的に振られ自暴自棄になっていた頃であった。
(ちくしょー! アイツさえいなければ、〇彦さんはアタシのものだったのに……。あの人を奪っただけでなく、一丁前に慰謝料まで請求しやがって、あの女……)
小早川は浮気の代償として多額の慰謝料を請求されていた。
自分の店を持つのに貯めていた準備資金から、それを支払わなくてはならず、
人生設計が崩れてしまったのと、失恋のショックで、彼はひどく憔悴(しょうすい)していた。
(もうこの本を読む必要もないわネ……)
彼は将来のために経営学の勉強をしていた。
家の近くにある国立図書館で本を借りていたのだが、
資金を失った今となっては、それも不要な代物だ。
トボトボと図書館に出向き、無言で本を返す小早川であったが、そこで運命の出会いをすることになる。
このまま自宅に帰っても塞ぎ込んでしまうだけ。
彼は、何の気なしに図書館を回り、時間を潰していた。
今の心を癒すような本が見つかるかもしれない。
淡い期待を抱いて、本のタイトルを眺め歩いていると、図書館の係員と思しき女性が真っ黒な装丁(そうてい)の本を棚に戻しているのを見かけた。
小早川は一目見て、違和感を覚えた。
その本には、本来であれば付いているはずの図書番号と請求記号のシールが貼られていなかったのだ。
図書館の係員であれば、そんな本を本棚に戻すはずがない。
小早川は気になり、女性に声を掛けようとする。
しかし彼女は、足早にその場を離れようとし、本棚の角を曲がり、見えなくなってしまった。小早川も同じように角を曲がり、声を掛けようとしたのだが……。
「えっ?」
一瞬にして女性の姿が消えてしまう。
慌てて他の本棚の列を探すも、どこにも彼女の姿は見当たらなかった。
コーナーを曲がったのは、ほんの二、三秒の差。
そんな短い時間で姿を消すなど出来るはずがない。
あまりの不気味さに、若干恐怖を感じる彼であったが、その頃の自暴自棄の精神も相まって、逆に女性が置いた本に強い興味を持ってしまった。
元の場所に戻り、棚の上段を確認すると、確かにそれはあった。
さっそく手に取ってみる。
イラストも何も描かれていない黒でびっしりと埋め尽くされた表紙だ。
その表紙には『日本語』で『人生の転機を図る催眠術の本』と書かれてあった。
(人生の転機を図る……。今のアタシにずいぶんとタイムリーな内容ネ……)
小早川は、その本にまるで自分の心の内を見透かされてしまったような嫌な感じがした。冷や汗をかきつつも、本をめくる。
そこには実に分かりやすく、様々な催眠の方法が書かれてあった。
目で文字を見て、脳で理解するというより、直接情報が脳に書き足されていくような不思議な感覚だった。
(もしこの本に書かれている内容が本当なら……
まぁ単なるオカルトでしょうけど、暇つぶしにはなりそうネ。借りてみることにしましょ)
期待半分、疑い半分に借りることを決めた小早川。
図書番号すら付いていない本であったが、係員がそれに言及することはなく、難なく借りることができてしまった。
そういったこともあり、図書館を出る頃には、彼はこの本に確信的な期待を寄せるようになっていた。
これは、ただの本ではない。
魔力を帯びた悪魔の書。直感的にそう感じるようになっていたのだ。
その後、彼の期待通り、
黒い本は紛い物ではない本物の催眠能力を彼に与えてくれた。
同時に慰謝料の問題も解決された。
小早川が愛した男は、初めから妻と結託し、小早川の店の準備金を狙っていたのだ。
激怒した小早川は、催眠で男を真性のホモに変えて給与を貢がせ、
女の方は風俗嬢へと変えて、身体で金を貢がせた。
そうして金を稼ぐことに味を占めた小早川は、念願の自分の店を持つことになる。
彼は、店の周辺で見つけた美男子を捕まえては、催眠術を使ってその性的指向や考え方を変え、自分の店のニューハーフ嬢として働かせた。
この業界ではなかなか見かけないほどの美男子がニューハーフとして働いているということもあり、店の噂は瞬く間に広がり、彼は巨万の富を築き上げるようになった。
今では、政治家や大企業の役員など、有力者とのコネクションを構築し、社会的な影響力を強めつつある。
(今よりも高い地位を手に入れるには、母数の少ない同性愛者を抱き込むだけではダメ。可愛い男の娘を使ってノンケの大物を釣り、洗脳してアタシの支援者にしてしまえば、いずれこの世はアタシの思うがまま……)
小早川が望むのは、この世の全ての男性が同性愛者として過ごし、
女性は単なる子供を産む道具として蔑視される世界。
小早川は不運にもこれまで数々の恋人を女性に奪われてきた過去があった。
長年蓄積された女性への怨嗟(えんさ)は最悪の形で果たされようとしていたのだ。
※※※
ビクンッと勢いよく跳ねる小早川の男性器。
彼は誠にそれを差し出していた。
「ほーら……美味しそうでしょ……?
あなたはだんだんこれが舐めたくなってくる……男の人のおちんちんが愛しい……舐めると、とっても気持ち良くなれるわヨ」
誠は虚ろな瞳でそれを見つめると、ゆっくりと舌を差し出し這わせた。
(ホントにこの子、ニューハーフの才能があるわネ。
普通、ここまで簡単に舐めないわヨ。
ガールフレンドがいるようだけど、これも簡単に別れさせることができそうね。
まぁ、その前にこんな美男子と付き合った制裁は、あの女にしっかりさせてもらうけどネ)
小早川は誠にペニスを舐めさせながらも、これまで別れさせてきたカップルのことを思い出していた。
男には、男性から受ける刺激を敏感に感じられるよう暗示をかけ、彼女の目の前でホモセックスで果てさせ、女には、男同士のセックスに異常な興奮を覚えるように変え、彼氏の前でオナニーをさせイカせた。
お互いに涙を流しながら、快楽にのめり込んでいくカップルもいれば、相手を変態だと罵り合うカップルもいた。
全てのカップルに共通していたことは、ノーマルな恋愛ができなくなり破局を迎えるということだ。
その後、男は例外なくホモに目覚め、ニューハーフ嬢になるか、
他に好きな男性を見つけて、付き合い始めたりしていた。
女はBLにハマり、男性と付き合うことに興味を失ってしまう者がほとんどであった。
小早川の元には、風俗店の売上と、BLにハマった女性達が小早川の会社で制作したAVやBL本を買い漁ることによって得た収益が舞い込んできていた。
「ふぅ~まだまだだけど、初めてにしてはなかなか筋が良いんじゃない? これからしっかりとおちんちんの舐め方を教えてあげるから頑張るのヨ?」
小早川は誠を四つん這いにさせると、彼のお尻の穴にローションを塗り始めた。
そしてゆっくりと指を挿入していく。
「うぅっ!」
「大丈夫よー全然痛くない……全然痛くないワ……。
むしろこれは、とても気持ちの良いこと。
女の子におちんちんを突っ込むより、こうしてお尻に突っ込まれる方がずっと気持ち良いのヨ」
指が奥に挿入される度にビクンと反応する誠。
(おかしいわネ? すんなりと入っていくワ。元からこっちを使ってあの女とエッチしていたとか?)
小早川は不審に思い、尋ねることにした。
「いい? 質問するから答えなさい。
あなた、彼女と普段どういうエッチしてるの?」
「……エッチ……したこと……ありません」
首を傾げる小早川。彼の質問は続く。
「じゃあ、普段どうやってオナニーしているか答えなさい」
「お尻に……指を入れて……乳首をいじって……してます……」
「ぷっ! あら、そうなの」
誠の言動に小早川は興味津々だ。
「普段どんな想像してオナニーしてるの?」
「……真里さんのことを……考えてます……」
「あっそ……」
もしかしたら普段から男に犯される妄想をしているのかもしれない。
小早川はそう期待したが、お決まりの返事にがっかりした。
これが半年前であれば、小早川の期待する答えが返ってきていたであろう。
しかし誠は雪山遭難の時から、男を妄想してオナニーするのを止めていた。
それは自分が真里に対して特別な感情があることに気づき、彼女以外の人を想像する気になれなかったからである。
「どうしてあなた、彼女がいながらお尻でオナニーしてるの? どうしておちんちんでしないの?」
「だって……おちんちん触っても、あんまり気持ちよくないし……真里さんが入れてくれるって考えただけで……はぁっ」
かなり変わった性癖の持ち主であることは理解した。
おそらくこうして指を入れられるのも、彼女からされていると考えているのだろう。
小早川にとって、それは屈辱であった。
「ぐぅぅぅ……おのれ……まぁ良いワ。
もうこれ以上、解(ほぐ)す必要もないし、目に物見せてやるわ」
小早川は立ち上がり誠の前に立つと、勃起し脈打つ男性器を見せつけた。
「よく見なさい……逞しいペニスよネ?
これは女には付いていないもの。
今からこれがあなたの中に入るから、しっかりとその感触を頭に刻みつけなさい。オナニーする時も、女の指じゃなくて、この逞しいペニスを想像してするのヨ?」
そう言うと小早川は慣れた手つきで、ペニスにローションを塗り、誠のお尻へと宛がった。
「アタシのペニスをお尻に受けて、これまでまともにノンケでいられた男は一人もいないワ……あなたもアタシ達の仲間になるの。女になんて全く興味を持たない、男しか愛せないホモの仲間入りをするのヨ!」
ズブッ!!
「あぁんっ!!」
小早川の剛直がお尻の穴を突くと、誠は声を上げた。
今までオナニーで幾度となく妄想してきた男性による生挿入。
それが現実のものとなったのだ。
これまでイメージでしかなかった男性器の感覚が全身に駆け巡る。
灰色だった男同士の性行為の世界に、小早川のペニスが色を与えていく。
何人ものノンケを堕としてきた彼の肉棒は、誠の性感帯を的確に突いていった。
前立腺を始め、直腸の奥に至るまで、どこをどうすれば男が感じるか知り尽くした動きだ。
それは決して女性には、マネのできない領域。
同じ男同士だからこそできる、ニューハーフならではのスキルであった。
「んっ! んっんっんっ! あっあっあっ!」
誠は一気に絶頂の寸前まで追い詰められた。
ノンケキラーの小早川が挿入を繰り返しているのだ。無理もない。
しかしそこで新たな暗示が誠を襲う。
「誠ちゃん……あなたは決してイクことができない……
アタシが許可を出すまで、どんなに気持ち良くてもイクことはできないワ」
「んんっあああ! ああああぁぁぁぁ!」
小早川の突きが、より激しさを増す。
本来なら、この刺激で既に絶頂を迎えてしまってもおかしくないのだが、
暗示の効果により、誠は限界を超えてもなお、感じ続けるだけであった。
小早川は誠の背中に覆いかぶさると、腕を誠の胸に回し、そのまま自分の方へと引き上げ、挿入したまま床に座った。
そして熟練の指使いで彼の乳首を責め始める。
「ふあぁぁぁぁ!! ふぁああああ!!!」
誠の嬌声が室内に響く。
小早川は腰を揺らし、お尻への刺激を続ける。
誠のペニクリの先端からは、透明でサラサラな液体が漏れ出し始めていた。
だがそれは未だ勃起していない。
小早川は苦い顔を浮かべて言った。
「くっ……あなた、なんで勃起しないの? ここまでして、勃起しなかった男はあなたが初めてヨ……」
「あっ! あっ! だ、だってぇ! 勃起の仕方……忘れちゃった……んだもん!」
「はぁあ?」
勃起の仕方を忘れた。
一体この男は何を言っているのだろうか?
正常な男だったら、誰しも勃起をするのが当たり前。
女性ホルモンでも打たない限り、もしくは相当歳をとっていない限り、できないはずがない。
(ま、まさか……)
小早川は再び誠の胸を見た。
この不自然な膨らみ。
それは彼の店で女性ホルモンを打たれ始めたばかりのニューハーフの胸にそっくりであった。
「あなた……もしかして女性ホルモンを打ってたりする?
その顔立ち、身体つき。ホルモンを入れたのなら納得がいくワ」
「ふぁっ、あっあーん、打って……ません……」
快感で喘ぎ声をあげながらも誠は答えた。
しかしその回答でますます小早川は悩むことになる。
(打ってない? それでこんな女みたいな身体になるの? 勃起ができないことといい、意味がわからないワ)
催眠を掛けられている状態では嘘はつけない。
本当のことを言っているからこそ、意味がわからないのだ。
小早川は腰の動きを一旦止めて、乳首責めのみを継続し考えることにした。
(もしかして、生まれつきの性ホルモンに異常があるとか?
胎生期に男性と女性を決定するテストステロンの分泌が上手くいかなくて、
男性でも、女性の要素を持ったまま産まれてきてしまうという現象が起こることがあると聞いたことがあるワ。
この小さく膨らんだ胸、柔らかい肌、可愛いおちんちんは全てそれが原因。
でなければ、こんな身体つきになるわけない……)
乳首を愛撫され女のように喘ぐ誠を見て、小早川は思う。
(だとしたら、完全な女の子として育て直してあげなくちゃネ♡
勃起しないのは問題だけど、まぁそのうち何とかなるでしょ。素敵なニューハーフレディーとして育てて、店一番の稼ぎ頭にしてあげるワ)
小早川にとって女は全て嫌悪の対象であったが、元が男であれば話は別だ。
女に生まれ変わった男は、いわば自分と同じ存在。
それに巨万の富を与えてくれるものであれば、嫌う理由がない。
小早川は誠の腰を少し浮かせ、身体を左にずらすと、右腕で背中を支え、左手で乳首を責めながら言った。
「誠ちゃん、こっちを向きなさい……」
暗示に従い、顔を向ける誠の唇に唇を寄せる。
ちゅっ……んんっ……
そして始まる舌技の連続。
暗示で自意識を失っている誠は、その全てを受け入れるしかなかった。
男からの愛撫、男の舌、男根の挿入。
その全てが男同士の快感を誠に教えていく。
暗示の効果によりイクことを許されず、常に絶頂寸前の状態で、ホモの感度を高められていく誠。
一度知ってしまったら忘れることのできない快感に、彼は一歩、また一歩、ホモの道へと導かれていった。
そうして小早川から責められること数十分。
真里の部屋を監視していた黒服の報告により、ようやくその行為は終わりを迎えることになる。
「小早川さん、女が目を覚ましました」
「……ちゅっ……あらそう」
うっとりとした表情を浮かべ同性との行為に溺れる誠に、小早川は締めの暗示を行うことにした。
「うふ♡ 誠ちゃん、もうすっかりホモの虜のようネ。
それじゃあ、そろそろイカせてあげるわネ♡
あなたは、今からアタシにお尻を突かれると、口から喘ぎ声と一緒に、女の子とエッチしたい気持ちが抜けていってしまうの。
喘げば喘ぐほど、男の人としかエッチしたくなくなるのヨ。
もしあなたの中で、女の子とエッチしたい気持ちがゼロになったら、
その時初めてあなたは、最高のエクスタシーを感じることができるワ♡ いいわね?」
「はい……あぁん♡」
誠は返事をしながらも、小さな喘ぎ声を上げてしまっていた。
その時誠の中で、真里のことを考えながら自慰をしていた時の感覚が少し抜ける感じがした。
「さっそく女の子みたいに鳴いちゃって、ホント誠ちゃんは可愛いわネ♡」
小早川は誠と口付けを一度交わすと、彼の勃起した乳首を口に含んだ。
唾液を絡めて、舌先で愛撫する。
「くっ、ふぅうっ!」
ジンジンとした快感が乳首の先から周囲に広がり、身体をくねらせ喘ぐ誠。
その喘ぎ声と共に、真里のおかげで目覚めかけていた男の欲情が抜けていってしまう。その抜けた欲情の分だけ、彼の中で男性への欲情が生まれた。
次に小早川は、一物を挿入したまま、誠を床に仰向けに寝かせ、正常位の体勢になる。誠の足を畳んで、入れやすいようお尻を浮かせた状態である。
腰を掴み、ゆっくりピストンを開始する。
「ふっ! うっ! ンっ! ンっ!」
誠は、乳首を責められていた時以上に過敏に反応した。
真里への欲情が少しずつ抜けていく不安が無意識のうちに芽生えてきたのか、先ほどよりは抵抗している感じである。
しかしアナルに与えられる快感が強過ぎて、とても相手にならない様子であった。
「アっ! ダメっ! ダメっ! ふぁ! アァっ!」
「うふふふ、ダメじゃないでしょ~? イイでしょ~?
アァ~いつ聴いてもイイワ~♡
このノンケの子が、無意識のうちに抵抗する声……
新しい性の目覚めに戸惑いながらも、ホモに堕ちていく断末魔の叫びは、ホント最高ネ♡」
陶酔した表情を浮かべる小早川。
元々大きな彼の一物はさらに膨張し、より活発に暴れ始める。
それに合わせ、誠の喘ぎ声も激しさを増し、真里への性的欲求も、より顕著に抜けていった。
一度は恭子に封印され、真里が一年以上かけてようやく目覚めさせようとしていた女性に対する性的欲求は、ここに来て完全に消滅させられようとしていた。
誠が戸惑いがちに上げていた喘ぎ声は、徐々に遠慮がなくなっていき、高く大きいものへと変わっていった。
「アッ! アァッ! ヤダぁ! ヤぁん!」
「ヤダって言いながら、さっきより素直になってきてるじゃない♡
ホラホラ、早く目覚めなさい。イイって言うの。素直にイイって言うと、もっと気持ち良いわよ♡」
小早川は、ペニスの先端を意識し、誠の前立腺を捏ねるように撫でまわした。
「ンンッ! イイっ♡ ふぁっ! アァっ!」
前立腺に突き抜ける刺激に、誠の嬌声はより甘く艶めかしいものへと変わる。
もはや誠は、女性への欲情を誰に抱いていたかも思い出せなくなりつつあった。
逆に、男性へ対する性的欲求は、比べ物にならないほどはっきりしたものに変わり、曖昧だった彼の性的指向も、ここに来て確定されようとしていた。
「あとちょっとネ。そのコメ粒ほどに残った女への欲求を捨てなさい。
あなたはホモに生まれ変わるの。女に興味を持たない真性ホモの仲間入りをするのヨ」
「イイっ♡ イイイっ♡ アぁっアぁっ! イイっ!♡ イイの!♡」
誠のペニクリは未だ萎えたままであったが、その先端からはドクドクと愛液が漏れ出し、周辺を濡らしていた。
「うふふ、素直になってくれてお姉さん嬉しいワ。さぁ、もっと大きな声で喘ぎなさい!」
「イイっ!♡ ハァっアアアアぁん! イっちゃう! イっちゃううう!!」
誠は絶頂への階段を駆け登っていった。
ここでイクということは、すなわち女性への性的欲求を捨てるということ。
元々は誰に対して性的欲求を感じていたのか。
それを忘れてしまった誠には、もはやここで立ち止まることなどできなかった。
数十分にも焦らされた絶頂へのゴールを、ついに彼は迎えることになる。
小早川は大きく腰を振り、ストロークを最大まで伸ばし、肉竿の摩擦がアナルに常に感じ続けられるようにした。さらに腸の奥の奥を突きあげる。
「さぁ、熱い精液を受け取りなさい。じっくりと身体の中で味わうのヨ……」
誠の男同士の初体験を最高の形で仕上げるべく、
小早川は、自らの射精をもって、誠を絶頂に導くことにした。
彼はこれまでの経験から、誠の限界がすぐそこまで来ていることを悟っていた。
誠の最後の女性への欲求を、自らの精液をもって洗い流す。
小早川にとっても最上の絶頂の仕方であった。
「イクぅ! イクぅう! イっちゃ……イっちゃう! イッちゃううう!!」
「イキなさい! ンンっ! ハァあああ! アアァァッんッッ!!」
小早川の肉棒が激しく脈打ち、
熱い鈴口の先端から、一層熱い淫欲のエネルギーが注ぎ込まれる。
体内に流れ出す悦楽の波を知覚し、誠も絶頂に達する。
「はぁんっ!! イッックぅぅぅぅぅぅぅ!!」
誠の身体が激しく痙攣を起こす。
それと同時に、萎えたペニクリの先端から、より多くの愛液が垂れ流された。
誠はついにイってしまった……。
彼の中の女性への性的欲求は、完全に死滅してしまったのだ。
全身に汗を浮かべ荒い息を吐く誠は、女として一皮剥けた雰囲気であった。封印されていた女性への欲情がなくなってしまったので、当然といえば当然である。
小早川の掛けた暗示は、恭子とほぼ一緒であるが、
今回は男同士の性行為を体験しながらの暗示である。
男同士の肌の触れ合い。
男の身体を知り尽くしたホモの巧みなテクニック。
そして熱を帯びた剛直が身体の中を暴れまわる感覚。
以前と状況は異なり、その影響は恭子が掛けたものとは比べ物にならないほど大きかった。
小早川は、放心して口から涎を垂らす誠の耳元で囁いた。
「男同士のエッチ、気持ち良かったでしょ?
これに比べたら、女の子とのエッチなんてゴミみたいなもの。
あなたはもう男の人でしか快感を得ることができない真性のホモになってしまったのヨ」
小早川はさらに暗示を重ねる。
「今から言うキーワードをしっかり覚えなさい。
【純白の姫君】
あなたはこのキーワードを聞くと、今の状態に戻ってしまうの……。
何をしていても、どんな時でも必ず今の状態に戻ってしまう…いいわネ?」
誠は力なく頷くと、自我を失い、再び虚ろな表情へと戻ってしまった。
※※※
(もうやめてぇ!! 私に……これ以上、BLを見せつけないでぇええ!!)
鮫島が誠を抱く姿を前にして、真里は心の中で叫んでいた。
これ以上、誠の生BLを見せつけられたら正気でいられる自信はない。
彼女の割れ目からは、次々と愛液が流れ出し、床を汚し始めていた。歯を喰い縛り、オナニーをしたい欲求を必死で抑える。
もしそれをしてしまったなら、自分が男同士で興奮する変態だということがバレてしまう。
真里は己の中の燻る腐女子の欲求にひたすら耐え続けなければならなかった。
そんな彼女の目に、おぞましい光景が飛び込む。鮫島が誠を座らせ、口淫の体勢に入らせたのだ。