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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.110 【 説得 】

空が暗くなり、街の灯(あかり)が煌めき始める頃。
真里と萌はホテルの自室に戻っていた。

真里は萌を落ち着かせるため、
遊園地で購入したカモマイルティーを淹れ始める。

萌は机をじっと見つめ、
暗くぼんやりとした表情で椅子に座っていた。

机の上にカモマイルティーを置き、心配そうに声をかける。


「とりあえずこれ飲んで落ち着こ」

「ありがとう……」


萌の落ち込み具合を見て、その心情を察する。
本当にどうでも良い男なら、このような反応はしないはずだ。
萌の中には、忍を想う気持ちが、まだ残っていたのだ。

忍と別れた時のことが、萌の頭に甦る。

「信じて欲しい」と伝える彼を見捨てて部屋を出てきたが、
その時、全く迷いがなかったとは言いがたい。

そんなものなければ、
こうして不快な思いをしなくても良かったのに……。

萌はそうした己の認識の甘さに、内心悔し涙を浮かべていた。


(何が信じて欲しいだ。
マコトに気が向いてる癖に、いい加減なことを言うな)


萌は一口、茶を飲むと、
気持ちを切り替えることにした。

自分には真里がいれば良い。

小早川の催眠を受けても、
なおも消えずに残っていた忍への想いを、
彼女は努めて消そうとしていた。

そんな萌に、真里が申し訳なさそうに語り掛ける。


「ごめんね……まさかこんなことになるなんて思わなくて……」


自分がしたことではないが、
誠があんなことをしたからには、代わりに謝らなくてはならない。
真里は精一杯、萌に謝罪した。

そんな真里に、萌は表情を和らげて言う。


「ううん、真里は全然悪くないよ。
真里は何も知らなかったんだから……」


悪いのは、全てマコトだ。
真里が謝る必要なんてない。

こんなお人好しの真里を騙して、友達面するなんて最低の女だ。
萌は改めてマコトを軽蔑した。

そんな萌の反応を見て、真里は尋ねることにした。


「忍くんと何があったか教えて」


萌は、目を閉じて考える。

本当は帰るまで、このことは黙っておくつもりだった。
しかしあの現場を見られたからには、もう話すしかないだろう。萌は渋々、事情を話すことにした。


「わかった、話すよ。
私が忍と喧嘩したのって、浮気が原因だったんだ。
浮気相手はマコトちゃん。
真里が気にすると思って黙ってたの……」

「!!?」


それを聞き、真里は目を丸くさせる。

萌がおかしくなったのは、三日くらい前からだ。
その時から、誠は忍とキスやら何やらしていたということだろうか?

にわかには信じがたい話だ。
しかしそれを聞いて、真里が悲観することはなかった。

むしろ……


(いやいやいやいや、あり得ないでしょ!?
つまり誠くんは、忍くんとホモエッチしてたってことだよね? うほっ♡マジでっ?♡ もっと詳しく聞きたい……♡)


もしかしたら今この時も、
二人はベッドでニャンニャンしているかもしれない。

不謹慎ではあったが、
萌の証言に、真里は興奮してしまっていた。

そんな真里を見て、萌は訝(いぶか)しげな表情を見せる。

なぜ真里の表情は、ほころんでいるのか?
まるで二人の浮気を喜んでいるかのような顔だ。

萌から発せられる微妙な空気に気が付いた真里は、冷静さを取り戻す。


(そうだ。今こそ言わなきゃ。
言えば、萌の気持ちも、きっと変わるはず……)


誠が男であると聞けば、
萌は喜んでくれるかもしれない。

いや、喜ばないはずがない。ぜったいに喜ぶ。
同じ腐女子としての確信が、真里にはあった。

そうした明るい予測を胸に、真里は打ち明けることにした。


「ごめん、私も実は黙ってたんだけど。マコトちゃんって、女装した誠くんなの!」

「はあ……? 何言ってるの……?」


困惑した表情を見せる萌。
彼女は高校時代の誠を、思い浮かべてみた。
……今のマコトとは、どうしても結び付かない。

腕を組み難しい顔をする萌に、真里は続けて言う。


「今、証拠を見せるから待ってて」


真里は急いでスマホを取り出し、写真フォルダを開いた。

それを見て、どれを見せるか悩んだが、
彼女は取って置きの逸品を見せることを決めた。


「ほらこれ、女装した誠くん。ここにおちんちんあるでしょ? マコトちゃんは男なの!」


スマホの画面に映ったマコトは、
真里の下着を身に着けていた。

水色のブラとショーツ。
その以外は、少女のような色白の肌が見える。

四つん這いになり、ショーツをずらして、
その幼気(いたいけ)な後ろの穴とペニクリを晒していた。

それは紛れもなく、真里のペニスバンド(性剣X凸バー)を心待ちにする誠の姿であった。

真里以外は決して見せてはならない門外不出の写真。

誠がこのことを知ったら、
恥ずかしさで卒倒してしまうであろう。
だがこれで誤解も解けて、万事解決となるはずだ。

真里は、そう思っていたのだが……。


「そっか……なるほどね。
誠くんは、真里を裏切って忍を取ったわけだ。
ならこれで気兼ねなく付き合えるね。
このまま誠くんとは別れて、正式に付き合っちゃおうよ?」

「え……?」


萌の意外な反応に真里は絶句する。
あれほど腐っていた親友が、BLのことにはいっさい触れず、誠と別れるように言っているのだ。

親友のあまりの豹変っぷりに、
真里は開いた口が塞がらなかった。

こんな美男子二人がキスしていたら、萌なら興奮しないはずがない。ましてや連結していたとなれば、最高のオナネタというものだ。

これまで苦楽を共にしてきた腐女子仲間としては、
信じられない反応であった。


「えっ……私の話、聞いてた?
誠くんと忍くんは男同士なんだよ!?
BLだよ! 一体どうしちゃったの?」


真里は本気で心配している。
萌はマッドサイエンティストに捕まり、ロボトミー手術をされてしまったのでは?
というくらいの驚き具合である。

しかしそんな真里に、萌は淡々と述べた。


「BLでも浮気は浮気だよ。誠くんは忍と浮気した。
私と真里の両方を裏切ったの」


萌はBLへの関心を失っている。
忍と誠のBLなど、彼女にとっては、もはや何の価値もないものであった。

そしてマコトが誠であることを知り、
彼女の勢いは一気に増してしまった。

真里との今の関係は、一時的なものに過ぎない。

誠が認めてくれなければ、
容易く解消されてしまうような脆い関係である。

しかし、マコトが誠であるなら話は別だ。

マコトは忍と浮気している。

真里はまだ、このことをあまり気にしていないようだが、
これを深刻な浮気問題としてしまえば、自分への同情心もあいなって、誠から心が離れる可能性がある。

萌はこの問題をチャンスと捉えていた。


「真里、私つらいよ……。
忍のこと好きだったのに、あんなひどい奪われ方されて」


目を両手で多い、泣きそうな表情を見せる。
萌は同情を引くため、あえて大げさに演技した。


「それはその……なんでそんなことしちゃったんだろうね……」


真里が気まずい反応を見せる。
萌がこのように捉えるのであれば、このまま同じテンションでいくわけにはいかない。


「誠くん、女みたいな見た目してるし、
本当は男が好きだったんじゃない?」


半分、当たっている。
大学に入学したての頃、誠は男が好きだと公言していた。
付き合い始めた頃も、女性とのキスに違和感があると言っていた。

でもだからといって、他人の彼氏を奪う人ではないはずだ。
冷静に考えて、ひとまず真里は、誠を庇うことにした。


「誠くんには、何か……事情があるんだよ」

「彼女のいないところで男とキスして、
どんな理由があるって言うの?」

「それは……」

「私はあの男を許せない……。
彼女の親友から彼氏を寝取るって人としてどうなの!?」


萌の怒りはごもっともだ。
自分が萌の立場なら歓迎一色なのだが、
常識的に考えるなら、萌が正しいのだろう。

それから真里は、何度も別れるよう説得されたが、
いつまで経っても首を縦に振ろうとはしなかった。

別れたくなる理由がないので、当然の反応である。

そんな態度の真里に、萌はつい口走ってしまう。


「百歩譲って、
誠くんに私を納得させるだけの理由があったとしよう。

じゃあ私と真里の関係はどうなるの?
私とエッチして、あんなに気持ち良さそうにして……。

そんな身体の関係を許してくれるほど、誠くんは寛大な人なの? 真里がしていることだって、立派な浮気なんだよ !」

「それは……」


自分の浮気へと話がシフトし、真里は口を閉じる。

誠の浮気には寛容であったが、
自分の浮気については、そうではなかったようだ。


「たしかに私も浮気してる……」


執拗に誠の浮気を責め立てる萌を見て、
真里は同性間の浮気について、考えを改め始めていた。

思い出すのは、萌とのエッチのこと。

萌とのセックスは、
これまで経験したことがないほど、深い快感を与えてくれた。

身体を伝う、萌の指の感覚。
クリトリスや口に触れる、萌の唇の感触。
萌から発せられる愛の囁きは、
全身に恥ずかしさや陶酔感を与えてくれた。

それを経験してしまった今となっては、
誠とのセックスなど児戯に等しかった。

真里は誠が許してくれるなら、
誠と萌、両方と付き合いたいと思っていた。
そこに邪(よこしま)な気持ちが、全くなかったとは言い難い。

そんな自らの醜態さに気が付き、
真里の机の面を見つめ、とうとう泣き始めてしまった。


「誠くん……ごめんなさい……うっうっうぅ……」


真里は、誠が忍と付き合うのは歓迎であった。
愛する人のお尻が男の肉棒を受け入れた経験があるというのは、腐女子としては、むしろプラス要素であったからだ。

そんな真里だからこそ、
同じ腐女子仲間である萌の浮気発言はショックであった。

あの萌でさえ、そんな考えなら、誠はもっとだろう。
萌と付き合わせて欲しいなどと言えるはずもなかった。


「あ……真里、その……」


誠への怒りと、真里への独占欲から、
つい口走ってしまったが、
結果として真里を傷つけてしまった。

小さく咽び泣く真里の声が、萌の胸に刺さっていた。


(私……何やってるんだろう……)


思い返してみれば、
自分は誠の次に愛して欲しいと伝えていたはずだ。

だからこそ真里は"保留する"と言ってくれたのではないだろうか? それが真里にとって最大限の譲歩だったはずだ。

なのに自分はいつの間にか、それ以上のことを望んでしまっていた。そのことに気付き、萌は考えを改めることにした。


「ごめん、真里。……実は気付いてたんだ。
真里が私を助けるために、告白を受け入れてくれたってこと」

「えっ……」

「真里は、私が自首するのが分かったから、
ああいう止め方をしてくれたんだよね?
なのに浮気だなんて言ってごめん……。
卑怯だよね……真里は全然悪くないのにさ……」


本当に醜いのは自分の方だ。
萌は懺悔の念を込めて、真里にそう伝えていた。


「ううん……そうじゃないよ。
だって私、萌のこと、本当に好きになってたもん」

「え……?」

「たしかに初めは、演技のつもりだったよ。
だけど付き合ってみて、恋人としての萌も良いなって思い始めちゃって……気付いたら本当に好きになってたの……」

「うそ……マジだったの?」

「だから浮気なの。私、自分が誠くんのBLを許すからって、
誠くんも私のGLを許してくれるって考えてた。
萌の言うとおり、同性でも浮気は浮気だよね」


真里の気持ちを聞き、萌の心は揺れた。

真里が本気で自分を愛してくれていた。
それまで演技と思い込んでいた萌としては、
この上ない喜びであった。

そしてその時、萌にある考えが浮かんだ。

忍はたしかに浮気をしてしまったが、
ここでBLを浮気でないとしてしまえば、
両者公認の上で、真里と付き合えるのではないだろうか?

先ほど見た感じだと、誠は相当忍に惚れ込んでいる。

ここは一旦、二人の関係を認めてあげて、その代わり、自分と真里の関係を認めさせれば何もかも上手くいくのでは?

いずれ忍と誠の関係が進展すれば、
誠は真里に興味を失ってくれるかもしれない。

そうなれば、真里は完全に自分の物だ。

素晴らしいアイデアに、萌は心の底からときめいていた。


「あ、あ~……えっーと……
わたし、さっきは浮気って言っちゃったけど……
よく考えてみたら、そうでもないかも?」

「ううん……萌の考えは正しいと思うよ。
私、忍くんのことは、責任をもって誠くんに追及してみる。
その時、萌のことも話してみるけど、
もし誠くんがダメだって言ったら、悪いけど……」

「ちょ、ちょーーと待って! 私も取り乱しちゃったけど、冷静になって考えてみたら、男同士ってやっぱりイイナーなんて☆彡 真里は深刻に物事を考えすぎなんだよ。もっとリラックスして」

「はぁ? さっき許せないって言ってたじゃん。なんで急にそんな意見変えるの?」

「いや……なんていうか……
ほ、ほら、真里が私と関係を持ったみたいに、
誠くんにも、忍と関係を持つ事情があったのかもしれないし、お互い様ってことで良いんじゃない?」

「ダメだよ。そんなこと認めたら際限がなくなっちゃう。
やっぱり同性でも浮気は浮気だよ」

「待って、真里。落ち着いて……ね?
私は真里に好きになってもらえて嬉しいよ?
誠くんと忍もお互いのことが好きみたいだし、
好きな人が二人いてダブルでお得だと思わない?」

「なにそのファーストフードみたいな言い方……」

「とにかく、私はもう気にしてないから大丈夫。
あ、そういえば、真里、お腹空いてない?
お腹空いてると考えもまとまらないから、
ご飯食べに行こうよ? 夜、何も食べてないしさ」

「う、うん……萌がそう言うなら……」


萌にとって、真里が愛してくれるなら、
忍と誠のことなど、どうでも良かった。

依然として、男二人のことは嫌いであったが、
真里を得るため、仲直りすることにした。

真里との関係を誠に認めてもらえば、
真里は自分のものになる。

萌は真里との正式な付き合いに、心を弾ませていた。


その後、二人は夕食を取るため地下へと降り、

誠が女装していた理由や、付き合った経緯などについて、
ご飯を食べながら、楽しく会話するのであった。

Part.111 【 チャット◇ 】

食事を終え、萌の部屋に戻った真里は、
誠に電話をかけていた。

しかしこれまで同様、電話は繋がらず、
むなしく発信音が鳴るだけであった。


「やっぱりダメ、マナーモードにでもしてるのかな?」

「とりあえずチャット送ってみたら?
気付いたら返事くれると思うよ」

「わかった。送ってみるね」


真里は慣れた手つきで文章を打ち始めた。


MARI:忍くんと萌のことで話があります。
MARI:気付いたら返事ください。


打ちながら、真里は思う。

昨日からずっと連絡してるのに、
なぜ誠は返事をよこさないのかと。

何かあれば、連絡する手筈だったはずだ。
それなのに、忍と遊園地に来てることすら、話してくれなかった。

忍への接し方といい、これまでの誠の対応に、
真里は言いようも知れぬ不安を感じていた。


「二人とも今頃何してるんだろうね?」


真里のそうした心中を知ってか知らずか、
思ったことを口にする萌。

彼女は窓際の席で、
先ほどコンビニで購入したプリンを食べていた。


「まだ遊んでるのかも?」

「うーん、もう遅い時間だし、
ホテルに戻って来ているころだと思うけどね」


もしかしたら忍の部屋にいるかもしれない。

二人でエッチなことをしている可能性もあったが、
このまま萌と突入するのもありだと思った。

今の萌なら、二人の浮気を見ても大丈夫なはず。

結果、どうなるか分からないが、
このまま隠し立てをするより、お互いに思っていることを話し合った方がずっと良いはずだ。


「萌、忍くんの部屋に行こう。
戻ってきてるなら、会って話した方が良いし」

「んー? 良いよ。そうしよっか」


萌は軽く返事する。

別に会いたくもない忍だが、真里と付き合えるなら、
そのような小さなことなど、どうでもよかった。

部屋で忍と誠が何をしてようと、仲直りして、
真里との関係を認めさせれば良いだけだ。

そうして二人に許可を貰ったら、
あとは堂々と真里とエッチして、
男性との恋愛やSEXに興味を失わせてあげれば良いだけなのだ。

男性への興味を失い、一途に自分を見つめてくれる真里を想像して、萌は少しだけ、身体を熱くさせた。

そうして出掛ける準備を進めていると、
真里のスマホに着信が入った。


《チャクシンガ、キタヨ♪》

「あ、誠くんからだ」


すぐにメッセージを確認する。


MAKOTO:良いよ。私もそのことで話があったんだ。


浮気の話だろうか?
何か含みのあるメッセージに、真里は少しだけ緊張した。


MARI:萌から聞いて、色々と分かったことがあります。
MARI:直接お話したいので、萌の部屋まで来ていただけますか?

MAKOTO:今、合流は無理かな。
MAKOTO:このままチャットで済ませても良いかな?

MARI:できれば会ってお話ししたいです。
MARI:今どちらにいらっしゃいますか?
MARI:誠くんが来れなければ、こちらから行きます。

MAKOTO:実は今、忍くんと食事してるんだ。
MAKOTO:まだ食べ始まったばかりで、急いで食べさせるのも悪いと思って。


食事中なら仕方がない。レストランでする話でもないため、一旦会うのは、諦めることにした。

しかし真里は安心したかったので、すぐに例の質問をすることにした。


MARI:わかりました。
ではこのままチャットでお聞きしますね。

MARI:実は先ほど、遊園地で誠くんと忍くんがキスしてるのを見たのですが、あれは一体どういうことですか?


誠ならすぐに納得のいく答えをくれるはず。
そう思って聞いたのだが、それから誠の返事はなかった。


(なんで返事くれないの? まさか本当に……?)


不誠実な対応に、真里の不安が積もる。
その間、萌は待ちくたびれてお風呂へと行ってしまった。

一人だけとなった部屋で、
じっと画面を見つめ、時間を過ごす真里。

しばらくして脱衣場の扉が開き、
隙間から萌が顔を覗かせた。


「ねぇ真里、返事遅くなりそうだから、
それまで一緒にお風呂、済ませちゃおうよ?♡」


少し悪戯な表情で誘っている。

これは応じたら、
エッチなことをされてしまうパターンだ。

真里は萌の愛撫を思い出し、
少し身体をモジモジさせたが、断ることにした。


「ダメ、そんなことできないよ」

「ただ一緒にお風呂入るだけだから良いじゃん♪」

「絶対エッチなことになるからダメ。
同性でも浮気は浮気なんでしょ?」

「そんなことしないよ。真里が我慢できなくなってしまうのは、あるかもしれないけど?」

「……っ」


あながち否定もできなかった。
女同士の快感に目覚めたばかりの真里の身体は、
貪欲(どんよく)に萌の身体を求めていた。

あんな狭い個室で、裸の女が二人きり……。
何も起きないはずがなく……。

真里は慌てて妄想をかき消すと、改めて断った。


「と、とにかくっ……
ダメなものはダメ! 一人で入って!」

「はいはい、したくなったらいつでも来てね♡」

「もぅ……」


こんな短いやり取りなのに、
真里の股間は、すっかり熱くなってしまっていた。


(はぁ……なんだかんだ萌の方がよくなっちゃったな……)


誠とは、話をするだけで、
ここまで身体が熱くなることはなかった。

萌とセックスして、初めて知った女同士の快感。
それは誠では、決して得られない、
深く浸透するような快感であった。

次に誠とエッチしたら、
自分は素直に感じることができるだろうか?

萌のことを思い出して、
比較してしまうようになるかもしれない。

真里は、誠との性生活に不安を抱くようになっていた。

それから少し経ち、誠から返事が届く。

歯を磨いていた真里は、口を濯ぐと、
ベッドで横になり、メッセージを確認した。


MAKOTO:真里さん。言いづらいことなんだけど……。
MAKOTO:私やっぱり、女の人より男の人の方が良いって気付いたの。
MAKOTO:だから別れて欲しい。私、忍くんと付き合うことになったんだ。ごめんね。


(えっ……?)


突然の別れの言葉に、真里は固まってしまった。

じっと画面を見つめ、文字を繰り返し読む。
そこに書かれている内容を理解するのが怖くて、彼女の手は震えていた。

カタカタカタと、歯と歯が当たる。
手の震えが全身に広がり、真里はガバッと起き上がった。
まずは落ち着かなくては……目を瞑り、深呼吸する。

真里は改めてスマホに向き合うと、
努めて冷静にメッセージを返すことにした。


MARI:待ってください。話が急すぎます!
MARI:どういうことなんですか?

MAKOTO:今まで黙っていたけど、実はずっと我慢してたの。
MAKOTO:私、本当は男の人が好きなのに、真里さんと無理して付き合ってた。
MAKOTO:でも忍くんと出会って、彼に抱かれて、自分がどうすべきか気付いたの。
MAKOTO:真里さんとはここで終わりにさせて欲しい。


(そんな……うそ……
誠くんがそんなことを思っていただなんて……)


相思相愛だと思っていた彼から告げられたあまりにも残酷な告白。真里のスマホの画面は、涙で濡れていた。

真里は自分の想いが、これまで一方的だったことを知らされ、大きなショックを受けていた。誠への想いが強かったこともあり、その衝撃は計り知れない。

彼女は画面を布団の端で拭き、返事をした。


MARI:嫌です。別れたくありません。
MARI:ダメなところは直すので、捨てないでください。お願いします。

MAKOTO:そういう強引なところが嫌なの。
MAKOTO:真里さんは、一方的に気持ちをぶつけるだけだから楽だったろうけど、受けとる方は大変だったんだよ?
MAKOTO:今まで傷付けないようにしてきたけど、もう限界。
MAKOTO:私は男の人が好きなの。これ以上、私に付きまとわないで!!


「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


辛辣な言葉の数々に、ついに真里は絶叫する。

我慢していた気持ちが、一気に崩壊した形だ。
彼女の心はズタズタに切り裂かれていた。

そんな真里の叫びを聞いて、
入浴していた萌は、慌てて浴室から飛び出してきた。

彼女は、濡れた髪はそのままに、
タオルを身体に巻いて、すぐに真里の元へとやって来た。


「どうしたの、真里?」


真里はベッドに顔を付け、身体を丸めて蹲(うずくま)っていた。そして声にならない声を上げて泣いていた。

彼女の斜め前には、スマホがある。
画面には、チャット欄らしきものが見えた。

真里が泣いている原因が、
誠の返信にあるのではと思い、萌は読んでみることにした。


「なにこれっ!?」


そこに表示されていた、あまりにも身勝手な言い分。
真里の絶叫の理由を知り、萌は怒りに顔を歪ませた。


(浮気した分際で、なんという言い草。
しかも何もかも真里のせいにして……許せないっ!!)


思わずスマホを床に叩きつけそうになったが、
真里のだったので止めることにした。

それより心配なのは真里だ。萌はひとまずタオルで髪を拭くと、すぐさま彼女に寄り添った。


「真里、大丈夫……?」

「私は……誠くんの気持ちも考えないで……なんてことを……」

「違う……それは違うよ……」


誰がどう見ても非があるのは誠の方だ。
真里は、ありもしない自分の非を責めていた。

そんな彼女をあまりにも不憫に思った萌は、
精一杯、慰めようとした。


「真里は何も悪くないっ!
こんなひどいことされて……悪いわけがないよ!」

「でも……私が強引じゃなければこんなことには……」


真里は、なおも自分を責めたてている。
いたたまれなくなった萌は、彼女を抱き締めた。


「……っ!」


真里は萌の抱擁から、咄嗟(とっさ)に逃れようとした。
誠への自責の念が、萌を拒否しようとしていた。

しかし萌は真里を離さなかった。
こうして傷付き、ボロボロになった彼女を癒してあげられるのは自分だけだ。

その想いから、萌は説得を続けた。


「離れちゃダメ……今のあなたには私が必要なの……」

「やめて……萌」


誠にこんなことを言われたのは、きっと彼の了解も得ずに、萌といたしてしまった自分への天罰だ。

真里は萌とセックスしたことを後悔していた。

だがどんなに抵抗されても、萌は引き下がらなかった。

真里はありもしない罪に囚われている。
あんな男に意識を向けてはダメだ。

萌は真里の心を、誠から解放しようとしていた。


「あなたには私がいるから……私は絶対にあなたを裏切らないから……だから彼のことは忘れて……!」

「ああああぁぁぁ……あっあっあっ……」


捨てられた子猫のように震える彼女。
萌は優しく真里の背中をさすった。


(こんなに真里が愛しているのに、
その想いを、肥溜めに棄てるかのように扱って……
あのオトコ女っ……絶対に許せないっ!!)


愛する忍を寝取られ、愛する真里を傷付けられ、
萌の誠への怒りは頂点に達しようとしていた。


(真里の心を、あいつから解放しなくちゃ……)


誠への想いが真里を傷付けている。
自分が忍を信じ、傷付けられたように……。

萌は真里のYシャツのボタンを一つずつ外し始めた。

真里の背中をさすりながら、
もう片方の手で器用に外していく。

強引な方法だが、
真里を誠から解放するには、身体で愛し合うしかない。
真里の心を自分で埋めて、誠が介入する隙をなくしてやるのだ。

全てのボタンを外し終えた萌は、
真里のYシャツを肩から外し、そこでキスをした。


「んっ……ちゅ……んんっ!!」


キスをされたことに気付き、硬直する真里の身体。

真里はこんな状況で、
不埒な行為を始めようとする萌に憤慨した。


(ダメだって言ってるのに、なんでこんなことするのっ!)


刺すような視線を萌に向ける。
真里は何度言っても分かろうとしない彼女に、苛立ちを隠せなかった。

萌が抵抗する真里を抑えつけ、キスの合間から舌を差し込むと、真里は不快感をあらわにした。


(もう許せないっ!)


強引な萌の所業に、ついに真里はブチキレる。
咄嗟に彼女は萌の舌に噛みついた。


「んんっ!」


萌が悲痛な叫びを上げる。

だが彼女は舌を引かせようとはせず、
ギュっと目を瞑って、痛みに耐えるだけであった。


(……っ! なんで引かないの……?)


この反応に、真里は戸惑った。

噛めば、すぐに舌を引き下げると思っていた。

まだそれほど強く噛んでいないからだろうか?
真里は徐々に噛む力を強めていった。


「ん……んん……!」


萌は泣きそうな声を洩らす。
もしかしたら、このまま噛み千切られるかもしれない。
そんな恐怖が萌を包み始めていた。

だがそれでも萌は、引かなかった。

生半可な覚悟では、真里の気持ちを動かすことはできない。
誠から自分に意識を向けさせるためにも、ここで決意を見せる必要があったのだ。


(早く抜いてよ……。
私だって、こんなことしたくないんだから……)


噛む力を強める度に、
萌の悲痛な叫びが、唇の隙間から聞こえてくるようだった。

真里が辛そうにしていると、萌が後頭部を撫でてきた。

驚いて萌を見ると、彼女は目元を濡らしながらも、
慈しむような目を向けていた。


(萌……どうして……)


そこで真里は、ようやく萌の想いに気が付いた。

萌は自分の方に気を引いて、
少しでも誠のことを考えないようにさせてくれたのだ。

真里は噛む意志をなくし、萌の舌を解放することにした。
同時に身体の力も抜けていくようだった。

抵抗力を失ったことで、
萌の舌が、自身の舌に絡み付いてくる。

少し血の味がするディープキスだった。

あれほど強く噛んだのだから、怪我をしていてもおかしくはない。真里は自然と、萌の舌を心配するようになっていた。


ん……ちゅぱ……れろ……れろ……


舌が触れて、萌の舌が傷付いているのが、なんとなくわかった。

真里がいたたまれなくなって、
その傷口と思われる部分を舐めると、萌は唇を離して言った。


「ありがとう、真里。受け入れてくれて……」


自分をこんなに好いてくれてる相手を傷つけてしまうなんて……真里は萌に謝ることにした。


「ごめん……私、振られて気が動転してたのかも……。
舌、大丈夫だった?」


真里がそう言うと、萌はにこやかに笑った。


「これくらい真里が傷付いたのに比べたら、なんともないよ。それに噛まれても仕方ないくらい、強引なことしちゃったからね……。真里はぜんぜん悪くないよ」


親友の受け答えに、思わず別の涙が流れそうになる。
そんな真里の目をじっと見つめ、萌は言う。


「真里……私はここで止めるつもりはないからね?
真里は私の彼女になるの。
今までの嫌なこと、全部忘れさせてあげるから」


萌が真里のTシャツの裾を掴んで捲りあげようとする。


「今度は抵抗しないでね」


あらかじめ釘を刺され、萌の行動を消極的に受け入れる。
Tシャツが両腕をすり抜けていった。

ブラのみとなった真里の身体を、萌はゆっくりとベッドに寝かせた。


「このまま身を任せて」


萌の目は、これまで見たことがないほど優しい目をしていた。その目に、真里の胸はキュンと締め付けられる。


(どうしよう……無理矢理されそうになってるのに、なんだかすごく優しくて温かい……。
このまま受け入れてしまったら、本気で萌のこと好きになっちゃうかも……でも、そしたら誠くんとは……)


先ほどのことを思い出し、チクリと胸が痛む。
誠はもういない。その現実に胸が押し潰されそうになった。


「うっうっううぅ……あぁぁぁ……」


再び涙が込み上げてくる。
お腹の辺りにきゅっと締め上げるような痛みが走った。

そんな真里を見て、萌がギュっと真里の手を握ってきた。
手のひらを合わせ、指と指を絡ませ合わせている。

手のひらを通じて、萌の愛情が伝わってくるようだった。

真里はすがるような気持ちで、
もう片方の手を差し出してしまった。

求めに応じ、つながるもう一つの手。
萌は軽くキスをすると、真里に伝えた。


「今だけでいいから、あなたの心を私に向けて」


心の傷に染み渡る優しい声色。
そのあまりの安らぎに、真里は小さく頷いてしまった。


Part.112 【 処女喪失(前編)◇ 】

萌は一度腰を上げ、横たわる真里を見つめた。

サラサラの白い肌に、
光った絹糸のように長く艶々とした黒髪。
凛とした顔立ちは、本当にどこかのお姫様のようであった。

しかし、その表情は依然として暗いまま。
誠から無情にも突き付けられた別れの言葉は、
真里の心に暗い影を落としていた。

誠なしでも、笑って過ごせるようにしたい。
そのためには、彼女の心を誠から解放しなくてはならない。

萌は決意を新たにすると、真里にキスをした。


「んんんっ……んっ……♡」


真里は身体をビクりとさせつつも、それを受け入れた。
回数が増えるたび、彼女はだんだんと素直になっていくようだった。

萌が舌先を唇に入れ、トントンと歯を叩くと、
真里は求めに応じて舌を差し出した。


「んっ……あむっ……あむっ……ちゅ……ぁ……♡」


次第に蕩け始める真里の目。
余程、萌とのキスが気持ちいいのだろう。

萌は真里のブラを優しく撫でると、
背中に手を伸ばし、ホックを外した。

真里の控えめな胸が姿を現す。
その中心にある2つの突起は、
萌を歓迎するように、すでに勃起していた。


「……ねぇ、真里。舐めても良いかな?」


人差し指で、乳首を優しくさすりながら言う。


「ぁ……はぁ……んんっ……あぁ……♡」


真里は、感じ過ぎて答えられない様子だ。

まだそこまで強い刺激を与えられているわけでもないのだが、真里は、小さな刺激でも、十分すぎるほどの快感を得られるようになっていた。

上手く答えられないので、真里は頷いて返事する。

いくら想い続けたところで、誠は戻ってこない。
それなら、今、自分を求めてくれる萌の想いに応えよう。
彼女は消極的ながらも、そう思うことにしていた。


(あぁ……萌にされていると、どんどん気持ち良くなってきちゃう……はぁ……気持ちいぃ……)


真里の中で、萌の存在が大きくなっていく。
触られれば触られるほど、萌への愛しさも膨らんでいくようだった。

萌は滑らせるように、真里の乳房に触れた。指を曲げて第二関節までが触れる、ふわふわとした触り方だった。

萌は胸の周辺を、触って慣れさせると、
突然ギュっと掴んで、その形を変えた。


「あぁんっ!♡」


急激な動きの変化に、真里はたまらず声をあげる。
そうして乳首が突き出ると、萌は舌の裏筋を使って舐め始めた。


「レロ……ちゅ♡ チュッチュ♡ レロレロ」


美味しそうなデザートを味わうように、舌を這わせる。

時折、口をすぼめて吸ってみると、
真里は「ぁ……」という小さな喘ぎ声を出した。

そして前歯で甘く噛んでみる。
ツーンとした快感が乳首から全身に突き抜け、真里は大きくのけぞった。

それらを繰り返すことで、
声は断続的なものへと変わっていく。

萌が真里の顔を確認すると、
始めの頃より、うっとりとした表情に変わっていた。
萌は、そんな彼女の変化が嬉しくてキスをした。


「どう、気持ちいい?」

「うん……」

「ふふ……もっと良くしてあげるね♡」


まだ哀愁は漂わせているものの、
萌の問いに真里は素直に答えるようになってきていた。

そうした真里の変化に、萌は攻勢を強める。


「真里、ちょっと身体を起こしてね」


萌は真里の背中に腕を回すと、彼女を抱えて、身体を起こさせた。そして、優しくお腹をさすりながら言う。


「下、脱がせても良い?」

「うん……」


恥ずかしそうに頷く真里。
ベルトを外してボトムを脱がせると、真里のショーツが目に入った。そこはすっかり淫らに濡れてしまっていた。


「ふふ……♡ すっかり潤ってるね♡」

「萌が触るからだよ……」

「女に触られて、こんなに濡れるなんて、
真里もすっかりレズの仲間入りって感じかな?」


これまで何度か同じような質問をしている。
真里はいずれも否定してきたのだが……。


「うん……そうかも……」


何かを諦めたような、達観したような、どちらともとれる表情で真里は言う。その返事に、萌は深く息をのんだ。


「だってこんなに良くしてくれるの、萌だけだし……」

「え、そう……?」


真里はコクリと頷く。


「うん……誠くんより、萌にされた方が気持ち良い。
あんまり認めたくなかったけど……私って、元々こっち寄りだったのかも……?」


レズを認めることに、戸惑いや恥ずかしさはあったものの、
彼氏を失った身で、もはや誤魔化す必要などなかった。

真里は、まるで脱皮をするかのごとく、
ある種、解放された気持ちで、新しい自分に向き合い始めていた。


「……じゃあ、確かめてみよっか?」

「……どうするの?」


萌は真里の肩に手をおくと、顔を寄せて言った。


「私がもう一度キスするから、今の自分がどっちにいるか、よく確かめてみて」

「……うん」


真里がそう答え、静かに目を閉じると、
萌の気配が近づいてきた。

彼女の身体の香りを感じ取り、柔らかく優しい感触が唇に伝わる。萌に抱き締められ、真里はその感覚にじっと向き合ってみることにした。

明確に同性とキスしていることを認識する。

これは萌に流されるまま行うキスとは違う。
本当の自分と向き合うためのキスだ。

異性愛者であれば、同性とのキスに違和感を感じるはず。
両性愛者であっても、男性と女性、完全に半々で好きとはならず、僅かでもどちらかに傾くはずだ。

真里が感じとった答えは……。



(…………やっぱりそうだった。私も誠くんと同じで……)


誠と初夜を過ごした時のことを思い出す。
誠は自分とのキスで、性の不一致を感じると言っていた。
望まぬ性別とのキス。

真里は、同性である萌とキスをして、
その言葉の意味を実感していた。

しかしここで彼女が感じていたのは、
性の不一致ではなく、性の一致であった。

彼女は、異性である誠とキスをするよりも、同性である萌とキスをした方がずっと自然に感じられてしまっていたのだ。


(きっと誠くんも、忍くんとキスして、これを感じてしまったんだ……)


一度、こんな自然なキスを感じてしまったら、
もう異性とのキスには戻れない。
真里は、誠が自分に別れを告げた理由がなんとなく分かったような気がした。


「……どう、してみて?」

「うん……やっぱり萌とした方が良い……女の子とキスして、こんな風になるなんて、やっぱりレズだよね……?」


真里の返事を聞き、萌はにっこりと微笑んで見せた。


「そう思うよ。嫌なこともあったけど、
本当の自分に気付けて良かったじゃない?」

「うん……」


真里は寂しそうな顔を見せる。


(私はレズで、誠くんはホモ……自然と好きになれる性別が違うんだったら、合わなくてもしょうがないよね……)


あれほど愛していた誠であったが、こうした性的指向一つを取っても、これほどの不一致があったのだ。

あんなにセックスできるように頑張ってきたのに……。
真里はなんだか遣る瀬ない気持ちになってしまっていた。


「元気出して。真里には私がいるじゃない!」

「うん……ありがと……萌……」


萌の励ましに、涙を堪えて答える。

誠のことは、諦めなければならない。
いつまで求めていても虚しいだけだ。

真里は努めて誠を意識の外に追い出すと、
萌に向き合うことにした。


「じゃあ足を開いて。真里が嫌なことを忘れられるように、気持ちよくしてあげるから♡」


真里が足を開くと、萌は彼女の下着に手を伸ばした。

指先に感じるシルクのような肌ざわり。
萌はそれに触れると、ピアノの鍵盤(けんばん)を弾くように愛撫した。


「あぁっ……気持ちいぃっ……」


押し寄せる快感に、真里は腰をくねらせた。
絞り出すように嬌声をあげる。

真里の心が、萌の指を、レズの快感を、素直に求め始めていた。

萌は真里のショーツに手をかけると
色白の太ももを滑らせ、脱がせてしまった。
愛おしい真里の脚にキスをして、ショーツを脇に置く。

彼女の開脚された太ももの中心には、無毛の丘があった。
萌の愛撫によって、すっかり蕩けきったそこは、
新しい恋人の口づけを待ち望んでいるようであった。


「あいかわらず、真里のここ、綺麗だね……」


一度も異性を受け入れたことのない神秘の丘。

幾多もの自慰行為にも関わらず、
色素沈着していない薄桃色の窪みは、
男の穢れを知らず、清潔感を保っていた。

大抵、真里くらいの歳になれば、
誰もが経験済みのはずである。

しかし真里のそこは、誠のペニスが未熟すぎたのと、
真里自身が初めての相手は誠と決めていたこともあって、未開通であった。


「萌……恥ずかしいから、あんまりまじまじと見ないで……」


身体を重ねた仲ではあるが、
改めて見つめられると恥ずかしい。

さらに言えば、真里は以前と違い、
萌をたった一人の恋人として見なそうとしている。

誠との両立を考えていた頃とは、思い入れが全然違った。

萌はあえてそこには触れず、
お腹や太ももの内側を愛撫し始めた。

真里は口をギュっと結び、薄目で萌の行為を見つめている。触られて気持ちいいのか、腰をくねらせるのは変わらなかった。

萌はしばらくそうして愛撫を繰り返したが、
肝心なところは、いつまで経っても触ってくれなかった。

もどかしさから真里は、
「早く触ってほしい」と目で訴えた。

しかし萌は要求に応じない。

続けられれば続けられるほど、快感は増していき、このままいけば、一切そこに触れられることなく、達してしまう気がした。


「萌……早く……触ってぇ。
このままじゃ……私、イッちゃう……」


どうせイクなら、萌に触れられてイキたい。
真里の切実な願いであった。


「いいよ。でも一つお願いがあるの」

「お願い……?」

「うん、大事なお願い」

「……何?」

「真里の処女を、私にちょうだい」

「え?」


萌の要望に、真里は一瞬、言葉を失う。

萌には処女であることを一度も話していない。

なぜそのことを知っているのか?
真里は不思議に思って尋ねた。


「なんで処女って知ってるの……?」

「ふふ……やっぱりね。ただの当てずっぽうだよ。

でもちゃんと根拠はあってね。
さっき見せてもらった誠くんの写真だけど、あんな粗末なちんちんじゃ、挿れられないだろうなって思ったの。

それプラス、真里って結構堅物でしょ?
初めての相手は誠くんにって決めて、
いつまでも処女のままでいるだろうなって思ったんだ」

「そうなんだ……すごい……」


なんというプロファイリング。
さすが昔からの親友なだけあり、真里のことをよくわかっていらっしゃる。名探偵、萌といったところだ。


「でも当たって良かった。
取られていたら、少しショックだったかも?」

「うん……」


真里が少しだけ暗い顔を見せる。
元々は誠のために取っておいた処女だ。
彼女としても複雑な心境なのだろう。


「あっ、ごめん。
真里としては、彼氏にあげたかったんだよね……?」

「ううん、いいよ……。
私も処女のままで良かったと思うから……」

「それじゃあ……良いの……?」


萌の問いかけに、
真里は一つ間を置き、コクリと頷いた。


「うん……萌なら良いよ。というか、萌が良い」


その言葉に、萌の表情が明るくなる。

真里が処女を捧げるということは、
誠を忘れ、自分だけのものになってくれるということだ。

萌は、真里がその決断をしてくれたことに歓喜した。
そしてギュっと真里を抱き締め、想いを伝えた。


「ありがとう、真里のこと、ずっと大切にするからね」


二人は目を合わせ、覚悟を決めると、
挿入を開始することにした。

先ほどと同じように脚を開く真里。

少し間を置いたこともあって、
萌は念のため、周辺の愛撫から始めることにした。


「ちゃんと濡らさないと痛いと思うから念入りにするね?」

「うん……♡ あ……萌……気持ちいい……♡」


真里は徐々に恋人を見つめる目に変わっていく。
処女をあげると決めたことで、
より一層、萌を恋人として意識するようになったようだ。

ピクピクと震え、官能の限界まで高められた真里の恥丘は、愛する人の挿入を今か今かと待ち受けていた。


「そろそろ良いかな」


萌は中指を立てて、真里の膣口の前に添えた。
真里はその様子をじっと見つめている。


(はぁ……私……萌に処女をあげちゃうんだ……)


一生に一度しか経験できない破瓜(はか)の瞬間。

同性に処女を捧げるという、
今までの人生では考えられなかったことを、
真里は自ら進んで受け入れようとしていた。

そのため、これは破瓜の儀式であると同時に、
レズビアンへの転向の儀式であるとも言えた。


「真里、よーく見ててね。
あなたはこれから、私の指で処女を失うの。
女の指で処女を失って、女の身体でイカされて、
女同士の虜になるんだよ♡

真里は、女の子同士でおまんこ舐めあったり、指を挿れあったり、おまんこ同士を擦り合わせるのが大好きな女の子になるの♡」

「……っ!」


萌の口から告げられる淫語の数々。
萌はここで真里を男から完全に決別させるつもりであった。

女同士のセックスにハマらせて、男に興味を持たないレズビアンにさせる。男性への不信感を積もらせていた萌は、真里にも男との決別を求めていた。


「わかった? 真里」

「うん……♡」


萌の考えを聞いて、真里は胸をドキドキさせていた。

女同士の気持ち良さを身体の芯まで教え込まれ、
男性への興味を失わされてしまう。

マゾ気質の強い真里は、萌によってレズマゾに変えられることに、強い興奮と性的倒錯を覚えていた。


(本当にレズになったら、どうなるんだろう……?
萌のことしか考えられなくなっちゃうのかな……?
オナニーする時も、萌のことしか考えられなくなっちゃったらどうしよう……はぁはぁ♡)


レズになった自分を想像して股間を熱くさせる。
真里の性の対象は、誠から萌へ急激な移行を始めていた。

真里がそのような妄想に耽っていると、萌が口を開いた。


「あ、その前にすることがあったんだっけ。
ちょっと待ってね」


萌は一旦脱衣場に向かうと、タオルを持ってきた。

それを真里の股間の前に広げる。
そしてその上にティッシュを乗せていった。

万が一、血が出た時のための予防手段だ。
こんな高級ホテルのベッドを血で汚してしまったら、
いくら請求されるか分からない。

萌はこういうところはきっちりしていた。

その間も真里のレズ妄想は続く。


(はぁはぁ♡ だめ……興奮して堪んない……♡
私、レズになりたがってるのかな……?
萌とエッチして、今でもこんなに気持ちいいのに……。
もし本当に堕ちちゃったら……
どれだけ気持ちよくなれるんだろう?♡)


ノンケという余計なしがらみを捨てた気持ちよさ。
元から性の欲求に素直な真里は、
ガチレズに変貌を遂げた自分の姿を想像していた。


「じゃあ……挿れるよ? 真里のおまんこを、
女に初めてを捧げたレズおまんこに変えてあげるね♡」

「……っ!♡」

ぴしゅ……♡

「あ」「あ……」


真里の秘部から少量の潮が噴き出る。
しばし静寂の時が流れた後、萌が言う。


「真里……今、何に興奮した?」

「えと……」


真里は目をそらしたまま気まずそうにしてる。

萌はそんな真里をしばらく眺めていたが、
すぐに大まかな予測を立てると確認した。


「もしかしてこの台詞? 真里のおまんこを、
女に初めてを捧げたレズおまんこに変えてあげる……」

「んぁっ……♡」


先ほどよりも厭らしい声で囁く。
真里はその声に身体をビクりとさせた。

その反応だけで、萌は真里が何に感じているか理解した。

真里は同性愛者に変えられてしまう自分自身に興奮しているのだ。彼女の潮吹きは、いわば早漏の男子が出す先走り液のようなもの。

あいかわらずのスケベっぷりに、萌は少し呆れたものの、
同時にそんな彼女に愛しさを感じた。

そういうことに興奮するのなら、好きなだけ興奮させてやろう。真里の中に残っているノンケの心を、彼女自身にも犯させてやるのだ。

萌は少しSっ気の入った表情で、真里を見下ろすと言った。


「真里、今からおまんこ広げて、〖私のおまんこ、萌の指でレズおまんこに変えて〗っておねだりしなさい。うんと可愛くね♡」

「……っ!♡」


驚きと羞恥が交じった表情で萌を見る。
卑猥な命令をされて、心臓の鼓動が激しくなっていった。


(そ、そんな……♡ そんなこと、おねだりしながら処女奪われちゃうの……?♡ そんなこと……♡
は、恥ずかしくて……い、言えない♡ あぁんっ♡)


真里の倒錯的興奮が高まっていく。
恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうだった。
そうしてあたふたしている真里に、萌は改めて命令を下す。


「ほら、早く言って。私の目を見て、おねだりするの」

「はぁはぁっ♡ も……萌……♡」


萌が真里の手を取り、陰部へと誘(いざな)っていく。

ぴしゅ……♡ 「ふぁ……!?♡」

再び潮を噴く陰部。
真里の人生において、もっとも恥ずかしい瞬間だ。
しかしその恥ずかしさが、より彼女の興奮を高めていった。


「こうして自分で開いて、女の子の指を受け入れるの……。
真里のノンケおまんこに女の子の指を挿れて、
いっぱいクチュクチュしてもらって……女の子の指が大好きなレズおまんこに変えてもらうんだよ?♡」

「ふぁぁぁ……♡ はぁぁぁ……♡」


真里は真っ赤になりながらも、両手の指を膣の両側に添えて、ぱっくりと割れ目を開いた。
トロトロとした透明な液が、割れ目の中から次々と湧き出てくる。


「こんなに、はしたなくヨダレを垂らしちゃって……♡
そんなに女に処女を奪われるのが嬉しいの?♡
クリトリスもこーんなに勃起させてちゃって……♡
レズビアンになる準備完了って感じだね♡」


度重なる萌の言葉責めに、真里は陶酔した表情を浮かべている。ノンケからレズに変えられてしまうのが気持ちいい。

新しい自分に目覚めていく感覚に、
真里はうっとりしてしまっていた。


「はぁはぁはぁはぁ……♡ 私のノンケおまんこを……♡
萌の指で……ぁ……ぁ……ぁ…… ♡
レズおまんこに……変えて♡ ん……んんっ……んんっ!♡」

ぷしゅっ!♡ 「ふぁんっ!♡」


興奮して、再び潮を噴く。
萌は気丈に笑うと、真里の顔に近付きキスをした。


「ちゅ……良いよ。真里のおまんこをレズおまんこに変えて、一生男とセックスできなくしてあげる♡ 一日中、女の子の裸のことしか考えられない変態レズ女に仕込んであげるからね♡」

「あひぃっ!♡」


萌の声に真里の脳が犯される。萌の手でレズに染めあげられることに、真里の興奮は最高潮に達しようとしていた。

萌は真里の太ももの間に跪くと、右手の中指に唾液を付けて、愛液で濡れた無毛の丘に伸ばした。


「それじゃあいくよ……。
少し痛いかもしれないけど、我慢してね」

「うん……(ドキドキドキドキ♡)」


萌の指が、膣口に触れる。


「はぁ…♡はぁ…♡はぁ…♡はぁ…♡」


ズブ……ズブ……

一度も男を受け入れたことのない真里の膣が、
同性の指を、初めての相手として迎え入れ始めた。


「あぁっ♡」


萌の指を、中でしっかり感じとる。
そこに愛おしい人の身体の一部があることに、真里はたまらない幸福感を得ることができた。


「ふふふ……♡ まだちょっとしか挿れてないのに、吸い付いてくるみたいだよ♡」


まるで別の生き物のように、自身の指を呑み込もうとする真里の膣に、萌は愛おしさを感じていた。


「はぁはぁ♡ なんかすごい切ないの……♡
私のあそこが……もっと奥まで来て♡って言ってるみたい……♡」


悩ましげな表情して、甘えた声で真里は言う。


「もぉ……可愛いな。真里も真里のレズおまんこも♡」

キュッキュンッキュン♡
萌の言葉に、真里の子宮が喜びを示す。

「んんっ!!♡」

「こんなに私の指を美味しそうに頬張っちゃって♡」


ズブ……ズブブ……

動かしてもいないのに、膣の動きだけで中に進んでいく。
このまま放置するだけで、奥まで到達できそうな勢いであった。第二関節まで入ったところで、再び真里が声をあげる。

「くぅぅん…!♡」


真里は背中を弓なりに反らし、ピクピクと身体を震わせた。


「あれ……もしかしてイッちゃった?」

「ううん……イッてない。興奮して声が出ちゃっただけ」

「そか」


真里はイクのを必死に我慢していた。

すでに何度もイキかけているが、
そんなすぐにイッてしまったら、勿体ない。

イクのは、萌の指が最深部に到達してからだ。
真里は萌に初めてを捧げるという体験を、最高の形で終えたいと思っていた。

そうした真里の想いが、
萌の指をより深い場所へと誘(いざな)っていく。


(それにしても……真里の中、キツいな……)


オナニーで自分の中に挿れた時とは全く違う感覚。
実際、真里の膣は一般的な女性よりも狭くできていた。

なおかつ神経が細かく張り巡らされていたため、
異物の侵入をより敏感に感じられるようになっていたのだ。

誠のペニスにとっては、硬く難易度の高い女性器であると言えたが、萌の指にとっては、相性の良い女性器といえた。

そして、それはまた、
一般男性の性器にとっても相性の悪い性器と言えた。

挿れる側からすれば、きつく締まって気持ちの良い性器なのだが、挿れられる真里からすれば、痛くて仕方がないだけなのだ。

それだけ真里の膣壁は敏感に出来ていた。

真里の痛いという訴えを無視して突っ込み続けようものなら、その経験が仇となり、真里が男性との性交渉に忌避感を感じるようになってしまうのも十分あり得る話だった。


「そういえば、痛くないの?」

「え……あ、そういえば全然痛くない。なんでだろ……?」


覚悟していたというのに、全然痛くない。
ただただ、気持ちいいだけである。

あまりの順調っぷりに、
真里は少し拍子抜けしてしまっていた。

萌がまだ指を一本しか挿れてないというのもあったが、
入念過ぎる前戯により、陰部がヌルヌルに潤っていたのと、
真里自身がこの行為を望んでおり、陰部の力が抜けていたのが主な要因であった。


「うーん、興奮してるからかもね? こんなに濡れて、嬉しそうにしゃぶってる真里のまんこが、痛みを感じるわけないか」


今も本人の意志を無視して、萌の指を呑み込んでいく。
もちろん真里自身もそれに気付いていた。


(膣って、こんな風に動くんだ。
まるであそこが口になったみたい……♡)


喉でもないのに、ゴクリと呑み込んでいく感覚。

もっと奥まで呑み込みたい。
もっと萌の指を奥で感じたい。

このまま真里の膣の勢いに任せるつもりであったが、
そんな真里の膣の気持ちが通じたのか、
萌は一番奥まで挿れることを決めた。


「そろそろ一番奥まで挿れることにするね」

ズブ……ズブズブズブズブ……

「あ……あひぃ……♡」


進み行く萌の指に、再び喘ぐ真里。

奥の子宮膣部に指先が当たり、
真里はアへ顔にも似た、だらしない顔を見せていた。

ここがいわゆるボルチオと呼ばれている部分だ。

通常、時間をかけて開発しなければ、気持ち良くなれない部分なのだが、それでもなぜか真里は感じてしまっていた。


「ほら、奥まで入ったよ? 気分はどう?」

「ぁ……ぁ……いぃ……♡」

「ここ? ここがいいの?♡」


ツンツンと優しく内部を叩くと、
真里は弓なりに背中をしならせた。


「ひゃうっ!♡ そこ……しょこがいぃの……♡
あぁ……しゅごい、いぃ……♡」


慣れないところを責められて、呂律が回っていない。
萌はここで言葉責めに入ることにした。

一旦指の動きを止めて、耳元で色っぽく囁く。


「真里のおまんこ……すっかりレズおまんこだね♡
指だけでこんなに感じちゃって……もう男とできないね♡」

「はぁうぅ……もうできにゃいぃぃ……♡
もえだけでいぃぃ♡ もえだけでいぃのぉぉぉぉ♡♡
うぅぅぅぅぅぅぅぅぅん♡♡」

「それじゃあ、ここでイッちゃおうか?♡
いっーぱい♡ 女の子の気持ち良さを堪能して、
ノンケの自分にさよならするんだよ?♡」

「ひゃ、ひゃいっ♡ しゃ……しゃよーにゃらぁぁ♡
にょんけのわたし……。
しゃよーーにゃらぁぁーーーーはぁぅぅっ!!♡♡」


真里がそれまでの自分に別れを告げた瞬間。
萌がシュコシュコと、指をピストンし始めた。

ほんの小さな優しい動きだが、
それだけでも、十分真里は感じることができた。


「あぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「あぁっ!♡ 真里、すごい良い顔♡ これで同類だね♡ 同じレズビアン同士、これからもいっぱい愛し合おうねっ♪♡」

「うんっ!♡ どうるいなにょっ♡ もえといっしょっ!♡
もえっ、しゅき!♡ だいしゅきぃぃ!♡」

「ほら、いっちゃえ!♡
ノンケをやめたおまんこシュコシュコされて、
おもいっきりレズイキしちゃえ!!♡♡♡」

シュコシュコ♡ シュコシュコ♡
クチュクチュクチュクチュクチュクチュ♡

「いくうっ!!♡ いくっ!いくっ!いくっ!♡♡
れじゅいきしちゃうぅ!!ふわぁぁんっ!♡
いくぅぅっ! ふぅぅんっ!♡♡ いっくぅぅぅ!!!♡♡
いっ…………ちゃふぅぅぅぅぅぅぅぅ!!♡♡♡」

ガクガクガクガクガクガク!!
ビクンッ!ビクビクンッ!!ビグビクビクビク!!♡

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!♡♡」


激しく全身を震わせて、真里はイッてしまった。

こと切れてぐったりと横たわり、処女喪失後の余韻に浸る。


「はぁ……♡ はぁ……♡ はぁ……♡ はぁ……♡」


真里がイッたのを見て、萌が指を引き抜こうとすると、
密着していた指と膣壁の間に血が見えた。

萌は指を抜くと、
用意しておいたティッシュを陰部に当てた。
そして残りのティッシュを陰部の下に差し込んだ。

その様子を真里は、じっと見つめている。


(はぁはぁ……私の処女、萌にあげちゃったんだ……♡)


息が整ってきたところで、改めてそれを実感する。
同時に自分が萌の女になったという実感が強く湧いてきて、愛しさもこれまで以上に込み上げてくるようだった。

萌は処理を終えると、ごみ箱にティッシュを捨てた。
出血がそこまで多くなかったため、
手間はそこまでかからなかったようだ。


「どう? 処女を失った気分は?」

「うん……なんだか、萌の彼女になったって気持ちが強くなった感じがする……」

「ふふ……♡ じゃあキスしてみよっか?♡
どれだけその気持ちが強くなったか実感させてあげる♡」


真里と萌は、抱き合いキスをした。愛する人の身体の匂いはとても甘く、心地よい気持ちにさせてくれた。


(はぁ……萌のこと、誰よりも一番好きな人だって思える♡)


真里はそれが嬉しくて仕方がなかった。
今はもう、振られたことをつらいとは感じない。
ただ目の前にいる恋人と、いつまでも愛し合いたいと思った。


「ありがとう、萌……もう全然つらくないよ。
なんか私って、いつも助けてもらってばかりだね……」

「そんなことないよ。真里だって、私のこと助けてくれるじゃん。これからも一緒に助け合っていこうね♡」

「うん……愛してるよ、萌。大好き♡」


真里は自ら進んで萌にキスをした。

ノンケからバイセクシャルへ。
バイセクシャルからレズビアンへ。

細かな変化を繰り返してきた真里の性的指向は、
レズビアンとして完結を迎えようとしていた。

Part.113 【 処女喪失(後編)◇ 】

「それじゃあ、お風呂いこっか」

「えっ、もう……?」


萌の誘いに、真里は戸惑った。
お風呂に行くということは、この行為を終えるということだ。せっかく処女を捧げたというのに、あまりにもあっさりし過ぎてる。真里は萌の態度に不満を持った。


「ん? なんか不満そうだね。なんか勘違いしてない?
血が出たから、一回洗おうって意味だよ。
流しっぱなしじゃ、できないでしょ?」

「あ、そういうことか」


(そういえば帰ってきてから、お風呂入ってなかったっけ……)


どうせ続きをするなら、綺麗な身体でしたい。
真里は同意すると、萌とのバスタイムを楽しむのであった。


※※※


それから三十分後。
お風呂から上がった二人は、髪を乾かしていた。
脱衣場でドライヤーの音がなっている。


「さっき乾かさずに始めちゃったから、少しパサついちゃったな」

「あぁ……ごめんね」

「真里のせいじゃないよ。
全部あの男が悪いんだから、気にしないで」


そんな萌に、真里は少し目線を落とす。


「萌……そのことなんだけどさ……」

「ん?」

「実は萌に誠くんのことを、
あまり悪く言ってもらいたくないんだよね……。

たしかにひどい振られ方されちゃったけど、
きっと誠くんも、ずっと悩んでたと思うんだ。

本当は男の人が好きなのに、
無理して私のことを好きになろうとしてくれて……。

だから私は、誠くんに幸せになって欲しいと思ってる。
本当に好きになれる人と一緒になって欲しい。

萌が忍くんを取られて、恨む気持ちは分かるんだけど……
私がそう考えてたら、萌は嫌かな……?」


あんなにひどい別れ方をされたのに、
まだ誠を庇おうとするなんて……。

しかしそのことに萌が不満を持つことはなかった。


「……全然、嫌じゃないよ。
むしろすごく真里らしい。

たしかにそうだよね。
もう終わったことなんだから、恨んだってしょうがない。
わかった! 誠くんのこと悪く言うの、もうやめる。

私には真里がいるんだもの。
明るく楽しくいかなくちゃ! だよね♪」

「ありがとう、萌」


真里はにっこり微笑み、続けて言った。


「それとね。実は私がこうして萌と付き合えたのも、
誠くんのおかげだったんじゃないかって思ってるんだ」

「と、言うと?」

「誠くんって、男の子だけど、見た目も中身も女の子で、
同性と付き合ってる感覚が強かったんだよね。
だから萌に色々されても、嫌じゃなかったのかも?」

「なるほどね。彼と付き合ったことで、
レズに抵抗がなくなったってわけだ」


そう考えると、誠が果たした役割は大きい。
彼は真里がレズを受け入れる礎(いしずえ)を築いてくれたことになる。

サンルームでの出来事だって、
同性に愛撫されたら、普通、もっと嫌がるはずだ。

それを真里は、すんなりと受けいれていた。

誠のおかげで嫌悪感がある程度、
払拭されていた、と言われれば納得である。

萌はそう考え、誠への気持ちを改めたのであった。


「それじゃあ続きしよっか?」

「うん♡」


二人はベッドに上がると、向かい合わせに座った。


「さ・て・と、それじゃあレズになりたての真里ちゃんを、もっと女好きに改造しちゃおうかな?♡」

「はぁはぁ……♡ してぇ♡ 改造して♡
女同士の気持ちよさ、もっと教えて♡」

「ふふふふ……知らないよ~?
真里が四六時中レズ妄想して、
レズ同人でオナニーする姫女子になっちゃっても?♡」

「萌が望むなら、どんな風になっても良いっ♡
私をもっと萌好みのレズ中毒、姫女子にしてぇ♡」

「もぉ……ホント、変態なんだから♡」


萌は真里にキスをすると、さっそく押し倒した。
横に並んで、耳元にキスをしながら胸を揉み始める。

萌の唇が耳元から首筋まで、音を立てながら這い回り、時折、舌を使って滑り落ちていく。
同時にたぷたぷと水風船を扱うように、おっぱいを揉みしだいていった。

真里は半目を開けながら、実に気持ちよさそうにしている。


「気持ちいいでしょ?」

「はぁ♡ はぁ♡ 気持ちぃぃ……♡」


真里は萌にキスを求めた。
太ももで萌の脚を挟みこみ、腰を振って陰部を擦り付けている。そうして愛液を塗る様は、まさにレズそのもの。

真里は女性特有の肌の柔らかさを、
ヴァギナで感じ取り、レズの気持ちよさを堪能していた。


「真里ったら、私の太ももでレズオナニー始めちゃうなんて……恥ずかしくないの?♡」

「だってぇ……♡ さっき挿れられてから、ずっとウズウズしてたんだもんっ……」

「こんなに、人の脚ビチョビチョにさせちゃって♡
本当に真里のあそこは、レズおまんこだなぁ♡」


そう言われて、真里の陰部はピクピクと反応する。

レズと呼ばれて背徳感が刺激され、更なる興奮材料となっているようだ。男から女へと、性対象が変わるこの瞬間でしか味わえない背徳感に、真里は夢中になっていた。


「あぁんっ…♡ そうなのっ♡
萌に処女を奪われて、すっかりレズまんこになっちゃったの♡ はぁはぁ、ぁんっ♡♡ すりすりすりすり♡♡
萌の太もも、おまんこ擦れて気持ちいぃンッ!♡♡」


自分で自分をレズと呼び興奮する女。まさに変態である。


「ほら、レズまんこ、すりすりするだけで良いの?
おっぱいを舐めたり、しゃぶったりして良いんだよ?♡
レズビアンの真里ちゃんは、女の子のおっぱいも好きでしょ?♡」

「うんっ♡ おっぱいも好きっ♡♡
はぁはぁはぁはぁ♡♡ 萌のおっぱい舐めさせて……♡」


荒い息を吐き、胸に唇を添えていく。
真里は乳房に触れると、舌を出して舐めながら、おっぱいを揉み始めた。

「れろーーん♡ レロレロレロレロ♡
あんむっちゅうぅぅ♡ あぁ萌のおっぱい美味し……♡」


以前サンルームで、仕方なしに舐めていた時とは違う。
本当に女が好きなレズビアンの舐め方だ。


(柔らかくて……触れてるだけで気持ちいい……♡
これが本当の女の子のおっぱいなんだ……♡)


改めて感じる本物の女性の身体に感動する。

それから真里は、萌のおっぱいを好きなように扱った。
舐めたり吸ったり揉んだり、それに満足すると、今度は自分のおっぱいを擦り付けて遊んだ。

萌と抱き締めあい、おっぱいをすり潰し合いながら、ディープキスをする。硬く勃起した乳首同士がこねくり合わされるのが特に気持ち良かった。


「あぁーん♡ もえー♡
乳首こすり合わせるの気持ちいいー♡」

「真里はほんと、淫乱だなぁ♡
一度堕ちると、どこまでも突っ走っちゃうんだから♡」

「萌がこうしたんでしょ。
責任とって、いっぱい気持ち良くしてよ」

「良いよ。じゃあ、次はここ♡
私のおまんこ、舐めてごらん♡
レズビアンの真里ちゃんなら、女の子のここ……舐めれるよね?♡」


萌は開脚すると、真里に陰部を舐めるよう指示した。
彼女の顔に両手を添え下半身へと誘導する。

真里は促されるまま、
萌の股間に跪(ひざまず)き顔を寄せた。


(あ……これが萌のおまんこ……♡)


愛おしい恋人の秘貝は、
口調の冷静さとは裏腹にしっとりと濡れていた。

真里にとって、同性の性器をこんなに間近で見るのは初めての体験。ノンケであれば、身の毛もよだつ瞬間であるが、
レズの真里には、興奮材料にしかならなかった。


(萌の匂いがする……この匂い好き……♡)


控えめに生い茂る花園に鼻先を添えて、クンクンと嗅ぐ。
女性特有の淫乱な香りが鼻腔を通り、真里は女芯をピクピクさせた。


「ねぇ真里、ノンケとレズの境界ってなんだかわかる?」

「……女の子が好きかどうかってこと?」

「うーん、それだけだと単なる百合になっちゃうな。
表現が柔らかすぎるね」

「なんだろう……?」


萌は腰を少し浮かせて、
股間を真里の鼻にくっ付けると言った。


「正解は、おまんこを喜んで舐めれるかってことだよ♡
今の真里なら、喜んで舐めれるでしょ?♡」

「うん……舐めれりゅ……♡ はぁはぁ……♡」

「それじゃあ、舐めてごらん♡
どんな形かじっくり見て、いっぱいペロペロして、
女の子の味を覚えるんだよっ♡」

「う……うんっ!♡♡」


催眠の記憶のない真里にとって、これが初クンニとなる。
真里は萌の股間を潤んだ目で見つめ、鼻息を荒くしていた。


(はぁはぁはぁ……
萌のおまんこ……美味しそう……柔らかそう♡)


真里は萌の太ももに手を添えると、
さっそく割れ目にキスをした。

ちゅ……♡

「くっ…………うぅぅっ!!♡♡」


萌が腰を震わせる。

彼女は、艶かしい表情で息を吐きつつも、
秘貝に口を添える真里の頭を撫でた。


「あーあ、ついに舐めちゃったね♡
レズクンニ体験しちゃって、また一線越えちゃった♡
おまんこ美味しい? レズビアンのまーりちゃん♡」

「あむぅ……レロレロ……ちゅぷ……はぁはぁ♡♡
おみゃんこ……おいひい……♡」

「男の子のちんこと、女の子のまんこ♡
どっちが好きかなぁ~~?♡」

「あむぅっ……ちゅぷちゅぷちゅぷ♡
おまんこのほーが、じゅっと、しゅきぃ♡♡♡」


真里は舐めても反応しない誠のペニスより、
ピクピクと反応する萌のおまんこの方が、断然愛おしいと感じた。


「私といない時は、
このおまんこを想像してオナニーするんだよ?♡」

「ちゅぱちゅぱ……うんっ♡」


旅行を終えたら、二人は家に帰ることとなる。

しばらく会えないことを考えると、
しっかりと記憶しておく必要があった。


(萌のおまんこの形と味を覚えなきゃ)


ぢゅるるる! れろれろれろれろ。
ぢゅるるるる! れろれろ ぢゅるるぅ!!


真面目な真里は、一生懸命萌の陰部を舐め回し、
その形、匂い、味、全てを覚えようとした。


(萌のおまんこ大好き……♡
ずっとこのまま舐め続けていたい♡)


それから数分、真里のレズクンニは続いた。
萌も太ももで真里の顔を挟んで腰を振り、レズの快感に酔いしれている。


「はぁ……はぁ……真里、気持ちいいよ♡
私も……真里のあそこ、舐めたくなってきちゃった♡」

「いいよ……♡ 舐め合いっこしよっ♡♡」


真里が仰向けになると、
萌はその上に騎乗して、彼女の下半身に顔を下ろした。

そうして69の姿勢になった二人は、互いの秘所を舐め続けた。


ちゅ……ちゅう……♡
レロレロレロレロ、んんっ♡ ちゅうぅ!♡
ヂュルルッ!♡ ぷぁ……♡ ごくん……ぺろぺろぺろ♡


女同士の肌の密着感と、喉を潤す恋人の愛液。
恥丘に感じる舌と唇の感触により、二人は大きな幸福感を得ていた。

互いに身体を求め合い、心から愛し合っている。
この幸せが続くなら、他に何もいらないと感じた。

萌は真里がさらに愛おしくなり、
舐めながら指を挿れ始めた。


「ぁ……ぁ……♡」


真里が小さく喘ぐ。慣れない膣への刺激で、
萌へのクンニが疎かになっている。

しかし萌は気にせず挿入を続けた。
指をしっかりと奥まで入れて、真里のクリトリスを舐め始める。中と外、同時に責められ、たまらず真里は声をあげた。


「ふぅあっ!!♡ それ……だめぇぇ♡」

「だめじゃないでしょ?♡ もっとして、でしょ?♡」

「やぁん!♡ ダメぇん!♡
すぐイッちゃうからダメなのぉ……♡
ジンジンして……気持ちよくて……♡♡
おかしくなっちゃうぅ……♡」

「ふーん、じゃあ、おかしくなっちゃえっ♪♡」


萌は少しだけ指のストロークを上げると、
真里のおまんこにしゃぶりついた。


ヂュルル! ヂュルルルルル!!♡

「んあぁーーーーーーーーー!!!♡♡♡」

ビクンッ! ビクンッビクンッ!♡

ぷしゅ……ぷしゅぅぅ!!♡♡


膣内外の刺激で真里は潮噴き絶頂をしてしまう。

しかし萌の猛攻は終わらない。
彼女は真里の秘貝に口をつけると、舌をねじ込んだ。


「ふぅえっ!? ふぇっ!?
も、もえ……今、イッた……私、今、イッたから……もうやめっ! ふぅん!!♡ あぁっん!♡ あぁぁんっ!♡」

「レロレロレロ……ぢゅるるるぅ……だーめ♡
真里は女の指と舌で、何度もイケちゃうレズビアンになるの♡  あんむぅ……ピチャペチャ……」


イッたばかりのヴァギナを吸われ、
真里はパニックになった。

身体をピクピクさせつつも腰を振り、
口からはヨダレを垂らして、アヘ顔一歩手前の状態だ。


(あ…あ…萌の舌が、私の中をヌメヌメ這い回って……
きんもぢいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!♡♡♡)


「また、イッちゃうううううううう!!!♡♡♡」

ビクビクビクビクビクッ!!!

真里は激しい痙攣を起こして、再び絶頂を迎えてしまった。


(はぁう、もう……だめぇぇぇ……♡♡)


ぐったりとする真里であったが、
それでも萌は股間から離れようとしなかった。

緩めのクンニに切り替え、じわじわと絶頂へと向かわせる。
真里は彼方を見つめたまま、忍び寄る絶頂を迎え入れるしかなかった。


(あぁぁぁ……あそこがすごく温かくてきもちいぃ……♡
なんだか……天国にいるみたい……♡
あ……ぁ……また……イク……イク……♡♡)

「イクぅぅっ!!♡♡」

ピクンッ♡ ピクンッ♡♡

終わらない真里の絶頂。

絶頂しては、また別の方法でイカされる。
そしてまたイッては、別の方法でイカされる。

いつしか真里の意識は、どこかへ飛んでいってしまった。

そうして30分が経過した頃、
ようやく満足した萌が声をかける。


「ごめん、真里があんまり可愛くて、
つい暴走しちゃった♡ 大丈夫だった?」

「う……うん……大丈夫♡
気持ちよかったよ♡ えへ♡ えへえへ♡」


まるで周りをお花畑に囲まれているように、
幸せそうな顔で笑う真里。

だらしなくヨダレを垂らし、未だに腰を振ってラリっている。

真里は許容量を超えた快感により、
すでにトランス状態に陥ってしまっていた。


「えっ? 本当に大丈夫……?」


ここでようやく萌は、真里の異変に気付く。
夢の世界に旅立ってしまった彼女を連れ戻そうと、
頬をペチペチと叩いてみたが効果はない。

このまま寝てくれれば、明日の朝には元に戻るだろうか?

萌がそのように考えていると、
真里が起き上がって抱きしめてきた。


「あ~ん♡ そんなことより続きシヨ♡
私、モット萌とレズしたい♡ ハァハァ♡ ハァハァ♡
モットキモチよくなろぉっ!!♡ ハァハァ♡ ハァハァ♡」

「真里……目が怖いよ……」


おかしくなってる人特有のギラギラした目つき。

自分で撒いた種とはいえ、
萌は真里の豹変っぷりに恐怖を感じ始めていた。


「ま、真里、とりあえず落ち着いて、ね?
するから……落ち着いたらするから……
だから、ちょっ、まっ! んむぅぅぅぅぅぅっ!!」


後退る萌を、真里は逃がさなかった。
ストッパーの外れてしまった彼女は、
萌にキスをすると、口内を蹂躙し始めた。

獲物を狙う目つきで、萌を堕とそうとしている。


「ンンンーーーーーーッ!!♡」


あまりにも積極的な真里の姿勢に、
半ばパニックになりかけている萌は、ついに叫び声をあげてしまった。

真里は素早くお互いの脚をクロスさせると、
膝を立てて、萌の上体を引き寄せた。
そしてそのままアソコ同士を密着させ、貝合わせを開始する。


「あぁっ!!」


触れ合う女の肉芽。
興奮して尖りきってしまった二つの突起は、
互いを突き合い、その鋭角さを増していった。

真里の恥丘が触れ、萌は興奮して声をあげる。
上下両方に受けるキスに、すっかり翻弄されてしまっていた。


「あぁぁっ!! 真里、だめっ!!♡♡
これ……気持ちよすぎてぇ♡♡ ハァンッ!♡
しんじゃうぅぅぅぅっ!!!♡♡」

「萌、かわいい♡♡ 死ぬほどキモチいいのぉ?♡♡
んっんっん……あっあっあ……♡♡
んちゅっ♡ ちゅうぅぅぅっ!♡ れろれろれろ……♡
萌のレズまんこ、柔らかくて気持ちいいよっ!♡♡♡
あ、そうだっ♡ おっぱいも合わせヨ♡」


真里は上体を密着させると、おっぱいを重ね合わせた。
先端で凝り固まる四つの突起が、お互いをすり潰しあう。


「ンンンッ!!♡♡ キモチイィ!!♡♡♡」


クチュクチュ、クチュクチュ……
パンパンパン!! パンパンパン!!

ぷっくらと膨らんだ女性器同士がぶつかって破裂音を鳴らしている。白肌の美女二人が、理性をかなぐり捨て、求めあう姿はまさに芸術であった。


「あぁぁっ!♡ もう限界っ!!♡ もう限界っ!!♡
イクッッ!!!イクッッ!!いっちゃうっ!!♡♡」

「あぁぁぁぁぁ……私も……もう……いく……♡♡
いく……はぁ……はぁ……!♡ いくっ……はぁはぁ……!♡
いくっ………………っ!!♡♡ あぁぁぁぁぁぁぁっ!!♡♡」

「「イッックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!♡♡♡♡」」


ビクビクビクビクビクビクビクビク!!!!!!


強く抱き締め合い、
激しく震えながら、真里と萌は絶頂を迎えた。


ハァハァ……ハァハァ……ハァハァ……ハァハァ……


激しい絶頂により、全ての気力と体力を使い果たした二人は、そのまま倒れ込んだ。

半目を開き、相手の姿を確認する。

そして細い腕を伸ばして、手を握り合った。


「萌……愛してるよ……♡」

「私も愛してるよ……真里♡」


最後の口付けを交わす。
ゆっくりと瞼が閉じられ、彼女達は眠りについた。



※※※



場所は変わって、ここはホテルの管制室。

多くの職員がパソコンの前に座り、
萌の部屋を監視していた。

壁に埋め込まれた巨大モニターには、
真里と萌が眠る姿が映し出されていた。


「小早川様……ついにやりましたね……」


小早川が座る椅子の横で、側近とおぼしき男が呟く。
小早川は黒皮の椅子に座り、モニターを眺めていた。


「ひとまず第一段階完了ってところかしら?
真里がマコトちゃんと別れる決断をしたのは良かったワネ」

「え……し、しかし、ここまで来れば、
すでに誠と真里の関係は終わりではないですか?」


成果に対し、目立った反応を見せない小早川に、
側近は困惑している。

すでに真里は誠を捨て、萌に心が移っている。
これ以上することが、何かあるのかといった様子だ。


「あの女を舐めちゃいけないワ……。
勝利を確信したところで、いつも逆転してきたのがあの女ヨ……。今度という今度は、マコトちゃんが別れを認めるまで、気を抜くつもりはないワ……」


これまで苦渋を呑まされること三回。
その後、催眠の呪縛を解き、脱獄寸前まで粘った人物。
それが一ノ瀬 真里だった。

今回は鮫島のフォローに助けられたが、
彼がいなかったなら、確実に負けていただろう。

小早川は、人生において一度会うかないかの好敵手として、真里を認めていた。

それは同時に、
彼が真里に一切の妥協を許さないことを意味していた。

小早川は、机に置いてある〖誠のスマホ〗を手に取ると言った。


「しかしチャットって便利ネー。
〖本人が話さなくても、話したことになる〗んだから。
こんなに有効なら、もっと早くに試してみるべきだったワ」


真里に送ったメッセージを見てほくそ笑む。

彼は、誠のスマホでチャットを送り、
真里に別れを告げさせていた。

催眠によって、記憶を消されている真里は、
すっかり騙されてしまったというわけだ。


「あとはマコトちゃんだけね……」


真里を堕とすことに成功した小早川は、
いよいよ最後の人物。

桐越 誠を堕とす準備に取り掛かり始めた。

Part.114 【 わからせ◆ 】

次の日の朝、
小早川は、郊外のラブホテルにいた。

ソファーで紅茶を飲む彼。
少し離れた場所には、ベッドで眠る誠と忍がいる。

二人は、逃亡から捕縛までの記憶を消され、
生まれたままの姿で眠らされていた。


「真里と萌の様子はどうカシラ?」


紅茶を置き、小早川が尋ねると、
入り口側で、直立不動で立つ黒服が答えた。


「予定通り催眠尋問が行われております。
小早川様の音声データを使い、逃亡中の出来事を聞き出しておりますが、結果はあまり芳しくないようです」

「そう……時間がないから、ダメ元で試してみたけど、
やっぱり上手くいかなかったようネ。こっちが片付いたら、すぐ行くから、それまで休ませておきなさい」

「かしこまりました」


真里を堕とした後、
小早川は改めて、逃走中の記憶を探りだそうとしていた。

誠を堕とす材料は、多ければ多いほど良い。

来(きた)る決戦の時に備え、
小早川は万全の体制で臨(のぞ)もうとしていた。

彼は休憩を終え、ベッドの方へ移動すると、
さっそく催眠をかけ始めた。


「忍ちゃん……目を開けなさい。
起きて、隣で眠っているマコトちゃんを見るの」


指示を受け、忍はゆっくりと起き上がる。
だらんと肩を垂らし、いかにもだるそうな表情だ。
彼は目を開けると、誠を見た。


「あなたは、その子を犯したくなる。
見ているだけで興奮してくる……精子をぶちこみたくなる。
そんな気持ちがどんどん大きくなってくるワ」


忍のペニスが膨らみ、徐々に勃ち上がっていく。
馴染みのある裸体を前にして、喜んでいるようにも見える。

一見すると、
これまでとなんら変わりのないシーンのように思える。
誠と忍をまぐわせるなど、何度もしてきたことだ。

しかし一つだけ異なる点があった。

それは恋愛要素の欠如。

これまで小早川は、愛のあるセックスを意識してきた。

男同士の恋愛感情を根付かせ、身も心もホモになってもらう。それが本来、彼が目指していたゴールであった。

だがその方法では、誠を堕とすことはできない。

あまりにも真里への依存度が高すぎて、
忍に鞍替えさせることができないのだ。

そのため小早川は、
罠に嵌めて堕とす方向へとシフトした。

忍に誠を犯させ、
誠に自分がホモであることを理解させて解放する。

解放された誠は、真里の元へと向かうだろう。

そして辿り着いた先には、萌がいる。

小早川は、そこで決着をつけるつもりであった。


「忍ちゃん四つん這いになりなさい」


忍が四つん這いになると、小早川は媚薬ローションの先を、忍のお尻に入れ、容器を潰して中身を噴射した。


「んっ……!」


冷たい液体が入り、忍は声を上げる。

次に小早川は、
栓をするため黒服にアナルストッパーを持ってこさせた。

アナルストッパーとは、
アナル用のディルドが付けられているベルトのことである。

黒服は忍のお尻にディルドを挿入すると、
ベルトを締めて固定した。


「良い感じネ♡」


小早川は忍のお尻を両手で包み、
ディルドが馴染むように揉みしだいた。

内部を張り型が掻き回し、媚薬を浸透させていく。
それにより忍の肉棒は、限界まで勃起させられてしまった。

媚薬が浸透して、忍の目つきが険しくなっていく。

まだ命令されてもいないというのに、
今にも誠に襲いかかりそうな雰囲気だ。


「もっとじっくりとマコトちゃんをご覧なさい。
とっても可愛らしい男の娘でしょう?♡
柔らかそうな身体に付いてるおちんちんも、とってもキュートね♡ この子を好きに犯せたら、どんなに気持ち良いカシラ?♡」

「フーーーッ! フーーーッ!」


忍は獣のように息を吐いた。
以前なら、このような極端な反応を見せなかった彼だが、萌を失い、独り身となった彼には、もはや理性をつなぎ止める術などなかった。

次に小早川は、誠に暗示をかける。


「マコトちゃん、あなたはアタシが手を叩くと目を覚ますワ。あなたの目の前には忍ちゃんがいる。

でもなんだか様子がおかしいわネ?
逞しくて素敵なおちんちんを勃起させているワ。
どうして彼はそんな状態になっているのカシラ?

もちろん、分かるわよネ?
そう……彼はあなたを犯し、性欲を発散させようとしているの。こんなに立派なおちんちんを持つ彼に犯されたら、さぞかし気持ち良いでしょうネ♡

でもあなたには真里ちゃんがいる。
彼女のためにも素直に受け入れるわけにはいかないワ。

だけど身体は正直だから、受け入れてしまうの。

でも心だけは許しちゃダメよ?
どんなに気持ちよくても、あなたは真里ちゃんの彼氏なんだから……絶対に受け入れてはダメ……」


これまでの催眠とは、真逆をいく内容。
小早川は、忍を拒否するよう暗示をかけた。


(せいぜい罪悪感を感じなさい……。
彼女がいるのに、男とセックスして気持ちよくなってしまうなんて……潔癖なマコトちゃんには、到底、許せることじゃないワ。

真里を大事に思えば思うほど、男を受け入れる自分に嫌悪感を持ってしまう。そうして罪悪感でいっぱいになった時が、あなたの最後ヨ……)


「忍ちゃん、あなたはアタシが手を叩くと、自由に動けるようになるワ……。目の前にいるその子を、思う存分犯しなさい!」


パンパンッ!!

小早川は覚醒の合図を放った。



※※※



「んっ……」


手を叩く音が聞こえ、誠は眠りから目覚めた。

荒々しい息の音が聞こえてくる。
起き上がると、そこには忍がいた。

彼は限界まで一物を勃起させ、
その先端から我慢汁を垂らしていた。


「えっ……なにっ!?」


友人の悍(おぞ)ましい姿に、誠は恐れおののく。
そして自身が裸であることに気づき、胸と股間を隠した。
強張った顔で、恐る恐る尋ねる。


「忍くん……これはどういうことですか?」

「どういうことって……わかるだろ?」


忍は厭らしい目つきで、見つめてくる。
その目は、明らかに獲物を狙う獣の目。

催眠によって人格を変えられた忍は、
男を襲うレイプ魔として、変貌を遂げていたのだ。

忍が徐々に距離を縮めていく。


「や、やめてください……」


あんなに優しかった忍が、強姦魔のように近づいてくる。
彼の人柄を信用していた誠は、大きなショックを受けていた。

誠はすぐに抵抗を試みた。
股間から手を離し、ペニクリを見せて男であることを証明する。


「私、実は男なんです。
ちっちゃいですが……付いてますよね?」


男だと明かせば、諦めてくれる。

誠は、そう考えたが、
返ってきた答えはーー


「そんなの知ってたさ。男だから良いんじゃないか……」

「そ……そんな……で、でも待ってっ!
あなたには萌さんがいるじゃないですかっ!?
彼女がいるのに、男同士でこんなこと……ダメですよ!」

「萌とは別れたよ。あんなじゃじゃ馬女いらないよ。
俺にはキミさえいれば良い……」


忍は躙(にじ)り寄り、誠の腕を掴んだ。


「やだ……やめてください……。
私……真里さんと付き合ってるの。
こんな身体だけど……普通に女の子が好きなんです!
だから、やめて……」


怯えて涙を流す誠。
抵抗するが、男性の力に敵うはずもない。
たやすく姿勢を崩されて、キスをされてしまった。


「んんっ! んんんーー!!」


催眠の記憶を消されている誠としては、
これが男性とする初めてのキス。

真里と違い、忍の唇は硬くて、力強い感じがした。


(うそ……男の人とキスしちゃった……そんな……)


誠にとっては、禁忌とも言えるホモ行為であるが、
そのショックを受ける間もなく、忍の舌が口内に入り込んでくる。勢いに圧された誠は、奥への侵入を許してしまった。


「んむっ! んっ!? んんんっーー!!」


口内に忍の息が入り、自身の息と混ざりあう。
唾液も舌も絡め合わされ、男とキスをしているという感覚を嫌でも認識させられてしまった。

だが誠も、されるがままではない。
追い詰められた誠は、忍の舌に嚙みついた。


「…………っ!!」


忍の身体が一瞬硬直し、誠から離れる。
少し痛みを感じただけで、怪我はしていないようだ。

誠は忍を傷付けないよう、あえて軽く噛んでいた。

レイプされているとはいえ、
これまで仲良くしてきた仲だ。
友人を想う気持ちが、反抗にブレーキをかけていた。

だが忍に、その想いは届かなかった。
彼は眦(まなじり)を決して誠を見ると、平手で頬を打ち付けた。

パンッ!!!!

大きな音が鳴り、ベッドに倒れる誠。
叩かれたショックで、唖然としている。
そしてすぐに、顔を歪めて泣きそうな顔を見せた。

女としての自覚がある誠にとって、暴力は何事にも耐え難きもの。心に受けた衝撃は、決して小さくなかった。

忍が再び殴る動作を見せると、
誠は両腕を顔の前にクロスさせ身構えた。

怯えて全身が震えている。


「や、やめて……」

「だったら、もうするな。次やったらグーで殴るからな」


誠はすっかり戦意を喪失してしまっている。

長年か弱き乙女として催眠を受け、
お尻を犯されるセックスしか許されてこなかった誠には、
一人で立ち向う勇気は生まれてこなかった。


「女が好きだって言ってる割には、しっかり勃ってるじゃないか。女装もしてるし、本当は男が好きなんだろ?」

「え……? こ、これは……」


起立する分身を見て驚く。
誠のペニクリは、忍にキスされて勃起してしまっていた。


「これは違いますっ!」

「何が違うんだよ? ノーマルだったら勃つわけないだろ?」

「私はノーマルですっ!」

「じゃあ、身体に聞いてやるよ!」


忍は荒々しく誠の腕を掴むと、押し倒した。

彼は、手足をバタバタさせて抵抗する誠を、
再び平手打ちして黙らせると、
ヘッドボード部分に置かれていた媚薬ローションを手に取り、ギンギンに勃起した自分のペニスに垂らした。

そして、灯りに照らされ光るそれを、
仰向けに寝ている誠の菊門に構わず挿入した。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


誠の悲痛な叫びが、部屋全体に響き渡る。

だが忍が動じる様子はない。

かつてはどんな相手にも、慈悲の心で接してきた彼であったが、今は情緒の欠けた、ただの調教マシンへと成り下がってしまっていた。

忍の巨根の根本が、誠の菊門に接触する。

慣れていたこともあり、
誠は挿入による痛みを一切感じていなかった。


(私の中に男の人のおちんちんが……イヤ……イヤ……絶対イヤ……)


込み上げてくる嫌悪感。
誠は顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

記憶にある限り、生で男根を受け入れるのは、初めての体験。心に受けた傷は、深いものであった。

だがそれでも身体は正直なものである。

忍をパートナーと認めている誠の身体は、
このような状況にあっても、彼を受け入れ始めていた。


ピク……♡ ピクピクピク……♡

誠のメスチンポが、
夫と認めた巨根の帰りを受けて硬さを増す。

ピクンッ!♡ ピクピクピクッ!♡

さらに上下に揺れ、微笑みを浮かべておかえりの挨拶を行った。


(なんでこんな状況なのに!?)


自らの意思に反して元気になる性器に誠は愕然としていた。

真里以外の人に……
しかも男性相手にここまで元気になってしまうだなんて……

誠を特に驚かせたのは、メスチンポの上反り具合である。

真里のペニバンで突かれた時も勃ってはいたが、
その勃起具合は、良くて90度くらいであった。

しかし、忍のぺニスに突かれて、
勃起したメスチンポの角度は160度。

真里のペニバンによる勃起力を、70度も超えてしまうという驚異的な勃起力であった。しかも上下に揺れるというオマケ付きである。


(ちがう……こんなの私のちんちんじゃない……
収まって……こんなに大きくならないで……)


真里へ操を立てる気持ちから、収まるように祈りだす。
だがその祈りがメスチンポに伝わることはなかった……。

誠と忍のペニスの関係は、相思相愛の夫婦関係。

いくら収まるよう伝えても、
妻が愛する夫を拒むはずがなかった。

そのメスチンポの気持ちが、逆流して誠の心に流れ込んでくる。

気持ちいい。大好き。愛している。

これは過去に交わってきたメスチンポの記憶であろうか?
忍を愛するメスチンポの気持ちが伝わり、誠の怯えていた心に安らぎが生まれてしまった。


(なんでこんなに気持ちが落ち着いてくるの?
お腹もジンジンするし……なんだか変だよ……)


「こんなに硬くして、ホモじゃないなんて説得力がないよ」


忍は依然として色欲にまみれた顔をしている。

誠を慈しむ心はなく、
性欲を発散させるためだけに、腰を振っている。


「ち、違ぅ……♡ あ……あぁんっ!♡」


忍の態度に反して、お腹に感じる温かさや心地よさは、
忍への恐怖を打ち消すのに十分であった。

乖離した心と身体の反応に戸惑う誠であったが、
メスチンポによって、徐々に心が侵食されていってしまう。


「あぁっ!♡ はぁぁぁっ!!♡ あああっ!♡」


抑えているが、それでも漏れ出てしまう喘ぎ声。
誠は男根に突かれる気持ちよさに気付いてしまった。


(んん……♡ 真里さんのちんちんと全然違う……
温かくて硬くて……これが本物の……ちんちんなの?)


無機質なペニバンにはない、
生のおちんぽの温かさと独特の硬さに誠は感動していた。

こんなちんぽを知ってしまったら、
真里のペニバンで勃たなくなってしまう。

誠の心に、不安と焦りが生じていた。


(だめ……せっかく真里さんで勃てるようになったのに……。
このままじゃ……また……勃たなくなっちゃぅぅぅ……)


そんな誠の気持ちなど、どこ吹く風。
誠のケツマンコが、忍の巨根に吸いつき甘え出した。


「ふぅぅ……気持ちいいよ、マコトちゃん。
こんなに締め付けてくれるなんて……キミも喜んでるじゃないか」

「ち……ちがいましゅ……ふぁぁんっ!♡♡」


誠の意思に反し、可憐な蕾がキュウキュウ♡と締め付けて、雄の精を吐き出させようとしている。
忍のぺニスは勢いを増し、前立腺を突き始めた。


(だめぇっ……! これ以上、突かないでっ……!
……おかしくなっちゃうぅぅぅっ!)


前立腺に与えられた新たな刺激により、
誠のメスチンポの先から、涎が垂れ始めていた。


「そろそろ認めろよ。女より男の方が好きだって」

「ぁ……♡ぁ……♡ぁ……♡」


すでに問いに答える余裕もなくなってきている。
忍は構わず、誠を犯し続けた。

そうして交わり数分後、
忍は誠を抱き寄せ唇を奪った。


「ンンッ!!? ンンンンッ!!♡♡♡」


誠は、キスをされて大きく目を見開くが、
あまりの気持ちよさに、
すぐに恍惚の表情を浮かべてしまう。

メスチンポに支配された誠は、
このオスのつがいになることを受け入れてしまっていた。


(もうこれ以上、私を……ホモにしないで……
わかっちゃう……このままじゃ……わかっちゃうから……)


「ほら、いけよっ! イッてホモを認めろっ!
女装して男を誘惑するメスホモビッチなんだろっ!?

こんな女みたいな身体してくるくせに、
ノンケだなんて、嘘つくじゃねえよ!

フゥーッ、そろそろイキそうだ……。
ラストスパートをかけるぞっ! いいなっ!?」


荒れ狂う鼻息。全身から漂う雄の香り。奥底からマグマのように噴き出る性欲を伴って、忍は腰を打ち付けた。


「あぁぁっ!!♡♡ あぁぁぁぁぁっ!!!♡♡♡
いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!!♡♡♡」


誠は嬌声を上げながら、忍の背中に手を回した。

自ら動くのだけは避けていた誠だったが、全身から沸き出る忍への想いに、ついに耐え切れなくなったようだ。


(あぁぁ♡♡ おちんぽ……おちんぽすごいぃぃぃぃ!!!
生のおちんぽ……はぁはぁ♡♡ きもちいぃ……!♡♡
すごすぎる、あぁぁっ!!♡♡)


おちんぽの味をしっかりわからせられてしまい、
誠はすっかりメス顔を晒してしまっていた。

自らも腰を動かし、おちんぽを美門で頬張る姿は、
まさに淫乱メスホモビッチそのもの。

ストロークを最大にして、オスチンポ全体をこすった。

そうして、ついに忍が限界を迎える……。

誠のアプローチにより、脈打つ一物の鼓動を感じた忍は、
ただでさえ大きな巨塔をさらに膨らませ、
強烈なる全身のリビドーを、二人の愛の巣へと解き放つのであった。


ドクドクドクドクドクドク!!!
ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
ブシャァァァァァァァァァァァァーーーー!!!!


まるで決壊した水門から押し寄せる波のように、
逞しい雄の遺伝子が、誠の子宮に注がれる。

贈られた子種を受けて、誠はついに歓声を上げた。


「あっあっあっあっあっあっあ!!!♡♡♡♡
好きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!♡♡♡♡♡♡
おちんぽ大好きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!♡♡♡♡」


ビクビクビクビクッ!!!ビクンッ!ビクンッッ!!!

ピュッ……トロトロン♡


激しいメスイキとゴミみたいな射精。

誠は、真里では決して得られなかった快感を、
忍とのホモセックスによって体験してしまった。

自分はノンケではなく〖ホモである〗と、
はっきりと〖わからせ〗られてしまったのだ。


(わかっちゃった……私……女の人じゃなくて、
男の人を求めてるってわかっちゃった……)


あんなに嫌がっていたチンポを、最後には大好きと叫んでしまった。

今後、真里のペニバンに突かれても、忍の生チンポを心の中で求めてしまうだろう。

真里を愛する気持ちが、
そんな自分の卑しさに罪悪感を投げかけた。


(ごめんなさい真里さん……
私はもう……あなたじゃ満足できない……)


誠は心の中で真里に謝罪した。


「わかっただろ? 自分がメスホモだって……?」

「そ、それは……」


もはや否定はできなかった。

男に抱きつき、おちんぽ大好きだなんて、
ノンケの男性なら言わない。

誠は無言でメスホモであることを認めざるをえなかった。


「じゃあ、続きを始めようか?
男同士の気持ちよさを、もっと刻み付けてやるよ」

「や、やだ……やだ……」


涙を流して、許しを乞う誠であったが、
忍にそんな言葉は通じなかった……。

Part.115 【 夜の街 】

それから忍は誠を犯し続けた。

誠を無理やり組伏せ、あらゆる体位で白濁液を流し込み、男同士の禁忌の喜びを教え込んだ。

初めは抵抗していた誠も、絶え間ないメスイキの波に理性を流され、自らの肉穴に雄の源を注ぎ込まれる快感に、のめり込んでしまった。

その間、誠の頭にあったのは、忍の男根のことばかり。

愛する真里の姿をついぞ思い出すことはなくなり、
肉竿が腸壁を擦り、前立腺を押し潰す快感にすっかり支配されてしまっていた。

腰の角度を変え、振り方を変え、より強力なアクメを探求していく。普段の誠からでは、想像も付かないほど乱れた雌の姿であった。

そうして時が流れ、辺りが暗くなる頃。
ようやく二人の行為は終わりを迎えた。


「ずいぶん激しく乱れ合ったようネ。マコトちゃんも気持ちよくなってくれたみたいだし、順調にいってるようで何よりヨ♡」


行為を始めて、すでに10時間以上が経過している。

その間、小早川は一旦アジトに戻り、
真里と萌に催眠尋問を行ったり、
四人の帰宅が遅れる理由を偽装したりしていた。


「真里と萌は、どうしているカシラ?」

「二人は、夕食を終え、ホテルの自室に戻っております」

「今、どんな状況?」

「性行為をしている最中(さなか)でございます」

「よーやく始めたのネ。待ちくたびれたワ」


フッと息を吐き、首をコリコリと回す。


「それじゃあ、そろそろ解放しようかしら。
マコトちゃんが変なことしないように、
しっかり見張っておくのヨ。良いわネ?」

「ははっ! 承知しました!!」


小早川は、身体を伸ばして気合を入れると、
誠に暗示を掛け始めた。


「あなたはアタシが手を叩くと目を覚ますワ……。
目を開けると、部屋にはあなたと忍ちゃんのみ。
あなたの隣では、忍ちゃんが眠っている。
今なら逃げ出せるはずヨ……早く服を着て、お逃げなさい」


覚醒させるだけの簡単な催眠。
追加の暗示は何もないようだ。

すでに準備は整っているといったところか?

小早川は、軽く手を叩くと誠を目覚めさせた。

パンパンッ!


「ん……」


誠は重い瞼をこじ開け、目を覚ました。

かなり疲れているのか、
腕立て伏せをするように起き上がる。

長時間のホモセックスで、
誠の体力は、すでに限界に達していた。

フラフラになりながらも、隣で眠る忍を見つめる。


(忍くんが眠っている……今なら逃げ出せるかも……)


誠はなるべく音を立てないよう、立ち上がると、
入り口に向かって2,3歩進み歩いた。

テレビの横に、自分の服が置いてあることに気付く。

乱雑に脱ぎ捨てられた衣類。
誠はそれを見て思った。

忍はどうやって自分をここに連れてきたのだろうと。

自分の体重は50キロはある。
車も持たない忍が、はたして一人で運べるものだろうか?

おんぶするにも、道行く人の注目を集めてしまうはずだ。

そこまで考えたが、
誠はひとまず逃げることを優先した。

服を取り、玄関で着替え始める。

そのまま外に出ても良かったが、
こんな裸、誰にも見られたくなかった。

急いで下着を身に着けると、
最低限の服だけを着て外に出た。


カチャリ……


音が出ないよう、静かにドアを閉める。

ここまでくれば安心だろう。
外に出た誠は、真里のいるホテルへと急いだ。


※※※


ちょうど夜の街が賑わいを見せる時間帯だ。
場末の居酒屋を梯子する飲み客の姿が多く見られ、
風俗への客引きも盛んであった。

誠はその人混みを、そそくさと通り抜けていく。
歩きながら、警察に通報するかどうかを考えていた。

通報すれば、忍は強姦魔として逮捕されるだろう。

忍が逮捕されれば、
萌が大きなショックを受けることとなる。

彼女の悲しむ姿を思い浮かべると、
なかなか通報に踏み切れないものがあった。

本来なら、忍が行方を晦(くら)ます前に通報すべきところだが、誠は先に真里に相談することにした。

しかし電話をするため、ポーチを開いてスマホを探すも、
いくら探しても見つからなかった。


(あ……さっきのホテルに忘れてきちゃったんだ……)


憔悴(しょうすい)した顔で、来た道を振り返る。
もちろんここまで来て、戻るわけにはいかなかった。

誠は仕方なくスマホを諦めた。


そうしてしばらく歩いていると、
道路脇に停っている一台のタクシーを見つけた。

スマホはないが、財布なら持っている。
急いでタクシーに駆け寄り、運転手に話しかけた。


「すみません、センチュリーハイアットに行きたいのですが、よろしいですか?」

「乗って」


なんだか無愛想な運転手だった。
運転手は、めんどくさそうに手を後ろに振ると、
後部座席のドアを開けた。

その態度に誠は、少し嫌な気持ちがしたが、
とりあえず乗せてもらうことにした。

バタンッとタクシーのドアが閉まる。
カチカチとウインカーが鳴り、車は道路へと出た。

そこでようやく誠はホッと一息ついた。

そうして車は飲み屋街を抜けて、
建設中のビルが立ち並ぶ大通りへと出る。

それまで無言で車を走らせていた運転手だったが、
バックミラー越しに、誠をチラチラ見ると口を開いた。


「お姉さん……またずいぶんと遊んできたようですね?」


少しバカにした口調で言う。
彼は、誠の容姿や身体を見定め、舌なめずりをしているようだった。

そんな運転手の不遜な態度に、誠は意味が分からず答える。


「はい? どういう意味ですか?」

「おとなしそうな顔して、
人は見かけによらないもんだね。キミいくらなの?」

「はぁ……?」


意味不明な言動を繰り返す運転手。
とても客に対する態度とは思えない。

誠が大人しそうなことから調子に乗っているのだろうか?
運転手は無礼を続けた。


「かまととぶらなくて良いよ。身体売ってきたんでしょ? キミくらい美人なら買ってあげてもいいよ」

「さっきから何言ってるんですか? 私、身体を売ったりなんかしてません」

「はぁ~? そんな淫臭漂わせて何言ってるんだよ。そうやって値段吊り上げようとしてるの? バレバレだよ」

「くっ……」


今ので分かった。
運転手は誠の身体に付いた精液の臭いで、誠を売春婦だと勘違いしたのだ。

誠はセックスした後、お風呂に入っていなかった。髪や身体には忍の精液が付着しており、臭いがするのは仕方のないことであった。


「……私、降ります」

「ちっ……」


頭に来た誠は、車を降りることにした。
運転手は、舌打ちをして不貞腐れた態度を取っている。

そうして誠は、しっかりと料金を取られて車を降りた。


「身体くらい洗えよ、クソ女っ!」


運転手は車を発進する際、捨て台詞を残していった。


(なんだ、あの人!!)


普段、人に腹を立てることがあまりない誠であったが、この時ばかりは、さすがに腹を立ててしまった。

忍に犯され弱っていた誠には、
このような人の悪意がひどく胸に突き刺さった。

目頭が熱くなり、涙が出そうになる。
誠はポケットからハンカチを取り出すと目を拭った。

罵られたことで、これまで我慢してきた思いが溢れてしまった。自分が情けなくて仕方がなかった。

思い出すと恐ろしい出来事であったが、彼は性交中、数えきれないほどのエクスタシーを経験してしまっていた。

真里とのセックスでは得られない、未知の快感。
残念ながら、それを教えてくれたのは忍だった。

あまりの気持ちよさで、何度も真里のことが頭から抜けてしまっていた。このまま忍と永遠に乱れ合いたい。そう感じてしまうことすらあった。

誠はそうした自分の卑しさに罪悪感を覚えていた。


(真里さんより、感じてしまうなんて……)


真里のためにもノンケでありたい。そう思うも、一度知ってしまった男根の気持ち良さを忘れられる気がしなかった。

舌を出し、キスをせがむ自分。
忍に抱き付き、満たされようとする自分。
彼の巨根に突かれ、乱れ叫ぶ自分。

思い出される痴態の数々に、誠は心を痛めた。

自分は身も心も、ホモになってしまった。
レイプされて感じてしまうメスホモだ。
自身をそう罵り、彼は自己嫌悪に陥った。

だがそれでも誠は、真里の元へ急いだ。
ひどい状態だが、真里ならきっと慰めてくれる。

今回のことも、彼女と共に乗り越えていこう。

そう思っていた。


それから10分後、誠はホテルに到着する。

フラフラになりながらも、
エレベーターへと乗り込み、階上を目指す。

階が上がるにつれ、
誠の心には、少しずつ明るさが戻ろうとしていた。


(やっと着いた……)


部屋に到着した誠は、鍵を取り出しドアを開けた。
玄関は暗かったが、奥の部屋は薄明かりとなっていた。

コート掛けの傍にある時計に目を向ける。

時刻は夜の10時。
スマホがなかったため確認できなかったが、ずいぶんと遅い時間帯だ。

連絡もできず、きっと心配させてしまったことだろう。
誠は、まずそのことを真里に謝ろうと思った。

廊下を抜けて、寝室のベッドを見ると真里の姿があった。


「真里さん、ただいま……」


そう言い終わると同時に固まる誠。

彼は真里の隣に、萌が寝ていることに気付いた。

萌は以前にも泊まりに来ているため、
ここにいること自体、なんら不思議はない。

問題は、どちらも裸だということだ。

二人は掛け布団から、胸より上を出して眠っていた。
肩のラインから何も着ていないことが分かった。

なぜ裸で寝ているのだろう? 嫌な予感がした。

誠の声を聞き、真里が目を覚ます。


「えっ……まことくん? どうしてここに……?」


彼女は驚いた様子で誠を見た。

本来であれば戻ってくるはずのない人物。
そういった目で見ているのだ。

隣で寝ていた萌も目を覚ます。
彼女は上半身を起こすと誠に言った。


「…………なんでアンタここにいるの?」


あまりにも低くて冷たい声であった。

Part.116 【 冤罪 】

「なんでって……ここは私の部屋です」


自分の部屋に戻るのに理由などいらない。
当然の答えだ。

逆に萌が、なぜこの部屋にいるのか?
しかも裸で……。

聞きたいのは誠の方だった。


「ここはもうアンタの部屋じゃない。出て行って」


萌から放たれる攻撃的な言葉に、誠は緊張を高める。

萌とは遊園地や水族館に行った仲ではあるが、彼女がどういった人物なのか、完全には把握していなかった。

もしかしたら思い込みの激しい女性なのかもしれない。

このまま会話を続けても、
彼女の攻撃性を高めてしまうだけだ。

そう思った誠は、
萌を無視して真里に尋ねることにした。


「真里さん、どういうことなの? 教えて」

「これは……」

「真里は話さなくて良いよ。私が決着つけるから」


真里を遮り、萌が起き上がる。
彼女は布団から出ると、棚からバスローブを2枚取り出し、片方を真里に渡し、自らもそれに袖を通した。

そして真里と誠の間に入るように座ると、話し始めた。


「私が言いたいのは、あんなチャットを真里に送って、
今さら何しに戻ってきたんですか?ってことです」


先ほどと違って、冷静に話している。
口調も敬語に戻ったようだ。


「チャットってなんのことか分からないんだけど……」


真里に、そこまでおかしなチャットを送った記憶はない。
困惑した顔で、誠は言う。

萌は、誠がとぼけたふりをしていると思い、
顔を顰(しか)めた。


「私は真里と一緒にいたので、知っています。

あんなチャットを送って、
真里がどれほど傷ついたか、あなたに分かりますか?

今だって忍とセックスしてきたんでしょ?
臭いで分かりますよ? 桐越先輩」

「!?」


なぜ萌がそのことを知っているのか?

桐越誠と同一人物であることは、
真里が話したと思われるので、驚きはしなかったが、
忍にレイプされたのは、つい先ほどの話だ。

誠は萌がそのことを言っているのだと思いうろたえた。

もちろん萌は、レイプされたことを言っているのではなく、同意の上でセックスしてきたと思い込んでいるだけなのだが。


「なんで知ってるの?」

「真里から聞きました。
あなたが桐越先輩で、真里と付き合っていたこともね」


誠の質問を、桐越先輩と呼んだことについて言及していると思い、萌はそう答えた。

彼女は立ち上がると、
テーブルの椅子を引いて誠に座るように言った。


「桐越先輩、精子の臭いで鼻が詰まるので、
こっちに座ってください。不快です」


レイプされたと知っていて、こんな態度を取るのか。
これには、さすがの誠も腹を立てた。

しかし臭いと言われてまで、近くにいるつもりはない。
誠は萌に言われるまま、椅子に座った。


「先輩、もう一度聞きますね。
なんでここに戻ってきたんですか?
あ、荷物だったら忍の部屋に運びましたよ。
私も鍵持ってたので、今日のうちに運んでおきました」

「なんでそんなことするの!」


レイプした男の部屋に荷物を運ぶだなんて、
どういう神経をしているのか。

誠には、萌の行動が信じられなかった。


「当り前です。誰が元カレの荷物を残しておきたがりますか? それにどっちみち、運ぶ予定でしたよね? 手間が省けて良かったじゃないですか」

「元カレ? それに運ぶ予定ってどういうこと?」


質問に質問で返す誠に、萌はイライラし始める。

これ以上話しても埒(らち)が明かないと思い、
彼女は改めて退室を促した。


「真里にとって、あなたは元カレです。
もうここに用はないでしょ? 忍の部屋に帰ってください」

「帰りません……さっきも言ったように、ここは私と真里さんの部屋です。あなたこそ、なんで私が忍くんに何をされたか知ってるんですか? 説明してください」

「だから、さっきチャットを見たって言ってるじゃないですか。まさか自分で何打ったか、覚えてないとでも言うんですか?」

「じゃあ、そのチャットを見せてください」


萌の言っていることは意味不明だ。
なんだか話が、微妙に食い違っているように思える。

誠はひとまず問題のチャットを見せてもらうことにした。

萌は真里にスマホを出すように言うと、それを受け取り誠に渡した。誠はすでに開かれていたチャット画面を確認した。


「これは……!?」


そこには、何者かが自分に成り済まし、
真里に別れを告げたメッセージが残されていた。

誰がこんなことを……そう思ったが、
今はそれどころじゃない。すぐに誠は弁明した。


「私はこんなメッセージ送ってません」

「本当……? 誠くん……」

「真里、騙されないで。こいつ、嘘ついてる……」


誠の言葉に、
真里は一瞬心を動かされたが、すぐに萌が止めに入った。

誠は今日も忍とセックスしている。
それなのに、こんなしたり顔で帰ってきたのだ。
こんなわざわざ淫臭を漂わせて帰ってきたのは、真里をバカにするためかもしれない。
チャットの印象が強く残っている萌は、誠の性格をそのように捉えていた。


「じゃあ誰が送ったっていうの?
二人の関係を知る第三者がいるとでも言うの!?」

「わからない……でも私じゃないっ!」

「いい加減な嘘を吐(つ)くな。忍と浮気して、真里にひどい言葉を投げかけた癖に、今さらなんだっ!」

「それは違う……私は忍くんと浮気なんかしてない……」


萌は顔を紅潮させて怒っている。

頭に血が上り、
口調も荒々しいものへと戻ってしまっていた。

彼女は誠に詰め寄ると、両手で襟を掴んだ。


「本当にいい加減にしなよ……。
あんたが忍と浮気したのは良いよ……あんな男くれてやる。
でもこれ以上、真里を傷つけるのだけは許せない……」

「違う……私は浮気したんじゃない。
私は忍くんにレイプされたの。無理やり組み伏せられて……何度も犯されて……ようやく逃げてきたのっ!
だからそのメールだって、もしかしたら忍くんが……」


バチンッ!!!!!

大きな音が響く。
萌が全身全霊の力を込めて、誠をビンタしたのだ。


「萌!!」


誠が殴られて、真里が止めに入ろうとする。
萌は、真里を静止して、努めて冷静に伝えた。


「大丈夫……この一回だけだから……ベッドに戻って」

「ほんと……?」

「本当……さすがに我慢できなかった……ごめん」


真里は不安そうな顔を見せながらもベッドに戻った。

誠は叩かれたショックで震えている。
勇気を振り絞って強姦された事実を伝えたのに、叩かれてしまった。彼はお腹から込み上げてくる哀しみに耐えていた。

萌はそんな誠に向き合うと話し始めた。


「たしかに、忍は浮気性なところがあったかもしれない……。でもあの人は、人をレイプしたり、
他人の振りをして誰かを陥れたりする人なんかじゃないっ! 忍のことを何も知らないくせに……忍をバカにするなっ!!」


最後に裏切られたとはいえ、
忍は萌にとって、この世でもっとも愛する男性であった。

悪いところも良いところもいっぱい知っている。
同じ趣味を好み、共に笑い、過ごしてきた。

だからこそ、萌は切れた。

誠の言う忍の人物像は、萌が接してきた忍とは、
大きくかけ離れたものだったからだ。

これは誠と萌の付き合いが、
数日という短い期間だったために起きた悲劇であった。

萌の勢いに、誠はそれ以上何も言えなかった。
実際、誠だって忍がレイプする人物だと思わなかったのだ。

どう言っても、信じてもらえそうにない。
誠が悩んでいると、萌が口を開く。


「真里は私と付き合うことになったの。
だからここは私と真里の部屋。あんたの部屋じゃないの」

「え……?」


誠が驚いて真里を見ると、彼女はすぐに目をそらした。


「真里さん、嘘だよね……?」

「…………」


真里は何も答えない。
沈痛な面持ちで、ただ目を閉じるだけであった。


「返事がないってことは、そういうこと。
わかったら、早く出て行きな」


誠の登場で、真里がショックを受けている。

誠が出て行った後は、
昨夜以上に愛してあげる必要があると、萌は感じていた。


「嫌だ……出ていかない……」

「何言ってるの? 真里は私と付き合うことを決めたの。
ここにあんたの居場所は、もうないの。
忍と何があったか知らないけど、あなたは忍の元に戻りなさい」

「絶対に嫌だ……」

「くっ……この……」


強情に居座る誠に、萌の頭は沸騰した。

しかし暴力を振るうわけにはいかない。
さっき真里と約束したばかりだ。


「真里さん、信じて。
私はあんなメッセージ、送ってない」

「…………っ」


誠の言葉に真里の心は揺れる。
根底には、まだ信じたいという気持ちがあるようだ。

しかし誠の言い分には、どうしても無理があった。
忍が誠をレイプしたなど、誰が信じられるだろうか?

誰かが誠のふりをしてメッセージを送ったのだって、あり得ない話だった。

誠が女装した桐越誠であることを知っていて、
なおかつ真里と付き合っていることを知っている人物なんて、この島にはいない。

誠の言い分には、信憑性が無さすぎるのだ。

そんな話を安易に信じようものなら、
一生懸命、自分を守もうとしてくれている萌に失礼だ。

説得するなら、せめて萌を納得させられるだけの話をして欲しい。

真里はそう思っていた。


※※※


その後も、誠と萌の膠着状態は続いた。

萌はひたすら誠に退室を促した。
自分と真里がどれだけ愛し合っているか、
昨夜の性行為についても赤裸々に語ってあげた。

誠にとって、それは非常に辛い内容であったが、
それでも彼は諦めなかった。

ここで退室すれば、確実に真里との関係が終わってしまう。
それだけはどうしても避けたかった。

痺れを切らした萌は、真里の方から別れを告げて欲しいと伝えた。しかし、真里はそれにすら答えることができなくなってしまっていた。


(だめだこれ以上は、真里の精神がもたない……。
なんとかこいつを追い出さないと……)


そこで萌は思いついた。
真里を癒し、同時に誠を退散させる方法を。


「わかった。じゃあ今から私の言うことを聞くなら、
ここにいさせてあげる」

「……?」


萌は、誠に新たな提案を始めた。


「まず服を脱いで」

「え……?」

「勘違いしないで、別にあなたの裸を見たいってわけじゃないから。あなたが精子臭いから脱いでって言ってるだけ」

「わかった、それなら良いよ」


たしかに臭いがキツイのであれば、
いて欲しくないのは分かる。誠はブラウスを脱ぎ始めた。


「脱いだものは、この籠に入れて」


萌は脱衣場から籠を一つ持ってくると、その中に衣服を入れるよう命じた。ブラウスを脱いだことで、誠のブラジャーが目に入る。


「へぇ~下着も女物なんだ。
桐越先輩って筋金入りの変態だったんですね」

「……っ!」


頭にきていたのか、萌は誠を罵った。

誠は気にしないようにして脱ぎ続ける。
ブラを脱いで、小ぶりなおっぱいが姿を現した。
先ほどまで忍に愛されていたおっぱいだ。


「男のくせに、そんなに膨らんで……あなた女より男が好きなんでしょ? なんで真里にこだわるの?」

「私は……男の人より、真里さんの方が好きです」

「どうだか?」


女の方が好きとは言えない。
誠は今の台詞を言う際にためらいがあった。

思い出すのは、忍とのホモセックス。肉体的にどちらが好きかと聞かれたら、男と答えるしかなかっただろう。

続いてボトムを脱ぎ籠に入れる。
誠のショーツが目に入り、萌はあることに気が付いた。


「あんた……」

「……?」

「真里、ちょっと見て」

「えっ?」


真里に声をかけ注目させる。萌は誠に背中を向けるように言うと、彼のショーツをおろしてしまった。


「…………うっ!!」


ひどく仰天した表情を真里は見せる。
彼女は口に手を寄せ、目元を歪ませた。

誠の脱いだショーツとお尻の穴の間には、白い粘液が糸を作っていたのだ。

それは紛れもなく精子。
一日中、忍に中出しされた精液であった。


「ずいぶんと激しくエッチしてきたんだね……」


萌はこめかみをピクピクさせながら言う。忍とここまでするなら、いい加減真里を解放しろよといった様子だ。


「だからこれは……」

「あーー聞きたくない。
あのさ、今思い出したけど、あなた昨日も忍とデートしてたでしょ? あれはどう説明する気なの?」

「デート? 昨日は怪我の治療のためずっと部屋に……」

「いつの話してるの……あなたの怪我はずいぶん前に治ったでしょ。昨日、遊園地にいた時の話だよ」

「私は遊園地に行ってません」


催眠により、誠は忍とデートさせられていたが、
その時の記憶は消されていた。

全ては三人の関係を今の状態にするための下準備だったというわけだ。


「もういい……その汚い下着を籠に入れて、お風呂に入ってきて」

「お風呂に……? でも……」

「大丈夫、戻ってきたら、いなくなっていたなんてことは、絶対ないから。とにかく精子臭くて嫌なの、身体をすみずみまで洗ってきて」

「わかった」


萌は誠が脱衣場に消えたのを確認すると、洗濯籠を廊下に出した。そしてフロントに電話をして、それらを洗うよう伝えた。


「真里、さっきの聞いた?」

「うん……」


二人は先ほどの質問で、
誠が嘘をついていると確信していた。

誠は遊園地に行っていないと言ったが、
二人はハッキリと見たのだ。誠と忍がキスするところを。


「真里の気持ちは分かるけど……。
甘い態度を取ったら、いつまでもまとわりつかれることになるよ? ここでしっかりと縁を切るのが、お互いのためだよ」

「でも何か事情があるのかも……」

「あそこまであからさまな嘘を並べられて、まだそんなこと言うの? しっかりして、そんなこと考えちゃダメ……」

「誠くんは嘘を言う人じゃなかったのに……」

「私もそう思っていたよ……忍のことを信じてた。

真里と同じくらいね。でも男と女は違う。
男は自分の欲のためなら、いくらでも女を捨てれるの。

それはあいつも同じ。きっと忍と上手くいかなくなって戻ってこようとしてるんだよ。騙されちゃダメ」


それを聞いて、真里は泣き始めてしまう。
萌はそんな彼女を優しく抱きしめると、耳元で囁いた。


「真里……もう少しだけ頑張ろう。私があなたの迷いを断ち切ってみせる。私たちがどれだけ愛し合っているかを見せて、真里の気持ちを分かってもらおう」


真里はまだ誠に別れを言い出す勇気が持てないでいる。

しかし、レズセックスをすれば話は別だ。
彼女の官能を呼び覚まし、自らの気持ちに正直にさせるのだ。

二人は、誠がお風呂から上がるのを静かに待った。

Part.117 【 レズNTR◇ 】

浴室で誠は身体を洗っている。
手のひらに泡を作り、肌に滑らせていた。


「ん……♡」


胸やお尻に触れる度、ぐぐもった甘い声をあげる。
忍に受けた快感を、身体が今も求めていた。


(こんなこと考えちゃダメ……私は真里さんの彼氏なんだから)


真里の彼氏であろうとする心が、
同性を求める心を否定する。

ラブホテルに運ばれ、忍にレイプされた。
そのことを伝え、真里に慰めてもらうはずだった。

しかし、今はその真里と対立してしまっている。

彼女のスマホには、
自分から送られたメッセージが残されており、
レイプされたと言っても、信じてもらえない。

忍はどうやって自分をあの場所に運んだのだろうか?
なぜ自分は、浮気をしたことになっているのか?
自分に成り済ましたあのメッセージは一体……?

考えを巡(めぐ)らすが、答えなど出るはずもなかった。

結果論だが、先に忍を警察に突き出していれば、
レイプされた事実を証明できたかもしれない。

様々な疑問も、
警察が代わりに突き止めてくれたかもしれない。

誠は選択肢を間違えたことを後悔していた。

そうして何の心の整理もできないまま、身体を洗い終える。


「はぁ…………」


浴室から出て、脱衣場の鏡に目を向けると、
そこには髪の長い女性が映っていた。

男を経験して一層女性らしくなった自分の姿。

まるで男と愛し合うのが、本来の姿だと言わんばかりに、
普段の自分より、少し輝いて見えていた。


(違う……私は男の人より、真里さんの方が好きなんだ!)


頭を振り、余計な雑念を振り払う。
これから萌と対峙するのに、こんな気持ちではいけない。

誠は体を拭き、バスタオルを巻き付けると、寝室へと戻った。


※※※


真里と萌はバスローブを着て、ベッドに座っていた。
誠が戻ってきたのを見て、萌が言う。


「ここに座って」


ベッドの横、2mくらい先にある椅子を彼女は指差した。


「タオルもよこして」

「えっ……何も付けるものがなくなっちゃうよ……」

「言うこと聞くなら、居ても良いって言いましたよね?
それとも出ていってくれますか?」

「……」


誠は無言でタオルを差し出した。
萌に裸を晒すのは嫌だったが、なにより優先すべきは、
ここに留まり真里を説得することだ。

こんなことで揉めるわけにはいかない。
誠は言われた通り、椅子に座った。


「では動かないでくださいね」


そう言うと、萌は用意していた紐を取った。誠が身体を洗っている間に、フロントに用意してもらった紐だ。


「何をするつもりですか……?」

「動かないで」


身構える誠に、萌は再度制止を命じる。


「こんな身体してるけど、一応男だから拘束させてもらうよ。急に襲ってこないとも限らないしね」

「そんなことしません」

「真里のこと好きなんでしょ? だったら自由にさせとくわけにはいかないね。あなたがホモだと認めるなら、縛らなくても良いけど?」

「わかりました……」


納得のいかない顔をしつつも、誠は応じることにした。

彼が大人しくなったのを見て、萌が身体を縛り始める。

両手を背もたれの後ろに回して縛り付け、
立ち上がれないように、椅子の前脚に足を結びつけた。
最後にスリッパを使って、太ももの間から性器を露出させれば完成だ。


「これで良しっと」


彼女は作業を終えると、ベッドに戻り、振り返って言った。


「それじゃあ、これからすることをよく見ててね?
いくよ、真里」


萌のかけ声に真里は小さく頷く。萌は真里のバスローブを脱がせると、自らもそれを脱ぎ捨てた。

露になる美女二人の裸体。

ただならぬ雰囲気に、誠は心臓をハラハラさせる。

萌は誠がこちらを見ているか一瞥(いちべつ)すると、
真里の顎に手を添えてキスをした。


(そんな……!)


唇を奪われる真里を見て、誠はショックを受ける。

真里が他の女性とキスをするなど、
彼氏である誠からすれば、到底許せるものではなかった。

しかし、真里は嫌がる素振りも見せず、接吻を受けいれている。身体の力を抜いて、実に気持ち良さそうに、女同士でキスをしているのだ。

以前の真里を知る者からすれば、信じられない光景である。

彼女にレズっ気などなかったはずだ。

たしかに百合物も好んではいたが、彼女が読む同人誌の大半は、男同士の過激なエロを描いたもの。

それに彼女自身もハッキリとレズを否定していた。
なのに真里のこの反応は、一体どういうことだろう?

誠には、今、目の前で起こっている現実が信じられなかった。

そんな誠の困惑など気にもせず、
レズビアンに成り立ての二人は性愛行動を続けた。

真里は萌の腰に手を添えると、
舌同士を絡ませ合わせるディープキスに移行した。

萌の腕が真里の背中を包み込み、
真里もそれに応じて、萌の身体を抱きしめた。

そうしてキスを交わした後、
萌は真里の頭を撫でて、こう言った。


「女同士のキス、すごく気持ち良いね、真里♡」


あえて女同士と入れることで、真里の背徳感を刺激する。
ノンケからレズに転向したばかりの真里は、
元彼の前でレズ行為を受け入れることにひどく興奮していた。


(はぁ……♡ はぁ……♡
私……誠くんの前で、萌とセックスしてる……♡)


禁忌の行為と感じれば感じるほど、官能が高まっていく。
元彼に、レズに染まった自分を見せる快感。

真里は疚しさを感じつつも、
そのイケない泥沼に嵌まろうとしていた。

真里がレズ扱いされて喜ぶ変態と知っていた萌は、
彼女の官能を刺激するため、言葉責めを続けた。


「横になって。彼に真里がレズになったことを、しっかり分からせてあげよう?」

「う、うん……」


ゾクゾクとした興奮が真里の背筋に走る。

キス以上の行為を見せることで、
さらなる禁忌の深みに沈みこむ気がした。

誠にレズ認定されてしまったら、
自分は一体どれほど興奮してしまうだろうか?

キュウ♡っと子宮が絞めつけられ、熱い息を吐いた。

萌は真里を寝かせると、横に並んで乳房を揉み始めた。
壊れ物を扱うように優しく丁寧に愛撫し、時にそれを唇で愛した。


「ん……ぅぅ……くぅんっ♡」


小動物が甘えるような鳴き声を出す。
萌の舌先が乳首に触れるたびに、真里は甘い声を上げた。

それは誠が初めて耳にする、真里の嬌声であった。


(真里さん……本当に気持ちいいんだ……)


誠は真里にこんな声を上げさせたことはない。

二人のセックスは、真里が攻めるのがほとんどで、
誠は彼女の胸をまともに揉んだことすらなかった。

そんな真里の胸を、萌は好きなように扱っている。

しょんぼりと肩を落とす誠を無視して、
二人のレズ行為は続く。

真里は、萌が舐めやすいよう胸を差し出すと、
お腹の奥から息を吐き、レズの快感を堪能した。


「はぁ、はぁ……気持ち……ぃぃ……♡
もっとして……萌♡」


色白の肌がほんのりと紅く染まり、気持ちよさで苦悩の表情を浮かべている。
これまでの真里にはない、どこか淫靡で大人びた雰囲気に、
誠は彼女がどこか遠くの世界に飛び立ってしまったかのように思えた。


「もっと良くしてあげる♡」


萌は胸を攻めながらも、
お腹、太ももとフェザータッチを繰り返していった。

真里の身体がより高い官能の熱を帯びる。

萌の指が近くを通るたびに、ピクピクと反応する淫核。
女性にとって大事な部分が潤い始め、真里は堪らず愛撫を求めた。


「お願い……萌、触って……♡」


官能が高まるにつれ、徐々に気にならなくなってくる誠の存在。あんなに愛していた人なのに……今はその気にならなくなっていく感覚が逆に気持ち良かった。

徐々に徐々に、後戻りできなくなっていく。

誠に見られながら変わっていく自分に、
真里は一種の陶酔感を得ていた。

そこで萌の指がクリトリスに触れる。


「ンンッ……!♡」

「こんなに濡らしちゃって……真里は本当に可愛いな♡」

ピクンッ♡ ピクンッ♡


恋人に可愛いと言われ、レズ色に染まった突起は、より敏感に反応した。硬く硬く尖り、萌の指に撫でられ実に嬉しそうだ。

萌はそんなクリットを、つねろうとするのだが、ぬるぬるになったそこは、ツルッと滑り抜けてしまう。

そうして真里のクリトリスと萌の指の、
愛の鍔迫り合いは続いた。


「ひぁぅ……もえぇ……クリちゃん、しょんなに、いじめにゃいでぇ……♡」

「だってぇ♡ 真里のクリちゃん、かわいいんだもの……♡」


真里は蕩けた顔で、萌のクリ愛撫を受け入れている。
そんなにいじめられるのが嫌なら、股を閉じればいいのに。

真里は足をパカッと広げて、
もっといじめて♡と言わんばかりの反応である。


(あんなに乱れている真里さん、初めて見た……)


呂律が回らないほど、快楽に溺れる彼女に、誠は寂しさを覚えた。たとえ挿れられなくても、ああして触ってあげれば、彼女はあんなにも喜んでくれたのだ。

誠が後悔している間にも、
真里の気持ちは、どんどん離れていく。

彼女の淫唇は萌のクリ責めで、
うねり、伸縮を繰り返していた。


(あぁ……欲しい……♡ 欲しいの……♡
萌の指……おまんこに挿れて欲しい……♡)


真里は渇望した。
萌の指が中に侵入し、掻き回される感覚を。

真里は自ら腰を振ると、萌の指に突起を擦り付けた。


「自分からスリスリしちゃって、そんなに私の指が欲しいの?♡」

「ハァハァ……うん……ほしぃ……♡
わたしのおまんこ……もえのゆびがほしくて……しかたないの♡♡」


はしたなくおねだりをする真里を見て、
誠はつい目を背けてしまう。

彼女が求めている相手は、自分ではなく萌。
そうハッキリと認識してしまったのだ。

そんな誠の様子を見て、萌は一計を講じることにした。


「おねがい……♡ わたしのレズおまんこ……はぁ♡
もえの指で、くちゅくちゅして……♡」

「ふふ、いいよ♡ じゃあ私の股の間に座って♡ そしたら好きなだけ挿れてあげるから♡」


真里は快感に身悶えしながら、くねくねと起き上がると、
萌と向き合って腰を下ろそうとした。


「あー違う違う。そうじゃなくて背中を向けて座って」

「ふぇ? こ……こお?」


真里は疑問に思いながら、
背中を向けて、萌の股間にお尻を下ろした。

背中から萌が抱きしめる形となる。


「もえ……こ、これって……」


その姿勢になり、初めて真里は萌の狙いに気が付いた。

萌は誠のいる方に真里の身体を向けると、彼女の割れ目に指を添えた。誠からは、真里の陰部がはっきりと見える。


「真里のあられのない姿をじっくりと目に焼き付けるんだよ?」


今から真里を逝かせる。
こうして目に見える形で挿れることで、
どっちが真里の恋人か、しっかりとわからせてやるのだ。

意地を張って別れを拒んでいる誠だが、目の前で何度も真里を逝かせてやれば、心が折れて、泣きながら別れを認めるだろう。

そのためにも、徹底的にいじめ抜いてやる必要があった。

だが、誠は目を閉じて下を向いていた。
二人の性行為を見るのが辛いようだ。


「おや? マコトちゃん、ようやく出てってくれるつもりになったのかな? 私の言うこと聞けないってことは、そういうことだよね?」

「こんなの……見れるわけないよ……」

「じゃあ拘束解いてあげるから、すぐに出てって」

「それはヤダ……見るから……それだけはやめてぇ……」


どんなに辛くても、この部屋から出てはいけない。
誠は目に涙を溜めながらも、二人のことを見つめた。

そんな彼を見て、真里は少し冷静になる。

苦しい言い逃れをしている彼だが、ここまでする必要があったのだろうかと疑問に思い始めていた。

真里の表情の変化に気付き、萌が一言入れる。


「辛いだろうけど我慢して。彼が男の人が好きなら、そっちに行かせてあげるのが一番なんだよ。

真里だって女の私にされた方が気持ちいいでしょ?

彼だって一緒。男の人と結ばれた方が幸せなんだよ。
今はまだ、そのことが分からないだけなの。
いい? 彼のためにも心を鬼にして」

「う……うん」


誠が本当に好きなのは男性。彼が付き合ってくれたのは、自分がしつこくしてしまったから。チャットの内容を誠の本心だと思い込んでいる真里は、萌の言葉に頷いた。


「じゃあいくよ? 思いっきり叫んじゃって良いからね♡」


萌は真里の気持ちが固まると、彼女の膣に指を挿入した。


「ふあぁぁぁっ!!♡♡」


あまりの気持ち良さに、真里は背中を反らせる。
それにより真里の中に芽生えた僅かな迷いは、一気に消し飛んでしまった。

萌は真里を支えると、
指をジュポジュポと出し入れし始めた。


クッチュクッチュ♡ ピッチャピッチャ♡
ジュッポジュッポ♡ ジュッポジュッポ♡
クッチュクッチュ♡ ピッチャピッチャ♡

「ふぁっ♡ あっ♡ あっ♡ ふぁっ♡」


レズの分泌液によって濡れた彼女の花園からは、
厭らしい抽送音(ちゅうそうおん)が鳴っていた。

誠の視線を受けることによって、
さらに興奮を高める真里の女性器。

このレズ色に染まった姿を見て欲しい。
もっと自分をレズビアンだと認識して欲しい。

そんな変態チックな被虐意識が、
クリトリスをぴーんと硬くさせていた。


「ぁ……ぁ……そんな……」


それを見て、誠は大きな衝撃を受ける。
彼は真里の膣に差し込まれた萌の指に注目していた。


「マコトちゃん、今、どんな気持ち?」


勝ち誇った顔で、萌は問いかける。
これこそが、萌が誠に見せたかったもの。

真里が自分に処女を捧げたという事実であった。


「マコトちゃんは、真里のおまんこに挿れたことあるのかな? ふふふ……ふふふふ……」

「う……ぁ……ぁ……真里さん……どうして……」


誠は自らの目を疑った。あれほど純真だった彼女が、
いとも簡単に処女を捧げてしまっている。

安定して勃起できるようになったら、挿入する約束だった。
彼女もそれを心待ちにしていたはず。

それなのになぜ……。
誠には真里の行動が信じられなかった。

そうして呆然としている誠に、
萌は不敵な笑みを浮かべながら説明を始めた。


「昨日ね、真里の処女、もらっちゃったんだ♡
もちろん無理やりにじゃないよ?
真里が自分から私にくれたの。女の子にとって一番大事なものをね。それだけ真里は私のことを愛してくれてるってことなの。わかった?」

「そんなの……ウソ……」

「くふふっ、ウソじゃないって。見ればわかるでしょ?
真里ってば、私に処女あげれて良かった♡って言ってたよ。
ねー真里……マコトちゃんに教えてあげて……♡
真里が私に処女を捧げちゃったこと♡」

「んっ♡ んんっ♡♡ あぁぁぁっ!♡
そ……そうなのぉっ♡ わたし……はぁはぁ♡
もえにぃっ!♡ あ……は……♡
はじめてを……ンンンンッ♡♡
あげ……ちゃ……たのぉ♡ あっ!あーーーーん!♡」


萌の指で喘ぎながら答える。
誠が見ていることなどお構いなく……。
いや、むしろ見ているからこそ、興奮しているといったところか。

処女を萌に捧げた罪悪感も伴い、彼女はレズマゾとしては、最高の被虐的快感の境地に達していた。

そんな真里を萌は蕩けた顔で見つめている。


「真里、そろそろ一度イっちゃおうか?
マコトちゃんにも真里のイキ顔見せてあげよ♡」

「はぁぁっ♡ ひょ……ひょんなぁっ!♡♡
ンンッ!♡ ふぁ……ッ♡」


まだ一度も見せたことのない己のイキ顔。
女にイカされる自分の姿を見せることに、
真里は強烈な背徳感を覚えた。

萌は姿勢を変え、真里に向き合うように座り直すと、
挿入する手に、自らの股間を添えて腰を振り始めた。

萌が男性器で真里を突いているかのような体勢だ。

ヌチャンッ、ネチャンッ!♡
ぬぷ、くちゅ、ずりゅ! ずりゅ! ぐにゅん!♡


「もえっ!♡ すごいこれ……っ!♡ あ、あぁんっ♡ すきっ!♡ すきっ!♡ 大好きぃいい!♡♡」


この瞬間。真里は完全に誠の存在を忘れた。

愛し合う恋人同士の体位、正常位。
萌の位置は、本来は誠がいるべき場所のはずだった。

萌はそこから真里にキスをすると、より激しく腰を振った。

パンパンパンッ! くちゅっくちゅっ!♡
あむ……ちゅぅ♡んちゅ♡れろれろ、ちゅるる♡ぷぁ♡

もはや誠は、完全に蚊帳の外。

二人のレズビアンは、
自分たちだけとなった世界で愛し合い始めた。


「あぁぁぁっ!♡ もえ、しゅきぃ♡ しゅきぃ♡
すごい、すきなのぉぉぉぉっ!!♡」

「わたしも好きだよっ!♡ 真里、はぁはぁ♡♡
だいすきだよっ!♡ まりぃぃぃっ!!♡♡」

「ひもちいぃぃぃ♡♡ あぁ……しゅごい……♡♡
もえと、ひとつになったきがしゅるぅぅぅ!!♡♡」

「ひとつだよっ♡ んちゅ♡ れろれろれろ♡
もうはなれないからねっ!!♡♡」

「うんっ!♡ うんっ!♡ あむぅ……ちゅぷ♡
んちゅゅ♡ れろぉ♡ はなれにゃいでぇ!♡♡」

「はなれないよっ♡ ほーらいきなっ!♡
イって!♡ イって!♡ イキまくって!♡
イキまくりなっ!!!!♡♡」

「ふぁぁっ!♡ いひぃぃっ!♡
んぐっ!♡ あうぅんっ!♡ いきゅぅ!!♡♡
もえのゆびでいっひゃうぅ!♡ あひゃあ……♡♡」

クッチュ!クッチュ!クッチュ!クッチュ!
パンパン!パンパン!パンパン!パンパン!

「ふぁぁぁっ!♡ ふぁっ!♡ あふぁっ!♡
もえっ!♡ しゅきぃ!!♡ しゅきぃっ!!♡♡
しゅきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!♡♡」

「イケイケイケイケイケイケッ!!♡♡
イッちゃえぇぇぇぇぇぇぇ!!!♡♡」

「あっ!♡ あっ!♡ も……えっ♡ しゅ……き♡ 
い…………く…………く…………く………♡
いっ……………くうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!♡♡♡」

ぎゅっ……!♡

ガクガクガクガクガクガク、ガタガタガタガタ!!!
ビクンッビクンッビクンッ!!♡♡ビクビクンッ!!♡

ぴくん……ぴくん……♡ ぴくん……ぴくん……♡


「はぁーーー♡ はぁーーー♡ はぁーーー♡」


絶頂時の快感が強すぎたせいか、真里は放心状態だ。
口を開けて、口角からだらしなく涎を垂らしている。

可憐な花は、淫らに咲き乱れ、
ヌラリとした潤いを妖しく濡れ光らせていた。

真里が達したのを見て、萌は振り向いて言う。


「はぁーーはぁーーはぁ……ふぅ……ふぅ……♡
ごく……わ、私たちが、はぁはぁ……
どれだけ、愛し合ってるか……わかった?」


誠は何とも寂しそうな顔をしていた。

萌の質問には答えなかったが、
彼は自分に足りなかったものを十分理解したようだ。

萌はふらふらと立ち上がると誠の横に立った。

そして息を整えて、
顔を覗き込みながら、彼が気にしていることを口にした。


「あなたは、真里とこんなに激しく愛し合ったことある?」


萌は真里から誠との性生活について聞いている。
すでに答えは知っているようだ。

プルプルと震える誠に、彼女の口撃は続く。


「そのちんぽ。全然勃ってないよね?
真里があんなに感じているのに、どうして萎えてるの?」


侮蔑に満ちた目。
萌はゴミでも見るかのように誠のペニクリを見つめていた。

萌の言葉に、誠の心は深く傷つく。

これまで真里が献身的に接してくれたおかげで、そこまで気に病むことはなかったが、改めて言われると辛いものがあった。


「もえ……誠くんは……そういう体質なの……はぁはぁはぁ……勃ちにくいだけなの……」


二人の会話を聞いた真里が、息もたえだえになりながら言った。身体のことで、人を非難するのは反対のようだ。


「本当にそうかな?
マコトちゃんはアナルでは勃起するんだったよね?」

「う、うん……」

「じゃあ体質の問題じゃないよ。たしか真里、ディルド持ってたよね?」


真里は頷くと、自分の荷物を見つめた。
萌は真里に許可を取ると、彼女の荷物入れから、
ディルドもとい性剣エクスカリバー(ペニスバンド)を取り出した。


「これ借りるね。今から本当に体質で勃たないか確かめてあげる」


萌はベルトの部分から本体を取り外すと、
誠にそれを見せつけた。


「あなたがホモでないなら、これで勃起したりしないよね?」

「そ、それは……」


性剣を片手に問う萌に、誠は怯えていた。

催眠で記憶を消されていた時と違って、
今の誠は、男根の気持ちよさを知っている。

こんな状態でアナルを刺されては、勃起しない自信がなかった。


「言っとくけど、これは真里のチンポじゃないよ。
真里は女だから、チンポなんか付いているわけないよね?

真里のチンポだから勃起しましたなんて、
下手な言い訳しないでよ。

良い? これは男のちんぽなの。
かなり小さいけど、忍のちんぽと思ってくれて良いよ。

今からこれを、あなたのケツまんこに挿れてあげる。
それで勃起したら、ホモ確定ね?」

「や……やだ……」


ピクピク……ピクピク……

拒んでいるが、忍のちんちんと言われ、
誠のペニクリは、すぐさま勃起してしまった。


「あ……」


それを見て、萌は目を丸くして驚く。

挿れるまでもない。
萌は誠がホモであることを、すでに証明してしまっていた。


「真里、見てみなよ」

「誠くん……」


真里はちょっぴり寂しそうに誠のペニクリを見つめていた。

あれほど勃たせようと、日々奮闘していたペニクリが、
忍のちんぽと言われただけで勃起してしまっている。

その勃起具合は、自分としていた時と全然違う。

見るからに喜んでいるような挙動。
勃ち具合もお腹に付きそうなくらい反りあがっており、
ピクピクと上下に揺れていた。

誠は忍に犯されたことで、ホモの喜びを知り、
このように勃起するようになってしまったのだ。


(やっぱり私じゃダメだったんだ……。
誠くんが望んでいたのは、本物のおちんぽ……。
私じゃ、合わなくてもしょうがないよね……)


真里はペニクリの挙動を見て、
誠が本質的にホモであることを悟った。


「こんな男の模造品に勃起するなんて、ホモ以外考えられないでしょ。本当はわかってるんでしょ?
真里のこと、性的な目で見れないって。正直に答えなさい」


図星を突かれ、誠は視線を落とす。誠は忍にレイプされたことで、男性の方が性的に好きだと理解してしまっていた。


「私は……たしかに真里さんで興奮できません……。
でも私が好きなのは、本当に真里さんなんです」


なおも真里のことを好きと公言する誠に、萌は苛ついた。


「あんなチャット送った分際で、
真里のこと好きだなんて言わないでくれる?」

「私が送ったんじゃありません……」

「また忍が送ったって言うつもり?
見苦しい言い訳もいい加減にしなよ……。

なんであなたは、そんなに真里にこだわるの?
男が好きなら、素直に男の方にいけば良いじゃない?

なにが真里が好きだよ?
真里を満足させてあげられない癖に。
真里の女性としての魅力をわかってあげられない癖に……」


誠は最低な男だ。
自分の彼氏を寝取り、真里を傷つけた。

だが真里は、今でもこの男を気にしている。
そうでなければ、ところどころで庇ったりしない。

もちろん真里の自分への愛情は本物だ。

しかし、どこかに陰りがある。
自分だからこそ分かる小さな陰り。

それは自らの中に潜む、
忍への想いと同じものと言っていいだろう。

どんなに裏切られても、
根本的な部分では、まだ信じたいと思ってしまっている。

萌はどうしてもそれを取り除きたかった。


「もういい加減……真里を解放してあげてよ……
あなたが別れを認めない限り、真里はいつまでも、
心にわだかまりを持って生きていかなきゃいけない……

彼女はそういう性格なの……。
どこまでも、どこまでも、バカみたいに……
ホント、バカみたいに一途な性格なんだよっ!

私は真里と幸せになりたい。
彼女のことを幸せにしてあげたいの……

だからもうこれ以上、私たちの幸せを邪魔しないで!!」


萌は涙を溜めて訴えた。
肩を震わせ、荒く息を吐いている。

そんな中、真里が口を開いた。


「もういいよ萌……それ以上、誠くんのことを責めないで……あとは私が言うから……こっち来て……」

「真里……」


萌がベッドに戻ると、真里は話し始めた。


「誠くん、これまで見ていただいた通り、
私は萌とこういう関係になりました……。

私は萌にどこを触られても幸せな気持ちになってしまいます。

誠くんとのエッチも楽しかったですけど、
萌とのエッチは、心の底からつながってる感じがして……
いつまでも抱き合っていたいと思えるんです。

でもそれは誠くんが悪いんじゃなくて、
私が女の子と……萌と相性が良いからなんです。

そしてそれは誠くんも一緒。
元々、誠くんは男性に興味がありましたけど、
それを私が無理やり振り向かせてしまいました。

だからエッチの相性が悪くても当然……。

今までは気付きませんでしたが、
萌とエッチして、それがわかりました。

だから誠くんも無理しないで、男の人と……
本来、好きになれる人と一緒になってください……」

「真里さん……」


誠はそれを聞いて忍とのセックスを思い出していた。

レイプという形であったが、
真里にされるのとは明確に違う、底無しの気持ち良さがあった。もしそれを好きな人と感じ合えたら……。


誠は頭を下げて、ため息をつく。
自分ではそれを真里に与えてあげることはできない。

でも萌だったら……彼女のことを本気で愛している萌であれば、それを与えてあげることができる。

本当に真里にふさわしい恋人は、萌なのでは?

誠の頭にそういう考えが生まれた。


「見て、誠くん」


真里に呼びかけられ、誠は顔を上げる。
真里は誠がこちらを向いたのを確認すると、萌にキスをした。

萌もそれに応じて、真里のことを抱き締めた。

そのままディープキスを交わす二人。
とても愛情の籠ったキスであった。

そしてようやく唇が離れると真里は言った。


「私はもう……萌の方が好きになってしまいました。
彼女のことを愛してます。だから私と別れてください……」


真里の気持ちを直接聞き、絶望する誠。
もうここまで来てしまっては、状況を覆すことはできない。

それまでの彼女との思い出が走馬灯のように甦る。

勇気を振り絞って告白してくれた彼女。

毎日部室でホームページを作り、帰りは一緒にご飯を食べた。

雪山では遭難したけど、
それも絆を深める意味では、良い思い出となった。

そして夏の納涼祭での告白。

その後、身体の相性が合わなかったりと、
色々と弊害はあったけれど、
それでも彼女は自分を受け入れてくれた。

自分が男でも女でも構わないと言ってくれた。


(それなのにどうして……
たしかに相性は悪かったかもしれないけど、
二人で乗り越えていこうって言ってたじゃないか……)


誠は俯き涙を流す。

真里はそんな彼のことが見ていられなくなり、目を背けた。しかし、啜(すす)り泣く誠の声は聞こえてくる。

萌は立ち上がると、誠の元へ行き、縄の拘束を解いた。


「真里の気持ち、聞いたでしょ?
あとはあなたの好きなようにして」


真里が別れを告げたなら、用はない。

萌は踵(きびす)を返すとベッドに戻った。
誠が真里の視界に入らぬよう、二人の直線上に座る。


「お疲れ、真里。ようやく言えたね」


萌は真里を押し倒しキスをした。
そのまま二人は、女同士の愛欲の沼に沈み込んでいった。

Part.118 【 紡がれた心の絆◇ 】

「ついに終わりネ……」


管制室で小早川は、そう呟く。

これまで抵抗を続けてきた真里達であったが、
ついに彼らは、小早川の催眠に屈したのだ。

濡れ衣を晴らす方法がない以上、
誠は真里を取り戻すことができない。

あとは心が折れて、部屋から出てくるのを待つだけだ。


「マコトちゃんが部屋から出たら、すぐに催眠を掛けるワ。催眠スプレーを用意して、入口で待機しておきなさい」

「ははっ!」


小早川は黒服達に指示を出すと、
テーブルのワインを手に取った。

ゴクゴクゴクゴク……

「ぷはぁぁぁー!!
なんて美味しいお酒なの。まさに勝利の美酒って感じネ♡」


程よい苦味と渋味、鼻腔を通る葡萄の香りが脳にひんやりとした刺激を与えてくれる。
喉を潤し、胃へ落ちると、アルコール特有の熱く痺れるような感触が、なんとも心地よかった。

小早川はそうしてワイングラスをゆらゆらと揺らすと、誠に目を向けた。

椅子に座り、咽び泣く彼の姿は、なんとも不憫であった。
小早川は自分が仕掛けた側にも関わらず同情した。


「あぁ……なんて可哀想なの、マコトちゃん。
こんな浮気の現場を見せられたら、トラウマになっちゃうわよネ?」


そう口ずさみながらも、ニヤけ笑いをする。


「でも安心して♡ あなたがそんな思いしなくて済むように、生粋の女嫌いにさせてあげるワ♡
あなたは女性が苦手で、話すのも避けるようになるの。
近寄らなければ、こんな嫌な思いをしなくて済むワネ♡」


生活に支障はきたすだろうが、
苦手になれば、好意を抱くこともなくなるはずだ。
そうして女性に不快な感情を抱くたびに、男性に慰めてもらえば、自らも男を求めるようになっていくだろう。


「楽しみだワ~♡ まさに最高のニューハーフね。一体どれほどのお金を稼いでくれるようになるのかしら?♡ おほほほほ♡ おほほほほほほほ♡♡」


小早川はそう言って高笑いする。

しかし、その反面、彼の頬はげっそりと痩せていた。
これまでろくに食事も睡眠も取らなかったせいだろう。

それだけに、誠を籠絡する喜びはひとしおであった。



※※※



「いぃぃっ!♡ そこ感じるっ♡ ンンンッ!!♡」


一方現場では、真里が嬌声をあげていた。

誠に別れを告げたことで迷いがなくなったのか、声を抑えることもなく、萌にされる悦びを余すことなく表現するようになっていた。

真里は仰向けになって萌のクンニを受け入れている。

萌が親指と人差し指でクリをプニプニ摘まむと、
彼女は甘えた声で抗議した。


「またクリちゃんばっかり……ぁっ♡
そんなにいじめたら、おおきくなっちゃうよっ♡」

「でも真里のクリ、いじめられて嬉しそうにしてるよ?♡ こんな反応されたら……もっと意地悪したくなっちゃう♡ ちゅ……ちゅうぅぅぅぅ♡♡」


萌はクリを口に含み吸引する。


「やぁんっ!♡ そんな吸って……あああぁっ!♡
や……気持ち……いぃ……♡ はぁぁぁぁん……♡♡♡」


自らも腰を浮かせて突起を捧げる。
萌がもっと舐めやすいように、もっと吸いやすいように。
女性に身体を苛められる悦びに目覚めた真里は、すっかりレズセックスの虜だった。

そんな真里を見て、誠は確信する。
彼女はもう自分の元に戻らないだろうと。


(誤解はあるけど、真里さんが萌さんのことを好きにな
ったんだったら、もうどうしようもないよね……)


真里の笑顔が眩しく見える。
自分はもう、あの笑顔を正面から受け取ることはできないのだ。虚しさと悔しさが込み上げてくる。

このままここにいても辛いだけ。

そう思い席を立とうとした瞬間。
彼は不思議な声を耳にした。


《諦めないでください!》

(!?)


たしかに今、真里の声が聞こえたような……?
誠は顔を上げて、真里の方を見た。


「あぁっ!♡ おまんこキス気持ちいいっ!♡ くちゅくちゅしてて……はぁ……♡ 幸せ……♡」

「はぁっ!♡ はぁっ!♡ 私と真里のあそこがぴったりくっついて……まるで同化したみたい♡ もっと腰ふろっ♡ もっといっぱいクチュクチュしよ♡♡♡」

「うんっ!♡」


二人は陰部を擦り合わせていた。
唇も重ね合わせ、まさに一心同体の状態だ。

そんなイチャラブセックスをする二人を見て、
誠は自分の願望が生み出した幻聴だと思い直した。


(今の真里さんが、私に話しかけてくれるわけないよね……)


再び席を立とうとする誠の頭に、さらなる幻聴が届く。


《諦めないで!》


今度はたしかに聞こえた。現実の真里の声と重なるように、その声は誠の心に響いていた。


(この声はいったい……それにこの波の音は……?)


聞き覚えのある女性の声に乗って、
漣(さざなみ)の音と〖ウミネコ〗の鳴き声が聞こえてくる。

ニャーーニャーー
ニャーーニャーー

頭の中にうっすらとかかった霧を、潮風が吹き飛ばしてくれた。誠の目の前に、今の真里とは違う、別の真里が姿を現した。



※※※



貨物船の薄暗いコンテナの中、
ここから遠く離れた〖過去の海〗に声の主はいた。

誠と真里が南の島を脱出し、
まもなく本島に到着しようとしていた時の話である。

作業員が鍵を取りに行っている間、真里は小早川の催眠に対抗する方法を見つけようとしていた。


(どうしよう……戻ってくる前になんとかしなきゃ……)


このまま捕まれば、確実に別れさせられてしまう。

一度失態を犯している小早川は、
これまでのように甘くはないだろう。

襲いかかる恐怖を抑え、必死に策を考える。

そうして苦心した結果、
真里はその〖小早川〗にヒントを見つけ出した。


(……ひとつだけ……ひとつだけ方法があったっ!!)


真里は誠に向き合うと言った。


「誠くん、よく聞いてくださいっ!」


力強い呼び掛けに、誠は顔を上げる。


「【純白の姫君】!!」


そう真里が唱えるや否や、
誠はまるで魂が抜けたように倒れてしまった。

純白の姫君……小早川が誠を操る際に使っていた催眠キーワードだ。

小早川は、今でこそ手を叩くのみとなったが、まだ催眠をかけ始めの頃は、こちらの手法を使っていた。

なぜ真里がキーワードを知っているのか?

それはもちろん、彼女が誠の催眠キーワードを知る機会があり、なおかつそれに関する記憶を取り戻していたからだ。

二人は小早川の事務所に通っていた頃に、催眠を受けている。真里はその際に使われていたキーワードを覚えていたのだ。


(やった! うまくいった!!)


誠を催眠状態にすることに成功し、喜ぶ真里。
ここで暗示を掛ければ、小早川に対抗できるかもしれない。

しかし、彼女はそれがいかに難しいものか、すぐに気がついた。


(単純な催眠では、すぐに見破られてしまうかも……)


一度しか暗示を掛けれない真里と違って、
小早川は何度でも掛けなおすことができる。

もし誠が催眠に掛けられていると知れば、
すぐに別の催眠で上書きしてしまうだろう。

真里はそのことに注意しながら催眠を掛けねばならなかった。


(いざって時にしか発動しないようにしなきゃ……でも一体どんな暗示を掛けたら……)


真里は考えた。
誠にBL本を見つからないようにした時以上に考えた。

遠くから船員の声が聞こえてくる。鍵を持ってきたようだ。
ここで何もしなければ、最悪の結果を招いてしまう。早くしなくては。


(小早川の望みは、私たちを別れさせること……
だったら、これしかない!)


真里はすぐに暗示を掛け始めた。


「誠くん……よく聞いてください。
あなたが真里と別れる決意をした時、あなたは愛していた頃の真里を思い出し、二人の関係を守ろうとします。

今から私が手を叩くと、あなたはこのことを忘れてしまいます。ですがこの暗示は、あなたの心の底にしっかりと刻み込まれました……。

あなたが別れを決意すれば、どんな時でもあなたは元の心を取り戻し、二人の関係を守ろうとするでしょう」


そして真里は、誠に催眠を掛けた記憶を忘れるため、
誠を操って自身に忘却催眠を掛けさせた。

小早川は、逃亡中の記憶を掘り起こしてくる可能性が高い。
だが忘れてしまえば、掛けた催眠を追跡することはできないだろう。

短時間ではあったが、
真里はその中でベストといえる行動結果を導き出していた。

外の船員達が中に押し入った時には、
二人は暗示の内容を完全に忘れてしまっていた。


※※※


漣(さざなみ)の音が引き、誠は意識を取り戻す。

真里によく似た声。
誠はそれを聞くたびに勇気が湧いてきた。


(そうだ……諦めちゃいけない……真里さんが誤解してるなら、分かってもらえるまで、何度でも真実を伝えなきゃ)


誠は顔を上げると叫んだ。


「真里さん、愛してる! どんなに疑われても、別れると言われても、その気持ちだけは絶対に変わらないから! それだけは信じてっ!」

(……!!)


その瞬間、真里は喘ぐのを止めた。いくら気持ち良くても、元カレから愛を叫ばれたら集中できない。

往生際の悪い誠に、萌はうんざりとした表情で言った。


「まだそんなこと言ってるの? 真里の気持ち聞いたでしょ? いい加減諦めなよ!」


しかし、誠も負けてはいない。
彼は立ち上がると、改めて身の潔白を訴えた。


「嫌だ。絶対に諦めない!
誤解されたまま終わるなんて絶対に嫌だ!」

「私達は遊園地で、あんたが忍とキスしているところを見たんだ。バレバレの演技をするのはやめな!」

「私は忍くんとデートもキスもしてない! 気付いたらホテルで寝かされていたんだ。そこで彼にレイプされたんだっ!」

「まだ言うかっ!」


萌は立ち上がって誠に掴みかかった。

誠をその場に押し倒し、馬乗りになる。
再び忍を侮辱され、彼女は頭に血が上ってしまっていた。

互い全裸であることなどお構いなしだ。


「私の部屋でよがってた癖に、なにがレイプだ。ふざけるなっ!」

「萌さんが何を見たか知らないけど、私はそんなことしてないっ!」

「このぉぉぉぉぉ!!」

「くぅぅぅ!」


ビンタをかまそうとする萌の腕を、誠は思い切り掴んだ。
萌の方が少し力が強いのか、押されている感じだ。

その光景を見て、真里は呆気に取られている。


(なんか変……誠くん、
こんなに必死になってまで、嘘をつく人だったっけ?)


彼は保身のために、こんなに必死になってまで嘘を付く人ではなかったはずだ。真里の中に大きな違和感が生まれる。

彼女は立ち上がると二人の元へと向かった。


「この大嘘つきのオカマやろう……オマエには、忍すら勿体ないよ」

「嘘つきなんかじゃない……!」

「待って」


取っ組み合いの喧嘩をしてる二人に、真里が割ってはいる。
そんな彼女に、萌は涙目になって訴えた。


「真里、約束破ってごめん……
私、どうしてもこいつが許せなくて……」

「うん……それは大丈夫……一旦引いて」


真里に言われ、萌は引き下がった。
立ち上がり、真里の背にまわる。

真里は倒れている誠に視線を合わせると言った。


「誠くん……私の目を見て答えてください。
本当に忍くんにレイプされたんですか?」

「……本当だよ」


誠は真剣な眼差しでそう答えた。
萌同様、彼も泣きそうな顔をしていた。


「わかりました……信じます」

「……!! 真里、何言ってるの……?」


萌が蒼ざめた顔をして、真里を見ている。
真里は冷静に萌に伝えた。


「萌……やっぱりどう考えてもおかしいよ……」

「……なにが?」

「私、誠くんがこんな言い訳するとは思えない」

「そんなことあるわけないじゃんっ……。
真里も忍がこいつをレイプしたって言うの?」


真里は頭を横に振り、すぐに否定する。


「忍くんがレイプするわけない。だからおかしいの。
だって誠くんも、絶対そんなウソ言う人じゃないから」

「何言ってるの……正気に戻って。
こいつは嘘をついてるだけなの!」

「萌が忍くんのことを知っているように、
私だって誠くんのことを知ってる。
誠くんは誰かにレイプされただなんて嘘、絶対につく人なんかじゃない」

「真里さん……」


誠は真里が自分を信じてくれたことに涙ぐんでいた。
真里は一旦、誠への疑念を全て消して彼のことを見た。

こんな浮気の現場を見せられて、怒鳴られて、どんなに辛かったろうか。もしレイプされたのが本当だとしたら、彼の心をボロボロのはずだ。

真里は、仰向けになる誠の身体を支えて起き上がらせると、彼のことを抱き締めた。


「誠くん、疑ったりなんかしてごめんなさい……」

「ありがとう、真里さん……信じてくれて」


そんな状況を萌が素直に受け取れるはずない。
彼女は必死に叫んだ。


「おかしいよっ! そんなの絶対おかしいっ!
根拠なんて、何もないじゃないっ?
そいつが嘘をついてない根拠なんてどこにも……」


誠は何も身の潔白を証明できていない。

真里がこの状況で誠を信じるなど、
理不尽にもほどがあるのだ。

真里とは将来を誓い合った仲だ。

そんな真里が、こんなにも早く、自分のもと去ろうとしているのが、萌には堪らなく辛かった。

真里はそんな萌をいたわるように言った。


「萌、ごめん。もう一度だけ、誠くんを信じさせて。
私は自分が見たものより、彼の言い分を信じてあげたいの……。私と彼との思い出は、たった一度のすれ違いで、なくなるものだと思いたくないから……」

「……」


真里の性格を考慮すると、
こう頑なに決めたらテコでも動かないだろう。

それと同時に「たった一度のすれ違いでなくなるものだと思いたくない」という真里の言葉が、萌の心に突き刺さった。

それまで一途に愛してくれていた忍が、どうして会って間もない誠と浮気をしたのか……たしかに腑に落ちないところがあった。

ましてや忍は正真正銘のノンケ。男とセックスしろと命じても難色を示す彼が、自ら男といたすだろうか?

喧嘩をした際、すぐに部屋を出てしまったが、あの時もっと彼の話に耳を傾けていれば、別の結果もあったかもしれない。


(忍だけじゃない……私だって女の子とエッチするのなんて嫌だったはずなのに……それがなんでこんなことになってるの?)


鳥肌が立つくらい嫌だったレズ行為も、今では男とするより好きになっている。いくらなんでも短期間で変わりすぎだと思った。


(桐越先輩だって、元は学年一頭が良くて、優しくて評判だった先輩……それがこんなバレバレの嘘〖意見を変えずに〗突き通すはずがない)


嘘をつく人と言うのは、自分の話を信じてもらうために、その場その場で巧みに話を作り替える人のことだ。
しかし、誠は初めから一貫して同じ話を言い続けていた。
彼ほど頭が良ければ、こんなずさんな嘘はつかないはずだ。


(でも忍がレイプするわけないし……おかしいよ……
まるで〖催眠術〗にでも掛けられているみたい……)


ドクンドクンドクン……

催眠というキーワードに反応して、萌の胸が高鳴り始める。

(なに? 今、〖催眠〗って言葉に反応した……?)


ドクンドクンドクン……ドクンドクンドクン……


間違いない。萌はあえて頭の中で〖催眠〗という言葉を連呼してみることにした。


(〖催眠〗……〖催眠〗……私は〖催眠〗に掛けられている……? 〖催眠〗〖催眠〗〖催眠〗〖催眠〗……)


次第に明瞭になっていく頭の中。
シナプスが遮断された催眠の壁をぶち破り、反対側のそれと結合した。


(ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


その瞬間、萌は大きく目を見開き覚醒した。
彼女は真里と誠の顔を交互に見ると、
思いっきり反省した表情で謝罪を始めた。


「ごめんなさいっ!!
真里、誠さん……私、とんでもないことを……」

「どうしたの、萌?」


急に謝罪され、誠も真里も困惑する。
そんな二人に、萌は説明を始めた。


「私たちはみんな小早川というオカマに催眠で操られていただけなの! 誠さんがレイプされたのも本当!
だけどそれは忍も催眠で操られていたからなの!」

「!!!」


萌の説明に、誠と真里も同時に覚醒を引き起こした。


「二人とも、早く荷物を持って逃げよう!
奴らに気付かれる前に!!」

「はいっ!」

「急いでっ! 盗聴されてるかもしれないからっ!」


彼らは服を取り、逃げ出そうとした。
しかし、入口で待ち構えていた黒服達に、すぐに囲まれてしまう。


「あっ!!」


催眠スプレーを噴射された三人は、すぐに眠らされてしまった。

Part.119 【 黒き書に住まう者 】

割れたワイングラスが床に散らばっている。

傍らには拳を握り締め、
憤怒の表情を見せる小早川の姿があった。


「なんてこと……こんな……マコトちゃんがあの状況から、立ち直るだなんて……絶対にあり得ないワ!!」


順調にいっていた離間工作が、見事に打ち砕かれ、
小早川の怒りは、頂点に達していた。

彼はすぐさま管制室を出ると、現場へと向かった。

モニターを見ながらの遠隔操作ではなく、
直接暗示に切り替えるようだ。

歩きながら考える。

精神状態がボロボロのはずの誠が、
どうしてあんなに強い意志を保てたのだろうか?

男にレイプされ、恋人を寝取られ、浮気相手に殴られ、
そんな状態なら、声を出すことすらままならないはずだ。

これまでの経緯を無視した展開に、小早川は苛ついていた。

彼は部屋に到着すると、
倒れる三人の位置を元に戻し、認識阻害の暗示を掛けた。

同室内で暗示を掛ける際は、必ず行っている催眠である。
これで自分と黒服達の姿は、見えなくなったはずだ。


(ふぅー落ち着きなさい……。
こちらが有利であることに変わりはないワ……)


現状、堕とせていないのは誠だけだ。

三人の記憶を、真里が別れを告げた直後の状態に戻し、
暗示をかけ直してやれば、今度こそ別れを決めるだろう。

小早川はそう考え、
再度真里と萌に暗示をかけ、誠への嫌悪を強めていった。

そうして目を覚まさせられた二人は、
初めの頃より、さらに激しく誠を糾弾(きゅうだん)した。

だが、それでも誠は挫けなかった。
ひたすら無実を主張し、真里の心に訴えかけたのだ。

次第に真里も耳を貸すようになり、
やり直す前と、なんら変わらない結果を残してしまった。

〖別れを認めさせること〗が、〖誠の催眠のトリガー〗となっているのだから、上手くいくはずがない。


「なんでヨッ!……なんでうまくいかないのヨッ!!」


その実情を知らない小早川からすれば
あまりにも理不尽な結果である。

睡眠不足と空腹が追い討ちをかけ、
とうとう彼は、眩暈を起こして倒れてしまった。


「小早川様、もう止めましょう。これ以上は危険です」


黒服達が慌てて駆け寄り、身体を支える。

小早川は病人のように項垂れ、ブツブツと同じ言葉を繰り返していた。頬はげっそりと痩せこけ、目の周りは黒ずみ、まるで死神に取り憑かれたような酷い形相(ぎょうそう)となっていた。

忍を堕とし、萌を堕とし、真里まで堕とした。

ここまで万全を尽くしてダメなら、他にどんな方法を使ってもダメだろう。あまりの疲労とショックに、気を失いそうになる。

もっと力が欲しい、誠を堕とせるだけの力を……。
そう願った時、彼はあることを思い出した。


(そうヨ……今こそ、あの本を使う時だワ)


数年前、国立図書館で見つけた黒い本が頭に浮かんだ。
小早川の現在の富と権力を得るきっかけとなった本だ。

催眠スプレー、媚薬ローション、魅惑のお香、
小早川製薬で生産されたそれらの道具は、
全て黒い本で学んだ知識が元となっていた。


(もしかしたら、新しいページが増えているかもしれない……)


黒い本は新しいページを生み出す。

中身は全て読み終えていたが、
気付いたら次のページが追加されていることがあった。

そんなこと普通の本では、あり得ない。

小早川は、その不気味さから使用をなるべく避けてきたが、今回は違った。


「黒い本を持ってきなさい」

「ははっ!」


小早川は黒服に命じて、黒い本を取りに行かせた。
最終手段とも言えるこの方法に、彼は一縷の望みを託した。


※※※


悪魔召喚の儀式。

黒い本に追加されたページには、そう書かれてあった。

普段の小早川であれば、
そのような恐ろしい内容には、決して手を出さない。

しかし、冷静さを失っていた彼には、
ここで思いとどまれるだけの判断力は、すでに残されていなかった。


「小早川様……一体何をなさるおつもりでしょうか?」

「良いから、黙っていなさい」


アルコール度数の高い酒、金塊、血液、骨粉、朝顔の種、乾燥したマジックマッシュルーム。

それらは一時間もしないうちに集めることができた。

床に敷かれたB1サイズの光沢紙には、
大きな円と六芒星(ろくぼうせい)が印刷されており、
酒を初めとした六つの素材は、六芒星の角に配置された。

そして、その中心には黒い本が開いたまま置かれていた。

小早川は目を閉じて、本に書かれていた通りに祈った。


(Sky of nightmare……契約を望むワ。
アナタの力をアタシに貸しなさい。
マコトちゃんを、ニューハーフに堕とすのを手伝うのヨっ!)


小早川の奇行に、黒服達は顔を見合せている。

そこにいる全員が、
疲労とショックで頭がイカれてしまったと考えているようだ。

彼らは気付いていない。六芒星の周りに、黒と赤のおどろおどろしい影が漂っていることに。

小早川にだけは、それが見えていた。
影は徐々に範囲を広げ、部屋全体を埋めつくそうとしている。

そうして儀式が続くこと数分が経ち、
立ち込めていた影は、一気に本に吸い込まれていった。

そして、全てが飲み込まれた瞬間。

パタンッ!

本は閉じられた。


「!?」


本がひとりでに閉じられ、驚く黒服達。
黒煙が本の隙間から洩れ、再び本は開かれた。


(成功したの……?)


本の中から、人間の手が出てくる。
色白の細い手。透き通るような綺麗な指をしていた。

手、腕、肩と、それは徐々に全貌を見せ始め、ついに頭部が現れた。

キラキラ光るような銀色の髪。
風も吹いていないのに、なびくようなサラサラとした髪だった。

目を閉じたまま現れた悪魔は、小さな子供のようだった。
男だか女だか分からない中性的な顔立ちで、
人間離れした美しい容姿をしている。

事前に悪魔だと知らされていなければ、
天使と言われても信じてしまいそうな容姿だ。

悪魔は、先に出した手で床を捉えると、
本からのっそりと出て、気だるそうに座った。

体調が悪いのか苦しそうな表情をしている。


(これが本当に悪魔なの……?)


想像とはまったく違った悪魔の姿に、小早川は戸惑っていた。

こんな小さな子供。
とても願いを叶えられるだけの力があるようには見えない。

身長は140cmくらいだろうか?
全体的に細く、
産まれたばかりの小鹿のようだ。

小早川がまじまじと見つめていると、声が聞こえた。


《ありがとう、やっと外に出られたよ》


心に直接語りかけられているような奇妙な感覚に、小早川は身体をビクつかせる。

口を開いていないが、おそらくはこの悪魔の声。

悪魔はゆっくりと目を開いた。
オレンジ色の瞳に、瞳孔が猫のように楕円形をしている。
そこだけ見れば、少しだけ悪魔らしいと言えた。

それにしても弱々しい悪魔だ。殴れば一撃で潰れてしまいそうな見た目に、小早川は失望していた。


(なんなのヨ、こいつは……せっかくめんどくさい儀式までしたのに、これじゃあ何にもならないワ……)

《久しぶりに外に出たから、ダルいだけだよ。
願いは叶えてあげるから安心して》

(!? ……アナタ、心の声が分かるの?)

《うん》

(へ……へぇ、話が早いわネ……アタシの願いを叶えるって言うけど、アナタに本当にできるの?)

《うん、そこで寝ている男の子を、同性愛者にすれば良いんだよね? そんなの簡単にできるよ。でも起きたばかりでダルいから、とりあえず今回は助言だけで良いかな?》


悪魔であることはたしかなようだ。

小早川はこの子供に対する認識を少しだけ改める。
ひとまず口頭での支援に承諾することにした。


(えぇ、言いワ。でも願いを叶えるには、対価が必要なんでしょ? 先にそれが何なのか答えなさい)


本には召喚の方法が書かれているのみで、契約の内容については詳しく載っていなかった。

古き西洋の黒魔術では、悪魔と契約を交わした者は、
それ相応の対価を要求されるらしい。

昔テレビで見た内容だが、
その前知識から、小早川は警戒していた。


《対価? 何それ? いらないよ》

(は? そんなわけないでしょっ!
願いを叶えた後に、要求してきても払わないわヨ!)

《別に良いよ。ボクは願いを叶えるだけで、何もいらないから》


そんな都合の良い話、あるわけがない。
相手は悪魔。人を騙すプロフェッショナルだ。
こんな頼りない姿をしているのも、実は油断させるための罠なのかもしれない。

そんな小早川の心を悪魔は読む。


《何か危害を加えるつもりなら、この時点でやってるよ。
なんでわざわざ願いを叶えた後に危害を加えるのさ?》


悪魔は笑っている。
彼からすると、小早川の言動は意味不明であった。

人間同士の会話で例えるなら「テレビの見過ぎ」と揶揄される内容といった感じである。

人間達が創作した古書の文献など、
本物の悪魔には関係のない話であった。


(たしかに……でも本当に……?)

《どっちみち願いは叶えるつもりなんでしょ?
もうボクのこと呼び出しちゃったんだから、やれば良いじゃない。迷ってる時間が無駄だと思わないの?》

(……)


悪魔の言うとおり、迷うことに意味はない。
人外の力を持つなら、それをいつ行使しても良いはずだ。

それに悪魔を呼び出してしまった以上、すでに一線は越えている。

小早川は覚悟を決めると言った。


(わかったワ。マコトちゃんを堕とす方法を教えなさい)

《良いよ。あ、その前に名前を教えてくれる?》

(小早川 憲子ヨ)

《コバヤカワノリコ……長いね。コバでいいかな?》

(嫌な呼び方ネ。せめて下の名前で呼びなさい)

《下の名前?》

(のりこで良いワ)

《ノリコね、わかった。ボクはメア、よろしくね》

(えぇ……)


自己紹介を終えると、
メアは真里の前に移動して、振り返って言った。


《簡単な話なんだけど、この人を殺せば、誠は堕ちるよ》


人の生死など何とも思わない、
悪魔ならではの発想といったところか。

メアの気軽な提案に、小早川は度肝を抜かれていた。


《真里が死ねば、誠は心の支えを失って、精神がガタガタになるよ。そこを催眠で操ってやれば一発だよ》

(それはだめヨ)

《なんで?》

(アタシはマコトちゃんに本物のニューハーフになってもらいたいの。ただの操り人形じゃ意味ないワ。
100%催眠が解けないとは限らないし、アタシは素の状態の彼女がホモに目覚めるのを希望してるの)

《ずいぶんと回りくどいことするね。
じゃあ、真里が死んだことを知らせなければ良いよ。
それでも十分、堕とせるから》

(知らせないのに、殺す意味なんてあるの?)

《ボクには見えるんだけど、この二人には、強い結び付きがあるんだよ。運命の赤い糸って言うでしょ?

運命が二人に味方するんだ。
だからどんな手を使っても上手くいかない。
でも片方を殺してやれば、それも切れるよ》

(…………)


真里の殺害を勧めるメアに、
小早川は躊躇(ちゅうちょ)した。

彼はこれまで誘拐や詐欺などは繰り返してきたが、殺しにだけは手を染めたことがなかった。

元はどこにでもいるニューハーフバーのママなのだ。
殺人という一線を越えるには、それなりの覚悟が必要だった。

目的のために、殺人という一線を越えてしまって良いものだろうか……それを越えてしまったら、人として後戻りできなくなってしまうのではないか……?

そんな思いが、小早川の心を包んでいた。


《別にしなくても良いんだよ。この人達を解放して、他の人を狙えば良いんだから。世の中に人間なんていくらでもいるしね?》

(マコトちゃんは一人しかいないワ!
だから悩んでいるんじゃない!)

《じゃあ、決めるしかないね。いくら同性愛者に仕立てたところで、運命の結び付きを解かなきゃ意味がないよ。
どういう形であれ、真里は必ず誠と結ばれることになる》


メアはそう言うと、少し離れて椅子に腰かけた。


(こんな形(なり)をしてるけど、こいつは黒い本の化身……。
人智では辿り着けない知識を持っていると見て良いワ。
こいつの言う運命の結び付きが本当なら、
たしかに殺すしかないのかも……)


小早川は、決断した。


(わかった、やるワ……)

Part.120 【 死の呪文◇◆ 】

「真里、もっと腰を振って♡」

「うん……♡ あぁ……っ!♡」


敏感になった肉芽同士が擦れ合い、
真里は甘い声をあげている。

彼女は新しい恋人の萌と、
ベッドで貝合わせをしていた。

そこから少し離れた椅子の上では、猿轡を噛まされ、
逞しい男性の股間に、お尻を乗せる誠の姿が。

彼は後ろ手に手首を縛られ、
太ももに巻かれたベルトに、長いパイプをつながれていた。

足を閉じようにも、パイプが邪魔をして閉じることができない。開脚用の足枷と言ったところである。

そして、開脚させられた状態で、
その可愛らしいペニクリを、女達の前に晒されていた。


「マコトちゃん、男の人に跨がって気持ち良さそうだねー」

「うん……誠くん、すごく気持ち良さそう♡」


誠はそのいたいけな蕾に、成熟した男根を差し込まれていた。

ペニクリはすっかり勃起し、
男性と性交する喜びを示してしまっている。

だが彼の目には、奪われてしまった恋人を取り戻そうとする意志の光がまだ残っていた。


「ホモに犯されるマコトちゃんを見て、どう思う?」

「なんかすごい……生のホモって迫力あるよね」


誠が犯されてるというのに、真里は淡々と意見を述べるだけである。助け出そうといった気持ちはないようだ。

それもそのはず。
現在、誠が犯されているのは、二人が原因であるからだ。

真里をめぐって萌と口論した誠であったが、
結局、真里の同意は得られず、
再び椅子に縛り付けられてしまっていた。

このままでは、誠は出ていかない。

そこで萌が思い付いたのが、
ホモ向けのデリバリーヘルスを呼ぶことであった。

誠に男とセックスさせ、ホモを認めさせる。
そうして真里のことを諦めさせようとしたのである。

初めは難色を示していた真里であったが、
小早川の催眠により、
萌の意見に同意させられてしまっていた。

そして男に犯され、気持ち良さそうにする誠を見て、
彼女の中の罪悪感は、徐々に薄まろうとしていた。


パンパンパンパン! パンパンパン!

男の腰と誠の尻がぶつかり音がなる。
女性二人は、誠の表情から限界が近いことを察し、その様子を見つめていた。


「フーーッ! ンンンーーッ! ンフーー!!!♡」


猿轡の隙間から、悲鳴にも似た嬌声が洩れる。

このままではイッてしまう。
真里の前でホモイキしたくない。

しかし、そうして彼が我慢する姿は、
今の真里からすれば生唾ものであった。


(あぁ……すごいエロい……♡
なんかすごく貴重な瞬間を見てる気がする……♡)


華奢で中性的な男の子が、逞しい男性に無理やり同性愛に目覚めさせられようとしている。
これで誠が完全にそっちに目覚めたら、どれだけ官能的だろう。

真里はそんな誠の姿を想像して、
心臓をドキドキさせていた。


「フーーッ!!♡ ンフゥーーー!!!♡♡
ンヒィィィィィーーーーーーー!!!!♡♡♡」

ビクビクッ! ビクビクビクビクッ!

トク……ツツツー♡

「あ、出たっ」

「出したねー♡」


ついに誠は堪えきれず、射精してしまった。

透明でサラサラの愛液が、
勃起したペニクリの先から垂れる。

愛する元カノの前でホモイキしてしまい、
彼は強い羞恥心を覚えていた。

鼻で息を吐きながらも、
真っ赤になった顔を真里から背けようとしている。


「マコトちゃん、イッちゃったね。
真里とエッチしてた頃と比べて見てどうだった?」

「全然違う。あんなに激しくイッたの初めて見たかも。
イッた後でも萎えてないし、
やっぱり男の人とすると違うんだね」


誠は脱力して、男に背を預けている。
まるで愛する男性に身を委ねているかのような光景だ。

真里はそんな誠の姿が、
彼にとって本来あるべき姿のように思えた。


「真里もわかったでしょ? 彼が根っからのホモだって」

「うん」

「ホモはホモと付き合うのが一番なの。
真里だって、私とした方が良いでしょ?」


そう言い、萌は陰部をすりすりと動かした。
すっかり潤った花弁が、真里の花弁にキスをするように張り付き、真里は興奮して息を荒くした。


「んんっ!♡ はぁはぁ♡ ……萌の方がいい♡」

「ふふふ♡ 真里も根っからのレズだもんね♡

だったら、早くマコトちゃんを楽にさせてあげようよ?

彼はまだ一線を越えられずにいるだけなの。
真里みたいに、一度一線を越えちゃえば、
もう復縁したいだなんて思わなくなるから」

「うん……♡ そうだね……はぁはぁ♡」

「忍とは合わなかったみたいだけど、
マコトちゃんだったら、すぐに良い彼氏が見つかるって。
そうすれば、彼は今より、ずっと幸せになれる。
なんてったって、根っからのホモなんだから。
真里もマコトちゃんに幸せになってもらいたいでしょ?」

すりすり♡ すりすり♡

「あぁ……んっ!♡♡
な、なってほしぃ……♡ 誠くんもしあわしぇに……♡♡」

「なら真里も鬼にならなきゃダメだよ?
マコトちゃんの幸せのために厳しく接するの。
そうでないと彼、ストーカーになっちゃうかも?
そんなの嫌でしょ?」


ストーカーになった誠を思い浮かべる。

女に勃起もできない癖に、
ただひたすら無意味に自分を求め続ける誠を、
真里は可哀想に思った。

彼がそんな人間になるくらいなら、
自分は鬼になっても良い。

誠にホモを認めさせて、
愛する男性と幸せな人生を送ってもらうのだ。


「誠くんをホモにするの。がんばる」


半ば洗脳にも似た方法で、萌は真里に協力を決心させた。


※※※


二人はベッドから降りると、
誠が犯されている椅子の前に立った。

誠はようやくこの行為を終えられると、
安堵の表情を浮かべていた。しかし、外されたのは猿轡のみ。
開脚用の足枷や、手首を縛る紐はそのままであった。


「はぁ……はぁ……♡
真里さん……もうやめて……♡」

「何言ってるんですか。これからが本番ですよ?
私が誠くんにホモを認めさせてあげます。
誠くんは、女の子と付き合うより、男の人と付き合った方が幸せになれるんです」

「ち……がう……私は真里さんのことが……アァンッ!♡」


誠が何か言いかけたタイミングで、男が前立腺を突く。


「そんな可愛い声出して、私が好きだなんて言わないでください。本当に好きな男の人に突かれたら、もっと幸せな気持ちになれるんですよ? 私みたいに……」


真里はそう言い、隣にいる萌とキスをした。


「んちゅ……ちゅう♡ あむ……ん……♡」


徐々にディープなキスに移行していく。
幸せそうにレズキスをする真里を見て、誠は涙ぐんでいた。


「ちゅ……♡ はぁ……はぁ……♡
私……萌とキスして、すごく幸せです……♡
誠くんと付き合っていた頃よりもずっと……♡
でもそれは……私がレズだから。

誠くんも、男の人との相性の方が良いはずです。
意地を張るのはやめて、本当の自分と向き合ってください」


誠はそれを聞いても、首を横に振った。


「やだ……わたしは……真里さんがいい……」

「はぁ…………誠くんだって、私とエッチするより、
その人に突かれた方が気持ち良いですよね?
こんなにおちんちん大きくさせて……」

「うぅぅ……」

「もう…………じゃあ、次が最後ですよ?
私が今から誠くんのおちんちんをしごくので、それでイッてみてください。もしイケたら、私も復縁を考えます。
でもイケなければ……別れを認めてくださいよ?」


そう言い、萌に確認を取る。
萌は少し考えた顔をしたが、これで誠が承諾すれば、言質を取れたことになるので、渋々承知することにした。


「私もそれに乗るよ。もしマコトちゃんが真里の手コキでイケたら、真里と復縁するの認めてあげる。
あ、でも別れるつもりはないからね。
あくまで私の次の恋人ってことで、認めてあげるって意味」


要するに萌優先の三角関係ということだ。
デートをするのも、セックスをするのも萌が優先。

誠が唯一、真里の彼氏に戻れるのは、
萌の気の迷いが生じた時のみ。

だいぶ立場は下になってしまうが、今はそれでも仕方がない。誠は迷ったが、真里の提案に乗ることにした。


「うん……わかった……」


※※※


今の誠のペニクリは、肉竿を挿れられて勃起している状態だ。一から勃起させるのに比べたら、大分ハードルが低いと言える。

性器への刺激をどれほど感じれるか不安だったが、
これから射精するのに、
アナルに差し込まれた男性器の存在は心強いものであった。

誠がそのように考えているとーー


「ねぇ、萌。誠くんのお尻から、ちんちん抜いた方が良くない? これじゃあ、どっちで射精したかわかんないよね?」


萌の方を向いて真里が言う。
その言葉に誠は、心臓をドキリとさせた。

ちんちんのおかげで勃起できてるのに、
これを抜かれたらイケる自信がなかった。

しかし、真里の言い分はもっともだ。

真里は今、誠が自分で興奮できるか、
試そうとしているのだから。

男根を挿れられたまますると思っていた誠は、
軽率な気持ちで提案に乗ったことを後悔した。

そうして半ば諦めかけた時であった。


「私はこのままで良いと思うな。
チンポ抜いたら絶対無理でしょ?
ハンデと思って、許してあげたら?」

「そうだよね。じゃあ、ちんちんありでいこっか」


意外にも萌は、ちんちんの挿入を許してくれた。
たとえ入っていても、イケないと見ているようだ。

それに対し、真里も似たような反応を見せている。

情けをかけてもらっているが、実質バカにされている状況だ。

誠は元カノに、
男として全く期待されていないことを恥ずかしく思った。


「それじゃあ、いきますよ?」

「うん……いいよ……」


誠のペニクリが真里の手に包まれる。

この島に来る前の真里は、
誠の分身を優しく扱ってくれていた。

舐めたり、頬擦りをしたり、実に嬉しそうにしてくれていたのだが、今の真里は真顔で事務的にしごくだけである。

まるで射精介助サービスのような対応。
そこに愛情など、ひと欠片も存在しなかった。

真里の心は、完全に離れてしまったのだ。

それがハッキリと分かり、
誠は絶望の淵から、突き落とされたような気持ちになった。


「気持ちいいですか?」


笑いもせず、真里は言う。少し機嫌が悪そうな表情だ。
冷たい真里の呼びかけに、誠は萎縮した。


(真里さんがこんな風に接してくるだなんて……)


誠のペニクリが徐々に勃起力を失っていく。
彼女が望んでもいない手コキをされて、気持ちよくなれるはずがない。

誠のちんちんは、
真里の手の中で、くたっとしおれてしまった。


「わたしが触ったからですか?
こんなにフニャフニャになっちゃって……」


真里が軽くため息をついている。
やはり自分ではダメなんだと再認識している様子だ。

このままじゃいけない。
彼女の反応を見て、誠は危機感を持った。


(くっ……卑怯だけど、もうこの方法を使うしかない)


誠は前立腺に触れている男性器に意識を向けると、
お尻の穴をキュッ♡と締めた。

アナルの中で一物が動き、前立腺を刺激する。
それにより、萎えていたペニクリに血液が集まり出した。

これなら勃起できる。

真里を騙すことになるが、
手コキで感じてるふりをして、男性器でイクことにしよう。

誠がそのように考えた、その時であった。


「やっぱり誠くんが気持ちいいのは、こっちなんですね」


真里の手がペニクリから離れる。
彼女は、誠の腰に手を添えると、男に視線を送った。

〖腰を振って、誠のアナルを突いて欲しい〗

男はアイコンタクトで真里の意図を読み取ると、
コクリと頷き、腰を振り始めた。

誠の全身が上下に揺れ、肉竿が菊門に突き刺さる。


「うぅっ! あぁっ!♡ アァーーー!♡」


ちょうどアナルに意識を向けていたこともあり、
誠はホモセックスの快感を、真正面から受け止めてしまった。

それにより萎えていたペニクリは、
一気に硬さを取り戻してしまう。


「うわ、はやっ!」

「誠くん……すごい……」


いくら男性と相性が良いと言っても、
ここまで極端な反応を見せるものだろうか?

女性の手コキで萎えて、
男性のひと突きで、一瞬で元気になるペニクリ。

こんな性器を持つ人をホモと呼ばずになんと呼ぶのか?

疑いようのない同性愛者としての素質に、
真里も萌も、ただ呆れるばかりであった。

そして次の瞬間。
真里の彼氏としての立場は終わりを迎えた。


(あっ! だめっ! でちゃうっ! でちゃうっ!
今はダメッ! やめてっ!! いやっ!!!)


ぴゅるっ!♡


抵抗むなしく、先端から透明な愛液が放たれた……。


「あ……あああ……」


やってしまった……。

ノンケを証明するはずが、
逆にホモを証明する結果となってしまった。

約束をした以上、真里とは別れなくてはならない。


「誠くん……約束ですよ。これで別れてくれますね?」

「あぁぁ……あぁぁぁ……」


誠は憔悴して涙を流している。
とても真里の問いに答えられる状態にない。

しかし、真里はそんな誠に冷たく言い放った。


「泣いて誤魔化さないでください。
私は萌を愛しています。
これ以上、付きまとわないでくださいね」


今までで、一番厳しい絶縁宣言だ。

恋人関係の解消ではなく、
人間関係そのものを断つといった言い方である。

真里は後ろを向くと、ベッドに戻っていった。
その様子を見ていた萌が、男に言う。


「はい、これ。
その子を連れて、他の場所で続きをしてくれる?」


萌は財布から万札を取り出すと、男に手渡した。


「他って、どこだ?」

「できれば、他の部屋でして欲しいな」

「それは無理だな。ホテル側の許可が必要だ。
風呂を使わせてもらえれば、そっちに移動するが?」

「あーそうだね。じゃあ、それでお願い。
時間いっぱいまで出てこないで、
それと、その子が今のことを忘れられるくらい、
気持ちよくしてあげてね」

「わかった。全力を尽くそう」


男は、誠の足枷と手首の縄を外すと、
彼を抱えて浴室へと入っていった。


※※※


萌がベッドに戻ると、真里は無言で俯いていた。


「マコトちゃん、いなくなったよ」

「そっか……」


しばらくして、真里の身体が小刻みに震い始める。
真里は両手で顔を覆って、泣き始めてしまった。


「誠くん……ごめんなさい……」

「よく頑張ったよ……真里」


心を鬼にして、誠を突き放すのは、
彼女にとって、心底、辛いものであった。

しかし、これくらい言わないと彼は諦めてくれない。

自分がそばにいることで、誠が幸せになれないのなら、
いっそのこと、縁を切ってしまおう。

真里は誠が男の元へ走れるよう、
あえて悪女を演じていたのだ。


「やり過ぎだったんじゃないかな……」

「ううん……あれくらいしないと、
諦めてくれなかったと思うよ」


誠は異常なほど、しつこかった。

彼が真里によって、後催眠を掛けられていることを知らない二人からすれば、呆れるほどしつこい相手であった。

不幸にも真里の掛けた催眠は、小早川から身を守るだけでなく、誠自身を傷付ける結果となってしまっていた。


「……ある程度、落ち着いたら、謝りにいこっか?
真里も完全に縁を切るほど、
マコトちゃんのこと、嫌ってるわけじゃないんでしょ?」

「うん……」


本当は女友達として、これからも仲良くしていきたかった。

別れたとは言え、
真里は誠の人格そのものは、好きなままであったのだ。

そのように誠の話をしていると、浴室の方で怒り声がなった。


「何してやがるんだ、てめーー!!!」


デリバリーヘルスの男の声だ。

何事かと浴室に向かうと、
そこには、首から血を流している誠の姿があった。


※※※


浴室の床で、倒れる誠。
傍らには小さなカミソリが落ちており、
刃先に血液が付着していた。

デリバリーヘルスの男は、
そんな誠を苦々しく見つめている。


「誠くん!! 誠くんっ!!」


真里は誠に駆け寄り、慌てて彼の名を叫んだ。
肩を叩き、全身を揺さぶってみる。

一方、萌は一緒にいた男に事情を尋ねた。


「何があったの!?」

「俺が少し目を離した隙に、
そこにあったカミソリで首を切りやがったんだ」

「!?」


自殺だ。
誠は真里に絶縁されたショックで、自殺を計ってしまったのだ。衝撃の結果に、萌は肩から崩れ落ちる。


「うそ……こんなことになるなんて……」

「誠くん! お願い! 目を覚ましてっ!!」


真里はなおも必死に呼びかけている。
しかし、誠はピクリとも反応しない。


(真里……目がおかしくなってる)


誠を失ったショックからか、
真里は徐々に冷静さを失い始めていた。

このままでは真里がおかしくなってしまう。

そう思った萌は、真里をフォローしようと立ち上がった。

すると隣にいた男から、呼び止められる。


「ちょっと待ってくれ」

「?」


プシュュュュューーー!!

呼びかけに応じて、振り返る萌であったが、
男の持っていたスプレーによって、眠らされてしまう。

男、鮫島はニヤリと笑うと、外にいる黒服達に合図を送った。

数十秒後、小早川が現場に駆けつける。


「キャアアアアアアアアアアアア!!
マコトちゃんっ! なんてことッ!
はやく医者を呼びなさいっ! はやくっ!」


小早川が叫ぶと、
黒服達が一斉に浴室に入り、誠を持ち上げてしまった。

突然の乱入者に真里は驚く。
連れ去られる誠を見て、彼女は慌てて立ち上がった。


「あなた達、誰ですか!?
誠くんをどうするつもりですか!?」

「こんのっ! くっそアマっ!!」


小早川が、思い切り真里を殴り付けた。

拳が頬に命中し、
血塗れとなった浴室内に、真里は倒れ込んだ。


「な……なにをするんですか……!?」


突然やってきて、いきなり殴られて、意味がわからない。
真里は泣きながら、小早川を見た。

それを受けて小早川は顔を歪ませ、般若のような顔で言った。


「クソ女に、制裁を喰らわせてやったのヨ……」

「制裁って何……?」

「今、思い出させてやるワ」


パチンッ!


小早川が指を鳴らすと、真里はすぐさま全てを思い出した。


「あ……あぁぁぁ……ああぁぁぁぁぁっ!!」

「これで分かったでしょ? 何が起きたか」

「そんな……そんなぁ……」

「ショックを与えすぎてしまったんだワ……。
アタシは、ただニューハーフになってくれれば、良いだけだったのに……これじゃあ、完全に失敗ヨ……」


小早川は、うなだれ号泣している。

真里は理解した。今までのことは全て、
小早川が自分達を嵌めるために仕掛けた罠だったことを。

そして小早川の反応を見る限り、予想外のことが起きて、
誤って誠を死なせてしまったのだ。

最悪の結末に、真里は堪らず天井を見上げた。


「なんでアンタ、ちゃんと見張ってないのヨ!
あんな凶器が置いてあったら、警戒するでしょ、普通!」

「すまねぇ……まさか誠があそこまで追い詰められていたとは、思わなかったんだ。その女の責め方がうますぎたようだな……」


鮫島がそう言うと、小早川は真里の首根っこを掴んだ。


「アンタが殺したのヨ! アンタがマコトちゃんの心をズタボロにして、自殺に追い込んだんだワ!」


自分が催眠を掛けていたことなど棚に上げて、
ひたすら真里を罵倒する小早川。

真里は責められるたびに平常心を失っていった。


「わ……わたしのせい……誠くんが死んじゃったのは、
すべてわたしの……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うるさいわネっ! 泣けば許されると思ってるの!?
あんなに泣いているマコトちゃんに、
よく〖付きまとわないで〗なんて言えたわネ!
この鬼! 悪魔ッ!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
わたしはなんてことを……なんてことをっ!!」

「どんなに泣きわめいたところでマコトちゃんは、
戻ってこないワ! この人殺し……!!
少しでも悪いと思うなら、死んで償いなさいヨッ!!」

「し……死んで……償う……?」

「そうヨッ! 死んで、マコトちゃんに謝るの!
それくらいしなきゃ、償えないでしょ!」

「し……死にたい……しなせて……しなせ……て……」

「死ぬなら、帰ってから死になさい。
せめてもの情けヨ。
マコトちゃんとの思い出が残った場所で死なせてあげるワ。アタシにこの場で殺されないことを感謝しなさい……」


パチンッ♪

真里は全ての生きる希望を失い催眠状態に入った。


※※※


それから数分後。
黒服達は、部屋の掃除を行っていた。

誠の身体は綺麗に洗われ、新しい服を着せられている。
本人はいたって健康だ。

彼の身体に付いていた血糊、切り傷などは、
全て鮫島が仕込んでいたものだった。


別れを告げた後、女はかならず誠の退去を求めてくる。
それを予想して鮫島は、各所に誠の自殺を偽装するアイテムを用意していた。

浴室に誠を運んだ彼は、
洗面台に用意していた催眠スプレーで誠を眠らせ、
精巧に出来た切り傷シールを誠の首に貼り付けた。

そして血糊に見せた液体を、
浴室内にばら撒いていたというわけだ。

あとは注意深い萌を眠らせ、
冷静さを失った真里を追い詰めれば完了となる。


《うまくいったね。これで誠はキミのものだよ》


メアは満足そうに、小早川の功績を褒め称えていた。


(思ったより殺しも大したことないわネ)

《邪魔なやつはさっさと殺しちゃえば良いんだよ。
真里だって、めんどくさいことせずに、すぐに殺しちゃえば良かったのに》

(こっちにも事情というものがあるの。
この島で殺したら、色々と面倒なことになるワ。
自殺させれば、こっちに疑いの目が来ることはなくなるの)

《ふーん》

(ところでマコトちゃんは、これで本当に堕とせるんでしょうネ?)

《大丈夫、帰ったらすぐに堕としてあげるよ》


真里との別れを認めた誠であったが、
それで彼の心が真里から離れたとは言えなかった。

別れても真里のことを想い続ける可能性だってある。
異常ともいえる真里への執着心に、小早川は警戒していた。


(とりあえず黒き書に任せましょ。
細かいことは、休んでからにするワ)


催眠が終わり、
真里はそのまま空港へと移送されることとなった。

自宅に戻れば、彼女は自ら命を断とうとするだろう。
誠のいないあの世へと旅立つために……。