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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.111 【 チャット◇ 】

食事を終え、萌の部屋に戻った真里は、
誠に電話をかけていた。

しかしこれまで同様、電話は繋がらず、
むなしく発信音が鳴るだけであった。


「やっぱりダメ、マナーモードにでもしてるのかな?」

「とりあえずチャット送ってみたら?
気付いたら返事くれると思うよ」

「わかった。送ってみるね」


真里は慣れた手つきで文章を打ち始めた。


MARI:忍くんと萌のことで話があります。
MARI:気付いたら返事ください。


打ちながら、真里は思う。

昨日からずっと連絡してるのに、
なぜ誠は返事をよこさないのかと。

何かあれば、連絡する手筈だったはずだ。
それなのに、忍と遊園地に来てることすら、話してくれなかった。

忍への接し方といい、これまでの誠の対応に、
真里は言いようも知れぬ不安を感じていた。


「二人とも今頃何してるんだろうね?」


真里のそうした心中を知ってか知らずか、
思ったことを口にする萌。

彼女は窓際の席で、
先ほどコンビニで購入したプリンを食べていた。


「まだ遊んでるのかも?」

「うーん、もう遅い時間だし、
ホテルに戻って来ているころだと思うけどね」


もしかしたら忍の部屋にいるかもしれない。

二人でエッチなことをしている可能性もあったが、
このまま萌と突入するのもありだと思った。

今の萌なら、二人の浮気を見ても大丈夫なはず。

結果、どうなるか分からないが、
このまま隠し立てをするより、お互いに思っていることを話し合った方がずっと良いはずだ。


「萌、忍くんの部屋に行こう。
戻ってきてるなら、会って話した方が良いし」

「んー? 良いよ。そうしよっか」


萌は軽く返事する。

別に会いたくもない忍だが、真里と付き合えるなら、
そのような小さなことなど、どうでもよかった。

部屋で忍と誠が何をしてようと、仲直りして、
真里との関係を認めさせれば良いだけだ。

そうして二人に許可を貰ったら、
あとは堂々と真里とエッチして、
男性との恋愛やSEXに興味を失わせてあげれば良いだけなのだ。

男性への興味を失い、一途に自分を見つめてくれる真里を想像して、萌は少しだけ、身体を熱くさせた。

そうして出掛ける準備を進めていると、
真里のスマホに着信が入った。


《チャクシンガ、キタヨ♪》

「あ、誠くんからだ」


すぐにメッセージを確認する。


MAKOTO:良いよ。私もそのことで話があったんだ。


浮気の話だろうか?
何か含みのあるメッセージに、真里は少しだけ緊張した。


MARI:萌から聞いて、色々と分かったことがあります。
MARI:直接お話したいので、萌の部屋まで来ていただけますか?

MAKOTO:今、合流は無理かな。
MAKOTO:このままチャットで済ませても良いかな?

MARI:できれば会ってお話ししたいです。
MARI:今どちらにいらっしゃいますか?
MARI:誠くんが来れなければ、こちらから行きます。

MAKOTO:実は今、忍くんと食事してるんだ。
MAKOTO:まだ食べ始まったばかりで、急いで食べさせるのも悪いと思って。


食事中なら仕方がない。レストランでする話でもないため、一旦会うのは、諦めることにした。

しかし真里は安心したかったので、すぐに例の質問をすることにした。


MARI:わかりました。
ではこのままチャットでお聞きしますね。

MARI:実は先ほど、遊園地で誠くんと忍くんがキスしてるのを見たのですが、あれは一体どういうことですか?


誠ならすぐに納得のいく答えをくれるはず。
そう思って聞いたのだが、それから誠の返事はなかった。


(なんで返事くれないの? まさか本当に……?)


不誠実な対応に、真里の不安が積もる。
その間、萌は待ちくたびれてお風呂へと行ってしまった。

一人だけとなった部屋で、
じっと画面を見つめ、時間を過ごす真里。

しばらくして脱衣場の扉が開き、
隙間から萌が顔を覗かせた。


「ねぇ真里、返事遅くなりそうだから、
それまで一緒にお風呂、済ませちゃおうよ?♡」


少し悪戯な表情で誘っている。

これは応じたら、
エッチなことをされてしまうパターンだ。

真里は萌の愛撫を思い出し、
少し身体をモジモジさせたが、断ることにした。


「ダメ、そんなことできないよ」

「ただ一緒にお風呂入るだけだから良いじゃん♪」

「絶対エッチなことになるからダメ。
同性でも浮気は浮気なんでしょ?」

「そんなことしないよ。真里が我慢できなくなってしまうのは、あるかもしれないけど?」

「……っ」


あながち否定もできなかった。
女同士の快感に目覚めたばかりの真里の身体は、
貪欲(どんよく)に萌の身体を求めていた。

あんな狭い個室で、裸の女が二人きり……。
何も起きないはずがなく……。

真里は慌てて妄想をかき消すと、改めて断った。


「と、とにかくっ……
ダメなものはダメ! 一人で入って!」

「はいはい、したくなったらいつでも来てね♡」

「もぅ……」


こんな短いやり取りなのに、
真里の股間は、すっかり熱くなってしまっていた。


(はぁ……なんだかんだ萌の方がよくなっちゃったな……)


誠とは、話をするだけで、
ここまで身体が熱くなることはなかった。

萌とセックスして、初めて知った女同士の快感。
それは誠では、決して得られない、
深く浸透するような快感であった。

次に誠とエッチしたら、
自分は素直に感じることができるだろうか?

萌のことを思い出して、
比較してしまうようになるかもしれない。

真里は、誠との性生活に不安を抱くようになっていた。

それから少し経ち、誠から返事が届く。

歯を磨いていた真里は、口を濯ぐと、
ベッドで横になり、メッセージを確認した。


MAKOTO:真里さん。言いづらいことなんだけど……。
MAKOTO:私やっぱり、女の人より男の人の方が良いって気付いたの。
MAKOTO:だから別れて欲しい。私、忍くんと付き合うことになったんだ。ごめんね。


(えっ……?)


突然の別れの言葉に、真里は固まってしまった。

じっと画面を見つめ、文字を繰り返し読む。
そこに書かれている内容を理解するのが怖くて、彼女の手は震えていた。

カタカタカタと、歯と歯が当たる。
手の震えが全身に広がり、真里はガバッと起き上がった。
まずは落ち着かなくては……目を瞑り、深呼吸する。

真里は改めてスマホに向き合うと、
努めて冷静にメッセージを返すことにした。


MARI:待ってください。話が急すぎます!
MARI:どういうことなんですか?

MAKOTO:今まで黙っていたけど、実はずっと我慢してたの。
MAKOTO:私、本当は男の人が好きなのに、真里さんと無理して付き合ってた。
MAKOTO:でも忍くんと出会って、彼に抱かれて、自分がどうすべきか気付いたの。
MAKOTO:真里さんとはここで終わりにさせて欲しい。


(そんな……うそ……
誠くんがそんなことを思っていただなんて……)


相思相愛だと思っていた彼から告げられたあまりにも残酷な告白。真里のスマホの画面は、涙で濡れていた。

真里は自分の想いが、これまで一方的だったことを知らされ、大きなショックを受けていた。誠への想いが強かったこともあり、その衝撃は計り知れない。

彼女は画面を布団の端で拭き、返事をした。


MARI:嫌です。別れたくありません。
MARI:ダメなところは直すので、捨てないでください。お願いします。

MAKOTO:そういう強引なところが嫌なの。
MAKOTO:真里さんは、一方的に気持ちをぶつけるだけだから楽だったろうけど、受けとる方は大変だったんだよ?
MAKOTO:今まで傷付けないようにしてきたけど、もう限界。
MAKOTO:私は男の人が好きなの。これ以上、私に付きまとわないで!!


「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


辛辣な言葉の数々に、ついに真里は絶叫する。

我慢していた気持ちが、一気に崩壊した形だ。
彼女の心はズタズタに切り裂かれていた。

そんな真里の叫びを聞いて、
入浴していた萌は、慌てて浴室から飛び出してきた。

彼女は、濡れた髪はそのままに、
タオルを身体に巻いて、すぐに真里の元へとやって来た。


「どうしたの、真里?」


真里はベッドに顔を付け、身体を丸めて蹲(うずくま)っていた。そして声にならない声を上げて泣いていた。

彼女の斜め前には、スマホがある。
画面には、チャット欄らしきものが見えた。

真里が泣いている原因が、
誠の返信にあるのではと思い、萌は読んでみることにした。


「なにこれっ!?」


そこに表示されていた、あまりにも身勝手な言い分。
真里の絶叫の理由を知り、萌は怒りに顔を歪ませた。


(浮気した分際で、なんという言い草。
しかも何もかも真里のせいにして……許せないっ!!)


思わずスマホを床に叩きつけそうになったが、
真里のだったので止めることにした。

それより心配なのは真里だ。萌はひとまずタオルで髪を拭くと、すぐさま彼女に寄り添った。


「真里、大丈夫……?」

「私は……誠くんの気持ちも考えないで……なんてことを……」

「違う……それは違うよ……」


誰がどう見ても非があるのは誠の方だ。
真里は、ありもしない自分の非を責めていた。

そんな彼女をあまりにも不憫に思った萌は、
精一杯、慰めようとした。


「真里は何も悪くないっ!
こんなひどいことされて……悪いわけがないよ!」

「でも……私が強引じゃなければこんなことには……」


真里は、なおも自分を責めたてている。
いたたまれなくなった萌は、彼女を抱き締めた。


「……っ!」


真里は萌の抱擁から、咄嗟(とっさ)に逃れようとした。
誠への自責の念が、萌を拒否しようとしていた。

しかし萌は真里を離さなかった。
こうして傷付き、ボロボロになった彼女を癒してあげられるのは自分だけだ。

その想いから、萌は説得を続けた。


「離れちゃダメ……今のあなたには私が必要なの……」

「やめて……萌」


誠にこんなことを言われたのは、きっと彼の了解も得ずに、萌といたしてしまった自分への天罰だ。

真里は萌とセックスしたことを後悔していた。

だがどんなに抵抗されても、萌は引き下がらなかった。

真里はありもしない罪に囚われている。
あんな男に意識を向けてはダメだ。

萌は真里の心を、誠から解放しようとしていた。


「あなたには私がいるから……私は絶対にあなたを裏切らないから……だから彼のことは忘れて……!」

「ああああぁぁぁ……あっあっあっ……」


捨てられた子猫のように震える彼女。
萌は優しく真里の背中をさすった。


(こんなに真里が愛しているのに、
その想いを、肥溜めに棄てるかのように扱って……
あのオトコ女っ……絶対に許せないっ!!)


愛する忍を寝取られ、愛する真里を傷付けられ、
萌の誠への怒りは頂点に達しようとしていた。


(真里の心を、あいつから解放しなくちゃ……)


誠への想いが真里を傷付けている。
自分が忍を信じ、傷付けられたように……。

萌は真里のYシャツのボタンを一つずつ外し始めた。

真里の背中をさすりながら、
もう片方の手で器用に外していく。

強引な方法だが、
真里を誠から解放するには、身体で愛し合うしかない。
真里の心を自分で埋めて、誠が介入する隙をなくしてやるのだ。

全てのボタンを外し終えた萌は、
真里のYシャツを肩から外し、そこでキスをした。


「んっ……ちゅ……んんっ!!」


キスをされたことに気付き、硬直する真里の身体。

真里はこんな状況で、
不埒な行為を始めようとする萌に憤慨した。


(ダメだって言ってるのに、なんでこんなことするのっ!)


刺すような視線を萌に向ける。
真里は何度言っても分かろうとしない彼女に、苛立ちを隠せなかった。

萌が抵抗する真里を抑えつけ、キスの合間から舌を差し込むと、真里は不快感をあらわにした。


(もう許せないっ!)


強引な萌の所業に、ついに真里はブチキレる。
咄嗟に彼女は萌の舌に噛みついた。


「んんっ!」


萌が悲痛な叫びを上げる。

だが彼女は舌を引かせようとはせず、
ギュっと目を瞑って、痛みに耐えるだけであった。


(……っ! なんで引かないの……?)


この反応に、真里は戸惑った。

噛めば、すぐに舌を引き下げると思っていた。

まだそれほど強く噛んでいないからだろうか?
真里は徐々に噛む力を強めていった。


「ん……んん……!」


萌は泣きそうな声を洩らす。
もしかしたら、このまま噛み千切られるかもしれない。
そんな恐怖が萌を包み始めていた。

だがそれでも萌は、引かなかった。

生半可な覚悟では、真里の気持ちを動かすことはできない。
誠から自分に意識を向けさせるためにも、ここで決意を見せる必要があったのだ。


(早く抜いてよ……。
私だって、こんなことしたくないんだから……)


噛む力を強める度に、
萌の悲痛な叫びが、唇の隙間から聞こえてくるようだった。

真里が辛そうにしていると、萌が後頭部を撫でてきた。

驚いて萌を見ると、彼女は目元を濡らしながらも、
慈しむような目を向けていた。


(萌……どうして……)


そこで真里は、ようやく萌の想いに気が付いた。

萌は自分の方に気を引いて、
少しでも誠のことを考えないようにさせてくれたのだ。

真里は噛む意志をなくし、萌の舌を解放することにした。
同時に身体の力も抜けていくようだった。

抵抗力を失ったことで、
萌の舌が、自身の舌に絡み付いてくる。

少し血の味がするディープキスだった。

あれほど強く噛んだのだから、怪我をしていてもおかしくはない。真里は自然と、萌の舌を心配するようになっていた。


ん……ちゅぱ……れろ……れろ……


舌が触れて、萌の舌が傷付いているのが、なんとなくわかった。

真里がいたたまれなくなって、
その傷口と思われる部分を舐めると、萌は唇を離して言った。


「ありがとう、真里。受け入れてくれて……」


自分をこんなに好いてくれてる相手を傷つけてしまうなんて……真里は萌に謝ることにした。


「ごめん……私、振られて気が動転してたのかも……。
舌、大丈夫だった?」


真里がそう言うと、萌はにこやかに笑った。


「これくらい真里が傷付いたのに比べたら、なんともないよ。それに噛まれても仕方ないくらい、強引なことしちゃったからね……。真里はぜんぜん悪くないよ」


親友の受け答えに、思わず別の涙が流れそうになる。
そんな真里の目をじっと見つめ、萌は言う。


「真里……私はここで止めるつもりはないからね?
真里は私の彼女になるの。
今までの嫌なこと、全部忘れさせてあげるから」


萌が真里のTシャツの裾を掴んで捲りあげようとする。


「今度は抵抗しないでね」


あらかじめ釘を刺され、萌の行動を消極的に受け入れる。
Tシャツが両腕をすり抜けていった。

ブラのみとなった真里の身体を、萌はゆっくりとベッドに寝かせた。


「このまま身を任せて」


萌の目は、これまで見たことがないほど優しい目をしていた。その目に、真里の胸はキュンと締め付けられる。


(どうしよう……無理矢理されそうになってるのに、なんだかすごく優しくて温かい……。
このまま受け入れてしまったら、本気で萌のこと好きになっちゃうかも……でも、そしたら誠くんとは……)


先ほどのことを思い出し、チクリと胸が痛む。
誠はもういない。その現実に胸が押し潰されそうになった。


「うっうっううぅ……あぁぁぁ……」


再び涙が込み上げてくる。
お腹の辺りにきゅっと締め上げるような痛みが走った。

そんな真里を見て、萌がギュっと真里の手を握ってきた。
手のひらを合わせ、指と指を絡ませ合わせている。

手のひらを通じて、萌の愛情が伝わってくるようだった。

真里はすがるような気持ちで、
もう片方の手を差し出してしまった。

求めに応じ、つながるもう一つの手。
萌は軽くキスをすると、真里に伝えた。


「今だけでいいから、あなたの心を私に向けて」


心の傷に染み渡る優しい声色。
そのあまりの安らぎに、真里は小さく頷いてしまった。


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