2ntブログ

霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.110 【 説得 】

空が暗くなり、街の灯(あかり)が煌めき始める頃。
真里と萌はホテルの自室に戻っていた。

真里は萌を落ち着かせるため、
遊園地で購入したカモマイルティーを淹れ始める。

萌は机をじっと見つめ、
暗くぼんやりとした表情で椅子に座っていた。

机の上にカモマイルティーを置き、心配そうに声をかける。


「とりあえずこれ飲んで落ち着こ」

「ありがとう……」


萌の落ち込み具合を見て、その心情を察する。
本当にどうでも良い男なら、このような反応はしないはずだ。
萌の中には、忍を想う気持ちが、まだ残っていたのだ。

忍と別れた時のことが、萌の頭に甦る。

「信じて欲しい」と伝える彼を見捨てて部屋を出てきたが、
その時、全く迷いがなかったとは言いがたい。

そんなものなければ、
こうして不快な思いをしなくても良かったのに……。

萌はそうした己の認識の甘さに、内心悔し涙を浮かべていた。


(何が信じて欲しいだ。
マコトに気が向いてる癖に、いい加減なことを言うな)


萌は一口、茶を飲むと、
気持ちを切り替えることにした。

自分には真里がいれば良い。

小早川の催眠を受けても、
なおも消えずに残っていた忍への想いを、
彼女は努めて消そうとしていた。

そんな萌に、真里が申し訳なさそうに語り掛ける。


「ごめんね……まさかこんなことになるなんて思わなくて……」


自分がしたことではないが、
誠があんなことをしたからには、代わりに謝らなくてはならない。
真里は精一杯、萌に謝罪した。

そんな真里に、萌は表情を和らげて言う。


「ううん、真里は全然悪くないよ。
真里は何も知らなかったんだから……」


悪いのは、全てマコトだ。
真里が謝る必要なんてない。

こんなお人好しの真里を騙して、友達面するなんて最低の女だ。
萌は改めてマコトを軽蔑した。

そんな萌の反応を見て、真里は尋ねることにした。


「忍くんと何があったか教えて」


萌は、目を閉じて考える。

本当は帰るまで、このことは黙っておくつもりだった。
しかしあの現場を見られたからには、もう話すしかないだろう。萌は渋々、事情を話すことにした。


「わかった、話すよ。
私が忍と喧嘩したのって、浮気が原因だったんだ。
浮気相手はマコトちゃん。
真里が気にすると思って黙ってたの……」

「!!?」


それを聞き、真里は目を丸くさせる。

萌がおかしくなったのは、三日くらい前からだ。
その時から、誠は忍とキスやら何やらしていたということだろうか?

にわかには信じがたい話だ。
しかしそれを聞いて、真里が悲観することはなかった。

むしろ……


(いやいやいやいや、あり得ないでしょ!?
つまり誠くんは、忍くんとホモエッチしてたってことだよね? うほっ♡マジでっ?♡ もっと詳しく聞きたい……♡)


もしかしたら今この時も、
二人はベッドでニャンニャンしているかもしれない。

不謹慎ではあったが、
萌の証言に、真里は興奮してしまっていた。

そんな真里を見て、萌は訝(いぶか)しげな表情を見せる。

なぜ真里の表情は、ほころんでいるのか?
まるで二人の浮気を喜んでいるかのような顔だ。

萌から発せられる微妙な空気に気が付いた真里は、冷静さを取り戻す。


(そうだ。今こそ言わなきゃ。
言えば、萌の気持ちも、きっと変わるはず……)


誠が男であると聞けば、
萌は喜んでくれるかもしれない。

いや、喜ばないはずがない。ぜったいに喜ぶ。
同じ腐女子としての確信が、真里にはあった。

そうした明るい予測を胸に、真里は打ち明けることにした。


「ごめん、私も実は黙ってたんだけど。マコトちゃんって、女装した誠くんなの!」

「はあ……? 何言ってるの……?」


困惑した表情を見せる萌。
彼女は高校時代の誠を、思い浮かべてみた。
……今のマコトとは、どうしても結び付かない。

腕を組み難しい顔をする萌に、真里は続けて言う。


「今、証拠を見せるから待ってて」


真里は急いでスマホを取り出し、写真フォルダを開いた。

それを見て、どれを見せるか悩んだが、
彼女は取って置きの逸品を見せることを決めた。


「ほらこれ、女装した誠くん。ここにおちんちんあるでしょ? マコトちゃんは男なの!」


スマホの画面に映ったマコトは、
真里の下着を身に着けていた。

水色のブラとショーツ。
その以外は、少女のような色白の肌が見える。

四つん這いになり、ショーツをずらして、
その幼気(いたいけ)な後ろの穴とペニクリを晒していた。

それは紛れもなく、真里のペニスバンド(性剣X凸バー)を心待ちにする誠の姿であった。

真里以外は決して見せてはならない門外不出の写真。

誠がこのことを知ったら、
恥ずかしさで卒倒してしまうであろう。
だがこれで誤解も解けて、万事解決となるはずだ。

真里は、そう思っていたのだが……。


「そっか……なるほどね。
誠くんは、真里を裏切って忍を取ったわけだ。
ならこれで気兼ねなく付き合えるね。
このまま誠くんとは別れて、正式に付き合っちゃおうよ?」

「え……?」


萌の意外な反応に真里は絶句する。
あれほど腐っていた親友が、BLのことにはいっさい触れず、誠と別れるように言っているのだ。

親友のあまりの豹変っぷりに、
真里は開いた口が塞がらなかった。

こんな美男子二人がキスしていたら、萌なら興奮しないはずがない。ましてや連結していたとなれば、最高のオナネタというものだ。

これまで苦楽を共にしてきた腐女子仲間としては、
信じられない反応であった。


「えっ……私の話、聞いてた?
誠くんと忍くんは男同士なんだよ!?
BLだよ! 一体どうしちゃったの?」


真里は本気で心配している。
萌はマッドサイエンティストに捕まり、ロボトミー手術をされてしまったのでは?
というくらいの驚き具合である。

しかしそんな真里に、萌は淡々と述べた。


「BLでも浮気は浮気だよ。誠くんは忍と浮気した。
私と真里の両方を裏切ったの」


萌はBLへの関心を失っている。
忍と誠のBLなど、彼女にとっては、もはや何の価値もないものであった。

そしてマコトが誠であることを知り、
彼女の勢いは一気に増してしまった。

真里との今の関係は、一時的なものに過ぎない。

誠が認めてくれなければ、
容易く解消されてしまうような脆い関係である。

しかし、マコトが誠であるなら話は別だ。

マコトは忍と浮気している。

真里はまだ、このことをあまり気にしていないようだが、
これを深刻な浮気問題としてしまえば、自分への同情心もあいなって、誠から心が離れる可能性がある。

萌はこの問題をチャンスと捉えていた。


「真里、私つらいよ……。
忍のこと好きだったのに、あんなひどい奪われ方されて」


目を両手で多い、泣きそうな表情を見せる。
萌は同情を引くため、あえて大げさに演技した。


「それはその……なんでそんなことしちゃったんだろうね……」


真里が気まずい反応を見せる。
萌がこのように捉えるのであれば、このまま同じテンションでいくわけにはいかない。


「誠くん、女みたいな見た目してるし、
本当は男が好きだったんじゃない?」


半分、当たっている。
大学に入学したての頃、誠は男が好きだと公言していた。
付き合い始めた頃も、女性とのキスに違和感があると言っていた。

でもだからといって、他人の彼氏を奪う人ではないはずだ。
冷静に考えて、ひとまず真里は、誠を庇うことにした。


「誠くんには、何か……事情があるんだよ」

「彼女のいないところで男とキスして、
どんな理由があるって言うの?」

「それは……」

「私はあの男を許せない……。
彼女の親友から彼氏を寝取るって人としてどうなの!?」


萌の怒りはごもっともだ。
自分が萌の立場なら歓迎一色なのだが、
常識的に考えるなら、萌が正しいのだろう。

それから真里は、何度も別れるよう説得されたが、
いつまで経っても首を縦に振ろうとはしなかった。

別れたくなる理由がないので、当然の反応である。

そんな態度の真里に、萌はつい口走ってしまう。


「百歩譲って、
誠くんに私を納得させるだけの理由があったとしよう。

じゃあ私と真里の関係はどうなるの?
私とエッチして、あんなに気持ち良さそうにして……。

そんな身体の関係を許してくれるほど、誠くんは寛大な人なの? 真里がしていることだって、立派な浮気なんだよ !」

「それは……」


自分の浮気へと話がシフトし、真里は口を閉じる。

誠の浮気には寛容であったが、
自分の浮気については、そうではなかったようだ。


「たしかに私も浮気してる……」


執拗に誠の浮気を責め立てる萌を見て、
真里は同性間の浮気について、考えを改め始めていた。

思い出すのは、萌とのエッチのこと。

萌とのセックスは、
これまで経験したことがないほど、深い快感を与えてくれた。

身体を伝う、萌の指の感覚。
クリトリスや口に触れる、萌の唇の感触。
萌から発せられる愛の囁きは、
全身に恥ずかしさや陶酔感を与えてくれた。

それを経験してしまった今となっては、
誠とのセックスなど児戯に等しかった。

真里は誠が許してくれるなら、
誠と萌、両方と付き合いたいと思っていた。
そこに邪(よこしま)な気持ちが、全くなかったとは言い難い。

そんな自らの醜態さに気が付き、
真里の机の面を見つめ、とうとう泣き始めてしまった。


「誠くん……ごめんなさい……うっうっうぅ……」


真里は、誠が忍と付き合うのは歓迎であった。
愛する人のお尻が男の肉棒を受け入れた経験があるというのは、腐女子としては、むしろプラス要素であったからだ。

そんな真里だからこそ、
同じ腐女子仲間である萌の浮気発言はショックであった。

あの萌でさえ、そんな考えなら、誠はもっとだろう。
萌と付き合わせて欲しいなどと言えるはずもなかった。


「あ……真里、その……」


誠への怒りと、真里への独占欲から、
つい口走ってしまったが、
結果として真里を傷つけてしまった。

小さく咽び泣く真里の声が、萌の胸に刺さっていた。


(私……何やってるんだろう……)


思い返してみれば、
自分は誠の次に愛して欲しいと伝えていたはずだ。

だからこそ真里は"保留する"と言ってくれたのではないだろうか? それが真里にとって最大限の譲歩だったはずだ。

なのに自分はいつの間にか、それ以上のことを望んでしまっていた。そのことに気付き、萌は考えを改めることにした。


「ごめん、真里。……実は気付いてたんだ。
真里が私を助けるために、告白を受け入れてくれたってこと」

「えっ……」

「真里は、私が自首するのが分かったから、
ああいう止め方をしてくれたんだよね?
なのに浮気だなんて言ってごめん……。
卑怯だよね……真里は全然悪くないのにさ……」


本当に醜いのは自分の方だ。
萌は懺悔の念を込めて、真里にそう伝えていた。


「ううん……そうじゃないよ。
だって私、萌のこと、本当に好きになってたもん」

「え……?」

「たしかに初めは、演技のつもりだったよ。
だけど付き合ってみて、恋人としての萌も良いなって思い始めちゃって……気付いたら本当に好きになってたの……」

「うそ……マジだったの?」

「だから浮気なの。私、自分が誠くんのBLを許すからって、
誠くんも私のGLを許してくれるって考えてた。
萌の言うとおり、同性でも浮気は浮気だよね」


真里の気持ちを聞き、萌の心は揺れた。

真里が本気で自分を愛してくれていた。
それまで演技と思い込んでいた萌としては、
この上ない喜びであった。

そしてその時、萌にある考えが浮かんだ。

忍はたしかに浮気をしてしまったが、
ここでBLを浮気でないとしてしまえば、
両者公認の上で、真里と付き合えるのではないだろうか?

先ほど見た感じだと、誠は相当忍に惚れ込んでいる。

ここは一旦、二人の関係を認めてあげて、その代わり、自分と真里の関係を認めさせれば何もかも上手くいくのでは?

いずれ忍と誠の関係が進展すれば、
誠は真里に興味を失ってくれるかもしれない。

そうなれば、真里は完全に自分の物だ。

素晴らしいアイデアに、萌は心の底からときめいていた。


「あ、あ~……えっーと……
わたし、さっきは浮気って言っちゃったけど……
よく考えてみたら、そうでもないかも?」

「ううん……萌の考えは正しいと思うよ。
私、忍くんのことは、責任をもって誠くんに追及してみる。
その時、萌のことも話してみるけど、
もし誠くんがダメだって言ったら、悪いけど……」

「ちょ、ちょーーと待って! 私も取り乱しちゃったけど、冷静になって考えてみたら、男同士ってやっぱりイイナーなんて☆彡 真里は深刻に物事を考えすぎなんだよ。もっとリラックスして」

「はぁ? さっき許せないって言ってたじゃん。なんで急にそんな意見変えるの?」

「いや……なんていうか……
ほ、ほら、真里が私と関係を持ったみたいに、
誠くんにも、忍と関係を持つ事情があったのかもしれないし、お互い様ってことで良いんじゃない?」

「ダメだよ。そんなこと認めたら際限がなくなっちゃう。
やっぱり同性でも浮気は浮気だよ」

「待って、真里。落ち着いて……ね?
私は真里に好きになってもらえて嬉しいよ?
誠くんと忍もお互いのことが好きみたいだし、
好きな人が二人いてダブルでお得だと思わない?」

「なにそのファーストフードみたいな言い方……」

「とにかく、私はもう気にしてないから大丈夫。
あ、そういえば、真里、お腹空いてない?
お腹空いてると考えもまとまらないから、
ご飯食べに行こうよ? 夜、何も食べてないしさ」

「う、うん……萌がそう言うなら……」


萌にとって、真里が愛してくれるなら、
忍と誠のことなど、どうでも良かった。

依然として、男二人のことは嫌いであったが、
真里を得るため、仲直りすることにした。

真里との関係を誠に認めてもらえば、
真里は自分のものになる。

萌は真里との正式な付き合いに、心を弾ませていた。


その後、二人は夕食を取るため地下へと降り、

誠が女装していた理由や、付き合った経緯などについて、
ご飯を食べながら、楽しく会話するのであった。
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL