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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.116 【 冤罪 】

「なんでって……ここは私の部屋です」


自分の部屋に戻るのに理由などいらない。
当然の答えだ。

逆に萌が、なぜこの部屋にいるのか?
しかも裸で……。

聞きたいのは誠の方だった。


「ここはもうアンタの部屋じゃない。出て行って」


萌から放たれる攻撃的な言葉に、誠は緊張を高める。

萌とは遊園地や水族館に行った仲ではあるが、彼女がどういった人物なのか、完全には把握していなかった。

もしかしたら思い込みの激しい女性なのかもしれない。

このまま会話を続けても、
彼女の攻撃性を高めてしまうだけだ。

そう思った誠は、
萌を無視して真里に尋ねることにした。


「真里さん、どういうことなの? 教えて」

「これは……」

「真里は話さなくて良いよ。私が決着つけるから」


真里を遮り、萌が起き上がる。
彼女は布団から出ると、棚からバスローブを2枚取り出し、片方を真里に渡し、自らもそれに袖を通した。

そして真里と誠の間に入るように座ると、話し始めた。


「私が言いたいのは、あんなチャットを真里に送って、
今さら何しに戻ってきたんですか?ってことです」


先ほどと違って、冷静に話している。
口調も敬語に戻ったようだ。


「チャットってなんのことか分からないんだけど……」


真里に、そこまでおかしなチャットを送った記憶はない。
困惑した顔で、誠は言う。

萌は、誠がとぼけたふりをしていると思い、
顔を顰(しか)めた。


「私は真里と一緒にいたので、知っています。

あんなチャットを送って、
真里がどれほど傷ついたか、あなたに分かりますか?

今だって忍とセックスしてきたんでしょ?
臭いで分かりますよ? 桐越先輩」

「!?」


なぜ萌がそのことを知っているのか?

桐越誠と同一人物であることは、
真里が話したと思われるので、驚きはしなかったが、
忍にレイプされたのは、つい先ほどの話だ。

誠は萌がそのことを言っているのだと思いうろたえた。

もちろん萌は、レイプされたことを言っているのではなく、同意の上でセックスしてきたと思い込んでいるだけなのだが。


「なんで知ってるの?」

「真里から聞きました。
あなたが桐越先輩で、真里と付き合っていたこともね」


誠の質問を、桐越先輩と呼んだことについて言及していると思い、萌はそう答えた。

彼女は立ち上がると、
テーブルの椅子を引いて誠に座るように言った。


「桐越先輩、精子の臭いで鼻が詰まるので、
こっちに座ってください。不快です」


レイプされたと知っていて、こんな態度を取るのか。
これには、さすがの誠も腹を立てた。

しかし臭いと言われてまで、近くにいるつもりはない。
誠は萌に言われるまま、椅子に座った。


「先輩、もう一度聞きますね。
なんでここに戻ってきたんですか?
あ、荷物だったら忍の部屋に運びましたよ。
私も鍵持ってたので、今日のうちに運んでおきました」

「なんでそんなことするの!」


レイプした男の部屋に荷物を運ぶだなんて、
どういう神経をしているのか。

誠には、萌の行動が信じられなかった。


「当り前です。誰が元カレの荷物を残しておきたがりますか? それにどっちみち、運ぶ予定でしたよね? 手間が省けて良かったじゃないですか」

「元カレ? それに運ぶ予定ってどういうこと?」


質問に質問で返す誠に、萌はイライラし始める。

これ以上話しても埒(らち)が明かないと思い、
彼女は改めて退室を促した。


「真里にとって、あなたは元カレです。
もうここに用はないでしょ? 忍の部屋に帰ってください」

「帰りません……さっきも言ったように、ここは私と真里さんの部屋です。あなたこそ、なんで私が忍くんに何をされたか知ってるんですか? 説明してください」

「だから、さっきチャットを見たって言ってるじゃないですか。まさか自分で何打ったか、覚えてないとでも言うんですか?」

「じゃあ、そのチャットを見せてください」


萌の言っていることは意味不明だ。
なんだか話が、微妙に食い違っているように思える。

誠はひとまず問題のチャットを見せてもらうことにした。

萌は真里にスマホを出すように言うと、それを受け取り誠に渡した。誠はすでに開かれていたチャット画面を確認した。


「これは……!?」


そこには、何者かが自分に成り済まし、
真里に別れを告げたメッセージが残されていた。

誰がこんなことを……そう思ったが、
今はそれどころじゃない。すぐに誠は弁明した。


「私はこんなメッセージ送ってません」

「本当……? 誠くん……」

「真里、騙されないで。こいつ、嘘ついてる……」


誠の言葉に、
真里は一瞬心を動かされたが、すぐに萌が止めに入った。

誠は今日も忍とセックスしている。
それなのに、こんなしたり顔で帰ってきたのだ。
こんなわざわざ淫臭を漂わせて帰ってきたのは、真里をバカにするためかもしれない。
チャットの印象が強く残っている萌は、誠の性格をそのように捉えていた。


「じゃあ誰が送ったっていうの?
二人の関係を知る第三者がいるとでも言うの!?」

「わからない……でも私じゃないっ!」

「いい加減な嘘を吐(つ)くな。忍と浮気して、真里にひどい言葉を投げかけた癖に、今さらなんだっ!」

「それは違う……私は忍くんと浮気なんかしてない……」


萌は顔を紅潮させて怒っている。

頭に血が上り、
口調も荒々しいものへと戻ってしまっていた。

彼女は誠に詰め寄ると、両手で襟を掴んだ。


「本当にいい加減にしなよ……。
あんたが忍と浮気したのは良いよ……あんな男くれてやる。
でもこれ以上、真里を傷つけるのだけは許せない……」

「違う……私は浮気したんじゃない。
私は忍くんにレイプされたの。無理やり組み伏せられて……何度も犯されて……ようやく逃げてきたのっ!
だからそのメールだって、もしかしたら忍くんが……」


バチンッ!!!!!

大きな音が響く。
萌が全身全霊の力を込めて、誠をビンタしたのだ。


「萌!!」


誠が殴られて、真里が止めに入ろうとする。
萌は、真里を静止して、努めて冷静に伝えた。


「大丈夫……この一回だけだから……ベッドに戻って」

「ほんと……?」

「本当……さすがに我慢できなかった……ごめん」


真里は不安そうな顔を見せながらもベッドに戻った。

誠は叩かれたショックで震えている。
勇気を振り絞って強姦された事実を伝えたのに、叩かれてしまった。彼はお腹から込み上げてくる哀しみに耐えていた。

萌はそんな誠に向き合うと話し始めた。


「たしかに、忍は浮気性なところがあったかもしれない……。でもあの人は、人をレイプしたり、
他人の振りをして誰かを陥れたりする人なんかじゃないっ! 忍のことを何も知らないくせに……忍をバカにするなっ!!」


最後に裏切られたとはいえ、
忍は萌にとって、この世でもっとも愛する男性であった。

悪いところも良いところもいっぱい知っている。
同じ趣味を好み、共に笑い、過ごしてきた。

だからこそ、萌は切れた。

誠の言う忍の人物像は、萌が接してきた忍とは、
大きくかけ離れたものだったからだ。

これは誠と萌の付き合いが、
数日という短い期間だったために起きた悲劇であった。

萌の勢いに、誠はそれ以上何も言えなかった。
実際、誠だって忍がレイプする人物だと思わなかったのだ。

どう言っても、信じてもらえそうにない。
誠が悩んでいると、萌が口を開く。


「真里は私と付き合うことになったの。
だからここは私と真里の部屋。あんたの部屋じゃないの」

「え……?」


誠が驚いて真里を見ると、彼女はすぐに目をそらした。


「真里さん、嘘だよね……?」

「…………」


真里は何も答えない。
沈痛な面持ちで、ただ目を閉じるだけであった。


「返事がないってことは、そういうこと。
わかったら、早く出て行きな」


誠の登場で、真里がショックを受けている。

誠が出て行った後は、
昨夜以上に愛してあげる必要があると、萌は感じていた。


「嫌だ……出ていかない……」

「何言ってるの? 真里は私と付き合うことを決めたの。
ここにあんたの居場所は、もうないの。
忍と何があったか知らないけど、あなたは忍の元に戻りなさい」

「絶対に嫌だ……」

「くっ……この……」


強情に居座る誠に、萌の頭は沸騰した。

しかし暴力を振るうわけにはいかない。
さっき真里と約束したばかりだ。


「真里さん、信じて。
私はあんなメッセージ、送ってない」

「…………っ」


誠の言葉に真里の心は揺れる。
根底には、まだ信じたいという気持ちがあるようだ。

しかし誠の言い分には、どうしても無理があった。
忍が誠をレイプしたなど、誰が信じられるだろうか?

誰かが誠のふりをしてメッセージを送ったのだって、あり得ない話だった。

誠が女装した桐越誠であることを知っていて、
なおかつ真里と付き合っていることを知っている人物なんて、この島にはいない。

誠の言い分には、信憑性が無さすぎるのだ。

そんな話を安易に信じようものなら、
一生懸命、自分を守もうとしてくれている萌に失礼だ。

説得するなら、せめて萌を納得させられるだけの話をして欲しい。

真里はそう思っていた。


※※※


その後も、誠と萌の膠着状態は続いた。

萌はひたすら誠に退室を促した。
自分と真里がどれだけ愛し合っているか、
昨夜の性行為についても赤裸々に語ってあげた。

誠にとって、それは非常に辛い内容であったが、
それでも彼は諦めなかった。

ここで退室すれば、確実に真里との関係が終わってしまう。
それだけはどうしても避けたかった。

痺れを切らした萌は、真里の方から別れを告げて欲しいと伝えた。しかし、真里はそれにすら答えることができなくなってしまっていた。


(だめだこれ以上は、真里の精神がもたない……。
なんとかこいつを追い出さないと……)


そこで萌は思いついた。
真里を癒し、同時に誠を退散させる方法を。


「わかった。じゃあ今から私の言うことを聞くなら、
ここにいさせてあげる」

「……?」


萌は、誠に新たな提案を始めた。


「まず服を脱いで」

「え……?」

「勘違いしないで、別にあなたの裸を見たいってわけじゃないから。あなたが精子臭いから脱いでって言ってるだけ」

「わかった、それなら良いよ」


たしかに臭いがキツイのであれば、
いて欲しくないのは分かる。誠はブラウスを脱ぎ始めた。


「脱いだものは、この籠に入れて」


萌は脱衣場から籠を一つ持ってくると、その中に衣服を入れるよう命じた。ブラウスを脱いだことで、誠のブラジャーが目に入る。


「へぇ~下着も女物なんだ。
桐越先輩って筋金入りの変態だったんですね」

「……っ!」


頭にきていたのか、萌は誠を罵った。

誠は気にしないようにして脱ぎ続ける。
ブラを脱いで、小ぶりなおっぱいが姿を現した。
先ほどまで忍に愛されていたおっぱいだ。


「男のくせに、そんなに膨らんで……あなた女より男が好きなんでしょ? なんで真里にこだわるの?」

「私は……男の人より、真里さんの方が好きです」

「どうだか?」


女の方が好きとは言えない。
誠は今の台詞を言う際にためらいがあった。

思い出すのは、忍とのホモセックス。肉体的にどちらが好きかと聞かれたら、男と答えるしかなかっただろう。

続いてボトムを脱ぎ籠に入れる。
誠のショーツが目に入り、萌はあることに気が付いた。


「あんた……」

「……?」

「真里、ちょっと見て」

「えっ?」


真里に声をかけ注目させる。萌は誠に背中を向けるように言うと、彼のショーツをおろしてしまった。


「…………うっ!!」


ひどく仰天した表情を真里は見せる。
彼女は口に手を寄せ、目元を歪ませた。

誠の脱いだショーツとお尻の穴の間には、白い粘液が糸を作っていたのだ。

それは紛れもなく精子。
一日中、忍に中出しされた精液であった。


「ずいぶんと激しくエッチしてきたんだね……」


萌はこめかみをピクピクさせながら言う。忍とここまでするなら、いい加減真里を解放しろよといった様子だ。


「だからこれは……」

「あーー聞きたくない。
あのさ、今思い出したけど、あなた昨日も忍とデートしてたでしょ? あれはどう説明する気なの?」

「デート? 昨日は怪我の治療のためずっと部屋に……」

「いつの話してるの……あなたの怪我はずいぶん前に治ったでしょ。昨日、遊園地にいた時の話だよ」

「私は遊園地に行ってません」


催眠により、誠は忍とデートさせられていたが、
その時の記憶は消されていた。

全ては三人の関係を今の状態にするための下準備だったというわけだ。


「もういい……その汚い下着を籠に入れて、お風呂に入ってきて」

「お風呂に……? でも……」

「大丈夫、戻ってきたら、いなくなっていたなんてことは、絶対ないから。とにかく精子臭くて嫌なの、身体をすみずみまで洗ってきて」

「わかった」


萌は誠が脱衣場に消えたのを確認すると、洗濯籠を廊下に出した。そしてフロントに電話をして、それらを洗うよう伝えた。


「真里、さっきの聞いた?」

「うん……」


二人は先ほどの質問で、
誠が嘘をついていると確信していた。

誠は遊園地に行っていないと言ったが、
二人はハッキリと見たのだ。誠と忍がキスするところを。


「真里の気持ちは分かるけど……。
甘い態度を取ったら、いつまでもまとわりつかれることになるよ? ここでしっかりと縁を切るのが、お互いのためだよ」

「でも何か事情があるのかも……」

「あそこまであからさまな嘘を並べられて、まだそんなこと言うの? しっかりして、そんなこと考えちゃダメ……」

「誠くんは嘘を言う人じゃなかったのに……」

「私もそう思っていたよ……忍のことを信じてた。

真里と同じくらいね。でも男と女は違う。
男は自分の欲のためなら、いくらでも女を捨てれるの。

それはあいつも同じ。きっと忍と上手くいかなくなって戻ってこようとしてるんだよ。騙されちゃダメ」


それを聞いて、真里は泣き始めてしまう。
萌はそんな彼女を優しく抱きしめると、耳元で囁いた。


「真里……もう少しだけ頑張ろう。私があなたの迷いを断ち切ってみせる。私たちがどれだけ愛し合っているかを見せて、真里の気持ちを分かってもらおう」


真里はまだ誠に別れを言い出す勇気が持てないでいる。

しかし、レズセックスをすれば話は別だ。
彼女の官能を呼び覚まし、自らの気持ちに正直にさせるのだ。

二人は、誠がお風呂から上がるのを静かに待った。
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