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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.88 【 この汚いオカマの腐れ外道がっ!◇ 】

「……うん……ここは……」


見知らぬ場所で眠っていることに気づき、真里は目を覚ます。

天井に埋め込まれた無機質な照明。

四方の壁は頑丈なコンクリートで出来ており、
中央に巨大なモニターが備え付けられている。

ドアは二つ。モニターの横に一つと、反対側の壁にもう一つ。

寝心地の良いクイーンサイズのスプリングマットの上には、
薄いシルクのシーツが敷いてあり、真里はその上に寝かされていた。

いつもなら辺りを見回し、
冷静に事態を把握しようとする彼女であるが、この時は違った。


(早く……早くここから逃げなきゃ……!)


何もかも分かっているような反応。

真里は慌てて起き上がると、
モニター横のドアではなく、対面のドアへ走り、ドアノブを回した。


ガチャガチ……ガチャガチガチ……

(うぅ……やっぱり閉まってる……)


真里は後ろを振り返り、もう1つのドアを見た。
そちらには近寄らないようだ。


「いるんでしょう!? 早く出てきたらどうなの!?」


真里はモニターに向かって叫んだ。
まるで誰がそこにいるか、分かっているかのように。

モニターの電源がつき、この事件の首謀者が顔を見せる。


「ごきげんよう、真里ちゃん。御気分いかがかしら?」

「最悪の気分よ……またこんなところに閉じ込められて……
どうして私たちのこと、そんなに付け狙うの!」


真里は怒気を強めて叫んだが、
目には涙を溜め、身体はガタガタと震えていた。


「ふふふ……その様子だと、しっかりと記憶を取り戻しているようネ。貴女には、きちんと落とし前を付けて貰わないといけないの。
アタシの顔に泥を塗った落とし前をネ」


ギロリと真里を睨みつける。
どうやらこのモニターは、
カメラ内蔵で向こうからも真里の正確な位置が分かるようだ。


「さて、そろそろあの娘を中に入れなさい」


モニターの横のドアが開き、
黒服と全身を縄で拘束された萌が姿を現した。


「萌!」

「真里! 気をつけて! こいつら催眠術を使ってくる!
霧吹きのようなもので、変な液体を吹きかけて来るから、絶対に吸わないでっ!」

「しゃべってないで進め」


黒服が強引に萌を部屋の中へ入れる。
そして彼女のことをベッドの上に乱雑に投げ捨てると、そのまま元の部屋へと戻っていった。

大きな音を立ててドアが締まり、鍵が閉められる。
真里はすぐに萌の元へ歩み寄った。


「萌……大丈夫?」

「うん、なんとか……まさか真里まであいつらに捕まっちゃうなんて……あいつら、人拐いよ。
しかも組織的な連中……いろんな人たちがあいつらに捕まって、ひどいことされてる……」

「うん、知ってる……誠くんも、捕まっちゃったんだ……」

「桐越先輩も?……マコトちゃんは大丈夫なの?」

「ううん……実はマコトちゃんが誠くんなの……。
きっとあいつらに変なことされて、ああなっちゃったんだよ……」


一時は男に戻りかけていた誠の心が女になった理由。
今の真里には、その理由がハッキリと分かった。


「え、あの子が……そうだったんだ……
ということは……真里も結構前から?」


萌の問いかけに、真里は深刻な表情で頷いた。


「5ヶ月くらい前からね……
怖いのは普段はこういうことを忘れて、普通に生活してるってこと。

私は誠くんが変わってきてるのに、全然気にならなかった。
たまに電話がかかってきて、それに出ると催眠状態になってしまって、誠くんを連れ去られてしまうの。誠くんが女の子になってしまったのも、そのせいだよ」

「そういうことか……
抜け出そう……何としてもここから抜け出さなきゃ」

「うん……」


そう言ったものの、
それはかなり難しいことだと、二人は理解していた。

おそらくここはホテルの中。

『センチュリーハイアット小早川』
というホテル名からも分かる通り、ここは奴らのアジトだろう。

エレベーターはもちろん使えないだろうし、
非常階段だって封鎖されていることだろう。

窓は見当たらず、ここが何階かも分からない。
ホテルの中ということだって、もしかしたら違うかもしれない。

特別な脱出スキルもない二人がここから逃げ出すことは、
ほぼ不可能に近い状態であった。


「お話は終わったかしら? ところで真里ちゃん、
お友達、ずっと縄に縛られていて可哀想じゃない?
背中の紐を引っ張れば、簡単にほどけるようにしてあるから、
ひとまず彼女を楽にしてあげたらどうかしら?」

小早川の言葉を聞き、
真里はベッドに寝転ぶ萌の身体を反転させた。

そして背中の結び目になっているところに紐が一本分かりやすく出ているのを見つけ、すぐさまそれを引っ張った。

この時、真里は気づかなかった。
なぜ小早川が親切に拘束を解けるようにしていたかを。

スルスルスル……

紐は小早川の言う通り簡単にほどくことができた。
萌を縛っている紐を全て取り除き、ベッドの下へと捨てる。


「萌……大丈夫?」

「うん……ありがとね」


そうして二人は目を合わせた。

すると……


ドキッ!♡


二人の心を……身体を……何かが突き抜けた。


(え、なに……? 私……萌のことを見て、なんだか……)


真里の心は、これまでにない感情と感覚に包まれようとしていた。

その感情は誠へ向けるものと同じ、恋愛という感情。
その感覚はBLへ向けるものと同じ、性欲という感覚。

真里は親友に対し、
決して持ちようのないはずの感情と感覚を抱かされようとしていた。

そしてそれは萌も同じこと。
自身の変化に気が付き、すぐに真里から顔を背けた。


(うぅ……はぁはぁはぁ……♡ な、なんで……まさか……?)


自身の急激な変化に何かを察した萌は、
モニターの小早川を睨み付けた。


「アンタ……何をしたの?」

「何って、貴女たち、大の仲良しみたいだから、
もっと仲良くなれるようにサポートしてあげたのヨ。
しかし、すごい偶然ネー。
まさか貴女たちが顔見知りだとは知らなかったワ」

「はぁ……はぁ……」

「ふふふ、すごい苦しそうネー。
お友達の真里ちゃんに介抱してもらったら?
すっごく気持ちよくしてもらえるわヨー」

「くっ……この変態……」


二人はこれまでの経緯から、
小早川が何をさせようとしているかすぐに察知した。

彼は誠と忍を男同士で交わらせたように、
真里と萌にレズ行為をさせようとしていた。

真里は誠と擬似的なレズ関係を結んだことはあったが、
基本的に真里も萌も、本物の女同士の恋愛や行為に興味はない。

二人はじゃれ合うことはあれども、
そういった対象として互いを見たことは一度もなかった。

もしここで小早川の思惑通り、行為に至ってしまえば、
大事な関係にヒビが入ってしまうと、どちらも感じていた。


「また我慢するつもり? たしか貴女たち、我慢するの得意だったわよネ。そんな貴女たちが素直になれるよう、こっちも取って置きを用意させてもらったワ」


小早川は、マイクに指を近づけると音を鳴らした。


パチン!


「ん?……あ、あれ?」「えっ……?」


真里と萌の身体の動きが止まる。


「ふふふ、安心して、声だけは自由に出せるわヨ。
身体の動きだけ、こちらの自由にさせてもらったワ。
じゃあひとまず向かい合って、お互いを見つめ合いなさい」


小早川が指示を出すと、二人の身体は本人の意思を無視して動き始め、見つめ合う形となった。


(ど、どうしよう……だんだん萌のこと、
可愛く思えてきちゃった…………あぁ……可愛い……萌…………)

(真里…………キレイ…………ハッ!ダメダメっ!
これはあいつの掛けた催眠術のせい……ヤツの術中にハマったらダメ!)


だんだんと息を荒くさせる二人。
暗示がしっかりと効いてきていることに上機嫌な小早川は、
次なる暗示をかけた。


「ほら、お互いの唇を見なさい……とっても柔らかそうネ。
遠慮しないで、いっぱいキスし合いなさい」

(くっ……こいつ、なんてことを考えるの……。
女同士なんて気持ち悪い……! 鳥肌立つくらい嫌っ!!
くっそーー!! この汚カマぁぁあああ!)


真里に対する気持ちを怒りで誤魔化そうとする萌。


(たしかに柔らかそうだけど……私には誠くんがいるし……
誠くん以外の人とキスだなんて……
でも、萌とだったら少しは…………あぁ……やっぱりダメ…………)


萌と比べると、真里の抵抗は少なかった。

誠がほとんど女性化しており、彼との性交に置いても、
ちんちんの生えた女の子を犯しているという感覚が強く、
レズ行為への耐性が、そこそこあったのだ。

それと、萌は童顔でアニメのコスプレが似合いそうなカワイイ顔をしている。

親友とキスするのに抵抗はあったものの、
全然知らない赤の他人とするのに比べたらマシという感覚もあった。

そんな真里と違って、萌はBL一辺倒。

NLも少しはかじっていたが、
それでも九割五分以上はBLで染まっている女性と言える。

ただそれだけGLへの耐性はないということ。

コミケに行った際もGL物は避けていたし、
真里がマコトと女同士で付き合っていると知った時だって、
内心は「げぇ!」と思っていたくらいである。

忍にレズ鑑賞をさせた時だって、本当は嫌で嫌で堪らなかった。
それを忍への愛とBLへの欲求でなんとか耐えきっていたのだ。

しかし今回、忍はいない。
そうであれば、レズ行為など吐き気を催すもの以外の何者でもなかった。

これから親友である真里とレズ行為に至る。
そう想像しただけで、萌の身体には鳥肌が立ち始めてしまっていた。



※※※



「うーー! うーー! くぅーー!」

「ううう……やめ……やめて……」


親友とのキスを回避しようと、
必死に身体を抑えようとする二人。

だが催眠の力は強く、二人の距離は徐々に近づいてしまう。

二人は両手で指同士を絡み合わせ、
身体を密着させ、唇と唇の距離を縮めていった。


(ふー! ふー! やめ……やめて……嫌……嫌!)

(あ……あああ……ダメ! くっついちゃう……くっついちゃう!)


どちらの目も、拒絶の意思を語っている。

お互いの唇がぶつかりそうになり、二人は同時に目を瞑った。

次の瞬間……。

二人の唇は接触した。


「んんんんんっ!!」

「ふぅうううんっ!!」


唇の間から悲鳴にも似た声が漏れ出る。

お互いに彼氏がいるノンケ同士。

普通に生活していれば、一生経験することのなかった感触だ。

真里は気まずい表情を浮かべ、
萌は落胆した表情を浮かべている。

真里に比べて、
明らかに萌の方がこのキスにショックを受けているようだ。

忍のレズ鑑賞の時でさえ、キスだけは拒否していた萌である。
彼女のショックは計り知れない。


(うそ……私、真里とキスしちゃった……
女同士で……忍に見せる訳でもないのに……こんな……こんな…………)

(私も嫌だけど、萌はもっと嫌だろうな……いつもGL物、嫌がっていたし…………私は誠くんで慣れてるけど、萌は…………)


萌の目から涙が零れる。あまりのショックで、つい我慢していた気持ちが溢れ出てしまったようだ。

そんな萌を見て小早川は気分を良くする。

自分に泥を塗った人間の一人が、
苦悩に顔を歪める様を見て大層ご満悦の様子だ。


「はーい、唇を離して良いわよ♡」


二人はすぐに唇を離す。
どちらもショックで頭を下げたまま固まっている。


「親友同士のキスはどうだったかしら?
気持ちよかったわよネ?
貴女達そんなに仲良いんだったら、もう付き合っちゃえばぁー?
男同士に興奮する変態同士、お似合いだと思うわヨー。
ぷーくすくすくす!!」


その言葉に、ついに萌がキレた。

忍を犯され、自慰をさせられ、大切な親友と無理矢理キスをさせられてきた彼女は、もはや我慢の限界であった。


「いい気にならないで!
この醜いオカマの腐れ外道がっ!

アンタはただの可哀想な醜いオカマ!
催眠術を使わなきゃ、アンタの元には誰も寄って来ないし、誰もアンタのことを愛してくれない。
だから見苦しくも嫉妬して、仲良く愛し合っているカップルの仲を引き裂こうとしている。

ひたすら惨めね……。

アンタの楽しみはそれだけ?
そうやって一人、暗く虚しい遊びを繰り返すことしか楽しみがないの?

アンタは壊すだけ……
誰かと愛し合う関係を築くことは決してできない!
誰よりも不幸で惨めな腐った汚カマよ!!」

「………………」


一瞬にして場の空気が凍りつく。
小早川は、不機嫌な表情を維持したまま何も話さなかった。

真里はその表情に身の毛もよだつ思いを感じた。

今、この場を支配しているのは小早川だ。
彼の気分次第でいくらでも自分達をどうにかすることができる。

もちろん命を奪うことだって……。

真里は、小早川に啖呵(たんか)を切ってしまった萌のことを本気で心配していた。


「おやおや……どうやらアナタ、ワタシの琴線に触れてしまったようネ……。もう少しじっくりいたぶってやるつもりだったけど、こうなったら時間をかけてやる必要もないワ」

「まだやるつもり?
いい加減虚しいだけだって気づいたら?

忍と私のことを別れさせたいみたいだけど、
こんなに時間をかけても別れさせることができないってことは、忍のことも堕とすことができてないんでしょ?

私たちの絆は、アンタなんかに引き裂くことができるようなものじゃないんだから!!」

「口だけは達者ネ。ならば、試させてもらおうじゃない?
貴女たち二人を同時に堕とすつもりだったけど、気が変わったワ。
まずはオマエのことを先に堕としてやる」


最後の方だけ、男言葉に戻る。
この変化が、彼が本気で怒っていることを物語っていた。

萌は、真里の方を振り向くとニッコリと笑って語りかけた。


「真里、私あなたのこと大好きだよ。
ずっと昔から一緒に同人活動してきて、本当に楽しかった。
中学、高校であなたや弥生と友達になれたことが私にとって一番の宝物だった。
だから忘れないで……これから私がどう変わってしまったとしても、
私があなたのこと一番の親友だと思っていたことを…………」

「萌…………そんなこと言わないで…………。
まるでそれって別れの言葉みたいじゃん!
大丈夫だよ。きっと助けが来てくれるから……助かるから……だから、諦めないで…………」


萌はそれ以上何も言わなかった。
ただ涙を流し、ニッコリと笑ってくれた。


「ふんっ! 友情ごっこは終わりヨ。眠りなさい!」


パチン パチン!


二人の意識はそこで途絶えた。

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