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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.60 【 雪小屋の二人 】

吹き荒れる寒風(かんぷう)。舞い上がる大粒の雪。
どこを向いても境のない白一面の光景が広がっていた。

真里の姿を見失い、焦り始める誠。
彼女が落ちた先は、悲鳴がした大体の方角しか分からない。

ただでさえ視界の悪いこの吹雪の中、
闇雲に探し始めて、その大まかな方角を失うことは避けたかった。
そのため誠は、努めて冷静な態度で、彼女の名を呼び返事を待つことにした。


「真里さーん! 返事してー!」

「……で……す!」


僅かであったが、たしかに真里の声がした。
目を凝らして声のする方を探すと、ぼんやりとであるが彼女の姿を視認することができた。慎重に坂をくだり、なんとか彼女の元へと辿り着く。


「大丈夫、真里さん?」

「大丈夫です。ちょっと足を雪に取られてしまったので引っ張ってもらえますか?」


言われた通り、彼女の腕を引っ張り上げる。


「痛いっ!!」


悲痛な叫びを上げる真里。
異常を察知した誠は、彼女の足を診ることにした。


「これは……」


そこで誠は真里の足が骨折していることに気づく。
彼女の足は少しだけ不自然な方向に曲がっていたのだ。
寒さのおかげで、まだそこまで大きな痛みを感じていない様子であるが、
落ち着いたら強い痛みを感じることは容易に想像できた。


「真里さん、大事なことだから正直に言うね……。真里さんの足、たぶん骨折していると思う」

「えっ!? まさか……」

「これ以上滑って降りることは諦めた方が良いと思う。
ここからレストハウスまではまだ遠いし、何より今の真里さんの身体じゃ下に降りるのは無理だよ」

「そんな……」


誠はスマホを取り出し電波を確認する。
予想通り圏外だ。
電波が届くのであれば、この場で救助要請をするのが最善ではあるのだが……。

できない以上、このままここにいるのも危険だ。
この山について詳しくはないが、熊や山犬などの野生動物に襲われる可能性もある。誠は自身と真里のスキー板を靴から外すと彼女を背負って歩くことを決めた。


「私の背中に乗って、このまま近くの避難小屋を探すことにしよう」

「誠さんにそこまでの負担掛けられません! 歩けるので大丈夫です!」


そう言い自分で立とうとする真里。
無事帰れるのだろうかという不安で彼女は涙を浮かべていた。


「ダメ! それ以上動かないで!
ここからは体力勝負だから、変な意地張らないで私の言うことを聞いて」


命に関わることのため、誠は心を鬼にして、強い口調で伝えた。
その気迫に押されたのか、真里は冷静になり、大人しく彼の背にまたがることにした。





真里を背負い雪山を下る誠。
他のスキー客が近くを通りかかってくれたら良いのだが、この猛吹雪ではそう都合の良い展開は期待できない。

そんな孤立無援の中で誠は歩き続けなければならなかった。
それはあまりにも過酷な移動。
元々の誠の身体であれば、ここまで厳しいものではなかっただろう。

だが今の誠は女性ホルモンを活性化させる薬の影響で、体力・筋力共に普通の女子と同レベルまで落ちてしまっている。長い時間移動するのは、誠自身も危険な状態に陥る可能性を秘めていた。

加えてこの視界の悪さ。
勘に頼って移動するのはあまりにも危険だ。
誠はスマホの位置情報を割り出すアプリを使い、一番近い小屋まで行こうとしていた。電波は依然として悪いままであったが、GPSは空が開けている場所であれば、どこでも繋がることを彼は知っていた。


そうして歩くこと10分後。
限界を感じた誠は一旦真里を降ろし体力を回復させることにした。


「誠さん……あんまり無理しないでください」

「はぁ……はぁ……少し休憩すれば大丈夫だよ」


とはいえ、推定40~50kgある女性を背負い、こんな不安定な雪道を移動するのは、厳しいものがあった。おまけに硬いスキー靴を履いてとなればなおさらである。

だがそうした余計なことは考えない。
ただ無心に、ひたすら助かる希望を胸に避難小屋へと進んだ。

そんな中、誠は自分の中に芽生えるある想いを感じていた。

それは真里への想い。

この時の誠は助かることを第一に歩き続けていたため、深くは考えなかったが、後にこの想いが彼に大きな影響を与えることになる。


そうして移動と休憩を繰り返すこと1時間。
二人はなんとか避難小屋まで辿り着くことができた。

大変厳しい状況であったが、誠はその持ち前の精神力で、無事この難局を乗り切ったのだった。



※※※



小屋の中に入り誠は、
真里を備え付けのベッドの上に降ろすと、すぐに部屋を暖めることにした。


「うぅ……ぐすっ……」

「どうしたの? 真里さん」

「だってこんな吹雪の中を……ありがとうございます」


涙を浮かべてお礼を言う真里。
彼女は背負われている間、ずっと誠のことを心配していた。
自分のことは放っておいて、誠だけでも助かって欲しい。そう考えていたのだ。

しかし彼の性格を考えると、
いくら自分がそれを口にしたところで、絶対に「うん」とは言わないだろう。

誠は他人のためなら自分を犠牲にしても構わないと思う性格だ。

余計なことを言って、誠の負担を増やしたくはない。
真里は心の中で彼を気遣っていたが、敢えて無言に終始していたのだ。


「ううん、私一人だったら、逆に危険だったかも。真里さんがいたから、ここまで頑張れたんだよ」


そう言いにっこりと微笑みかける誠。
真里はその笑顔を見て、この人を好きでいて本当に良かったと心から思ったのであった。





誠はストーブに火を付けると、備え付けの無線機を使い救援を呼んだ。
連絡は無事に取れ、二人は安堵する。

だが悪天候で救助は遅れるとのこと。
その間、誠は小屋に置いてある救急セットを使い真里の応急処置をすることにした。


「真里さん、これから応急処置をしたいんだけど、下……脱がせても良いかな?」

「ふふ、良いに決まってるじゃないですか。昨日四人で一緒に女湯入りましたよね?
下どころか私の生まれたままの姿、全部見ているじゃないですか」


誠が今更なことを言い、思わず笑ってしまう真里。誠も「たしかにそうだね」と言い笑い合った。



誠は真里のボトムに手を掛けて、骨折した足に負担をかけないようゆっくりと降ろしていった。


(あぁん、誠くんに私の脱がされちゃう……下着も見られちゃうかな?
やーん♡ 恥ずかしい~ウヒヒヒヒヒ)


脱がされながらも、変態真里は密かにこの状況を楽しんでいた。
彼女は誠にどんな卑猥な行為をされようと、オールオッケーなのであった。

上着は着たまま下は脱がされショーツ姿になった真里。
幸い割れた骨の端が皮膚を貫通して飛び出るような事態には陥ってはいなかった。

小屋には骨折治療用のシーネが置いてあった。シーネとは、クッション性のあるソフトウレタンの中に金属板を埋め込んである副木のことだ。
それを足に添えて、その上から包むように包帯を巻いてしっかりと固定する。

適切な処置を続ける誠の姿を見ながら、またまた真里は不謹慎なことを考える。


(はぁ、真面目に治療する誠くんを前に、ショーツ一枚の姿をさらけ出しちゃうなんて……どうしてこんなに背徳的なの?)


真里はこんな状況にもかかわらず誠に欲情していた。





応急処置を終えた誠は、体力を回復させるため横になることにした。
ストーブの火を見つめながら旅行や最近の出来事について語り合う。
それから話題は次第に直美や恭子のことへと移っていった。


「遭難みたいな形になっちゃいましたけど、恭子さんやサークルのみんな心配しているでしょうね」

「そうだね。今はもう連絡いってるだろうから安心してくれたと思うけど、迷惑かけちゃったね」

「直美さん、ああいう性格だから、あたし探しにいくー! とか言って、みんなに止められちゃってるかもしれませんね」

「ぷっ、そうだね、ナオちゃんだったら十分あり得ると思うよ」


直美のことを思い笑う二人。


「そういえば、私、ずっと疑問だったことがあるんですけど」

「んっ? なになに?」

「誠さんは、男の人が好きって言ってましたけど、直美さんと付き合っていた頃はどんな感じだったんですか?」


真里は兼ねてから疑問に思っていたことを口にした。

高校の頃、誠はあんなにも直美のことを愛していたのに、大学に入ってからは男が好きと言っており、どうしてもそれが矛盾しているように思えていたからだ。


「うーん、それがね……実はあんまり覚えていないんだよね」

「えっ?」

「あの頃のことを詳しく思い出そうとしても、記憶に霧がかかったようになってしまうんだ」


霧がかかったかのように思い出せない。
真里は誠のその発言が、あまりにも不可解なものに思えた。


「お互いに好きだったから、付き合っていたんじゃないんですか?」

「うーんお互いに同性が好きってところが似てて気が合っていただけなのかも。
なんとなく付き合ったんだけど、やっぱり自分の気持ちに正直になって別れることにしたんだよね」


(違う……)


真里は誠の発言を聞いて、それが不可解なものというより、なんだか不気味なことのように思えた。
高校時代の誠と今の誠、その根本的な性質は同じであるが、どこか完全に違うものになっていると真里は感じたのだ。


(どうしてこんなことを言うんだろう?
誠くんは直美さんのことをあんなに愛していたのに……
しかも付き合っていた頃の記憶を思い出せないなんて)


今の誠は正常な誠ではない。
何らかの方法で本来の性質を捻じ曲げられている。

恭子の催眠術が発端のこの事件。
真里はその事件の真相に一歩近づいていた。


「でもね、真里さん……」

「はい?」


誠はストーブの火を見つめながら静かに語り始めた。


「最近、私ね……真里さんとこうして遊ぶようになって、自分が本当に昔から男の人が好きだったかどうか分からなくなってきちゃったんだよね。
去年まで、ずっと彼氏になってくれる人を探していたんだけど、最近はそうする気にもなれなくて……
真里さんとこうしていることの方が、ずっと自然な感じがするんだよね」


その言葉を聞いて真里はしばらく無言だった。
ストーブの火を見つめながら、少しして静かに呟く。


「誠さんはホモじゃないと思う。
純粋に女の子を好きなノーマルな男の子だよ」


ボォーっとストーブが熱気を外に噴き出す音だけが静かな部屋に広がる。

誠はしばらく考えた後、ポツリと呟いた。


「……そうかもね」



※※※



それから三時間後。
外の吹雪も収まり、小屋に救助隊が駆け付けた。


二人はスノーモービルに乗って下の休憩所まで護送される。

その後真里はレストハウスの前に止まっている救急車に乗せられ、病院まで搬送されることとなった。

誠は同伴者として付いていくことになったのだが、そこに泣きながら直美が現れた。


「マコちゃんー! 真里ちゃんー! 無事で良かった~~!!」


そう言い、救急車の前にいる誠に抱き付いた。


「あたし二人のことが心配で心配で、
あたしも探しに行くー! って言って探しに行こうとしたんだけど……うぅぅぅ……
キョウちゃんやみんなが、ひっぐ……ひっぐ……
遭難するから止めろ! って言って何もさせてくれなかったんだよね」


予想通りの展開だったと誠は思ったが、それよりも、直美に抱き付かれているこの感覚に不思議なものを感じていた。


(私、ナオちゃんに抱き付かれて、どうしてこんなにドキドキするんだろう……?
やっぱり私、男の人よりも女の人の方が……)


「良かったマコちゃん、真里ちゃん、二人とも無事で……」


直美に続いて恭子が救急車の前へとやってくる。


「キヨちゃん、心配かけちゃってごめんね。
私、真里さんに同伴して病院まで行くから、先に〇✖まで戻ってて」

「わかったわ、私も付いていきたいけど、他のメンバーの安全も守らないといけない立場だからごめんね。
帰りにお土産いっぱい買って行くから、向こう着いたらお見舞い品として二人にプレゼントするわ」

「うん、ありがと! じゃあそろそろ」

「あたしも行くー! 真里ちゃんが治療している間、ずっと横で応援するから!」

「絶対迷惑だからやめなさい」


直美が駄々を捏ねるアクシデントがあったものの、すぐに救急車は発進し、最寄りの病院で真里は治療を受けることになった。

懸命の治療の結果、
特に後遺症が残るようなこともなく、全治三か月で退院することが決まった。


しかし真里も大学生、単位が厳しくなってしまうことも心配され、
大学近くの病院に移された後は、外出許可を得て車いすで講義に出席することになり、その際は、サークルのメンバーが交代で送り迎えをすることになったのであった。
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