起きてすぐに真里は浴室へと向かっていた。
彼女は昨夜オナニーをしたまま眠ってしまったため、早く身体を洗ってしまいたいと思っていたのだ。
脱衣場前で椅子に座り湯呑(ゆのみ)をすする直美と恭子。
二人とも風呂上りといった様子で談笑していた。
「おはようございます」
「おはよー真里ちゃん」
「お二人ともお風呂入られたんですね」
「うん、昨日寝てて結構汗かいちゃったからね。そういえば真里ちゃん、なんでマコちゃんと一緒に寝てたの?」
「それは、恭子さんの声が……」
そこで誠から黙っておくように言われていたことを思い出し、慌てて言い直す。
「いえ、ちょっとその……私、寝つき悪くて!
それでマコトさんの布団に入っちゃってたみたいです!」
「そうなんだー」
特に気にとめない様子の直美であったが、恭子は言い直す前の真里の声が聞こえていたのか、顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。
(あ、ヤバイ……聞こえちゃったかな?)
身体を小さくして縮こまる恭子。
普段、彼女が見せないその姿に、真里は昨夜の裸の女同士が絡み合う情景を思い出してしまった。
途端にじわりとした感覚が全身に走る。
心拍数は徐々に上がっていき、彼女は慌てて脱衣場へと逃げ込んだ。そして振り向き、申し訳程度のフォローをする。
「その……私、ずっと布団を被って寝てたので、何も知りません。何も見えなかったし、何も聞いてません! シャワー浴びてきます!」
そう言い、真里は脱衣場の扉を閉めた。
そんな彼女の様子を見て、直美は微笑み恭子に言う。
「ほーら、あたしの言った通りでしょ!
真里ちゃん何も見てないし聞いてないって! 良かったね、キョウちゃん♡」
「えぇ、本当にね……良かったわ……」
がっかりと顔を伏せて、項垂れる恭子であった。
※※※
服を脱ぎ、浴室の壁に背を付ける真里。
あいかわらず彼女の息は荒い。
(あーやばいやばい……また恭子さんのこと、カワイイって思っちゃった。
あんなに顔真っ赤にされたら、ギャップ萌えするに決まってるじゃん!
あーまた私、濡れちゃってるし、変な性癖植え付けられちゃったな……)
シャワーの栓を捻り、お湯を出し始める。
(はぁ仕方ないよね)
彼女は椅子に座り、クリトリスに指を這わせると、自慰行為を始めてしまった。
普段からBL同人誌を読み耽っていた彼女は、性欲に関する考えが男と似ており、
外の二人と冷静に接するためにも、一旦ここで発散させてしまおうと考えたのだ。
(とりあえずオカズを決めなきゃな)
過去に気持ち良かったオカズを厳選する。
彼女の審査の結果、オカズ候補に挙げられたのは以下の通りだ。
①いつも通りBL(カル×テト)
②イケメンの誠くんに犯してもらう
③可愛いマコちゃんをふたなりチンコで犯し尽くす
④昨夜の恭子と直美のレズプレイを思い出す
いつもの真里であれば、①か②を選ぶのであるが、この二つは、きちんとシナリオを形成し、順序よく想像していく必要があり、時間が必要だった。
今から朝食の時間まで残り30分といったところ。
朝風呂は長くて20分が限界だろう。
それ以上かかると、食事の時間を告げに、誰かがドアを叩いてくる可能性がある。
そのため短い時間ですぐにイケるオカズを用意する必要があった。
そこで残るのが③か④である。
誠が好きなら当然③を選ぶべきなのだが、真里の頭には先ほどの恭子の姿がこびり付いてしまっていた。③を選んでも、途中で恭子を思い浮かべてしまい、集中できない可能性がある。そうであれば初めから④を選んだ方が良い気がしていた。
真里は心配だった。
もしこのままレズオナニーが習慣化してしまったら、まずいのではないだろうかと……。
マコちゃんで妄想するのも、レズっぽくはあるのだが、一応生物学的には彼は男である。
しかし直美と恭子は正真正銘の女。
その二人を本当にオナネタに使っても良いものなのだろうか。真里の心は揺れていた。
(私がお風呂に入って5分は経っているはず……。もう考えていられる時間はないな……)
今回だけは④をオカズにする。
③は家に帰ってから、ゆっくりエンジョイすることにしよう。そう思い、さっそく真里は朝オナを開始した。
二人の先輩の姿を思い浮かべ、股間に指を這わせる。
恭子はとても頼りがいのある先輩。
知的でセンスも良く、女性から見ても惚れ惚れするほどの美貌の持ち主だ。
対する直美は、明るく活発で一緒にいて楽しい先輩だ。破天荒過ぎて訳の分からないこともあるが、いざという時はとても頼れることを真里は知っていた。
ここで彼女は、二人が朝風呂を終えたばかりだったことを思い出す。
さっきまでこの場所にいたはずだ。
直美と恭子が身体を洗い合い、キスを交わす姿が思い浮かべる。
彼女達はタオルを使わず、直接手で洗い合っていた。熱い眼差しを相手に向け、お互いの感じる部分を優しく愛撫しあっている。
そんな二人の姿を想像しながら、真里はクリトリスと胸を弄り始めた。
(あぁやっぱり気持ちいい……)
直美と恭子は同じ部屋で暮らしているという。
高校を卒業してすぐに同棲生活を始めたそうだが、おそらく家では昨夜のような情交が毎日のように行われているのだろう。
特に直美は昨日の女湯での態度を見る限り、性に対して奔放な性格。
恭子や自分だけでなく、誠に対しても厭らしい目線を向けていたのには驚いたものだった。
もし発情した彼女と、こんな狭いお風呂で一緒になったなら、きっとただでは済まないだろう……。
(ん? 私、今まずいこと考えたような?)
妄想の直美と恭子に目を向ける。
彼女達は洗い合うのをやめて、どちらも欲情した目つきで真里の方を向いていた。
(ひっ!?)
(真里ちゃん、あなたも一緒に洗いっこしない? 仲間に入れてあげるわ)
(ま~りちゃん! あたし、女の子の身体洗うの得意なんだよ、いっぱい色んなところ洗ってあげるね!)
真里は二人の間に挟まれる形となってしまう。
前方に直美、後方に恭子がいる状況だ。
(ちょっと直美さん……あぁん!)
直美の乳房が真里のそれに押し当てられる。
張りのある健康的な胸だ。その先端が真里の小振りな胸を刺激する。
(恭子さんダメです! そんなとこ……)
恭子の胸が背中に密着し、彼女の両手が真里の女性器に添えられる。白くしなやかな指。敏感な部分を敢えて避け、その周りを優しくフェザータッチする。
妄想を続けるか否か悩みつつも感じてしまう真里。
元々は直美と恭子がレズる姿を想像してオナニーをするつもりだったのだが、まさか自分も参加するはめになってしまうとは――彼女は困惑していた。
(真里ちゃん、キスしよ♪ 女の子同士のキスって、すっごく気持ちいいんだよ!)
ちゅ……ちゅ……ちゅぷ、んちゅ……
直美とのキスが開始される。
直美の両腕が真里の肩から後ろに回され、がっしりと逃がさないように口付けされる。同時に密着した乳房同士が、ボディーソープの泡でツルツルと滑り合っていた。
(直美さんダメです。はぁはぁ……私には誠くんがいますからぁ……)
ノンケの真里にとって、いわば禁忌とも言えるこの行為。初めての本格的なレズ妄想に彼女の心臓は大きく高鳴っていた。
そんな真里に恭子が囁く。
(別に良いじゃない、これは妄想なんだから。本当は興味あるんでしょ? 女の子同士のエッチ)
恭子の吐息が耳にかかり背筋がゾクゾクと痺れる。
(そ、そんな興味だなんて……あうぅ……ダメです。ふあぁ!)
(誠くんのこと好きなんでしょ? だったら、女の子のマコちゃんのことも好きにならないとダメじゃない? こうやって女の子同士でするのも良い経験でしょ?)
(でも……はぁはぁ……んんっ!)
(でも何? 真里ちゃんは女の子のマコちゃんは愛せないの? 別に男だからって理由で好きになったわけじゃないでしょ?)
続けざまに恭子の指が真里の女性器をまさぐる。その動きは女同士への抵抗感を少しずつ、取り除いていくような動きであった。
(んやぁっ! あぁ……ぁぁぁ……そういうわけじゃないけど……)
(だったら良いじゃない♪ 男の子の誠くんも、女の子のマコちゃんも、両方愛してこそ、本当の愛ってもんでしょ?)
直美とキスする音と、恭子が淫核を刺激する音が頭の中で木霊する。
加えて甘い声で説得され、ついに真里は受け入れてしまうことになる。
(はぁっはぁっ! そ……そうかもぉ!)
(ふふふふ……じゃあ女の子のマコちゃんとも愛し合えるように、ここで女同士の気持ちよさを学習しましょうね♪)
(は……はひぃ……お願いしましゅ……)
妄想の恭子の説得に応じ、同性からの愛撫に身を委ね始める真里。
美女二人に囲まれ、彼女は初めてにしては大きすぎるほどの快感に翻弄されていった。
男とは違う女同士の柔らかな肌の触れあい、女性ならではの愛撫の仕方など、レズ行為に及んだなら、こうなるであろうと想像しながら真里は自慰に耽った。
そうこうしていくうちに、ついに彼女は限界に達し……
「ぁん! はぁんっ! 直美さん……恭子さん……気持ち良すぎて……私、もぉっ! ダメええええぇっ!」
ビクビクビクビクビクビクッビクンッッ!!!
背中を弓のように反らせ、髪を大きく振り乱し絶頂してしまった。
「はぁ……♡ はぁ……♡ はぁ……♡ 気持ち……良かった……♡」
レズの快感に陶酔する真里。すると脱衣場からドアを叩く音が鳴り、直美の声がした。
「真里ちゃーん、朝御飯用意できたってー! 先行ってるねー!」
「はーい! 私もすぐ行きまーす!」
絶頂の余韻に浸っている暇はない。
真里はすぐにシャワーを当て、大事な部分を洗うと、身体を拭いて脱衣場を後にした。
※※※
外は快晴、ぴかぴかに輝く太陽の光が、雪の斜面に反射され眩しい。
朝食を済ませたサークルメンバー達は、
昨日と同じスキー場で思い思いに滑りを楽しんでいた。
この日は午前中にスキー場で過ごし、
午後から近場の観光名所巡りをしながら、徐々に都心へと戻る予定であった。
「マコトさん! また頂上に登って樹氷巡りしませんか?」
誠を頂上用のリフトへと誘う真里。
一日目は、天候が良くなかったこともあり、せっかくの樹氷も、雪に隠れて魅力半減だったが、今、頂上に登ればクリアーに眺められそうだった。
「そうだね、行こっか。今なら天気も良いし、景色も良さそうだよね」
滅多に見られない樹氷風景。
二人はわくわくしながら、リフトに乗り込んだ。
リフトでも、真里は相変わらず誠に密着していた。誠はもう慣れたもので、彼女がそのように接してきても気にする様子は全くない。
いつも通りの真里に見えるが、内心はこれまでとだいぶ違っていた。
昨夜のふたなり妄想と、直美と恭子のレズプレイ鑑賞、今朝行ってきたレズ妄想で、女同士への抵抗感が薄まり、女の誠を素直に魅力的と感じられるようになっていたのだ。
そのため、誠が男か女かなどという余計なことは考えず、以前自分で言っていた通り、『誠という性別が好きなんだ』という気持ちを実践できるようになっていたのだ。
(二人をオカズにしたのはまずかったけど、おかげで誠くんのことを余計好きになることができたみたい♡ 昨日までと違ってすごく気持ちが楽になった感じだな~)
今では誠のマイクロペニスのこともあまり気にならない。
むしろあんなに小さくて可愛いチンチンなら、是非口に含んでみたいとさえ思うようになっていた。
そんな変態妄想を真里がしているなど露知らず、誠は遠くに見える樹氷に無邪気に喜んでいた。
「見てみて、真里さん。すごいキレイだね!
あんなものが自然に出来るなんて本当に不思議だなー」
「そうですね! 色んな形の樹氷があって、まるで異世界って感じですよね! あれなんか恐竜みたいな形してますよ」
「うんうん! その奥のはハニワみたいな形だよ」
「うわー! ホントだ! おもしろーい♪」
二人は頂上に到達するまでの間、樹氷が何の形に見えるかを言い合ったのであった。
※※※
しばらくしてリフトは頂上へと到着する。
乗った時は快晴だった天気も、少しだけ雲行きが怪しくなってきていた。
だが、あくまでも少しだけ、彼らはまだ天気のことをそこまで気にしていなかった。
さっそく先程見ていた樹氷の位置まで滑り降りる二人。
「なんだかザクザクした感触ですね」
「標高の高いところにあるからかな? 旅館付近の雪とは触り心地が全然違うね」
二人は下に見える霊峰T北山の景色をゆっくりと眺めながら雪道を滑り降りていった。
だが次第に天候が悪くなり、ついには雪が降り始めてしまう。
「ちょっとのんびりし過ぎちゃったかもしれないね」
「最初はあんなに天気良かったのに……移り変わりが激しいですね」
「そういう日もあるよ。仕方ない、そろそろ下に降りることに専念しよ?」
「はい!」
二人が下山を決めた時には、既に前日よりも激しい雪になっていた。
風も一気に強まり、上級者用の急な斜面は危険なコースへと変貌を遂げてしまった。
視界の悪い中、慎重に雪道を滑り降りる二人であったが、ここで真里がミスを犯してしまう。
「えっ!? ひゃっ!!」
急な雪質の変化に対応できず、真里は悲鳴を上げて転げ落ちてしまったのだ。
それは視界が悪いことに加えて、
強風でコース用の網が吹き飛ばされ、境が分からなくなっていたのも原因だった。
真里の声を聞き、立ち止まり後ろを確認する誠。しかしどこにも彼女の姿は見当たらない。
「真里さーん!」
彼女の名前を呼ぶも、返事は返ってこない。
ただ事ではないと判断した誠は、すぐに真里の捜索を開始することにした。