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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.53 【 旅行 】

 秋の展示会は大盛況のうちに終わった。


 ネット媒体、紙媒体の両方の宣伝力を強化し、
特にスマホ向けのコンテンツを強化したことが集客に繋がったと、恭子は見ていた。

 もちろん売上目標も達成。
 前年同月比で約3.4倍にも到達する売上高を記録し、
サークルの旅費はもちろんのこと、メンバー各自には給与とボーナスが支給され、特にバイトを控え協力してくれていたメンバーには嬉しい限りであった。

 その後、サークル内で旅行先を決める話し合いが行われ、『雪が見たい!』という直美の一言から、気軽にいけるT北に決まった。


「わー! 見てみて! 一面雪景色~♪」


 長いトンネルを抜け、電車の車窓に映る景色が一気に変わる。
 そこには真っ白な雪が紺青(こんじょう)の山肌に化粧を施すかのように塗られていた。

 滅多に見られない雪に大興奮のLilyメンバー達。

 電車はこの颯爽とした雪景色を、北へ北へと向かっていた。



※※※



 やがて、電車は目的地へと到着する。

 その日、恭子達の宿泊する宿は、T北温泉の○○荘。
 創業1000年以上は続く老舗旅館で、創作料理と源泉かけ流しの温泉を満喫できる高級宿だ。

 メンバーはそれぞれの部屋に荷物を置くと、
再びフロントへと集合し、スキー場への送迎バスへと乗り込んだ。

 それから一時間ほど移動し、山頂付近のスキー場へと到着する。



 ※※※



「はーい、じゃあ滑り方わからない人はこっちに集まってー!」


 恭子が声をかけ、スキー未経験者を集める。


「はーい、あたしわかんなーい」


 直美を含む男女五名がスキーの経験がなく、恭子の教習を受けることになった。

 恭子の前に並ぶ初心者を横をゆっくりと滑りながら、誠と真里が声をかけてくる。


「キヨちゃん、私、真里さんと上行ってくるね」

「恭子さん、指導頑張ってくださーい」


 そう一言添え、誠と真里はリフト乗り場に向かっていった。

二人とも、スキーを教えるのを手伝うつもりだったが、連日遅くまで展示会の準備を進めてくれていたので、恭子の方から、旅行中は自由にして欲しいと言われていたのだった。


「ふぁっ!?」

 ズドーーーーーン!!!


 すってんころりんと直美が転ぶ。
 恭子は丁寧に分かりやすく教えていたのだが、五人の中で一番物分かりが悪いのが直美だった。


「だから違うの、への字でもバツ字でもなく、ハの字にスキー板を固定するのよ」

「こう? んにゅっ‼!?」


 バッッタンッ!!!


 再び直美が転ぶ。今度は両足を思いっきり両側に開いて転んだので痛そうだ。


「それも違う。ハの字は相手から見たハじゃなくて、自分から見てハの字にするの」

「えーこんなの無理だよー」


 直美はポールを地面に突き刺し、足をガタガタさせてハの字を作ろうとしている。

 とりあえず一通りの説明を済ませた恭子は、他のメンバーの指導を優先することにした。

 恭子の教え方が上手いのか、教えられるメンバーが優秀なのかは分からないが、それから数分して、他の四人は一通りコツを掴んだのか、一番難易度の低い坂で遊ぶと告げ、滑り去っていった。

 四人の姿を見送り、恭子が振り向くと、転んで地面に倒れている直美の姿があった。


(はぁ……直美ったら、得意なものと苦手なものが両極端なんだから……)


 恭子が今まで感じてきたことだが、
直美は合気道やボール投げ、テニスなど、力を思いっきり入れても良いものは得意で、金魚掬いや卓球など、力の入れ具合で結果が変わるものや、スキーや料理のように自然の力を利用するものは苦手なようだった。

 要するにパワー型なのだ。

 せっかくのスキー場で、上手く滑ることもできず、直美は悔しそうな顔をしていた。

 恭子は可哀想になり、倒れたままなかなか起き上がれずにいる直美に寄り添った。


「直美、大丈夫?」

「うぅ~……滑れないよー……」


 何とか直美を起き上がらせるのだが、
体勢を整えさせても、すぐにまた転んでしまい、なかなか上手くいかなかった。


 恭子は考えた。


 直美の性質を考えると、このまま教え続けたとしても、滑れるようになる可能性は低い。

 直美は転び続けて、そのうち参ってしまうだろう。

 せっかくの旅行で、そんな気持ちにさせてしまうのは可哀想だ。

 そこで恭子は別の方法を取ることにした。


「うぅ……なんであたしだけできないの……?」


 少し泣きべそをかいている直美を労るように恭子は優しく話しかけた。


「大丈夫よ、直美。別にスキーなんてできなくたって良いじゃない?」

「でも、あたしも滑りたいよぉ……うっうっ……」

「滑れる方法があるわよ。もっと簡単にね。もうスキーは止めて他行きましょ?」


 そう言い、恭子は直美のスキー靴を板から外すと、直美を連れてレストハウスへと移動した。

 レストハウスでは、恒例のピザが食べれるレストランや、トイレやお土産屋まであった。
 そして、スキーの装備を無くした客や、用意してこなかった客用に、スキー用品も売っていた。


「えっーと……あっ! やっぱりあった! すみません、これください」


 そこで、恭子が購入した物、それは……



 ※※※



「ひゅーーー!! 速い速いー!!」


 それから30分後、メインのスキー場から少し離れた、小さな子供達が遊ぶ子供広場に恭子と直美はいた。


「あー面白い! キョウちゃん、もう一回滑ろっ!」


 恭子が買ったのは少し大きめの二人乗りのソリだった。

 万が一の接触事故を考慮して、
恭子は空気を入れて使用する強化ビニール製のソリを購入していた。

 このソリは滑っている途中でも進路を変更する機能が付いており、恭子は、直美を前方に乗せ、自らは後ろに乗り、変な方向に滑っていかないよう角度を調整していた。

 子供広場とはいえ、この場所は緩やかな坂が50m以上は続いている。

 歩いて一番てっぺんまで昇るのは大変ではあったが、雪山で遊ぶのが初めての直美には苦にはならなかったようだ。


 直美は、さっきまでの悔し泣きも忘れ、恭子と一緒に滑る喜びでいっぱいの様子だった。


(直美も十分楽しんでるみたいだし、あのソリを買って本当に良かったわ)


 恭子が直美の喜んでいる姿を見てニコニコしていると、直美が話しかけてきた。


「キョウちゃんー♪ 今度はあたしが後ろでもいい?」

「えぇ、良いわよ」

「よーし、じゃあいくよー」


 ただの子供用のソリ。
油断した恭子は、深い考えも無しに承諾してしまった。

 直美が意気揚々とソリを発進させる。

 そこで恭子は気づいた。


「あら……? これ操作するレバー、前からじゃ動かしにくいわ……」


 進路を変えるレバーは、ソリの中央両隣りに付いていて、前からでは操作することができない。


「大丈夫、あたしが操作するから」


「えっ……ちょっ……ちょっと待って……」


 直美がレバーを動かす。

 するとソリはあらぬ方向へと進路を変え……
 そのまま斜面が急になっている坂へ向けて一気に前進した。


「あれ……? こう……? あれれ……?」

「あ……ひぃ……ちょっと……」


そこで、二人はこのスキー場の正規ルートではない雪道へと飛び出してしまった。
 
 整備もされていない坂道を、どんどんスピードを上げるソリ。

 既に子供広場からはだいぶ離れてしまっている。


 まるでジェットコースターに乗っているかのような爽快感。

 しかし、命の保障はどこにもない。


「ヤバイヤバイヤバイヤバイ…………!!!!!!」


 直美は混乱してしまい、目が泳いでしまっていた。

 とても操縦レバーを動かせる状態にはない。

 そこで、恭子の目がキッと光る。


「直美、転ぶわよ!!」

「へっ?」


 恭子は身体を反転させて直美に抱きつくと、ソリから飛び降りるように脱出した。


ズササササササササササササ!!
ゴロゴロゴロゴロゴロ……バサッ……


「いったぁ~~~~い!!」


 ソリの勢いが激しかったこともあり、二人は10mほど坂道を転げ落ちた。

 だが恭子がソリを降りるタイミングが良かったおかげで、特に大きな怪我をすることもなく、二人は立ち上がることができた。


 しかし乗っていたソリは、そのまま滑り続け、そこから50mほど先にあった大きな岩にぶつかってパンクしてしまった。


「あー……せっかく買ったのに……」


 残念そうに呟く直美。

 そんなパンクしたソリを見て、
直美が無事だったことが嬉しくなり、恭子は直美にキスをした。


「ちゅ……別にまた買えばいいわ。直美が無事で何よりよ♥」

「もう、キョウちゃんったら♥ ちゅっ……好きっ♥」


 その後、ディープキスを交わした二人は、
レストハウスにて同じソリを購入し、別の理由でまたパンクさせるのであった。



 ※※※



「いただきまーす!」


 夜になり宴会場に集まるLilyメンバー達。

 河豚やホタテなどの海鮮類から、地元名産の山菜、
県内特産牛のヒレステーキなど、豪華絢爛(ごうかけんらん)な食事が並んでいた。


「マコトさん、このゼリーみたいなものなんですか?」


 あまりに凝った料理のため、誠に質問する真里。


「これは、河豚の煮こごりだね。
河豚の皮を細かく刻んだものに、河豚のゼラチン質を混ぜてゼリー状に固めたものだよ」

「へぇーそうなんですね。さっそく食べてみます!」


 真里はそう言うと、河豚の煮こごりを口に含んだ。
 ゆっくり咀嚼しながら感想を述べる。


「うん、なんだか上品な味ですね……この皮ですか?
これがコリコリしていて、とても歯ごたえが良いです。
味付けも香ばしいというか、ほんの少しの酸味が感じられて、ゼラチン状の出汁がスープのように口の中全体に広がっていく感じがします」

「うん、やっぱり手間隙かけているだけあって、1つの料理だけでも色んな感想が出るよね。これなんかも大葉で鰻と真薯を包んで揚げたものなんだけど、2つ重ねて置いてあるよね?
色形が同じでも、食べてみると真薯に使っている白身魚が違うみたいなんだ。こうした発見も懐石料理の醍醐味だよね」


 そこで旅館の仲居が、高級そうなお皿に乗せたステーキを盆に乗せて持ってきた。


「お待たせしました。T北牛ヒレステーキでございます」

「わー! ステーキだー! 食べるの久しぶり~♪」


 直美がナイフとフォークを両手に持ち、嬉しそうにステーキを見つめる。


「あれ? これあんまり火通ってないみたいだよ? 触ってもあんまり熱くない! もうちょっと焼いてもらった方が良いんじゃない?」

「直美、大丈夫よ、このまま食べて。
良いお肉だから、あまり内面まで焼かずに弱火で表面を焼いたんでしょうね。
お肉本来の美味しさを味わう方法よ。
ほんのり温かいし、火はちゃんと通ってるわ。騙されたと思って食べてみなさい」

「うん」


 カチャカチャ

 直美はナイフとフォークを使いお肉を切り分けた。
 肉の断面は鮮やかなピンク色をしており、非常に食欲をそそる。

 直美は生焼けであることを気にしつつも、突き刺さしたお肉を口に入れた。


「……………………!?」


 直美の動きが一瞬止まる。
 手で口を抑え、じっくりと咀嚼を繰り返す。


「……………………」


 直美は決して何も言わなかった。
 恍惚の表情で、ゆっくりと肉を噛みしめ、染みだした肉汁を感じ取る。

 次第に直美の瞳は潤みだし、溢れた涙が頬を伝った……



 ※※※



 食事を終えた恭子達は、
それぞれの部屋へと戻り、温泉へ行く準備を始めていた。

 部屋の配分は四人グループを作り男女別々になるようにされていた。

 ただ例外として、
女性を恋愛対象としている恭子、直美と、
男性を恋愛対象としている誠は、男女どちらのグループにも入ることはできないため、同じくレズビアンだと見なされている真里を含め、四人でグループを組んでいた。

 一応、誠と男女同じ部屋になるということで
恭子はこの例外について軽く説明をしていたのだが、
真里は、不満を言うどころか、この部屋割りに大賛成であった。

恭子からの説明を受けてはいたものの、
まさか自分までが、レズビアンの一員として見なされているとは、夢にも思わなかったのである。


「ところで、マコちゃん」

「なに? キヨちゃん」

「マコちゃん、温泉入るのよね?」

「うん、部屋のお風呂、ただのお湯みたいだから、入りたいかな」

「どっち入るの?」

「ええっと……」

「マコトさんは女湯で良いと思います! 誰からどう見たって女なんですから、大丈夫ですよ!」


 真里が二人の会話に割って入る。
 少し興奮気味のご様子だ。

 その態度から、単純に一緒に入りたいだけなのだなと察した恭子は、気にせず話を続けた。


「マコちゃんって下は取ってないわよね……?」

「うん……付いてるよ」

「それじゃあ、女湯に入ることはできないわね。
 それに戸籍上女であることを証明するものも必要になるわ」

「そっかー……じゃあ男湯に入ろうかな……身体は男のままだし大丈夫だよね?」

「化粧をきちんと落として、男性用の浴衣を着ていけば大丈夫かもしれないわね」

「そうだよね。じゃあ男湯入ることにするよ」

「えー、男湯いっちゃうんですね……」


 話がまとまり、残念そうに肩を落とす真里。



 それから数分後、準備を整えた恭子、直美、真里の三人は女湯へと出掛けていった。

 誠はひとまず洗面台でクレンジングを行い、恭子に言われた通り、男性用の浴衣に着替えてから部屋を出た。


 1階の男湯前に到着する誠。

 自分は男なのだから、堂々としていれば大丈夫。

 誠はそう心に言い聞かせると、男湯の暖簾をくぐるのであった……
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