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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.46 【 明かされる事実 】

 次の週

 真里は告白する覚悟を決めていた。


 だが、三年生の登校は週に1度だけのため、
誠が学校に来るのを、数日間待たなければならなかった。

 その間、再度告白することへの恐怖が真里を襲ったが、
弥生と萌に励まされ、なんとか意思を固めることができていた。



※※※



 そして運命の日。


 いつものように裏門を抜け校舎内に入ると、
大学の合格結果の紙が、廊下の壁に貼り出されようとしているところだった。

 真里は下駄箱に靴を入れると、何の気なしに結果表の前に足を運んだ。
目的はもちろん、誠の合格結果を確認するためだ。

 誠が落ちるなどということは微塵も考えておらず、単純に知りたいという欲求が真里を動かしていた。


 だがそこで、真里は予想外の結果を知ってしまう。


(うそ………どうして?)


 なんと、〇〇大学の合格者名簿に桐越誠の名前がなかったのだ。

 誠は全国統一模試でも常に上位の成績で、
〇〇大学といえども、余裕で合格できるほどの学力を持っていた。

 それがまさかの不合格。

 真里はこれから誠に会うのに、
どのような顔をすれば良いのか分からなくなってしまった。



※※※



 2時間目の授業が終わり、真里は急いで誠のいる校舎へと向かった。

 三年生は1時間目がなく、
2時間目に登校し帰宅することになっている。

 真里の校舎から、誠の校舎までは少し距離があるため、
真里が到着する頃には、既に下校する三年生が疎らに帰り始めているところだった。


(桐越先輩はどこだろう?)


 キョロキョロと辺りを見渡す真里。

 始めは下駄箱の周りを探しているだけだったが、なかなか見つからないので、誠の教室に向かうことにした。

 階段を登り廊下の角を曲がる。
 するとちょうど教室を出て、こちらに歩いてくる誠の姿が見えた。


(なんだか元気がないみたい……)


 以前、誠を包んでいたような爽やかな雰囲気はなく、自身なさげで弱弱しい印象を受ける。

 誠の中性的な顔立ちと、比較的柔らかな身体つきが、余計その弱弱しさを際立たせているような感じがした。

 真里はその様子が可哀そうになり、どうにかして慰めてあげたいと思った。


「あっ、一ノ瀬さん。久しぶり」


 誠が真里の姿に気づき、ほほ笑み挨拶をする。

 こうして誠に会うのは何週間ぶりだろうか?

 元々校舎が違うため、誠に会えるタイミングはあまりなかったが、それでも以前は3日に一遍(いっぺん)は会うことができていた。

 しかし自由登校になってからというもの。
 意識して会いに行こうと思わなければ、ほとんど顔を合わせることはできなかった。

 尚且つ真里は直美と誠が別れたことを知らなかったため、二人の間に割って入ることは良くないと思い、自重していたのだ。

 萌の報告がなければ、今日も誠に会うことはなかったであろう……


「お久しぶりです、桐越先輩。
 あの……少しお話があるのですが、よろしいですか……?」

「話? いいよ、特に用事もないしね」


 真里は、誠を人気(ひとけ)のない場所に連れていくと話を始めた。


「えっと………受験お疲れさまでした。あの……大学のことですが……」

「あぁ、合格結果を見たんだね。
 気を使わなくても大丈夫だよ。もう僕自身の中で区切りがついた話だから」

「あの……どうしてあんな……桐越先輩、いつも成績上位だったのに……」

「仕方ないよ。
 今回の件は全部、僕が自分自身をコントロールできなかったせいだよ。
 でも、これを機に別の進路も考えてみようと思うんだ。
 一応〇△大学や〇✖大学は合格しているから、どちらが自分に合っているのかじっくり考えてみるよ」


 〇△大学も、〇✖大学もどちらも一流の大学だ。

 第一志望の〇〇大学を合格できなかったのは残念ではあるが、
社会的に見れば、どちらに通っていても、十分認められるほどの大学であった。


「桐越先輩でしたら、きっとどちらに行っても上手くやっていけると思います」

「そう言って貰えると嬉しいよ。ありがとう一ノ瀬さん」

「いいえ……あの……それでなんですが……」

「………?」


 ふと、誠の顔を見る。
 近くで見ると、やはり以前よりも頬がだいぶこけたように感じる。

 余程辛い思いをしたのだろう。
 直美と別れたことが原因なのか、
大学を落ちたことが原因なのか、それともその両方か。

 真里は誠に告白しようと思っていたが、そんな辛い状況の人に、
自分の一方的な感情をぶつけるのが、なんだか卑しいことのように思えてしまった。


「い……いえ……大学に行っても頑張ってください!
 私……いつまでも先輩のこと応援しています!」

「ありがとう。この学校で一ノ瀬さんに会えて良かったよ。
 一ノ瀬さんも、来年3年生だし受験頑張ってね」


 そう言って二人は別れた。



※※※



 教室に戻る真里、その表情は暗く沈んでいた。


(結局、告白しなかった……あんなに弥生や萌が応援してくれたのに……)


 先生が教室に入室し、3時間目の授業が始まろうとしていた。


 ふと、弥生の言葉が蘇る。


“桐越先輩が甘髪恭子と付き合っていないと思うのなら、思い切ってぶつかっていきなさい。未練が残らないようにね“


(未練……私はきっとこのまま何も言わなければ未練を残し続けてしまう……
 たしかに桐越先輩は、今辛い状況かもしれない……
 でも、もしここで告白が上手くいけば、私は彼女として堂々と傍にいれる。
 慰めてあげられる。
 断られるかもしれないけど、最後だと思って、頑張らなくちゃ!)



「えっ~~っと、それでは授業を始める。
 みんな古典Z漢文編の84ページを開いて」

「先生! すみません、お腹が痛くなってきたのでお手洗いに行ってきます!」

「へっ!? ………あっそう、一ノ瀬さん、お大事にね……」


 真里は返事を聞くと、勢いよく教室を飛び出してしまった。


(すっごい勢いだな……
 よっぽど、ギリギリだったんだね……漏らさないと良いけど……)



※※※



タッタッタッタッ…… タッタッタッタ………


 誰もいない廊下を、真里の足音だけが木霊する。

 真里は誠のいる校舎に到着すると、まずは下駄箱を確認した。


(靴がある……まだ外には出ていないみたい……
 とりあえずここで待つ?
 いや、とりあえずさっき別れたところを探してみよう)




 ずっと待っていたところで、誠がどこかで作業をしていたら、会うことはできない。
 居ても立っても居られない真里は、下駄箱とその周辺を往復して、誠を探すことにした。


(あっ! いた!)


 先ほどの廊下から、そう遠くない場所に誠を見つける。
 頭を少し下げて、何かを抱えているようだ。


(荷物運びでもしているのかな? とりあえず近寄って……!?)


 真里はそこで気が付いた。

 『誠が抱えている物の正体』に………


(あ……あ……あ……あ………)


 誠が抱えていたのは物ではなく、真里が気にしていた人物。

 『甘髪恭子』だった。


 二人は何も言わず、静かにただ抱きしめ合っていた。
 誠はいつになく真剣な表情で、恭子は薄っすらと涙を目に浮かべて……

 その姿は、まるで将来を誓い合った恋人同士のように見えた。


(それが本当……だったのですね……)


 弥生と萌が結論付けた説の方が正しかった。


 あんなに直美のことを愛していた誠が、
どうしてそんなにすぐに忘れることができたのか疑問ではあったが、
いま目の前で起こっていることを否定はできない。

 真里は二人に見つからないように後ずさると、
声をこらし、俯きぽとぽとと涙を落しながら、元いた教室へと帰っていった。



※※※



 それから一週間後


 真里の学校では、卒業式が行われていた。

 あれから真里の頭の中にはトラウマのように、
誠と恭子が抱き合っている光景が残ってしまい、学校を休んでしまっていた。

 弥生と萌の救護の甲斐あり、なんとか学校に復帰できた真里であったが、
卒業式は誠の姿を見てしまうため、欠席することにした。


ピロリーン♪♪


 そうして春休みを迎えた真里の元に、直美からLINEが届く。


 内容は引っ越しをするので、真里から借りたGL本を返却したいとのことだった。
 真里は、それならついでに引っ越しを手伝おうと思い日程を調整した。



※※※



「ありがとう真里ちゃん。引っ越し手伝ってくれて~!」

「いいえ、別に良いですよ♪ ワッフル奢ってくれるんですもんね?」


 直美と直美の母親、弟のユウ、真里、引っ越し業者のおっさんで作業を行い、予定よりも早くトラックへの積載を終えることができた。

 引っ越しを終えた二人は、以前一緒にワッフルを食べたお店へと移動。
 久々のワッフルとGL談義に花を咲かせたのだった。


「直美さん、ご馳走様です。ワッフルとても美味しかったです」

「ううん、何ならもう一個注文しても良いよ♪ 今日は時間あるしね♪」


 ニコニコと注文を促す直美。

 きっともう一つ食べたいのだろう。
自分の分だけ注文したら悪いので、真里にも食べるように促しているのだ。

 真里は直美の言葉に甘えて、もう一つお願いすることにした。


「ホントですか~! 一つじゃ足りないと思っていたところなんです。
 ありがとうございます! 直美さん」

「別に良いよ~! 真里ちゃんと一緒にワッフル食べれるんだもの♡
 お姉さん大奮発しちゃう♪ 店員さんワッフルあと2つ追加ねー♪」


 ワッフルを注文出来て上機嫌の直美。
 舌で唇をペロリと舐めて、店員さんに注文をする。
 やはり、もう一つ食べたかったようだ。


「あっそう言えば、直美さんに聞きたいことがあったんです」

「ん? なになに~?」


 真里が聞きたかったこと。それは誠とのことだった。

 誠と恭子が付き合っていたのは残念だったが、いつまでもそのことにばかり縛られていてはいけない。

 今回の事に区切りをつけるためにも、把握できることはしておきたいと思ったのだ。


「えっと……人から聞いた話なのですが……
 直美さん、最近彼氏と別れたって聞いて、なんでなんだろうなって?」


 直美の表情をチラチラと確認しながら、質問をする。
 少しでも不機嫌そうな顔をしたら、すぐに謝ろうと思っていた。

 しかし直美はそんな真里の心配も何のその。
 何も気にする様子もなく、あっけらかんと返事をした。


「んー? そんなの簡単だよ。
 あたし、高校三年の途中からなんだけどね。
 男の人より女の人の方が好きだって気づいちゃったの」

「へぇっ!?」


 あまりの直美の衝撃発言に、真里はおもわず眼球が飛び出しそうになってしまった。


「そんでね♪ あたしの友達にキョウちゃんって人がいて、その人のこと好きになっちゃったんだよね。
 最初はノーマルだと思って諦めてたんだけどさ。
 なんと! キョウちゃんもあたしのこと好きだってことがわかってさ!
 あぁ…あたし達って運命の糸でつながれてたんだね~ってことで付き合うことになったの~♪」

「えっ!? 直美さん、もう彼氏さんいるんですか?」

「違うよ~彼氏じゃなくて、カ・ノ・ジョ♪
 あたしの彼女、超綺麗で、頭が良くて~スタイル良くて~そんでもって、すっごく優しいの♪」


 突然の展開に頭がついていかない真里。
 冷静に頭を切り替えて話を続ける。


「そ……そうだったんですね……おめでとうございます。
 そのキョウちゃんって方と幸せになってくださいね」

「うん♪ もう十分過ぎるほど幸せだけどね~♪」


(直美さんって同性愛者だったんだ……
 まさかそれが別れた理由だなんて、分かるわけがないよね……
 ところで相手は誰なんだろう……?
 たしかキョウちゃんって言ってたよね……?
 キョウちゃん……キョウ……キョウカ? キョウコ?……恭子?)

(……………えっ!?)

(ま………まさか…………)


 真里の額から冷や汗が出る。
 まさかそんな……真里はあり得ないと思いつつ再度直美に確認した。


「あの……直美さん……つかぬ事をお尋ねしますが……
 そのキョウちゃんって方は、もしかして……甘髪……?」

「うん、そうだよ。甘髪恭子。その人があたしの彼女♡」


 両手で自らを抱きしめウットリとした表情を浮かべる直美。



ドーーーーーーーン!!!!!!!



 真里は、まるで魔法をかけられ石になったかのように固まってしまった。

 そこに店員がワッフルを持って登場した。
 最初に注文したのとは別の、一風変わったワッフルが皿の上に乗っている。


「はい、お待たせしましたー当店特製のシークレットワッフルです」

「シークレットワッフル!?」


 直美が目を見開いてワッフルを見る。
 非常に美味しそうなワッフルではあるのだが、直美はそれを注文した覚えがない。


「あの……あたし、これ注文していないんですけど……?」

「いいえ、このワッフルは当店のワッフルを気に入っていただいたお客様限定でお出ししている特別なワッフルなのです。
 2つ目のワッフルを注文していただいたお客様に内密にお出ししております。
 試しに食べてみてください。万が一美味しくなければ料金は頂きません」

「マジで!!?」


 店員はそのまま丁寧にワッフルを直美と真里の前に差し出すと、カウンター裏へと帰っていった。


「真里ちゃん、このワッフルすごいね……
 なんだかソースがぶくぶく沸騰してるし、熱いうちに食べよっか?」

「…………」


 ナイフとフォークを持ち、いざ食べんとする直美。
 しかし真里は固まったままだった。


(そんな……直美さんがレズビアンで……
 しかも甘髪恭子と付き合っていただなんて……
 えっ? ということは?
 桐越先輩は今、誰とも付き合っていないってこと……?)



「ンッマァアーーーーーーーーイ!!」



 差し出されたシークレットワッフルのあまりの美味さに直美が叫ぶ。

 一体自分は何を口に入れたのだろう?

 一瞬全ての記憶を失いかけるほどの衝撃を直美は受けていた。



(と……いうことは……私にも、まだチャンスがあるってことだよね……)



「何この……カリカリと香ばしい表面の味わい……蕩けて舌に浸透するような生地の柔らかな食感。クランベリーソースと生クリームの絶妙なハーモニーが、まるで口の中で協奏曲を奏でるかのように各食材の良さを主張している……」


 ワッフルの旨さに脳みそを揺らされた直美は、
普段は言わないような美食愛好家のようなセリフを口ずさんでしまった。

 そして感動にただ……ただ……涙した。


「真里ちゃん……早く……このワッフル……あぁおいしい……食べなよ。
きっと、あたしは……これを食べるために……生まれてきたんだと思う」


 真里が、茫然としながらも直美に促されワッフルを口に入れる。

 誠と恭子が付き合い、望みが断たれたと思っていた真里は、直美から真相を聞かされ、既に泣いていた。


「ほら……美味しいでしょ……?」

「はい……美味しいです……こんなに美味しいの……初めてです……
きっと神様が与えてくれたんですよ……このワッフルも……チャンスも……」


(先輩のこと追わなきゃ……例え〇✖大学でも、〇△大学でも、何がなんでも入って……今度こそ告白するんだ……)


 既に誠は引っ越してしまった後で会うことはできなかった。

 1年間みっちり勉強して同じ大学に合格することができれば、誠の後輩として再開できるようになる。

 そのためだったら、どんなに勉強が苦しくても我慢できる。

 もちろん大学に入って、すぐに誠が別の彼女を見つける可能性は大いにあった。

 だが今回真里は、誠と恭子が付き合っていない可能性を否定し、自らチャンスを潰してしまっていた。

 そのため次に告白するまでは、誠がフリーである可能性を否定するのは止めようと、真里は心に決めたのだ。



※※※



 それから一年後……

 新学期を迎えて、一念発起した真里は、
その後メリメリと成績を上げて無事〇✖大学を合格することができた。

 心を入れ替えた真里は、
奇声を発するBL妄想を断ち切り、ひたすら勉学に励んだ。

 そのおかげもあり、
真里の男子からの人気は徐々に上がり告白されるまでになった。

 しかし、既に心を誠一筋に変えていた真里は、
そんな誘惑には見向きもせず、再び誠に告白するために頑張ったのであった。



 桜咲き乱れる春の〇✖大学校門前

 そこには身も心も一段と成長した真里の姿があった……
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