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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.42 【 コミケの帰り道 】


「よっしゃぁぁ!! 大漁じゃ~~~!!」


大きめの手提げ袋を掲げて真里が吠える。

この日、真里は同じ漫画研究部の弥生と萌と共に、
コミックマーケット1020に参加していた。

コミケ公式の紙袋を使用している人もいるが、
心配性な真里は、強く引っ張っても破けないコットン製の手提げ袋を持参していた。

大切な同人誌に万が一のことがあってはならない。

その思いから用意された愛用の袋には、
真里お気に入りの同人誌がどっさりと収納されていた。


「ふっふっふ……諸君……私のこの宝の山を見せてあげようか?」


弥生と萌に向かって、真里が戦利品の公開をしたがっている。


「ほう……その様子では、お目当てのテトグッズを手に入れることが出来たようだね。真里君」


真里のテンションに合わせて萌が答える。


「もちろんですよ。このために一体どれほどバイトをしたことか……
それもこれも、テト本と特製テトフィギュアを買うため……」

「真里……喜ぶのは良いけど、戦利品の見せ合いは後からにした方がいいわよ。
まもなく着替えを終えて、まどマジのコスプレ撮影会が始まる時間よ」

「はぅ……そうでした……直ちに現場に急行します」


冷静な弥生に促され、まどマジの撮影に向かう真里。
肩からは、これまた愛用のNikanのカメラD1050をぶら下げている。

国産の有名カメラメーカーNikan。
そのメーカーが出す上位モデルがD1050だ。価格はざっと〇〇万円する。

高校生が持つには、かなり高額なカメラであるが、
元々カメラとイラストが趣味の真里は、どうしてもこのカメラを手にいれたかった。

そして、たまたまフリーマーケットで、型落ち品が安価で売られているのを見つけ、衝動買いしてしまったのだ。

重いカバンと重いカメラ、少し重装備であるが、早歩きで現場へ向かう三人。
コミケでは走ってはならないのがマナーだ。

現場に到着し、目当てのコスプレイヤーを発見する真里。


「いたぁ! まどマジの〇〇さんだ!
ヤバイ……クオリティ高すぎて……まさに神降臨って感じ!」


真里は、魔法少女のコスプレをしている女性に撮影許可を貰うと、
他の男性陣に混じって写真を撮り始めた。

光の当たり具合、影の付き方、ポーズなど、
洗練された感覚で撮影された写真は、コミケの宣伝として使用しても申し分ない出来であった。

そうして撮影を終えた真里に、萌が提案する。


「ねぇねぇ、真里は撮るの好きだけど、自分がコスプレするのはどうなの?
真里だったら、うろ剣の雪村巴なんか似合いそうだけどな~」


うろ剣とは、100年ほど前の文明開化の時代を舞台とした少年漫画のことだ。
雪村巴とは、真里と同じく冷たい雪のような和風美人で、準ヒロイン的役割のキャラクターであった。


「私はそういうの無理――
コスプレっていうのは、役に成り切らなきゃいけないし、
そもそも大勢の人に撮影されるなんて無理無理」

「ふーん……勿体ないなぁ……」


弥生が何か見つけたようで、二人に声をかける。


「あ、あそこにテトがいたわよ!」

「えっ!? どれどれ!?」


テト好きの二人が目を輝かせる
弥生の指さした方角へ、即座に向かう。



※※※



テトのいる場所に到着する三人。
遠目で見た時はしっかりとテトに見えていたのだが……


「……………………」

「……………………」


そこには、テトではあるが、
体型と顔が、本来のテトとはかけ離れたコスプレイヤーがいた。
衣装も、かろうじてテトだと分かる程度のクオリティだ。


「……………あぁ、テトだね」

「うん…………テトだね」


真顔でテトらしきものを見つめる二人。


(まぁ、普通はこうだよね。まどマジの〇〇さんがレベルが高すぎるだけ……
でもテト好きとしては、やっぱりもっとクオリティ高くして欲しかったな……)


表情も変えず、ぼんやりと考え事をする真里。
同じく、テト好きの萌が口を開く。


「はぁ………もうちょっと頑張れたと思うんだよね、あの人……。
でもやっぱり元の素材って大事だよね。
もし、桐越先輩がテトのコスプレしたらどんな感じになるんだろうね?」

「ふぁっ!?」


途端に真里の脳内のレイアウトが切り替わる。

テトのコスプレをした誠。

想像の窓枠に赤と白の花を添えて、ポーズを取った誠の姿に、真里は心を鷲掴みにされた。


「ふぇぇぇぇ……デュフフ……デュフフフフフフ……
テト……先輩……デュフフフフフフフ……」

「それ禁句よ、萌。こうなったらしばらく真里は帰ってこないわよ。
禁断のデュフフフも始まっちゃったし……」


弥生が苦い顔をしながら、真里を見つめる。


「あっ! ホントだ……ごめーん、真里」

「真里は良いわよ。今頃きっとお花畑よ。
大変なのはこの子の介護をしなきゃいけない私達の方よ……」

「ひゃーーーーー!!」


コミケはただでさえ体力が要る戦場だ。
ましてや仲間の一人がこのように再起不能ともなれば、
他のメンバー達にかかる負担は大きい。

萌は、思わず口走ってしまった言葉を後悔した。



※※※



空に赤みが差し込み。
一日の終わりが近づき始めた頃。

繁華街にて、トボトボと家路へと向かう真里の姿があった。



なろう挿絵-黒百合



あの後、一時間は弥生も萌も真里の介護をしてくれていたのだが、
さすがに二人とも目当てのグッズを諦めるわけにはいかず、途中から真里を見捨てて行ってしまった。


「すまない、真里。私達にも譲ることのできないグッズがあるのだよ。アディオス!」


真里が再び目を覚ましたのは、コミケの片づけが始まり、係員に呼びかけられた時であった。

幸運なことに、真里の戦利品は奪われることもなく……
[正確に言うと、危なそうな人だったので誰も近づかなかっただけなのだが……]
真里は無事に帰途に就くことができた。

その後二人にLINEを送ったのだが、荷物が多いので帰ると返事が来ただけだった。


(弥生も萌もひっどーい……私を見捨てて行っちゃうなんて……
でもまぁ、私も反対の立場だったら、同じことするかもな……)


そんな風に考えながら、駅に向かって繁華街を歩いていると、
二人組の男性に話しかけられた。


「君、可愛いねー。これからどこ行くの~?」


ハッとして真里が振り返ると、髪を金や茶に染めたチャラそうな男が二人いた。


「い……いえ……別に、これから帰るところです……」

「えっ? そうなんだ! じゃあ俺たちとどっか遊びに行こうよ!
まだ明るいしオイスターの美味しい店知ってるんだけど、一緒に行かない?」

「オ……オイスター……興味ないんで……遠慮しときます……」


真里は、こういったチャラい系の男性が苦手だった。
力も強そうで、若干怖いのもあった。


「荷物重そうだね。俺が持ってあげるよ」


そう言い、茶髪の男が真里の持っている戦利品に手をかける。
不意を突かれた真里は、そのまま手提げ袋を奪われてしまった。


「だっ……大丈夫です! じ……自分で持てますからっ返してくださいっ!」

「ハハハ、気にしなくていいよ~結構重いね。何入ってるの?
こんなのずっと持ち続けたら、肩外れちゃうよ~?」

「だ…ダメです。それ大切な物なんです。お願いです……返してっ」

「俺たちに付き合ってくれたらイイよ~
ちょっとそこにバーがあるから、一緒に飲みに行こ~よ、ねっ!」


男が路地裏のバーを指さす。
いかにも怪しげなお店で、中に入ったら何をされるかわからない。
真里は不安と恐怖でいっぱいだった。


「ちょっと、あんた達何してるの? その子、怖がってるじゃん」


真里の背後から若い女性の声が聞こえる。
声のする方向を振り返ると、そこに見覚えのある女性の姿があった。



真里と同じ高校の先輩、藤崎直美だ。
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