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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.35 【 退行催眠 】

【 CAUTION! 】

今回はBL要素が入っています。苦手な方はご注意ください。





(やっぱりそう考えてしまうのね……マコトくん……)



ここは恭子の部屋。

誠は恭子から借りた女性用の服に身を包み、
化粧を施され、ウィッグを被った状態で眠っている。


卒業式を終えてから1週間後。


誠は恭子に誘われ遊びに来ていたのだ。
そしていつものように、女装して催眠を受けていた。


今回の大学での出来事。
これは実際に起きたことではなく、恭子が誠に見せた幻覚だった。

恭子は、大学進学後に、自分と直美が付き合ってることを知り、
誠がどんな反応をするのか確かめていたのだ。


そして誠は、危惧していた通り、
二人の関係を怪しみ、催眠術に原因があることを突き止めた。

誠が誰かに協力を仰ぎ、
直美を助け出そうとするのなら、
このまま野放しにしておくことはできない……

誠には、二人の関係を素直に受け入れてもらわなければならないのだ。

そのためには“これまで以上に強力な催眠術”をかける必要があった。


(本当はこんな催眠術かけたくはなかったんだけど……)


恭子は机の引き出しから、ある一冊のノートと黒い本を取り出した。
ノートには、これからかける催眠術の流れが事細かく記されていた。

時計を見る恭子。


(明日の朝までにはかけ終わると良いんだけど……)


恭子は、予め誠に親へと電話させていた。


“今日は友達の家に泊まる、帰るのは明日になる。”


表向きは、友達同士の単純なお泊り会。

これから行う大規模な催眠のために、
誠にはどうしても今夜泊ってもらわなければならなかった。

誠は、女性の家に泊まるなんて……と初めは思い留まっていたのだが
恭子から、時間を気にせず女の子のコーディネートをさせて欲しいと、
強く希望され、承諾していたのだ。



※※※



恭子はノートの最初のページを開くと、誠に暗示をかけ始めた。


「あなたはこれから徐々に過去に戻っていきます。
私が数を数える度に、どんどん若返っていきます……」


恭子がかけようとしている催眠は、『退行催眠』と呼ばれるものだった。

『退行催眠』とは、
本人の意識を過去の記憶やイメージに戻らせる催眠術のことである。

それは、
前世の記憶やイメージに戻る『過去世退行』と、
今世の記憶やイメージに戻る『年齢退行』というものに分けられていた。


恭子がこれから行おうとしているのは、そのうちの『年齢退行』だ。


恭子は、自分と直美が付き合っても疑問が生じないように、
誠の幼い頃からの記憶を改変しようとしていたのだ。


(国立図書館の奥の棚に眠っていた古文書……
それに記されている方法を使えば、
時間をかけずに誠くんの記憶や考え方を変えることができるはず…)


恭子はノートの隣に置いてある黒い本に目を向けていた。



※※※



恭子は卒業式の次の日から、
毎日、各地の図書館へと出向き、催眠に関する文献を漁っていた。

そして、ある古い国立図書館にて、望んでいた書物を見つけていたのだ。


その書物は古ぼけた棚に、
まるでその存在を係員に忘れられたかのように、埃が被った状態で置かれていた。

恭子は初めそれが催眠に関する書物だと気づかなかった。

本を探し歩く恭子の肩がうまい具合にぶつかり、
棚から落ちたその本を、運よく見つけることができたのだ。


表紙に白く書かれた『hypnotisme』の文字…… (※※※催眠術の意)


恭子にはまるでその本が自分から姿を現したかのような奇妙な錯覚に陥った。

タイトル以外、イラストも何も描かれておらず、黒でびっしりと埋め尽くされた表紙は、ある種異様な雰囲気を放っていた。

恭子はそれを元の棚に戻そうと考えたのだが、
誠に催眠をかける期日が迫っていたこともあり、藁をも掴むような気持ちで、読み始めることにした。



なろう挿絵-黒百合



古文書は全てオランタ語で書かれてあった。

恭子はオランタ語はあまり得意な分野ではなかったが、
国際派の両親を持つ恭子にとって、内容を読み解くのは簡単だった。

それにこの古文書自体が、
恭子のオランタ語のスキルに合わせたかのように、簡略な文語で書かれていたのも、辞書を引くことなく読み進めることができた理由であった。

そうして恭子は、まるでスポンジが水を吸収するかのように、
新たな催眠方法を取得していったのだ。



※※※



「18……17……16……15……
あなたは中学校にまで戻りました……まだまだ若返っていくわよ……?」

「14……13……12……11………
はい、小学校にまで戻りました……ランドセルの感触が懐かしいわね……?」

「10……9……8……7……
周りのみんなもどんどん若返っていくわ……先生たちも若いわね……?」


そうして恭子は3まで数えると、誠の意識を一旦開放することにした。

それよりさらに年齢を下げることも考えたが、
言語を理解できるかどうか考えると、やはり三歳が限界のように感じられた。


「……3、はい、だんだん周りが明るくなっていくわ…… ここはどこかな?
マコトくんがよく知っているところ、そう……ここは幼稚園よ」


恭子は話し言葉を柔らかいものへと変えた。
まるで小さな子供に優しく語りかけるような話し方だ。


「周りにお友達がいっぱいいるね? お姉ちゃんに紹介してもらえるかな?」


少しして、誠が口を開く。


「うん、いいよ……ぼくの友達は、ひろしくんとたけるくんと----」


誠が小学校時代の友達の名前を列挙していく。
言葉遣いもずいぶん幼いものへと変わっている。

恭子は当時の様子を把握するため、誠の話をメモしていった。


「そっか~、マコトくんはボール遊びが好きなんだね?」

「うん! サッカーとかドッジボールとかすごく楽しいんだよ!」

「へぇ~なるほどね。女の子とは遊ばないの?」

「う~ん、たまにかな~?
えりかちゃんやしずるちゃんに誘われておままごとすることもあるよ」

「そうなんだぁ、おままごと楽しい?」

「う~ん、よくわかんない。
ぼくはサッカーやドッジボールの方が楽しいかな~」


「はい、【STOP】」


楽しそうに話をしていた誠が、ガクっと頭を下げる。


古文書を読んだ恭子が、
新たに身に付けた催眠方法【 キーワード催眠 】だ。


予め、最も暗示を受けやすくなる“キーワード”を決めておき、
それを聞かせると、すぐにその状態に戻れるようにしておいたのだ。

もちろん、これは、直美や誠のように何年も催眠をかけられ、
被暗示性が高くなっている者にしか効かない特別な催眠方法であったが……


「マコトくん……お姉ちゃんの言うことをよく聞いてね……
お姉ちゃんの言うことは全て正しいの……
マコトくんの思い違いを直してくれるのよ?
マコトくんは、なんでもお姉ちゃんの言う通りにしたくなっちゃう……
お姉ちゃんの言うことを聞くと、と~っても気持ちよくて幸せな気分になれるのよ……」

「うん……」

「そう……気持ちよくなってきたね……?
なんだか、ほわぁ~んって暖かい何かに包まれているみたい……
それがすごく気持ちいい……」

「うん……気持ちいぃ……」


誠の顔が緩む、リラックスした表情で恭子の声に耳を傾けている。


「いいわぁ……よく聞いてね。
あのね……マコトくんは、おままごとが大好きなの……
おままごとは、ケガする心配もないし、いろんな役ができて楽しいよね……?」

「うん……おままごと好き……」

「だけど、サッカーやドッジボールは危ないよね?
ドッジボールは、すごい勢いでボールをぶつけられちゃうし、
サッカーも、蹴ったボールがぶつかっちゃうかもしれない……
そうなったらすごく痛いよね?」

「……」


誠は何も答えない。

ボール遊びが好きな気持ちと、
怪我を心配する気持ちが頭の中でぶつかり合っているような様子だ。


「ほら、思い浮かべてみて?
ボールがすごい勢いでぶつかっちゃう。
ぶつかったらすごく痛い……
血が出ちゃうかもしれない……
骨も折れちゃうかもしれない……
当たり所が悪いと死んじゃうかもしれないよ……?」

「……死んじゃうの?」

「そうよ。死んじゃうの……
それでもボールで遊びたい? ボールが怖くないの……?」

「……やだ。ボールこわい…」

「それにマコトくんが投げたり蹴ったりしたボールで、
お友達を殺しちゃうかもしれないわよ……?
そうなったらすごく悲しいわよね……?」

「うん……ぼく、みんなを殺すのなんて絶対にヤダ!」


ボールに対する悪いイメージを与えられて、マコトは悲しい顔をしている。


「でも、おままごとなら平気よ?
怪我もしないし、誰も傷つけない……お服も汚れないし、良いことづくめね?」

「うん。そうだね……」

「じゃあ、えりかちゃんやしずるちゃんと遊びましょうね。
女の子の遊びは安全で楽しいけど、男の子の遊びは危なくて怖いこと。
マコトくんは男の子と遊ぶよりも女の子と遊ぶ方が楽しいの」

「うん、ぼく……女の子と遊ぶ……」


その調子で、恭子は誠の園児時代の記憶を変えていった。

ロボットよりも人形が好き、青よりも赤が好き、
そうして本来、誠が好むものを否定し、
女の子が好むものを好きになるように変えていった。


「ねぇ、マコトくんは付き合っている子とかいるの?」

「えっ……それは……」


恥ずかしそうにモジモジする誠。
どうやら意中の相手がいるようだ。


「お姉ちゃんに教えてくれるかな?」

「付き合ってはいないけど……
ぼく……えりかちゃんのことが好きなんだ……」


先ほど、おままごとに出てきた女の子の名前だ。


「へぇ~そうなの。もうキスとかしたの? 好きってちゃんと伝えた?」

「え? そ、そんなことしないよ」



どうやら誠は奥手なタイプだったらしい。

だとしたら、この後の暗示がずいぶんと楽なものになる。

恭子は直美以前の恋愛履歴を全て消すつもりでいた。
誠には女性に興味を持っていてもらっては困るのだ。

実際に付き合った経験があるのであれば、その記憶を消すのは難しいが、
片思いの気持ちだけなら、消すことは容易に可能だ。



「好きって言ってないんだ……
じゃあマコトくんは、えりかちゃんのことをお友達として好きってことなのよ」

「そうかな……
えりかちゃんは、特別だと思うけど……」

「本当にそう? マコトくんはえりかちゃんに、
わぁ、この人良いなぁ~って憧れちゃうこととかある?」

「憧れ……?
ううん、ただ一緒にして楽しいなって……」


三歳の男の子が同い年の女の子に憧れを抱くのは稀なケースだ。

この年の男の子は、
戦隊物のヒーローや、消防士や警察官などに憧れを抱くのが一般的なはずだ。


「それはお友達としての好きってことなの、
本当に好きだったら、胸がキュンキュンしちゃって、
抱きしめられたい……キスされたいって思っちゃうものなのよ?
マコトくんはえりかちゃんに抱きしめられたり、キスされたいって思っちゃう?」


本来なら、男性から女性のことを想う時は、
積極的な言い方をするのが自然だが、敢えて受け身な言い回しを行った。

こうした恭子の回りくどい言い方に
男性である誠は違和感を覚え、素直に肯定することができなかった。


「思わない……」

「そうよね。じゃあただのお友達ね」

「う……うん……」


引っかかるものはあるものの、
三歳の誠には、それが何なのかわからなかった。


「それよりマコトくんは、サッカーやドッジボールをして遊んでいる男の子のことを、カッコイイと思わない?」

「え?……カッコイイの…?」


ボール遊びについて、悪い印象を与えられていた誠は、意味がわからなかった。


「だって、マコトくんは、ボール遊びすごく怖いでしょ?」

「うん……こわい……」

「そんな怖い遊びを、
あんなに楽しそうにしている男の子ってすごいと思わない?」

「え?……うん」

「男の子はケガするのも、させられるのも分かってて遊んでいるの。
そんな危ないことを怖がりもしない男の子って、強くてカッコイイわよね?」


頭の中で、誠はボールを怖がる自分と、
全く怖がらない男子の姿を思い浮かべていた。

そして、オドオドしている自分に比べて、
堂々とボールに立ち向かっていく男子をカッコイイと思ってしまっていた。

それは男の子が、ヒーローに憧れる感覚に似たものだった。


「うん……かっこいい……」

「それが憧れるってことなの。
マコトくんは女の子よりも、そんなカッコイイ男の子の方が好きなのよ」

「うん……ぼく、男の子の方が好き……」


誠に目標としている台詞を言わせることができた恭子は、
ニヤリとして、その一点を攻めることにした。


「そう……マコトくんは男の子が本当に好き……
好きで好きで抱きしめ合いたいって思っちゃうの……」

「え……?」


誠が少し嫌そうな反応を見せる。


「ただ抱きしめるだけよ……? 大したことじゃないよね?
マコトくんはだんだん男の子と抱き合いたくなっちゃうの」

「……うん」

「抱き合いたくなってきたでしょ……?」

「……うん。抱き合いたい……」

「目を閉じてイメージして……
マコトくんは、男の子と抱きしめ合うとすごく安心するの……」

「うん……安心する……」


そうしてしばらくの間、
誠に男同士で抱きしめ合うイメージを継続させた後、
いよいよ本題に入り始めた。


「このまま……キス……されたいでしょ?」

「それは……」


先ほどよりも強い拒否の反応を見せる誠。
男としての本能なのだろうか?
気持ち悪いことを言われたかのような表情をしている。

三歳はちょうど男女の違いが分かり始める時期なだけに、
恭子はここで男と女、どちらを好きになるかをはっきりとさせておきたかった。


「男の子のことが好きなんでしょ……?
友達としての好きじゃなくて……本当に好き……
好きならキスされたいわよね……?」

「んっ……それは……」

「マコトくんは、男の子にキスをされたいの……
ボールに立ち向かうカッコイイ男の子を思い浮かべて……
ボールを怖がるマコトくんとは全然違う……逞しくてカッコイイわよね……?」

「ぅぅ……カッコイイ……」

「キス……されたいわよね……?」

「ひぅ……そ……それは……」



頭に流される暗示に必死に抵抗する誠。

しかし今まで幾度となく催眠を受けてきたため、
誠の被暗示性は非常に高くなっており、徐々に押され始めてしまった。


「マコトくんはだんだんキスをされたくなっちゃうの……
カッコイイ……憧れる……大好き……」

「はぅ……あぅ……好き………でも……」

「どんどん好きになっちゃう……」

「好き……」

「ほーら、もう男の子のことで頭がいっぱい♡
マコトくんは、男の子が好き……大好きなの……」

「うん……好き……大好き……」

「キス……されたいでしょ……?」

「う……うん……され……たい……」

「カッコイイ男の子が近づいてくるわよ……」

「うぅ……あぁ………や……め……て……」


男性からのキスを拒否する気持ちと受け入れる気持ちが拮抗し、
誠の心と頭の中でせめぎ合いを起こしていた。

恭子は人差し指と中指を合わせると、
そのせめぎ合いに終止符を打つべく、目を閉じる誠の唇にそっとタッチした。


「ちゅ……キスされちゃった♡」

「んんんっ……! あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


嫌悪感満載の声を上げる誠。
目に涙を浮かべ、今にも泣きだしそうな顔をしている。

妄想の中とは言え、ファーストキスの相手が男であることにショックを受けているのだろう。
そんな誠に追い打ちをかけるべく、恭子は暗示を続ける。


「はーい、だんだん男の子にキスをされて嫌な気持ちが、すぅっと抜けてきちゃうよ……」

「ぁぁぁぁぁ……」


新たに入ってくる気持ちに抵抗していた誠だったが、
急に今度は抜かれる形に変わり、上手く対処できないようだ。

徐々に誠の悲痛な表情が和らいだものへと変わっていく。


「ほーら、男の子にキスされて嫌な気持ちがどんどん抜けてきちゃう……
その代わり、もっとキスされたいって気持ちが大きくなってきちゃうのよ」

「んんん……はぁぁ……!」


再び、男性とのキスへの欲求を高める恭子。

このようにして、何度も誠の嫌悪感を高めては抜いてを繰り返し、
催眠深化を行っていった。




五分後……




「はーい、もう一度チューして♡
男の子とキスするのはすごく気持ち良いでしょう?
抱きしめ合いながらキスすると、すごく安心してきちゃう♡」

「ちゅ……♡ うん……ひもちいい……
男の子とキスするのしゅき……だいしゅき……♡」


目を閉じて、恭子の指とキスを続ける誠。

今ではすっかり男とのキスを嫌悪する気持ちがなくなり、
自分から受け入れてしまっている状態だ。

繰り返される催眠深化に、だいぶダメージを受けてしまったのか、
少し呂律が回っていない感じである。



※※※



こうして恭子は、誠の三歳時の記憶を、
普通に女の子に恋をして、男の子と健全に遊んでいた記憶から、
女の子には目もくれず、男の子とのキスを妄想するのが好きだった記憶へと変えてしまった。

妥協を許さない完璧主義の恭子は、
幼い頃から今に至るまで、完全な形で誠を変えようとしていた。



「さぁ、マコトくん……お姉ちゃんの話をよく聞いてね……」



恭子は再び誠の時計の針を回し始めた……
[ 2018/02/11 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(0) | CM(0)
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