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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.33 【 進路 】

一週間後……



恭子達の学校では粛々と卒業式が行われていた。

卒業証書の授与、校長の式辞、校歌斉唱など、
一連の流れを経て式を終えた生徒たちは、それぞれの教室へと戻っていった。


教室に戻り、担任の先生が来るまでの間、恭子は手洗いに出かけた。
そこで、ちょうど手洗いを済ませた誠と鉢合わせる。


「あ、恭子さん」

「あら、誠くん」


お互いに軽く笑みを浮かべて声を掛け合う。
二人の関係はこれまでになく良好なものへと変わっていた。


「恭子さん、ちょっと話したいことがあるんだけど、良いかな?」

「話したい事?」


誠の誘いに応じる恭子。
トイレを出入りする生徒達の邪魔にならないように、
入口から少し離れると、二人は会話を始めた。

誠の女性化が進行し、また女装の話でもされるのかと期待していた恭子だったが、
実際はもっと真面目な話だった。


「実は、進路のことなんだけどね。
色々と考えて、恭子さんと同じ〇✖大学に決めることにしたんだ」

「えっ!? ホント!?」


驚きの顔を見せる恭子。

誠から大学の話をされるのは、
〇〇大学を不合格になったと聞いてから初めてのことだ。

実際誠は〇〇大学に落ちてはいたものの、その他の大学には合格していた。

〇✖大学は、よく〇〇大学の滑り止めとされる大学でもあったため、
〇〇を落ちて、〇✖に決める生徒は多く、誠の選択肢もさして珍しいものではなかった。

しかしそれでも恭子が驚く理由があったのだ。


「誠くん〇△大学も合格していたじゃない? どうしてそっちにしなかったの?」


〇△大学は、大学のレベル帯で言うと、
〇〇と〇✖の中間に位置する大学であった。

恭子は当然誠は〇△大学に進むものと思っていたのだ。


「僕もそう思ってたんだけど……
実際に行って雰囲気を感じてみたり、進みたい分野のことを考えたら、
〇✖の方が、僕に合っている気がしたんだ」


自分に合っていると思うのなら、それが一番良い。
恭子も大学を偏差値で決めるタイプではなかったため、素直に同意することにした。


「それなら別に良いと思うわ。やりたいことに合っているのが一番よ」

「ありがとう、恭子さん。
学部は違うけど、校舎は近いし、
また恭子さんや直美と一緒にいられると思うと嬉しいよ」

「うふふ、そうね。また四年間よろしくね。誠くん」

「うん、こちらこそ」

「じゃあ先生戻ってくるし、またねー」


恭子はそう言い、にっこりとほほ笑むとそのまま女子トイレに入っていった。


(まさか、誠くんが〇✖大学に決めるとは思わなかったわ……
きっとこのことを聞いたら、直美も喜ぶわね。
これからまた四年間、三人で仲良く……三人で……)


途端に真顔になる恭子。


(ちょ、ちょっと待って……)


地面を見つめる恭子の額から、うっすらと汗が滲み出る。


(まずい…………それは……まずいわ……
もし誠くんが同じ大学に通うことになったら、
直美と付き合うことができなくなる……)


元々、恭子は誠の学力なら〇〇大学は余裕で合格できるものと思っていた。

万が一落ちたとしても、それより一段下の〇△大学に入るものと思っていたため、
自分たちと同じところに通うなど想定もしていなかったのだ。


(私と直美が付き合い始めたら、誠くんは不審に思うはず……
直美との付き合いは私より長いし、元々同性愛に興味がないのも知っている……
もし自分の変化と直美の変化が近いことに気がついたら……)


恭子は鏡で軽く身だしなみをチェックすると教室に戻った。
担任の別れの挨拶は上の空で、この問題をどうするかを考え始めた。



※※※



先生が最後の挨拶を終え、
生徒達は、それぞれが三年間通った学び舎を後にする。


「キョーーちゃん♡
ねぇねぇ、一緒に行きたいところあるんだけど~?」


席を立ち、すぐさま直美が駆け寄ってくる。
高校三年間を終えたという感慨もなく、既に意識は次へと向いているようだ。

甘える猫のような態度で、恭子に身体を摩りつけデートへと誘う。

今まで直美のレズっぽい行動を冗談と思っていた生徒でさえ、
いくらなんでもやり過ぎと思うほどの露骨な態度である。


「えぇ、いいわよ」


特に大きな反応することもなく応じる恭子。

恭子は、誠のことに頭が回っており、細かいことを考える余裕がなかった。
いつも以上に目立つ直美の態度にも、
それを引いた目で見ている他の生徒たちの視線にも気づかず、
直美に誘導されるように学校を後にした。


(だめ……どう考えたって、催眠をかける以外に解決策が見つからない……
もう誠くんに催眠術なんてかけたくなかったけど、
大学で三人仲良くしていくためには、かけるしかないわ……
直美のことだから、四年間バレないように付き合っていくなんて絶対無理だし、
だからといって、別れることなんてできない……)


歩くにつれて、徐々にテンションが上がってくる直美。
恭子に向かって色々と話しかけているようだが、あまり耳には入っていない。

そうこうしているうちに、直美は最近できたばかりの喫茶店に恭子を連れてきた。
女の子受けしそうな、少しカラフルな感じのお店だ。


「あった! ここ、ここ。このお店に入ろ~♡」

「えぇ」


直美が恭子の腕を組んで店内に入る。
普段から直美のスキンシップが激しかったこともあり、
恭子は腕を組まれていることにも気づかなかった
あいかわらず考え事に夢中になり、直美の言われるままに動いている感じだ。


(まずは誠くんをもう一度、私の家に呼ばないといけないわね……
大学に入る前に決着をつけないといけないし、あまり時間はなさそう……)


「いらっしゃいませー! えっ?」

「女の子二名入りまーす♪」


店員の挨拶に元気よく答える直美。
女性二人が腕を組んで仲良さげに入店したため、
店員は少し驚いた顔をしていたが、気にしないふりをして席へと案内した。


「キョウちゃん、あたしこれ食べたいなぁ~? 頼んでもい~い?」

「好きなの頼むと良いわ、私は適当になんでも良いから好きなの選んで」

「えっ!? マジで!? じゃあ、店員さん~! これください~♪」


とても幸せそうな顔でオーダーを頼む直美。

最初は驚いていた店員も、直美のその満面の笑みを見て、
「あぁ、なるほど」と納得してカウンター裏に戻っていった。


(でも一体、どんな催眠をかけたら……?
いくら女性化を進行させたところで、
私と直美の仲を変に思わないようになんてできない。
他の催眠をかけるにしても、時間がかかり過ぎるし、
気絶させるのも、そう都合よくできることじゃない……)


「ねぇ~聞いてる~? キョウちゃん、もしかして何か考え事してない??」


ハッと我に返る恭子。
ふと、直美を見ると少し怒っているような顔をしている。


「え? あぁ……ごめんね。
ちょっと卒業式で疲れちゃって……それで、ボーっとしてたのよ」

「へぇ~本当に卒業式で疲れたの?
もしかして……あたしのことを考えて、昨日の夜、しちゃってたんじゃない?」

「直美と一緒にしないでよ」

「え~~! してくれなかったの~? ちょっとがっかり……」

「しないこともないけど……
ってここ、公共の場なんだからそういうこと言わないの」

「はーい♡ あぁ……早く注文したもの来ないかな~?」

「ん? 何かくるの?」

「あっ! きたきた~!」


直美の目線を追い、後ろを振り向く恭子。

ちょうどカウンター裏から、
店員が盆の上に大きなパフェを乗せてやって来たところだった。


(なにあのパフェ……大きすぎでしょ……
まさか直美一人であれを食べるつもり……?)


あまりにも嬉しそうな顔で待ちわびている直美に釣られたのか、
店員も終始笑顔で、テーブルの真ん中にパフェを配置する。



「お待たせしました。
【恋のキューピッド ストロベリーキスパフェ】でございます」

「わーい♡」

「えっ!? ……どういうこと? 恋の……キューピッド??」


恭子はそこで気づいた。

このお店、よく見ると、どの席のカップルも仲良さげに同じようなパフェを突いている。
一人で来ている客や、家族で過ごす人達の姿は見当たらない。
まさにカップルだらけだ。

そんな雰囲気の中、女同士でこのパフェを頼むのが珍しいのか、
チラチラとこちらに目を向ける人の姿もある……

そして今横にいる店員は、
まさに自分と直美が、いわゆるそういう関係だという確信を持った目つきで見ている。


「お客様……こちらのスプーンを使ってお召し上がりください」


渡されたのは、持つ柄の部分がとても長いスプーンだった。


「ちょっと……このスプーン……長すぎるんじゃないかしら……?」

「キョウちゃん、このスプーンはね! こう使うんだよ♪」


店員が答える前に、
直美は持っているスプーンでパフェを掬うと、恭子の口元に持っていった。


「はい、あ~ん♡ キョウちゃん、食べて♡」

(うぅぅ………もしかしてこのパフェって……)

「では、ごゆっくりお寛ぎください~」


自然な笑顔で店員が戻っていく。
直美は期待した表情で、口元に添えられたパフェを恭子が口にするのを待っている。

直美をずっとそのままの体勢にしておくこともできず、仕方なく口にする恭子。


「おいしい?」

「えぇ……おいしいわ……
ねぇ、直美……これって何なの?」

「え? カップルパフェだよ?
さっきキョウちゃん、好きなの頼んで良いって言ってたじゃん……
それとも、もしかしてずっと適当に答えてたの? せっかく楽しみにしてたのに……」


悲しそうな表情を見せる直美。
それは受け入れてくれた思いを反故にされたような反応だった。


「そ、そんなことないわっ……ちゃんと聞いてたわよ!
何味なのかな~って思って……」

「あっ! なんだそんなことか~。
なんかイチゴとかブルーベリーとかチョコとかいろいろ混じってるみたいだよ。
今キョウちゃんが食べた部分は、ドラゴンフルーツとタピオカのところかな?

そうそう! このパフェねっ! 
愛し合ってる二人で食べ合うと、一生仲良く添い遂げられるんだって! 
この前テレビの特集でやっててさ! 
これは是非キョウちゃんと行かなきゃ! ってずっと思ってたんだよねっ♪」


(やっぱりそういう意味合いのパフェだったのね……)


直美のその気持ちは嬉しいが、
こんな学校近くの喫茶店で、直美と恋人同士のような雰囲気で、
こういったパフェを食べ合うのは避けたかった。

どこで誰が見ているかもわからないし、もし二人を見知った人が見たら、
さすがに冗談だとは思ってもらえないだろう……

しかし、先日、何度も直美を泣かせてしまっていたこともあり、
直美の悲し気な表情は、恭子にとって少しトラウマものだった。

もうこうなってしまっては仕方がないので、恭子は現状を受け入れることにした。


「キョウちゃん~♡ あたしも食べた~い♡ 食べさせてぇ?」


恭子は渋々、直美の口元にパフェを運ぶ。


「おーいし~い♡ やっぱりキョウちゃんに食べさせてもらうと、
美味しさ10000倍って感じ♪」


ただでさえ女同士で目立つというのに、直美のこのハイテンション……
周りの好奇な視線の的となり、恭子は針のむしろ状態だった。


(は……恥ずかしい……)


ただの女同士が、パフェを食べに来ただけなら、
ここまで人々の注目を浴びることはなかっただろう。

問題はこの二人の容姿にあるのだ。

端整な顔立ちときめ細かい美肌。
見つめるものを魅了する目。
大きすぎず小さすぎずスッと筋が通った鼻。
瑞々しいぷっくらとしたピンクの唇。
まるでドラマや小説の中から飛び出てきたヒロインのように、
恭子は完璧な美を備えていた。

対する直美は、少しおバカなところはあるが、小動物的な可愛さがある。
クリクリっとした愛らしい目。
愛らしい少女のような小さな唇。
小猫のように可愛らしい低い鼻頭など、
方向性は違うが、直美も恭子と並び称されても良いほどの美人だったのだ。

こんな美女二人が仲睦まじくパフェを食べさせ合っていては、
注目しない方がおかしい。

そんな周りの視線など何のその、
直美は恭子とカップルパフェを食べる喜びで一杯だった。

セックスする時のような悪戯じみた怪しい眼差しで恭子にパフェを運ぶ。

周りの視線と、直美のそんな態度に、恭子は顔を真っ赤にさせていた。


(やばい……恥ずかしすぎて死にそう……)

「ねぇ、あの二人付き合ってるのかな?
髪の長い方の子、顔真っ赤にしちゃって、恥ずかしがっててかわいいよね」

「いわゆる"レズビアン"ってやつだね。制服着てるけど、この近くの学生さんかな?」


いつもは気にならない、周りの声が今はやけに耳に響く。

誠対策をどうするかなどといった考えは、もう恭子の頭に浮かんでこなかった。

この目の前の大きなパフェが全て食べ終わるまで、
恭子は消え入るような気持ちで過ごすのであった。



※※※



この喫茶店での出来事は、
恭子の誠への催眠の意思をより一層強固なものへと変えていた。

直美は1週間ほど前に、
恋人になったことは公言しないように口留めをされていた。

たしかに直美は、約束通り誰にもそのことを話すことはなかったのだが、
あまりに馬鹿正直な直美の性格は、言葉に出さなくとも、態度で考えていることが丸わかりだった。


これでは誰にもバレずに付き合うなど到底不可能だ。


遅かれ早かれ、誠は二人の関係に気づいてしまうだろう……

そうなる前に、なんとかして認めさせなくてはならない。
例え催眠術を使っててでも……

だが恭子の今の技術では、誠をすぐに変化させることなどできなかった。


(もっと即効性のある催眠術を身に付けなくては……)


恭子は各地の図書館などに入り浸り、
催眠術の古い文献などを読み漁っていった。
[ 2018/02/07 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(0) | CM(0)
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