「ちゅ………」
催眠を使ったキスでも、冗談のキスでもない。
正常な意識を保った状態での初めてのキス。
今まで幾度となく口づけを交わし、
慣れた者同士でのファーストキスは、ぴったりと息が合っていた。
(私……本物の直美とキスしてる……
これは催眠を深化させるためなんかのキスじゃない。
これは愛し合うためだけのキス……好きよ……直美)
(さっきと全然違う……キョウちゃんの心が伝わってくる。
それがなんだか、すごく嬉しい……
やっぱり、あたしが本当に好きだったのは誠じゃなくて、
キョウちゃんだったんだ……)
それぞれの思いを抱きながら、唇をそっと離す。
「キス……しちゃったね」
「……そうね。……どう? 私と恋人同士になった気分は?」
直美は笑顔になり、恭子に抱き付いた。
「夢みたい♪
ずっとキョウちゃんのこと、ノーマルだと思ってたから、
まさかこんなことになるなんて思わなくて……
今はこうして触れ合ってるだけでも、すごい幸せ…」
「普段からスキンシップが激しかったのも、冗談じゃなかったんじゃない?
本当は前からこうしたかったんでしょ?」
「えへへ♡ バレた? 半分本気だったよ」
首を傾げて悪戯っぽく笑う直美。
そんな姿を見て、恭子は直美のことがさらに愛おしいと思った。
「ところで……まだ答えてもらっていないだけど……
目が覚めて、どうして私と直美は裸だったのかしら?」
見透かしたような笑みを浮かべて質問する。
それに対し直美は目を上向け、気まずそうな表情していた。
「えっと……キョウちゃんが女の子同士に目覚めるようにって……
キスしたり……おっぱいを……
その……舐め……ちゃっ……たり……」
モジモジしながら答える。
次第に声も小さくなっていき、聞き取れなくなる。
大体何を言っているかは予想が着くのだが。
そんな直美は、
恥ずかし過ぎて穴があったら入りたいといった様子だ。
「へぇ~。だから裸だったのね。
どこをどう触ったのか、詳しく教えてもらえるかしら?
もしかしてこんな感じ?」
ギュ……
直美の胸に手を添えて優しく力を入れる。
「ぁっ……!」
突然の刺激に、ビクっとして声を上げる直美。
そのまま恭子は耳元に口を添えて囁く。
「ねぇ……直美。さっき目が覚めてから、
なんだか身体中がウズウズして仕方がないの……
これ……直美がしたんでしょ? 最後まで責任とらなきゃダメじゃない?」
恭子の淫乱な囁きに直美の呼吸は荒くなる。
股間はだんだん熱く湿り気を帯びていき、膣口からは甘い滴を生み出し始めていた。
「ハァ……ハァ……キョウちゃん……」
物欲しそうな眼で恭子を見つめる直美。
その表情に、欲情を刺激された恭子は、
催眠をかける時のような艶やかな顔に変わり、
直美の胸を指先で優しく愛撫しながら誘惑を続けた。
「直美……私を貴女の色に染めて……
頭のてっぺんから足のつま先まで、全てを貴女一色にして欲しい……」
「ごくん……はぁはぁ……
で、ででででも、きょ、キョウちゃん。
足……足ケガしてるじゃん……!?」
あまりの興奮に、つい声が上擦ってしまう。
まるで童貞の男の子が、初めて女性を相手にする時のような反応だ。
「だから直美の方からして。
催眠中にしてたことの続きを……
貴女の舌と指で、この火照りを解消して……?」
実際、恭子は中途半端に愛撫されたことで、発情してしまっていた。
恋人になった直美と早く愛し合いたい。
長年直美を追い続けてきた恭子にとって、
足の痛みなんかよりも、そちらの方がずっと大事だった。
「う、うん。わわわ、わかった。じゃっじゃあ、いくよ」
その誘いに促され、
直美は恭子の身体に触れるが、ずいぶんと動きがぎこちない。
催眠中は、恭子を自分のものにしようと必死だったが、
今は緊張感の方が勝ってしまい、思うように動けない様子だ。
胸に触れ、恭子の乳首を口に含もうとする直美を、恭子は一旦制止した。
「待って。 その前に下も脱がせて……」
「ししし、下も!?」
「そうよ……ここも直美の催眠のおかげで、
ずっとキュンキュンしちゃってるの…… ねぇ、早く……?」
指先で頬をスゥーっと撫で、なまめかしい表情で誘う。
直美は心臓をバクバクさせ、居ても立ってもいられない様子だ。
「う、うんっ! ぬがすよ、キョウちゃん」
恭子のスカートに手をかけ、
怪我をした太ももに生地が触れないように慎重に下ろしていく。
すると、
脱衣場でよく目にしていた上品な柄の薄ピンク色のショーツが姿を現した。
これからこのショーツを入浴のためではなく、
恭子と一線を越えるために脱がすのだ。
直美の心臓の高鳴りと興奮はひとしおで、
熱くなった潤みの壺から、
溢れ出た淫液がショーツの内側に新しいシミを作り出していった。
(やばい……あそこがすごいヌルヌルする……)
自らの下着を気にしながらも、恭子のショーツに手をかける。
それに合わせて、少し腰を浮かせる恭子。
ショーツを少し下にずらすと、
内側に留まっていた女の香りが外側に漏れだし、直美の鼻腔を刺激した。
(あぁ……良い匂い……)
直美の目はトロンとし、
ほんのり濡れる恭子の茂みに鼻をつけた。
「すぅーー……はぁ……
キョウちゃんのこの匂い……すごい好き……」
「ふふふ……もう直美はエッチなんだから……
全部脱がせたら、好きなだけ吸っていいのよ?」
「うん……♡」
直美は股間から一旦鼻を離すと、いそいそとショーツを脱がせていく。
そしてそれをベッドの下に落とすと、
両手を恭子の腰に回し、鼻をそっと陰部に押し当てた。
「んっ……」
直美の鼻が膣口に挿入される刺激で、思わず声をあげる恭子。
「すぅー……はぁ……ずっとこうしたかった……
脱衣場で脱がす時も、キョウちゃんのおまんこの匂い、
こうして思いっきり吸いたかったの……」
「へー? いつもそんなこと考えてたの?」
笑みを浮かべて、恭子が言う。
「あっ!!」
恭子の女の香りに夢中になって、思わず口走ってしまったようだ。
バッと起き上がった直美は、顔中真っ赤だ。
「直美はいつもそんなエッチなこと考えていたのね。
そういえばいつも女の子を目で追ってたわよね?
もしかして、その子達にもいやらしい妄想してたんじゃない?
ふふふ……
直美がこんなにスケベで女好きのレズビアンだったなんて知らなかったわ」
「ち……ちがうよぉ……
たしかに目で追ってたけど……素敵だなって思うだけで、
エッチなこと考えてたのはキョウちゃんにだけだよっ!」
「私に対して妄想してたのは否定しないのね……
いいわよ……? もう付き合ってるんだし、私の身体は直美だけのものよ。
好きなだけエッチなことしていいからね。レズビアンの直美ちゃん?」
「ああんっ! もぉーーー! キョウちゃぁぁぁぁん♡」
恭子の度重なる誘惑に、ついに直美の理性のタガが外れる。
緊張も何のその、恭子の身体をギュっと抱きしめ、唇に勢いよくキスをする。
「もう、キョウちゃんはあたしだけのもの♡ 大好きっ! 愛してる♡」
恭子もそんな直美のキスに応じる。
「ちゅっ、私も愛してるわ、直美。ずっと一緒にいましょうね」
「ハァハァ……うんっ! ずっと一緒♡
ずっとキョウちゃんと一緒にいるぅ♡」
二人は愛を囁き合い、唇同士を重ね、舌を絡め合った。
今まで幾度となく身体を重ねてきただけあり、その動きは実にスムーズだ。
催眠中のそんな経緯を知らない直美は、あまりの相性の良さに感動していた。
(キョウちゃんがしようとしていること、
あたしがしようとしていること、お互いに全部わかり合ってるって感じ♡
きっとキョウちゃんがあたしの運命の人だったんだ……
もうホント大好き♡ ずっと離さないからね、キョウちゃん♡)
※※※
数十分にも及ぶ女同士の絡み合いが続く。
乱れた吐息が重なり合い、ほんのりとした汗をかきながら、
これまで己の内に秘められてきた愛情と欲望を、相手の身体にぶつけていく。
「んっ……ぁぁ……んんんっ!!」
「ちゅ……ちゅ……ちゅぅっ。
はぁ……キョウちゃんのおっぱい……柔らかい……♡」
「あっ、あぁんっ! 乳首……はぁっ…!
気持ちいぃ……んんっ……!」
今まで恐れていた覚醒の心配がなくなり、
恭子は開放的な気持ちで、
ただただ直美から与えられる快感に身を捧げていた。
「次はこっちだよ? あむぅっ……れろれろれろ……ぢゅる…」
直美が濡れ光る縦割れの桃の実にむしゃぶりついた。
「な……なおみぃ……
あぁっ……あっ……ふぁ! ……んんんっ!!」
「ぢゅぅ……ゴクン……
はぁはぁ……おいしい♡ キョウちゃんのエッチな液♡」
直美の舌の動きに弄ばれ、身体をさらに火照らせる恭子。
そんな恭子の反応に直美は上機嫌だ。
大好きな恭子を気持ちよくさせることによって、
自らに燻る官能の炎がさらに勢いを増していくのを感じていた。
「うふっ♡ キョウちゃんのクリちゃん、かわいい♡ れろれろれろれろ……」
刺激により皮が捲られ勃起したクリトリスを、
直美は優しく優しく舌の裏筋を使って丁寧に舐め上げていく。
「あぁーー! いぃっっ!!
な……なおみ……それ……だめ……気持ちよすぎ……
それ以上されたら……わたし……いっちゃう……」
消え入りそうな声で直美に伝える。
小刻みに痙攣する身体は、彼女の絶頂が近いことを物語っていた。
「ハァハァ……イッて、キョウちゃん♡
あたしでもっと感じて♡」
「やだ……わたしだけじゃ……ヤダぁ……
一緒に……イキたいの……直美のも舐めさせて?」
初めては一緒に。
求めに応じ、直美は身体を反転させ、
恥じらいの部分を下ろしていく。
ピト……
恭子の鼻に、下着の生地が触れたところで気づく。
「あっ、ごめん。脱がなきゃねっ」
責めることに夢中で、ショーツを脱ぎ忘れていた直美は、
わたわたとそれを脱ごうとした。
「大丈夫。私が脱がしてあげる」
恭子が手を上げて、
ゴムの部分を指で掴むと、ショーツ全体がびっしりと濡れているのが分かった。
「直美、濡れすぎよ……
ウエストのところまで、直美の厭らしい液でぐちゃぐちゃよ?」
「えっ!? そんなに?」
「でも嬉しいわ……私でこんなに濡らしてくれて……」
恍惚の表情で直美のショーツを見つめる恭子。
(まさかここまで変わるとはね……
今の直美は、男とのセックスなんか一切考えられない、
女を責めることや、女に責められることでしか、
快感を得ることができない生粋のレズビアンになってしまったのね。
ありがとう、直美。私の世界に来てくれて……
女同士いつまでもいつまでも愛し合いましょ♡)
「もぉーそんなにまじまじと見ないでよ~」
恥ずかしくなり抗議する直美。
「そうね。ショーツを見るのはもう止めるわ。
その代わり、中がどうなってるかしっかり見せて頂戴」
ウエストにかけていた指を一気に引き下ろす。
露になる貝肉の割れ目……
薄ピンク色の突起はぴくぴくと震え、
愛しい人からの刺激を待ち望んでいるかのようだ。
「腰を下ろして、直美」
直美は、熱の籠るぷっくらとした丘陵を、
再び愛しい人の顔へと下ろしていく。
「……ちゅ♡」
自らの股間に、
舌の感触と息吹きを感じ、思わず声をあげてしまう。
「あぁっ!」
「んっ……直美の……すごい良い匂い……んんっ……レロ……」
「キョ、キョウちゃん……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!
だっだめぇっ……そ、それ……すぐいっちゃうよぉ……」
「そうね……直美もわたしのを舐めて……舐め合いっこしましょ♡」
「うん……ぁんっ…! あむっ……」
一心不乱に互いの秘部を愛撫し合う。
直美は初めての経験にも関わらず正確に恭子の気持ちの良いポイントを責めた。
催眠により、恭子の女の部分を何度も愛撫し続けた直美の身体は、
考えずとも、的確に感じるその部分に意識を誘導させた。
(なんであたし……
キョウちゃんの気持ちが良い部分がわかるんだろう?
キョウちゃんも、一番気持ちいい場所を知ってるみたいに責めてくれる……
もしかして……前世も一緒だったとか?♡)
何の疑いもなくポジティブな方向に考える直美。
元々あれこれ考えるのが苦手なのと、他人を疑わない性質では、
直美が自らかけられた催眠に気づくのは無理な話だった。
ノンケだった頃の自分のことも、誠への愛もすっかり忘れ、
女同士のセックスに溺れる女の姿がそこにはあった。
「あぁっ! 直美……わたし……イキそ……!
あっあっあぁ!! イク……!」
「キョウちゃんっ……! あっあっあぁ!! キョウちゃぁぁぁんっ!!!」
―――――――――――――
――――――――
―――
「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
全く同時に恭子と直美は絶頂に達した。
………
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
二人の女性の荒い息が部屋に木霊する。
直美はゆっくりと身体を起こすと、
寝転がる恭子を抱き寄せキスをした。
ちゅ……
無言で二人は唇を合わせ、見つめ合い微笑んだ。
※※※
「ねぇ……キョウちゃん、あたし、夢見たんだ……」
「夢…? どんな夢かしら……?」
「あたしとキョウちゃんが、こうして寝てると、
急にマコトが現れて、キョウちゃんのこと連れ去っちゃうの」
「ぷっ……なんて夢を見てるのかしら」
あまりに可笑しくてつい笑ってしまう。
直美は普段の態度だけじゃなく、見る夢まで唐突なのだなと恭子は思った。
「もぉ……笑いごとじゃないの!
最近はそんな夢ばっかり見てて、ずっと憂鬱だったんだからね」
「ふふふ……あら、そう? でも、直美?
今のこの状況が夢じゃないってどうしてわかるのかしら……?」
不敵な笑みを浮かべて直美に疑問を投げかける恭子。
どうやら直美をからかおうとしているようだ。
「えっ!?」
(まさか……これも夢?
またマコトがジャジャーン♪って出てきちゃうの?)
直美はだんだん不安になってきた。
考えてみれば、あまりにも都合が良すぎる展開だ。
ノーマルな恭子が、実はバイで、しかも自分のことを前から好きだったなんて……
「ねぇ、キョウちゃん。あたしの頬っぺた、つねってみて」
「えっ?」
からかった直美が神妙な顔をしてお願いしてくる姿が、あまりにも可笑しい。
ひたすら笑いを堪えてつねってみた。
「いったあぁーーーーーーい!!!」
大袈裟に痛がる直美。
そんなに強くつねったつもりはないのだが、
直美のオーバーな反応に恭子も少し驚く。
「ごめん……そんな痛かった?」
「ううん……こっちこそごめん。嬉しくてつい声大きくなっちゃった。
でも……夢じゃないんだね!」
「そうよ、夢じゃないわ。夢みたいだけど、夢じゃないの」
二年前の恭子からすれば、今の状況は本当に夢のようだった。
直美をものにするために、何時間も何時間も催眠術を勉強した。
その努力が報われ、ついに直美を得ることができたのだ。
「キョウちゃんも夢みたいって思うの?」
「えぇ…、私も直美とずっと付き合いたいって思っていたから、
夢みたいな気持ちよ」
「えぇ♡ そ~お? じゃあつねってあげよっか?」
「……別にいいけど……
あなたがつねると、冗談じゃ済まなそうだからホント軽くね?」
直美はこんな小動物みたいな可愛い顔をしているが、
力は並みの女性よりはある。
少し怖かったが、からかって直美のことをつねってしまったのだから、
仕方がないと恭子は思っていた。
「じゃあ……つねって……あげるね?♡」
少しいたずらっ娘な顔をして、
恭子の目の前で人差し指と親指を近づけ、つねるような動作を見せると、
そのまま直美は、その手を素早く恭子の股間の方へと持っていった。
ギュっ……♡
「んんっ! ふぁぁぁっんっ!♡」
恭子の嬌声が鳴る。
「軽―く、優しくつねってあげるね?
ほーら、どお? これでもまだ夢みたい?♡」
直美は、恭子の勃起しているクリトリスを優しくつねっていた。
「あぁ……ん……直美……それ……違……ぅ」
引き続き、優しく振動させるように摘まむ。
「ねぇ? まだ目が覚めないの? キョウちゃん♡」
「ふぁ……やぁ……んんっ……」
腰をくねらせ逃れようとするが、なかなか上手くいかない。
恭子は逃げるのを諦め、自分も同じく直美の股間に手を伸ばした。
「あっ! んんんっ!!」
「直美だって……ぁっ……はやく……目を……覚ましたら?
お寝坊さん……んんっ!」
互いに互いの股間を刺激し合う。
始まりは刺激から逃れようと、腰を引けていた二人だったが、
しばらくすると、相手が刺激しやすいように腰を前に出し合った。
熱を帯びた目で、相手の目を見つめる。
「はぁ……はぁ……んんっ……
ほら……そろそろ……目が覚めて……きたんじゃない?」
「キョウちゃんだってぇ……早く……目を覚ましたらぁ?♡」
「まだ……そんなこと……言ってる……のね。
お目覚めのキスしてあげる……ちゅ……♡」
「あぁん……キョウちゃん……もっと……もっとそれしてぇ……♡」
そうしていつの間にか、二人は続きを再開してしまっていた。
夜はまだ始まったばかり。
二人の愛の交わいは明くる日の朝まで続いた……
※※※
この出来事より、二人の関係は親友から恋人へと変わった。
このことを周囲に知られるのを心配した恭子は、
直美に固く口留めをする。
それに対し、「はーい♡」と元気に返事をする直美だったが、
相手が直美なだけに、恭子は不安だった。
だが、心配し過ぎても仕方がない。
学校生活も、あとは卒業式を残すのみ。
その一日だけ直美から目を離さないようにしておけば大丈夫。
恭子はその一日だけは我慢して過ごそうと心に決めた。
そして二人は卒業式を迎えるのであった……