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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

part.29 【 選択 】


いつもの通り、恭子の部屋でくつろぐ二人。
以前は机を挟んで座っていたのだが、
今の二人は、ベッドを背にしながら隣り合わせに座っていた。


「はい、ハニー。あ~んして♪」

「あ~ん」


帰りにケーキ屋に寄り、ケーキを買った二人は、
お互いにケーキの食べさせ合いをしていた。

学校では直美の抱きつきや、いちゃつきように抵抗していた恭子だったが、
その分、自分の部屋では直美の好きなようにさせていた。


「おいしい? キョウちゃん♪」

「ええ、おいしいわよ。直美も食べてみたら? ほら、あ~ん」

「あ~ん。パクッ。お~~いし~~い♪
キョウちゃんに食べさせてもらうと美味しさ100倍って感じ♪」

「大げさね……」


直美はドキドキしていた。
こうして、ケーキを食べさせ合っているだけでも、
恭子を好きな気持ちがどんどん膨らんでいくのだ。


「はい、キョウちゃん。もう一度、口あけて、あ~ん」

「あ~ん」

「あ、ごめん。口に入れようと思ってほっぺたにくっつけちゃった♪」

「もぉ~わざとでしょ?」

「ごめんごめん、今綺麗にしてあげるからね~。チュっ♡ ぺろぺろ…」

「……それがしたかっただけじゃない?」

「え? バレた?
でもキョウちゃんのほっぺたについたケーキ、美味しさ1000倍だよ♪」

「どんどん桁が上がっていくわね……」


普通の友達だったら、
この時点で直美は同性愛者だと疑われても仕方がないのだが、
恭子はいつも通り、仲の良い女同士だったら当たり前という体を装った。

恭子が常にそのような態度をしているので、
直美の接し方も徐々に遠慮がなくなっていき、結果このような形になってしまったのだ。

特にお風呂場で洗い合いをしている際は、
お互いに下半身を洗い合うことすらも当たり前になってしまっていた。


「ねぇ、キョウちゃん…」

「なぁに? そろそろ催眠でもかけてもらいたくなっちゃったの?」

「あ、それなんだけどね。いつもキョウちゃんにかけてもらっているから、
今日はあたしがかけてみようと思って」

「え? 直美が私にかけるの?」


直美の提案に恭子は少し驚いた。
催眠術をかけ始めの頃は、難しそうだからあたしには無理~と言って、
かける側には全く興味を示さなかった直美だったのだが、今はなぜか乗り気でいるのだ。


(直美の方から、催眠をかけてみたいだなんて初めてね……
でも少し面白いかも? 直美がどんな催眠をかけるのか興味があるわ)

「ダメ? キョウちゃん」

「もちろんいいわよ。催眠のかけ方わかるかしら?」

「全然~触りだけでも良いから教えて~」



※※※



それからネットで検索しながら、催眠のかけ方を教えていく恭子。
1時間くらいで、基本的な部分を覚えた直美は、さっそく恭子をベッドに寝かせた。


「それじゃあキョウちゃん。いっくよ~?」

「ええ、お手柔らかにね」


恭子は催眠術にかからない自信があった。
元々催眠術というのは、かけられる側にも適性がいるのだ。
かけられやすいタイプというのは、直美や誠のように純粋に人を信じるタイプで、
恭子のように、常に人を疑ってかかるタイプには効かないものだった。

またかける側とかけられる側の信頼関係も必要だった。

誠も初めは直美に比べて催眠が効きにくかったが、
何度も催眠を重ねていくうちに、直美と同じくらいかけやすいタイプへと変わっていった。

それは恭子との信頼関係が深まったことを意味していた。


「キョウちゃんは、だんだん眠くなります」


恭子はリラックスして、眠くなったふりをした。


「キョウちゃんは、あたしの声しか聞こえな~い。それ以外何も考えられなくなります」

「……」

(……キョウちゃん、全然動かなくなっちゃった。催眠術効いたのかな?)


直美はさっそく恭子に暗示をかけることにした。

「キョウちゃんは両腕が徐々に上がっていきます」

恭子は直美に言われた通り、両腕を天井に向けて上げることにした。

「わぁっ! すごい、ホントに効いちゃったんだ!」

初めての催眠成功に大喜びの直美。

「キョウちゃんは手の力が抜けて、ベッドに落ちてしまいます」

恭子は言われた通り、腕をベッドにドスンッと落とした。

(さぁ、どんな催眠をかけるのかお手並み拝見ね)


恭子もこの状況を楽しんでいた。
直美が一体どんな催眠をかけるつもりなのか?

レズビアンだったら、
途中でキスくらいのことならしてくれるかもしれないと、淡い期待を寄せていた。

直美はしばらく何もせず、恭子を見つめている。
恭子には、何となくその間が、直美が悩んでいるように感じられた。


「よし、始めよ」


直美は自分を奮い立たせるように口ずさむと、暗示をかけ始めた。


「キョウちゃんの目の前には、大好きな親友の姿が浮かびます。それは誰?」

(ずいぶんと簡単な質問ね。そんなの言わなくても分かってるじゃない。
こんな質問をするってことは、何か疑っているってことかしら?
直美を不安にさせるようなことしたかしら私)


思い当たる節もなく、とりあえず直美の質問に答えることにする。


「……直美」

「えっへへ~♪ やっぱそうだよね」


恭子の答えに喜ぶ直美。


(単純にのろけたかっただけね。この調子で質問が続きそうな感じだわ)


特に深刻そうにも見えなかったので、ひとまず落ち着く恭子。


「じゃあ、次だけど……」


雰囲気が急に変わる。

直美には似合わない、どこか重々しく暗い空気だ。
恭子にはこれから直美が嫌な質問をしてくるかのように感じられた。


「キョウちゃんが、恋愛対象として気になってる人って誰かいる?」

(……!! 恋愛対象として?
なんて質問してくるのよ……どう答えようかしら……
少なくとも、直美って答えることはできないわね……)


恭子は答えに迷った。

今の段階で直美と答えることができないのは、
それを聞いて直美が告白してくる可能性があったからだ。

もしかしたら、今回の催眠は告白のための事前確認かもしれない。
と、恭子は考えた。

だが、誠が学校にいる以上、正式に付き合うことはまだできない。
大学入学後、誠と物理的に距離を置けるようになったら付き合おうと恭子は考えていた。


(そうだ、何も答えなければ誰もいないってことになるかしら? 
でもそれだと少し面白くないわね……)


恭子の心に悪戯心が芽生えた。

直美にとって、自分はまだ異性愛者で通っている。
もし他の男性が気になると言ったら、直美がどんな反応をするだろうか?

嫉妬して、これまでよりももっと自分のことを求めてくれるようになるかもしれない。

人前でイチャイチャされるのは迷惑だったが、直美に求められること自体は嬉しかった。

先程ケーキを二人で食べていた時のように、
二人でいる時に、より大胆に接してくれるようになったらどんなに良いだろうか。

そう思い、恭子は答えることにした。


「……誠くん」


男性としては一番身近にいて、納得のいく相手だった。
むしろ、誠以外の男性とはあまり接点がなかったので、こう答えるしかなかった。

恭子自身はもちろん誠に対して、そんな気は全然ない。

だが、直美の自分への執着心を高めるにはちょうど良いと思った。
恭子は直美の反応を待った。


「……やだ……うっうっうっ……」


直美が静かに泣き始める。
恭子にとっては予想外の反応だ。


(泣き始めるだなんて……
まさか、そこまで催眠の深化が進んでいるとは思わなかったわ……)


あまりの直美の反応に、起き上がってカミングアウトしようと思った。

『催眠にかかっているふりをしていた。本当に好きなのは直美』だと。

少々計画を変更することになるが、ここで直美と付き合い始め、
そのことは周囲には内緒だと口止めすることも可能だ。

ただ直美は考えていることが顔に出やすいタイプなので不安ではあった。
だが学校に行く日は、もう卒業式くらいしかない。
その一日だけを乗り切れば、あとはなんとかなるだろう。

恭子がそう考えていると、直美は涙声で言った。


「キョウちゃん……
あたしの知らないところで、誠と二人で会っていたのはなんでなの?」

(どうしてそのことを……!?)


それを聞いて、恭子は起き上がることができなくなった。

今起き上がれば、催眠にかかっているとウソをついた状態で直美と話を始めることになる。

質問している内容が内容なだけに、今、立ちあがって説明しても、
慌てて誤魔化しているように見えて、却って不信感が増してしまう。

しかし催眠状態であれば、
直美は自分の言っていることをそのまま信じるだろう。

あらぬ誤解を防ぐには催眠にかかっていると思わせておいた方が都合が良い。
恭子は眠ったまま答えることにした。


「直美の元気がないから、誠君とお互いに情報交換してたの…」

「えっ? それだけ…?」

「あと、誠くんの調子が良くなる様に催眠治療してあげた。
直美と別れてショックを受けているようだったから励ましてあげたりもした……」


誠に女装をさせたり、女性化催眠を行ったことについては伏せておいた。
誠も同じ質問されても、同じように答えるだろう。
誠が直美に催眠をかけられたらどうなるか不安ではあったが……


「そっか~。エッチなこととか全然してなかったんだね。良かった……」


深く安堵のため息を吐く直美。


(エッチなこと? 直美、一体どこからそんな情報仕入れたのかしら……
まさか誠くんに男の人とエッチする催眠をかけたことを言ってる?
声が近所に届くはずないし……届いても催眠の内容まではわからないはずだわ。
今度催眠で聞き出さないといけないようね…)

「じゃあ、この前、誠と抱き合ってたのはなんでなの?
……まるで恋人みたいに……もう誠と付き合ってるの…?
……うっ…うぅぅ……ひっく……」


そう言うと、直美はその時の光景を思い出したようで、また涙声になっていった。


(あの場面も見られていたのね……迂闊(うかつ)だったわ……
もっと周りを確認してからすれば良かった)

「誠くんが大学を落ちたと聞いて慰めてあげてたの……
すごく落ち込んでいて、つい可哀そうになっちゃって…」

「慰め合うだけで普通抱きしめ合ったりする?」

「私達、その時親友になったのよ。
親友同士の抱擁ってことで特別に抱きしめてあげたの」

「じゃあ、まだ付き合ってないの?」

「付き合ってないわ」

「付き合いたい?」

「……」


恭子は回答に苦慮した。

先の質問で、恋愛対象として誠を見ていると伝えたため、肯定せざる得なかった。
ここで、そうでもないと答えれば矛盾が生じてしまう。

恭子は軽はずみな気持ちで答えてしまったことを後悔した。


「……付き合いたいわ」

「そう……」


目を閉じているため、直美の様子はわからなかったが、声を切らして泣いているのだけはよくわかった。


(ごめんなさい……直美……私、馬鹿なことをしてしまったわ……
今から起き上がってあなたのことを抱きしめてあげたい。
愛しているのはあなただけだって伝えたい)


そうは思うものの、ここで起きたら疑われてしまう。

恭子にとって、
愛しているのは直美だけだと伝え、誠とのことを疑われるのと、
このまま黙って誠のことを愛してると思われるのと、
どちらが良いのか非常に難しい選択肢であった。

前者だと、おそらく直美に再び催眠をかけることはできなくなるだろう。
催眠術はかける側とかけられる側の信頼関係が大切だ。
愛していると伝えるにしても、今伝えるのはあまりにも最悪のタイミングだった。

実際、誠との関係は直美には秘密にしていたわけだし、
不純な関係はなかったと直美に信じてもらう以外、再度直美に催眠をかける方法はなかった。

催眠をかけることさえできれば、例え後者であったとしても挽回することは十分可能だ。



※※※



ちゅ…………

恭子があれこれ考えていると、唇に暖かい感触があった。
直美が自分にキスをしたのだ。

(……え? 直美、何を……?)


唇を離すと直美が話し始めた。


「キョウちゃん、よく聞いてね」


先程、泣いていた時とは全然違う直美の声。
まるで何かを決意したかのような強い意志を感じる……


「キョウちゃんは、今からあたしの言うことはなんでも聞くようになります…」


直美が恭子に新たな催眠をかけ始める。

この催眠が直美と恭子の新たな関係の始まりとなるとは、この時の恭子は気付いていなかった。
[ 2017/11/04 00:00 ] 一章【黒百合】 | TB(-) | CM(0)
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