文章:仁科十蔵
「マッサージ店の潜入取材をしよう」
と思ったのが、この、世にもおぞましい事件の始まりだった。
私の名前は、中村桃子。
二十一歳の同人漫画家で、ペンネームは野中花火である。
今日は漫画の資料をあつめるために、エステマッサージのお店にやってきた。
いわゆる体当たり取材というやつだけど、インタビューや撮影の許可は取っていない。隠し撮りだ。それはリアルな現場を知りたいから――というより、私に取材をお願いする度胸がないからなのだった。
待合室でぼんやりしていると、声をかけられた。
「中村さーん?」
「はいっ」
「お待たせしました、一番奥の部屋ですよ」
「あっ、はい」
「そちらにエステ下着を用意しておりますので、着替えてお待ちください」
私は受付を済ませると、カバンを持ったまま奥の部屋に行った。
ドアを閉めて、中に戻る。
ベッドに白いスポーツブラとショーツが置いてある。
私はそれに着替えると、カバンを部屋の奥にセッティングした。
それから隠しカメラの電源をオンにして、部屋全体がよく写るようにした。
「これも良い漫画を描くためですよ」
実は盗撮について調べたことがある。
もちろん漫画のためだったし、実際、盗撮シーンも描いた。
読者からのツッコミは一つもなかったから、そのやりかたで問題なく盗撮できると思う。まあ、できるかどうかは今日分かる。
だって、漫画とまったく同じ盗撮のしかたをしてるのだから。
「あっ、罰金だ」
部屋の壁に貼られた注意書きには、『隠し撮り等の行為があった場合、五〇〇万円以上の罰金を請求します』と書かれていた。
私は冷や汗をかいた。しかし、見つかるわけないと思った。
正直に言うと、今さらめんどくさかった。
だから私は隠しカメラをそのままにして、ベッドに腰掛け、足をぷらぷらさせていたのである。やがて、すらりとしたお姉さんがやってきた。
「お待たせしました。本日はよろしくお願いします」
お姉さんはそう言って、冷然と笑った。
まるで氷の花だ。氷のような誇りと、花のような妖艶さと――こんな女性は、生まれて初めて見たと、私は萎縮した。
「さっそくですけど、あお向けになって寝てください」
お姉さんは、私に上体をかぶせるようにしてそう言った。
モデルのようにやせているのに、その胸は意外にも迫力がある。
それを白衣が押さえつけている。
「リラックスしてくださいね」
か細い首筋は、白衣よりも白い。
その肌は首だけでなく腕までもがきめ細かくて、産毛はおろか、毛穴すらひとつもなさそうだ。もちろん、ぴっちぴちのぷるんぷるんである。
「今日は、とっておきのオイルを使いましょう。実は久しぶりに入荷したんですよ」
「そうなんですか?」
「漢方薬が含まれているんです。ニューヨークではお肌のハリが変わると評判で、しかも、最近はセレブのあいだでも流行ってしまって」
「まあ」
それで私もお姉さんみたいになれる――とは、さすがに思わなかったけれど。
ここに通えば、そのうち私もあんな風になれるのかな――くらいのことは思った。
さらに、大好きなアニメキャラに相応しい女になって、そのうちリアルでも素敵な彼氏ができて、処女も捨て去って――なんて欲張りな妄想もわいてきて妄想が止まらなくなっちゃって。
「野中さん?」
「はうぅ!?」
「ぼうっとしてましたけど大丈夫ですか?」
お姉さんはそう言って、私にタオルをかけた。
タオルは、私のおへそから太ももまでを隠している。
※
「これからオイルを使ってマッサージをしますけど」
と言ってお姉さんは、私のブラに手をかけた。
「ちょっ」
「オイルが染みてしまいますので、上げますね」
「あっ」
私はブラを上にずらされた。
ぷるんと乳が出た、というより、乳首があらわになった。
「マッサージしていきます」
「ひゃっ」
「冷たいですよね。でもそのうち内側からポカポカしてきます」
「……はい」
お姉さんは、両手で大きく円を描くように、私の体をなでまわした。
胸を下から上げて、外側から寄せるように、オイルをたっぷり使ってこねている。
「んっ」
さりげなく指が乳首にふれる。そういうところをふれられるのは、相手が女性とはいえ嫌だ。というより、女性だから嫌だ。よく声優が「女同士だから平気です」とかいう、いわゆる百合営業をしているけれど、私はむしろ逆だと思うのだ。女同士だからむしろ気持ち悪い。だって、もし「同性だから(体の構造が同じだから)平気です」という価値観が一般的・普遍的なものならば、世の中の母親と娘は、平然と乳首をいぢりあっていると思う。父親だって、たまに息子の肉棒を握っては、その成長を確かめることだろう。そんな日常は嫌だ。少なくとも私は、おぞましく思う……なんて、本心をぶちまけてみたけれど、しかし、そんなことを言っている場合ではない。
だってお姉さんは、懸命に私を美しくしようとしているのだから。
それに漫画の資料にするべく盗撮している最中なのだから。
「専用機械を使いますね」
お姉さんはそう言って背を向けた。
やがて振り向いた。
お姉さんの手には、口紅のような物が握られていた。
ヴィイイィイイインンン!
「これを使ってマッサージしていきますね」
「ひゃぅ」
「オイルをたらしながら微細な振動を送ります」
「あ、あっ、でもっ、これって」
ローターだよね。
「振動によって浸透率が高まるんですよ」
お姉さんはオイルを塗りつつ、ローターを私の体にあてた。
そのうち乳首を集中攻撃しはじめた。
「ひっ! ちょっ、あはは、ちょっと」
私は笑いながらも抵抗する。
だけどお姉さんは、外科医のような眼差しで、私にローターをあてている。
感情が顔に現れない。
「乳首からは、よく体内に吸収されますので」
「やんっ」
しかし、そうだよね。
お姉さんは、施術しているだけだ。
これはエステマッサージなのである。
だから私は堪えることにした。
機械を当てられるだけなら、手で直接さわられるよりもマシである。
「これから下半身に行きますね」
「あっ、はい」
「ちょっとオイルで汚れますので、ショーツを外しますね」
「えっ、それは」
と、私が拒む前に、お姉さんの手はショーツにかかっていた。
「……はい」
私は腰を少し浮かせた。
するとお姉さんは、慣れた手つきでショーツを脱がし、そこにタオルをかけた。
ヴィイイィイイインンン!
「またですかあ?」
「インナーマッスルに働きかけていきます」
「うーん」
私はやんわり断った。
だけどお姉さんは、うなずいただけだった。
ローターを私の太ももの内側に当てたのだ。
「あんっ」
そこから円を描くように、オイルで太ももを濡らしながら付け根のほうへと向かっていく。
「ひっ、んくぅ」
「あの、あまり動くとマッサージが」
「あんっ、すみません」
「大丈夫ですよ」
と、お姉さんは言ったけれど。
しかし、ローターは股間を目指している。
大きな円を描きながらも、その軌道に陰部をしっかり捕らえている。
陰部には直接当たってないけれど、それでも振動が伝わってくる。
その様子は、タオルで隠れて私からは見えない。だけどやっぱり狙ってる。
ちょっと不安感をおぼえた私は、釘をさした。
「ここ、やっぱり集中的にやるんですね」
「体の中心ですからね」
しかしまったく動じない。
むしろ近くから振動させてきた。
「ひっ」
「大丈夫です。我慢しないでください」
「んくぅ」
「声、出しちゃってください。体の内側から出るものは我慢しないでください」
「ん、あ、はぃ……」
言われたとおり声をあげると、刺激が先ほどよりも弱く感じられた。
ひどく心地のよいものとなったのだ。
けれど――。
「ちょっとすみません」
と言って、お姉さんは突然マッサージを止めた。
「うつ伏せになってもらっていいですか?」
「えっ、はい」
私はお姉さんに言われるまま、うつ伏せになった。
枕に顔をうずめた状態だ。
「ちょっと待ってくださいね」
お姉さんの声が遠くなった。ガサガサと、かすかな音がする。
そしてしばらくするとローターのふるえる音がした。
「リラックスですよ」
お姉さんは、私の背中をローターでなぞる。
お尻にたっぷりとオイルをかける。
私は顔を枕に埋めているから、自分が今どんな状態なのかまったく見えていない。
だけど下半身がオイルで、ぐちゃぐちゃなのはよく分かる。
「振り向かないでください、リラックスですよ」
「はぃ」
「四つんばいの姿勢でお願いします」
私は枕に顔を埋めたまま、情けなくお尻を突きだした。
割れ目にローターが当てられる。
「あんっ」
「大丈夫です、内転筋伸びてます」
「ひ、あ、あ、あああっ」
ローターが割れ目をなぞる。
「体の中心の筋肉に、直接働きかけています」
オイルまみれの蕾(つぼみ)にあたる。
「ちょっとクリっ、当たっ、て、るんですけど」
「ええ、内側からも」
お姉さんは無感情に、ローターで蕾(つぼみ)をなでた。
そうやって開こうとしている。
「だめぇ」
お尻を押さえられると、身動きがとれない。
「集中して、もし体が声を出したいと言ってきたら、自然にそれに従って」
「あん、らめぇ」
「気持ちいいに従ってください」
「や、やあ、だ、だめええぇっ!」
こらえきれず私の背筋が反り上がる。
そして。
ローターの当たった陰核のその下からは、大量のオイルと、それからおそらくは愛液が弾けて飛び散った。
「は、あ、あ、ああああっ……」
私はエステマッサージを受けて、あろうことか逝った。
「大丈夫です。お客さん、このサービスをすると、だいたいそうなりますから」
「ううぅ」
私はお尻をつきだした姿勢から、横を向いて丸まった状態になった。
※ ※ ※
「仰向けになってください」
お姉さんは、私の息が整う前にそう言った。
私が仰向けになるのを手伝った。
「せっかく体のゆがみを直したので、手はまっすぐにしてください」
そう言って私の手を下ろす。
私にかかっていたタオルをはがす。
「やっ」
「隠さないでください、手はまっすぐですよ」
「でも」
私はベッドに全裸で仰向けになっている。まあ、オイルまみれのスポーツブラがスカーフのように首にからみついているのだけれど。
「先ほどのマッサージで体のゆがみが直ってます。そうやって動いていると、もとに戻ってしまいます」
「……はい」
私がおとなしくなると、お姉さんはオイルをたらした。
それから今度はローターを使わずに、直接手でマッサージした。
お姉さんの両手は、大きな円を描きながら、私の体を外側から中心へと向かってマッサージする。胸を寄せて上げるように、太ももを下から絞り上げるように、ウエストに沿って何度も上下に往復して、おへそにオイルを運ぶように、お姉さんは私の体をマッサージする。そしてその手は、おへそからまっすぐ下へと――。
「あん」
お姉さんの手が、私の恥丘にそっと乗せられた。
まるでPCのマウスを持つ手のように、添えられた。
「え、やだ」
私は、キュッと太ももを閉じた。
というより、いつの間にか、だらしなく開いていたそれを、あわてて閉じたのだ。
「力を抜いてください」
お姉さんは、まるでマウスでも操作するように、手を上下に動かした。
オイルがくちゅくちゅと音を立てる。さらにオイルがたらされる。
「インナーマッスルに働きかけてます」
と、お姉さんは言ったけど、しかし、そんなもっともらしいことを言われても女の人に股間をさわられるとかありえない。いや、さすがに割れ目を開かれたり、指を入れられたりといったことはないけれど、というより、そんなこと絶対に許さないのだけれど、それでも恥丘をこねられるというのは気持ちがいいだけに、気色が悪かった。
こういうことは、好きな男性にやってもらうことだろう。
と。
そんなことを思いながら堪えていたら、
「ひゃ」
お姉さんの指が、割れ目を押した。
そうやって指と指のあいだに陰唇をはさみ、オイルを馴染ませた。
「らめっ」
思わず手をつかんだら、
「手はまっすぐですよ」
と無感情に言われた。
私はお姉さんの顔を見た。
お姉さんの表情は変わらない。
粛々と私の陰裂にオイルを塗っている。
本当に――感情が顔に出ない女性(ひと)だ。
この状況で、何も思っていないわけがないのに。
「色素沈着をやわらげる効果があるんです」
お姉さんはそう言って、中指のおなかで、私の入口を押した。
「んんあっ!」
私は腰をくねらせた。
懸命に顔を上げて、それから涙目で訴えた。
「私、経験ないんです」
するとお姉さんは力を抜いた。
しかし手は私の陰裂に置かれたままである。
指は突っこまれなかったけれど、今度はパンでもこねるように外側を刺激された。しかも別の手が、私の胸をもみしだいている。
女の繊細な指づかいが余計に気持ち――悪い。
「体内に浸透させていきます」
「やんっ」
「もし体が声を出したいと言ってきたら、自然にそれに従ってください」
私は火照る身体をもてあまし、それでもいろいろ抵抗したけれど、そのうちあきらめて結局は、お姉さんに委ねることにした。ちょうど隠しカメラと私のあいだにお姉さんが立っている、盗撮の邪魔になっていることも私を大胆にした。
そしてその結果。
「ひあっ! だめ、クリ、だめなのぉっ! あ、あああ、あ、あ、だめ、弱いの、だめえぇっ!」
ビクンと跳ねて大絶頂。
潮を噴いて、鳴き声をあげた。
私は快楽におぼれ果てたのである。
お姉さんは、そんな私を笑顔で見て、冷然と言った。
「隠しカメラなら気にしなくていいですよ」
「え」
私の全身からドッと汗が噴き出した。
五〇〇万円以上の罰金――壁の張り紙には、やはりそう書かれていた。
※ ※ ※
「盗撮してますよね?」
お姉さんは、スカートを脱ぎながら言った。
私は、絶頂と絶望で頭が真っ白だ。
お姉さんが私の手を取り、自身の股間に持っていく。
臭いがした。
なにか、牝(めす)の臭いだ。
品のない言いかただけど。
「やっ」
「あら自分だけ?」
お姉さんのくちびるには、うすら冷たい笑いが浮かびあがっている。
指先に伝わる女性器のあたたかさと、やわらかな感触がおぞましい。
「ほら、気持ちよくしなさいよ」
これが、あの洗練されたスマートなお姉さんの声だろうか。
私は、しばらく自分の耳をうたがった。
それくらい野卑な声だった。
「わたしが報告したら、あなた、罰金を請求されるわよ」
そしてどんな空とぼけも通用させない一語であった。
私は、くちびるをふるわせただけで、しばらく声もなかった。
その間も私の手は、お姉さんの陰部にふれている。
お姉さんの手は白蛇のように、私の体を這いまわっている。
お姉さんが吐き捨てるように言う。
「あなたの態度次第では、黙っててもいいわ」
その言葉さえ絶望なのに、続いてもっと青ざめることを言った。
「しかし花火先生って、作品に負けないくらい潮を噴くのね」
「えっ!?」
「野中花火、同人作家でしょ?」
「なっ、なんで私のペンネームを?」
どういうわけか個人情報を握られている。
私は顔面蒼白となり、茫然自失、喪心虚脱した。
「ねえ、先生?」
「……はい」
「わたしね?」
お姉さんは、にたあっと笑うと、こういう状況じゃ恥知らずだけが口にする、ものすごくスタンダードな要求をした。
「あなたの処女がほしいの」
私は侮蔑をおぼえながらも自暴自棄、うなだれて、ポツリとつぶやいた。
「どうぞ」
※
「お、おまん、や、ちょっと、い、あ、ああぐっ!」
いきなりだった。
「は、はひ、入っちゃ……た?」
オイルまみれの私の膣穴は、たやすく指の侵入を許してしまった。
私は、私の体が女の指を、こうもあっさりと受け入れたことに、がく然とした。
「あ、あ、あ、いや、あ、あ、入れないで」
気持ちとは裏腹に、私の股間はジュクジュクに濡れている。
「は、あ、はん、やめ、んあっ! だ、だめぇ……」
クチュクチュと音を立てている。
「は、いや、あ、あ、あ、やだ。これ、意外と、いい、んぅ、あ、はぁん……」
快感と悪寒、好意と憎悪、何が何だか分からない感情が交錯する。
お姉さんは、そんな私をもっと困らせる。
指を深くインサートする。
「んんあっ! は、は、あんんっ! やだ、奥、キモチ、はあぅっ! キモチ、いいっ!」
「先生が感じてくれて、わたしも嬉しいわ」
指の出し入れが早まる。
私のあえぎも止まらない。
いっそう激しくなる。
「あ、あ、あん、もう、なんで、こんな、うまいのぉ」
「ふふっ」
「あ、いい、ん、だめ、そこっ!」
お姉さんが、膣穴の奥をなぞる。おそらくは子宮口。そこをなぞる。
そして密着した手のひらが上下する。オイルまみれのクリを転がしている。
「あひあ、あん、は、ああ、は、はひ、いい、いいよ、それ、もっとして?」
「………………」
「ああ、ああん! もっとぉ……」
強く。早く。しかし、か細くも繊細な女の指が、私の子宮口をなぶる。
コリコリした感覚。
意識が集中する。
たかぶり。
高まる。
徐々に昇りつめていく。
「あ、だめ、イッちゃう、はぁ、だめ、は、らめぇっ! あ、あ、あああ、くああああっ!!」
私は絶頂に達した。――
私は両手両足を投げ出したまま動けない。
お姉さんは、そんな私に指を入れたまま見下ろしている。
やがて愉悦に満ちてささやいた。
「ほんと、かわいい」
ゆっくりと指を動かした。
「んあっ あ、ああっ、あ、あ、だめ」
今までと角度が違う。
「ひあっ! だめ、弱いの、だめえぇっ!」
私は未知の快楽に翻弄された。
「そんなにされたら、声、大きくなっちゃうぅっ!」
「ふふっ」
お姉さんが笑うたび、私の股間はキュッと締まった。
「あんんっ! やだ、はひ、恥ずかし、あふ、あ、はぅ、あ、はあ……」
私は腰をくねらせる。
お姉さんの指の付け根から、どろりと蜜がしたたり落ちる。
「先生の蜜、こ~んなに、たっぷりよ」
「はうぅ、やだ、そんなこと、言わないでぇ、あん、あ、あ、あ、やだぁ、顔、近づけないでぇ……」
私の意思に反して、愛液があふれる。
ぐちゅぐちゅと音を立ててあふれでる。
それが指のピストンを加速させる。
パンパンと手のひらが音を鳴らす。
私のおまんこは掻き乱されている。
そして。
私は再び荒ぶった。
「んんあっ! ひあ、あ、あ、あ、また、イッちゃう、ああ、私、また、あああっ!」
「いいわよ」
お姉さんの指がさらに早まる。
もう何をされているのか分からない。
ただ熱く。激しい。気持ちいい。
お姉さんの指に吸いついてもう、離れない。
「あ、あ、あ、イク、ああ、イクイク、らめ、あっ! んん、だめえぇっ! イックううううぅっ――……!!」
※ ※ ※
私は女に犯された。
それは荒々しく、そして長い――数十分にも数時間にも感じられる愛撫だった。愛撫というより、陵辱と形容すべきかもしれない。
といっても、別に異常な行為を加えられたわけではない。
お姉さんの愛撫は、ひたすら正常、むしろ無芸ともいうべき動作だった。
ただひたすら強烈に、ときにはネチネチと陰湿に、私の膣に指を出し入れするだけだ。それが陵辱といった観を呈したのは、私のほうがそうなってしまったからである。
私は、ベッドに深く沈みこんだままだった。
お姉さんが全能感に満ちて言った。
「ふふっ、先生の処女奪っちゃった」
「……どうして野中花火だって分かったの?」
「カバンの置きかたが漫画にそっくり。ためしに『野中さん』って、声をかけたら反応したし」
「それだけで?」
「うつ伏せのときに、カバンをあさったら案の定」
「じゃあ……」
私はおそるおそるお姉さんを見た。
お姉さんは、じっと私を見つめた。
しばらくすると、その片頬に、すごい、悪魔のような笑いが浮かびあがった。
彼女は冷然として言った。
「今日から、わたしの奴隷だよ」
私は異様な叫びをひと声あげた。
※
それからのことは少しだけ語りたい。
その後、私は彼女に脅された。
盗撮をネタに強請られ、マッサージ店に通うことになった。
何度もセクシャルなマッサージを受けることになった。
そして、いつしか体中を舐められるようになった。
そんなことをされたとき、私の全身は、おぞましさにふるえたのだけど、この頃はそういった現象はみられない。
慣れたのか、観念したのか、あきらめてしまったのか。
とにかく私は、レズプレイに対する忌避感がなくなって、今ではあれほど嫌悪した女性器すら、じゃぶじゃぶと音を立てて舐めるようになったのだ。
「おまえ、また呼んでもないのに来たのかい?」
お姉さまの声を聞いただけで、私の女陰は淫らにゆがみ、よだれを垂らすようになってしまったのである。
[ 2017/09/11 00:05 ]
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