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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.126 【 デジャヴ 】

「次は◯✕、◯✕。お出口は左側です。電車とホームの間が空いているところがありますので、足元にご注意下さい」


「…………えっ!?」


バッと頭を上げて辺りを見る。
走行する電車の中。
そこには見覚えのある人ばかりが乗っていた。

直美は、強烈なデジャヴを感じつつ、
今の状況を把握しようとした。


(……夢? あたし、寝てたの……?)


首に触れるが傷はなかった。
だが、拭えない生々しい感覚。
たしかにハサミを突き刺したはずなのに。


(キョウちゃんが死ぬ夢を見るなんて……)


不吉な夢に、気味の悪さを感じる。
そして記憶も鮮明に残っていた。
おかしいのは、あの激痛を覚えていることだ。


(いくら夢だからって、あんなに痛いのはおかしいよ……)


経験してない激痛を体感するはずがない。
直美は本当に怪我をしていないか、念入りに首を触ることにした。


「◯✕に到着です」

プシューーー!!


「あっ!!  ヤバイっ!!」


首を触っている場合ではない。
直美は慌てて立ち上がるとすぐに駆け出した。


※※※


駅前。
直美の左右には警報の鳴っている踏み切りと、
人混み溢れる交差点があった。


(この光景……夢で見たのと同じだ……)


ずいぶんと長いデジャヴを感じている。
このまま踏み切りへと向かうと、
また事故が起こって時間をロスしてしまうかもしれない。


(でもあれは夢の出来事だし……)


とは思いつつも、直美は交差点を駆け抜けることにした。


(もしもってこともあるし……こっちの方が確実だよね?)


そうして交差点先の歩道橋を登ると、先ほどの踏切の端に、
乗用車がぶつかり大破しているのが見えた。


(!!)


その光景に直美は愕然とする。
これでは予知夢ではないか。


(何が起こってるの……? なんで繰り返してるの……?
でも本当に夢の出来事を繰り返してるのだとしたら、キョウちゃんが……!)


直美は恭子の元へと急いだ。



※※※



「今日で三日目だ。どうしようかなー?」


マンションの雇われ管理人、
牛久沼達郎は、恭子の部屋の周りをウロウロしていた。

盗聴を続けていたところ、
トイレを使う生活音が聞こえ、
未だに恭子が一人でいることを確認できたからだ。


(やはりあの女は戻ってきていないようだ。
そろそろ行って、女神を慰めてやらないとな)


彼女の失恋のショックを癒すには、
自分が行って慰めてやらなければならない。
牛久沼は、彼女にどう接するのがもっとも自然か、考えていた。


(んーどうやって入るかな?
エアコンの点検とか言っておくか?)


とりあえず牛久沼は、ドアノブを回してみることにした。


(なんだ……鍵がかかってないぞ?)


恭子の部屋には鍵が掛かっていなかった。
直美が飛び出してからというもの、恭子は部屋の掃除をして、ゴミをまとめるくらいしかしていなかったのだ。

彼女にとって、施錠がされてるかどうかなど、
もはやどうでも良い問題だったのである。


「へっ……へへへっ……」


牛久沼はニヤリと笑う。
中に入る口実を考えついたようだ。


「不用心ですよーー?」


そう言い、牛久沼はドアを開けて中を見た。
上がり框の手前、女性の靴が一足置いてある。


「甘髪さーん、いらっしゃいませんかー?」


大きすぎず小さすぎず、達郎は程々の音量で声をかけた。
あまり大きな声を掛けても入れなくなるし、
小さすぎても不法侵入感が出てしまう。

彼の小物感がハッキリと分かる行動である。


「いやぁー住人の無事を確認するのも管理人の役目だからなぁ。仕方ない、中にお邪魔して、確認することにしよう」


ずいぶんと言い訳くさく独り言を呟くと、
彼はそのまま中へと入った。


「そうだ。鍵を掛けたままだと不用心だよな。
しっかりと掛けておかないと」


ドアの鍵とドアガードを掛ける。
牛久沼は靴を脱ぎ、コソコソと奥へと進んでいった。

リビングの扉を開けて、中を確認する。
恭子はいないようだ。

(んっ? なんだあれは?)

リビング中央のテーブルに封筒が置いてある。
気になった牛久沼は、中に入って確かめてみることにした。


「これは……こういうことだったのか……」


牛久沼は笑うと、
それを拾い、ポケットへと入れた。

廊下に戻り、恭子の寝室を目指す。
一番奥のベランダ側の部屋が恭子の部屋だ。

牛久沼が奥の扉を開き、中を確認すると、
床に寝そべっている恭子の姿があった。


※※※


テーブルの奥、一列に並べられた座布団の上に恭子はいた。
彼女は目を瞑ったままじっとしている。
顔色は最後に見た時と比べて、ずいぶんと青白くなっていた。慎重に近づき、声をかける。


「…………大丈夫ですか?」


なるべくイケメンボイスになるよう意識したが、
モブ声のままである。

しかし恭子が気付くことはない。


(これでも起きないか……見た感じ。三日間、何も食べてないようだな。あんな封筒を作るくらいだから当然か)


牛久沼はしゃがみ込み、恭子の腕に触れてみた。


(なんだこれは……柔らかいぞ……)


その柔らかさに感動する。
腕でこの感触なら、胸はどれほど柔らかいのだろう?
そう連想させるほど、恭子の身体は魅惑的であった。


(それに……すっげぇ良い匂いだ。
三日風呂に入ってないとは思えんな)


シャワー音がしないことから、
恭子が風呂に入っていないことは知っていた。

この三日で、恭子が使ったインフラはトイレのみ。
おそらく食事だけでなく、水すらも口にしていないだろう。

彼女はカーペットに座布団を四つ並べ、その上で眠っていた。そしてカーペットの下には、ラップが何重も貼られており、まるで防水処理をしたような状態となっていた。

牛久沼は、恭子に触れる喜びを感じつつ、
彼女の身体を揺り動かした。

そこでようやく恭子は目を覚ます。


「………?」


恭子は目を開けると牛久沼をじっと見た。
表情に変化はなく、まだぼんやりとしているようだった。


「大丈夫ですか?」


再び声を掛ける牛久沼に、事態を把握した恭子は、
ゆっくりと起き上がることにした。


「大丈夫です。ただ寝ていただけですので……。
あなたはたしか牛久沼さんでしたよね?
どうしてここに……?」

「いえ、お部屋の鍵が開いておりまして、不用心でしたので注意を促そうとしたのですが、返事がなかったため、奥まで入らせていただきました」

「それだけで、ここまで入ってくるのですか?」

「はい、中にはご病気で倒れられる方もおりますので、緊急時には、このように対応させていただいております」

「そうでしたか。ご心配おかけしてすみませんでした」


牛久沼の説明に納得する恭子。
孤独死も社会問題化されている。
管理人が、こういう対応を取るのもありだと思ったようだ。


「私は大丈夫ですので、
あとは出ていただいても良いですよ」

「顔色が悪いようですが、本当に大丈夫ですか?」

「はい、ちょっとダイエットを頑張り過ぎたようです。
これから食事することにします」

「本当にそれだけですか?」

「他に何かありますか?」


恭子としては、早く帰ってもらいたいという気持ちでいっぱいだった。適当に誤魔化して帰らせよう、そう考えていたのだが。


「実はこんなものを見つけまして」


そう言うと、牛久沼は先ほどリビングで見つけた封筒を恭子に見せた。


「!!」


ここで初めて恭子が反応を見せる。
まずいものを見つかったという表情だ。


「困るんですよね。こういうことをされると。
このマンションの価値が下がってしまいますので」

「…………ごめんなさい」


牛久沼の持つ封筒には、
恭子の文字で「遺書」と書かれてあった。

彼女はこのまま何も食べずに餓死するつもりだったのだ。

ラップを貼り、カーペットと座布団を敷いたのも、自分が死んだ際に、腐汁がフローリングに染み込まないようにするための配慮であった。

とはいえ、死人が出れば、
そんなこと関係なく、総貼り替えになるのだが。


「自殺は止めます。
御迷惑をお掛けしてすみませんでした」


深々と頭を下げて謝る恭子に、牛久沼は続ける。


「人生いろいろありますからね。
辛いこともあると思います。でも死んじゃダメですよ」

「そうですね。私、どうかしていました。
これからは楽しく生きることにします」


にっこりと作り笑いをする。
もちろん恭子は、自殺を止めるつもりはなかった。

本当は直美と過ごしたこの部屋で死にたかったのだが、
見つかってしまっては仕方がない。
他の死に場所を見つけることにしよう。
そういう考えであった。


だが牛久沼は

(ふほぉぉぉぉぉ! なんて神々しい笑顔なんだぁ!!
これぞまさしく女神。ヴィーナススマイルだぁぁ!!)


恭子のこの行動は牛久沼を調子づかせることとなる。


「恭子さん、これも何かの縁ですから、僕と付き合ってみませんか? 僕ならキミのことを幸せにしてあげられます」

「…………」


突然の告白に、恭子は暗い顔を見せた。


(厄介なのに捕まったわね……。
ひとまず出ていってもらって、
管理会社に連絡して対処してもらおうかしら?)


管理人が部屋に上がり込んで、住民を口説いたなど、
会社のモラルを問われる問題である。

牛久沼が配置替えになる理由としては十分だ。
恭子は、適当に誤魔化すことにした。


「お気持ちは嬉しいですけど、まだあなたのこと、よく知りませんし、お返事は後日でも良いですか?」

「……そう言って、お茶を濁そうとしてる?」

「えっ?」

「俺の告白を聞いて、嫌な顔をしたよな?
俺を振ってきた女達と一緒だ……」


先ほどまでと違い、牛久沼の目はずいぶんと据わっている。
恭子が一瞬見せた暗い表情が、
彼のつらいの失恋の記憶を呼び覚ましてしまったようだ。


「そういうつもりはありません。
ただ突然のことだったもので……
牛久沼さんはとても誠実そうですし、前向きに考えておりますが、やはりこういうのは、じっくり考えて答えを出したいと思いまして……」

「女はよくそう言うよな。
分かっているよ。俺を選ばないってことくらい。

だが君の場合は少し違うかもな……?
一度身体を合わせれば、考えが変わるかもしれないし……。

俺が教えてやるよ……。
女とするより、男とした方がずっと気持ち良いってね」

「!?」



牛久沼の台詞で、恭子が唖然とした表情を見せる。
なぜこの男が、そんなことを言い出すのか?
まるで直美との関係を知っているかのような発言だ。


トゥルルルル……トゥルルルル……

そこでスマホに着信が入る。場所はテーブルのすぐ上。
恭子は慌ててそれに手を伸ばした。

ガシッ!

(!!?)


突如、腕を牛久沼に掴まれる。
彼はギラつく目を向けながら言った。


「ずっと君を見守っていたんだ……もうあの女とは別れたんだから、良いじゃないか。俺と付き合おうよ」

「なんでそのことを知ってるの?
まさか盗聴器でも仕掛けたの?」

「…………」


牛久沼はニヤニヤと笑うだけで何も答えない。
恭子はその反応だけで、彼が盗聴器を仕掛けていたことを確信した。

牛久沼は点検と言って、幾度となくこの部屋に入っている。盗聴器はその時に仕掛けたのだろう。
直美がレズビアンだと知られているのだとしたら、
おそらくこの部屋にも仕掛けているはず。


トゥルルルル……トゥルルルル……
スマホは鳴り続けた。

誰からの電話か気になるが、今は取ることができない。


「うるせぇな、
大事な話をしてんだから、かけてくるんじゃねぇ」


牛久沼は恭子のスマホを持つと廊下に出た。
隣の部屋に置いてきたのか、彼はすぐに戻ってきた。


「ごめんね、恭子ちゃん。
それじゃあ、返事を聞かせてもらおうかな?」


牛久沼は作り笑いをする。望まぬ返事をすれば、何をするか分からないといった態度だ。

おそらくこの男が、
これまで自分をつけ狙ってきたストーカーで間違いない。

マンションの防犯カメラに近付かなかったのも、この男が管理人だったからだ。
カメラを監視する立場なのだから、知っていて当然である。

それよりもノンケに戻った直美が、これからの人生をまともに過ごすためにも、この男が盗聴したデータは消さなくてはならない。それには一体どうしたら……?

恭子がそんな考えを張り巡らせている間、
牛久沼の方も、今後の展開を考えていた。

彼は口では誘っているが、すでに真っ当な手段で恭子を手に入れることは考えていなかった。

恭子は遺書を残している。
首を絞めて殺してしまえば、自殺とみなされるはず。

捕まる可能性もあったが、
そんな危険を冒してまで彼女と性交する価値は十分あった。

これほどの美女を好き放題できるなど、一生涯ないことだ。

殺してしまえば彼女は永遠に自分のもの。
すでに牛久沼の頭は、恭子を犯すことでいっぱいだった。

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