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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.98 【 後遺症◇ 】

ラブホテルを囲む黒い車の数々。
下車した黒服達が、入り口を塞ぐように立っていた。

「目標はこの部屋だ。ただちに突入を開始する!」

ドアロックを破壊し、突入する。

彼らはドタドタドタと、騒がしい音を立てながら、階上を目指していく。突き当たりのドアを破壊して、一斉に部屋の中へと侵入した。


「いたぞ! 全員捕まえろ!」


ここまで10秒も経っていない。

ベッドから起き上がる暇すらなく、真里達は囲まれてしまった。すでに身体を抑えられ、誰も身動きが取れない状態である。
こうなってしまっては、なす術がない。

階下から一足遅く上がって来た小早川が、
真里達を見つけて言う。


「おーほっほっほっほっほ!!
バカな奴らネー! アタシから逃げられると思ったら大間違いヨ!! ありとあらゆる方法で、拷問にかけてやるから覚悟しなさい!!」

「や、やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」


バタバタと両手を〖天井〗に向けて真里は叫ぶ。
そう……〖天井〗に向かって。


「ハッ!?」


目を開けると、そこには静かな天井が広がっていた。


(…………夢?)


真里は起き上がって辺りを見回した。

小早川達の姿は見当たらなかった。
……どうやら悪い夢を見ていたようだ。

不安と恐怖が見せた夢だろうか。
今でも震えが止まらなかった。

横に目を向けると、誠が安らかな寝顔を浮かべていた。起こすことにならなくて良かったと思う。

真里は気を静めるために、一旦起きることにした。
ベッドから降りて立ち上がる。

部屋は、脱衣場から漏れる照明の光によって、
薄く照らされていた。わざわざ電気を付けなくとも、
大抵のものが見えるくらいである。

真里は、隣のベッドで眠る萌と忍を起こさぬよう、
なるべく音を立てずに、ソファーへ移動すると、
温かい紅茶を飲むことにした。

コップにティーバッグを入れお湯を注ぐ。

液体の落ちる柔らかい音と、ふんわりとした湯気が漂い、紅茶の爽やかな香りが鼻を通って、少し渋めの湯がお腹の中に落ちてゆく感覚が心地よかった。

そこでフゥーと息を吐く。

不安は少し吐き出せた気がしたが、
それでも恐怖による震えは止まらなかった。。

カタカタカタカタ……。

コップをテーブルに置く際に、
けたたましく音が鳴る。

真里はコップから手を離し、ソファーに深く腰を据えると、腕を組んでもう一度ため息を吐いた。


(怖い夢だったな……もし本当に捕まったら、どんな目に遭わされるんだろう……)


これまでのことを考えると、
おそらく萌と付き合う流れとなってしまうだろう。

誠を催眠の術中に嵌(は)めるため、
真里をレズに変え、別れを言い出させる。

それが小早川の狙いだ。

実現すれば、誠は希望を失い、
催眠に抗うことはできなくなってしまう。

そして人格や記憶を改変させられ、
好きなように操られてしまうだろう。
そんなことは絶対にさせない。
誠の人生は誠のものだ。
真里は何か対応策がないか考えるため、それまで掛けられた暗示を、思い返してみることにした。

暗示の多くは、元の真里の精神構造とあまり変わらなかったため、そこまで影響はなかった。
一つ影響があるとすれば、
それは萌を恋人として見るようにさせられたこと。

真里は、女性と裸で触れ合う気持ち良さと、
女性を愛する気持ちを学んでしまった。

初めは凶行に及んでしまった萌を救うためだったが、いつの間にか本気で愛するようになってしまっていたのだ。


(次、捕まったら、今度こそ萌の彼女にさせられちゃうんだろうな……)
萌のことは好きだが、
それはあくまでも友人としての好きだ。
これからもそういう関係でありたい。
しかし、心のどこかで新しい関係を望む気持ちにも、
なんとなく気づいてしまっていた。
(本当はこんな気持ち、持ってはいけないんだろうけど……)

真里の夢は、誠と結婚して幸せな家庭を築くことだ。
結婚するのに、他の人に目を向けていてはいけない。

それは分かっているが、真里にはどうしてもその気持ちを強く退ける気にはなれなかった。
(なんでだろう……催眠の影響だってのはわかっているのに……)

一杯目の紅茶を飲み終え、二杯目を淹れ始める。

砂糖をカップにひとさじ入れて、かき混ぜようとしたところ、内側にスプーンがぶつかり、うるさく音がなってしまった。

なるべく音を出したくなかったのだが、
どうしても手が震えてダメだった。

バサッ……

後ろからシーツが捲(めく)られる音がする。

真里が振り向くと、寝ぼけ眼(まなこ)で起き上がり、頬を搔く萌の姿があった。


「ごめん、起こしちゃった……?」


小さな声で謝る真里。

萌はもう一度目を閉じると、
すぅーっと息を吸い、立ち上がった。


「う~ん別に……私も何か飲みたいなぁって思って」

「そっか、じゃあ萌の分も淹れるね。
緑茶、コーヒー、紅茶どれにする?」

「ンーー、真里と同じのでいいよ」


そう言い、真里の隣に腰かける。
まだ気だるそうにしており、半分夢心地のようだ。


「はい、どうぞ」

「ありがと。ズズズ……アツッ!」

「まだ沸かしたばかりだから熱いよ……」


萌は改めて息を吹きかけながら紅茶を飲んだ。
ちょっと火傷したようである。


「真里、眠れないの……?」

「う、うん……」

「まー、しょーがないよね。状況が状況だしね」

「萌は怖くないの……?」

「もちろん怖いよ。
あのオカマに一番恨まれているのは私だろうしね」


そう言いつつも、
萌は気丈(きじょう)な態度を崩さない。

「萌は強いね……最初に捕まった時だって、アイツに言い返していたし、私なんて良いようにされてばかりで全然……」


本当は一番抵抗できてるのは真里なのだが、
本人はそのことに気付いていない。

ただただ己の無力さに打ち拉(ひし)がれ、
目にはうっすらと涙を浮かべていた。


「ううん、そんなことないよ。
真里は昔に比べたら、すっごく強くなったよ。

その証拠に今でも真里は、誠くんと付き合ってる。

他の人は、みんな同性愛者に変えられているのに、
真里は今でも自分を見失ってないじゃん☆ミ」

「でも……」

「私は真里と違って、忍と別れちゃったし……。
レズに変えられて、真里のことを堕とそうとしちゃった。それに比べたら、真里の方がずっと強いよ」

「それは、萌がアイツの催眠を一手に引き受けてくれたから……」

「ん~~引き受けたというより、単にムカついただけなんだけどね。思いっきり罵れてすっきりしたわ」

「それに私は、これからだって、ヘマしてみんなの足引っ張るかもしれないし……萌や誠くんみたいに、いろいろ考えて動けないし……」

「ハァ~~、そんなにウジウジ考えないの」


萌はそう言うと、紅茶を置き、真里を軽く抱擁した。


「ちょ、ちょっと萌?」

「ふふふ……ドキドキする?♡」


真里は紅茶を片手に、少し顔を赤くしていた。


「……紅茶こぼしちゃうよ」

「置けばいいじゃん」

「そうだけど……」

「置いて」

「はい」


言われた通り紅茶を置く。

萌はそれを確認すると、
真里の身体をしっかりと抱き寄せた。

真里は心臓をドキドキさせながら、
緊張した面持ちで、萌を見つめている。


「萌……催眠解けているよね?」

「もちろん解けてるよ。でも、今の真里には口で色々言うより、こうするのが一番かと思ってさ」


萌の匂い、温かさ。
触れあうことで強く感じられる。
性的なものも、もちろん混ざっていたが、
それよりも安心感の方がまさった。


「落ち着くでしょ?
私も真里とこうしてると落ち着く……。
本当は誠くんとするのが一番なんだろうけど、起こすのも可哀想だしね。だから今は私で我慢して」


萌が未だに催眠の支配下に置かれているのではと疑った真里であったが、萌の意図を理解すると、身体の力を抜き身を任せた。


「……ありがと、萌。我慢だなんて思わないよ。
いつも助けてもらってばかりでゴメンね。
弱気になってたけど、少し落ち着いてきた」

「そっか、じゃあもう少しこうしてよっか?」

「うん」


萌は真里の承諾を得ると、より密接に身体を触れ合わせた。震えていた真里の身体も萌と抱き合うことにより、落ち着きを取り戻そうとしていた。


「ねー真里」

「ん?」

「ほんの少しの間だったけど、私と付き合ってみてどうだった?」

「どうって……」


萌と付き合ったのは、サンルームでの出来事から観覧車を降りるまでの間だ。

昨夜は身体を重ね合い、驚くほど精神的にも肉体的にも満たされたものだった。

観覧車の中では、萌のエッチな要求にどぎまぎしたが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

正直、誠という存在がなければ、萌の彼女として、ずっと一緒にいたいと思えるくらいである。

だが、それを正直に伝えるのは、あまりに恥ずかしすぎた。真里は答えに躊躇(ちゅうちょ)した。


「も、萌はどうなの……?」


ひとまず萌に回答を求める。
少々ズルい方法だが、
萌の返事を聞いて回答を決めることができる。

催眠が解けた今、GLが苦手な萌であれば、
否定的な返事が来ると思ったのだが……。


「今思うと、嫌かなー?」

「そ……そうだよねっ!」


予想通りの答えだ。真里は、なぜか少し残念な気持ちになりつつも相槌(あいずち)を打った。


「誰かを好きになる気持ちを、あんな奴に決められたくない」


そう言い、萌はじっと真里を見つめた。
瞳の奥を覗き込むような真剣な表情に、真里は心臓をドキドキさせる。


「なっ……なに?」


慌てる真里を見て萌は笑う。


「次は真里が答える番だよ。どうだった?」

「私も……嫌……だったかな」

「ぷっ」

「なんで笑うのっ?」


萌は右手を伸ばし、真里の頬に優しく添えると、
からかうようにもう一度尋ねた。


「ほんとうにぃ?」

「ホントだよ」

「ウソ。目が泳いでいるよ。
相変わらず、真里は嘘をつくのが下手だなぁ」

「そんなことない、だって……」

「私は真里とそういう関係になるの、全然イヤじゃなかったよ」

「へ? さっき嫌だって……」

「オカマにそれを決められるのが嫌だって答えたの。
真里と付き合うこと自体は全然イヤじゃない」


それを聞き、真里の身体が熱くなる。

彼氏がいる身でありながら、
萌の気持ちを聞いて、嬉しくなってしまうだなんて……。
真里はそんな気持ちを誤魔化すように言葉を連ねた。


「な、なに言って……萌には忍くんがいるじゃん。
そそそ、それに私には誠くんがいるし……」

「ははは、落ち着いて、私は嫌じゃないって答えただけだよ? 別に付き合ってだなんて言ってないし」

「なっ……」


早とちりを指摘され赤面する真里。
萌は右手を下ろし、穏やかな笑顔を浮かべた。


「ふふふ……じゃあもう一度聞くよ?
真里は私とエッチしたりデートしたりしてどうだった?」


再び真里の身体を引き寄せる。
萌の乳房が、真里のそれに当たる。

ただの親友とは違った距離感。

真里は催眠下で感じていた女同士の背徳的な快感を思い出してしまった。

乳首が膨れ、ピンと反応する。
萌の乳房に触れ、勃起してしまったようだ。

それと同時に、彼女の下の泉も甘い官能を示すようになってしまった。


「はぁはぁ……♡ はぁ……」


身体が萌を求めている。
息も荒くなってしまう。

なんとか回答を誤魔化したいところであったが、
萌が正直に答えているのに対し、何度もはぐらかす程、真里は利己的ではなかった。


「私も……イヤ…………じゃなかった。
ってそんなこと言わせないでよっ……」


恥ずかしくて下を向く。
まるで告白シーンのような反応である。

それを見て、萌はしばし無言になる。
目を閉じて、じっと何かを考え始めたようだ。

その様子を真里は不安そうに見つめている。


「真里、正直に答えてもらえる?」

「うん」

「もしかして、今も私とエッチしたい?」

「えぇっ!?」


萌がさらに突っ込んだ質問をしてきたため、
真里は驚き、少し大きな声をあげてしまう。

すぐさま口を塞ぎ、眠っている二人を見る。
どうやら起こす結果とはならなかったようだ。

真里はいい加減エロい質問ばかりする萌に抗議した。


「萌ーそういう質問ばかりやめてよ……。
まだ催眠が解けたばかりで私……」


そこまで言い、真里は口を接ぐんだ。
そこから先は、言いにくいことだったからだ。

だが萌は出し掛けた言葉を見逃さなかった。
引き続き真里を誘惑するように言う。


「催眠が解けたばかりで何?」


真里の背中に手を回し、優しく愛撫する。
指先でなぞるようなフェザータッチだ。

萌が触れた箇所にツーンと甘く刺すような快感が走り、真里は全身を身震いさせた。


「それは……はぁはぁ♡」

「本当は私とエッチしたいんでしょ? キスしたり、抱きあったり、おまんこを擦りあったり、舐め合ったりしたいんでしょ?」

「はぁはぁはぁはぁ!♡
萌……それ以上……言わないで……♡」


真里の下着は、萌のエロい質問責めによって、
ぐっしょりと濡れてしまっていた。

昨夜の性交を思い出し、
レズの快感液を分泌してしまったのだ。

物欲しそうな顔で萌を見つめる真里。

嫌々な態度を取ってはいるが、
その実は萌のことを求めていた。

催眠によって知ってしまった女同士の禁忌の愛は、
真里の心の底にしっかりと根付いてしまっていたのである。


「わかった。もう言うのやめる。
真里の状態、大体把握したし、私もそろそろ限界だしね……ほら、これ見てよ」


すると萌は、寝間着の下をずらしてショーツを見せた。


「えっ……なんで?」


萌も真里同様、グショグショに濡れていた。


「真里もこうなってるでしょ?
私も同じ……真里とエッチしたくて仕方がないの」


残念そうな顔を浮かべ、萌は背中をソファーに預けた。


「催眠は解けたけど、実際のところ何も変わっていない。記憶が戻っただけで、私はまだ真里を恋人として見ているところがあるの……」


萌が急に神妙な態度を取り始めたので、
真里はどう返したら良いか困ってしまった。

加えて未だに発情モードが抜け切れず、萌の濡れたショーツを見て、生唾を飲み込んでしまっていた。


「真里、我慢するんだよ? 今、エッチしちゃったら、私たち本当にレズビアンになっちゃうよ。 真里には誠くんがいるんでしょ?」

「う、うん……わかってるって」


萌はショーツと寝間着を戻すと、
何事も無かったように会話を続けた。


「次、捕まったら、おそらく抵抗できないと思う。
今は忍がいるから我慢できるけど、催眠でその記憶を抜かれてしまったら、私はもう自分を止められない……」

「そんな……」

「でも真里は別。真里はまだ別れていないから。
別れていなければ、催眠に対抗できる。
だから絶対に別れないで。
二人の絆だけが、私達の最後の希望なの」

「でもどんな催眠を掛けられるかわからないのに……そんなの無理だよ……」


真里は自信がなさそうだ。催眠で操られた萌に迫られたら、真里は断れる気がしなかった。


「大丈夫。真里ならきっと出来る!
私は真里を信じてるから。
だから真里も最後まで自分を信じて。
そうすれば、きっと突破口が見えるはずだよ」


穏やかな表情で、しっかりと萌は伝える。
その言葉に真里は活を入れられた気持ちになった。

親友がここまで自分を信じると言ってくれるのなら、
できる自信がなくても、とりあえず頑張ってみよう。

そう思い、真里は萌の言葉に頷いた。

そうして話を終えた二人は、
それぞれのベッドに戻り、眠りについたのだった。


※※※


忍が眠るベッドに戻り、
萌は一人、物思いに耽る。
あぁは言ったものの、萌も真里と築き始めた新しい関係に未練を残していた。
小早川に捕まって、
真里とレズ関係に戻されるのも嫌じゃなかった。
本当はまたあの安らぎと気持ち良さを味わいたかった。
しかしそれでは、誠と忍はどうなる?
自分と真里は良くても、
彼らは確実に不幸な道へと進んでしまうだろう。
自分の願望のために、
二人を犠牲にすることはできない。
萌は、そうしたジレンマに思い悩むのであった。
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