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霧の寝台

ガチ×ノンケ専門の官能小説 主なジャンル:GL BL NTR 催眠 調教 監禁 男の娘 女装

Part.92 【 遊園地◆ 】

「おはよー萌」

「おはよー真里」


ここはホテルの朝食会場。

何十種類もの料理が並べられており、
自由に食べたいものを選べるバイキング方式だ。

真里と萌は、プレート皿を手に持ち、
時折あくびをしつつも、思い思いにおかずを取っていた。

昨夜の疲れが取れていないのか、どちらもまだ眠そうにしている。


(昨日は和食中心だったから、今日はパンにしようかな)


真里は一品一品を多く取り、
なるべく種類を少なくなるようにしていた。


「あれ? 真里はずいぶん豪快な取り方するんだね?」


そんな真里のプレートを見て萌が言う。


「だってここって毎日同じメニューじゃん。これから一週間以上も泊まることになるんだし、いつも違うものが食べれるようにしてるの」

「なるほどね。
でもそれなら外に食べに行ったら良いじゃん♪
せっかくの旅行なんだし、色々食べないと損だよ?」


真里は萌の意見を聞き、妙に納得した。

ホテルの食事がタダとは言え、この機会に美味しいものを食べに行かなければ、それはそれで損と言うもの。

真里は考え方を改めると、
萌と同じように色んな料理を取ることにした。

そうして一通りおかずを取り終えた二人は、
同じテーブルに座り、食べ始めたのであった。


「ところで忍くんはどうしたの?」

「まだ寝てるーなんか眠いんだって、何度起こしても寝ちゃうから、一人で来ちゃった。マコトちゃんは?」

「マコちゃんも同じ、なんだかすごく疲れてるみたい。
昨日そこまで激しく遊んだかな?」

「マコトちゃんもかー
私も疲れが取れてない感じがするかなー
全身ダルくって、特に舌が筋肉痛かも?」

「えっー!? 萌も? 私も痛いかもー?
使い慣れてない筋肉使ったみたいな感じがする。
口内炎みたいになってないかな? ちょっと見てみて」


そう言い真里は舌を出して、萌に見せた。

真里の唇から出た舌は、
健康的な淡紅色をしており、特別異常があるようには見えなかった。

だが、萌はそれを見て、
自らの心臓が高鳴り始めていることに気が付いた。


(……なんで私、ドキドキしてるの?)


真里の舌は、彼女には実に厭らしく映った。
なんだか舌を絡め合わせたくなるような淫靡な印象。

それを真里の仕草が原因と感じた萌は、注意することにした。


「真里、食事中にそんなことしないの。朝からエロいよ君は」

「えぇっ!? エロいかな?」

「エロいよー。真里はそんな容姿してるんだからさ。
桐越先輩以外の人に、そういうことしちゃダメだよ」

「そ、そう……? うーん……注意する」


そこまで気にすることだろうかと疑問に思う真里であったが、とりあえず納得することにした。


「エロいと言えば、忍くんとはどうだったの?」

「どうだったって?」

「昨日、忍くんとエッチするって言ってたじゃん」

「…………あっ!」


真里の話を聞き、ハッとする萌。

昨日、忍を興奮させたものの、エッチに誘うのを忘れていたのだ。

萌は愕然とした表情になり、真里と目を合わせた。
非常に申し訳なさそうな、何とも言えない目。

固まってしまっている萌に釣られて、
真里も固まってしまった。


「…………」

「…………」

「…………萌」

「……………………はい」

「…………もしかして忘れてた?」

「…………ごめんなさい」


真里は実に信じられないといった表情をする。
これでは昨日のレズのふり作戦が全て水の泡ではないか。


「真里……ホント、ごめん」

「うへぇ……もう過ぎたことだから仕方ないけど、どうして忘れちゃったの?」

「全然わからない……」


分かるはずもない。
萌は昨夜の記憶を消されているのだから。

じっさい彼女は忍を勃起させ、挿入の一歩手前まで誘うことができていた。しかしそこで催眠を掛けられ、行為を阻止されていたのだ。


「しょーがないな……もう一度するしかないね……」

「えっ……? いいの?」

「腐っても私は萌の親友だよ。
こうなれば、エッチできるまでレズのふりしてあげますよ」

「うぅ……ありがとう真里。私達、腐っても親友だよね。
むしろ腐ってるからこそ、親友かもしれないけど」


萌はこの腐った親友に感謝した。
この間抜けな失敗を責めることもなく、協力すると彼女は言ってくれた。真里のその優しさに、萌の心はキュンと高鳴るのであった。



※※※


10時になり、ホテルのシャトルバスに乗り込む四人。

その日は『南の島遊園地』に行く予定になっていた。

バスの中では真里と萌が隣同士に座り、
通路を挟んですぐ横に忍と誠が座っている。

さっそく真里と萌は、それぞれの手を重ね合わせた。
肘掛けの上で、萌の手の甲に真里の手が乗っている状態だ。

忍を興奮させるため始めたことだったが、
萌はここで昨日までとは違う感覚を真里の手に感じていた。


(なんで私……こんなに真里の手を意識してるの?)


忍のことよりも、真里の方が気になってしまう。
彼女のサラサラでしなやかな手の感触に、なぜか心地よさを感じてしまうのだ。


ドキドキ……ドキドキ……


萌の胸がときめき出す。
この感覚は、忍とのデートで初めて手を繋いだ時の感覚と一緒だった。

それを親友である真里に感じてしまっている。
萌はその事実に困惑していた。


(もしかして、レズのふりをしているから?)


俳優や女優が役を演じる時、本当にその役になりきると言うが、それに似たような感覚になっているのかもしれない。

そうであれば、逆に好都合。
演技がリアルであるほど、忍が興奮してくれる可能性は高くなる。

複雑な気持ちではあったが、
萌はひとまずその流れに身を任せることにした。

それから30分ほどして、バスは遊園地へと到着する。

忍は移動中ずっと眠ったままで、
二人の行為に気づくことはなかった。

徒労に終わってしまったが、
忍がいつこちらに注目するか分からない。

二人は演技を続けることにした。



※※※



遊園地のチケット売場にてーー


「じゃあとりあえずチケット買おうか。一日券で良いよね?」


自販機に万札を投入し、忍が言う。


「うん、そうだね。結構広い遊園地みたいだし、
そこまで混んでないみたいだから、一日券で良いと思うよ」


隣にいた誠が返事をする。

年末年始の繁忙期シーズンではあったが、
有名なネズミの国ランドと違い、ここは本州から遠く離れた南の島。

利用者は島にいる者に限られ、
アトラクションも気軽に乗れる環境にあった。

その気軽さから、ネズミの国ランドよりも、
南の島遊園地の方が良いと言う人もいるほどである。

4人はチケットを購入すると、
アトラクションに乗るため、その辺を散策し始めた。


「ねぇー萌、何乗るー?」


そう言い、真里は萌に手を差し出した。
萌はすぐに手を繋ぎ、演技を再開する。

ギュ…………

手のひらを通じて真里のひんやりとした体温を感じる。
萌はこうして真里と手を繋げることに、幸せを感じていた。

その感覚にノンケたる萌の心が警鐘を告げる。

『このまま続けると本当にこっちの道に足を踏み入れてしまうかもしれない』

そんな不安が頭を過(よ)ぎった。

一瞬、顔面蒼白となり困惑する萌。

思わず繋いだ手を離しそうになったが、
とりあえずこの姿を忍に見てもらわなければならない。

全面的に協力してくれている真里のためにも、
彼には興奮してもらわなくてはならないのだ。


「萌……なんで真里ちゃんと手を繋いでるんだ?」

「私達、親友だからこれくらい普通だよ? ねー真里?♡」

「う、うん……これくらい、普通です。親友ですから」


真里の演技は、あいかわらずぎこちない。
しかし構わず萌は言った。


「忍ーもしかして真里に嫉妬しちゃった?」

「……する訳ないだろ」

「じゃーあ、ずっと手を繋いでても良いのぉ?」

「好きにすれば良いだろ……」

「ホントは嬉しいんでしょ?」

「な、なんでだよ」

「ふっふっふっ……知らないよー?
私、真里に取られちゃったりして?♡」

「ば……バカ、からかうなよ」

「ふふふ……慌てちゃって♡
フゥーーー忍、カ・ワ・イ・イ♡」

「こら、息、吹き掛けるな。真里ちゃんが見てるだろ」


萌から首筋に息を吹きかけられ、忍は動揺している。

そんな様子の彼に、萌は気を良くすると、
そのまま真里とコーヒーカップに乗りに行ってしまった。

和気藹々と戯れる二人の姿を見て、
忍は僅かであるが一物を硬くしていた。


5分後、真里と萌はコーヒーカップに乗りハンドルを握っていた。

勢いよく回せば、高速で回るコーヒーカップ。
忍と誠は、乗り物酔いするという理由でパスしていた。


「アイツ、真里とマコトちゃんにレズ趣味バラされるの心配してるんだよ。もうバレてるのにね」

「そういうことか、萌ってああやって男心くすぐるの上手いよね」

「そお? 真里の心もくすぐってやろうか? フゥーーー」

「ちょっ、やめて、プッ、ホントにくすぐったいっ。
もぉーーお返しだよ。フウーーーー」

「ひゃあ!♡ フゥーフゥーーー」


息を吹きかけあって遊ぶ二人。
そんなこんなでコーヒーカップは回り始めた。

萌から見て、真里以外は常にクルクル回っている。

忍の様子を確認したかったが、
酔ってしまいそうだったので止めることにした。

自然と世界は真里と自分だけとなる。
こうしていると、本当の恋人同士になったような気持ちだった。

女性に対してこんな気持ちになるのはおかしい。
本当に演技をしているから、そう思えているのだろうか?

萌は自分の心の変化に疑問を持ち始めていた。


「ねぇ、真里」

「んー?」

「真里って、こうして恋人っぽくしてて、
本当にそんな気分になることってない?」

「へ? なんで?」

「んーなんとなくー」

「私には誠くんがいるから、それはないかな?」

「まぁ、そうだよね」


真里の返事に冷静になる。
やはり同性にこんな気持ちを抱くのはおかしい。

原因はおそらく欲求不満。

こうなってしまったのも、
ずっと御無沙汰な状態が続いているからだろう。

このままいくと、この状態が悪化してしまうかもしれない。
萌は、何としてでも今夜中に忍と行為にいたらなくてはと考えた。



※※※



その頃、忍と誠は静かにベンチに座り、
コーヒーカップで楽しそうに回る二人を見つめていた。


「マコトちゃんは一緒に乗らなくて良かったの?」

「私はこういう乗り物、酔ってしまってダメなんです」

「そっかぁ、それだと観覧車とかメリーゴーランドとかの方が良いかもしれないね」

「はい、そういう静かな乗り物だと平気です」


にっこりと微笑み答える誠。

白いワンピースにベージュのビーチサンダルを履いた誠は、
とてもお淑やかな女性に映っていた。

彼女のそんな姿に、忍はゴクリと生唾を飲み込む。

彼はかつて萌に向けていた性的な欲求が、
誠に対して徐々に芽生え始めていることに気づいていた。


(ダメだ……どうしても意識してしまう……
こんな不純なことを考えて、萌にもマコトちゃんにも失礼だ)


裸の誠を四つん這いにして、一物を差し込む光景が頭に浮かぶ。

彼女の身体を好き放題に犯したい。

一物が彼女の膣壁に包まれたら、どんなに気持ちが良いだろうか?

そういった妄想が頭の中に浮かんでは消えていった。

その後、四人は様々なアトラクションに乗り、遊園地を満喫した。
その間も忍を興奮させようと、
女性二人は奮闘を重ねたのだが、満足な結果は得られずにいた。


「うーん……最初は良い感じだったんだけど、なかなか上手くいかないね」

「やっぱり密室じゃないとダメなのかな?」


忍が興奮しない理由を議論する真里と萌。

二人はその原因が誠にあるとは考えなかった。

真里と萌が一緒に行動する分だけ、
忍と誠が一緒にいる時間が多くなる。

二人の行動は、忍と誠の仲を進展させるだけで、
すでに逆効果になりつつあった。

時刻は既に正午を過ぎようとしていた。


「ねぇ、萌。忍くんを勃起させるのも大事だけど、
せっかくのデートなんだし、そろそろ一緒にいたらどう?」

「うーん、たしかに。マコトちゃんも知らない男の人とずっと一緒だと緊張しちゃうだろうしね……いったん戻って純粋に楽しもっか」


それからランチを終えた彼らは、お化け屋敷に挑戦することにした。

先に真里・誠ペアが入り、少ししてから萌・忍ペアが入る。

おばけ屋敷のような不安や恐怖を煽る場所では、
吊り橋効果といって、通常よりも恋愛感情を抱きやすくなるという。

萌が忍に抱きつくことにより、気分が高まりエッチに持って行けるのではと、女性二人は期待していた。


「ううう……怖い怖い怖いです……」

「大丈夫だよ。真里さん、ほら私の手を握って」


真里は幽霊が怖くて、誠の腕にしがみついていた。

霊障を引き起こす霊がいる部屋に住んでて、
何を言っているのかといった感じであるが、
本人は至って真面目である。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! なんか光ってるぅぅ!!」

「あれは非常灯の光だよ……真里さん……」

「ああああ!! 赤いぃぃ!! おばけがこっち見てるぅぅ!」

「あれは消火灯のランプの光だよ……」


驚くポイントが少しずれてる真里であったが、二人はいよいよこのアトラクションの最大の目玉【巨大な墓】に差し掛かろうとしていた。

霧の深い西洋風のお墓を練り歩くのだが、
一ヶ所だけゾンビキャストが埋まっている箇所がある。

地面から飛び出たゾンビに囲まれ、
大抵の人はそこで絶叫を挙げるそうだ。

真里と誠は、ひときわ大きな墓石の前で止まった。

ここが終点となっており、出口へ続く道は見えない。

これはゾンビが飛び出た後に、
次の道へと案内されるという仕組みになっているからであった。


「あれ……? ここで行き止まりだ……道を間違えたのかな?」


冷静に来た道を確認する誠。

薄暗く視界が悪いこともあり、
パッと見ただけでは他の道は確認できなかった。

真里はガタガタ震えながら、ひたすら誠にしがみついていた。
先に進めないと聞き、彼女も仕方なく辺りを見回すことにした。

だが真里が誠から少し離れた瞬間ーー

急に周りの地面が沈み込み、
複数体のゾンビが一斉に飛び出した!


「ヴエァァァ!!」

「アバババババ! アヴャアアア!!」

「のぉ~うみそぉ~を、お~くれぇ~!!」


誠は咄嗟に真里の前に出て、彼女を守ろうとした。
しかし真里はあまりの恐怖に絶叫してしまう。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


冷静さを失った真里は、来た道を泣きながら走っていってしまった。

誠は慌てて追いかけようとしたのだが、
視界が悪く、お化け屋敷のセットにぶつかり転んでしまう。


「いったぁー……」

「あっ、大丈夫ですか?」


ゾンビ達が心配して誠に寄り添う。


「……大丈夫です。そこまで大きな怪我では……」

「あっ血が出てるじゃないですか……すぐに治療しますので、
ひとまずあちらの非常口の方へ来ていただけますか?」

「大した怪我ではないので大丈夫です。
彼女が心配なので、とりあえず追いかけることにします」

「かしこまりした……では外でスタッフが待機しておりますので、
後からでも、そちらで治療を受けてください」

「はい、ありがとうございます」


誠はそうゾンビに言うと、
足を庇いながら真里を追うことにした。



※※※



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」

「ひぃえええええええええええ!?
な、なに……? あれ、真里じゃない?」


ものすごい勢いで走って行く真里に、萌と忍が驚く。
ちなみに二人にとって、この瞬間が一番怖かったそうだ。


「ちょっと真里を追いかけるね。忍はマコトちゃんの方をお願い。
こんなお化け屋敷で一人にさせたら可哀想だからね」

「よし、わかった。こっちは任せろ」


二人は分担して真里と誠を探すことにした。

数分後、忍は足を引き摺って歩く誠を発見する。


「マコトちゃん、大丈夫?」

「あ、忍くん……私は大丈夫だけど、真里さんが……」

「あっちは萌が行ったから大丈夫だよ。ところで足、どうしたの?」

「うん、大したことないんだけど、ちょっとぶつけちゃって……」

「そんな足で歩いちゃダメだよ。真里ちゃんのことは大丈夫だから、とりあえず外に出よ? ほら、俺の背中に乗って」

「そんな……そこまでしてもらって悪いです」

「気にしないで、むしろ俺はマコトちゃんがその足で歩く方が心配だよ。出口までだから乗って」

「すみません……ありがとうございます」


誠は言われた通り、忍の背中にしがみつくことにした。
忍は誠をおんぶすると、出口に向かって歩き始めた。


ドクンドクン……ドクンドクン……


忍の背中におぶさり、誠の胸がときめき出す。
誠はこうして男性に看護されるのは、初めての経験であった。
忍の胸に腕を回しギュっと抱き締める。
すぐ横に忍の顔があり、恥ずかしさから赤面してしまいそうだった。

そしてそれは忍も同じこと。
背中に伝わる柔らかな胸の感触と、仄かに香る香水の匂いによって、否応(いやおう)がにも誠を意識してしまっていた。

誠の身体に触れているという事実が、忍の一物を勃起させる。

誠を背負っているため、どうすることもできなかったが、幸いお化け屋敷の中だったため、誰にも気付かれることはなかった。

同時に誠のペニスにも変化が起き始める。

動く度に忍の背中にそれが擦れ、
快感により硬くなってしまったのだ。

小さかったため気づかれることはなかったが、
誠は徐々に息が荒くなり始めていた。


「マコトちゃん、大丈夫? どこか辛いの?」

「んっ……♡ はぁ……だ、大丈夫です」


忍が心配して声を掛けるが、
誠は正直に伝えることができなかった。

おちんちんがあなたの背中に擦れて気持ちが良いです♪
など、言えるはずがない。

誠は抱き締める腕の力を強くして、腰がなるべく揺れないようにした。


(マコトちゃんが強く抱き締めてくる……)


興奮して忍の一物が硬さを増す。

完全体の一歩手前といったところであろうか?
それほどまでに、忍の一物は勃起してしまっていた。


(はぁ……はぁ……ダメ……♡
忍くんの背中におちんちん当たっちゃって……)


誠のペニクリがピクピクと震え、射精寸前の反応を見せる。

どうにかして、この摩擦を止めたい。
しかし背負われている身では、どうすることもできなかった。

ペニクリに意識が集中し、しがみつく腕の力が疎かになる。
スルッと腕が離れ、ほんの少しだけ身体が浮いてしまった。


「あっ、マコトちゃん、あぶないよ」


誠の腕が外れたことに気づき、忍は腰の角度を深めた。
誠の身体をしっかりと背中で持ち、軽く跳ねて腰を元の位置に戻す。

何気ない動作であったが、
これにより誠の淫核が、より強く忍の背中に擦れることになる。

身体が浮き上がり、腕を組み直す誠であったが、
淫核に与えられる摩擦についに耐えきれなくなり……。


(あっ……! ダ……ダメぇぇ!!)

ピクピクピクピク!!
ピュッ♡ ピュッピュッ♡


軽く痙攣を起こし射精してしまった。

幸い誠はパットを付けていたのと、元々少ししか出ない体質だったため、目立ったシミになることはなかった。


「んっ……♡ くっ……ふぅ……ん♡」


なるべく声を出さないようにしたが、
どうしても小さな声が出てしまう。それに気付き忍が声を掛けた。


「ごめん、今の痛かった?」

「う、ううん……なんでも……なんでもないの……はぁはぁ♡
気にしないで忍くん♡」


色っぽい誠の声に、忍の官能が刺激される。
完全に起立した彼の剛直の先からは我慢汁が出るようになっていた。



※※※



「ちょっと! そんなに走って危ないよ!」


萌はようやく真里に追い付き、彼女を制止する。
聞き慣れた声に冷静になった真里は、思わず萌に抱きついた。


「もーえー! こわかったよぉ~……だって、ゾゾゾゾ……ゾンビがたくさんっ! 地面からブワーッて!! ……もうダメ……怖くて、もう無理……」

「そんなに怖いんだったら、最初から入らなければ良かったのに……」


萌はどうするか迷ったが、
これ以上先に進むのは無理と判断し、入口に戻ることにした。

その間、真里は萌に抱きついたまま離れようとはしなかった。


「萌ー怖かったよぉー……」

「ヨーシヨシヨシ、私が付いてるから大丈夫だよ」


真里が子供のように抱き付いてくる。
萌は冷静を装っていたが、この状況に少し興奮していた。


(今日は朝から変……真里に頼られて、どうしてこんなに嬉しいんだろう? それにこんなに身体を小さくして抱きついてくる真里のことがなんだか……)


愛おしい。

萌はハッとし、すぐに思考を停止させた。


(マジでやばいかも……このままいったら本気になりそう……
もうこの演技は止めた方が良いな……)


忍を興奮させたいのは山々だったが、これ以上レズのふりを続けたら、自分がどうにかなってしまいそうだった。

萌はおばけ屋敷を出たら、
真里に演技の中止を申し出ることを決めた。



「ほら、もう大丈夫だよ。真里」

「あー外だぁー! よかったぁーありがとう萌♡」

「どういたしまして、少しそこに座って休んでて、
忍とマコトちゃん探してくるから」


萌は真里を近くのベンチに座らせると、
お化け屋敷の出口に向かって歩き始めた。

忍はもう外に出ているはず、そう考え歩く萌の視界に、
ちょうどおばけ屋敷から出てくる忍の姿が入った。


「あっ、いた! しの……ぶ……」


萌は声を失った。

忍が誠のことを背負っている。

それは別にいい。
何らかのアクシデントがあり、怪我をしてしまったのだろう。

問題は忍の股間だ。

彼のボトムは大きく盛り上がり、
中にある大事な物が完全に起立していたのだ。

それは昨日とは比べ物にならないほど大きかった。

そうなった原因として考えられるのが誠だ。
おそらく彼女の胸が背中に当たり興奮してしまったのだろう。

今までどんなに誘惑しても、勃たせることができなかった忍を、
あのマコトという女は、いとも簡単に勃起させてしまった。

萌は誠に対する嫉妬心と、
真里との努力が無駄だったという気持ちでいっぱいになった。

萌の目に涙が溜まる、くやしくて身体が震え出した。

カタカタカタと歯と歯がぶつかる音が鳴り、
堪らず、彼女はその場を離れた。

そして忍からも真里からも離れた場所へと走った。
この泣いている姿をどちらにも見せたくなかった。

やがて遊園地内のファーストフード店に辿り着くと、
テーブルに顔を伏し、静かにすすり泣くのであった。



※※※



「ただいまー」

「どこ行ってたんだよ、萌。みんな心配してたんだぞ」


夜になり、寝室に戻ってきた萌に忍は言った。

あれから萌は、真里に体調が悪いから休憩するとだけ、
スマホで伝え、姿を消していた。


「ごめんね。どうしても気分が悪くて長引きそうだったから、近くのレストランで休んでいたの」

「じゃあ、なんでどこにいるか言わなかったんだよ」

「さぁ……なんでだろうね?」


萌は荷物を椅子の上に置き、忍にキスをする。
忍の目を見つめ、なにかを確認しているかのようなキスだった。

そこで忍は彼女の様子がおかしなことに気が付く。


「萌…………本当にどうしたんだ? なんか変だぞ?」

「ねぇ、忍。私のこと、愛してる?」


ニヒルな顔を保ったまま萌が返す。
忍は彼女が何か大事な話をするように思えて、真面目に答えた。


「もちろん愛してる。何かあったのか……?」


萌は軽く笑い、忍をベッドの上に押し倒すと、彼のお腹の上に乗った。


「忍……エッチしよ?
私、最近、欲求不満が溜まってて抱いて欲しいの」


萌はカーディガンを脱ぎ、シャツとブラを外して胸を晒す。
忍の腰のベルトを外し、トラウザを脱がせると、彼の履いているトランクスに手を掛けた。

忍はそんな彼女の様子を黙ってみていた。

普段の萌であれば、こんなことはしない。
彼は彼女を下手に刺激しないよう、したいようにさせていた。

萌はトランクスを脱がせると、男性器を掴んだ。


「あいかわらず忍の大きいね……」

「…………まぁな」


萌はしばらくそれを扱(しご)いていたが、
何も反応しないためフェラチオを始めた。

ちゅう……ちゅぷ……ちゅぷ……

忍の一物は、一向に勃つ気配を見せない。
見かねた忍は言った。


「萌……抱いて欲しいなら、俺が攻めに回るよ」

「…………いいの。しばらくこのままさせて」


だがいくらやっても勃起はしない。
萌は寂しそうな表情で口を離すと、小さくため息を吐いた。


「ごめん……最近調子悪くて勃たないんだ。
お前としなかったのも、勃たなかったからなんだよ」


萌がこうなった理由を、性交渉の不足にあると感じた忍は、
正直に伝えることにした。

しかし、それはあまりにも遅い対応であった。

もし彼が南の島に来る前に、この事を相談していたなら、
萌がここまで思い悩むことはなかったであろう。

萌が忍の一物の秘密を知った今となっては、全くの逆効果であった。


「そっか……そうだよね。私じゃダメなんだもんね」

「いや、そういう訳じゃなくて……」

「マコトちゃんが相手だったら、できるんでしょ?」

「っ!?」


急に誠の名前が出てきて驚く忍。
間髪いれず、萌は続ける。


「私、見てたよ。
マコトちゃんを背負ってお化け屋敷から出てくるところを…………
忍、勃起してたでしょ?
ちんちんデカいからすぐ分かるよ。
あんなに大きくして…………
私じゃ勃たないのに、彼女だと簡単に勃つんだね」

「ち、違うそれは……」


そう言いつつも忍の声は弱い。


「辛いよ……忍……。
どうして私たちこうなっちゃったんだろうね……?
南の島に来れば、元に戻れるかと思ってたけど、
結局何も変わらなかった……」

「違う、俺が愛しているのは萌だけだ」

「じゃあ抱いて……証明してみせて…………」


そう言われ、忍は萌を抱き締めた。
彼女の身体を優しく愛撫して、一通りの前戯を行う。

しかし肝心の挿入ができない。

いくら勃たせようと思っても勃たないのだ。
そしてそれと同じように萌の身体も乾いてしまっていた。


(私の身体、忍のことを全然求めていない……
やっぱり変わっちゃったんだ、私自身も……)

「忍、もう大丈夫。ありがとう」

「萌、勘違いしないで欲しい……」

「大丈夫。忍がそういうことしない人だって、よく分かってるから心配しないで、でも今日だけは別の部屋で寝かせて」

「萌……」

「だって辛いから……もう少し気持ちを落ち着かせたいの。
忍のことは今でも愛してる。だからお願い……」

「……わかった。別の部屋って、どこで寝るんだ?」

「真里の部屋に行く。マコトちゃんもいるけど、彼女に何かするなんてことはないから安心して」


そう言い残し、萌は部屋から出ていった。
忍はベッドに腰掛け、しばらく無言のまま項垂れていた。



※※※



コンコンッ


「はーい」

「ういっすー」

「あ、萌! 今日はどうしたの? 急にいなくなったりして」

「んーちょっとね……実は忍と喧嘩しちゃったんだ」

「ありゃりゃ……そういうことかー」

「だから今日こっちに泊めてくんない?」

「私は別にいいよー。ねぇ、マコちゃんー萌が今日こっちに泊まりたいって言ってるんですけど良いですよねー?」


真里の問いかけに、部屋の奥から返事がする。


「いいよー」


返事を聞き、真里が振り返る。


「良いって」

「うん、ありがと」


部屋に入ると、
ちょうどお風呂から上がったばかりの誠と遭遇した。

彼女は水色の生地に青の水玉模様のパジャマを着ており、
タオルでその艶のある髪を拭いているところだった。

足にはギプスを嵌めており、
想像していたより大きな怪我だったことが分かった。

萌は伏し目がちに彼女を見ると「お邪魔します」と、軽く挨拶をした。


「マコちゃんなんだけど、あの後、結構 大事(おおごと)になっちゃってさ。お医者さんが何人も来て診てもらうことになったんだよ」

「えーそんなに?」


真里が心配そうに誠を見つめている。
しかし当の本人にそこまで痛がっている様子はない。

彼女はベッドに座りドライヤーで髪を乾かし始めた。


「とりあえず明日一日は静かにしているようにって話だったから、
私も出掛けないでマコちゃんと一緒にいることにするね」

「そっかー仕方ないよね」


それからしばらく二人は雑談を続けていた。

髪を乾かし終えた誠がドライヤーのスイッチを切って会話に参加する。


「真里さん。そこまで大した傷じゃないから、
明日は萌さんや忍くんと遊んできなよ」

「えぇー……でも、私のせいでこうなっちゃったのに……」

「真里さんのせいじゃないよ。これは単なる私の不注意。
それに何か美味しいもの買ってきてくれた方が私は嬉しいかなー」

「なるほど、それでしたら出掛けてきます!
美味しいもの、いっぱい買ってきますね!」


真里はさっそく島の観光マップを広げる。

そうして萌と相談しながら、
なるべく美味しいものが買えるよう計画を立てるのであった。


それから少しして、萌と真里は同じベッドで眠っていた。
こうして二人で寝るのは、修学旅行の時以来であった。

薄暗い部屋の中、真里の寝顔を見つめる。
久しぶりに見る親友の寝顔は、昔と違って美しかった。


ドクンドクン……ドクンドクン……

(真里…………)


忍との諍(いさか)いの反動であろうか?
乾いていた萌の身体は、
真里に対してはしっかりと反応してしまっていた。


(はぁ……真里……)


萌は我慢できず、右手を女陰へと伸ばした。
指先が触れる箇所から、たしかな快感を感じる。

一時的にとはいえ、忍を他の女に奪われた寂しさから、
彼女は迷うことなく自慰を始めてしまっていた。

この苦しみを忘れたい。
それを忘れるためなら、相手が真里でも良い。
半ば自暴自棄にも似た感覚で手淫に耽った。


(気持ちいい……はぁはぁ……真里……気持ちいいよ……)


不思議な気持ちだった。

あれほどレズに嫌悪感を持っていた自分が、
真里が相手なら、ここまで淫乱になれる。

これほど感じるのは、それだけ心が弱っているということなのだろう。長いこと忍に相手にされず、欲求不満なのもあった。

愛する彼を差し置き、
他の人で欲求不満を解消させるのには抵抗があったが、
真里が相手であれば、
じゃれ合う延長ということで罪悪感も和らいだ。


(イキそう…………ぁ…………ぃく…………いく…………あぁ…………)


全身に棒を差し込まれたような快感が突き抜ける。
萌は生まれて初めて同性との痴態を想像して絶頂を迎えた。

胃の底から息を吐く。
外気を吸い、それが喉を通る感覚が心地よかった。

ほんの少し間であったが、
彼女は嫌なことを忘れることができた。


(真里……ありがと……あなたはいつだって私に安らぎをくれる)


萌は真里に寄り添うと、そのまま眠りについた。
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